説明

移動体用地図情報更新装置、ナビゲーション装置および移動体用地図情報更新システム

【課題】目的地や経由地までの本来の最適な経路を素早く設定できるようにする。
【解決手段】制御回路が存在可能領域から外れたことが決定されると(S1)、当該地図ブロックの最新データが存在するときに(S3:YES)、サーバからその地図ブロックの地図情報を取得して更新し(S4)、更新された地図ブロックの周囲の地図ブロックBについて更新要と判定された地図ブロックの地図情報を順次更新する(S5〜S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体用の地図情報の更新処理を行う移動体用地図情報更新装置、ナビゲーション装置および移動体用地図情報更新システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば移動体用のナビゲーション装置は、位置検出器により現在位置を検出し、当該現在位置を地図情報と照合して移動体の現在位置を特定している。しかし、例えば地図情報を作成した後に新しく道路が造成され、例えば移動体が地図情報中に含まれない道路を移動するときには、当該ナビゲーション装置が他の道路等を移動していると誤認識することがある。そこで、このような問題を解決するため、移動体用の地図情報更新技術が供されている。この移動体用地図情報更新技術は、移動状態に応じて地図情報の更新の有無を判定し、地図情報の更新があった場合には、移動体用の地図情報の更新処理を行い、その後は更新された地図情報を用いる技術である(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている技術によれば、車両の現在位置を含むメッシュやその周囲のメッシュについて配信センタで地図情報の新旧比較を行い、地図情報の更新があった場合には、最新の地図情報を受信し当該地図情報を用いて走行状態を特定している。また例えば、特許文献2に開示されている技術によれば、地図のバージョン情報を比較し、サーバの最新バージョンと車載機の最新バージョンのそれぞれの地図で経路探索を行っている。
【0004】
また、案内経路に沿った地図情報の区画情報および新旧識別情報を外部に送信することにより、外部より案内経路に沿った更新された当該地図情報を取得する技術も供されている(例えば、特許文献4参照)。この特許文献4記載の技術によれば、案内経路に沿った更新された地図情報のうち、移動体の現在位置に近い地図情報を優先的に取得するようにしたので、移動体が案内経路に沿って移動する上で最も必要な現在位置周辺の更新された地図情報を優先的に提供することができるようになる。その他にも、特許文献5や特許文献6に示される地図情報更新技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−125508号公報
【特許文献2】特開2004−125509号公報
【特許文献3】特開2004−125510号公報
【特許文献4】特開2004−85245号公報
【特許文献5】特開2004−126035号公報
【特許文献6】特開2004−233174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3記載の技術によれば移動体の現在位置における最新の地図情報を取得でき、以降のナビゲーション機能に当該地図情報を使用することができる。また、これらの技術に特許文献4記載の技術を組み合わせると現在位置から案内経路に沿った更新された地図情報を取得することができるものの、その他の地図ブロックに係る地図情報を更新することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、漏れなく地図ブロックの地図情報を更新することができるようにした移動体用地図情報更新装置、ナビゲーション装置および移動体用地図情報更新システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、第1の更新手段は、地図情報を構成する複数の地図ブロックのうち移動体が位置する地図ブロックまたは当該地図ブロックに隣接する周辺地図ブロックの地図情報が最新でないときは、最新でない地図ブロックの地図情報を外部からのダウンロードにより更新し、第2の更新手段は、最新でない地図ブロックの地図情報が更新された場合に、当該地図ブロックに隣接する周辺地図ブロックの地図情報が最新でないときは、最新でない地図ブロックの地図情報を外部からのダウンロードにより更新し、実行手段が第2の更新手段の更新動作を周辺地図ブロックの地図情報の全てが最新となるまで繰り返すため、例えば新規に道路が造成されたとしてもその道路に沿って順次地図情報が更新されるようになる。