説明

移動体位置等推定検出方法、装置及び移動体位置等推定検出方法のプログラム

【課題】 より高精度に移動体の位置等を推定検出することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 電界を直交3軸方向の各成分で検知する電界検知器1と、電界検知器1が検知した信号を電界のデータとして時系列に記録するデータ収集器5と、電界のデータの値が点電流源に係る電界の理論式を満足するように、あらかじめ定めた収束条件を満たすまで、残差を用いた最小自乗法による反復計算を行ってパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて移動体の現在、将来の位置等の推定検出をする位置等推定検出器6とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を表す信号を3次元に検知し、移動体の位置を検出する移動体位置検出方法等に関するものである。特に等速直線運動を行っている移動体の位置等を電界による信号を用いて推定、検出を行うためのものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の位置を検出する方法として、例えば、3軸磁気センサを用いて船舶が発生する磁気信号の直交3軸成分を検知し、3軸磁気センサと等速直線運動をする移動船舶との相対位置を最小自乗法を用いて算出するものがある。この場合、移動体である船舶が消磁装置を装備している場合には船舶が発生する磁気信号は低減されてしまうため、位置検出が困難となる。そこで、船舶が発する電界による信号の直交3軸成分に基づいて、移動目標の相対位置を検出する方法もある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3395136公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような方法で位置を推定する際、電界の発生源がダイポール(双極子)であるとみなし、その計算にはダイポールモーメントに基づく式を用いている。そして、最小自乗法により、実測により得られた値(以下、実測値という)がこの式とできるだけ整合し、満足するように、パラメータを調整し、決定する。ここで、電界の発生源がダイポールであるということは、移動体とセンサとの距離が移動体の複数の電極間距離と比較して十分大きいとみなせる場合には有効である。
【0004】
しかしながら、例えば、移動体とセンサ(検知器)との距離が短い(約100m以下)、移動体が大きく電極間距離が長い等の理由により、移動体とセンサとの距離が移動体の電極間距離と比較して短くなってくると、実際の条件との間で上述した式が沿わなくなってくる。そのため、実測値を式に整合させたとしても、パラメータの値も真のものとは異なってくることとなり、推定位置検出の精度が低下してしまう。さらに、実際にセンサに入力される電界による信号は、船体から発せられた電界による信号が、環境条件等の影響をさまざま受けた後に入力されるものも含まれる。そして、その中には無視できないものもあるが、上記の方法では、船体から発せられた電界による信号が直接、センサに入力されるものとして扱っている。
【0005】
そこで、本発明は上記のような問題点を解決し、移動体とセンサとの距離が短かくても、移動体が大きくても、高精度に移動体の位置等を推定、検出することができる方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位置等推定検出方法は、移動体により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、推定検出手段が、残差を用いた最小自乗法を適用して電界データの値が点電流源に係る理論式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する。
【0007】
また、本発明に係る位置等推定検出方法は、検知手段が3軸方向の成分毎に受信した、移動体により生じる電界の信号を数値化し、データとして時系列に収集する工程と、収集したデータに対して残差を用いた最小自乗法を適用し、データの値が点電流源に係る理論式を満足するようにパラメータの値を決定する工程と、決定したパラメータの値に基づいて、少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する工程とを有する。
【0008】
また、本発明に係る位置等推定検出方法は、移動体である海面又は海中を航行する船舶により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、推定検出手段が、船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する。
【0009】
また、本発明に係る位置等推定検出方法では、海水及び海底の電気伝導度を含むパラメータについて、さらに値を決定する。
【0010】
また、本発明に係る位置等推定検出方法で用いる最小自乗法にはガウス・ニュートン法を適用する。
【0011】
また、本発明に係る位置等推定検出方法は、移動体の速度及び電界の信号の受信位置との最接近位置をさらに推定検出する。
【0012】
また、本発明に係る位置等推定検出方法は、電界の強度又はパラメータの値に基づいて移動体又はその種別を判断する。
