説明

移動体無線通信装置

【課題】 受信部を2系列以上備えた移動体無線通信装置について、十分な受信品質を担保しつつ、消費電力の抑制を合理的に実現する。
【解決手段】 1回目の制御情報の送信タイミングでは、全ての受信部1〜3を起動して制御情報を無線受信し、2回目以降のタイミングでは、1回目の無線受信で検出した各受信部の受信品質に基づいて、受信品質が比較的良い一部の受信部だけを起動して、制御情報を無線受信する制御を行なう。これにより、制御情報の良好な受信を、その電波状況に即した一部の受信部だけを起動することで実現することができ、起動する受信部の数を削減することにより電力消費を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局から周期的に送信される制御情報を無線受信する移動体無線通信装置に関し、特に、制御情報を受信する移動体無線通信装置が行なうセービング方式(間欠受信制御方式)に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、無線通信機能を備えた携帯型コンピュータ、無線通信機能を備えた携帯情報端末装置などで代表される移動体無線通信装置は、動作電源としてバッテリーを備えているが、装置の消費電力を小さくすることは、バッテリーによる装置の動作時間を長くすることができるので、装置の使い勝手の向上や商品価値の向上に大きく貢献する。
【0003】
図5に示すように、このような携帯電話機などの移動体無線通信装置20は、自己が属する無線通信エリアを構成する無線基地局装置21との無線通信を介して情報通信を行なうが、この無線通信の同期をとるための同期ワードなどと言った制御情報を無線基地局装置21から無線受信する。
そして、移動体無線通信装置は、通話の送信や受信などといった通信対象の情報を通信している状態ではなく、通信対象の情報の通信待ちの状態(待ち受け状態)において、制御情報の無線受信を行なうが、一般的な指標として、通話状態と待ち受け状態との時間比率は2:8であり、通話通信に費やされる時間に比べて、制御情報の無線受信に費やされる時間の方が圧倒的に多い。
【0004】
上記のような事情から、移動体無線通信装置では、待ち受け状態において制御情報を無線受信するタイミング以外のタイミングでは、無線受信に係る機能を制限してバッテリーの消費電力を抑制するセービング方式(間欠受信制御方式)が採用されている。
【0005】
間欠受信制御方式の一例を、図6を参照して説明する。
無線基地局装置は、無線システムに予め規定された周期で制御情報を無線送信しており、制御情報はスーパーフレームと呼ばれるフレームタイミングに同期した一定の周期毎に無線送信される。
【0006】
そして、無線基地局装置がカバーする無線通信エリア(サービスエリア)内に位置する移動体無線通信装置は、周期的に無線基地局装置からの制御情報を無線受信し、例えば、制御情報中の同期ワード(無線区間の同期状態を判定するためのシステム固有のビットパターン)の受信により同期状態を判定し、また、制御情報の中のページング情報の受信により着信の有無を判定し、制御情報を受信するタイミング以外のタイミングでは、無線受信に係る無線機を含む無線部の機能を制限してバッテリーの消費電力を抑制する。
すなわち、移動体無線通信装置は、無線基地局装置から同期ワードなどの制御情報が送信されるタイミングに応じて、その無線受信機を起動して制御情報を受信し、その後、無線受信機のパワーセービングをするという間欠受信制御を行なう。
【0007】
なお、特許文献1には、間欠受信によるパワーセービングの動作において、話し始めのとぎれ(話頭切れ)なく受信することができるように、同期引き込み信号の長さを適切なものとする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−79012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
安定した受信品質を得るために、受信機を含む受信部を複数備えて、受信品質の比較的高い受信ブロックによる受信信号を採用するダイバーシチ受信方式を採用した移動体無線通信装置が実用化されている。また、このように受信部を2系列以上備え、複数の受信部の受信信号を合成するMRC(最大比合成)によるダイバーシチ受信方式を採用した移動体無線通信装置が実用化されている。
【0010】
近年の無線通信システムにおいては、MIMO方式に代表されるように、送受信品質の改善や伝送効率向上の対応として、複数の受信部を備えた移動体無線通信装置を採用するシステムが多い。