これにより、漏れなく地図ブロックの地図情報を更新できる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、第1の更新手段が、移動体の位置と当該移動体の位置周辺の地図情報とを照合し移動体が存在可能領域から外れていると決定されたことを条件として当該存在不可能領域における地図ブロックの地図情報から更新するため、他の道路が存在する可能性のある領域周辺の地図ブロックの地図情報から更新することができ、移動体の位置周辺の地図ブロックの地図情報を的確に更新できるようになる。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、位置特定手段により所定時間毎に特定された移動体の位置が連続的に存在可能領域から外れていることを条件として存在可能領域から外れていると決定するため、存在可能領域から外れたことを確実に断定することができ移動体が存在可能領域に位置するか存在不可能領域に位置するかを判定するときの確実性を増すことができる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、第1の更新手段は、移動体の位置が存在可能領域から外れていると決定された決定回数が所定回数以上であることを条件として存在不可能領域における地図ブロックの地図情報から更新するため、当該場所が存在不可能領域であることを確認した上で当該地図ブロックの地図情報を確実に更新することができる。しかも、地図情報を要求する要求処理回数を低減できる。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、位置特定手段が移動体の現在位置を特定し、移動体が新規な地図ブロック内に位置特定されるたびに更新手段がその地図ブロックの地図情報を更新するため、必要な地図情報を漏れなく更新できるようになる。
【0012】
請求項6記載の発明のように、更新手段を、新しい地図ブロックの地図情報を更新するときには当該地図ブロック周辺の地図ブロックの地図情報をも更新するように構成することが望ましい。
【0013】
請求項7記載のナビゲーション装置によれば、請求項1ないし6の何れかに記載の移動体用地図情報更新装置の更新手段,実行手段により地図ブロックの更新可能な地図情報を全て更新した後、設定手段が目的地点に至るまでの案内経路を探索して設定するため、地図情報が全て更新された後に案内経路を探索することができ最適な案内経路を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の移動体用地図情報更新装置の機能を車両用のナビゲーション装置に搭載して適用した第1の実施形態について、図1ないし図5を参照しながら説明する。
【0015】
移動体用地図情報更新システムとしての車両用地図情報更新システムAは、ナビゲーション装置1と地図サーバシステム50とにより構成されている。図1は、車両用地図情報更新システムの全体の電気的構成を機能ブロックの組み合わせにより概略的に示している。
【0016】
車両用(移動体用)のナビゲーション装置1は、制御回路2を備え、当該制御回路2に対して、位置検出器3、地図データ入力器4、表示装置5、操作スイッチ群6、音声回路部7、リモコンセンサ8、外部メモリ9、撮影カメラ10、通信装置11を接続して構成されている。地図サーバシステム50は、サーバ51を備え、当該サーバ51に地図データベース52および通信装置53を接続して構成されている。
【0017】
制御回路2は、例えばCPUやメモリ(何れも図示せず)を備えて構成されている。この制御回路2は、第1および第2の更新手段、位置特定手段、実行手段として機能する構成要素である。制御回路2内には、ナビゲーション用のプログラムやプログラム実行時の処理データのほか、地図データ入力器4から取得した道路地図データなどが一時的に格納されるようになっている。
【0018】