【0013】
また、本発明に係る位置等推定検出装置は、電界を3軸方向の各成分で検知する検知手段と、検知手段が検知した信号を電界のデータとして時系列に記録するデータ記録手段と、電界のデータの値が点電流源に係る電界の理論式を満足するように、あらかじめ定めた収束条件を満たすまで、残差を用いた最小自乗法による反復計算を行ってパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する検出手段とを備えたものである。
【0014】
また、本発明に係る位置等推定検出装置は、電界を3軸方向の各成分で検知する検知手段と、検知手段が検知した信号をデータとして時系列に記録するデータ記録手段と、データ記録手段に記憶された電界のデータの値が、移動体である海面又は海中を航行する船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を、残差を用いた最小自乗法を適用して決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する検出手段とを備えたものである。
【0015】
また、本発明に係る位置等推定検出装置の検出手段は、パラメータの値に基づいて移動体の速度及び検知手段との最接近位置をさらに推定検出する。
【0016】
また、本発明に係る位置等推定検出装置の検出手段は、物理量の大きさ又はパラメータの値に基づいて、移動体又はその種別を判断する。
【0017】
また、本発明に係る位置等推定検出方法のプログラムは、検知手段が3軸方向の成分毎に受信した、移動体により生じる電界の信号を数値化し、データとして時系列に収集したデータに対して残差を用いた最小自乗法を適用し、データの値が点電流源に係る理論式を満足するようにパラメータの値を決定する工程と、決定したパラメータの値に基づいて、少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する工程とをコンピュータに行わせるものである。
【0018】
また、本発明に係る位置等推定検出方法のプログラムは、移動体である海面又は海中を航行する船舶により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を決定する工程と、決定したパラメータの値に基づいて、少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する工程とをコンピュータに行わせるものである。
【0019】
また、本発明に係る位置等推定検出方法のプログラムは、海水及び海底の電気伝導度を含むパラメータに対する値の決定をさらにコンピュータに行わせる。
【0020】
また、本発明に係る位置等推定検出方法のプログラムは、パラメータの値に基づいて移動体の速度及び電界の信号の受信位置との最接近位置の推定検出をさらにコンピュータに行わせる。
【0021】
また、本発明に係る位置等推定検出方法のプログラムは、電界の強度又はパラメータの値に基づいて移動体又はその種別の判断をさらにコンピュータに行わせる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、推定検出手段が、移動体により生じる電界を時系列に測定した電界データから、点電流源に係る理論式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するようにしたので、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。
【0023】
また、本発明によれば、推定検出手段が、移動体により生じる電界を3軸方向に時系列に測定した電界データから、点電流源に係る理論式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するようにしたので、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。特に検知手段と移動体との距離が近い場合において、位置等の推定、検出を行うには有効である。
【0024】
また、本発明によれば、移動体である海面又は海中を航行する船舶により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、推定検出手段が、船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するようにしたので、より現実に近い結果を得るようにし、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。
【0025】
また、本発明によれば、海水面及び海底面を境界として鏡像電極を設定する際に、海底の電気伝導度に関するパラメータを加え、その値を決定するようにしたので、決定した値に基づいて、移動体の方向の修正も確実に行うこともできる。
【0026】
また、本発明によれば最小自乗法にガウス・ニュートン法を適用するようにしたので、計算時間の短縮を図りつつ、収束安定性のよい最小自乗法を適用し、位置等の推定検出をすばやく高精度に行うことができる。
【0027】
また、本発明によれば、決定したパラメータの値に基づいて、移動体の速度及び2以上の物理量の信号の受信位置との最接近位置(最小距離)をさらに推定検出することができる。
【0028】
