説明

移動体及びそれを備えた物品搬送設備

【課題】走行レール上の磁性体粉を適切に除去しながらも、走行レールの磨耗を抑制することができる移動体を提供する。また、上記移動体を備える物品搬送設備を提供する。
【解決手段】走行レール5上を転動する走行車輪17を備えて走行レール5に沿って走行自在な移動体本体10が設けられ、走行レール5上の磁性体粉Mpを磁力により吸着する移動体側磁力発生手段30Mが、走行レール5から離間する状態で移動体本体10に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レール上を転動する走行車輪を備えて前記走行レールに沿って走行自在な移動体本体が設けられた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる移動体は、走行車輪と走行レールとの間に生じる摩擦によって、走行レール上を走行するように構成されている。このような移動体において、その走行レール上に、走行車輪と走行レールとの摩擦によって生じた磨耗粉や、搬送対象の物品から落下した異物(以下、異物等という)が存在すると、走行車輪と走行レールとの間にその異物等を噛み込んで滑りが生じたり、走行レール又は走行車輪の磨耗が促進されたりする虞がある。このため、従来、走行車輪の前後に走行レールに接触するブラシを設けて、走行レール上から異物等をブラシにて払い落とすことにより、走行車輪と走行レールとの間に異物等を噛み込むことを抑制するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の移動体として、走行レール上の異物等が磁性体粉である場合において、従来、レール上を転動する走行車輪を備えた移動体が設けられ、走行車輪の磨耗によって発生する磁性体粉を、磁力を発生可能な磁力発生手段によって吸着し回収するコンベアレールの清掃装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このコンベアレールの清掃装置における磁力発生手段は、磁性体材料にて形成されるハウジングとスペーサとを備えて構成され、コンベアレールとハウジングとの間にスペーサを介在させ、スペーサがコンベアレールに接触する状態でハウジングとコンベアレールとの距離を一定に保つように構成されている。
そして、移動体がコンベアレール上を走行する際に、磁力発生手段によってコンベアレール上の磁性体粉を吸着することによって、磁性体粉をコンベアレール上から除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−046221号公報
【特許文献2】特許第4228079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2においては、コンベアレール上の磁性体を除去できるものの、スペーサがコンベアレールに接触する状態となるため、移動体の走行に伴って、スペーサとコンベアレールとの間に摩擦が発生し、コンベアレールが磨耗する虞があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、走行レール上の磁性体粉を適切に除去しながらも、走行レールの磨耗を抑制することができる移動体を提供することにある。また、本発明の更なる目的は、上記移動体を備える物品搬送設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る移動体の第1特徴構成は、走行レール上を転動する走行車輪を備えて前記走行レールに沿って走行自在な移動体本体が設けられたものであって、前記走行レール上の磁性体粉を磁力により吸着する移動体側磁力発生手段が、前記走行レールから離間する状態で前記移動体本体に設けられている点にある。
【0009】
すなわち、移動体側磁力発生手段が走行レールから離間する状態で走行レール上の磁性体粉を磁力により吸着することになるから、移動体側磁力発生手段を設けたことによって走行レールの磨耗を促進することがなくなり、走行レールの磨耗を抑制できる。
つまり、移動体側磁力発生手段が走行レールと接触するように構成されている場合、その移動体側磁力発生手段と走行レールとの摩擦によって走行レールの磨耗を促進する虞があるが、本発明によれば、移動体側磁力発生手段が走行レールから離間する状態で設けられるものであるから、走行レール上の磁性体粉を適切に除去しながらも、走行レールの磨耗を抑制することができる。
【0010】
要するに、第1特徴構成によれば、走行レール上の磁性体粉を適切に除去しながらも、走行レールの磨耗を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明に係る移動体の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記移動体側磁力発生手段が磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換え自在に構成され、前記移動体側磁力発生手段を磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換える制御手段が設けられ、前記移動体本体の停止位置として、前記移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を磁性体粉回収用の回収体に回収させるための回収用停止位置が設定され、