位置検出器3は、例えばGPS(Global Positioning System)用の人工衛星からのGPS信号を受信するGPS受信機12、ヨーレートを検出するためのジャイロスコープ13、車両の速度を検出するための車速センサ14を備えて構成される。尚、位置検出器3としては、その検出精度等に応じて、地磁気を検出する地磁気センサや、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するための加速度センサや、車両のピッチング方向の傾斜角を検出するための傾斜角センサ(何れも図示せず)を前述構成要素12〜14に付加して構成すると良い。位置検出器3は、これらの位置検出要素の検出信号を補間しながら高精度に位置検出するようになっている。
【0019】
地図データ入力器4は、CD−ROMやDVD−ROMあるいはハードディスク、不揮発性の半導体メモリなどのような大容量の情報記憶媒体を利用して地図情報(地図データ)を入力するための機器である。この地図情報は、区画された複数の地図ブロック毎にデータ化されており、当該地図ブロック毎にバージョン情報が付されている。地図情報は、地図表示のための地図描画用データ、マップマッチングや経路探索、経路誘導などの種々の処理に必要な道路データ、交差点の詳細データからなる交差点データ、背景レイヤを表示するための背景データ、地名、地域などを表示するための地名データの他に、コンビニエンスストア等の建物や施設の位置、その名称が記録された施設データ、電話番号と施設との対応を示す電話番号データなど、地図に対応したデータ等である。これらの地図データは、データベースとして記録されている。
【0020】
表示装置5は、地図画面などを表示するための例えばカラー液晶ディスプレイやヘッドアップディスプレイ等により構成されており、車両の運転席近傍に設置され報知装置を構成する。図2に示すように、この表示装置5の表示画面Wには、通常時において縮尺を複数段階に変更可能な道路地図が表示されると共に、その表示に重ね合わせて車両の現在位置および進行方向を示すポインタMが表示されるようになっている。また、周知のダイクストラ法を用いて行われる目的地Zや経由地(図示せず)などの目的地点までの経路計算結果に基づいた経路案内機能の実行時には、道路地図に重ね合わせた状態で進むべき案内ルートKが表示されるようになっている。
【0021】
さらにユーザ(一般には車両の運転者)による目的地Zや経由地などの地点検索およびこの地点を入力するための各種のメニュー画面および入力画面、並びに各種のメッセージ、インフォメーションやヘルプ画面なども表示されるようになっている。
【0022】
操作スイッチ群6は、表示装置5の周辺に配設されたメカニカルスイッチや当該表示装置5の表示画面上に形成されたタッチパネルなどからなり、各種データや設定事項などの操作に係るコマンドや、文字情報や地図の指定信号を制御回路2に与えるために設けられている。
【0023】
音声回路部7は、音声合成回路(図示せず)等を備え、報知装置としてのスピーカ15,および音入力手段としてのマイク16を接続しており、制御回路2からの音声情報に応じた音声をスピーカ15から出力したり、マイク16からの音声情報を受信して制御回路2に与えるようになっている。リモコンセンサ8は、リモコン17からの操作信号を遠隔から受信して制御回路2に与えるようになっている。
【0024】
外部メモリ9は、フラッシュメモリなどのデータ書換可能な不揮発性メモリやハードディスクにより構成されており、例えば他の規格に対応するためのプログラムソフトを記憶したり特定のデータ(走行軌跡の履歴やデジタルカメラにより取り込まれた任意の画像データなど)の保存や呼出などを行ったりするために設けられている。
【0025】
撮影カメラ10は、車両に設置され車両の外方の周辺画像を撮影し、この画像情報を制御回路2に送信するようになっている。制御回路2は、この車両の周辺画像情報を画像認識可能に構成されている。
通信装置11は、所定の規格に準拠した無線通信機能(例えば、無線LANやブルートゥース(登録商標))を備えており、サーバ51に接続された通信装置53との間で無線通信可能に構成されている。
【0026】
制御回路2は、操作スイッチ群6やリモコンセンサ8を通じて入力されたコマンドにより、周知の地図表示機能、経路計算機能、経路案内機能、電話番号検索機能、郵便番号検索機能、マップコード(登録商標)のような固有コードを利用した検索機能、ジャンル別検索機能、最寄り施設検索機能、目的地登録機能、地点登録機能など、多種多様な支援機能に係る処理を実行するように構成されている。