また、本発明によれば、物理量の大きさ又はパラメータの値とそれに対応した移動体又はその種別の特徴とを例えばデータベース化しておくことで、得られた信号、パラメータの値に基づいて移動体又はその種別も判断することができる。
【0029】
また、本発明によれば、推定検出手段が、検知手段が移動体により生じる電界を3軸方向に時系列に測定した電界データから、点電流源に係る理論式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するようにしたので、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。特に検知手段と移動体との距離が近い場合において、位置等の推定、検出を行うには有効である。
【0030】
また、本発明によれば、移動体である海面又は海中を航行する船舶により生じる電界を時系列に検知手段により測定していき、数値化した電界データから、推定検出手段が、船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するようにしたので、より現実に近い結果を得るようにし、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。
【0031】
また、本発明によれば、検出手段が、決定したパラメータの値に基づいて、移動体の速度及び2以上の物理量の信号の受信位置との最接近位置(最小距離)をさらに推定検出することで、位置以外の情報をさらに得ることができる。
【0032】
また、本発明によれば、検出手段に物理量の大きさ又はパラメータの値とそれに対応した移動体又はその種別の特徴とを例えばデータベース化しておけば、得られた信号、パラメータの値に基づいて移動体又はその種別というさらに詳細な情報を得ることができる。
【0033】
また、本発明によれば、移動体により生じる電界を3軸方向に時系列に測定した電界データから、点電流源に係る理論式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出させるようなプログラムをコンピュータに実行させるようにしたので、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。特に検知手段と移動体との距離が近い場合において、位置等の推定、検出を行うには有効である。
【0034】
また、本発明によれば、移動体である海面又は海中を航行する船舶により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値に基づいて少なくとも移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出させるようなプログラムをコンピュータに実行させるようにしたので、より現実に近い結果を得るようにし、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。
【0035】
また、本発明によれば、海水面及び海底面を境界として鏡像電極を設定する際に、海底の電気伝導度に関するパラメータを加え、その値をコンピュータに決定させるようにしたので、決定した値に基づいて、移動体の方向の修正も確実に行うこともできる。
【0036】
また、本発明によれば、パラメータの値に基づいて移動体の速度及び物理量の受信位置との最接近位置の推定検出をさらにコンピュータに行わせるようにしたので、位置以外の情報を得ることができる。
【0037】
また、本発明によれば、移動体位置等推定検出方法のプログラムは、物理量の大きさ又はパラメータの値に基づいて移動体又はその種別の判断をさらにコンピュータに行わせるようにしたので、位置以外のさらに詳細な情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
実施の形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態に係る移動体位置等検出装置の構成ブロック図である。図1において、電界検知器(電界センサ)1は電界強度を信号として検知(受信)し、電気信号(以下、電界信号という)に変換する(場合によっては、検知した他の電気的物理量に基づく信号に基づいて電界強度を算出した電気信号を電界信号とすることもある。また、光信号に変換した後に電気信号に変換する場合もある)。ここで、電界検知器1とは、各々直交する3つの検知手段を有する検知器又は3軸センサを表す検知器であり、直交(相対)座標系の3軸方向での検知ができるものとする。現実には電界検知器1が検知する電界信号は移動体により生じた電界だけではないが、移動体により生ずる電界強度が最も強いので、ここでは、受信した電界信号は移動体を起因として生ずるものであるとして説明する。
【0039】
A/D変換器3は、例えばサンプリング等の処理を施して、電界検知器1が検知した電界信号をそれぞれデジタル信号に変換する。データ収集器5は、データ処理部5Aとデータ記録部5Bで構成される。データ演算部5Aは、デジタル信号に変換された3軸方向の電界信号及び検知した時刻を関連づける処理を行う、いわゆるデータベース管理システム(DBMS)である。データ記録部5Bは、記録装置で構成されており、電界信号(3軸方向の成分)及び検知した時刻をそれぞれデータとして、少なくとも一定時間分又は一定個数分記録する。このデータ収集器5はいわゆるデータベースの役割を果たす。
