移動体繰出容器
【課題】
従来よりも簡単で且つ正確に組み立てることが可能な移動体繰出容器を提供する。
【解決策】
先筒と、容器本体と、雌螺子部材と、移動体と、を備え、先筒と容器本体とを相対回転することで雌螺子部材の雌螺子と移動体の雄螺子との螺合作用が働き、移動体が軸線方向に摺動し、先筒の開口より化粧料を吐出可能とする移動体繰出容器であって、移動体は、雌螺子部材と螺合結合されて移動体繰出容器に組み付けられる前は雄螺子が形成されている螺子部と把持部とからなり、螺子部と把持部は離間可能な構成となっていることを特徴とする移動体繰出容器。
従来よりも簡単で且つ正確に組み立てることが可能な移動体繰出容器を提供する。
【解決策】
先筒と、容器本体と、雌螺子部材と、移動体と、を備え、先筒と容器本体とを相対回転することで雌螺子部材の雌螺子と移動体の雄螺子との螺合作用が働き、移動体が軸線方向に摺動し、先筒の開口より化粧料を吐出可能とする移動体繰出容器であって、移動体は、雌螺子部材と螺合結合されて移動体繰出容器に組み付けられる前は雄螺子が形成されている螺子部と把持部とからなり、螺子部と把持部は離間可能な構成となっていることを特徴とする移動体繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも簡単で且つ正確に組み立てることが可能な移動体繰出容器を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の化粧料繰出容器は、螺子棒1と筒状のスリーブ2と筒状の本体3とから構成されており、螺子棒1は芯チャック11aを有する第一の棒状部材11と外周に雄螺子12aが形成される第二の棒状部材12とに分割されている。また、本体3の内部には雌螺子31が備えられており、螺子棒1の雄螺子12aとこの雌螺子31とが螺合結合している。そして、スリーブ2と本体3とが相対回転することで雄螺子12aと雌螺子31の螺合結合の作用により螺子棒1が摺動し芯チャック11aに把持された棒状化粧料がスリーブ2より繰りだされる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4257658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような螺子棒1が摺動して芯チャック11aに把持された化粧料が繰り出されるような化粧料繰出容器、又は、芯チャック11aに変えてピストン体に化粧料が押されて化粧料が繰り出されるような化粧料繰出容器、を組み立てる際は、製品の出荷時に化粧料がスリーブ2より突出しないようにする為、螺子棒1を繰戻限の位置(初期位置)に設置して組み付ける必要がある。
【0005】
しかし、その作業は目視で螺子棒1を配置していたため、螺子棒1を正確に配置させようとすることで作業時間がとられていた。さらには、螺子棒1を雌螺子31に組み付けて、螺子棒1を初期位置へ配置した後、組み付けた螺子棒1と雌螺子31を移動させると螺子棒1が初期位置からずれてしまい、再度配置し直さなければならなくなり作業効率が悪かった。
【0006】
そこで、螺子棒1を初期位置へ配置する際の作業の効率化が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動体繰出容器としては、内部に収容する化粧料を先端の開口から出現可能とする先筒と、先筒の後部を収容する容器本体と、先筒に備えられる、内側に雌螺子を備える筒状の雌螺子部材と、雌螺子部材と螺合結合可能な雄螺子を外側に形成しており雌螺子部材に組み付けられて使用される移動体と、を備え、先筒と容器本体とを相対回転することで雌螺子部材の雌螺子と移動体の雄螺子との螺合作用が働き、移動体が軸線方向に摺動し、先筒の開口より化粧料を吐出可能とする移動体繰出容器であって、移動体は、雌螺子部材と螺合結合されて移動体繰出容器に組み付けられる前は雄螺子が形成されている螺子部と把持部とからなり、螺子部と把持部は離間可能な構成となっていることを特徴としている。
【0008】
本願発明は、移動体が把持部を備えることにより、移動体繰出容器の組み付けの際に移動体を繰戻限の位置(初期位置)に設置することを素早く、簡単に行うことが出来るので組み付け作業の効率化を図ることができる。
【0009】
また、移動体の把持部は、位置決め部を備えており、位置決め部は、雌螺子部材に移動体を組み付ける際、螺子部が雌螺子部材の雌螺子と螺合結合するときに雌螺子部材の所定位置に螺子部を配置させることを可能とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の移動体繰出容器は、移動体繰出容器を組み立てる際、移動体を繰戻限の位置(初期位置)に組み付ける作業を素早く、簡単に行うことが可能となるので、組み立て作業の効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体繰出容器の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す移動体繰出容器の縦断面図である。
【図3】図2に示す先筒を示す斜視図である。
【図4】図2に示す雌螺子部材を示す斜視図である。
【図5】図2に示すラチェットバネ部材を示す斜視図である。
【図6】図5に示すラチェットバネ部材の縦断面図である。
【図7】図5に示すラチェットバネ部材の側面図である。
【図8】図6及び図7に示すラチェットバネ部材の左側面図である。
【図9】図2に示す把持部を取り外す前の移動体の(a)平面図、(b)正面図、(c)左側面図。
【図10】図2に示す把持部を取り外す前の移動体の斜視図。