【0027】
地図サーバシステム50は、外部(例えばナビゲーション装置1)からの要求に応じてサーバ51が地図データベース52から地図情報(前述参照:バージョン情報や地図描画用データ等)を地図ブロック毎に取得し通信装置53を通じて外部(例えば車両側の通信装置11)に対して送信(外部との間で通信)可能に構成されている。
【0028】
上記構成の作用について、図2ないし図5をも参照しながら説明する。
本実施形態においては、ナビゲーション装置1の制御回路2が地図データ入力器4から入力する地図情報のうち、車両の現在位置周辺について地図ブロック毎に地図情報が最新であるか否かを判定し、この判定結果として当該地図ブロックの地図情報が最新でなければこの地図ブロックの地図情報を外部からダウンロードして更新する更新手段に特徴を備えているため、この部分を中心に説明を行う。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、ナビゲーション装置1の制御回路2がユーザからの要求に応じて目的地Zに至るまでの案内用の経路Kを予め設定し、車両がこの案内経路K上を走行中に、古い地図情報中には存在しない経路K1を最終的に探索し、この探索された経路K1を車両が走行する場合を例に挙げて説明する。尚、図2中においては、経路K2も経路K1と同様に古い地図情報中には存在しない経路であり、マーカMは車両の現在位置を示している。
【0030】
図3は、ナビゲーション装置が行う地図情報の更新処理を概略的に示している。
まず、制御回路2は、自車両(図2のマーカMの位置参照)が存在可能領域(この場合、設定経路K)から外れたことが決定される(ステップS1:YES)まで、車両の現在位置を位置検出器3により検出して特定し続ける。
【0031】
制御回路2は、マップマッチング機能により自車両の現在位置を補正したとしても経路Kから逸脱している(外れている)ことが検出されると、通信装置11および53を通じてサーバ51に接続された地図データベース52から該当する地図ブロックBのバージョン情報を取得する(ステップS2)。図4は、バージョン情報Vと地図ブロックBの対応を示している。
【0032】
この図4に示すように、地図情報は、所定範囲(例えば10km四方正方形)の区画(所定範囲)に分割された状態で記憶されており、これらの複数の地図ブロックB毎にバージョン情報が記録されている。また、表示装置5の表示画面においては、マーカMが車両の現在位置として示されている。例えば、図4(a)〜図4(c)に示すように、全体の地図情報の複数の各地図ブロックBにおいてバージョン情報Vとして「V1.02」が対応して制御回路2内のメモリに記憶されていることを示している。
【0033】
制御回路2は、例えばマップマッチング機能によりたとえマップマッチング処理を施したとしても経路K(存在可能領域に相当)から車両が逸脱したことを検出すると、存在不可能領域に位置していることを決定する。この場合、経路Kから車両が外れたことを決定するときには、車両の現在位置が例えば所定時間(例えば1秒)間隔毎に所定回数(例えば10回)連続的に経路Kから外れたことを条件として経路Kから車両が外れていることを決定することが望ましい。すなわち、車両が経路Kから一旦外れたとしても直ぐにユーザが車両を経路Kに戻す場合もあるためである。この場合、車両が経路Kに位置するか経路Kから外れているかの判定に係る確実性を増すことができる。
【0034】
制御回路2は車両が経路Kから逸脱したことを決定すると、前述したようにステップS2において、当該地図ブロックBoのバージョン情報Vをサーバ51に要求し、サーバ51からバージョン情報Vを取得する(図4(a)のハッチング部分参照)。
【0035】
制御回路2は、サーバ51から取得した地図ブロックBoのバージョン情報Vと、この対応した地図ブロックについてメモリに記憶されているバージョン情報Vとを照合し、メモリに記憶されているバージョン情報Vが最新であるか否かを判定し最新であれば(ステップS3:NO)、更新処理を行うことなく終了する。しかし制御回路2は、バージョン情報Vを照合し最新でなければ(ステップS3:YES)、サーバ51からその地図ブロックBの地図情報を取得して更新する(ステップS4)。
【0036】
