説明

移動体繰出容器

【課題】 クリック機能を保持しつつより少ない部品数で簡易な構成とし得る移動体繰出容器を提供する。
【解決手段】 雌螺子12を有する容器本体1と、雌螺子12に螺合する雄螺子21aを有し雄螺子21aを雌螺子12に螺合させて容器本体1に対し軸線周りで回転可能に連結された棒状の移動体2とを備え、容器本体1及び移動体2を相対回転させて移動体2を繰り出す移動体繰出容器で、移動体2外部から外側に突出しかつ軸線方向に延びる第一のクリック歯部31が容器本体1の側壁の内周から内側に突出する第二のクリック歯部32に係合して、容器本体1及び移動体2の相対回転に同期してクリック感を付与するクリック機構3を有し、第一のクリック歯部31は移動体2が容器本体1上のどの位置でも第二のクリック歯部32に係合する長さ寸法を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液状の化粧料や練り状の化粧料を収容するとともに収容された液状の化粧料等を適宜押し出して使用する化粧料押出容器に用いられる移動体繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体繰出容器としては、例えば内部に雌螺子が形成された筒状の移動体と、移動体を回転不能・摺動可能に支持する内部を有する筒状の容器本体と、容器本体の後端部に対して軸線を中心として回転可能に連結され、移動体の雌螺子と螺合する雄螺子が外部に形成された棒状部及びこれの軸線を中心としての回転操作を行うための操作部を有する操作体とを備え、容器本体と操作体とを相対回転させて移動体を繰り出す移動体繰出容器であって、操作体の外部に周方向に延びる弾性爪として形成した第二のクリック歯部と、この第二のクリック歯部に対応する容器本体の内部に操作体の一方向の回転に伴い第二のクリック歯部が順次噛み合うように形成した他方のクリック歯部とからなり、容器本体及び移動体の相対回転に同期してクリック感を付与するクリック機構を備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−265123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年の製品の携帯性や使い勝手を重視する消費者ニーズに即応する観点から、従来の移動体繰出容器に対しては、移動体の前進具合又は戻し具合を使用者が容易に感知し得るようにして移動体の出し過ぎや戻し過ぎを防止するクリック機能を保持しながら、より少ない部品数による簡易な構成からなるものとして、製品のコンパクト化を図ることが求められている。
また、近年の製品の販売手法の専門化傾向に即応する観点から、従来の移動体繰出容器に対しては、試用見本、販売促進用見本、色調確認用見本等として利用し得ること、すなわち、より少ない部品数による簡易な構成からなる、クリック機能を有するコンパクトな試用見本等を普及させることが要請されている。
そこで、本発明は、かかるクリック機能を保持しながら、より少ない部品数により簡易な構成とすることができる移動体繰出容器を提供することにより、製品の携帯性や使い勝手を重視する消費者ニーズ及び製品の販売手法の専門化傾向に機動的に対応することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明に係る移動体繰出容器は、内部に雌螺子が形成された筒状の容器本体と、外部に雌螺子に螺合する雄螺子が形成され、この雄螺子を雌螺子に螺合させて容器本体に対し軸線を中心として回転可能に連結された棒状の移動体とを備え、容器本体及び移動体を相対回転させて移動体を繰り出す移動体繰出容器であって、移動体の外部から外側に突出し、かつ、軸線方向に延びるように形成された第一のクリック歯部が、容器本体の側壁の内周から内側に突出して形成された第二のクリック歯部に係合することによって、容器本体及び移動体の相対回転に同期してクリック感を付与するクリック機構を備えており、第一のクリック歯部は、移動体が容器本体のいずれの位置においても第二のクリック歯部に係合できるよう移動体の軸線方向の一定区間に形成されていることを特徴としている。
ここで、雄螺子には、外側表面に間欠的に配される突起群又は外側表面に螺旋状かつ間欠的に配される突起群であってねじ山と同様な働きをするものが形成された移動体の部分を含む。また、雌螺子には、内側表面に間欠的に配される突起群又は内側表面に螺旋状かつ間欠的に配される突起群であってねじ山と同様な働きをするものが形成された容器本体の部分を含む。
