移動体無線通信システムおよび無線通信方法
【課題】コグニティブ無線方式の移動体無線通信システムにおいて、空き状態の周波数を短時間で検出可能とする技術を提供する。
【解決手段】データベース装置が、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを保持し、車載端末は使用上テーブルに基づいて、現在時刻かつ現在位置において空き状態である確率が最も高い周波数帯を取得し、この周波数帯を用いて無線通信を行う。上記の使用状況テーブルは、各車両をプローブカーとして用いて、種々の場所および時刻での周波数帯の使用状況をデータベース装置が取得し、統計処理によって作成することが好適である。
【解決手段】データベース装置が、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを保持し、車載端末は使用上テーブルに基づいて、現在時刻かつ現在位置において空き状態である確率が最も高い周波数帯を取得し、この周波数帯を用いて無線通信を行う。上記の使用状況テーブルは、各車両をプローブカーとして用いて、種々の場所および時刻での周波数帯の使用状況をデータベース装置が取得し、統計処理によって作成することが好適である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信に利用できる周波数帯の逼迫に対処するために、コグニティブ無線(認知無線)の研究・開発が進められている。コグニティブ無線の基本的な考え方は、無線端末に周辺の電波環境を認識・認知する機能を持たせ、周囲の電波環境に応じて無線通信に利用する周波数や方式を選択することで、周波数の利用効率を高めようとするものである。コグニティブ無線端末は、具体的には、周辺の電波環境を認識するために各周波数帯をスキャンして利用状況を検出し、使用可能な周波数帯を利用する。これにより、論理的には全ての周波数帯を利用して、周波数利用効率の良い無線通信が行える。
【特許文献1】特開2007−300419号公報
【特許文献2】特開2000−207679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コグニティブ無線を、車両のように高速で移動する移動体からなる無線ネットワークで用いる場合には、以下のような問題がある。
【0004】
コグニティブ無線では無線接続の前に周波数帯の未使用部分を取得するために、周波数帯のスキャンが必要となる。この周波数帯のスキャンにはある程度の時間を要する。一方、車両のように高速で移動する移動体では、通信を即座に開始できることが必要となる。即座に通信を開始できなければ、車両の高速移動により通信相手との距離が離れてしまったり、時間が経過してしまったために通信しようとしていた情報が古くなってしまうためである。
【0005】
現状では、広い周波数帯をリアルタイムにスキャニングすることが困難であるため、コグニティブ無線を高速で移動する移動体に適用することが困難である。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、移動体無線通信システムにおいて、空き状態の周波数帯を短い時間で検出可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によって無線通信を行う。
【0008】
本発明に係る移動体無線通信システムは、複数の移動端末とデータベース装置とから構成され、移動端末が利用可能な周波数帯を選択して無線通信を行うものである。なお、本明細書において移動端末とはノートパソコン、PDA、携帯電話機のようにその端末装置自体を持ち運び可能なものの他、端末装置自体は自動車等に固定されているが、設置された対象(自動車等)が移動体であるために移動可能なものを含む。また、本明細書においてデータベース装置とは、外部からデータの入力を受け付け、それを蓄積し、蓄積されたデータに対して処理を行うことができる装置を指す。このデータベース装置は、物理的に単一のコンピュータから構成されても、ネットワーク的に分散された複数のコンピュータが連携することによって構成されても構わない。
【0009】
本発明におけるデータベース装置は、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを保持している。そして、移動端末は、データベース装置からこの使用状況テーブルを取得し、これに基づいて、無線通信を行おうとする時点およびその時点での自端末の位置において空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う。
【0010】
使用状況テーブルには、位置ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率が含まれるので、移動端末は現在位置および現時点において、各周波数帯ごとに空き状態である確率を判断できる。そこで、移動端末は空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う。つまり、空き状態である確率が高い周波数帯を実際にスキャンして、実際に空き状態であればその周波数帯を用いて無線通信を行う。ここで、空き状態である確率が最も高い確率の周波数帯を選択しても良いし、所定の確率以上の任意の周波数帯を選択しても構わない。
【0011】
このように、移動端末は、使用状況テーブルに基づいて空き状態である確率の高い周波数帯を知ることができるので、あらかじめ決められた順序で周波数帯をスキャンして空き状態の周波数帯を検出する場合よりも、スキャン時間を短縮することができる。
【0012】
本発明における使用状況テーブルは、以下の手段および処理によって作成することが好適である。本発明における複数の移動端末は、それぞれ、各周波数帯が使用中か空き状態かを検出する使用状況検出手段と、自端末の位置情報を取得する位置情報取得手段と、使用状況検出手段によって取得された周波数帯の使用状況を、自端末の位置情報とともにデータベース装置に送信する送信手段とを有することが好適である。また、本発明におけるデータベース装置は、各移動端末から周波数帯の使用状況と位置情報とを受信し蓄積する受信手段と、受信された各周波数帯の使用状況と位置情報とから、前記使用状況テーブルを作成する解析手段とを有することが好適である。
【0013】