【0040】
位置等推定検出器6は、データ収集器5に記録されたデータ(物理量(電界強度)を表すデータ)に基づいて移動体の位置等を推定演算し、検出する。ここで、通常、位置等推定検出器6は例えばCPU(Central Prosessing Unit )を中心としたコンピュータ等のような制御演算処理手段で構成されている。そして、位置等の推定演算処理手順をあらかじめプログラム化したものを制御演算処理手段が実行し、そのプログラムに基づく処理を行うことで、後述する各式に基づく加減乗除等の演算を行い、さらに演算結果に基づいて収束等を判断することにより位置等の推定を実現する。
【0041】
また、本実施の形態の装置において必須の手段ではないが、接近検知器7、移動検知器8を設け、移動体の接近、移動を判断し、例えばデータ収集器5において、電界信号の記録開始又は終了等を制御することもできる。そして、本実施の形態では深度計9を電界検知器1の近辺に備えている。これにより、移動体が水面上を走行する船舶の場合は、例えばZ軸方向の距離である深度(高さ)を計測し、既知の値として用いることができるので、後述するパラメータ(未知の変数)の数を少なくすることができる。
【0042】
ここで、以下、移動体という場合は、本実施の形態では海を走行する船舶を想定して説明する。そのため、電気を伝導する媒質は海水であるものとする(したがって、電界検知器1は海中の電界強度を信号として検知する)。また、移動体は等速直線運動を行っているものとする。座標軸を合わせるため、電界検知器1を原点とする座標系のXY平面を海面と平行とするためには、例えば、ジンバル機構(図示せず)を用い、Z軸と海面とが垂直に交わるように設置すればよい。また、例えば設置場所が凹凸によりジンバル機構を用いることができない場合、傾斜計(図示せず)を設け、傾斜計から得た電界検知器1(移動体位置等検出装置)の傾きのデータに基づいて位置等推定検出器6が軸方向について補正を行い、演算を行うようにしてもよい。
【0043】
図2は移動体の位置と電界信号との関係を表す図である。海水は電解質溶液であるために海水中に異種金属が存在すると、電位差を生じる。この場合、イオン化傾向が大きい金属からイオン化傾向が小さい金属に電流が流れ、陽極表面が腐食する。船舶においては、例えば船体外板が陽極(鉄鋼)、プロペラが陰極(アルミ/銅)となり、プロペラ主軸を介して船体外板へ電流が戻ってくることにより閉回路が構成される。この電流が腐食電流である。また、このような腐食電流による金属の腐食を防止するため、防食電流を流すこともある。そのため、例えば海水に電流を流すための保護亜鉛や白金等の陽極電極が船体に設けられる。また、船尾部分に設けられているプロペラ、舵等は、海水を介して電流が流れ込む(電流を吸い込む)ための陰極電極として機能する。そして、これらは海水を流れる電流に対して、電流源(以下、点電流源という)となる。
【0044】
電界検知器1と移動体との距離が遠い又は陽極電極と陰極電極との間隔が短ければ、点電流源を双極子(ダイポール)とみなしてダイポールモーメントによる理論式を用いることができる。そうでない場合、現実の条件と式とが乖離してしまい、実測値に基づいて決定したパラメータの値が真の値と大きく外れ、精確な移動体の位置等の検出ができなくなる(実際に距離が近づくほど、高精度な位置等の推定検出が要求される場合もある)。そこで、本実施の形態では、単極子である点電流源に合わせた計算を行うことで、現実に沿った式に基づいて精確な移動体の位置等の検出ができるようにする。位置等の検出には最小自乗法(特に非線形最小自乗法である。以下、単に最小自乗法を用いる。具体的には、理論により得られた値と実測した信号から得られた値の残差の自乗和が最小となるように、反復計算を行い、所定の収束条件を充たしたものと判断したときのパラメータの値に基づいて、位置等の算出を行う。
【0045】
図3は移動体と点電流源との関係を表す図である。電界検知器1の直上近傍を移動体が等速直線運動で移動する場合、移動体に設けられた点電流源による電界信号の3軸成分(EX ,EY ,EZ )は、次式(1)〜(3)で表される。
【0046】
X =ΣIσi・Xi/(Xi2+Yi2+Zi23/2 …(1)
y =ΣIσi・Yi/(Xi2+Yi2+Zi23/2 …(2)
z =ΣIσi・Zi/(Xi2+Yi2+Zi23/2 …(3)
【0047】
ここで、基準位置から第1の点電流源の位置X1 ,Y1 を、
1 =X0 +Vcosα・t …(4)
1 =Y0 +Vsinα・t …(5)
とし、
i =X1 +di ・cosα・t …(6)
i =Y1 +di ・sinα・t …(7)
とする。
【0048】
ただし、
0 ,Y0 :基準位置
i :点電流源の個数(1,2,…)
σi:Ii /4πσ1
i :各点電流源の電流量
σ1 :海水の電気伝導度(導電率)
t :時間
V :移動体速度
i :第1の点電流源と各点電流源との船体長方向の間隔(1,2,…,i−1)
i :電界検知器1からの移動体の高さ(水上を走行する船舶ではほぼ水深と同じ)
α :電界検知器1のX軸方向と移動体の移動方向とのなす角
を表す。ここで、点電流源Iを点電荷Qとして見た場合、点電流源Iと点電荷QとはI=σ・Q/εの関係となる。εは誘電率である。また、ΣIi =0、すなわち各点電流源の総和は0となる。
【0049】