【図11】図2に示すピストンとラチェットバネ部材と雌螺子部材と把持部を取り外す前の移動体を組み付けた際の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による移動体繰出容器の好適な実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る移動体繰出容器を示す外観斜視図、図2は移動体繰出容器の断面図、図3は先筒を示す斜視図、図4は雌螺子部材を示す斜視図、図5〜図8はラチェットバネ部材を示す各図、図9は把持部を取り外す前の移動体の平面図及び正面図及び左側面図、図10は把持部を取り外す前の移動体の斜視図、図11はピストンとラチェットバネ部材と雌螺子部材と把持部を取り外す前の移動体を組み付けた際の断面図であり、本実施形態の移動体繰出容器100は、化粧料Lを使用者が必要に応じて適宜押し出し塗布に供するものである。化粧料Lは、ここでは軟らかい棒状の化粧料とされている。
【0014】
図1〜図3に示すように、移動体繰出容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状(スティック状)を成し良好な外観を呈するもので、容器前部を構成する先筒5(第1部品)と、容器後部を構成する容器本体2と、先筒5を保護すべく当該先筒5に着脱可能に装着されたキャップ3と、を外形構成として具備し、さらに、容器本体2の後端部に装着されて蓋を成すと共に、先筒5を構成する2部品を係合するための円筒体4を備え、この円筒体4は後端部に蓋30が装着されている。
【0015】
図2又は図3に示すように、先筒5は、化粧料Lを収容する略円筒状としている。この先筒5は、その筒孔の略前半部が、化粧料Lを収容し、筒孔の略後半部が、化粧料Lを押し出すべく軸線方向に延在する移動体6と、この移動体6と螺合し螺合機構を構成する雌螺子部材(第2部品)7と、ラチェット機構を構成すると共に移動体6の回り止めとして機能するラチェットバネ部材8と、を収容する。
【0016】
そして先筒5の後端部には、その外周面に、円環状の凹部5aが円筒体4に軸線方向に係合するためのものとして設けられている。また、先筒5の後半部の軸線方向中央の内周面には、雌螺子部材7の前進を阻止するための円環状の段差部5cが設けられている。また、先筒5の後端部の凹部5aより前側には、内外を連通する軸線方向視円弧状の貫通孔5pが設けられ、この貫通孔5pの後側の内周面に、軸線方向視円弧状の凸部5bが内側に突出し、この円弧状の凸部5bが、雌螺子部材7の後退を阻止するものとして設けられている。また、先筒5の内周面の上記段差部5cより前側の位置及び先筒5の軸線方向中央の内周面には、軸線方向に延びる凹設溝5d,5eが、ラチェットバネ部材8を回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数が設けられている。
【0017】
図2及び図4に示すように、雌螺子部材7は、略円筒状を成し、筒孔の先端部の内周面に、螺合機構の一方を構成する雌螺子7aを軸線方向に沿って備える。この雌螺子部材7の筒孔の後端部の内周面には、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット7bが、円筒体4に回転方向に係合するためのものとして設けられている。また、雌螺子部材7の外周面には、その軸線方向略中央の位置に、先筒5の段差部5cに対面し軸線方向に係合する円環状の凸部7cが設けられると共に、この凸部7cに連設されて前方に所定長延びる突条7dが、ラチェット機構の一方を構成するものとして周方向に沿って複数個(ここでは4個)設けられている。また、雌螺子部材7の後端部の外周面には、先筒5の凸部5bに対面し軸線方向に係合する円環状の凸部7eが設けられている。
【0018】
この雌螺子部材7は、図2に示すように、先筒5の筒孔の後側から内挿され、その凸部7cが先筒5の段差部5cに対面すると共にその凸部7eが先筒5の凸部5bに対面することで軸線方向前後に係合し、先筒5に対して軸線周りに回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着されている。
【0019】
ラチェットバネ部材8は、図5〜図8に示すように、略円筒状に構成された樹脂による一体成形品であり、その先端部の回り止め部8aと、その後端部のラチェット部8cと、これらの回り止め部8aとラチェット部8cを接続し軸線方向に伸縮可能なバネ部8bと、を具備する。
【0020】
回り止め部8aは、先端部が閉じられた円筒状に構成され、特に図8に示すように、当該先端部の中央に貫通孔8mを備えている。この貫通孔8mは、移動体6が挿通し当該移動体6の回り止めとして働くもので、対向する二平面8e,8eと、これらの二平面8e,8eの端部同士を円周方向に繋ぐ円弧面8f,8fと、から構成された非円形の孔である。また、回り止め部8aは、その外周面に、軸線方向に延びる突条8gを円周方向に沿って複数備えている。これらの突条8gは、先筒5の凹設溝5eに進入し回転方向に係合するためのものであり、3個の突条の組を対向して一対と、1個の突条を対向して一対とを有する。
【0021】
ラチェット部8cは、その後端面に、周方向に沿って垂直面と下り傾斜面を有し雌螺子部材7の突条7dに噛み合って一方向のみの回転(移動体6が前進する回転)を許容するラチェット歯8dを、周方向に沿って複数個(ここでは4個)備えている。また、ラチェット部8cは、その外周面に、回り止め部8aの突条8gと同様な突条8hを備えている。この突条8hは、先筒5の凹設溝5dに進入し回転方向に係合するためのものである。
【0022】
バネ部8bは圧縮バネであり、図5〜図7に示すように、ほぼ螺旋状のスリット8iを備え二条螺子状に構成されており、このスリット8iにより、軸線方向に沿って傾斜する傾斜部8jと、この傾斜部8jに続き軸線周りに(軸線に直交する面内で)湾曲する円弧部8kとを軸線方向に沿って交互に有する構成とされている。このバネ部8b及びラチェット歯8dがラチェット機構の他方を構成する。
【0023】
