説明

移動体搭載用組電池

【課題】複数の電池セルにより構成される移動体搭載用組電池(燃料電池等)において、この電池セルの起電力を個別に検出するための信号配線を筐体に対して簡便にかつ堅固に支持させる構造を提供する。
【解決手段】電池セルにおける個別の起電力を検出する電圧検出手段(10)と、電池セル及び電圧検出手段(10)を連結し前記個別の起電力を導く信号配線(20)と、複数の電池セルを配列させて内部に収納するとともに信号配線(20)に接続する出力端子を外部に露出させる開口(35)を備える筐体(30)と、筐体(30)に対して自在に貼着/脱離する面ファスナ(40)とを備え、信号配線(20)を着脱自在に支持させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に搭載される複数の電池セルから構成される組電池の技術分野に属し、特に、電池セルの起電力を個別に検出する信号配線の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を搭載する車両(移動体)は、燃料ガス(水素)と空気(酸素)とを単セル(電池セル)に供給して電気化学反応により動力源となる起電力を得ている。
この燃料電池は、数十から数百の単セルが積層し直列に配列して構成された組電池の一種であって、全体として数百Vの起電力を出力する。
【0003】
この燃料電池は、発電中に単セルの一つに異常が発生し発電が滞ると、この単セルを破損させる場合があり、さらにこの破損による被害は他の正常な単セルにも拡大する場合がある。このため、燃料電池は、それぞれの単セルについて個別に起電力(以下、「セル電圧」という)を検出する単セルの電圧検出手段を備えている。そして、いずれか一つの単セルに異常が発見された場合は、被害が周囲に広がる前に復旧を図り、復旧できないときは燃料電池スタックの発電を停止するようになっている。
【0004】
このような単セルの電圧検出手段は、燃料電池の筐体に固定され、単セルの電極(実際にはセパレータ)の側面の出力端子から伸びる複数のリード線(分岐線)が合流して束状になったハーネス(信号配線)の先端に接続される。
さらに、この単セルの電圧検出手段は、CAN(Controller Area Network)等の車載LANの共通回路に接続されて、検出した各セルのセル電圧の結果をメッセージ化してCANバスに送信し、燃料電池の発電状態の監視や故障の有無やその位置を特定するのに利用される(例えば、特許文献1〜2参照)。
【特許文献1】特開2000−223141号公報
【特許文献2】特開平11−339828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、単セルの電圧検出手段と単セルの出力端子とを連結するハーネス(信号配線)は、車両を構成する部品の一つとして、燃料電池の筐体に対し堅固に支持される必要がある。また、この信号配線は、数十から数百のリード線の集合体であって、フラットな形状を有する繊細な精密部品であり、取り扱いには慎重を要するものである。
【0006】
このために、そのような信号配線を燃料電池の筐体に専用クリップのような構造部材を介して留めるとなると、専用クリップの構造体が筐体の表面から突起して占有スペースを拡げたり、低コスト化を妨げたり、車両組み立ての簡便性を低下させたりする問題がある。
本発明は、前記した問題を解決することを課題とし、電池セルの個別の起電力を検出するための信号配線を、占有スペースを拡げることなく、車両(移動体)搭載用組電池に対して簡便にかつ堅固に支持させる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために本発明の移動体搭載用組電池は、起電力を発生する複数の電池セルが配列して電力を供給する組電池と、それぞれの前記電池セルにおける個別の起電力を検出する電圧検出手段と、前記電池セル及び前記電圧検出手段を連結し前記個別の起電力を導く信号配線と、前記組電池を内部に収納するとともに前記信号配線に連結する前記電池セルの出力端子を露出させる筐体と、係合する複数の突起により着脱自在に構成されるとともに前記筐体に対して前記信号配線を支持する面ファスナとを、備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成により、移動体搭載用組電池(例えば、燃料電池や、二次電池)の筐体に対して着脱自在に貼着する面ファスナの機能に基づいて、信号配線(ハーネス)は、筐体に支持したり外したりすることが簡便に行える。すなわち、面ファスナを筐体から外した状態で、信号配線を筐体の所定位置に配置し、それから面ファスナを筐体に貼着すれば、信号配線は筐体に支持されることになる。また、信号配線を筐体から外す場合は、面ファスナを筐体から脱離すればよいことになる。