上記手段を有する各移動端末は、所定のタイミングで、任意の周波数帯のスキャンを行い、その結果を位置情報と共にデータベース装置に送信する。データベース装置は、移動端末から送られる各周波数帯の使用状況を蓄積し、これらに統計処理を施すことで、各周波数帯の時間ごと位置ごとの使用確率を算出することができる。
【0014】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する移動体無線通信システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む無線通信方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動体無線通信システムにおいて、空き状態の周波数帯を短い時間で検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0017】
〈システム概要〉
図2は、本実施形態に係る移動体無線通信システムの概要を示す図である。本無線通信システムは、複数の車両1とデータベース装置2とから構成される。各車両1はデータベース装置2と双方向に通信可能である。各車両1は、路側に設けられた通信設備(アクセスポイント)を介してデータベース装置2と通信する。データベース装置2は、単一のコンピュータから構成されるものであっても良く、分散配置された複数のコンピュータから
構成されるものであっても良い。また、車両1とデータベース装置2との間の通信手段は、路側通信設備に限られず、携帯電話網や衛星通信網など任意の通信手段であってよい。
【0018】
本無線通信システムにおける各車両1は、コグニティブ無線通信を行う。すなわち、周囲の電波利用状況を検知して、利用可能な周波数帯を検出して、その周波数帯で無線通信を行う。このように、利用可能な周波数帯を検出するためには周波数帯のスキャンを行う必要があるが、多くの周波数帯が使用されている状況では、スキャン順序によっては、空いている周波数を検出するために多くの時間を要してしまう。そこで、本実施形態では、以下のように使用状況テーブルを作成・利用することで、スキャン時間の短縮を図っている。
【0019】
図3は、本実施形態における全体処理の概要を示すフローチャートである。まず、前処理として、各車両1をプローブカーとして用いて、様々な場所・時刻における各周波数帯の使用状況を収集する(S1)。収集されたデータはデータベース装置2に蓄積される。そして、ある程度のデータが蓄積されたところで、これらのデータに統計処理を施して、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを作成する(S2)。この使用状況テーブルは各車両1に配布される。そして、無線通信を行おうとする車両1は、この使用状況テーブルに基づいて空き状態である可能性が高い周波数帯を選択して、無線通信に用いる(S3)。つまり、車両1は、使用状況テーブルから空き状態である確率が高い周波数帯が分かるので、スキャンした結果使用中と判明される可能性を減らすことができ、スキャン時間の短縮が可能となる。
【0020】
〈構成〉
[車載端末]
図1は、車両1の機能構成を示すブロック図である。車両1は、無線信号を送受するアンテナ10、受信した信号を復調すると共に、送信する信号を変調する無線送受信部11、任意の周波数帯の使用状況を検出する使用状況検出部12,現在位置を取得するGPS装置13、任意の周波数帯の使用状況をデータベース装置2に送信する電波状況送信部14、無線通信に使用する周波数帯を決定する使用帯域決定部15及び無線送受信部11を制御し必要なパラメータを設定するパラメータ設定部16を備える。
【0021】
以下、各部の動作について説明する。
【0022】
送信時には、無線送受信部11に上位層から送信データが渡され、無線送受信部11がこのデータを無線変調しアンテナ10に供給する。一方、アンテナ10から受信された無線信号は、無線送受信部11で復調され、復調されたデータは上位層に渡される。パラメータ設定部16は、コグニティブ無線を行うために必要な機能で、使用する無線チャネル(無線周波数)、変調方式、送信電力などのパラメータを設定する。無線送受信部11は、パラメータ設定部16によって設定されたパラメータに基づいて、無線信号の変復調を行う。
【0023】
使用状況検出部12は、電力測定部12aと帯域設定部12bとから構成され、帯域設定部12bによって設定された無線チャネルの使用状況を検出する。使用状況の検出は、受信信号を直交復調して振幅変動を検出し、この振幅変動が雑音レベルと等しければ空き状態であると判断する。なお、無線チャネルの使用状況検出は、信号の周期定常性を検出する周期定常特徴検出(cyclostationary feature detection)により行っても良い。ま
た、無線チャネルの使用状況検出は、整合フィルタ(matched filter)を用いることによって行っても良い。この他にも、無線チャネルの使用状況の検出(キャリアセンス)は、既存のいかなる技術を用いて行っても構わない。
【0024】
GPS装置13は、GPS衛星からGPS信号を受信し、自端末の位置情報を取得する。なお、GPS信号のみから自端末の位置を決定するだけでなく、地図(道路)データおよびジャイロや加速度センサを用いて位置検出の補正処理を行っても良い。
【0025】
使用帯域決定部15は、データベース装置2から取得する使用状況テーブルと現在位置とに基づいて、無線通信に使用する無線チャネル(周波数帯域)を決定する。使用帯域決定部15は、後述するように、使用状況テーブルに基づいて、空き状態である可能性が最も高い無線チャネルを用いて無線通信を試みる。選択された周波数は使用状況検出部12に送られ、ここで実際に空き状態であるか検出される。実際に空き状態であれば、使用帯域決定部15は、無線送受信部11がこの周波数帯域を利用できるようパラメータ設定部16を介してパラメータの設定を行う。
【0026】
[データベース装置]
図4は、データベース装置2の機能構成を示すブロック図である。データベース装置2は、車両1から周波数使用状況データを受信する受信部21、受信したデータを記憶する記憶部22、記憶部22に蓄積された周波数使用状況データに統計処理を施して、時間ごと場所ごとに各周波数帯が空き状態である確率を表す使用状況テーブルを作成する解析手段23、および、作成した使用状況テーブルを車両1に送信する送信部24とを備える。