以上のようにして得られた電界の理論式において、実測した電界信号に基づく値との整合を図るために決定するパラメータ(未知)は、次式(8)のように設定される。
e =(Iσi,di ,X0 ,Y0 ,Zi ,V,α) …(8)
【0050】
位置等推定検出器6は、データ収集器5に記録されたデータに基づいて、電界検知器1が実際に検知した電界に基づく値が理論式を満足させるために最小自乗法により各パラメータを調整してパラメータの値を決定し、決定した値に基づいて移動体の位置を推定、検出する。最小自乗法を適用する際には、パラメータに対して初期値を与え、計算を行う。例えば、基準位置X0 ,Y0 については、X0 =0、Y0 =0(電界検知器1の直上)を初期値とする。ここで、X0 =0、Y0 =0は推定値ではあるが、実際のX0 ,Y0 に概ね近い値であるので、良好な算出結果を得ることができる。最小自乗法には様々な方法があるが、本実施の形態ではガウス・ニュートン法を適用する。ここでは計算時間と収束安定性とのバランス、関数との関係等を考慮した上で、ガウス・ニュートン法を基本としたレーベンベルグ・マルカート(Levenberg-Marquardt )法を用いて行うことを想定しているが、ダンピング法、パウエル法等、ガウス・ニュートン法に基づく他の解法を用いてもよい。また、ガウス・ニュートン法でなくても、最急降下法等、他の非線形最小自乗法の解法を用いてもよい。電界信号(電界信号のデータ)に適用すると、次式(9)〜(11)が成立する。
【0051】
ete ・Δae =−Pete …(9)
ete =Pext ex+Peyt ey+Pezt ez …(10)
ete =Pext ex+Peyt ey+Pezt ez …(11)
【0052】
ただし、
ex:x軸方向の電界信号の各パラメータの一階微分からなる行列
ey:y軸方向の電界信号の各パラメータの一階微分からなる行列
ez:z軸方向の電界信号の各パラメータの一階微分からなる行列
e :残差の自乗和
Δae :パラメータの修正値
である。
【0053】
そして、位置等推定検出器6は、(11)式における残差の自乗和が所定の収束条件を満たすまで(例えば残差の自乗和が所定の値以下になる又は自乗和の変化率の減少が所定の値以下になるまで)反復計算を行う。ここで反復計算に当たり、移動体が最接近すると判断するまでの間は、実際の磁界信号、電界信号をそれぞれデジタル信号化(サンプリング、量子化)して得られた最新のデータに基づいて算出された値を、次の反復計算を行う際のX0 ,Y0 の初期値として用いる。そして、収束条件を満たし、決定されたパラメータ(X0 ,Y0 )に基づいて、CPA(Closest Point of Approach :最接近位置(t=0における位置))を推定、検出する。さらに決定したパラメータV及びαの値を(4)、(5)式又は(6)、(7)式に代入することで、移動体の現在位置及び各点電流源の位置(船尾等)を推定、検出できる。また、移動体は等速直線運動をしているものと扱っているため、推定検出した現在位置、速度に基づいて、将来の位置についても予測(推定、検出)することができる。
【0054】
また、例えば移動体から発生される電気的物理量、パラメータの値等のデータと移動体又はその種別のデータとを関連づけておけば、得られた電界信号のデータ、決定したパラメータの値から、移動体又はその種類を特定することもできる。
【0055】
以上のように、第1の実施の形態によれば、電界検知器1が検知した3軸(直交座標軸)方向の電界信号に基づいて、位置等推定検出器6が、より現実に近い結果を得るように、船舶の点電流源から流れる電流により生じる電界の理論式を用いて、最小自乗法を適用して電界信号に基づく値を満足するようにパラメータの値を決定し、決定した値に基づいて移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するようにしたので、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。特に電界検知器1と移動体との距離が近い場合に、位置等の推定、検出を行うには有効である。
【0056】
また、移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するだけでなく、決定したパラメータの値に基づいて最接近位置、速度等も推定検出するようにすれば、移動体に関する詳細なデータを推定し、得ることができる。そして、例えば移動体による電界強度、パラメータの値等のデータと移動体又はその種別のデータとを関連づけておけば、得られた電界信号のデータ、決定したパラメータの値から、移動体又はその種類を特定することもできる。さらに、プロペラ等が点電流源となるため、船尾の位置を特定することが可能である。そして、例えば磁界等の信号に基づいて、船首の位置を特定することができれば船体長を推定することができるし、移動体又はその種類を特定することもできる。
【0057】
さらに、最小自乗法の解法としてガウス・ニュートン法、特にレーベンベルグ・マルカート法又は修正マルカート法を用いるようにしたので、計算時間の短縮を図りつつ、収束安定性のよい最小自乗法を適用し、位置等の検出をすばやく高精度に行うことができる。
【0058】
実施の形態2.