このような移動体繰出容器によれば、クリック機構の構成要素の一方たる第一のクリック歯部が移動体に形成され、他方たる第二のクリック歯部が容器本体の側壁に形成され、しかも第一のクリック歯部が移動体が容器本体におけるいずれの位置に位置していても、つまり、移動体及び容器本体の連結状態の如何に拘わらず第一のクリック歯部が第二のクリック歯部に係合する長さ寸法を有しているので、使用者が移動体の前進具合又は戻し具合を感知することを可能とするクリック機能を保持しながら、より少ない部品数により簡易な構成とすることが可能となり、ひいては製品のコンパクト化及び試用見本等の普及を図ることが可能となる。
したがって、これによれば、製品の携帯性や使い勝手を重視する消費者ニーズ及び製品の販売手法の専門化傾向に機動的に対応することが可能となる。
【0005】
このような技術的手段において、製品の付加価値を相当に高めることとして、製品の携帯性や使い勝手を重視する消費者ニーズにさらに適切に対応しようとする観点からすれば、クリック機構は、容器本体及び移動体の相対回転を一方向に規制することにより移動体の進退を前進又は後退にのみ規制するラチェット機構を有していることが好ましい。
【0006】
また、第一のクリック歯部及び第二のクリック歯部の係合及び係合の解除の繰り返しが円滑に行われるようにして、十分なクリック機能を確実に担保しようとする観点からすれば、第一のクリック歯部は、外側に撓むように隣接領域が切り欠かれていることが好ましく、又は、第二のクリック歯部は、外側に撓むように隣接領域が切り欠かれていることが好ましい。
【0007】
さらに、容器本体を雌螺子を形成しない外筒及び雌螺子を形成し第二のクリック歯部を有する内筒で構成するようにして、外筒内に収容された液状物を移動体の先端に設けたピストンによって押し出すタイプの液状物押出容器に特に適切な態様とする観点からすれば、容器本体は、外筒と、この外筒内でこれに装着され、内部に雌螺子が形成された内筒とからなり、第二のクリック歯部は、内筒の側壁に設けられており、この第二のクリック歯部の外側には、第二のクリック歯部が外側に撓むことを可能とする空間が確保されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る移動体繰出容器によれば、製品の携帯性や使い勝手を重視する消費者ニーズ及び製品の販売手法の専門化傾向に機動的に対応することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態に係る移動体繰出容器の全体構成を示す縦断面図、図2は同移動体繰出容器における容器本体(外筒)を示す縦断面図、図3は同移動体繰出容器における容器本体(内筒)を示す縦断面図、図4は同移動体繰出容器におけるピストン及びピストン軸を示す縦断面図、図5は同移動体繰出容器の作用(最大繰出状態)を説明する縦断面図、図6は同移動体繰出容器における第一のクリック歯部を示す斜視図、図7は同移動体繰出容器における第二のクリック歯部を示す斜視図、図8は同移動体繰出容器における第二のクリック歯部を示す側面図、図9は同移動体繰出容器における第二のクリック歯部を示す側面拡大図、図10は同移動体繰出容器の作用を説明する横断面図である。
【0011】
本実施の形態において、移動体繰出容器は、図1に示すように、液状物たる液状化粧料10を収容するとともに収容された液状化粧料10を適宜押し出して使用する液状化粧料押出容器である。
【0012】
そして、この移動体繰出容器は、同図に示すように、容器本体1と、移動体2と、クリック機構3とを備えたものとして構成されている。
【0013】
以下、これらの各構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0014】
(1)容器本体1
容器本体1は、図1に示すように、プラスチック(例えば透明なプラスチック)からなるものであり、中空筒状(例えば円筒状)に形成されている。そして、容器本体1は、図1及び図2に示すように、先端に軸線に対し傾斜する外側面及び内側面の各面形状を形成する先端壁部11を有しており、この先端壁部11に液状化粧料10を容器本体1外に吐き出すための吐出孔11a(例えば複数の吐出孔11a)が設けられている。
【0015】
なお、先端壁部11は、例えば皮膚表面等の被塗布部に対する塗布に適合的である斜度に傾斜する外側面の面形状を形成している(これらの図参照)。
【0016】
容器本体1は、図1に示すように、内部に雌螺子12が形成されており、この雌螺子12に後述する移動体2の雄螺子21aを螺合させることにより、移動体2をねじ込み動作によって軸線方向に繰り出すことを可能とするものである。
【0017】
容器本体1は、図1〜図3に示すように、外筒1aと、この外筒1a内でこれに装着され、内部に雌螺子12が形成された内筒1bとからなっている。
【0018】