また、従来から、安定した受信を得るという面で、公共業務システム等で使用する無線機車載型、半固定型等の移動体無線通信装置はダイバーシチ構成を採用することが多い。
【0011】
このように受信部が2系列以上備えた移動体無線通信装置について、上記の間欠受信制御を行なう場合、従来では、これら全ての受信部を同時に制御して間欠受信を行なって、消費電力の抑制を行なっている。
しかしながら、移動体無線通信装置はバッテリーを電源とするものであるから、更なる消費電力の抑制が要望されている。
【0012】
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたもので、その目的は、受信部を2系列以上備えて間欠受信制御を行なう移動体無線通信装置について、更なる消費電力の抑制を合理的に実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、次のような新規な着想に基づいて創作された発明である。
すなわち、受信部を2系列以上備えた移動体無線通信装置で間欠受信制御を行なって、これら全ての受信部を間欠的に同時に起動して制御信号を無線受信しても、実際には、良好な受信品質で制御信号を受信できるのは必ずしも全ての受信部ではなく一部の受信部である場合が多く、このように一部の受信部だけで良好な受信品質で制御情報を無線受信することでも移動体無線通信装置の通信機能は十分に担保される。
【0014】
そうすると、間欠受信制御において、全ての受信部を起動して制御情報を無線受信することは、電力消費の抑制に不利であるということができるが、この場合、例えば、複数ある受信部の内のメインとなる受信部(例えば、図4に示すTRXアンテナの受信部)だけを間欠受信制御で固定的に起動して制御情報を受信することが簡易な方法として考えられるが、移動に伴って電波環境が変化しやすい移動体無線通信装置にあっては、このような特定の受信部で常に良好な受信品質が得られるとは限らない。
【0015】
本発明は、上記の着想に基づいて、移動体無線通信装置の間欠受信制御における更なる消費電力の抑制を合理的に実現する手段である。
本発明に係る移動体無線通信装置は、基地局から周期的に送信される制御情報を無線受信する移動体無線通信装置において、制御情報をそれぞれ無線受信する複数の受信部と、 各受信部の受信品質を検出する検出部と、 受信部を制御情報の送信タイミングに応じて起動して当該制御情報を無線受信させる制御部と、を備え、前記制御部は、全ての前記受信部を起動して制御情報を無線受信させ、当該制御情報の以降の制御情報の送信タイミングに応じては、当該制御情報の無線受信について前記検出部で検出される各受信部の受信品質に基づいて、受信品質が比較的良い一部の受信部を起動して当該以降の制御情報を無線受信させる制御を行なう。
【0016】
したがって、上記移動体無線通信装置では、第1段階として、制御情報の送信タイミングに応じて全ての受信部を起動して制御情報を無線受信し、第1段階以降の段階では、第1段階の無線受信で検出した各受信部の受信品質に基づいて、受信品質が比較的良い一部(1つ又は複数)の受信部を制御情報の送信タイミングに応じて起動して、制御情報を無線受信する制御を行なう。
これにより、間欠受信制御において、制御情報の良好な受信を、その電波状況に即した一部の受信部だけを起動することで実現することができ、起動する受信部の数を削減することにより電力消費を抑制することができる。
【0017】
また、本発明に係る移動体無線通信装置は、上記制御部は、一部の受信部に起動を繰り返して前記以降の制御情報を無線受信させ、前記以降の制御情報の無線受信について検出部で検出される受信品質が所定の基準より低下したときは、再び、全ての受信部を起動して制御情報を無線受信させ、受信品質が比較的良い一部の受信部を起動して更に以降の制御情報を無線受信させる制御を行なうようにしてもよい。
【0018】
したがって、上記移動体無線通信装置では、上記第1段階以降の段階を、上記一部の受信部に起動を繰り返して制御情報を無線受信し、この第1段階以降の段階で検出される受信品質が所定の基準より低下したときは、上記第1段階の制御と同じく、再び全ての受信部を起動して制御情報を無線受信させ、受信品質が比較的良い一部の受信部を起動して当該段階以降の制御情報を無線受信する。