これらの回り止め部8a、バネ部8b及びラチェット部8cを有するラチェットバネ部材8は、図2に示すように、先筒5と雌螺子部材7の前半部との間に挿入されると共に、回り止め部8aの貫通孔8mを有する先端部が雌螺子部材7の先端面に対面するように配置され、回り止め部8aの突条8gが先筒5の凹設溝5eに進入し回転方向に係合すると共にラチェット部8cの突条8hが先筒5の凹設溝5dに進入し回転方向に係合することで、先筒5に対して軸線周りに同期回転可能(回転不能)とされた状態で、バネ部8bによりラチェット部8cが雌螺子部材7の突条7d側に付勢されてラチェット歯8dが突条7dと噛合可能な状態とされている。
【0024】
本実施形態の特徴を成す移動体6は、移動体繰出容器100に組み付ける前の形状としては、図9〜図11に示すように、螺子部6aと把持部6bとから成り、この螺子部6aと把持部6bは離間可能となっている。
螺子部6aは、断面円形状の長尺な軸体とされてほぼ全長に亘って外周に対向する二平面部6c,6cを形成し、この外周の二平面部6c,6c同士を繋ぐ一対の対向する円弧面に雄螺子6dを軸線方向に沿って形成されている。この雄螺子6bは雌螺子部材7の雌螺子7aと螺合し螺合機構の他方を構成するものであり、雄螺子6a及び二平面部6c,6cは、ラチェットバネ部材8の回り止め部8aの貫通孔8mに合致する形状とされている。また、螺子部6aの先端部分には、化粧料Lを押し出すためのピストン9を装着される装着部6gが設けられている。
把持部6bは、図示するように、螺子部6aと接する部分に、螺子部6aの直径よりも大きく、さらに雌螺子部材7の筒孔の径よりも大きい平板状の位置決め部6eが形成されている。そして、この把持部6bと雄螺子6bとは剪断部6fによって結合され一体となっている。
そして、この剪断部6fに力を加えることで剪断部6fが剪断され、雄螺子6bと把持部6bとを離間することが可能となる。
なお、この剪断部6fは、人の力によって剪断可能となる程度の結合力で螺子部6aと把持部6bを結合しているものである。
【0025】
このような構成の移動体6を移動体繰出容器100に組み付ける際は、まずピストン9が装着される前の移動体6を装着部6gを備える先端側から、ラチェットバネ部材8をその前半部に備えている雌螺子部材7の後端側の筒孔へ挿入する。そして、移動体6の雄螺子6dと雌螺子部材7の雌螺子7aとを螺合させて移動体6が繰出方向へ移動するように移動体6を回転させていくと、装着部6gのみがラチェットバネ部材8の先端部の貫通孔8mから突出してピストン9が装着部6gに装着可能となる位置(以下、「初期位置」という)で移動体6の位置決め部6eが雌螺子部材7の後端側の筒孔の端面と当接する。このとき、図11に示すように、平板状の位置決め部6eは雌螺子部材7の筒孔の径よりも大きいので、移動体6はこれ以上繰出方向へ移動不可となり(雄螺子6dと雌螺子7aとの螺合作用が働かなくなり)、移動体6は初期位置に留めおかれることになる。また、この初期位置において移動体6は、ラチェットバネ部材8の貫通孔8mが回り止めとされて軸線周りにラチェットバネ部材8と同期回転可能且つ軸線方向に移動可能に係合している状態となる。
そして、移動体6が初期位置の状態でピストン9が装着部6gに軸線方向移動不可、及び、周方向回転可能に係合される。
【0026】
そして、上述したようにピストン9、ラチェット部材8、雌螺子部材7、移動体6を組み付けた後、移動体6の剪断部6fを剪断して螺子部6aから把持部6bを離間させることで、簡単に移動体6を初期位置へ配置することが可能となる。そして、把持部6bを螺子部6aから離間した状態のピストン9、ラチェット部材8、雌螺子部材7、移動体6を図1に示すように先筒5に組み付けることができる。このとき、移動体6は繰り戻し限に位置されていることになる。つまり、上述した移動体6の初期位置とは移動体6の繰り戻し限の位置でもある。
なお、ピストン9は先筒5の内周面に摺接、又は、僅かなクリアランスを持って係合する状態とされている。
【0027】
上述してきた移動体6を備えることで、移動体繰出容器100を組み立てる際に移動体6を繰り戻し限の位置でもある初期位置に簡単に配置することができる。
【0028】
このような構成の先筒5の略後半部を収容する容器本体2は、円筒状を成し、その後端部の内周面で周方向の等配位置(ここでは2箇所)に、容器本体2の後端面から軸線方向に延びる凹設溝2aが、円筒体4を回転方向に係合するためのものとして設けられている。また、容器本体2の後端部の内周面で凹設溝2a,2a間には、周方向に軸線方向視円弧状に延びる凹部(不図示)が、円筒体4を軸線方向に係合するためのものとして設けられている。また、容器本体2の先端部の内周面には、先筒5にキャップ3を装着したときに先筒5に密着しキャップ3内の気密性を確保することも可能な円環状の板バネ部材10が装着されている。
【0029】
円筒体4は、図2に示すように、有底円筒状を成し、この円筒体を構成する周壁部4aの内側に、底部から軸線方向に突出する突出部4bを備える。この突出部4bは、底部と同軸の円周方向に沿って断続し軸線方向視円弧状を成し、ここでは、一対が対向して設けられている。
【0030】
周壁部4aは、その外周面の周方向の等配位置(ここでは2箇所)に、容器本体2の凹設溝2aに進入し回転方向に係合するための突条4cが、軸線方向に延びるように設けられていると共に、その外周面で突条4c,4c間に、容器本体2の円弧状の凹部(不図示)に進入し軸線方向に係合するための凸部(不図示)が周方向に軸線方向視円弧状に延びるように設けられている。
【0031】
また、周壁部4aには、その内周面の周方向の等配位置(ここでは4箇所)に、先筒5の凹部5aに進入し軸線方向に係合するための凸部4eが、第1突起として周方向に互いに離間し短尺に延びるように設けられている。
【0032】
また、円弧状を成す突出部4bは、その外周面に、雌螺子部材7のローレット7bに進入し回転方向に係合するための凸部4fが、第2突起として軸線方向に短尺に延びるように設けられている。この第2突起4fは、突出部4bに対して周方向に離間して2個が設けられている。そして、第1突起4e及び第2突起4fは、円筒体4の軸線方向の略同一位置に径方向に離間して配置されている。