また、この面ファスナは薄くて、しなやかで、機械的強度も優れるので、筐体の表面から突起することなく信号配線を堅固に支持することができる。
【0009】
さらに発明は、前記信号配線が、複数の前記出力端子にそれぞれ装着する装着部材と、前記装着部材から伸びるそれぞれの分岐線が束状に一体化してなる束状体と、前記束状体が前記出力端子の配列幅に対して幅狭方向に集束してなる集束体と、前記集束体から延出して前記検出手段に連結する延長結線とを、備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成により、組電池の天地方向の上面に電圧検出手段が配置され、側面に出力端子が配列する燃料電池の構造において、筐体の表面に大部分を密着させて信号配線を配置させることができる。
【0011】
さらに発明は、前記筐体が、前記組電池の天地方向の上面及び下面にそれぞれ対向配置される上面フレーム及び下面フレームと、前記電池セルの積層方向に前記組電池を挟んで対向する一対の端面フレームと、前記上面フレーム及び下面フレーム並びに前記一対の端面フレームの対向方向と直交する方向に対向するとともに前記出力端子を露出する開口が形成される側面フレームとを、備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成により、筐体は、出力端子が露出する開口を除き、組電池をほぼ隙間無く包容する直方体の構成となり、筐体の表面に大部分を密着させて信号配線を堅固に支持することができる。
【0013】
さらに発明は、前記面ファスナが、その両端に二つの前記貼着面が分離して配置されこの分離した前記貼着面の間に前記束状体が位置するとともに、分離した一方の前記貼着面が隣接する二本の前記分岐線の間において前記接着面に貼着することを特徴とする。
【0014】
かかる構成により、信号配線は、二つの貼着面の間に挟まれて支持されるために、幅方向の動きが規制されて堅固に筐体に支持されることになる。
【0015】
さらに発明は、前記面ファスナが、その両端に二つ前記貼着面が分離して配置されこの分離した前記貼着面の間に前記集束体が位置する第1帯状体と、前記第1帯状体から略直交方向に延出するとともに先端に設けられている前記貼着面が隣接する二本の前記分岐線の間において前記筐体に貼着する第2帯状体とを、備えることを特徴とする。
【0016】
かかる構成により、信号配線は、第1帯状体により集束体の幅方向の動きが規制され、第2帯状体により束状体の幅方向の動きが規制され、堅固に筐体に支持されることになる。
【0017】
さらに発明は、前記貼着面が貼着する前記筐体側の接着面のうち、前記束状体よりも上側に位置するものは、前記束状体に沿う長手形状を有し、それよりも下側に位置するものは、前記分岐線に沿う長手形状を有することを特長とする。
【0018】
かかる構成により、面ファスナの貼着面の、筐体の接着面に対する貼着が堅固になる。
【0019】
さらに発明は、前記面ファスナは、前記筐体の天地方向の上面において前記集束体を支持するものであることを特徴とする。
【0020】
かかる構成により、移動体搭載用組電池の上面に位置する信号配線の集束体が堅固に筐体に支持されることになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、移動体搭載用組電池において、組電池の構成要素である複数の電池セルの個別の起電力を検出するための信号配線を、占有スペースを拡げることなく、簡便にかつ堅固に支持する構造が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の移動体搭載用組電池を詳細に説明する。
燃料電池70(移動体搭載用組電池)は、図1の斜視図に示されるように、電圧検出手段10と、信号配線20と、筐体30と、面ファスナ40と、組電池50(図2参照)とから構成されている。このように構成される燃料電池70は、車両(移動体)80(図4参照)を駆動させるのに必要な電力P1を供給するものである。
【0023】
組電池50は、図2に示されるように、複数の単セル51(電池セル)が直列に配列してなり、その側面に配列されている各出力端子52を、開口35から露出させて筐体30(図1参照)に収納されている。
単セル(電池セル)51は、複数(例えば、200〜400)が厚み方向に積層されて、その四方を高剛性の板状の上面フレーム31、下面フレーム32、端面フレーム33,33、側面フレーム34(34A,34B)で狭持される構成を備えている。
【0024】
また、単セル51は、それぞれ図示しない電解質膜と、その両面にそれぞれ配置されるアノード極及びカソード極と、燃料ガス(水素)の流路及び酸化ガス(空気)の流路が設けられているセパレータとを、構成要素とする。