これにより、制御情報の間欠受信を繰り返し行なっている内に、選択起動された一部の受信部の受信品質が低下した場合には、再度選択した一部の受信部で良好に制御情報の間欠受信を続行することができ、電波環境の変化に柔軟に対応して制御情報の良好な受信を継続しつつ、電力消費を抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係る移動体無線通信装置は、前記検出部で検出される受信品質を各受信部に対応付けて記録する記憶部を備え、前記制御部は、全ての前記受信部を起動して制御情報を無線受信させたときに、前記検出部で検出される各受信部の受信品質を記憶部に記録し、更に、前記制御部は、一部の前記受信部に起動を繰り返して前記以降の制御情報を無線受信させ、前記以降の制御情報の無線受信について前記検出部で検出される受信品質が所定の基準より低下したときは、前記記憶部に記録した受信品質の内から、起動されていた前記一部の受信部に次いで受信品質が良い他の一部の受信部を切り替えて起動して、更に以降の制御情報を無線受信させる制御を行なうようにしてもよい。
【0020】
したがって、上記移動体無線通信装置では、全ての受信部を起動して制御情報を無線受信させたときの各受信部の受信品質を記憶部に記録し、選択起動された一部の受信部で制御情報の間欠受信を繰り返し行なっている内に、当該一部の受信部の受信品質が低下した場合には、記憶部に記録した受信品質に基づいて、次いで受信品質が良い他の一部の受信部を切り替えて起動して以降の制御情報を無線受信する。
これにより、制御情報の間欠受信を繰り返し行なっている内に、選択起動された一部の受信部の受信品質が低下した場合には、良好な受信品質を維持し得る他の無線部に迅速に切り替えて、制御情報の良好な受信を継続しつつ、電力消費を抑制することができる。
【0021】
ここで、本発明では、一般的に知られた受信品質を評価し得る種々なパラメータを用いることができ、例えば、信号を受信したときの受信電界強度(RSSI)、雑音比(CNR)、遅延量などを受信品質を評価するパラメータとして検出するようにしてもよい。
また、本発明は、2以上の受信部を備えた移動体無線通信装置に適用することができ、例えば、4×4MIMO方式による4系統の受信部を備えた移動体無線通信装置に好適である。
【0022】
また、本発明は、同期ワードやページング情報を含む制御情報の単位で受信品質を検出して制御するようにする他、制御情報中の同期ワードやページング情報の単位で受信品質を検出して制御するようにしてもよく、移動体無線通信装置と無線基地局装置との同期保持を重要視する観点からすると、同期ワードの単位で受信品質を検出して制御するのが好ましい。
【0023】
本発明は、TDMA(Time Division Mu1tip1e Access)方式に代表される時分割多重方式、またはFDMA(Frequency Division Mu1tip1e Access)方式に代表される周波数分割多重方式の無線通信システムにおける、移動体無線通信装置の無線アクセス制御技術を典型的な適用例とするが、これら方式のシステムに限定するものではなく、無線基地局装置を有する移動体通信システムに広く適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、その電波状況に即して良好な受信品質が得られる一部の受信部だけを起動して、制御情報の間欠受信を行なうことができるため、制御情報の良好な受信を担保しつつ電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動体無線通信装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る移動体無線通信装置の間欠受信制御を説明する概念図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る移動体無線通信装置の間欠受信制御を説明するフローチャートである。
【図4】本発明を適用する移動体無線通信装置の一例の構成図である。
【図5】移動体無線通信装置を使用する移動体通信システムを示す図である。
【図6】移動体無線通信装置の間欠受信制御を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を、図に示す一実施形態に基づいて具体的に説明する。
本実施形態は、移動体無線通信装置である携帯電話機に本発明を適用したものであり、まず、図4に示す携帯電話機の一例を参照して説明する。
この携帯電話機は、それぞれ独立に無線受信を行なう3系統の受信部1、2、3を備えており、各受信部はそれぞれアンテナ1a、2a、3aを有している。
【0027】
ここに、受信部1に対しては無線送信を行なう送信部4が併設されており、受信部1と送信部2はスイッチ(SW)5を介して送受信アンテナ(TRXアンテナ)1aに接続されている。