【0033】
また、円筒体4の底部で、第1突起4eの軸線方向に対応する位置(軸線方向上の位置)、すなわち周壁部4aの内側には、内外を連通する窓部4gが設けられている。この窓部4gは、径方向に所定幅を有し軸線方向視円弧状に開口されたスリットである。この窓部4gに蓋30の突起が挿入され、円筒体4に蓋30が装着される。
【0034】
そして、円筒体4は、図2に示すように、先筒5及び容器本体2の後側に嵌め込まれることで、移動体繰出容器100が得られる。具体的には、移動体6の後端部が、円筒体4の底部及び突出部4bの内側に収容された状態で、円筒体4の周壁部4aの突条4cが、容器本体2の凹設溝2aに回転方向に係合すると共に、その周壁部4aの凸部4dが、容器本体2の円弧状の凹部(不図示)に軸線方向に係合することで、円筒体4は、容器本体2に対して軸線周りに同期回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着され、容器本体2と一体化されている。また、円筒体4は、周壁部4aの第1突起4eが、先筒5の凹部5aに軸線方向に係合することで、先筒5を軸線周りに回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着している。また、円筒体4は、周壁部4aの第2突起4fが、雌螺子部材7のローレット7bに回転方向に係合することで、雌螺子部材7を軸線周りに同期回転可能に装着している。前述したように、容器本体2に対して先筒5は軸線方向に移動不能とされ、この先筒5に対して雌螺子部材7は軸線方向に移動不能とされているため、雌螺子部材7は、容器本体2に一体化された円筒体4に対して、軸線方向に移動不能且つ軸線周りに同期回転可能とされている。
【0035】
そして、この移動体繰出容器100にあっては、使用者が容器本体2と先筒5とを持って相対回転すると、容器本体2と円筒体4を介して同期回転する雌螺子部材7と、先筒5と同期回転するラチェットバネ部材8とが相対回転し、移動体6の雄螺子6a及び雌螺子部材7の雌螺子7aにより構成された螺合機構、及び、ラチェットバネ部材8の非円形の貫通孔8mに移動体6が挿通することで構成される回り止めによって、移動体6が前進し、このとき、ラチェット機構を構成するラチェットバネ部材8のラチェット歯8d、雌螺子部材7の突条7d同士が噛合(係脱)を繰り返し、使用者にはラチェット歯8d、突条7d同士が係合する度にクリック感(抵抗感)が与えられながら、前進するピストン9により化粧料Lが先端側に押し出され、先筒5の先端の開口から出現し使用状態とされる。このように、使用者に与えられるクリック感により、相対回転の度合いやピストン9の前進具合が感知され、化粧料Lを適量吐出できる。
【0036】
また、移動体6は把持部6bを備えることで、把持部6bを設けていない移動体6を初期位置へ配置する場合に目視で先筒5を組み立てるか、又は、移動体繰出容器100を組み立ててから移動体6を繰り戻し限まで戻す、という作業を行わなくても簡単に移動体6を初期位置へ配置することができるので、作業効率を向上させることが出来る。
さらに、把持部6bを保持したまま、図11に示したように、ピストン9、ラチェット部材8、雌螺子部材7、移動体6を組み付けた状態で持ち運んだとしても、移動体6が初期位置からずれることがない。例えば、図11の状態に部材を組み立てて最終的に他の場所で移動体繰出容器100に組み立てる場合においても、図11の状態の部材を移動中に移動体6が初期位置からずれることがないので、作業効率が向上される。
【0037】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、移動体6の位置決め部6eの形状としては、本実施形態の平板状以外にも平板を2枚用いて十字形状、球体形状、等が考えられ、雌螺子部材7の筒孔の径よりも大きい形状であればどのような形状でもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、化粧料Lを軟らかい棒状の化粧料としているが、液状、半固形状の化粧料に対しても適用可能であり、この場合には、ラチェット機構を設けずに、移動体6と共に化粧料を前進、後退可能とするのが好ましく、ラチェット機構に代えてクリック機構を用いるのがより好ましい。また、先筒先端の開口を小さくすることにより、泥状、ジェル状の化粧料を用いることも可能である。
【0039】
また、上述した先筒5を取り替え可能なカートリッジとしても良い。
【0040】
また、化粧料Lとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた移動体繰出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
2…容器本体、3…キャップ、4…円筒体、5…先筒(第1部品)、6…移動体、7…雌螺子部材(第2部品)、8…ラチェットバネ部材、9…ピストン、100…化粧料容器、L…化粧料。
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも簡単で且つ正確に組み立てることが可能な移動体繰出容器を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の化粧料繰出容器は、螺子棒1と筒状のスリーブ2と筒状の本体3とから構成されており、螺子棒1は芯チャック11aを有する第一の棒状部材11と外周に雄螺子12aが形成される第二の棒状部材12とに分割されている。また、本体3の内部には雌螺子31が備えられており、螺子棒1の雄螺子12aとこの雌螺子31とが螺合結合している。そして、スリーブ2と本体3とが相対回転することで雄螺子12aと雌螺子31の螺合結合の作用により螺子棒1が摺動し芯チャック11aに把持された棒状化粧料がスリーブ2より繰りだされる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4257658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような螺子棒1が摺動して芯チャック11aに把持された化粧料が繰り出されるような化粧料繰出容器、又は、芯チャック11aに変えてピストン体に化粧料が押されて化粧料が繰り出されるような化粧料繰出容器、を組み立てる際は、製品の出荷時に化粧料がスリーブ2より突出しないようにする為、螺子棒1を繰戻限の位置(初期位置)に設置して組み付ける必要がある。