図4は船体における点電流源(電極)に対する鏡像点電流源(鏡像電極)を表す図である。海水中に生じる電界(これが電界信号となる)は、海水と誘電率(電気伝導率)が異なる大気及び海底の境界(海水面及び海底面)の影響を最も大きく受けることが考えられる。そこで、鏡像理論を利用して船体における点電流源に対する鏡像点電流源を仮想的において、すべての点電流源により生じる電界の和を海水に生じる電界(電界信号)とする(船体壁、海水温度等が電界に影響を与えることもあると考えられるが、すべての影響を考慮することは困難であり、また、無視できる程度の影響であるため、ここでは省略する)。
【0059】
ここで、鏡像理論とは、例えば2種類の異なる誘電媒体(海水と大気、海水と海底)が界面(海水面、海底面)で接しているような場合に、一方の媒体中の電荷(点電流源、電極)によって生じる電界を、境界条件を考慮して直接解かず、実際には電荷のないもう一方の媒体中に仮想的に電荷(点電流源、電極)を設けて電界を求める手法である。この場合、境界条件を乱さずに電界を求めることができる。
【0060】
本実施の形態では、仮想的に鏡像点電流源を設けて(置いて)電界の理論値を計算をすることで実測値との間のずれを少なくし、さらに精確な位置検出等を行う。位置等推定検出器6の処理は異なるものの、第1の実施の形態の移動体位置等検出装置と構成は同じであるので、本実施の形態でも図1を用いて説明する。
【0061】
本実施の形態では(a)船体における各点電流源Aに対して、
(b) (a)の点電流源と海水面を挟んで対になる鏡像点電流源(以下、鏡像点電流源Bという)
(c) (a)の点電流源と海底面を挟んで対になる鏡像点電流源(以下、鏡像点電流源Cという)
(d) (b)の鏡像点電流源と海底面を挟んで対になる鏡像点電流源(以下、鏡像点電流源Dという)
の3つの鏡像点電流源を仮想的に置いてそれぞれの点電流源に係る電界を算出することとする。その他の条件に基づく鏡像点電流源も考えられるが、無視できるほど小さい値であるものとしてここでは省略する(鏡像点電流源Dも、場合によっては無視できることもある)。
【0062】
船体に設けた点電流源(電極)における電流値をIA (第1の実施の形態におけるIi )とすると、仮想的点電流源の電流値IB は次式(12)で表される。同様に、電流値IC 電流値ID は次式(9)、(10)で表される。ここで、本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した(1)〜(3)で表される電界の各成分を(EAx,EAy,EAz)として表すことにする。
B =(σ1 −σ2 )IA /(σ1 +σ2 ) …(8)
C =(σ1 −σ3 )IA /(σ1 +σ3 ) …(9)
D =(σ1 −σ2 )IA /(σ1 +σ2 ) …(10)
【0063】
また、(8)〜(10)式に基づいて考えると、鏡像点電流源Bにより生じる電界は次式(11)〜(13)で表される。
Bx={(σ1 −σ2 )Iσi/(σ1 +σ2 }・Xi
/{Xi2+Yi2+(−Zi23/2 …(11)
By={(σ1 −σ2 )Iσi/(σ1 +σ2 )}・Yi
/{Xi2+Yi2+(−Zi23/2 …(12)
BZ={(σ1 −σ2 )Iσi/(σ1 +σ2 )}・(−Zi
/{Xi2+Yi2+(−Zi23/2 …(13)
【0064】
同様に、鏡像点電流源Cにより生じる電界は次式(14)〜(16)で表される。
Cx={(σ1 −σ3 )Iσi/(σ1 +σ3 )}・Xi
/{Xi2+Yi2+(2Zs−Zi23/2 …(14)
Cy={(σ1 −σ3 )Iσi/(σ1 +σ3 )}・Yi
/{Xi2+Yi2+(2Zs−Zi23/2 …(15)
CZ={(σ1 −σ3 )Iσi/(σ1+σ3 )}・(2Zs−Zi
/{Xi2+Yi2+(2Zs−Zi23/2 …(16)
【0065】
さらに、鏡像点電流源Dにより生じる電界は次式(17)〜(19)で表される。
Dx={(σ1 −σ2 )Iσi/(σ1 +σ2 )}・Xi
/{Xi2+Yi2+(Zi−2Zs)23/2 …(17)
Dy={(σ1 −σ2 )Iσi/(σ1 +σ2 )}・Yi
/{Xi2+Yi2+(Zi−2Zs)23/2 …(18)
DZ={(σ1 −σ2 )Iσi/(σ1 +σ2 )}・(Zi−2Zs)
/{Xi2+Yi2+(Zi−2Zs)23/2 …(19)
【0066】
ここで、
σ1 :海水の電気伝導度
σ2 :海底の電気伝導度
σ3 :空気の電気伝導度(=0)
Zs:水深
である。
【0067】
そして、電界(Ex ,Ey ,Ez )は、最終的には、例えば次式(20)〜(22)のように各点電流源(点電流源)の和で表されることになる。ここで、環境条件等によってはすべての鏡像点電流源を考慮しない方が現実的となることもあるし、また、すべての項を加算すると計算量も多くなるので、(20)〜(22)式中、1又は複数の項を省略してもよい。
x =EAx+EBx+ECx+EDx …(20)
y =EAy+EBy+ECy+EDy …(21)
y =EAz+EBz+ECz+EDz …(22)
【0068】
以上により算出した(Ex ,Ey ,Ez )に基づいて、第1の実施の形態と同様に、最小自乗法によりパラメータの値を計算し、決定する。ここで、本実施の形態においては、(8)式に示したパラメータの他に、例えば、σ2 、σ1 −σ2 、σ1 +σ2 等、海底の電気伝導度σ2 を含んだパラメータが追加される。ここでは、特にσ* =(σ1 −σ2 )/(σ1 +σ2 )としたσ* (導電率比)をパラメータとして追加することにする。したがって、位置推定等を行うためのパラメータは次式(23)のように設定される。
