説明

移動体検知器用ヒータ、ヒータ付設型移動体検知器、及び移動体検知器

【課題】安価なコストによって、移動体検知器の保護パネルに発生した結露を除去し、または保護パネルの外側に積雪した雪を融雪する手段を提供する。
【解決手段】本発明に係る移動体検知器は、移動体に光を照射する投光素子441及び投光素子441が投光した光を受光する受光素子の少なくともいずれか一方を収容し光を通過させる第一開口部41aが形成された筐体41と、筐体41の第一開口部41aに設けられて内部を保護する透明な保護パネル42と、筐体41の外側面に装着されるヒータ保持部材51と、ヒータ保持部材51によって保持されて保護パネル42を外部から加熱するヒータ本体と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に光を照射することでその通過を検知する移動体検知器を外部から加熱する移動体検知器用ヒータ、ヒータ付設型移動体検知器、及び移動体検知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路等の有料道路や駐車場等の料金所において、料金の収受を自動化するシステムとしてETC(Electronic Toll Collection System)が導入されている。このETCでは、路側に設置された路側アンテナが車両に搭載された車載器と通信するタイミングを図るために、料金所ゲートへの車両の進入を検知するための移動体検知器(車両検知器)が設置される。この移動体検知器は、いわゆる透過型の光電センサであって、光を照射する投光器とその光を受光する受光器とが、車両通行路を挟んで向かい合って配置されるものである。そして、この移動体検知器によれば、投光器から投光された光が車両によって遮断されると受光器での受光量レベルが低下することにより、車両の通過が検知される。
【0003】
ここで、移動体検知器を構成する投光器及び受光器は、光を照射するための投光素子または光を受光するための受光素子が、筐体の内部に収容されることで構成される。ここで、この筐体には、光を通過させるための開口部が形成されるとともに、内部の投光素子や受光素子を保護しつつ光を透過させるように、開口部を封止して透明な保護パネルが設けられる(例えば、特許文献1を参照)。従来、この透明な保護パネルとしては、ガラス板が用いられてきた。しかし、ガラスは熱伝導率が高く、筐体の内外温度差を顕著に反映することでその内側面と外側面とで温度差が生じやすいため、結露が発生しやすい。そこで、この保護パネルに発生した結露を除去する手段、或いは保護パネルの外側に積雪した雪を融雪する手段として、保護パネルを加熱する移動体検知器用ヒータが用いられる。そして、この移動体検知器用ヒータは、いわゆるデフロスタ(霜取り)機能付きのガラス板に内蔵される電熱線として従来構成されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−123603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、透明な保護パネルとして用いるガラス板は、熱伝導率が高く、筐体の内外温度差を顕著に反映することでその内側面と外側面とで温度差が生じやすいため、結露が発生しやすい。そこで、この保護パネルに発生した結露を除去する手段、或いは保護パネルの外側に積雪した雪を融雪する手段として、保護パネルを加熱する移動体検知器用ヒータが用いられる。そして、この車両検知起用ヒータは電熱線として構成され、この電熱線をガラス板に内蔵させることによって、いわゆるデフロスタ(霜取り)機能付きのガラス板として保護パネルが構成される。しかし、このように電熱線を内蔵したデフロスタ機能付きのガラス板は高価であるため、移動体検知器の製造コストが増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、安価なコストによって、移動体検知器の保護パネルに発生した結露を除去し、または保護パネルの外側に積雪した雪を融雪する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る移動体検知器用ヒータは、移動体に光を照射する投光素子及び前記投光素子が照射した光を受光する受光素子の少なくともいずれか一方を収容し光を通過させる開口部が形成された筐体と、前記筐体の開口部に設けられて内部を保護する透明な保護パネルと、を備える移動体検知器の前記保護パネルを加熱するための移動体検知器用ヒータであって、前記保護パネルを外部から加熱するヒータ本体と、前記ヒータ本体を保持して前記筐体に取り付けられるヒータ保持部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、ヒータ保持部材によって保持されたヒータ本体によって保護パネルを外部から加熱することにより、保護パネルに発生した結露を除去し、または保護パネルの外側に積雪した雪を融雪することができる。これにより、高価なデフロスタ機能付きのガラス板で保護パネルを構成するのではなく、安価な通常のガラス板で保護パネルを構成することができるので、安価なコストにて移動体検知器を製造することができる。