【0005】
しかし、その作業は目視で螺子棒1を配置していたため、螺子棒1を正確に配置させようとすることで作業時間がとられていた。さらには、螺子棒1を雌螺子31に組み付けて、螺子棒1を初期位置へ配置した後、組み付けた螺子棒1と雌螺子31を移動させると螺子棒1が初期位置からずれてしまい、再度配置し直さなければならなくなり作業効率が悪かった。
【0006】
そこで、螺子棒1を初期位置へ配置する際の作業の効率化が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動体繰出容器としては、内部に収容する化粧料を先端の開口から出現可能とする先筒と、先筒の後部を収容する容器本体と、先筒に備えられる、内側に雌螺子を備える筒状の雌螺子部材と、雌螺子部材と螺合結合可能な雄螺子を外側に形成しており雌螺子部材に組み付けられて使用される移動体と、を備え、先筒と容器本体とを相対回転することで雌螺子部材の雌螺子と移動体の雄螺子との螺合作用が働き、移動体が軸線方向に摺動し、先筒の開口より化粧料を吐出可能とする移動体繰出容器であって、移動体は、雌螺子部材と螺合結合されて移動体繰出容器に組み付けられる前は雄螺子が形成されている螺子部と把持部とからなり、螺子部と把持部は離間可能な構成となっていることを特徴としている。
【0008】
本願発明は、移動体が把持部を備えることにより、移動体繰出容器の組み付けの際に移動体を繰戻限の位置(初期位置)に設置することを素早く、簡単に行うことが出来るので組み付け作業の効率化を図ることができる。
【0009】
また、移動体の把持部は、位置決め部を備えており、位置決め部は、雌螺子部材に移動体を組み付ける際、螺子部が雌螺子部材の雌螺子と螺合結合するときに雌螺子部材の所定位置に螺子部を配置させることを可能とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の移動体繰出容器は、移動体繰出容器を組み立てる際、移動体を繰戻限の位置(初期位置)に組み付ける作業を素早く、簡単に行うことが可能となるので、組み立て作業の効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体繰出容器の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す移動体繰出容器の縦断面図である。
【図3】図2に示す先筒を示す斜視図である。
【図4】図2に示す雌螺子部材を示す斜視図である。
【図5】図2に示すラチェットバネ部材を示す斜視図である。
【図6】図5に示すラチェットバネ部材の縦断面図である。
【図7】図5に示すラチェットバネ部材の側面図である。
【図8】図6及び図7に示すラチェットバネ部材の左側面図である。
【図9】図2に示す把持部を取り外す前の移動体の(a)平面図、(b)正面図、(c)左側面図。
【図10】図2に示す把持部を取り外す前の移動体の斜視図。
【図11】図2に示すピストンとラチェットバネ部材と雌螺子部材と把持部を取り外す前の移動体を組み付けた際の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による移動体繰出容器の好適な実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る移動体繰出容器を示す外観斜視図、図2は移動体繰出容器の断面図、図3は先筒を示す斜視図、図4は雌螺子部材を示す斜視図、図5〜図8はラチェットバネ部材を示す各図、図9は把持部を取り外す前の移動体の平面図及び正面図及び左側面図、図10は把持部を取り外す前の移動体の斜視図、図11はピストンとラチェットバネ部材と雌螺子部材と把持部を取り外す前の移動体を組み付けた際の断面図であり、本実施形態の移動体繰出容器100は、化粧料Lを使用者が必要に応じて適宜押し出し塗布に供するものである。化粧料Lは、ここでは軟らかい棒状の化粧料とされている。
【0014】
図1〜図3に示すように、移動体繰出容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状(スティック状)を成し良好な外観を呈するもので、容器前部を構成する先筒5(第1部品)と、容器後部を構成する容器本体2と、先筒5を保護すべく当該先筒5に着脱可能に装着されたキャップ3と、を外形構成として具備し、さらに、容器本体2の後端部に装着されて蓋を成すと共に、先筒5を構成する2部品を係合するための円筒体4を備え、この円筒体4は後端部に蓋30が装着されている。
【0015】
図2又は図3に示すように、先筒5は、化粧料Lを収容する略円筒状としている。この先筒5は、その筒孔の略前半部が、化粧料Lを収容し、筒孔の略後半部が、化粧料Lを押し出すべく軸線方向に延在する移動体6と、この移動体6と螺合し螺合機構を構成する雌螺子部材(第2部品)7と、ラチェット機構を構成すると共に移動体6の回り止めとして機能するラチェットバネ部材8と、を収容する。
【0016】