前記制御手段が、前記移動体本体が前記回収用停止位置以外に位置している状態においては前記移動体側磁力発生手段を磁力発生状態とする磁性体粉吸着処理を実行し、且つ、
前記移動体本体が前記回収用停止位置に停止した状態において前記移動体側磁力発生手段を磁力非発生状態とする磁性体粉回収処理を実行するように構成されている点にある。
【0012】
すなわち、移動体本体が回収用停止位置以外に位置している状態において、移動体側磁力発生手段を磁力発生状態とするものであるから、移動体本体が走行レール上を走行している状態、又は、回収用停止位置以外に停止している状態においては、その走行経路である走行レール上の磁性体粉を移動体側磁力発生手段によって吸着して回収し、しかも、その回収した磁性体粉が走行レール上に落下しないように移動体側磁力発生手段に吸着した状態に維持しておくことができる。
そして、移動体本体が回収用停止位置に停止した状態において、移動体側磁力発生手段を磁力非発生状態とするものであるから、移動体側磁力発生手段によって吸着した磁性体粉を移動体側磁力発生手段から離脱させて、磁性体粉回収用の回収体に回収させることができる。したがって、移動体側磁力発生手段によって走行レール上の磁性体粉を適切に除去し、しかも、吸着した磁性体粉を回収することができるものとなる。
【0013】
要するに、第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、移動体側磁力発生手段によって走行レール上の磁性体粉を適切に除去し、しかも、吸着した磁性体粉を回収することができるものとなる。
【0014】
本発明に係る移動体の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記移動体側磁力発生手段が電磁石にて構成されている点にある。
【0015】
すなわち、移動体側磁力発生手段が電磁石にて構成されるものであるから、その電磁石に電流を流す状態と電磁石に電流を流さない状態とに切換えることによって、容易に移動体側磁力発生手段を磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換えることができる。
【0016】
要するに、第3特徴構成によれば、上記第2特徴構成に加えて、容易に移動体側磁力発生手段を磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換えることができるものとなる。
【0017】
本発明に係る移動体の第4特徴構成は、上記第2又は第3特徴構成に加えて、前記回収体が、前記磁性体粉回収処理の実行時において前記移動体側磁力発生手段と平面視で重なる下方側の箇所に設けられ、且つ、前記移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を吸着する地上側磁力発生手段を備えて構成されている点にある。
【0018】
すなわち、回収体が、磁性体粉回収処理の実行時において移動体側磁力発生手段と平面視で重なる下方側の箇所に設けられるものであるから、移動体側磁力発生手段を磁力非発生状態としたときに、移動体側磁力発生手段を離脱する磁性体粉は重力によって回収体に落下して回収されることになる。
しかも、回収体が、地上側磁力発生手段によって移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を吸着するものであるから、残留磁化等によって移動体側磁力発生手段に吸着されたまま残っている磁性体粉を、地上側磁力発生手段にて吸着し、移動体側磁力発生手段から積極的に除去することができる。
したがって、移動体側磁力発生手段に吸着された磁性体粉を、適切に除去して回収体に回収することができるものとなる。
【0019】
要するに、第4特徴構成によれば、上記第2又は第3特徴構成による作用効果に加えて、移動体側磁力発生手段の吸着された磁性体粉を適切に除去して回収体に回収することができる。
【0020】
本発明に係る移動体の第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、前記地上側磁力発生手段が磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換え自在に構成され、前記制御手段が、前記磁性体粉回収処理において、前記地上側磁力発生手段を磁力発生状態とするように構成されている点にある。
【0021】
すなわち、地上側磁力発生手段が磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換え自在に構成され、磁性体粉回収処理において磁力発生状態に切換えられるものであるから、磁性体粉回収処理を実行していないときには地上側磁力発生手段を磁力非発生状態にして、回収した磁性体粉の回収体からの除去が行い易いものとなる。