【0009】
また、本発明に係る移動体検知器用ヒータは、前記ヒータ保持部材が、前記筐体に対して着脱可能であることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、移動体検知器用ヒータを構成するヒータ保持部材を、移動体検知器を構成する筐体に装着することにより、保護パネルを加熱する機能を持つ寒冷地仕様として移動体検知器を構成することができる。一方、ヒータ保持部材を筐体から取り外すことにより、保護パネルを加熱する機能を持たない標準地仕様として移動体検知器を構成することができる。これにより、寒冷地仕様と標準地仕様との間で移動体検知器を共通化することができるので、寒冷地仕様の場合のみ保護パネルをデフロスタ機能付きのガラス板で構成する場合と比較すると、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る移動体検知器用ヒータは、前記ヒータ本体と前記ヒータ保持部材との間に、スペーサが介在されたことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、スペーサが介在された分だけ、ヒータ本体の熱はヒータ保持部材へと伝わりにくい。これにより、ヒータ保持部材の表面が高温になってこれに触れた使用者が火傷することを未然に防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る移動体検知器用ヒータは、前記ヒータ本体と前記保護パネルとの間に、前記保護パネルより熱伝導率の高い部材で形成された被加熱部材が介在されたことを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、ヒータ本体が保護パネルより熱伝導率の高い部材からなる被加熱部材を加熱するので、保護パネルを加熱する場合と比較して、ヒータ本体の熱がより広い領域に拡散する。従って、被加熱部材を介して保護パネルを加熱することにより、保護パネルを直接的に加熱する場合と比較して、保護パネルのより広い領域に渡って均一に熱を行き渡らせることができる。
【0015】
また、本発明に係る移動体検知器用ヒータは、前記スペーサが、前記被加熱部材より熱伝導率の低い部材で形成されることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、ヒータ本体の熱は、熱伝導率が相対的に低い部材で形成されるスペーサの側よりも、熱伝導率が相対的に高い部材で形成される被加熱部材の側へ伝わりやすい。これにより、ヒータ本体によって保護パネルを効率良く加熱することができるとともに、ヒータ保持部材の表面が高温になってこれに触れた使用者が火傷することを未然に防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る移動体検知器用ヒータは、前記スペーサが、前記保護パネルと同じ部材で形成されることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、同じ部材からスペーサ及び保護パネルの両方を形成することができるので、スペーサ及び保護パネルの製造コストの低減化を図ることができる。
【0019】
また、本発明に係る移動体検知器用ヒータは、前記ヒータ本体は、その高さ方向に沿って下部の熱容量が上部の熱容量よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、移動体検知器は、その高さ方向に沿って上部より下部の方がヒータ本体によってより強く加熱される。これにより、冷たい空気が滞留しやすく保護パネルに結露が生じやすい下部についても、発生した結露を確実に除去することができる。
【0021】