そして先筒5の後端部には、その外周面に、円環状の凹部5aが円筒体4に軸線方向に係合するためのものとして設けられている。また、先筒5の後半部の軸線方向中央の内周面には、雌螺子部材7の前進を阻止するための円環状の段差部5cが設けられている。また、先筒5の後端部の凹部5aより前側には、内外を連通する軸線方向視円弧状の貫通孔5pが設けられ、この貫通孔5pの後側の内周面に、軸線方向視円弧状の凸部5bが内側に突出し、この円弧状の凸部5bが、雌螺子部材7の後退を阻止するものとして設けられている。また、先筒5の内周面の上記段差部5cより前側の位置及び先筒5の軸線方向中央の内周面には、軸線方向に延びる凹設溝5d,5eが、ラチェットバネ部材8を回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数が設けられている。
【0017】
図2及び図4に示すように、雌螺子部材7は、略円筒状を成し、筒孔の先端部の内周面に、螺合機構の一方を構成する雌螺子7aを軸線方向に沿って備える。この雌螺子部材7の筒孔の後端部の内周面には、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット7bが、円筒体4に回転方向に係合するためのものとして設けられている。また、雌螺子部材7の外周面には、その軸線方向略中央の位置に、先筒5の段差部5cに対面し軸線方向に係合する円環状の凸部7cが設けられると共に、この凸部7cに連設されて前方に所定長延びる突条7dが、ラチェット機構の一方を構成するものとして周方向に沿って複数個(ここでは4個)設けられている。また、雌螺子部材7の後端部の外周面には、先筒5の凸部5bに対面し軸線方向に係合する円環状の凸部7eが設けられている。
【0018】
この雌螺子部材7は、図2に示すように、先筒5の筒孔の後側から内挿され、その凸部7cが先筒5の段差部5cに対面すると共にその凸部7eが先筒5の凸部5bに対面することで軸線方向前後に係合し、先筒5に対して軸線周りに回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着されている。
【0019】
ラチェットバネ部材8は、図5〜図8に示すように、略円筒状に構成された樹脂による一体成形品であり、その先端部の回り止め部8aと、その後端部のラチェット部8cと、これらの回り止め部8aとラチェット部8cを接続し軸線方向に伸縮可能なバネ部8bと、を具備する。
【0020】
回り止め部8aは、先端部が閉じられた円筒状に構成され、特に図8に示すように、当該先端部の中央に貫通孔8mを備えている。この貫通孔8mは、移動体6が挿通し当該移動体6の回り止めとして働くもので、対向する二平面8e,8eと、これらの二平面8e,8eの端部同士を円周方向に繋ぐ円弧面8f,8fと、から構成された非円形の孔である。また、回り止め部8aは、その外周面に、軸線方向に延びる突条8gを円周方向に沿って複数備えている。これらの突条8gは、先筒5の凹設溝5eに進入し回転方向に係合するためのものであり、3個の突条の組を対向して一対と、1個の突条を対向して一対とを有する。
【0021】
ラチェット部8cは、その後端面に、周方向に沿って垂直面と下り傾斜面を有し雌螺子部材7の突条7dに噛み合って一方向のみの回転(移動体6が前進する回転)を許容するラチェット歯8dを、周方向に沿って複数個(ここでは4個)備えている。また、ラチェット部8cは、その外周面に、回り止め部8aの突条8gと同様な突条8hを備えている。この突条8hは、先筒5の凹設溝5dに進入し回転方向に係合するためのものである。
【0022】
バネ部8bは圧縮バネであり、図5〜図7に示すように、ほぼ螺旋状のスリット8iを備え二条螺子状に構成されており、このスリット8iにより、軸線方向に沿って傾斜する傾斜部8jと、この傾斜部8jに続き軸線周りに(軸線に直交する面内で)湾曲する円弧部8kとを軸線方向に沿って交互に有する構成とされている。このバネ部8b及びラチェット歯8dがラチェット機構の他方を構成する。
【0023】
これらの回り止め部8a、バネ部8b及びラチェット部8cを有するラチェットバネ部材8は、図2に示すように、先筒5と雌螺子部材7の前半部との間に挿入されると共に、回り止め部8aの貫通孔8mを有する先端部が雌螺子部材7の先端面に対面するように配置され、回り止め部8aの突条8gが先筒5の凹設溝5eに進入し回転方向に係合すると共にラチェット部8cの突条8hが先筒5の凹設溝5dに進入し回転方向に係合することで、先筒5に対して軸線周りに同期回転可能(回転不能)とされた状態で、バネ部8bによりラチェット部8cが雌螺子部材7の突条7d側に付勢されてラチェット歯8dが突条7dと噛合可能な状態とされている。
【0024】
本実施形態の特徴を成す移動体6は、移動体繰出容器100に組み付ける前の形状としては、図9〜図11に示すように、螺子部6aと把持部6bとから成り、この螺子部6aと把持部6bは離間可能となっている。
螺子部6aは、断面円形状の長尺な軸体とされてほぼ全長に亘って外周に対向する二平面部6c,6cを形成し、この外周の二平面部6c,6c同士を繋ぐ一対の対向する円弧面に雄螺子6dを軸線方向に沿って形成されている。この雄螺子6bは雌螺子部材7の雌螺子7aと螺合し螺合機構の他方を構成するものであり、雄螺子6a及び二平面部6c,6cは、ラチェットバネ部材8の回り止め部8aの貫通孔8mに合致する形状とされている。また、螺子部6aの先端部分には、化粧料Lを押し出すためのピストン9を装着される装着部6gが設けられている。
把持部6bは、図示するように、螺子部6aと接する部分に、螺子部6aの直径よりも大きく、さらに雌螺子部材7の筒孔の径よりも大きい平板状の位置決め部6eが形成されている。そして、この把持部6bと雄螺子6bとは剪断部6fによって結合され一体となっている。
そして、この剪断部6fに力を加えることで剪断部6fが剪断され、雄螺子6bと把持部6bとを離間することが可能となる。
なお、この剪断部6fは、人の力によって剪断可能となる程度の結合力で螺子部6aと把持部6bを結合しているものである。
【0025】