つまり、地上側磁力発生手段に吸着された磁性体粉は最終的に回収体から除去されて廃棄されることになるが、このとき、地上側磁力発生手段を磁力非発生状態にできるものであるから、地上側磁力発生手段に吸着された磁性体粉を除去することが容易となる。
【0022】
要するに、第5特徴構成によれば、上記第4特徴構成による作用効果に加えて、地上側磁力発生手段に吸着された磁性体粉の除去を容易に行えるものとなる。
【0023】
本発明に係る移動体の第6特徴構成は、上記第5特徴構成に加えて、前記地上側磁力発生手段が電磁石にて構成されている点にある。
【0024】
すなわち、地上側磁力発生手段が電磁石にて構成されるものであるから、その電磁石に電流を流す状態と電磁石に電流を流さない状態とに切換えることによって、容易に地上側磁力発生手段を磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換えることができる。
【0025】
要するに、第6特徴構成によれば、上記第5特徴構成に加えて、地上側磁力発生手段を、容易に磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換えることができるものとなる。
【0026】
本発明に係る物品搬送設備の第1特徴構成は、上記移動体の第2〜第6特徴構成のいずれかに記載の移動体を備えたものであって、前記走行レールが有端状に構成され、その有端状の走行レールの一端側端部に前記移動体の物品授受用の待機位置が設定され、前記待機位置が前記回収用停止位置を兼用して設定されている点にある。
【0027】
すなわち、有端状の走行レールの一端側端部に設定される物品授受用の待機位置が、回収用停止位置を兼用して設定されるものであるから、移動体がその待機位置に位置しているときに、移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を回収体に回収することができる。
【0028】
つまり、移動体は、物品搬送のために走行レール上を走行すべく制御されているとき以外は、待機位置に停止して次の搬送指示を待つように制御される。このように移動体が待機位置に停止する状態は、物品搬送設備であれば存在するものであるから、待機位置と回収用停止位置とを兼用するように構成することによって、専用の停止位置に停止した状態とすることなく磁性体粉回収処理を実行することができるようになる。
【0029】
要するに、本発明にかかる物品搬送設備の第1特徴構成によれば、物品搬送設備における搬送用の移動での停止状態を利用して、専用の停止位置に停止した状態とすることなく磁性体粉回収処理を実行することができるようになる。
【0030】
本発明に係る物品搬送設備の第2特徴構成は、上記物品搬送設備の第1特徴構成に加えて、前記回収体が、前記移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を吸着する地上側磁力発生手段と、その地上側磁力発生手段の周囲に敷設されるシート状の永久磁石とを、磁性体粉受け止め用の回収トレー上に載置して構成されている点にある。
【0031】
すなわち、磁性体粉回収処理において移動体側磁力発生手段から落下する磁性体粉、又は、地上側磁力発生手段によって吸着された後、地上側磁力発生手段が磁力非発生状態とされることによって落下する磁性体粉は、磁性体粉受け止め用の回収トレー上に受止められることになる。このとき、回収体が、地上側磁力発生手段と、その地上側磁力発生手段の周囲に敷設されるシート状の永久磁石とから構成されていることにより、移動体側磁力発生手段及び地上側磁力発生手段から落下した磁性体粉が移動体の走行による気流等によって再度巻き上げられないように保持しておくことができる。
【0032】
要するに、本発明に係る物品搬送設備の第2特徴構成によれば、上記本発明に係る物品搬送設備の第1特徴構成による作用効果に加えて、移動体側磁力発生手段が吸着した磁性体粉を的確に回収し、且つ、磁性体粉が移動体の走行による気流等によって再度巻き上げられないように保持しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】物品搬送設備の全体構成を示す斜視図
【図2】(a)移動体本体を説明する図、(b)磁性体粉回収処理時における移動体本体と回収体との関係を説明する図
【図3】回収用停止位置を示す図
【図4】運転制御部の構成を説明する図
【図5】磁性体粉吸着処理及び磁性体粉回収処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の移動体をスタッカークレーンに適用し、本発明の物品搬送設備を自動倉庫に適用した場合について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動倉庫は、物品出し入れ方向が互いに対向するように間隔を隔てて設置した二つの収納棚1と、それらの収納棚1どうしの間に形成した作業通路2を自動走行するスタッカークレーン3とが設けられ、各収納棚1には多数の物品収納部4が上下方向および棚横幅方向に並設されている。