また、他の受信部2、3には送信部は併設されておらず、それぞれ受信アンテナ(RXアンテナ)2a、3aに接続されている。
なお、各受信部1、2、3は、フィルタ(FIL)、アンプ(LNA)、ミキサ(MIX)、復調器(DEM)を備えて構成されている。
【0028】
そして、この携帯電話機は、DSPやMPUなどのプロセッサを有する制御部5を備えており、制御部5にはFLASH、SRAM、ROMなどのメモリ(記憶部)6が併設されている。
そして、この携帯電話機には、上記の受信部1、2、3や制御部5などの携帯電話機の各機能部の動作電源となる電池パック7が備えられており、電池パック7から電力が供給されることによって、携帯電話機は移動して無線通信を行なうことができる。
【0029】
図1には、本実施形態に係る携帯電話機の要部の機能構成を示してある。
なお、図1中の図4と対応する部分には、同一符号を付してある。
また、図1では、受信部1を受信部A、受信部2を受信部B、受信部3を受信部Cとしても示してあり、以下の説明では、適宜、受信部Aなどの表現を用いる。
【0030】
この携帯電話機の3系統の受信部1、2、3はそれぞれ受信信号を制御部5に入力し、これら各受信部1、2、3は、それぞれ制御部5から切り替え信号が入力されて、切り替え信号により無線受信処理を行なう起動状態と無線受信処理を停止した休止状態とに切り替えられる。すなわち、休止状態においては、受信部は電池パック7から供給される電力の消費を抑制された状態となる。
【0031】
制御部5は、各受信部から入力される信号に基づいて、各受信部1、2、3の受信品質をそれぞれ検出する品質検出機能5aを有しており、これら受信品質を各受信部に対応付けてメモリテーブル6に記録する。なお、メモリテーブル6は、上記メモリ(記憶部)6により構成される。
また、制御部5は、後述するように、制御信号(本例では、同期ワード)の間欠受信制御を行い、この制御に伴って切り替え信号を各受信部1、2、3へ出力する切替え機能5bを有している。
【0032】
上記携帯電話機による間欠受信制御を、図2を参照して説明する。
〈受信部セービング動作の説明(制御例1)〉
移動体無線通信システムにより、無線基地局装置からの制御情報の送信周期は予め規定されており、制御情報はスーパーフレームと呼ばれる無線基地局装置が無線送信するフレームタイミングに同期した一定周期で送信されている。
このスーパーフレームは、例えば、ARIB-STD79等のシステムであれば、1フレームの18倍である720msec間隔で存在する。
【0033】
携帯電話機は、無線基地局装置がカバーするエリア内を移動しているため、そのスーパーフレームの受信間隔の中で電波伝搬状態が急激に変化することは想定されるが、通常の場合、移動速度に対してスーパーフレーム中の受信間隔が短いため、ほとんどの場合、前回のスーパーフレーム受信の電波伝搬状態で制御情報の良好な受信が可能である。
【0034】
本例では、待ち受け状態において、携帯電話機は、図2に示すように、まず、制御情報の送信タイミングに応じて、制御部5(切替え機能5a)が全ての受信部(A〜C)1〜3を起動して、これら全ての受信部A〜Cによりそれぞれ制御情報を受信し、この1回目の制御情報の受信において品質検出機能5aが検出した受信品質を、各受信部A〜Cに対応付けてメモリテーブル6に記録する。この受信品質は、無線システムにおける変調方式等により種々なパラメータを採用することができるが、受信電界強度(RSSI)、信号対干渉/ノイズレベル比(CNR)、伝搬遅延情報、等化誤差等を一般的に採用することができる。
【0035】
ここで、本例では、メモリテーブル6への記録に際して、制御部5は、所定の基準値に照らして、検出した受信品質をランク付けし、メモリテーブル6には例えば上・中・下といったように受信品質をランクとして記録する。例えば、第1のしきい値よりも受信品質が上回っていれば上、第1のしきい値以下で、かつ、第1のしきい値よりも低い第2のしきい値を上回っていれば中、第2のしきい値以下であれば下にランクして記録する。
なお、このように予めランクとして記録することで、後に受信品質の次に良い受信部を特定する処理の迅速化を図ることができるが、本発明では、検出した受信品質をそのままの数値で記録して、後に受信品質の次に良い受信部を特定する処理を、これら数値の大小により行なうようにしてもよい。また、本発明では、ランク付けをする場合にあっても、ランク値を記録せずとも、受信品質の高い順に受信部の識別情報をメモリテーブル6上で上位から並べて記録するようにしてもよく、要は、各受信部の受信品質の優劣を記録できればよい。