具体的には、内筒1bは、その後端外部に形成される環状凹部41及び環状凸部42が外筒1aの後端内部に形成される環状凸部51及び環状凹部52に係合するとともに、内筒1bの外部に軸線方向に形成された突条43(例えば複数の突条)が外筒1aの内部に軸線方向にローレット状に形成された溝53(例えば複数の溝)に係合することにより、外筒1aに対して軸線を中心として回転不能かつ軸線方向に移動不能に装着されており、その結果、外筒1a及び内筒1bは、一体的に固定されている。
【0019】
本実施の形態において、外筒1aは、図1及び図2に示すように、その先端に軸線に対し傾斜する外側面及び内側面の各面形状を形成する先端壁部11を有しており、この先端壁部11が吐出孔11aを有している。
【0020】
ここで、先端壁部11の吐出孔11aは、図示しないが、液状化粧料10が漏出しないよう止栓によって閉塞されている。なお、止栓の代わりに、使用者が使用する直前に取り外しができる粘着剤が塗布されたシールを、液状化粧料10の充填前に先端壁部11の外側面に貼り付けて吐出孔11aを閉塞するようにしてもよい。
【0021】
また、内筒1bには、図1及び図3に示すように、その側壁の内周から内側に突出するようにして第二のクリック歯部32が形成されている。
【0022】
このように内筒1bに第二のクリック歯部32が形成されることを要求するのは、クリック機構3の構成要素の一方たる第二のクリック歯部32を別個独立の部品により設けるのではなく容器本体1の一部として構成することにより、クリック機能を保持しながら、より少ない部品数による簡易な構成からなる移動体繰出容器とするためである。したがって、このような役割を果たすものであれば、本発明において外筒1a及び内筒1bからなる容器本体1の代わりに、先端壁部を有する一の筒状体としての容器本体、棒状化粧料用の容器本体その他の容器本体を用いても差し支えない。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)又はポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート(PCT)等のプラスチックからなる容器本体とすることが好ましい。
【0023】
容器本体1は、図1に示すように、その内側に、移動体2の先端側部分を収容するための移動体収容部13の前側に隣接して液状化粧料10を収容するための液状化粧料収容部14を有している。
【0024】
すなわち、液状化粧料収容部14又は移動体収容部13は、移動体2がねじ込み動作によって繰り出されるのに伴い軸線方向での長さ寸法を変動させるものとして構成されている(図1参照)。
【0025】
液状化粧料収容部14は、同図に示すように、軸線に対し傾斜する先端壁部11と、筒状(例えば円筒状)の側壁部と、液状化粧料10を押し出しためのピストン22とによって形成されている。
【0026】
(2)移動体2
移動体2は、図1及び図4に示すように、プラスチック(例えば透明なプラスチック)からなるものであり、略棒状に形成されており、外部に雌螺子12に螺合する雄螺子21aが形成されたものとして構成されている。
【0027】
すなわち、移動体2は、この雄螺子21aを雌螺子12に螺合させて容器本体1に対し軸線を中心として回転可能かつ軸線方向に移動可能に装着されたものとして構成されており、容器本体1内にねじ込む動作を繰り返すことによって軸線方向に繰り出されることが可能となっており、その結果、液状化粧料収容部14に収容された液状化粧料10を先端壁部11の吐出孔11aを通じて容器本体1外に押し出すことが可能となっている(図5参照)。
【0028】
このように移動体2に容器本体1内にねじ込まれることにより軸線方向に繰り出されることを要求するのは、移動体2の繰出動作をスリーブ等の別個独立の部品を設けて行う相対回転により実現するのではなく移動体2それ自体を直接容器本体1内にねじ込むことによって実現することにより、クリック機能を保持しながら、より少ない部品数による簡易な構成からなる移動体繰出容器とするためである。したがって、このような役割を果たすものであれば、本発明において移動体2の代わりに、棒状化粧料用の芯チャックその他の移動体を用いることが可能である。
具体的には、プラスチックやエラストマーなどからなる移動体とすることが好ましい。
【0029】
具体的には、移動体2は、図1及び図4に示すように、外部に雌螺子12をもつとともに後端側に軸線を中心としての回転操作を行うための操作部21bを有するピストン軸21と、ピストン軸21の先端部に対し軸線を中心として回転可能に連結され、容器本体1の内周面に水密に接触しながら容器本体1内に摺動可能に挿嵌されたピストン22であって先端に向けて先細りとなる釣り鐘形状を呈するものとからなっている。