【0035】
作業通路2には、収納棚1の長手方向に沿って、鋼鉄製で且つ有端状の走行レール5が設置され、作業通路2の一端側には、スタッカークレーン3の運転を管理する地上側コントローラ7と一対の荷載置台8とが設けられている。なお、走行レール5は、自動倉庫の床面Y上に、その床面Yよりも上方に突出する状態で設置され、地上側コントローラ7は、走行レール5の端部を延長した線上の位置に設けられる。そして、走行レール5における地上側コントローラ7側の端部は、スタッカークレーン3が走行制御されていない状態である待機時において停止することになる待機位置に設定されている。
また、地上側コントローラ7は、スタッカークレーン3の運転を制御する制御手段としての運転制御部Hと相互に通信可能に構成されている。
【0036】
図2(a)に示すように、スタッカークレーン3は、走行レール5上を転動する前後一対の走行車輪17を備えて走行レール5に沿って走行自在な移動体本体10と、物品収納部4との間で物品を移載する物品移載装置11を備えた昇降体12と、移動体本体10に上下方向に沿って立設されて物品搬送用の昇降体12を昇降自在に案内支持する昇降案内マスト13とを備えて構成されている。昇降案内マスト13は、移動体本体10の走行方向に前後一対設けられている。
なお、以降の説明においては、スタッカークレーン3の走行方向を前後方向と称し、前後方向における地上側コントローラ7側(図1乃至図3におけるHPで示す側)をHP側と称する。また、そのHP側と対向する側(図1乃至図3においてOPで示す側)をOP側と称する。また、平面視にてスタッカークレーン3の走行方向と直交する方向を左右方向と称する。
【0037】
移動体本体10には、走行レール5上を走行自在な前後一対の鋼鉄製の走行車輪17が設けられている。この一対の走行車輪17のうち、移動体本体10におけるOP側に設けられた走行車輪17が、走行用電動モータ18にて駆動される推進用の駆動走行輪17aとして構成され、移動体本体10におけるHP側に設けられた走行車輪17が、遊転自在な従動走行輪17bとして構成されている。
つまり、走行用電動モータ18にて駆動走行輪17aが回転駆動されることにより、移動体本体10が走行レール5に沿って走行するように構成されている。
【0038】
昇降体12は、ループ状の昇降チェーン14にて吊り下げ支持されており、昇降チェーン14は、昇降案内マスト13の上端側に取付けられる上部スプロケット(図示なし)と、昇降案内マスト13の下端側に取付けられる下部スプロケット(図示なし)とに亘って巻き掛けられ、さらに、昇降用電動モータ19にて駆動される駆動スプロケット(図示なし)に巻き掛けられて、昇降用電動モータ19にて駆動スプロケットが正逆に回転駆動されることにより、一対の昇降チェーン14の夫々が長手方向に移動して昇降体12が昇降移動するように構成されている。
【0039】
図2及び図3に示すように、移動体本体10のHP側端部には、走行車輪17の側方及び上方を覆う走行車輪カバー17cが設けられている。また、その走行車輪カバー17cのHP側の側面に、電磁石カバー30が取付けられている。そして、移動体側磁力発生手段としての移動体側電磁石30Mが、電磁石カバー30に覆われる状態で、且つ、走行レール5から離間する状態で、移動体本体10に取付けられている。
【0040】
移動体側電磁石30Mは、電流供給状態と電流停止状態とを切換えることによって、磁力発生状態と磁力非発生状態に切換え自在に構成されている。また、移動体側電磁石30Mは、磁力発生状態においては走行レール5上に存在する磁性体粉Mpを吸着することができる強度の磁力を生じることができるように構成される。
すなわち、走行レール5上の磁性体粉Mpを磁力により吸着する移動体側電磁石30Mが、走行レール5から離間する状態で移動体本体10に設けられている。
【0041】
図3に示すように、走行レール5のHP側端部と地上側コントローラ7との間であって、走行レール5のHP側端部近傍の箇所には、地上側磁力発生手段としての地上側電磁石40Mと、その地上側電磁石40Mの周囲に敷設されるシート状の永久磁石40S(シート状ゴム磁石)とが、磁性体粉受け止め用の回収トレー40T上に載置して設置され、移動体側電磁石30Mにて吸着された磁性体粉Mpを回収するように構成されている。つまり、磁性体粉回収用の回収体が、地上側電磁石40Mと、その地上側電磁石40Mの周囲に敷設されるシート状の永久磁石40Sとを、磁性体粉受け止め用の回収トレー40T上に載置して構成されている。
【0042】
図2(b)及び図3に示すように、上記回収体は、移動体側電磁石30Mにて吸着された磁性体粉Mpを回収するときにおいて、移動体側電磁石30Mと平面視で重なる下方側の箇所に設けられている。地上側電磁石40Mは、移動体側電磁石30Mの直下方に位置するように設けられ、移動体側電磁石30Mにて吸着された磁性体粉Mpを吸着するように構成されている。