【0027】
データベース装置2は、ハードウェアとしては、CPU(中央演算処理装置)、主記憶装置、補助記憶装置等を有するコンピュータであり、CPUがプログラムを実行することによって、上記の各機能部が実現される。上記各機能部の一部又は全部は専用のチップによって実現されても構わない。また、上記各機能部は、複数のコンピュータによって実現されても構わない。
【0028】
〈処理詳細〉
以下では、図3に示した全体処理のそれぞれについて、詳細な処理動作を説明する。
【0029】
図5は、プローブデータ収集処理(図3のS1)の詳細な内容を示している。まず、車両1はスキャンする周波数帯の選択を行う(S11)。ここで、どの周波数帯を選択するかは任意に定めることができる。また、スキャンする周波数帯も単一のチャネルのみであっても良く、所定の幅のある範囲内の周波数帯であっても良い。次に、使用状況検出部12が、選択された周波数帯の電波使用状況を検出する(S12)。また、車両1は、GPS装置13を用いて自車両の現在の位置情報および現在時刻を取得する(S13)。そして、電波状況送信部14は、スキャンした周波数帯域の使用状況、自車両の位置情報および現在時刻を合わせてデータベース装置2に送信する(S14)。なお、周波数のスキャン(S11,S12)と位置情報の取得(S13)は、逆の順序で行っても良く、並行して行っても良い。
【0030】
データベース装置2に送信するデータのフォーマットの一例を図6に示した。図6には3通りの例が示されているが、いずれも、位置情報(緯度、経度)、時刻、周波数および使用状況が含まれる。使用状況として、図6(a)では無線信号の振幅、図6(b)では使用/未使用のフラグ(1または0)、図6(c)では使用状況をレベル分けした情報を送信している。なお、位置情報としては、緯度・経度の情報ではなく、あらかじめいくつかのエリアに分けておき、自車両が位置するエリアを識別するIDを送信するようにしても良い。また、上記の説明では、送信データに電波状況を検出した時刻を含めているが、送信データには時刻情報を含めずに、データベース装置2が車両1からのデータを受信した時刻を電波状況を検出した時刻とみなしても良い。
【0031】
このようにして、データベース装置2はプローブカーからのデータの収集を行う。所定
の期間データの収集を行い、ある程度の量のデータが集まったら、データベース装置2は蓄積したデータに統計処理を施すことで、場所ごとおよび時間ごとに、ある周波数帯が空き状態である確率を表す使用状況テーブルの作成を行う(図3のS2)。
【0032】
各エリアでは、時間ごとにどの周波数帯が使われている確率が高いかという特徴がある。
【0033】
例えば、エリアごとに使用されている周波数帯域が異なるという状況がある。図7は特定の時刻における2つの周波数f1およびf2の利用状況を示す模式的な図である。このように、周波数帯によって利用される場所が異なることがあり得る。この原因の一つとして、その無線周波数帯域を使用する無線機器の分布にばらつきがあることを挙げることができる。また、特定のエリアに着目した場合に時間によって周波数帯域の使用状況が異なることがあり得る。例えば、あるエリアでは朝および夜に種々の周波数帯が使われるが、昼はあまり無線の利用がないという特徴があり得る。また、別のエリアでは、朝には携帯電話(約1.5GHz)がよく使われ、昼には無線LAN(2.4GHz、5GHz)が使われたり、また休日にはアマチュア無線(144MHz、430MHzなど)がよく使われるということがある。
【0034】
そこで、データベース装置2は、エリアごと時間ごとに各周波数帯が使用されている確率を示す使用状況テーブルを、収集されたプローブデータから平均をとることで作成する。作成された使用状況テーブルの概念図を図8に示す。図8は、ある特定のエリアにおける時間帯別の各周波数の利用状況を示す。したがって、エリアごとに図8のようなテーブルが用意される。なお、使用状況テーブルにおける時間帯の幅は適宜設計可能である。例えば、1時間や2時間といった時間幅を設定可能である。また、日ごとに異なる使用状況テーブルを作成しても良い。例えば、平日(月曜〜金曜)と休日(土曜、日曜、祝日)とで異なる集計を行って異なるテーブルを用意しても良く、また曜日ごとに異なる集計を行って異なるテーブルを用意しても良い。また、同一の使用状況テーブルが適用される一つのエリアの大きさやその決定方法は、任意に定めて良い。緯度経度情報に基づいて、長方形のエリアを策定することが最も簡単である。例えば、地点(緯度Lat0、経度Lng0)と地点(緯度Lat0+1分、経度Lng0+1分)によって作成される長方形を1つのエリアとして定めることが簡単である。ただし、エリアの区分けはその他の方法によって行っても良く、どのような粒度でエリアを分けるかも適宜設計可能である。
【0035】
このようにして、データベース装置2において作成された使用状況テーブルは、各車両1に配布される。車両1は、無線通信を行おうとする場合に、使用状況テーブルを用いて空いている確率が高い周波数帯を予測して、その周波数帯での通信を試みる(図3のS3)。
【0036】
図9に車両1が行う使用周波数の決定処理の詳細を示す。車両1は、まず、GPS装置13から現在時刻および現在位置を取得する(S31)。そして、使用帯域決定部15が、データベース装置2から取得した使用状況テーブルと、現在位置および現在時刻とから、自車両が位置するエリアの現在時刻において空き状態である確率が最も高い周波数帯を選択する(S32)。選択された周波数帯は使用状況検出部12に送られてスキャンされ、この周波数帯が実際に空き状態であるか否かが判断される(S33)。この周波数帯が使用状態である、すなわち利用可能ではない場合(S34−NO)は、使用状況テーブルを参照して空き状態である確率が次に高い周波数帯を選択して(S35)、その周波数帯が実際に空き状態であるか判断する。一方、選択された周波数帯が空き状態である、すなわち利用可能である場合(S34−YES)は、選択された周波数帯を用いて無線通信を行う(S36)。
【0037】
<実施形態の作用/効果>
このように、使用状況テーブルに基づいて空き状態である確率が高い周波数帯からスキャンすることで、使用可能な周波数帯を探知するのに要する時間を削減することが可能となる。自動車のように高速で移動する移動体の場合、即座に通信を開始できることが求められるが、本実施形態によればその要請を満足することが可能となる。
