移動体追跡システム
【課題】移動体が存在する施設領域を正しく検知して正確な動線(移動履歴)を作成する移動体追跡システムを得る。
【解決手段】移動体を検知した受信機20が送信する移動体検知情報21を追跡サーバ30の受信部31が受信する。移動判定部32が、移動体検知情報21から生成した受信移動点から動線情報保持部40が保持する動線情報に含まれる最新移動点までの施設経路に沿った接続距離を、施設の経路に沿って受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報より求め、この接続距離と両移動点間の検知時刻差より同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定する。動線作成部33が、移動可能と判定された受信移動点を動線情報に追加する。
【解決手段】移動体を検知した受信機20が送信する移動体検知情報21を追跡サーバ30の受信部31が受信する。移動判定部32が、移動体検知情報21から生成した受信移動点から動線情報保持部40が保持する動線情報に含まれる最新移動点までの施設経路に沿った接続距離を、施設の経路に沿って受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報より求め、この接続距離と両移動点間の検知時刻差より同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定する。動線作成部33が、移動可能と判定された受信移動点を動線情報に追加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施設に設置された複数の受信機と移動体が携帯する送信機を用いて移動体の位置を追跡する移動体追跡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体追跡システムでは、施設に設置された複数の受信機が、各受信領域に存在する送信機(移動体が携帯している)の信号を受信して移動体を検知し、移動体検知情報を追跡サーバに送信する。追跡サーバは、受信機から送られた移動体検知情報に基づき、送信機毎に受信機が設置された位置と検知時刻を時系列に並べて移動履歴(動線)を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成の移動体追跡システムでは、近傍に設置された受信機間で受信領域が重複する場合に、複数の受信機が同じ送信機を同時に検知することがある。この場合に、特許文献1に係る移動体追跡システムでは、移動履歴にて同時に複数の受信領域に移動体が存在すると記述するか、あるいは受信領域の属性等に基づき一つの受信領域を移動体の存在領域として選択するようにしていた。また、別の従来システムでは、追跡サーバが受信機の受信の電波強度をチェックし、閾値以下であれば移動体として検知しないか、あるいは最大の電波強度で受信した受信機の受信領域を移動体の存在領域とする等、電波強度を用いて判定するようにしていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−5511号公報(段落0036、0184等)
【特許文献2】特開2008−175734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の移動体追跡システムは以上のように構成されているので、近傍に設置された受信機間で受信領域が重複する場合、オープンスペースであれば、特許文献1のように同時に複数の近傍領域に移動体が存在すると判定しても実用上問題ない。しかし、受信機が壁及び床等を越えて送信機の信号を受信してしまう誤検知があった場合に、実際には移動体が存在しない施設領域に誤って存在すると判定及び記録されてしまうのは問題である。例えば、送信機を携帯した移動体が廊下を歩いているのに、その廊下に面した入出許可されていない部屋に設置された受信機が壁を越えて誤検知してしまい、入出許可されていない部屋に存在すると判定されてしまう場合が問題となる。
【0006】
特許文献2の電波強度を利用する判定方法であれば壁及び床等を越えて受信する誤検知の確率を軽減することができるが、ドアが開いている際に誤検知してしまう等の誤検知の課題は完全に解決することができない。また、建物のリレイアウト及び干渉する無線装置の使用により電波環境が変化すると、移動体検知用の閾値を含めた判定方法を変更する必要があり、運用が煩雑になる。
【0007】
また、従来の移動体追跡システムでは、移動体が想定より早く移動する又は受信領域に多数の送信機が存在する等、受信機の検知能力を超えてしまうと正しく移動体を検知できない場合があった。追跡サーバでは受信機によるこの検知ミスを判定できないため、移動履歴に記録される動線は施設の経路に沿って連続とはならず、正しい移動履歴を抽出することができない。
【0008】
さらに、送信機の移動体識別情報を改竄して別の送信機で不正利用した場合、同じ移動体識別情報を有する送信機が施設内に同時に複数存在しても、追跡サーバは単独の移動体による移動履歴として抽出するため、不正利用をその場で検知できない又は別の移動履歴として区別して表示できないといった課題がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、移動体が存在する施設領域を正しく検知して正確な動線(移動履歴)を作成する移動体追跡システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る移動体追跡システムは、移動体に携帯され、当該移動体を識別する移動体識別情報を含む移動体情報を無線で送信する送信機と、施設に設置され、送信機が送信した移動体情報を受信して移動体を検知し、受信機を識別する受信機識別情報と移動体の検知時刻情報を含む移動体検知情報を送信する受信機と、複数の受信機が送信した移動体検知情報を受信する都度、移動体識別情報、受信機識別情報に基づく検知位置及び検知時刻情報よりなる移動点を生成し、当該移動点を移動体毎に検知時刻に基づく時系列に並べた動線情報を作成する追跡サーバとを備える移動体追跡システムであって、追跡サーバは、施設の経路に沿って受