このように構成される単セル51は、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により0.7V程度の起電力を発生するとともに、積層する単セル51が直列に配列してなる燃料電池70は、全体として数百Vの起電力を出力する。
【0025】
出力端子52は、単セル51の境界に位置する前記セパレータに設けられ、隣接する二つの出力端子52の電位差を検出することにより、単セル51の起電力を個別に検出できるようになっている。
また、この出力端子52は、燃料電池70の一方の側面に分離して設けられている側面フレーム34A,34Bの隙間に設けられた開口35から露出するように配置され、信号配線20の装着部材21が装着するように構成されている。
【0026】
電圧検出手段10は、図2に示されるように、入力端子11と、信号処理基板12と、回線端子13とから構成されている。
このように構成される電圧検出手段10は、入力端子11に接続される信号配線20を経由して、それぞれの単セル51のセル電圧信号(電池セル信号)を、検出するものである。なお、検出されるセル電圧は、一つの単セル51のみに限定されず、隣接する数個の単セルの起電力をまとめて検出する場合もある。
さらに、電圧検出手段10は、回線端子13において図示略の車内通信ネットワーク(CAN;Controller Area Network)に接続されて、車両80(図4参照)の制御に必要な情報を提供するものである。
【0027】
信号処理基板12は、入力端子11から入力した複数(出力端子52の個数に相当する数)のセル電圧信号をスキャンして計測するとともに、この計測値をデジタル化して電圧検出手段10の固有の識別子を付加し、回線端子13からパケット出力するものである。
【0028】
なおCAN通信では、パケットに含まれる識別子(ID)により通信の優先度を定義し、通信回線において衝突が発生した場合は、優先度の低い識別子(ID)で定義されたモジュールは送信を止め、優先度の高い識別子(ID)で定義されたモジュールが送信を続けるようになっている。
【0029】
この信号処理基板12及び回線端子13は、図示略とするが、CAN通信に必要なCAN_Hi信号の伝送ライン、CAN_Lo信号の伝送ライン、及び基準電位のGND信号ライン、並びに電圧検出手段10の動作に必要な電力供給ラインを備えている。なおこの電力供給ラインは、図示しない12Vの車載バッテリに連絡している。
【0030】
信号配線20は、装着部材21と、分岐線22と、束状体23と、集束体24と、延長結線25とを備え、それぞれの単セル51(電池セル)の出力端子52及び電圧検出手段10の入力端子11を連結し単セル51の個別の起電力を導くものである。
このように信号配線20が構成されることにより、天地方向の上面に電圧検出手段10が配置され、側面に出力端子52が配列する燃料電池70の構造において、筐体30の表面に大部分を密着させて配置することができるようになる。
このように、信号配線20が筐体30に対して密着配置に適する構成を有することにより、後記する面ファスナ40により堅固に支持されることになる。
【0031】
装着部材21は、信号配線20の末端に位置するものであって、筐体30の側面の開口35から露出する出力端子52に装着される信号接点である。
分岐線22は、それぞれの装着部材21から伸びる信号リード線であり、装着部材21が出力端子52に装着されている状態でたわみを有し、信号配線20が筐体30に支持されている状態で装着部材21及び出力端子52の着脱を容易にしている。
【0032】
束状体23は、装着部材21から伸びる複数の分岐線22が束状に一体化してなるものであって、出力端子52の配列方向に長手方向が揃う帯状の形態を有し、ほぼ全面が筐体30の側面に接するように構成されている。
【0033】
集束体24は、束状体23からその長手方向と直交する方向に延出するものであって、分岐線22及び束状体23から連続する信号リード線が、出力端子52の配列幅に対して幅狭方向に集束してなるものである。
そして、集束体24は、束状体23側の一部が、筐体30の側面に接し、他の部分が筐体30の上面に接するように構成されている。
また集束体24の中央部には縦方向に一条の切欠溝26が設けられており、この切欠溝26から露出する筐体30の一部と後記する面ファスナ40の一部が貼着するようになっている。これにより、信号配線20の筐体30に対する支持がより堅固になるように作用する。
【0034】
延長結線25は、その末端が、集束体24から連続する信号リード線が電圧検出手段10の入力端子11に連結するように構成されている。そして、延長結線25の集束体24から延出する付根部分が第3面ファスナ40Cにより支持されて筐体30に密着し、その他の部分はたわみを有している。このために、信号配線20が筐体30に支持されている状態で、延長結線25の末端と入力端子11との着脱が容易になっている。