【0038】
また、コグニティブ無線において、各端末で利用可能な周波数帯を把握しスキャン時間を短縮するために、利用する周波数帯を管理サーバ等に通知して管理サーバ側で周波数の利用状況を常時管理する技術が知られている。本実施形態はこのような方法と比較して、圧倒的に簡易な方法であり、したがってコストもかからない。そして、利用可能な周波数帯の検出を即座に探知できるという、効果を得ることができる。
【0039】
また、各周波数の使用状況を示す使用状況テーブルを、プローブカーシステムを用いて作成しているため、安価に広範囲のエリアのデータを収集することができる。
【0040】
<変形例>
上記実施形態では、各車両1がプローブデータ(周波数の使用状況)の採集・送信と、コグニティブ無線の両方の機能を有するとして説明した。しかしながら、本無線通信システムにおいて、一部の車両は、プローブデータの採集・送信のみの機能を有しても良く、また、使用状況テーブルに基づいて使用周波数を決定するコグニティブ無線機としての機能のみを有していても良い。
【0041】
上記の説明では、車両1は使用状況テーブルを参照して、空き状態である確率がもっと高い周波数帯を選択して、無線通信を試みていた。しかしながら、スキャン時間の短縮のためであれば、必ずしも最も空き状態が高い周波数帯を選択する必要はなく、所定のしきい値よりも高い確率で空き状態である周波数帯を選択しさえすればよい。
【0042】
また、使用状況テーブルは一度作成した後に、定期的に更新することが好ましい。各車両が使用状況テーブルを用いてコグニティブ無線を行っている場合も、各車両が定期的に周波数帯のスキャンを行って、スキャン結果をデータベース装置2に送信することが望ましい。データベース装置2では、ある程度の量のデータが蓄積されたら、使用状況データベースの更新処理を行い、更新後の使用状況テーブルを各車両に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態における車両(移動端末)の機能ブロックを示す図である。
【図2】本実施形態に係る移動体無線通信システムの概要を示す図である。
【図3】本実施形態における無線通信方法の全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態におけるデータベース装置の機能ブロックを示す図である。
【図5】プローブデータ収集処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】車両がデータベース装置に送信するプローブデータのフォーマット例を示す図である。
【図7】任意の時点における周波数f1,f2の使用状況を示す模式図である。
【図8】任意の位置における時間帯別の各周波数の使用確率を示す図である。
【図9】使用周波数を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 データベース装置
10 アンテナ
11 無線送受信部
12 使用状況検出部
12a 電力測定部
12b 帯域設定部
13 GPS装置
14 電波状況送信部
15 使用帯域決定部
16 パラメータ設定部
21 受信部
22 記憶部
23 解析部
24 送信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信に利用できる周波数帯の逼迫に対処するために、コグニティブ無線(認知無線)の研究・開発が進められている。コグニティブ無線の基本的な考え方は、無線端末に周辺の電波環境を認識・認知する機能を持たせ、周囲の電波環境に応じて無線通信に利用する周波数や方式を選択することで、周波数の利用効率を高めようとするものである。コグニティブ無線端末は、具体的には、周辺の電波環境を認識するために各周波数帯をスキャンして利用状況を検出し、使用可能な周波数帯を利用する。これにより、論理的には全ての周波数帯を利用して、周波数利用効率の良い無線通信が行える。
【特許文献1】特開2007−300419号公報
【特許文献2】特開2000−207679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コグニティブ無線を、車両のように高速で移動する移動体からなる無線ネットワークで用いる場合には、以下のような問題がある。
【0004】
コグニティブ無線では無線接続の前に周波数帯の未使用部分を取得するために、周波数帯のスキャンが必要となる。この周波数帯のスキャンにはある程度の時間を要する。一方、車両のように高速で移動する移動体では、通信を即座に開始できることが必要となる。即座に通信を開始できなければ、車両の高速移動により通信相手との距離が離れてしまったり、時間が経過してしまったために通信しようとしていた情報が古くなってしまうためである。
【0005】
現状では、広い周波数帯をリアルタイムにスキャニングすることが困難であるため、コグニティブ無線を高速で移動する移動体に適用することが困難である。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、移動体無線通信システムにおいて、空き状態の周波数帯を短い時間で検出可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によって無線通信を行う。
【0008】
本発明に係る移動体無線通信システムは、複数の移動端末とデータベース装置とから構成され、移動端末が利用可能な周波数帯を選択して無線通信を行うものである。なお、本明細書において移動端末とはノートパソコン、PDA、携帯電話機のようにその端末装置自体を持ち運び可能なものの他、端末装置自体は自動車等に固定されているが、設置された対象(自動車等)が移動体であるために移動可能なものを含む。また、本明細書においてデータベース装置とは、外部からデータの入力を受け付け、それを蓄積し、蓄積されたデータに対して処理を行うことができる装置を指す。このデータベース装置は、物理的に単一のコンピュータから構成されても、ネットワーク的に分散された複数のコンピュータが連携することによって構成されても構わない。
【0009】