また、本発明に係るヒータ付設型移動体検知器は、移動体に光を照射する投光素子及び前記投光素子が投光した光を受光する受光素子の少なくともいずれか一方を収容し光を通過させる開口部が形成された筐体と、前記筐体の開口部に設けられて内部を保護する透明な保護パネルと、前記筐体の外側面に装着されるヒータ保持部材、及び前記ヒータ保持部材によって保持されて前記保護パネルを外部から加熱するヒータ本体を有するヒータと、を備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、ヒータ保持部材によって保持されたヒータ本体によって保護パネルを外部から加熱することにより、保護パネルに発生した結露を除去し、または保護パネルの外側に積雪した雪を融雪することができる。これにより、高価なデフロスタ機能付きのガラス板で保護パネルを構成するのではなく、安価な通常のガラス板で保護パネルを構成することができるので、安価なコストにてヒータ付設型移動体検知器を製造することができる。
【0023】
また、本発明に係る移動体検知器は、移動体に光を照射する投光素子及び前記投光素子が投光した光を受光する受光素子の少なくともいずれか一方を収容し光を通過させる開口部が形成された筐体と、前記筐体の開口部に設けられて内部を保護する透明な保護パネルと、を備える移動体検知器であって、前記保護パネルは、熱伝導率がガラスより低く、且つ、透過率がガラスより高い部材で形成されていることを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、保護パネルは熱伝導率がガラスより低い部材で形成されているため、筐体の外部の気温が低下しても保護パネルの温度は低下しにくく、従って保護パネルに結露は生じにくい。また、保護パネルは透過率がガラスより高い部材で形成されているため、保護パネルがガラスで形成されている場合と比較して、より高い精度で移動体を検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る移動体検知器用ヒータによれば、安価なコストによって、移動体検知器の保護パネルに発生した結露を除去し、または保護パネルの外側に積雪した雪を融雪することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態に係る移動体検知器ユニットの外観を示す概略斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面を示す概略斜視図である。
【図3】車両検知器用ヒータを取り外した状態の車両検知器を示す概略斜視図である。
【図4】車両検知器用ヒータを内側から見た状態を示す概略斜視図である。
【図5】第二実施形態に係るヒータ本体の長手方向一端部を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第一実施形態に係る車両検知器(移動体検知器)及び車両検知器用ヒータ(移動体検知器用ヒータ)の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両検知器ユニット1の外観を示す概略斜視図である。
【0028】
車両検知器ユニット1は、図1に示すように、車両通行路Sを挟んで相対向する一対の投光器2(ヒータ付設型移動体検知器)及び受光器3(ヒータ付設型移動体検知器)を備えるものである。
【0029】
投光器2は、車両通行路Sを走行する車両(移動体)に対して光を照射する役割を果たすものである。ここで、図2は、図1におけるA−A断面を示す概略斜視図である。投光器2は、図2に示すように、車両検知器4と、それに装着された車両検知器用ヒータ5とを有している。
【0030】
車両検知器4は、光を発するという投光器2本来の役割を果たすものである。ここで、図3は、車両検知器用ヒータ5を取り外した状態の車両検知器4を示す概略斜視図である。車両検知器4は、図2及び図3に示すように、前面に第一開口部41aが形成された筐体41と、筐体41の第一開口部41aを封止して設けられた保護パネル42と、保護パネル42の表面を覆って設けられた被加熱部材43と、筐体41の内部に収容された投光素子保持体44とを備えるものである。尚、図3では被加熱部材43の図示を省略している。
【0031】
筐体41は、ステンレス等の熱伝導率が比較的高い材質からなり、図2に示すように、略矩形の断面形状を有している。そして、この筐体41の前面すなわち車両通行路Sの側の面には、その一部を切り欠くことによって略矩形の第一開口部41aが形成されている。また、筐体41の両側面には、ヒータを固定するためのヒータ固定部41bがそれぞれ突出して設けられている。
【0032】