このような構成の移動体6を移動体繰出容器100に組み付ける際は、まずピストン9が装着される前の移動体6を装着部6gを備える先端側から、ラチェットバネ部材8をその前半部に備えている雌螺子部材7の後端側の筒孔へ挿入する。そして、移動体6の雄螺子6dと雌螺子部材7の雌螺子7aとを螺合させて移動体6が繰出方向へ移動するように移動体6を回転させていくと、装着部6gのみがラチェットバネ部材8の先端部の貫通孔8mから突出してピストン9が装着部6gに装着可能となる位置(以下、「初期位置」という)で移動体6の位置決め部6eが雌螺子部材7の後端側の筒孔の端面と当接する。このとき、図11に示すように、平板状の位置決め部6eは雌螺子部材7の筒孔の径よりも大きいので、移動体6はこれ以上繰出方向へ移動不可となり(雄螺子6dと雌螺子7aとの螺合作用が働かなくなり)、移動体6は初期位置に留めおかれることになる。また、この初期位置において移動体6は、ラチェットバネ部材8の貫通孔8mが回り止めとされて軸線周りにラチェットバネ部材8と同期回転可能且つ軸線方向に移動可能に係合している状態となる。
そして、移動体6が初期位置の状態でピストン9が装着部6gに軸線方向移動不可、及び、周方向回転可能に係合される。
【0026】
そして、上述したようにピストン9、ラチェット部材8、雌螺子部材7、移動体6を組み付けた後、移動体6の剪断部6fを剪断して螺子部6aから把持部6bを離間させることで、簡単に移動体6を初期位置へ配置することが可能となる。そして、把持部6bを螺子部6aから離間した状態のピストン9、ラチェット部材8、雌螺子部材7、移動体6を図1に示すように先筒5に組み付けることができる。このとき、移動体6は繰り戻し限に位置されていることになる。つまり、上述した移動体6の初期位置とは移動体6の繰り戻し限の位置でもある。
なお、ピストン9は先筒5の内周面に摺接、又は、僅かなクリアランスを持って係合する状態とされている。
【0027】
上述してきた移動体6を備えることで、移動体繰出容器100を組み立てる際に移動体6を繰り戻し限の位置でもある初期位置に簡単に配置することができる。
【0028】
このような構成の先筒5の略後半部を収容する容器本体2は、円筒状を成し、その後端部の内周面で周方向の等配位置(ここでは2箇所)に、容器本体2の後端面から軸線方向に延びる凹設溝2aが、円筒体4を回転方向に係合するためのものとして設けられている。また、容器本体2の後端部の内周面で凹設溝2a,2a間には、周方向に軸線方向視円弧状に延びる凹部(不図示)が、円筒体4を軸線方向に係合するためのものとして設けられている。また、容器本体2の先端部の内周面には、先筒5にキャップ3を装着したときに先筒5に密着しキャップ3内の気密性を確保することも可能な円環状の板バネ部材10が装着されている。
【0029】
円筒体4は、図2に示すように、有底円筒状を成し、この円筒体を構成する周壁部4aの内側に、底部から軸線方向に突出する突出部4bを備える。この突出部4bは、底部と同軸の円周方向に沿って断続し軸線方向視円弧状を成し、ここでは、一対が対向して設けられている。
【0030】
周壁部4aは、その外周面の周方向の等配位置(ここでは2箇所)に、容器本体2の凹設溝2aに進入し回転方向に係合するための突条4cが、軸線方向に延びるように設けられていると共に、その外周面で突条4c,4c間に、容器本体2の円弧状の凹部(不図示)に進入し軸線方向に係合するための凸部(不図示)が周方向に軸線方向視円弧状に延びるように設けられている。
【0031】
また、周壁部4aには、その内周面の周方向の等配位置(ここでは4箇所)に、先筒5の凹部5aに進入し軸線方向に係合するための凸部4eが、第1突起として周方向に互いに離間し短尺に延びるように設けられている。
【0032】
また、円弧状を成す突出部4bは、その外周面に、雌螺子部材7のローレット7bに進入し回転方向に係合するための凸部4fが、第2突起として軸線方向に短尺に延びるように設けられている。この第2突起4fは、突出部4bに対して周方向に離間して2個が設けられている。そして、第1突起4e及び第2突起4fは、円筒体4の軸線方向の略同一位置に径方向に離間して配置されている。
【0033】
また、円筒体4の底部で、第1突起4eの軸線方向に対応する位置(軸線方向上の位置)、すなわち周壁部4aの内側には、内外を連通する窓部4gが設けられている。この窓部4gは、径方向に所定幅を有し軸線方向視円弧状に開口されたスリットである。この窓部4gに蓋30の突起が挿入され、円筒体4に蓋30が装着される。
【0034】
そして、円筒体4は、図2に示すように、先筒5及び容器本体2の後側に嵌め込まれることで、移動体繰出容器100が得られる。具体的には、移動体6の後端部が、円筒体4の底部及び突出部4bの内側に収容された状態で、円筒体4の周壁部4aの突条4cが、容器本体2の凹設溝2aに回転方向に係合すると共に、その周壁部4aの凸部4dが、容器本体2の円弧状の凹部(不図示)に軸線方向に係合することで、円筒体4は、容器本体2に対して軸線周りに同期回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着され、容器本体2と一体化されている。また、円筒体4は、周壁部4aの第1突起4eが、先筒5の凹部5aに軸線方向に係合することで、先筒5を軸線周りに回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着している。また、円筒体4は、周壁部4aの第2突起4fが、雌螺子部材7のローレット7bに回転方向に係合することで、雌螺子部材7を軸線周りに同期回転可能に装着している。前述したように、容器本体2に対して先筒5は軸線方向に移動不能とされ、この先筒5に対して雌螺子部材7は軸線方向に移動不能とされているため、雌螺子部材7は、容器本体2に一体化された円筒体4に対して、軸線方向に移動不能且つ軸線周りに同期回転可能とされている。
【0035】