【0036】
そして、携帯電話機は、上記全ての受信部により制御情報を受信すると、制御情報が送信される次のタイミング(図2中の2回目)まで全ての受信部を初めとして、制御部5のスリープ制御を行い、機能のほとんどを休止状態として消費電力を低減する。
次の送信タイミング(2回目)に応じて、携帯電話機の制御部5はスリープ状態が解除され、受信部を再び起動して制御信号の受信動作を行うが、次のような制御を行なう。
【0037】
すなわち、制御部5が、前回(1回目)にメモリテーブル6に記録した受信品質の情報を参照し、前回の制御情報の受信において最も受信品質の良かった受信部(受信部C)だけを起動し、この受信部Cだけで制御情報を受信する。つまり、受信に有効な受信部のみを起動し、他の受信部は休止状態としたまま、2回目の制御情報を受信する。
このように一部の受信部(受信部C)だけを起動して2回目の制御情報を受信すると、再び、全ての受信部及び制御部はスリープ状態となり、その後、3回目(2回目以降)の制御情報の送信タイミングに応じて、上記と同様に受信部Cだけを起動して制御情報を受信する処理を繰り返す。
【0038】
したがって、1回目の受信品質に基づいて、制御情報の受信に有効な一部の受信部だけを起動して、2回目以降の制御情報の受信を行なうことにより、複数の受信部を備えた携帯電話機において、必要最低限の受信部の消費電力にて、制御情報の安定した間欠受信状態を維持することが可能となる。
図2に示す例では、3つの受信部の内の1つの受信部Cだけを起動し、他の受信部A、Bは休止状態とするので、受信部全体の消費電力は、本発明に係る制御を適用しない場合と比較して1/3に低減される。尚、全ての受信部が所定の基準(受信品質)を下回っている場合には、全ての受信部を起動するようにしてもよい。また、各受信部のうち、受信品質が上位である所定数の受信部を起動するようにしてもよい。このとき、受信部の総数をn、起動する所定数の受信部の数をmとしたとき、n>mとされる。
【0039】
そして、連続して間欠受信を継続した場合において、携帯電話機の移動や電波伝搬環境の変化により、受信品質の良かった受信部Cによって十分な受信品質が確保できない場合が生じてしまうことが想定される。
本例では、制御情報を受信する毎に品質検出機能5aが受信品質を検出しており、制御部5は、検出された受信品質が所定の基準より低下したときは、メモリテーブル6を参照して、今まで起動していた受信部Cの次に受信品質の良い受信部Bを特定して、次回以降の制御情報の受信では、この受信部Bを受信部Cに切り替えて起動し、受信部Bだけで制御情報の受信する制御を行なう。
【0040】
このように受信部の切り替えを行っても、受信部Bは或る程度以上の受信品質が見込まれるため、良好な受信状態を回復することができる。
そして、この切り替え処理は、メモリテーブル6に予めランク付けされた情報を利用して行なわれるため、迅速になされる。尚、受信部の切替ではなく、良好な受信状態に回復するまで品質の上位の受信部から順次追加で起動するようにしてもよい。
【0041】
ここで、上記制御処理の拡張例として、制御部5は、切り替えた受信部Cによっても十分な受信品質が得られない場合には、メモリテーブル6を参照して更に次に受信品質が良い受信部(受信部A)に切り替える、あるいはそれらを併用するといったように、受信部を順次切り替える、あるいは追加する制御を行なうことにより良好な受信状態を回復することができる。
【0042】
また、本例の他の制御例として、上記のように一部の受信部だけを起動して制御情報の間欠受信を繰り返し行なっている状態で、品質検出部5aで検出される受信品質が所定の基準より低下したときは、制御部5は、次の制御情報を受信するタイミングで、再び全ての受信部1〜3を起動して、上記1回目と同様に、全ての受信部1〜3により制御情報を無線受信させ、この制御情報の受信について品質検出部5aが検出した各受信部1〜3の受信品質に基づいて、受信品質が良い一部(1又は複数)の受信部を特定する。
そして、制御部5は、上記タイミング以降のタイミングでは、上記特定した一部の受信部だけを起動して制御情報を受信する。
【0043】
このような制御によっても、所定の基準値以上の受信品質が得られる状態では、一部の受信部だけを起動することで、消費電力を抑制しつつ制御情報を良好に受信することができる。
そして、このような制御では、メモリテーブル6を用いて、各受信部の受信品質を記録したり、更には、これら受信品質をランク付けする必要がなくなるので、制御に必要とされる構成や処理を簡素化することができる。