保護パネル42は、筐体41の第一開口部41aを封止して内部に収容された投光素子保持体44を保護する役割を果たすものである。この保護パネル42は、アクリル樹脂等の透明な材質からなる略矩形の平板部材であって、図2及び図3に示すように、その幅は筐体41の幅と略等しく、その高さは筐体41の高さと略等しく形成されている。そして、このように構成される保護パネル42は、筐体41の前面に対して外側から固定される。これにより、保護パネル42によって筐体41の第一開口部41aが封止される。
【0033】
尚、保護パネル42の材質は、熱伝導率がガラスより低く、且つ、光の透過率がガラスより高い材質であれば足り、本実施形態のアクリル樹脂に限定されず、他の合成樹脂等であってもよい。また、保護パネル42は必ずしも第一開口部41aを封止する必要はない。
【0034】
被加熱部材43は、車両検知器用ヒータ5に加熱されてその熱を保護パネル42に伝達する役割を果たすものである。この被加熱部材43は、筐体41と同様にステンレス等の熱伝導率が高い材質からなる板状の部材であって、図2に示すように、その幅は筐体41の幅より広く、その高さは筐体41の高さと略等しく形成されている。そして、この被加熱部材43の幅方向中央部には、その一部を切り欠くことによって略矩形の第二開口部43aが形成されている。また、被加熱部材43の幅方向両端部には、断面略L字形状を有する第一筐体固定部43bがそれぞれ設けられている。
【0035】
そして、このように構成される被加熱部材43は、図2に示すように、保護パネル42に対して外側から密着して配置され、その幅方向両端部に設けられた第一筐体固定部43bが筐体41の幅方向両端部に設けられたヒータ固定部41bに対してボルト等によりそれぞれ固定されている。これにより、被加熱部材43の第二開口部43aを通して保護パネル42が露呈した状態となっている。
【0036】
尚、被加熱部材43は本発明に必須の構成ではなく、車両検知器用ヒータ5によって保護パネル42を直接加熱することも可能である。
【0037】
投光素子保持体44は、光を発する投光素子を保持する役割を果たすものである。この投光素子保持体44は、図2及び図3に示すように、その長さは筐体41の長さより若干短く形成されている。また、この投光素子保持体44の一側面には、その長手方向に沿って所定間隔で、複数の投光素子441が一列に並んだ状態で配置されている。そして、このように構成される投光素子保持体44は、投光素子441が配置された一側面を第一開口部41aの側に向けるようにして、筐体41の内部に収容されている。
【0038】
車両検知器用ヒータ5は、車両検知器4の保護パネル42を加熱する役割を果たすものである。ここで、図4は、車両検知器用ヒータ5を内側から見た状態を示す概略斜視図である。車両検知器用ヒータ5は、図2及び図4に示すように、ヒータ保持部材51と、その内側に取り付けられたスペーサ52と、更にその内側に取り付けられたヒータユニット53とを備えるものである。
【0039】
ヒータ保持部材51は、ヒータユニット53を保持する役割を果たすものである。このヒータ保持部材51は、ステンレス等の熱伝導率が高い材質からなる板状の部材であって、図2に示すように、その幅は被加熱部材43の幅より若干広く、その高さは筐体41の高さと略等しく形成されている。そして、このヒータ保持部材51の幅方向中央部には、その一部を切り欠くことによって略矩形の第三開口部51aが形成されている。また、ヒータ保持部材51の幅方向両端部には、断面略L字形状を有する第二筐体固定部51bがそれぞれ設けられている。
【0040】
スペーサ52は、ヒータユニット53からヒータ保持部材51への伝熱を阻止する役割を果たすものである。このスペーサ52は、保護パネル42と同様にアクリル樹脂等の透明な材質からなる平板部材であって、図2及び図4に示すように、その幅は筐体41の幅と略等しく、その高さは筐体41の高さと略等しく形成されている。そして、このスペーサ52の幅方向中央部には、その一部を切り欠くことによって略矩形の第四開口部52aが形成されている。そして、このように構成されるスペーサ52は、図2及び図4に示すように、その第四開口部52aの位置を第三開口部51aの位置に合致させるようにして、ヒータ保持部材51の内側面に固定されている。
【0041】
尚、スペーサ52の材質は、熱伝導率が被加熱部材43より低い材質であれば足り、本実施形態のアクリルに限定されず、他の合成樹脂等であってもよい。
【0042】
ヒータユニット53は、発熱して被加熱部材43を加熱する役割を果たすものである。このヒータユニット53は、図2及び図4に示すように、発熱するヒータ本体531と、このヒータ本体531の取り付けに使用するヒータ取付板532とが一体化されたものである。
【0043】