本発明におけるデータベース装置は、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを保持している。そして、移動端末は、データベース装置からこの使用状況テーブルを取得し、これに基づいて、無線通信を行おうとする時点およびその時点での自端末の位置において空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う。
【0010】
使用状況テーブルには、位置ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率が含まれるので、移動端末は現在位置および現時点において、各周波数帯ごとに空き状態である確率を判断できる。そこで、移動端末は空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う。つまり、空き状態である確率が高い周波数帯を実際にスキャンして、実際に空き状態であればその周波数帯を用いて無線通信を行う。ここで、空き状態である確率が最も高い確率の周波数帯を選択しても良いし、所定の確率以上の任意の周波数帯を選択しても構わない。
【0011】
このように、移動端末は、使用状況テーブルに基づいて空き状態である確率の高い周波数帯を知ることができるので、あらかじめ決められた順序で周波数帯をスキャンして空き状態の周波数帯を検出する場合よりも、スキャン時間を短縮することができる。
【0012】
本発明における使用状況テーブルは、以下の手段および処理によって作成することが好適である。本発明における複数の移動端末は、それぞれ、各周波数帯が使用中か空き状態かを検出する使用状況検出手段と、自端末の位置情報を取得する位置情報取得手段と、使用状況検出手段によって取得された周波数帯の使用状況を、自端末の位置情報とともにデータベース装置に送信する送信手段とを有することが好適である。また、本発明におけるデータベース装置は、各移動端末から周波数帯の使用状況と位置情報とを受信し蓄積する受信手段と、受信された各周波数帯の使用状況と位置情報とから、前記使用状況テーブルを作成する解析手段とを有することが好適である。
【0013】
上記手段を有する各移動端末は、所定のタイミングで、任意の周波数帯のスキャンを行い、その結果を位置情報と共にデータベース装置に送信する。データベース装置は、移動端末から送られる各周波数帯の使用状況を蓄積し、これらに統計処理を施すことで、各周波数帯の時間ごと位置ごとの使用確率を算出することができる。
【0014】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する移動体無線通信システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む無線通信方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動体無線通信システムにおいて、空き状態の周波数帯を短い時間で検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0017】
〈システム概要〉
図2は、本実施形態に係る移動体無線通信システムの概要を示す図である。本無線通信システムは、複数の車両1とデータベース装置2とから構成される。各車両1はデータベース装置2と双方向に通信可能である。各車両1は、路側に設けられた通信設備(アクセスポイント)を介してデータベース装置2と通信する。データベース装置2は、単一のコンピュータから構成されるものであっても良く、分散配置された複数のコンピュータから
構成されるものであっても良い。また、車両1とデータベース装置2との間の通信手段は、路側通信設備に限られず、携帯電話網や衛星通信網など任意の通信手段であってよい。
【0018】
本無線通信システムにおける各車両1は、コグニティブ無線通信を行う。すなわち、周囲の電波利用状況を検知して、利用可能な周波数帯を検出して、その周波数帯で無線通信を行う。このように、利用可能な周波数帯を検出するためには周波数帯のスキャンを行う必要があるが、多くの周波数帯が使用されている状況では、スキャン順序によっては、空いている周波数を検出するために多くの時間を要してしまう。そこで、本実施形態では、以下のように使用状況テーブルを作成・利用することで、スキャン時間の短縮を図っている。
【0019】
図3は、本実施形態における全体処理の概要を示すフローチャートである。まず、前処理として、各車両1をプローブカーとして用いて、様々な場所・時刻における各周波数帯の使用状況を収集する(S1)。収集されたデータはデータベース装置2に蓄積される。そして、ある程度のデータが蓄積されたところで、これらのデータに統計処理を施して、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを作成する(S2)。この使用状況テーブルは各車両1に配布される。そして、無線通信を行おうとする車両1は、この使用状況テーブルに基づいて空き状態である可能性が高い周波数帯を選択して、無線通信に用いる(S3)。つまり、車両1は、使用状況テーブルから空き状態である確率が高い周波数帯が分かるので、スキャンした結果使用中と判明される可能性を減らすことができ、スキャン時間の短縮が可能となる。
【0020】
〈構成〉
[車載端末]
図1は、車両1の機能構成を示すブロック図である。車両1は、無線信号を送受するアンテナ10、受信した信号を復調すると共に、送信する信号を変調する無線送受信部11、任意の周波数帯の使用状況を検出する使用状況検出部12,現在位置を取得するGPS装置13、任意の周波数帯の使用状況をデータベース装置2に送信する電波状況送信部14、無線通信に使用する周波数帯を決定する使用帯域決定部15及び無線送受信部11を制御し必要なパラメータを設定するパラメータ設定部16を備える。
【0021】
以下、各部の動作について説明する。
【0022】
送信時には、無線送受信部11に上位層から送信データが渡され、無線送受信部11がこのデータを無線変調しアンテナ10に供給する。一方、アンテナ10から受信された無線信号は、無線送受信部11で復調され、復調されたデータは上位層に渡される。パラメータ設定部16は、コグニティブ無線を行うために必要な機能で、使用する無線チャネル(無線周波数)、変調方式、送信電力などのパラメータを設定する。無線送受信部11は、パラメータ設定部16によって設定されたパラメータに基づいて、無線信号の変復調を行う。