例えば図4(a)に示すように、新規な経路K1およびK2が形成されている該当地図ブロックBのバージョン情報Vが「V1.02」であり、サーバ51から取得したバージョン情報Vが「V1.03」であるとすると、これらのバージョン情報Vを比較すると最新バージョン情報Vは「V1.03」であるため、制御回路2はサーバ51から該当地図ブロックBの地図情報を取得して更新する。尚、バージョン情報Vを地図情報の新旧を表すための識別符号の一例としてあげたが、地図情報の新旧を表現できればどのような識別符号を使用しても良い。
【0037】
次に、制御回路2は、その更新された地図ブロックBの地図情報についてその周囲(周辺)の例えば隣接1もしくは複数ブロックの地図ブロックBのバージョン情報Vをサーバ51から取得し(ステップS5)、この地図ブロックの最新データが存在すると判定すると(ステップS6:YES)、サーバ51からその地図ブロックBの地図情報をダウンロード取得して更新する(ステップS7)。
【0038】
逆に、制御回路2は、ステップS5においてその更新された地図ブロックBの地図情報についてその周囲(周辺)の地図ブロックBのバージョン情報Vをサーバ51から取得し、この地図ブロックの最新データが存在しないと判定すると(ステップS6:NO)、終了する。すなわち、更新された地図ブロックの周辺の地図ブロックの最新データが隣接して存在する限り、制御回路2がステップS5〜S7の処理を繰り返すことにより地図ブロックBの地図情報を順次更新できる。
【0039】
例えば、図4(b)に示すように、制御回路2は、更新された地図ブロックBの周囲における例えば隣接1もしくは複数ブロックの地図情報のバージョン情報Vをサーバ51から取得し、この結果、新規な経路K1およびK2が含まれている地図ブロックBのバージョン情報Vが最新のバージョンであることを特定することができる。このとき制御回路2はサーバ51から最新のバージョンである地図ブロックBaに係る地図情報を更新することができ、図4(c)に示すように、経路K1およびK2を含む地図ブロックBaの地図情報を更新することができる。
【0040】
その後同様に、図5(a)〜図5(c)に示すように、制御回路2は、更新された地図ブロックBaの周囲における隣接1ブロックの地図情報のバージョン情報Vを順次サーバ51から取得し、このバージョン情報Vを照合した結果、最新バージョンの地図ブロックBbの地図情報を取得する。このようにして、経路K1およびK2に沿った地図ブロックを順次更新すると、図5(c)に示すように、新規な道路の経路K1およびK2に沿った地図ブロックBa〜Bcに係る地図情報を全て更新することができる。
【0041】
次に、制御回路2は、自車両の存在する位置(マーカMの位置参照)において経路探索処理を行う。この場合、目的地Zに至るまでの経路として経路K、K1、K2の3通りが存在する。制御回路2の経路探索機能の詳細は省略するが、一般的に距離優先して経路探索を行うと、最短経路となる経路は経路K1であるため、この経路K1を選択することができる。
【0042】
例えば、特許文献4の技術を本実施形態の新規な道路構成に適用すると、案内経路に沿って更新された地図情報を取得した後経路探索を行うことができる。しかし、経路Kに沿った地図情報しか更新されないため、新規に経路K1およびK2の道路が造成されていたとしても、経路K1およびK2に沿った地図ブロックの地図情報が更新されるわけではない。したがって、目的地Zまでの本来の最適な経路が設定されることがない。ユーザは誤って経路Kや経路K2に進入してしまう虞もある。例えば経路探索を行った時点で経路K2に進入していた場合にはこのまま経路K2に進入するように経路探索処理を行ってしまうこともある。すると、目的地Zに至るまでの経路が本来の最適経路K1と異なってしまう虞を生じてしまう。
【0043】
本実施形態によれば、制御回路2が、一旦更新された地図ブロックBの周囲の地図ブロックBについて更新要と判定された地図ブロックBの地図情報を順次更新するため、たとえ新規な道路等が造成されたとしてもその道路に沿って順次地図情報が更新されるようになる。これにより、少なくとも目的地Zに至るまでの地図ブロックの地図情報を更新することができる。
【0044】
自車両の現在位置から遠方に目的地Zが経路設定されていたとしても、当該遠方の目的地Zに至るまで移動可能性のある経路K1およびK2の通過する地図ブロックBの地図情報まで素早く更新でき、目的地Zに至るまでの本来の最適な経路を素早く設定できるようになる。
【0045】