そして、この移動体繰出容器100にあっては、使用者が容器本体2と先筒5とを持って相対回転すると、容器本体2と円筒体4を介して同期回転する雌螺子部材7と、先筒5と同期回転するラチェットバネ部材8とが相対回転し、移動体6の雄螺子6a及び雌螺子部材7の雌螺子7aにより構成された螺合機構、及び、ラチェットバネ部材8の非円形の貫通孔8mに移動体6が挿通することで構成される回り止めによって、移動体6が前進し、このとき、ラチェット機構を構成するラチェットバネ部材8のラチェット歯8d、雌螺子部材7の突条7d同士が噛合(係脱)を繰り返し、使用者にはラチェット歯8d、突条7d同士が係合する度にクリック感(抵抗感)が与えられながら、前進するピストン9により化粧料Lが先端側に押し出され、先筒5の先端の開口から出現し使用状態とされる。このように、使用者に与えられるクリック感により、相対回転の度合いやピストン9の前進具合が感知され、化粧料Lを適量吐出できる。
【0036】
また、移動体6は把持部6bを備えることで、把持部6bを設けていない移動体6を初期位置へ配置する場合に目視で先筒5を組み立てるか、又は、移動体繰出容器100を組み立ててから移動体6を繰り戻し限まで戻す、という作業を行わなくても簡単に移動体6を初期位置へ配置することができるので、作業効率を向上させることが出来る。
さらに、把持部6bを保持したまま、図11に示したように、ピストン9、ラチェット部材8、雌螺子部材7、移動体6を組み付けた状態で持ち運んだとしても、移動体6が初期位置からずれることがない。例えば、図11の状態に部材を組み立てて最終的に他の場所で移動体繰出容器100に組み立てる場合においても、図11の状態の部材を移動中に移動体6が初期位置からずれることがないので、作業効率が向上される。
【0037】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、移動体6の位置決め部6eの形状としては、本実施形態の平板状以外にも平板を2枚用いて十字形状、球体形状、等が考えられ、雌螺子部材7の筒孔の径よりも大きい形状であればどのような形状でもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、化粧料Lを軟らかい棒状の化粧料としているが、液状、半固形状の化粧料に対しても適用可能であり、この場合には、ラチェット機構を設けずに、移動体6と共に化粧料を前進、後退可能とするのが好ましく、ラチェット機構に代えてクリック機構を用いるのがより好ましい。また、先筒先端の開口を小さくすることにより、泥状、ジェル状の化粧料を用いることも可能である。
【0039】
また、上述した先筒5を取り替え可能なカートリッジとしても良い。
【0040】
また、化粧料Lとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた移動体繰出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
2…容器本体、3…キャップ、4…円筒体、5…先筒(第1部品)、6…移動体、7…雌螺子部材(第2部品)、8…ラチェットバネ部材、9…ピストン、100…化粧料容器、L…化粧料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容する化粧料を先端の開口から出現可能とする先筒と、
前記先筒の後部を収容する容器本体と、
前記先筒に備えられる、内側に雌螺子を備える筒状の雌螺子部材と、前記雌螺子部材と螺合結合可能な雄螺子を外側に形成しており該雌螺子部材に組み付けられて使用される移動体と、を備え、
前記先筒と前記容器本体とを相対回転することで前記雌螺子部材の前記雌螺子と前記移動体の前記雄螺子との螺合作用が働き、該移動体が軸線方向に摺動し、該先筒の開口より化粧料を吐出可能とする移動体繰出容器であって、
前記移動体は、
前記雌螺子部材と螺合結合されて移動体繰出容器に組み付けられる前は前記雄螺子が形成されている螺子部と把持部とからなり、該螺子部と該把持部は離間可能な構成となっていることを特徴とする移動体繰出容器。
【請求項2】
前記移動体の前記把持部は、位置決め部を備えており、
前記位置決め部は、前記雌螺子部材に該移動体を組み付ける際、前記螺子部が該雌螺子部材の前記雌螺子と螺合結合するときに該雌螺子部材の所定位置に該螺子部を配置させることを可能とすることを特徴とする請求項1に記載の移動体繰出容器。
【請求項1】
内部に収容する化粧料を先端の開口から出現可能とする先筒と、
前記先筒の後部を収容する容器本体と、
前記先筒に備えられる、内側に雌螺子を備える筒状の雌螺子部材と、前記雌螺子部材と螺合結合可能な雄螺子を外側に形成しており該雌螺子部材に組み付けられて使用される移動体と、を備え、
前記先筒と前記容器本体とを相対回転することで前記雌螺子部材の前記雌螺子と前記移動体の前記雄螺子との螺合作用が働き、該移動体が軸線方向に摺動し、該先筒の開口より化粧料を吐出可能とする移動体繰出容器であって、
前記移動体は、
前記雌螺子部材と螺合結合されて移動体繰出容器に組み付けられる前は前記雄螺子が形成されている螺子部と把持部とからなり、該螺子部と該把持部は離間可能な構成となっていることを特徴とする移動体繰出容器。
【請求項2】
前記移動体の前記把持部は、位置決め部を備えており、
前記位置決め部は、前記雌螺子部材に該移動体を組み付ける際、前記螺子部が該雌螺子部材の前記雌螺子と螺合結合するときに該雌螺子部材の所定位置に該螺子部を配置させることを可能とすることを特徴とする請求項1に記載の移動体繰出容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−106781(P2013−106781A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253911(P2011−253911)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
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