【0030】
本実施の形態において、これらの図に示すように、ピストン軸21には、その外部から外側に突出し、かつ、軸線方向に延びるようにして第一のクリック歯部31が形成されている。
【0031】
なお、ピストン軸21のうち先端領域には、ピストン22の空間32aのうちの途中領域に設けられた環状凸部71及び環状凹部72に係合するための環状凹部61及び環状凸部62が設けられている。
【0032】
このようにピストン軸21に第一のクリック歯部31が形成されることを要求するのは、クリック機構3の構成要素の他方たる第一のクリック歯部31を別個独立の部品により設けるのではなく移動体2の一部として構成することにより、クリック機能を保持しながら、より少ない部品数による簡易な構成からなる移動体繰出容器とするためである。したがって、このような役割を果たすものであれば、本発明においてピストン軸21及びピストン22からなる移動体2の代わりに、ピストン22に相当する頭部を有する一体物品としての移動体、一体物品としての又は芯チャック及び螺子棒からなる棒状化粧料用の移動体その他の移動体を用いてもよい。
【0033】
一方、ピストン22は、シリコンゴムその他の弾性体(例えば軟質弾性体)からなるものとして構成されている(図5参照)。
【0034】
ここで、弾性体としては、シリコンゴム以外に、ニトルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ブチルゴム(IIR)等の圧縮成形による熱硬化性素材や、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)等の射出成形による熱可塑性エラストマー、また、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の射出成形による熱可塑性プラスチックから適宜選定することが可能である。
【0035】
このようなピストン22により、最大前進時において、先端壁部11に押し当てられた際に、傾斜する内側面に追従して弾性変形することが可能となっている(図5参照)。
【0036】
加えて、ピストン22は、図1及び図4に示すように、その内側に弾性変形性能を増大させるための空間22aを有している。
【0037】
なお、この空間22aのうち途中領域には、ピストン軸の先端部に設けられた環状凹部61及び環状凸部62に係合するための環状凸部71及び環状凹部72が設けられている。
【0038】
このようなピストン22により、最大前進時において、先端壁部11に押し当てられた際に、単に弾性体からなるものに比して、傾斜する内側面により一層追従して弾性変形することが可能となっている(図5参照)。
【0039】
すなわち、このようなピストン22によれば、先端壁部11に係る側壁と先端壁部11とに包囲された液状化粧料収容部14の先端領域に液状化粧料10を残存させないことが可能となっており、その結果、使い残しが無い経済的な棒状化粧料繰出容器を提供することが可能となっている(図5参照)。
【0040】
(3)クリック機構3
クリック機構3は、容器本体1及び移動体2の相対回転に同期してクリック感を付与するものであり、図6に示すような、移動体2の外部から外側に突出し、かつ、軸線方向に延びるように形成された第一のクリック歯部31と、図7〜図9に示すような、内筒1bの側壁の内周から内側に突出して形成され、切り欠かれた隣接領域32aを設けることにより外側に撓むことを可能とされた第二のクリック歯部32とを備えたものとして構成されている。
【0041】
本実施の形態におけるクリック機構3は、容器本体1及び移動体2の相対回転を一方向に規制することにより移動体2の進退を前進又は後退にのみ規制するラチェット機構をも併せて有している。具体的には、クリック機構3は、容器本体1及び移動体2の相対回転を移動体2を容器本体1内にねじ込む方向にのみ規制するものとして構成されている。
【0042】
このようなクリック機構により、製品の付加価値を相当に高めることが可能となっており、その結果、製品の携帯性や使い勝手を重視する消費者ニーズにさらに適切に対応することが可能となっている。
【0043】
すなわち、第一のクリック歯部31は、移動体2が容器本体1内にねじ込まれる方向(図10(a)における図示矢印方向)に回動する場合に、第二のクリック歯部32を徐々に押し出して外側に撓ませることが可能な横断面形状を有し(図10(a)参照)、かつ、移動体2が容器本体1内にねじ込まれる方向と反対の方向(図10(b)における図示矢印方向)に回動する場合に、第二のクリック歯部32を外側に撓ませることが不可能な横断面形状を有している(図10(b)参照)。
【0044】