【0023】
使用状況検出部12は、電力測定部12aと帯域設定部12bとから構成され、帯域設定部12bによって設定された無線チャネルの使用状況を検出する。使用状況の検出は、受信信号を直交復調して振幅変動を検出し、この振幅変動が雑音レベルと等しければ空き状態であると判断する。なお、無線チャネルの使用状況検出は、信号の周期定常性を検出する周期定常特徴検出(cyclostationary feature detection)により行っても良い。ま
た、無線チャネルの使用状況検出は、整合フィルタ(matched filter)を用いることによって行っても良い。この他にも、無線チャネルの使用状況の検出(キャリアセンス)は、既存のいかなる技術を用いて行っても構わない。
【0024】
GPS装置13は、GPS衛星からGPS信号を受信し、自端末の位置情報を取得する。なお、GPS信号のみから自端末の位置を決定するだけでなく、地図(道路)データおよびジャイロや加速度センサを用いて位置検出の補正処理を行っても良い。
【0025】
使用帯域決定部15は、データベース装置2から取得する使用状況テーブルと現在位置とに基づいて、無線通信に使用する無線チャネル(周波数帯域)を決定する。使用帯域決定部15は、後述するように、使用状況テーブルに基づいて、空き状態である可能性が最も高い無線チャネルを用いて無線通信を試みる。選択された周波数は使用状況検出部12に送られ、ここで実際に空き状態であるか検出される。実際に空き状態であれば、使用帯域決定部15は、無線送受信部11がこの周波数帯域を利用できるようパラメータ設定部16を介してパラメータの設定を行う。
【0026】
[データベース装置]
図4は、データベース装置2の機能構成を示すブロック図である。データベース装置2は、車両1から周波数使用状況データを受信する受信部21、受信したデータを記憶する記憶部22、記憶部22に蓄積された周波数使用状況データに統計処理を施して、時間ごと場所ごとに各周波数帯が空き状態である確率を表す使用状況テーブルを作成する解析手段23、および、作成した使用状況テーブルを車両1に送信する送信部24とを備える。
【0027】
データベース装置2は、ハードウェアとしては、CPU(中央演算処理装置)、主記憶装置、補助記憶装置等を有するコンピュータであり、CPUがプログラムを実行することによって、上記の各機能部が実現される。上記各機能部の一部又は全部は専用のチップによって実現されても構わない。また、上記各機能部は、複数のコンピュータによって実現されても構わない。
【0028】
〈処理詳細〉
以下では、図3に示した全体処理のそれぞれについて、詳細な処理動作を説明する。
【0029】
図5は、プローブデータ収集処理(図3のS1)の詳細な内容を示している。まず、車両1はスキャンする周波数帯の選択を行う(S11)。ここで、どの周波数帯を選択するかは任意に定めることができる。また、スキャンする周波数帯も単一のチャネルのみであっても良く、所定の幅のある範囲内の周波数帯であっても良い。次に、使用状況検出部12が、選択された周波数帯の電波使用状況を検出する(S12)。また、車両1は、GPS装置13を用いて自車両の現在の位置情報および現在時刻を取得する(S13)。そして、電波状況送信部14は、スキャンした周波数帯域の使用状況、自車両の位置情報および現在時刻を合わせてデータベース装置2に送信する(S14)。なお、周波数のスキャン(S11,S12)と位置情報の取得(S13)は、逆の順序で行っても良く、並行して行っても良い。
【0030】
データベース装置2に送信するデータのフォーマットの一例を図6に示した。図6には3通りの例が示されているが、いずれも、位置情報(緯度、経度)、時刻、周波数および使用状況が含まれる。使用状況として、図6(a)では無線信号の振幅、図6(b)では使用/未使用のフラグ(1または0)、図6(c)では使用状況をレベル分けした情報を送信している。なお、位置情報としては、緯度・経度の情報ではなく、あらかじめいくつかのエリアに分けておき、自車両が位置するエリアを識別するIDを送信するようにしても良い。また、上記の説明では、送信データに電波状況を検出した時刻を含めているが、送信データには時刻情報を含めずに、データベース装置2が車両1からのデータを受信した時刻を電波状況を検出した時刻とみなしても良い。
【0031】
このようにして、データベース装置2はプローブカーからのデータの収集を行う。所定
の期間データの収集を行い、ある程度の量のデータが集まったら、データベース装置2は蓄積したデータに統計処理を施すことで、場所ごとおよび時間ごとに、ある周波数帯が空き状態である確率を表す使用状況テーブルの作成を行う(図3のS2)。
【0032】
各エリアでは、時間ごとにどの周波数帯が使われている確率が高いかという特徴がある。
【0033】
例えば、エリアごとに使用されている周波数帯域が異なるという状況がある。図7は特定の時刻における2つの周波数f1およびf2の利用状況を示す模式的な図である。このように、周波数帯によって利用される場所が異なることがあり得る。この原因の一つとして、その無線周波数帯域を使用する無線機器の分布にばらつきがあることを挙げることができる。また、特定のエリアに着目した場合に時間によって周波数帯域の使用状況が異なることがあり得る。例えば、あるエリアでは朝および夜に種々の周波数帯が使われるが、昼はあまり無線の利用がないという特徴があり得る。また、別のエリアでは、朝には携帯電話(約1.5GHz)がよく使われ、昼には無線LAN(2.4GHz、5GHz)が使われたり、また休日にはアマチュア無線(144MHz、430MHzなど)がよく使われるということがある。
【0034】
そこで、データベース装置2は、エリアごと時間ごとに各周波数帯が使用されている確率を示す使用状況テーブルを、収集されたプローブデータから平均をとることで作成する。作成された使用状況テーブルの概念図を図8に示す。図8は、ある特定のエリアにおける時間帯別の各周波数の利用状況を示す。したがって、エリアごとに図8のようなテーブルが用意される。なお、使用状況テーブルにおける時間帯の幅は適宜設計可能である。例えば、1時間や2時間といった時間幅を設定可能である。また、日ごとに異なる使用状況テーブルを作成しても良い。例えば、平日(月曜〜金曜)と休日(土曜、日曜、祝日)とで異なる集計を行って異なるテーブルを用意しても良く、また曜日ごとに異なる集計を行って異なるテーブルを用意しても良い。また、同一の使用状況テーブルが適用される一つのエリアの大きさやその決定方法は、任意に定めて良い。緯度経度情報に基づいて、長方形のエリアを策定することが最も簡単である。例えば、地点(緯度Lat0、経度Lng0)と地点(緯度Lat0+1分、経度Lng0+1分)によって作成される長方形を1つのエリアとして定めることが簡単である。ただし、エリアの区分けはその他の方法によって行っても良く、どのような粒度でエリアを分けるかも適宜設計可能である。