ここで、ヒータ本体531は略矩形の平板部材であって、その幅はスペーサ52の幅より若干狭く、その高さは筐体41の高さと略等しく形成されている。また、このヒータ本体531の幅方向中央部には、その一部を切り欠くことによって略矩形の第五開口部531aが形成されている。そして、図4に破線で示すように、ヒータユニット53における第五開口部531aを挟んだ両側には、長手方向に沿って一直線状に延びるようにして、電熱線531bがそれぞれ内蔵されている。
【0044】
一方、ヒータ取付板532は、ステンレス等の熱伝導率が高い材質からなる平板部材であって、図2に示すように、その幅はスペーサ52の幅と略等しく、その高さは筐体41の高さと略等しく形成されている。また、このヒータ取付板532の幅方向中央部には、その一部を切り欠くことによって略矩形の第六開口部532aが形成されている。
【0045】
そして、このように構成されるヒータユニット53は、ヒータ本体531の第五開口部531aの位置とヒータ取付板532の第六開口部532aの位置とを第四開口部52aの位置にそれぞれ合致させるようにして、スペーサ52の内側面に固定されている。
【0046】
以上のように構成される車両検知器用ヒータ5は、図2に示すように、車両検知器4に対して外側から装着される。より詳細に説明すると、車両検知器用ヒータ5は、そのヒータ本体531を車両検知器4の被加熱部材43に密着させるようにして配置されるとともに、そのヒータ保持部材51の第二筐体固定部51bが、被加熱部材43の第一筐体固定部43bに重ね合わせた状態でボルト等によりそれぞれ固定される。
【0047】
他方、移動体検知器ユニットを構成する受光器3は、図1に示すように、車両検知器4と車両検知器用ヒータ5とを有する点で投光器2と同じであるが、車両検知器4の構成が投光器2とは異なっている。すなわち、受光器3の車両検知器4は、図に詳細は示さないが、投光素子保持体44に代えて受光素子保持体をその内部に収容している。そして、この受光素子保持体の一側面には、長手方向に沿って所定間隔で複数の受光素子が一列に並んだ状態で配置されている。尚、それ以外の構成については投光器2と同じであるため、投光器2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0048】
次に、本発明の第一実施形態に係る車両検知器4及び車両検知器用ヒータ5の作用効果について説明する。図1に示す投光器2と受光器3との間を車両が通過しない間は、投光器2の投光素子441から照射された光の大部分が、受光器3の受光素子によって受光される。一方、車両通行路Sを走行する車両(不図示)が投光器2と受光器3との間を通過すると、投光器2から照射された光が車両によって遮られるため、受光器3における受光量レベルが低下する。この受光量レベルの低下に基づいて、車両検知器ユニット1は車両の通過を検知する。
【0049】
また、外気温の低下等によって図2に示す投光器2を構成する筐体41の内外気温差が大きくなると、車両検知器4の保護パネル42に結露が生じやすくなる。しかし、本実施形態では、保護パネル42の材質を熱伝導率が低いアクリル樹脂としているため、外気温の低下が保護パネル42に伝わりにくく、保護パネル42と筐体41の内部との間で温度差が生じにくい。従って、保護パネル42の材質がガラスである場合と比較すると、保護パネル42に結露が生じにくいという利点がある。
【0050】
しかし、このように保護パネル42の材質をアクリル樹脂としても、環境条件によっては保護パネル42に結露が生じる場合がある。また、降雪によって保護パネル42の外側に雪が積もる場合もある。これらの場合、受光器3における受光量レベルが低下するため、車両検知器ユニット1による車両の検知精度が低下する。従って、検知精度を良好に維持するためには、保護パネル42に生じた結露を除去し、または積もった雪を融雪する必要がある。
【0051】
この場合、ユーザは、図2に示す車両検知器用ヒータ5のヒータ本体531を作動させる。そうすると、ヒータ本体531の外側に位置するスペーサ52が、ヒータ本体531の内側に位置するステンレス製の被加熱部材43より熱伝導率の低いアクリル樹脂によって形成されているため、ヒータ本体531が発する熱の多くが被加熱部材43へ伝熱する。従って、ヒータ本体531によって、被加熱部材43を介して保護パネル42を効率良く加熱することができるとともに、ヒータ保持部材51が加熱されて高温になることがないため、ヒータ保持部材51に触れたユーザが火傷することを未然に防止することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ヒータ本体531で保護パネル42を直接的に加熱するのではなく、被加熱部材43を介して間接的に保護パネル42を加熱している。