制御回路2が、車両の現在位置を特定し、この車両の現在位置と当該現在位置周辺の地図情報とを照合し、車両が経路Kから外れて存在不可能領域に移動したことが決定されたことを条件として当該存在不可能領域における地図ブロックBoの地図情報から更新するため、他経路が存在する可能性のある領域周辺の地図ブロックBoの地図情報から更新でき、不必要な地図ブロックの地図情報を更新する可能性を低減できる。すなわち、経路設定に必要な地図情報を的確に更新できるようになる。
【0046】
制御回路2が、目的地Zに至るまでの地図ブロックBの地図情報を全て更新した後に案内経路を探索して設定しているため、地図情報が全て更新された後に案内経路K1を探索することができ最適な案内経路を設定することができる。
【0047】
制御回路2は、経路Kから外れたことが特定されたときに、その時点においてサーバ51に対して通信要求を行い目的地Zに至るまでの地図情報を取得しているため、新たな地図ブロックBに移動するたびに地図情報を取得する構成に比較して車両側からのサーバ51に対する通信要求回数を減らすことができサーバ51側の通信処理負担を軽減することができる。
【0048】
制御回路2が、経路Kから車両が外れたことを決定するときには、車両の現在位置が例えば所定時間(1秒)間隔毎に所定回数(10回)連続的に経路Kから外れたことを条件として経路Kから車両が外れたことを決定するため、車両が経路Kに位置するか経路Kから外れているかの判定についてその確実性を増すことができる。しかも、地図情報を要求する要求処理回数を低減することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図6および図7は、本発明の第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態と異なるところは、車両の現在位置が存在可能領域から外れていると決定された決定回数が所定回数以上であることを条件として当該地図ブロックの地図情報から更新するところにある。前述実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
例えば、ナビゲーション装置1側から地図ブロックBの地図情報の更新要求処理を行うと、例えば位置検出器3による位置計測誤差等の影響により、正しく車両の現在位置を特定できない場合には、位置計測誤差に伴う異常が発生するたびにナビゲーション装置1から地図サーバシステム50に対して地図更新要求処理が頻繁に発生してしまう。すると、地図サーバシステム50の処理負荷が増加してしまい、地図サーバシステム50を管理する事業者は多数の使用者にサービスを提供することができない。そこで、車両用のナビゲーション装置1からサーバ51に対して地図情報を要求する要求回数を低減できるようにした実施形態を示す。
【0051】
図6は、制御回路が行う処理動作を概略的に示すフローチャートである。また、図7は、その動作に係る態様を概略的に示す説明図である。
制御回路2は、予め設定された経路Kから外れたことを検出し当該異常情報を取得したときに(ステップT1:YES)、必要に応じて前回の異常情報取得時から所定時間(例えば1時間)以上経過していることを条件として、存在可能領域から外れたと検出し、以下のステップT3〜T11の処理を行う。この条件を満たさない場合には、処理を終了する。
【0052】
制御回路2は、ステップT1およびT2の両条件を共に満たしていると判定すると、異常の発生場所として記憶されているか否かを判定する(ステップT3)。制御回路2は、異常の発生場所として記憶されていれば(ステップT3:YES)、存在可能領域から外れた当該発生場所の回数(発生回数)をインクリメント(+1)する(ステップT4)。尚、その場所に異常が発生していなければ(ステップT3:NO)、その異常の発生場所の発生回数を1とする(ステップT5)。
【0053】
次に、制御回路2は、該当場所の発生回数が所定回数(例えば2回)より多いか否かを判定する(ステップT6)。このとき、制御回路2は、発生回数が所定回数より多いことを条件として、存在可能領域から外れたことを決定する(ステップT7)。また制御回路2は、サーバ51から該当する地図ブロックBのバージョン情報Vを取得する(ステップT8)。その後、制御回路2は、その地図ブロックBの最新データが存在すると判定されたときにサーバ51からその地図ブロックBの地図情報を取得して更新し(ステップT10)、異常発生場所の履歴をクリアしステップT1から処理を繰りかえす。ステップT6においてNOと判定されればステップT1から処理を繰り返す。