つまり、上述の移動体側電磁石30Mと回収体とが平面視で重なる位置が、移動体側電磁石30Mにて吸着された磁性体粉Mpを磁性体粉回収用の回収体に回収させるための回収用停止位置として設定されている。また、この回収用停止位置は走行レール5のHP側端部であり、上記待機位置と上記回収用停止位置とを兼用して設定されている。
すなわち、走行レール5が有端状に構成され、その有端状の走行レール5の一端側端部に移動体の待機位置が設定され、その待機位置が回収用停止位置を兼用して設定されている。
【0043】
図2及び図3に示すように、走行車輪カバー17cの上部には、レーザー投射部L1、受光部J1が設けられ、レーザー投射部L1の光軸上で且つ地上側コントローラ7近傍に、反射板18cが設けられている。そして、レーザー投射部L1から発せられたレーザー光が反射板18cに反射して受光部J1に戻るまでの時間を規則して、移動体本体10の走行距離を計測するようになっている。つまり、レーザー投射部L1、受光部J1及び反射板18cから走行用距離計18bが構成されている。
なお、詳細についての説明は省略するが、移動体本体10には、昇降体12の昇降距離を計測する昇降用距離計19bが設けられている。
【0044】
図4に示すように、制御手段としての運転制御部Hは、走行制御部H1と昇降制御部H2とを備えて構成されている。走行制御部H1には、走行用距離計18bからの測距情報が入力され、その測距情報に基づいて、走行用電動モータ18を駆動する走行制御を実行する。また、昇降制御部H2には、昇降用距離計19bからの測距情報が入力され、その測距情報に基づいて、昇降用電動モータ19を駆動する昇降制御を実行する。
また、運転制御部Hは、移動体側磁力発生手段としての移動体側電磁石30M、及び、地上側磁力発生手段としての地上側電磁石40Mを、磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換え自在に構成されている。
なお、運転制御部Hは、マイクロコンピュータにより構成され、上記走行制御部H1及び昇降制御部H2は、そのマイクロコンピュータにより実行されるプログラムモジュールとして実装されている。
【0045】
運転制御部Hは、地上側コントローラ7にて指令された一の物品収納部4と他の物品収納部4との間、または、物品収納部4と荷載置台8との間で昇降体12を移動させるべく、走行制御部H1による走行制御と昇降制御部H2による昇降制御を実行する。
【0046】
図5のフローチャートに示すように、運転制御部Hは、走行制御部H1からの情報に基づいて、スタッカークレーン3が回収用停止位置に停止しているか否かを判別する(#1)。
#1においてスタッカークレーン3が回収用停止位置以外に位置していると判別すると、運転制御部Hは、移動体側電磁石30Mを磁力発生状態に切換える磁性体粉吸着処理を実行する(#2)。つまり、スタッカークレーン3が走行中等で回収用停止位置以外に位置しているときには、移動体側電磁石30Mにて走行レール5上の磁性体粉Mpを吸着・除去することになる(図2(a)参照)。
【0047】
#1においてスタッカークレーン3が回収用停止位置に位置していると判別すると、運転制御部Hは、移動体側電磁石30Mを磁力非発生状態に切換え、続いて地上側電磁石40Mを磁力発生状態に切換える磁性体粉回収処理を実行する(#3、#4)(図2(b)参照)。これにより、移動体側電磁石30Mに吸着された磁性体粉Mpは、移動体側電磁石30Mから離脱し、さらに、移動体側電磁石30Mの残留磁化によって吸着している磁性体粉Mpも、地上側電磁石40Mに吸着されて移動体側電磁石30Mから離脱する。
また、磁性体粉回収処理の実行とともに運転制御部Hに供えるタイマにより計時を開始し、設定時間を経過すると地上側電磁石40Mを磁力非発生状態に切換え操作する(#5、#6)。この設定時間は、移動体側電磁石30Mの残留磁化によって移動体側電磁石30Mに吸着されている磁性体粉を地上側電磁石40Mに吸着するのに十分な時間(例えば30秒間)に設定される。
【0048】
このように、本発明によれば、走行レール5上の磁性体粉Mpを適切に除去しながらも、走行レール5の磨耗を抑制することができるスタッカークレーン3、及び、そのスタッカークレーン3を備える自動倉庫を提供することができる。
【0049】
〔別実施形態〕
次に、本発明の別実施形態について説明する。
(1)上記実施形態では、本発明をスタッカークレーン、及び、それを備える自動倉庫に適用する場合について説明したが、このような構成に限定されるものではなく、走行レール上の磁性体粉を回収する必要のある設備における種々の移動体(例えば天井走行モノレール等)に適用することができる。
【0050】
(2)上記実施形態では、待機位置が回収用停止位置を兼用して設定されるように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、待機位置と回収用停止位置とを別の位置(待機位置をHP側端部とし回収用停止位置をOP側端部としたり、或いはその逆に、待機位置をOP側端部とし回収用停止位置をHP側端部とする等)とするように構成してもよい。