従って、ヒータ本体531が発する熱は、熱伝導率の高いステンレス製の被加熱部材43の広い領域に伝熱し、これにより保護パネル42の広い領域に伝熱する。これにより、ヒータ本体531で保護パネル42を直接的に加熱する場合と比較すると、保護パネル42のより広い領域が均一に加熱されるため、結露の除去や雪の融雪をより確実に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、保護パネル42とスペーサ52とを同じ材質であるアクリル樹脂で形成している。従って、保護パネル42とスペーサ52とを別々の材質で形成する場合と比較して、材料の大量購入によってコストダウンを図ることができる。
【0054】
また、本実施形態では、車両検知器用ヒータ5を車両検知器4に対して着脱可能に構成している。従って、保護パネル42の加熱が必要な寒冷地においては、車両検知器用ヒータ5を車両検知器4に対して装着することにより、寒冷地仕様として車両検知器4を構成することができる。一方、保護パネル42の加熱が不要な標準地においては、車両検知器用ヒータ5を車両検知器4から取り外すことにより、標準地仕様として車両検知器4を構成することができる。従って、寒冷地仕様と標準地仕様との間で車両検知器4の構成を共通化することができるので、寒冷地仕様の場合のみ保護パネル42をデフロスタ機能付きのガラス板で構成する場合と比較すると、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0055】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る車両検知器ユニットの構成について説明する。第二実施形態に係る車両検知器ユニットは、第一実施形態と比較すると、車両検知器用ヒータを構成するヒータ本体の構成だけが異なっている。車両検知器用ヒータのそれ以外の構成、及び車両検知器の構成については第一実施形態と同じであるため、同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。
【0056】
ここで、図5は、第二実施形態に係るヒータ本体54の長手方向一端部を示す概略平面図である。本実施形態のヒータ本体54は、その幅方向中央部を切り欠くことによって略矩形の第七開口部54aが形成されている点で第一実施形態と同様である。しかし、本実施形態のヒータ本体54は、内蔵される電熱線54bの単位面積当たりの密度が長手方向に向かって徐々に変化するように設定されている点で、第一実施形態とは異なっている。
【0057】
より詳細に説明すると、本実施形態のヒータ本体54は長手方向一端部に、電熱線54bの密度が比較的高い中密度領域541と、電熱線54bの密度が更に高い高密度領域542とが設けられている。
【0058】
ヒータ本体54の中密度領域541では、電熱線54bがジグザグ状に、より詳細には長手方向に沿う方向だけでなく、長手方向に略直交する方向にも延びるように配線されている。これにより、長手方向に沿って電熱線531bが一直線状に延びる第一実施形態と比較すると、単位面積当たりの電熱線54bの密度が高くなっている。
【0059】
ヒータ本体54の高密度領域542には、幅広な拡幅部543が形成されるとともに、幅方向に電熱線54bがジグザグ状に、より詳細には、電熱線54bが適宜折り返されることによって、長手方向に略直交する方向へ狭い間隔で互いに平行するように配線されるとともに、その一部分は狭い間隔で波打つような形状に配線されている。これにより、この高密度領域542では、単位面積当たりの電熱線54bの密度が、中密度領域541より更に高くなっている。
【0060】
そして、このように構成されるヒータ本体54は、その長手方向一端側の中密度領域541及び高密度領域542が筐体41の下部に対向するようにして、すなわちヒータ本体54の上部から下部に向けて電熱線54bの密度が徐々に高くなるようにして、車両検知器4に対して装着される。このような構成によれば、冷たく重い空気が下方へ滞留することにより、保護パネル42の熱容量は上部より下部の方が大きくなるが、それに応じて保護パネル42の上部より下部の方が強く加熱されるので、保護パネル42の全体に渡って結露の除去や雪の融雪を確実に行うことができる。
【0061】