【0054】
実際の動作の詳細は、以下の説明のようになる。例えば、図7(a)に示すように、制御回路2は経路Kから所定距離(例えば20m)外れたことを検出した時点で、異常の発生場所(マーカM1の位置参照)として当該場所Xの発生回数を1として対応付けて制御回路2の内蔵メモリに記憶させる。その後、図7(b)に示すように、制御回路2が経路Kの周辺に外れたことを検出した時点で、当該発生場所(マーカM2の位置参照)として当該場所Yの発生回数を1として対応付けて制御回路2の内蔵メモリに記憶させる。
【0055】
その後、図7(c)に示すように、制御回路2が車両の現在位置をマーカM3の位置に特定したときに経路Kから外れたと判定する。このときの場所は、完全に同一場所とは限らない。したがって、図7(d)に示す方法によって同一場所として認定すると良い。すなわち、制御回路2が1回目および2回目に経路Kを逸脱した発生場所Xから所定の半径Rの範囲内に位置するか否かを判定し、この所定の半径Rの範囲内に位置している(図7(d)のマーカM3参照)か否かを判定し、所定の半径Rの範囲内に位置していることを条件として発生場所が同一場所であると認定するようにすると良い。
【0056】
この図7(a)〜図7(c)に示す位置関係の場合、3回目に経路Kを逸脱した車両の位置M3が、1回目に経路Kを逸脱した車両の位置M1から半径Rの範囲に含まれるため、3回目に経路Kを逸脱した発生場所を場所Xとして特定する。したがって、場所Xの発生回数が所定回数(2回)以上となり、この時点で初めて場所Xに相当する地図ブロックBの地図情報のバージョン情報を取得し最新データが存在するときに地図情報を更新する。
【0057】
本実施形態によれば、車両の現在位置が経路Kから外れていると決定された決定回数が所定回数以上であることを条件としてこの地図ブロックBの地図情報から更新するようにしているため、当該場所が存在不可能領域であることを確認して地図ブロックBの地図情報を確実に更新することができる。しかも、ナビゲーション装置1側から地図情報を要求する要求処理回数を低減させることができる。
【0058】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、現在位置を特定したときに、新規な地図ブロック内に位置特定されるたびに当該地図ブロックの地図情報を更新するところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。図8は、この更新地図ブロックを概略的に示している。
【0059】
この図8に示すように、制御回路2は、位置検出器3により検出された現在位置により車両の現在位置を特定し、新規の地図ブロックBに進入したときに、その地図ブロックのみ、もしくは当該地図ブロックと共に例えば隣接1ブロック周囲を含む現在位置の地図ブロックB(図8のハッチング部分B1参照)についてバージョン情報Vを要求し、このバージョン情報Vにより新しい地図情報が存在すると判定されたときには、当該地図ブロックBの地図情報を更新処理する。これにより、車両が走行しているときに地図ブロックBの地図情報を更新することができるようになり、車両が経路Kを走行しているときに順次地図情報を更新することができる。
【0060】
(他の実施形態)
本発明は、上記事情に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形もしくは拡張が可能である。
第1の実施形態においては、制御回路2が、マップマッチング機能によりマップマッチング処理を施した後に経路K(存在可能領域に相当)から車両の現在位置が逸脱したことを検出することで存在不可能領域に位置することを決定し、当該存在不可能領域における地図ブロックBにおける地図情報から更新する実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、マップマッチング処理を行うことなく逸脱したことを検出するようにしても良い。
【0061】
ナビゲーション装置1に車両用地図情報更新機能を搭載した実施形態を示したが、地図サーバシステム50側に搭載しても良い。車両用に適用した実施形態を示したが、歩行者用や携帯用など様々な移動体用の用途に適用できる。
【0062】