【0051】
(3)上記実施形態では、移動体側磁力発生手段と地上側磁力発生手段とを電磁石にて構成する例を示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、夫々の磁力発生手段において、磁性体ケーシング内に磁石を内蔵し、その磁石の向きを切換えることによって磁力発生状態と磁力非発生状態とを切換えるように構成してもよい。また、地上側磁力発生手段については、電磁石ではなく永久磁石とするように構成してもよい。
【0052】
(4)上記実施形態では、回収体として、地上側電磁石40Mと、その地上側電磁石40Mの周囲に敷設されるシート状の永久磁石40Sとを備える構成を例示したが、シート状の永久磁石40Sについては備えない構成とすることも可能である。
【0053】
(5)上記実施形態では、走行レール5として鋼鉄製のレールを使用し、前後一対の走行車輪17として鋼鉄製の車輪を使用する構成を例示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、硬質プラスチックや非磁性のステンレス等、他の材質で構成してもよい。この場合、磁性体の磨耗粉は発生しないが、例えば搬送対象の物品等より発生する磁性体粉を、移動体側電磁石30Mによって吸着して除去することができる。
【符号の説明】
【0054】
3 移動体
5 走行レール
10 移動体本体
17 走行車輪
30M 移動体側磁力発生手段
40M 地上側磁力発生手段
40S シート状の永久磁石
H 制御手段
Mp 磁性体粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レール上を転動する走行車輪を備えて前記走行レールに沿って走行自在な移動体本体が設けられた移動体であって、
前記走行レール上の磁性体粉を磁力により吸着する移動体側磁力発生手段が、前記走行レールから離間する状態で前記移動体本体に設けられている移動体。
【請求項2】
前記移動体側磁力発生手段が磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換え自在に構成され、
前記移動体側磁力発生手段を磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換える制御手段が設けられ、
前記移動体本体の停止位置として、前記移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を磁性体粉回収用の回収体に回収させるための回収用停止位置が設定され、
前記制御手段が、前記移動体本体が前記回収用停止位置以外に位置している状態においては前記移動体側磁力発生手段を磁力発生状態とする磁性体粉吸着処理を実行し、且つ、
前記移動体本体が前記回収用停止位置に停止した状態において前記移動体側磁力発生手段を磁力非発生状態とする磁性体粉回収処理を実行するように構成されている請求項1記載の移動体。
【請求項3】
前記移動体側磁力発生手段が電磁石にて構成されている請求項2記載の移動体。
【請求項4】
前記回収体が、前記磁性体粉回収処理の実行時において前記移動体側磁力発生手段と平面視で重なる下方側の箇所に設けられ、且つ、前記移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を吸着する地上側磁力発生手段を備えて構成されている請求項2又は3記載の移動体。
【請求項5】
前記地上側磁力発生手段が磁力発生状態と磁力非発生状態とに切換え自在に構成され、
前記制御手段が、前記磁性体粉回収処理において、前記地上側磁力発生手段を磁力発生状態とするように構成されている請求項4に記載の移動体。
【請求項6】
前記地上側磁力発生手段が電磁石にて構成されている請求項5記載の移動体。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の移動体を備えた物品搬送設備であって、
前記走行レールが有端状に構成され、その有端状の走行レールの一端側端部に前記移動体の物品授受用の待機位置が設定され、
前記待機位置が前記回収用停止位置を兼用して設定されている物品搬送設備。
【請求項8】
前記回収体が、前記移動体側磁力発生手段にて吸着された磁性体粉を吸着する地上側磁力発生手段と、その地上側磁力発生手段の周囲に敷設されるシート状の永久磁石とを、磁性体粉受け止め用の回収トレー上に載置して構成されている請求項7記載の物品搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218862(P2012−218862A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85241(P2011−85241)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】