e =(Iσi,di ,X0 ,Y0 ,Zi ,V,α,σ* ) …(23)
【0069】
ここで、(20)〜(22)式において相似となるパラメータの組み合わせが存在するかどうかを検証する。電界信号は、位置、速度等の複数のパラメータの値が組み合わさることでその信号波形が形成される。相似とは、同一の電界信号波形であっても、値の組合せが無数にある場合をいう。このとき、その信号から推定する位置、速度等のパラメータが一意に決まらず、不定となる。相似となるパラメータは、次式(24)において、k=1、k’=1以外で(20)〜(22)式を満たすk、k’により決まるパラメータをいう。相似となるパラメータが存在すると、k、k’は任意の値を採ることができるため、その組み合わせは無限に存在することになり、移動体速度、初期位置等のパラメータの値が1組に決定できないことになる。
e =(k’Iσi,di ,kX0 ,kY0 ,kZi ,kV,α,σ* ) …(24)
【0070】
そして、(23)式のパラメータに基づく(20)〜(22)式と、(24)式のパラメータに基づく(20)〜(22)式との恒等式を考える。この恒等式を満たすk、k’の値はたかだか有限個である。そして、これらの値の中で、数学的には存在したとしても、少なくとも現実的な移動体(特に船舶)の範囲内で採り得る値は、k=1、k’=1しか存在しない。(これは(20)〜(22)式における第2〜第4項のうち、1又は2の項を省略しても同じである。)したがって、(20)〜(22)式からは移動体の速度、初期位置等のパラメータを1組に決定することができる。これにより、水上を航行する船舶、海中の移動体の速度、位置等も推定することができる。
【0071】
ここで、決定したパラメータの値において、σ* >1となることがある。この場合には、決定したパラメータの値に対して、以下に示す補正を行った値を、あらためてパラメータの値として決定する。σ* >1の場合、移動体の移動方向は反転することになる(点電流源の方向関係もその方向に伴って反転する)。
補正後のIσi:−Iσi(補正前)×σ*(補正前)
補正後のα :α(補正前)−180゜
補正後のσ* :1/σ*(補正前)
【0072】
図5は真の直距離と鏡像電極を考慮した推定の直距離との関係を表す図である。ここでは、相似となるパラメータの存在の有無を検証するため、Zi をパラメータとして推定の直距離を算出している。図5(a)においては移動体(船舶)速度Vを3m/s、図5(b)においては移動体速度を6m/sとした場合を表している。また、他の条件として、CPA(Closest Point of Approach :最接近位置(t=0における位置))を20m、水深Zsを100mとし、移動体は、陽極電極、陰極電極をそれぞれ1つずつ有している。そして陰極電極(船尾)をX1 ,Y1 とする。
【0073】
図5では推定の直線距離と真の直線距離とがほぼ一致した結果が得られている。これにより、鏡像点電流源(電極)を考慮した場合には相似となるパラメータが存在しないことを確認することができる。したがって、基準位置X0 ,Y0 、移動体速度V、電界検知器1からの移動体の高さZi は一意に決定可能である。ここでは、モデルを簡単にするために陽極電極、陰極電極をそれぞれ1つずつ設けた移動体での結果を示しているが、例えば、陽極電極(陰極電極)を複数にしても、移動体の測定結果として現実にとり得る値の範囲内では、相似となるパラメータは少なくとも存在せず(そのような値となるようなk、k’は存在しない)、一意に、精度高く、位置等の推定、検出を行うことができる。
【0074】
以上のように第2の実施の形態によれば、海水面及び海底面での境界条件を考慮し、仮想的に鏡像点電流源(電極)を設け、船舶上の点電流源からの電界と鏡像点電流源(電極)による電界との和を船舶により生ずる電界として式を設定し、位置等推定検出器6が、最小自乗法を適用して電界信号に基づく値を満足するようにパラメータの値を一意に決定し、決定した値に基づいて海面、海中を移動する移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出するようにしたので、より現実に近い結果を得るようにし、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。また、海面を航行する船舶について、船舶の大きさ(重さ)によって、スクリュー、舵等、点電流源の深さも変わる(基本的に重いほど海面から深い位置となる)ことから、例えば、決定した点電流源の高さ(電界検知器1とのZ軸方向の距離)のパラメータに基づいて、船舶の大きさ(重さ)を推定することもできるようになる。
【0075】
実施の形態3.
上述した第1の実施の形態では、複数の点電流源(電極)が船体長方向に一列に並べられたものとして説明を行った。ここでは、例えば複数の点電流源(特に陽極の点電流源)が左舷及び右舷(船幅方向)の2列に配置された船舶を考慮した場合について考える。この場合、船体長方向のパラメータであるdi だけでなく、さらに次のパラメータdwiを追加する。これにより、さらに理論式を現実のものに近づけることができ、精確に位置等の推定、検出を行うことができる。
wi:各点電流源の船幅方向の間隔
【0076】
実施の形態4.