尚、本実施形態では車両検知器ユニット1がいわゆる透過型の光電センサを構成する場合について説明したが、これに代えて、車両検知器ユニット1がいわゆる反射型の光電センサを構成してもよい。すなわち、本実施形態では投光器2が投光素子441だけを保持し、受光器3が受光素子だけを保持したが、これに代えて、投光器2が投光素子441と受光素子の両方を保持し、車両によって反射されて戻ってきた光を受光素子で受光することによって車両の通過を検知してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、検知すべき移動体が車両である場合を例に説明したが、この車両としては自動車、二輪車、電車等が挙げられる。また、本発明に係る移動体は、本実施形態の車両に限られず、飛行機、船、人間、動物等であってもよい。
【0063】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両検知器ユニット
2 投光器
3 受光器
4 車両検知器
41 筐体
41a 第一開口部
41b ヒータ固定部
42 保護パネル
43 被加熱部材
43a 第二開口部
43b 第一筐体固定部
44 投光素子保持体
441 投光素子
5 車両検知器用ヒータ
51 ヒータ保持部材
51a 第三開口部
51b 第二筐体固定部
52 スペーサ
52a 第四開口部
53 ヒータユニット
531 ヒータ本体
531a 第五開口部
531b 電熱線
532 ヒータ取付板
532a 第六開口部
54 ヒータ本体
541 中密度領域
542 高密度領域
543 拡幅部
54a 第七開口部
54b 電熱線
S 車両通行路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に光を照射する投光素子及び前記投光素子が照射した光を受光する受光素子の少なくともいずれか一方を収容し光を通過させる開口部が形成された筐体と、前記筐体の開口部に設けられて内部を保護する透明な保護パネルと、を備える移動体検知器の前記保護パネルを加熱するための移動体検知器用ヒータであって、
前記保護パネルを外部から加熱するヒータ本体と、
前記ヒータ本体を保持して前記筐体に取り付けられるヒータ保持部材と、
を備えることを特徴とする移動体検知器用ヒータ。
【請求項2】
前記ヒータ保持部材が、前記筐体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の移動体検知器用ヒータ。
【請求項3】
前記ヒータ本体と前記ヒータ保持部材との間に、スペーサが介在されたことを特徴とする請求項1または2に記載の移動体検知器用ヒータ。
【請求項4】
前記ヒータ本体と前記保護パネルとの間に、前記保護パネルより熱伝導率の高い部材で形成された被加熱部材が介在されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の移動体検知器用ヒータ。
【請求項5】
前記スペーサが、前記被加熱部材より熱伝導率の低い部材で形成されることを特徴とする請求項4に記載の移動体検知器用ヒータ。
【請求項6】
前記スペーサが、前記保護パネルと同じ部材で形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の移動体検知器用ヒータ。
【請求項7】
前記ヒータ本体は、その高さ方向に沿って下部の熱容量が上部の熱容量よりも大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の移動体検知器用ヒータ。
【請求項8】
移動体に光を照射する投光素子及び前記投光素子が投光した光を受光する受光素子の少なくともいずれか一方を収容し光を通過させる開口部が形成された筐体と、
前記筐体の開口部に設けられて内部を保護する透明な保護パネルと、
前記筐体の外側面に装着されるヒータ保持部材、及び前記ヒータ保持部材によって保持されて前記保護パネルを外部から加熱するヒータ本体を有するヒータと、
を備えることを特徴とするヒータ付設型移動体検知器。
【請求項9】
移動体に光を照射する投光素子及び前記投光素子が投光した光を受光する受光素子の少なくともいずれか一方を収容し光を通過させる開口部が形成された筐体と、前記筐体の開口部に設けられて内部を保護する透明な保護パネルと、を備える移動体検知器であって、
前記保護パネルは、熱伝導率がガラスより低く、且つ、透過率がガラスより高い部材で形成されていることを特徴とする移動体検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−16431(P2013−16431A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150095(P2011−150095)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】