【0044】
〈最大比合成を適用する他の制御例の説明(制御例2)〉
前述のとおり、各受信部を独立で制御する構成において、ダイバーシチ方式の動作について説明する。
従来より受信品質の向上、特に移動体無線通信装置の移動に伴うフェージングヘの対応としてMRC(最大比合成)による受信ダイバーシチが採用されている。
図4に示した構成のように、受信信号のAD変換後のべ一スバンド信号はDSP等の信号処理プロセッサにより復調される。MRCは、ここで復調された受信信号の位相を揃え、そのレベル(受信品質)に応じて重み付けして合成する方式である。
【0045】
MRCを利用する本制御例では、制御部5が、複数の受信部にて受信した信号を、各々受信品質の測定や評価を行い、適応的に合成と非合成の切り替えを行う。
例えば、制御部5は、単一の受信部だけを起動して十分な受信品質(所定の基準値以上の受信品質)が得られる場合には、前述のとおりにダイバーシチによる最大比合成なしで、他の受信部は休止状態とすることにより消費電力を低減する制御を行なう。
【0046】
他方、制御部5は、単一の受信部だけで十分な受信品質が得られない場合は、メモリテーブル6を参照して、当該受信部に次いで受信品質が良い他の受信部を1つ又は複数特定し、当該受信部に加えて特定した他の受信部も起動し、これら受信部で受信される信号を最大比合成の対象とする。
この制御により、起動される受信部の数は増加するが、全ての受信部を起動するより少数の受信部を起動するだけとすることができるので、消費電力の抑制を実現しつつS/Nを改善することができる。
【0047】
〈受信部を周期的に切り替える他の制御例の説明(制御例3)〉
例えばシャドウイング等により、一部にアンテナ(受信部)に対する急激な通信パス無線伝搬路の消失または減衰が発生することがある。
このような状況に対処する方法として、制御部5による制御例として、受信部の切り替えを自律的に制御することで、急激な受信品質の劣化の影響を受けることなく、且つ、受信部の消費電力の低減を行うことができる。
【0048】
本例では、制御部5は、スーパーフレームのタイミング毎に、各受信部の有効/無効(起動/休止)を順次切り替える制御を行なう。この場合、常に全ての受信部を対象とする必要はなく、通常は幾つかの候補とした受信部を対象として、各受信のタイミングにて受信品質の測定を行い、この受信品質によりメモリテーブル6の更新を行う。
このメモリテーブル6において、所定の基準値以上の受信品質を示す受信部だけを候補として、これら候補の内で受信部を切り替える制御を行うことにより、全ての受信部を起動とする場合と比較して、消費電力を抑えることを実現しながら急激な受信品質の劣化への対応もできる。
【0049】
図3には、制御部5が行なう上記制御の一例を示してあり、まず、前述と同様に、全ての受信部を起動(有効)して、これら各受信部について検出された受信品質をメモリテーブル6に記録する(ステップS1)。
そして、メモリテーブル6を参照して、所定の基準値以上の受信品質を示す受信部があるかを判断し(ステップS2)、所定の基準値以上の受信品質を示す受信部(n個)を候補として決定する(ステップS3)。
【0050】
ここで、候補となり得る受信部が1つもない場合は(ステップS2)、携帯電話機が通信圏外に移行したものとみなすことができるので、当該制御を終了する。
また、大概の場合に複数の受信部が候補となるが、単一の受信部だけが候補とされることがあってもよく、この場合には、当該単一の候補を起動して所定の受信品質があられないときには、再びステップS1の処理へ戻る。
【0051】
次いで、上記候補の内から、例えば受信品質がより高いものといった基準に従って、単一の受信部を起動(有効)して制御情報を受信し(ステップS4)、この受信品質を品質検出機能5aで検出する(ステップS5)。
そして、この受信品質が所定の基準以上であるかを評価し(ステップS6)、所定の基準値以下の場合には、制御情報を受信するために起動する受信部を、上記候補の内の他の受信部に切り替える(ステップS7)。また、このように切り替える他の受信部が上記候補の中に無くなったときは、上記ステップS1の処理に戻る。
【0052】
〈間欠受信以外への適用例(制御例4)〉
上記説明では、本願発明を制御情報の間欠受信制御に適用した例を示したが、本願発明の概念はランダムに呼接続を行う無線システムの移動体無線通信装置ヘの適用も可能である。