【0035】
このようにして、データベース装置2において作成された使用状況テーブルは、各車両1に配布される。車両1は、無線通信を行おうとする場合に、使用状況テーブルを用いて空いている確率が高い周波数帯を予測して、その周波数帯での通信を試みる(図3のS3)。
【0036】
図9に車両1が行う使用周波数の決定処理の詳細を示す。車両1は、まず、GPS装置13から現在時刻および現在位置を取得する(S31)。そして、使用帯域決定部15が、データベース装置2から取得した使用状況テーブルと、現在位置および現在時刻とから、自車両が位置するエリアの現在時刻において空き状態である確率が最も高い周波数帯を選択する(S32)。選択された周波数帯は使用状況検出部12に送られてスキャンされ、この周波数帯が実際に空き状態であるか否かが判断される(S33)。この周波数帯が使用状態である、すなわち利用可能ではない場合(S34−NO)は、使用状況テーブルを参照して空き状態である確率が次に高い周波数帯を選択して(S35)、その周波数帯が実際に空き状態であるか判断する。一方、選択された周波数帯が空き状態である、すなわち利用可能である場合(S34−YES)は、選択された周波数帯を用いて無線通信を行う(S36)。
【0037】
<実施形態の作用/効果>
このように、使用状況テーブルに基づいて空き状態である確率が高い周波数帯からスキャンすることで、使用可能な周波数帯を探知するのに要する時間を削減することが可能となる。自動車のように高速で移動する移動体の場合、即座に通信を開始できることが求められるが、本実施形態によればその要請を満足することが可能となる。
【0038】
また、コグニティブ無線において、各端末で利用可能な周波数帯を把握しスキャン時間を短縮するために、利用する周波数帯を管理サーバ等に通知して管理サーバ側で周波数の利用状況を常時管理する技術が知られている。本実施形態はこのような方法と比較して、圧倒的に簡易な方法であり、したがってコストもかからない。そして、利用可能な周波数帯の検出を即座に探知できるという、効果を得ることができる。
【0039】
また、各周波数の使用状況を示す使用状況テーブルを、プローブカーシステムを用いて作成しているため、安価に広範囲のエリアのデータを収集することができる。
【0040】
<変形例>
上記実施形態では、各車両1がプローブデータ(周波数の使用状況)の採集・送信と、コグニティブ無線の両方の機能を有するとして説明した。しかしながら、本無線通信システムにおいて、一部の車両は、プローブデータの採集・送信のみの機能を有しても良く、また、使用状況テーブルに基づいて使用周波数を決定するコグニティブ無線機としての機能のみを有していても良い。
【0041】
上記の説明では、車両1は使用状況テーブルを参照して、空き状態である確率がもっと高い周波数帯を選択して、無線通信を試みていた。しかしながら、スキャン時間の短縮のためであれば、必ずしも最も空き状態が高い周波数帯を選択する必要はなく、所定のしきい値よりも高い確率で空き状態である周波数帯を選択しさえすればよい。
【0042】
また、使用状況テーブルは一度作成した後に、定期的に更新することが好ましい。各車両が使用状況テーブルを用いてコグニティブ無線を行っている場合も、各車両が定期的に周波数帯のスキャンを行って、スキャン結果をデータベース装置2に送信することが望ましい。データベース装置2では、ある程度の量のデータが蓄積されたら、使用状況データベースの更新処理を行い、更新後の使用状況テーブルを各車両に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態における車両(移動端末)の機能ブロックを示す図である。
【図2】本実施形態に係る移動体無線通信システムの概要を示す図である。
【図3】本実施形態における無線通信方法の全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態におけるデータベース装置の機能ブロックを示す図である。
【図5】プローブデータ収集処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】車両がデータベース装置に送信するプローブデータのフォーマット例を示す図である。
【図7】任意の時点における周波数f1,f2の使用状況を示す模式図である。
【図8】任意の位置における時間帯別の各周波数の使用確率を示す図である。
【図9】使用周波数を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 データベース装置
10 アンテナ
11 無線送受信部
12 使用状況検出部
12a 電力測定部
12b 帯域設定部
13 GPS装置
14 電波状況送信部
15 使用帯域決定部
16 パラメータ設定部
21 受信部
22 記憶部
23 解析部
24 送信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動端末とデータベース装置とから構成され、移動体が利用可能な周波数帯を選択して無線通信を行う移動体無線通信システムであって、
前記データベース装置は、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを保持しており、
前記移動端末は、前記データベース装置から前記使用状況テーブルを取得し、該使用状況テーブルに基づいて、無線通信を行おうとする時点および当該時点で自端末が位置する場所において空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする移動体無線通信システム。
【請求項2】
前記複数の移動端末は、それぞれ、
各周波数帯が使用中か空き状態かを検出する使用状況検出手段と、