一方、第二のクリック歯部32は、移動体2が容器本体1内にねじ込まれる方向(図10(a)における図示矢印方向)に回動する場合に、第一のクリック歯部31が登って乗り越えることが可能な傾斜面が形成された横断面形状を有し(図10(a)参照)、かつ、移動体2が容器本体1内にねじ込まれる方向と反対の方向(図10(b)における図示矢印方向)に回動する場合に、第一のクリック歯部31が登って乗り越えることが不可能な横断面形状を有している(図10(b)参照)。
【0045】
ここで、第二のクリック歯部32は、図8及び図9に示すように、側面視でコ字形状を呈するものとして構成されており、切り欠かれた隣接領域32aを設けることにより周方向に延びる舌片形状に形成されており、これにより、外側に撓むことを可能とされている。
【0046】
このような第二のクリック歯部32により、クリック機構3を別個独立の部品により設けるのではなく本移動体繰出容器本来の構成部品の部分として構成する場合において、第一のクリック歯部31及び第二のクリック歯部32の係合及び係合の解除の繰り返しを円滑に行うことが可能となっており、これにより、十分なクリック機能を確実に担保することが可能となっている。
【0047】
なお、これに限られるものでなく、第一のクリック歯部31及び第二のクリック歯部32のいずれが弾性を有するかは問わず、図11に示す変形例のような、切り欠かれた隣接領域81aを設けることにより内側に撓むことを可能とされた第一のクリック歯部81を採用してもよい(同図において、符号8は、この変形例におけるクリック機構、を示している)。
【0048】
そして、第二のクリック歯部32の外側であって外筒1aの内側には、第二のクリック歯部32が外側に撓むことを可能とする空間32bが確保されている。
【0049】
すなわち、このようなクリック機構3により、第一のクリック歯部31が、第二のクリック歯部32に係合することによって容器本体1及び移動体2の相対回転を移動体2を容器本体1内にねじ込む方向にのみ規制することが可能となっている。
【0050】
ここで、第一のクリック歯部31は、移動体2が容器本体1のいずれの位置においても第二のクリック歯部32に係合できるよう移動体2の軸線方向の一定区間に形成されている(図6参照)。
【0051】
このように第一のクリック歯部31に一定の長さ寸法を有することを要求するのは、クリック機構3を別個独立の部品により設けるのではなく本移動体繰出容器本来の構成部品の部分として構成する場合において、第一のクリック歯部31及び第二のクリック歯部32の係合状態が容器本体1における移動体2の位置に関係なく解除されないようにすることにより、より少ない部品数による簡易な構成からなり、しかもクリック機能を保持することが可能な移動体繰出容器とするためである。したがって、このような役割を果たすものであれば、本発明において複数の突条からなる第一のクリック歯部31の代わりに、単数の突条からなるもの、第二のクリック歯部との係合状態が解除されない限度で間欠的に設けられるものその他の第一のクリック歯部を用いることが可能である。
【0052】
上記したように、本実施の形態に係る移動体繰出容器にあっては、クリック機構3の構成要素の一方たる第一のクリック歯部31が移動体2に形成されており、他方たる第二のクリック歯部32であって外側に撓むことを可能とされたものが容器本体1の側壁に形成されており、しかも移動体2及び容器本体1の連結状態の如何に拘わらず第一のクリック歯部31が第二のクリック歯部32に係合する長さ寸法を有している。
【0053】
したがって、このような移動体繰出容器によれば、使用者が移動体2の前進具合又は戻し具合を感知することを可能とするクリック機能を保持しながら、より少ない部品数により簡易な構成とすることが可能となっており、ひいては製品のコンパクト化及び試用見本、販売促進用見本、色調確認用見本等の普及を図ることが可能となっている。
【0054】
よって、このような移動体繰出容器によれば、製品の携帯性や使い勝手を重視する消費者ニーズ及び製品の販売手法の専門化傾向に機動的に対応することが可能となっている。
【0055】
また、本実施の形態のように、容器本体1を雌螺子12を形成しない外筒1a及び雌螺子12を形成し第二のクリック歯部32を有する内筒1bで構成することとすれば、外筒1a内に収容された液状化粧料10を移動体2の先端に設けたピストン22によって押し出すタイプの液状化粧料押出容器に特に適切な態様とすることが可能となっている。
【0056】