なお図面において延長結線25は、集束体24から3つが一層分だけ分岐しているものが例示されているが、信号リード線及び入力端子11の数に応じてさらに多くの延長結線25が多層に分岐している場合もある。
【0035】
筐体30(図1参照)は、図2に示されるように、上面フレーム31と、下面フレーム32と、端面フレーム33,33と、側面フレーム34,34A,34Bとから構成されている。このように構成される筐体30は、その内部に組電池50を収納するとともに、側面に横方向に一条設けられた開口35から組電池50に設けられた出力端子52を露出させている。また、筐体30は、その上部に電圧検出手段10を固定配置している。
これにより、筐体30は、出力端子52が露出する開口35を除き、組電池50をほぼ隙間無く包容する直方体となり、信号配線20の表面の大部分を筐体30に密着させ堅固に支持することができる。
【0036】
上面フレーム31は、組電池50の天地方向の上面に配置されるものであって、断面逆U字形状の上面は燃料電池70の上面を形成し、断面逆U字形状の側面は燃料電池70の側面の一部を形成する。
また、係止ピン62が、上面フレーム31の断面逆U字形状の側面の縁端に設けられ、側面フレーム34,34Aの上方の縁端に設けられている係止穴61を係止して、上面フレーム31及び対向配置する側面フレーム34,34Aを一体化させている。
さらに、固定片63が、上面フレーム31の断面逆U字形状の上面の縁端に設けられ、端面フレーム33の縁端に設けられている固定片63と交互に係合して、さらに貫通軸64が水平方向に貫いて、上面フレーム31及び対向配置する端面フレーム33,33を一体化させている。
【0037】
下面フレーム32は、上面フレーム31と上下対称に対向配置され、同様にして対向配置する側面フレーム34,34B及び対向配置する端面フレーム33,33と一体化している。
側面フレーム34A,34Bは、対になって燃料電池70の片側側面を形成し、両者の境界部分に設けた隙間が開口35を形成している。そして、固定片63が、側面フレーム34,34A,34Bの側方の縁端に設けられ、端面フレーム33の縁端に設けられている固定片63と交互に係合して、さらに貫通軸64が垂直方向に貫いて、側面フレーム34,34A,34B及び対向配置する端面フレーム33,33を一体化させている。
【0038】
面ファスナ40は、図3(a)に示されるように、第1面ファスナ40Aと、第2面ファスナ40Bと、第3面ファスナ40Cの三種類の形態を示し、図3(b)に示されるように、信号配線20を筐体30に密着させた状態で動かないよう堅固に支持するものである。
貼着面42は、図3(b)のX−X断面である図3(c)に示されるように、筐体30の表面の一部に設けられる接着面43に貼着/脱離し、信号配線20を着脱自在に支持するものである。また、貼着面42及び接着面43の貼着/脱離は、図3(d)に示されるように、少なくとも一方に設けられている多数の突起44が関与することにより達成される。
なお図面では、貼着面42及び接着面43の両方に突起44が多数設けられているが、突起44は一方に設けられ、他方にはこの突起44が係合する部材(ワイヤ線)が備えられている場合も含まれる。
ちなみに、貼着面42及び接着面43による着脱原理は、マジックテープ(登録商標)として知られているもののそれと同じである。
【0039】
第1面ファスナ40Aは、図3(a)左側に裏面視した状態が示されており、帯状体41、貼着面42から構成される。そして、貼着面42は、第1面ファスナ40Aの両端に二つに分離して配置され、この間に束状体23が位置するように構成される。
【0040】
そして、図3(c)に示されるように、第1面ファスナ40Aの上方の先端に設けられている貼着面42が上面フレーム31に設けられている接着面43に貼着し、下方の先端に設けられている貼着面42が、側面フレーム34A上で隣接する二本の分岐線22(図3(b)参照)の間に設けられている接着面43に貼着するように構成される。
これにより、束状体23は、二つの貼着面42の間に挟まれてかつ帯状体41により押圧力を受けて筐体30に対して支持されるために、幅方向の動き及びばたつきが規制されて堅固に支持されることになる。
【0041】
第2面ファスナ40Bは、図3(a)中央に裏面視した状態が示されており、第1帯状体41Aと、第2帯状体41Bと、貼着面42から構成される。
このように第2面ファスナ40Bが構成されることにより、図3(b)に示すように、信号配線20は、第1帯状体41Aにより集束体24の幅方向の動きが規制され、第2帯状体41Bにより束状体23の幅方向の動きが規制され、堅固に筐体30の側面に支持されることになる。
【0042】
第1帯状体41Aは、その両端に二つ貼着面42が分離して配置されこの分離した貼着面42の間に集束体24が位置するように構成される。さらに、第1帯状体41Aは、その中央部にも貼着面42が配置され、信号配線20の切欠溝26から露出する接着面43に貼着するようになっている。