更新の要否の判定処理や当該更新処理を、ナビゲーション装置1の制御回路2が行う実施形態を示したが、サーバ51が行うようにしても良い。目的地Zまでの最適経路に限らず経由地等の目的地点までの最適経路を設定する処理に適用しても良い。
【0063】
更新された地図ブロックの周囲1ブロックの地図情報の更新が必要であるか否かを判定し更新要と判定されたときに地図情報を更新する実施形態を示したが、周辺の複数の地図ブロックの更新が必要であるか否かを判定し更新要と判定されたときに地図情報を更新するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】経路の説明図
【図3】処理動作を概略的に示すフローチャート
【図4】(a)〜(c)更新処理の時間的変化を示す説明図(その1)
【図5】(a)〜(c)更新処理の時間的変化を示す説明図(その2)
【図6】本発明の第2の実施形態に係る図3相当図
【図7】(a)〜(c)発生場所と発生回数の一例を示す説明図、(d)発生場所の説明図
【図8】本発明の第3の実施形態に係る更新処理の説明図
【符号の説明】
【0065】
図面中、1は車両用地図情報更新装置(ナビゲーション装置)、2は制御回路(第1の更新手段、第2の更新手段、実行手段、位置特定手段)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を構成する複数の地図ブロックのうち移動体が位置する地図ブロックまたは当該地図ブロックに隣接する周辺地図ブロックの地図情報が最新でないときは、最新でない地図ブロックの地図情報を外部からのダウンロードにより更新する第1の更新手段と、
最新でない地図ブロックの地図情報が更新された場合に、当該地図ブロックに隣接する周辺地図ブロックの地図情報が最新でないときは、最新でない地図ブロックの地図情報を外部からのダウンロードにより更新する第2の更新手段と、
この第2の更新手段の更新動作を前記周辺地図ブロックの地図情報の全てが最新となるまで繰り返す実行手段とを備えたことを特徴とする移動体用地図情報更新装置。
【請求項2】
前記第1の更新手段は、前記移動体の位置と当該移動体の位置周辺の地図情報とを照合し前記移動体が存在可能領域から外れていると決定されたことを条件として当該存在不可能領域における地図ブロックの地図情報から更新することを特徴とする請求項1記載の移動体用地図情報更新装置。
【請求項3】
位置特定手段により所定時間毎に特定された移動体の位置が連続的に存在可能領域から外れていることを条件として前記存在可能領域から外れていると決定することを特徴とする請求項2記載の移動体用地図情報更新装置。
【請求項4】
前記第1の更新手段は、移動体の位置が存在可能領域から外れていると決定された決定回数が所定回数以上であることを条件として存在不可能領域における地図ブロックの地図情報から更新することを特徴とする請求項2または3記載の移動体用地図情報更新装置。
【請求項5】
移動体の現在位置を特定する位置特定手段と、
複数の地図ブロックに区分けされた地図情報について移動体が新規な地図ブロック内の位置に移動するたびに当該地図ブロックの地図情報を更新する更新手段とを備えたことを特徴とする移動体用地図情報更新装置。
【請求項6】
前記更新手段は、前記新規な地図ブロックの地図情報を更新するときには当該地図ブロックの周辺の地図ブロックの地図情報をも更新することを特徴とする請求項5記載の移動体用地図情報更新装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載の移動体用地図情報更新装置の更新手段,実行手段により地図ブロックの更新可能な地図情報が全て更新された後、目的地点までの案内経路を探索して設定する設定手段を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1ないし6の何れかに記載の移動体用地図情報更新装置と、この移動体用地図情報更新装置に地図情報を送信するサーバとを備えたことを特徴とする移動体用地図情報更新システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−163165(P2007−163165A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356421(P2005−356421)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】