以上、本実施の形態においては、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、ネールケア溶液、マスカラ、頭髪用化粧料、マッサージオイルその他の液状化粧料を押し出すことを可能とする液状化粧料押出容器に適用した場合について説明したが、本発明は、このような実施の形態に限られるものではない。例えばアイシャドウその他の練り状物やゼリー状物等を含む固形化粧料を繰り出すことを可能とする棒状化粧料繰出容器に適用してもよい。また、化粧品に限定されず、のりやクレヨン、色鉛筆の芯等を繰り出すことを可能とする筆記具その他の物品に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る移動体繰出容器の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】同移動体繰出容器における容器本体(外筒)を示す縦断面図である。
【図3】同移動体繰出容器における容器本体(内筒)を示す縦断面図である。
【図4】同移動体繰出容器におけるピストン及びピストン軸を示す縦断面図である。
【図5】同移動体繰出容器の作用(最大繰出状態)を説明する縦断面図である。
【図6】同移動体繰出容器における第一のクリック歯部を示す斜視図である。
【図7】同移動体繰出容器における第二のクリック歯部を示す斜視図である。
【図8】同移動体繰出容器における第二のクリック歯部を示す側面図である。
【図9】同移動体繰出容器における第二のクリック歯部を示す側面拡大図である。
【図10】同移動体繰出容器の作用を説明する横断面図である。
【図11】変形例であるピストン軸における第一のクリック歯部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 容器本体
1a 外筒
1b 内筒
2 移動体
3 クリック機構
8 クリック機構(変形例)
10 液状化粧料
11 先端壁部
11a 吐出孔
12 雌螺子
13 移動体収容部
14 液状化粧料収容部
21 ピストン軸
21a 雄螺子
21b 操作部
22 ピストン
22a 空間
31 第一のクリック歯部
32 第二のクリック歯部
32a 隣接領域
32b 空間
41 環状凹部
42 環状凸部
43 突条
51 環状凸部
52 環状凹部
53 溝
61 環状凹部
62 環状凸部
71 環状凸部
72 環状凹部
81 第一のクリック歯部(変形例)
81a 隣接領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に雌螺子が形成された筒状の容器本体と、外部に前記雌螺子に螺合する雄螺子が形成され、この雄螺子を該雌螺子に螺合させて前記容器本体に対し軸線を中心として回転可能に連結された棒状の移動体とを備え、前記容器本体及び移動体を相対回転させて該移動体を繰り出す移動体繰出容器であって、
前記移動体の外部から外側に突出し、かつ、軸線方向に延びるように形成された第一のクリック歯部が、前記容器本体の側壁の内周から内側に突出して形成された第二のクリック歯部に係合することによって、該容器本体及び移動体の相対回転に同期してクリック感を付与するクリック機構を備えており、
前記第一のクリック歯部は、前記移動体が前記容器本体のいずれの位置においても前記第二のクリック歯部に係合できるよう該移動体の軸線方向の一定区間に形成されていることを特徴とする移動体繰出容器。
【請求項2】
前記クリック機構は、前記容器本体及び移動体の相対回転を一方向に規制することにより該移動体の進退を前進又は後退にのみ規制するラチェット機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の移動体繰出装置。
【請求項3】
前記第一のクリック歯部は、外側に撓むように隣接領域が切り欠かれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体繰出容器。
【請求項4】
前記第二のクリック歯部は、外側に撓むように隣接領域が切り欠かれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体繰出容器。
【請求項5】
前記容器本体は、外筒と、この外筒内でこれに装着され、内部に前記雌螺子が形成された内筒とからなり、
前記第二のクリック歯部は、前記内筒の側壁に設けられており、この第二のクリック歯部の外側には、該第二のクリック歯部が外側に撓むことを可能とする空間が確保されていることを特徴とする請求項3に記載の移動体繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−149946(P2006−149946A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348556(P2004−348556)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】