上述の第2の実施の形態においては、点電流源に基づく理論に対して鏡像理論を適用し、理論式を設定するようにしたが、これに限定するものではない。例えば、ダイポールモーメントに基づく理論においても、鏡像理論を適用して第2の実施の形態で説明したように、各媒体の誘電率から鏡像点電流源による電界の式の和を用いて理論式を設定することができる。また、信号として磁気を検知して位置等の推定検出を行う場合についても、最小自乗法に用いるための理論式に、透磁率が異なる媒体間において鏡像理論を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る移動体位置等検出装置の構成ブロック図である。
【図2】移動体の位置と電界信号との関係を表す図である。
【図3】移動体と点電流源との関係を表す図である。
【図4】船体における点電流源に対する鏡像点電流源(電極)を表す図である。
【図5】真の直距離と鏡像電極を考慮した推定の直距離との関係を表す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 電界検知器、3 A/D変換器、5 データ収集器、5A データ処理部、5B データ記録部、6 位置等推定検出器、7 接近検知器、8 移動検知器、9 深度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、
推定検出手段が、残差を用いた最小自乗法を適用して前記電界データの値が点電流源に係る理論式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定した前記パラメータの値に基づいて少なくとも前記移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出することを特徴とする移動体位置等推定検出方法。
【請求項2】
検知手段が3軸方向の成分毎に受信した、移動体により生じる電界の信号を数値化し、データとして時系列に収集する工程と、
前記収集したデータに対して残差を用いた最小自乗法を適用し、前記データの値が点電流源に係る理論式を満足するようにパラメータの値を決定する工程と、
決定したパラメータの値に基づいて、少なくとも前記移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する工程と
を有することを特徴とする移動体位置等推定検出方法。
【請求項3】
移動体である海面又は海中を航行する船舶により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、
推定検出手段が、前記船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を決定し、決定した前記パラメータの値に基づいて少なくとも前記移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出することを特徴とする移動体位置等推定検出方法。
【請求項4】
海水及び海底の電気伝導度を含むパラメータについて、さらに値を決定することを特徴とする請求項3記載の移動体位置等推定検出方法。
【請求項5】
前記最小自乗法にはガウス・ニュートン法を適用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の移動体位置等推定検出方法。
【請求項6】
前記移動体の速度及び前記電界の信号の受信位置との最接近位置をさらに推定検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の移動体位置等推定検出方法。
【請求項7】
前記電界の強度又は前記パラメータの値に基づいて前記移動体又はその種別を判断することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の移動体位置等推定検出方法。
【請求項8】
電界を3軸方向の各成分で検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した信号を電界のデータとして時系列に記録するデータ記録手段と、
前記電界のデータの値が点電流源に係る電界の理論式を満足するように、あらかじめ定めた収束条件を満たすまで、残差を用いた最小自乗法による反復計算を行ってパラメータの値を決定し、決定した前記パラメータの値に基づいて少なくとも前記移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする移動体位置等推定検出装置。
【請求項9】
電界を3軸方向の各成分で検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した信号をデータとして時系列に記録するデータ記録手段と、
該データ記録手段に記憶された電界のデータの値が、移動体である海面又は海中を航行する船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を、残差を用いた最小自乗法を適用して決定し、決定した前記パラメータの値に基づいて少なくとも前記移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする移動体位置等推定検出装置。
【請求項10】
前記検出手段は、前記パラメータの値に基づいて前記移動体の速度及び前記検知手段との最接近位置をさらに推定検出することを特徴とする請求項8又は9記載の移動体位置等推定検出装置。
【請求項11】
前記検出手段は、前記物理量の大きさ又は前記パラメータの値に基づいて、前記移動体又はその種別を判断することを特徴とする請求項8又は9記載の移動体位置等推定検出装置。
【請求項12】
検知手段が3軸方向の成分毎に受信した、移動体により生じる電界の信号を数値化し、データとして時系列に収集したデータに対して残差を用いた最小自乗法を適用し、前記データの値が点電流源に係る理論式を満足するようにパラメータの値を決定する工程と、
決定したパラメータの値に基づいて、少なくとも前記前記移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する工程と
をコンピュータに行わせることを特徴とする移動体位置等推定検出方法のプログラム。
【請求項13】
移動体である海面又は海中を航行する船舶により生じる電界を時系列に測定していき、数値化した電界データから、前記船舶から直接発せられる電界成分と海水面及び海底面を境界として仮想的に設定した鏡像電極に基づく電界成分との和で表す式を満足するようなパラメータの値を決定する工程と、
決定した前記パラメータの値に基づいて、少なくとも前記移動体の現在及び/又は将来の位置を推定検出する工程と
をコンピュータに行わせることを特徴とする移動体位置等推定検出方法のプログラム。
【請求項14】
海水及び海底の電気伝導度を含むパラメータに対する値の決定をさらにコンピュータに行わせることを特徴とする請求項13記載の移動体位置等推定検出方法のプログラム。
【請求項15】
前記パラメータの値に基づいて前記移動体の速度及び前記電界の信号の受信位置との最接近位置の推定検出をさらにコンピュータに行わせることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の移動体位置等推定検出方法のプログラム。
【請求項16】
前記電界の強度又は前記パラメータの値に基づいて前記移動体又はその種別の判断をさらにコンピュータに行わせることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の移動体位置等推定検出方法のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−98381(P2006−98381A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334345(P2004−334345)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】