これにより、第1帯状体41Aに設けられている貼着面42が上面フレーム31に設けられている接着面43に貼着し、集束体24の幅方向の動き及びばたつきが規制されることになる。
【0043】
第2帯状体41Bは、第1帯状体41Aから略直交方向に延出するとともに先端に設けられている貼着面42が隣接する二本の分岐線22の間において接着面43に貼着するように構成される。
これにより、束状体23は、二つの貼着面42の間に挟まれてかつ帯状体41により押圧力を受けて筐体30に対して支持されるために、幅方向の動き及びばたつきが規制されて堅固に支持されることになる。
【0044】
第3面ファスナ40Cは、図3(a)右側に裏面視した状態が示されており、第1帯状体41Aと、第2帯状体41Bと、貼着面42を有し、図1に示すように、燃料電池70の天地方向の上面において信号配線20の集束体24の部分を支持するものである。
この第3面ファスナ40Cの第1帯状体41Aは、筐体30の上面において集束体24の幅方向の動き及びばたつきを規制し、第2帯状体41Bは、延長結線25(図2参照)の付根部分において信号配線20を支持する。
【0045】
接着面43は、束状体23よりも上側に位置するものは、この束状体23に沿う長手形状を有している。また接着面43のうち束状体23よりも下側に位置するものは、分岐線22に沿う長手形状を有している。このように構成されることにより、面ファスナ40の貼着面42の、筐体30における接着面43に対する貼着がより堅固になる。
【0046】
次に、燃料電池70の組立手順について説明すると、面ファスナ40を筐体30から外した状態で、信号配線20を筐体30の所定位置に配置し、それから面ファスナ40を筐体30に貼着させれば、信号配線20は筐体30に堅固に支持されることになる。
このように、信号配線20を筐体30に支持した後で、装着部材21を出力端子52に装着させたり、延長結線25を電圧検出手段10の入力端子11に接続したりする。
また、信号配線20を筐体30から外す場合は、装着部材21及び延長結線25の接続を外した上で、面ファスナ40を筐体30から脱離するだけで簡単に行えることになる。 このように、面ファスナ40(40A,40B,40C)が構成されることにより、燃料電池70の筐体30に対して、信号配線20を堅固に支持するとともにこの面ファスナ40の機能に基づいて、信号配線20の着脱が容易に簡便に行える。また、この面ファスナ40は薄くて、しなやかで、機械的強度も優れるので、筐体30の表面から突起することなく信号配線20を堅固に支持することができる。
【0047】
図4は、本発明に係る移動体搭載用組電池を搭載した車両(移動体)の透視図である。
車両80には、移動体搭載用組電池として燃料電池70及び二次電池70´が示されている。さらに、水素タンク81と、エアコンプレッサ82と、駆動部83とが、搭載されている。
【0048】
そして、水素タンク81からは水素燃料が、エアコンプレッサ82からは空気が送られて、燃料電池70において電気化学反応して発電する。この燃料電池70が発電して出力された電力P1は、電動式モータを備える駆動部83に送られ、車両80に推進力を与える。
【0049】
二次電池70´(移動体搭載用組電池)は、リチウムイオン電池等の充電可能な電池セル(図示せず)を複数配列してなるものである。そして、車両80の起動直後等の燃料電池70の出力不十分な期間に燃料電池70に代わって駆動部83に電力P2を送ったり、車両80走行時に減速するときの運動エネルギーを電気エネルギーに変換して貯蔵したりするものである。
【0050】
この二次電池70´も、電池セル(リチウムイオン電池)における個別の起電力を検出するための電圧検出手段10´が設けられている。
また、これら電池セル(リチウムイオン電池)及びこの電圧検出手段10´を連結し前記個別の起電力を導く信号配線20´を備えている。
さらに、この二次電池70´の筐体に信号配線20´を着脱自在に支持する面ファスナ40´も備えている。
【0051】
これら面ファスナ40,40´は、車両80の信号配線20,20´の取り付け時において、取り外し、取り付けが容易で、作業性に優れる効果が導かれる。さらに、車両80が悪路を走行しても、振動により信号配線20,20´の取り付けが緩むことが無い。
なお、移動体としての車両80は、一例であって、本発明の移動体搭載用組電池は、その他、船舶、二輪車、航空機等の移動体にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る移動体搭載用組電池の実施形態である燃料電池の斜視図である。
【図2】図1の燃料電池の分解斜視図である。