無線アクセス方式として、無線基地局装置と移動体無線通信装置との間、または複数の移動体無線通信装置の間だけで構成される無線システムでは、各装置からの呼接続要求のある場合のみ無線区間の送受信を行い、前述のような無線基地局装置からの周期的な信号送信がない場合も想定される。
【0053】
この場合、受信側の移動体無線通信装置では、いつ有効な信号送出があるか判断できないため、受信部の動作としては常にアクティブな状態である必要があり、前述のような間欠受信を行う場合に比較して消費電カが大きくなる。
そこで、複数の受信部を備えた移動体無線通信装置において、無線通信が確立した状態(すなわち、全ての受信部を起動した状態)で検出した各受信部の受信品質に基づいて、待ち受け状態(上記の有効な信号送出かを待っている状態)では、受信品質の良い一部の受信部だけを起動する制御を行なう。
【0054】
このような制御によっても、複数の受信部を備えた移動体無線通信装置において、十分な受信品質を単補しつつ消費電力の抑制を実現することができる。
なお、この制御において、前述のように、検出した受信品質は各受信部に対応付けてランク付けしてメモリテーブルに記録しておくのが好ましく、これにより、適切な受信部の選択や処理の迅速化を図ることができる。
【0055】
〈本願発明の概念〉
それぞれ無線通信をするための受信部を複数備えた移動体無線通信装置において、各受信部の受信品質を検出する検出部と、検出部が検出した受信品質に基づいて、各受信部を起動した状態と休止した状態とに制御する制御部とを備え、この制御部は、全ての受信部を起動状態と、当該起動状態で検出された各受信部の受信品質に基づいて、以後の受信処理においては、前記受信部の内の一部の受信部だけを起動状態とし、他の受信部は休止状態として、受信処理を行なう。
【符号の説明】
【0056】
1〜3:受信部、 5:制御部、
5a:品質検出部、 5b:切り替え部、
6:メモリテーブル(記憶部)、 7:電池パック、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局から周期的に送信される制御情報を無線受信する移動体無線通信装置において、
制御情報をそれぞれ無線受信する複数の受信部と、
各受信部の受信品質を検出する検出部と、
受信部を制御情報の送信タイミングに応じて起動して当該制御情報を無線受信させる制御部と、を備え、
前記制御部は、全ての前記受信部を起動して制御情報を無線受信させ、当該制御情報の以降の制御情報の送信タイミングに応じては、当該制御情報の無線受信について前記検出部で検出される各受信部の受信品質に基づいて、受信品質が最も良い受信部あるいは受信品質が上位である所定数の受信部を起動して当該以降の制御情報を無線受信させる制御を行なう、ことを特徴とする移動体無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体無線通信装置において、
前記制御部は、一部の前記受信部に起動を繰り返して前記以降の制御情報を無線受信させ、前記以降の制御情報の無線受信について前記検出部で検出される受信品質が所定の基準より低下したときは、再び、全ての前記受信部を起動して制御情報を無線受信させ、受信品質が最も良い受信部あるいは受信品質が上位である所定数の受信部を起動して更に以降の制御情報を無線受信させる制御を行なう、ことを特徴とする移動体無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体無線通信装置において、
前記検出部で検出される受信品質を各受信部に対応付けて記録する記憶部を備え、
前記制御部は、全ての前記受信部を起動して制御情報を無線受信させたときに、前記検出部で検出される各受信部の受信品質を記憶部に記録し、
更に、前記制御部は、一部の前記受信部に起動を繰り返して前記以降の制御情報を無線受信させ、前記以降の制御情報の無線受信について前記検出部で検出される受信品質が所定の基準より低下したときは、前記記憶部に記録した受信品質の内から、起動されていた前記一部の受信部に次いで受信品質が良い他の一部の受信部を切り替えて起動して、更に以降の制御情報を無線受信させる制御を行なう、ことを特徴とする移動体無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9088(P2013−9088A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139465(P2011−139465)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】