自端末の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記使用状況検出手段によって取得された周波数帯の使用状況を、自端末の位置情報とともに送信する送信手段と、
を有し、
前記データベース装置は、
各移動端末から周波数帯の使用状況と位置情報とを受信し蓄積する受信手段と、
受信された各周波数帯の使用状況と位置情報とから、前記使用状況テーブルを作成する解析手段と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体無線通信システム。
【請求項3】
前記移動端末は、前記使用状況テーブルに基づいて得られた空き状態である確率が高い周波数帯について、該周波数帯が使用中か空き状態かの検出を行い、空き状態であればその周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体無線通信システム。
【請求項4】
複数の移動端末とデータベース装置とから構成される移動体無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記データベース装置が、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルをあらかじめ作成して保持し、
前記移動端末が、前記データベース装置から前記使用状況テーブルを取得し、該使用状況テーブルに基づいて、無線通信を行おうとする時点および当該時点で自端末が位置する場所において空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
前記複数の移動端末が、いずれかの周波数帯について使用中であるか空き状態であるかを検出するとともに自端末の位置情報を取得し、検出された周波数帯の使用状況を自端末の位置情報とともに、前記データベース装置に送信し、
前記データベース装置が、各移動端末から周波数帯の使用状況と位置情報とを受信し蓄積し、蓄積された各周波数帯の使用状況と位置情報とから、前記使用状況テーブルを作成する
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信方法。
【請求項6】
前記移動端末が、前記使用状況テーブルに基づいて得られた空き状態である確率が高い周波数帯について、該周波数帯が使用中か空き状態かの検出を行い、空き状態であればその周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の無線通信方法。
【請求項1】
複数の移動端末とデータベース装置とから構成され、移動体が利用可能な周波数帯を選択して無線通信を行う移動体無線通信システムであって、
前記データベース装置は、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルを保持しており、
前記移動端末は、前記データベース装置から前記使用状況テーブルを取得し、該使用状況テーブルに基づいて、無線通信を行おうとする時点および当該時点で自端末が位置する場所において空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする移動体無線通信システム。
【請求項2】
前記複数の移動端末は、それぞれ、
各周波数帯が使用中か空き状態かを検出する使用状況検出手段と、
自端末の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記使用状況検出手段によって取得された周波数帯の使用状況を、自端末の位置情報とともに送信する送信手段と、
を有し、
前記データベース装置は、
各移動端末から周波数帯の使用状況と位置情報とを受信し蓄積する受信手段と、
受信された各周波数帯の使用状況と位置情報とから、前記使用状況テーブルを作成する解析手段と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体無線通信システム。
【請求項3】
前記移動端末は、前記使用状況テーブルに基づいて得られた空き状態である確率が高い周波数帯について、該周波数帯が使用中か空き状態かの検出を行い、空き状態であればその周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体無線通信システム。
【請求項4】
複数の移動端末とデータベース装置とから構成される移動体無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記データベース装置が、時間ごと場所ごとに各周波数帯が使用されている確率を表す使用状況テーブルをあらかじめ作成して保持し、
前記移動端末が、前記データベース装置から前記使用状況テーブルを取得し、該使用状況テーブルに基づいて、無線通信を行おうとする時点および当該時点で自端末が位置する場所において空き状態である確率が高い周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
前記複数の移動端末が、いずれかの周波数帯について使用中であるか空き状態であるかを検出するとともに自端末の位置情報を取得し、検出された周波数帯の使用状況を自端末の位置情報とともに、前記データベース装置に送信し、
前記データベース装置が、各移動端末から周波数帯の使用状況と位置情報とを受信し蓄積し、蓄積された各周波数帯の使用状況と位置情報とから、前記使用状況テーブルを作成する
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信方法。
【請求項6】
前記移動端末が、前記使用状況テーブルに基づいて得られた空き状態である確率が高い周波数帯について、該周波数帯が使用中か空き状態かの検出を行い、空き状態であればその周波数帯を用いて無線通信を行う
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−200773(P2009−200773A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39777(P2008−39777)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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