【図3】(a)は面ファスナの裏側の平面図であり、(b)は図1の燃料電池の側面上側の部分拡大図であり、(c)は(b)のX−X断面を示す面ファスナ及び信号配線の束状体の断面図であり、(d)は筐体の接着面及び面ファスナの貼着面が貼着/脱離する様子を示す説明図である。
【図4】本発明に係る移動体搭載用組電池を採用した車両(移動体)の透視図である。
【符号の説明】
【0053】
10,10´ 電圧検出手段
20,20´ 信号配線
21 装着部材
22 分岐線
23 束状体
24 集束体
25 延長結線
30 筐体
31 上面フレーム
32 下面フレーム
33 端面フレーム
34,34A,34B 側面フレーム
35 開口
40,40´,40A 第1面ファスナ(面ファスナ)
40,40´,40B 第2面ファスナ(面ファスナ)
40,40´,40C 第3面ファスナ(面ファスナ)
41A 第1帯状体
41B 第2帯状体
42 貼着面
43 接着面
44 突起
50 組電池
51 単セル(電池セル)
52 出力端子
70 燃料電池(移動体搭載用組電池)
70´ 二次電池(移動体搭載用組電池)
80 車両(移動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起電力を発生する複数の電池セルが配列して電力を供給する組電池と、
それぞれの前記電池セルにおける個別の前記起電力を検出する電圧検出手段と、
前記電池セル及び前記電圧検出手段を連結し個別の前記起電力を導く信号配線と、
前記組電池を内部に収納するとともに前記信号配線に連結する前記電池セルの出力端子を露出させる筐体と、
係合する複数の突起により着脱自在に構成されるとともに前記筐体に対して前記信号配線を支持する面ファスナとを、備えることを特徴とする移動体搭載用組電池。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体搭載用組電池であって、
前記信号配線は、
複数の前記出力端子にそれぞれ装着する装着部材と、
前記装着部材から伸びるそれぞれの分岐線が束状に一体化してなる束状体と、
前記束状体が前記出力端子の配列幅に対して幅狭方向に集束してなる集束体と、
前記集束体から延出して前記電圧検出手段に連結する延長結線とを、備えることを特徴とする移動体搭載用組電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動体搭載用組電池であって、
前記筐体は、
前記組電池の天地方向の上面及び下面にそれぞれ対向配置される上面フレーム及び下面フレームと、
前記電池セルの積層方向に前記組電池を挟んで対向する一対の端面フレームと、
前記上面フレーム及び下面フレーム並びに前記一対の端面フレームの対向方向と直交する方向に対向するとともに前記出力端子を露出する開口が形成される側面フレームとを、備えることを特徴とする移動体搭載用組電池。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の移動体搭載用組電池であって、
前記面ファスナは、
その両端に二つの貼着面が分離して配置されこの分離した前記貼着面の間に前記束状体が位置するとともに、
分離した一方の前記貼着面が隣接する二本の前記分岐線の間において前記筐体に貼着することを特徴とする移動体搭載用組電池。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の移動体搭載用組電池であって、
前記面ファスナは、
その両端に二つ貼着面が分離して配置されこの分離した前記貼着面の間に前記集束体が位置する第1帯状体と、
前記第1帯状体から略直交方向に延出するとともに先端に設けられている前記貼着面が隣接する二本の前記分岐線の間において前記筐体に貼着する第2帯状体とを、備えることを特徴とする移動体搭載用組電池。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の移動体搭載用組電池であって、
前記貼着面が貼着する前記筐体側の接着面のうち前記束状体よりも上側に位置するものは、前記束状体に沿う長手形状を有し、それよりも下側に位置するものは、前記分岐線に沿う長手形状を有することを特長とする移動体搭載用組電池。
【請求項7】
請求項2又は請求項3に記載の移動体搭載用組電池であって、
前記面ファスナは、
前記筐体の天地方向の上面側において前記集束体を支持するものであることを特徴とする移動体搭載用組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−230954(P2009−230954A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72939(P2008−72939)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】