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報を保持する受信機配置情報保持部と、受信機が送信した移動体検知情報を受信する受信部と、受信部で新たに受信した移動体検知情報より生成した新たな移動点から同一移動体の動線情報に含まれる最新の移動点までの施設の経路に沿った接続距離を受信機配置情報より求めると共に、当該両移動点間の検知時刻差を各検知時刻情報より求め、接続距離及び検知時刻差より同一移動体が当該両移動点間を移動可能であるか判定する移動判定部と、移動判定部が移動可能と判定した新たな移動点を動線情報に追加する動線作成部とを有するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、新たに受信した移動体検知情報より生成した新たな移動点から同一移動体の動線情報に含まれる最新の移動点までの施設の経路に沿った接続距離を受信機配置情報より求めると共に、両移動点間の検知時刻差を各検知時刻情報より求め、接続距離及び検知時刻差より同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定し、移動可能と判定した新たな移動点を動線情報に追加するようにしたので、移動体が存在する施設領域を正しく検知して正確な動線を作成する移動体追跡システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る移動体追跡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す受信機の施設内配置例を示す図である。
【図3】図1に示す追跡サーバの内部構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す追跡サーバの受信機配置情報保持部が保持する受信機配置情報を説明する図である。
【図5】図1に示す追跡サーバが受信機から受信する移動体検知情報を説明する図である。
【図6】図3に示す追跡サーバが生成して動線情報保持部に保持させる動線情報を説明する図である。
【図7】図3に示す追跡サーバの保留移動点リスト保持部が保持する保留移動点リストを説明する図である。
【図8】実施の形態1に係る追跡サーバの動作を示すフローチャートである。
【図9】移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図10】受信機が検知ミスした場合の移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図11】受信機が誤検知した場合の移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図12】同一移動体IDを有する複数の送信機が同時に存在する場合、又は複数の受信機が広範囲に渡って連続して誤検知した場合の移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係る移動体追跡システムの追跡サーバの内部構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示す追跡サーバの統計情報保持部が保持する統計情報を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る移動体追跡システムの構成を示すブロック図である。送信機10は、追跡対象となる人及び物品等の移動体が携帯する。この送信機10は自機を携帯する移動体O1,O2を識別する移動体識別情報(以下、移動体ID)を内部に保持しておき、所定のタイミングで移動体IDを含む移動体情報を無線にて送信する。図1のシステム構成例では、移動体O1の移動体IDを設定した送信機10−O1と、移動体O2の移動体IDを設定した送信機10−O2とがある。なお、以下の説明では、送信機10−O1,10−O2を区別する必要がないときには単に送信機10と称す。
【0014】
複数の受信機20は、近傍の受信機間で相互に受信領域が重複しない、あるいは一部重複するように施設内に設置されている。各受信機20は、自機を識別する受信機識別情報(以下、受信機ID)を内部に保持する。受信機20は自機の受信領域に存在する送信機10から移動体情報を受信すると、その送信機10を携帯する移動体を検知したと判定して、その受信時刻である検知時刻、移動体ID、及び受信機IDを含む移動体検知情報をLAN(Local Area Network)等のネットワーク60に送信する。
【0015】
なお、送信機10と受信機20による位置検出技術は公知のため、詳細な説明は省略するが、位置検出方式としては、狭い受信領域を有する受信機20を多数設置して、送信機10が一定周期で移動体情報を送信するアクティブ方式、又は広い受信領域を有する少数の受信機20と、送信機10に移動体情報送信を促す信号を発信するトリガアンテナを多数設置するセミアクティブ方式等の様々な方式を利用することができる。本実施の形態1では、送信機10と受信機20の位置検出方式としてアクティブ方式を利用した場合を例にして説明するが、これに限定されるものではなく、セミアクティブ方式等の他の方式を利用してもよい。
【0016】
追跡サーバ30は、ネットワーク60を介して受信機20から移動体検知情報を受信し、後述する追跡処理により、移動体がいつどの受信機20の近傍に存在したかを示す動線情報を作成し、動線情報保持部40に保持させる。また、追跡サーバ30は、動線情報保持部40に対して、移動体、時刻、場所等を検索キーとする時空間検索を行い、該当する動線情報を得る。
【0017】
動線情報保持部40は、追跡サーバ30が作成した動線情報を保持する。表示装置50は、追跡サーバ30が時空間検索を行って動線情報保持部40から取得した最新又は過去の動線情報を、フロア図面上を移動体が移動する様子等の画面として提示する。
【0018】
図2は、図1に示す受信機20の施設内配置例を示す図である。図2において、太い実線は施設の壁を表し、この施設は4つの出入口、エントランスホールZ1、上下左右にのびる通路Z2、複数の部屋Z3〜Z8で構成される。図2に示す受信機R1〜R10,R20〜R40は図1に示す受信機20に相当し、R1〜R10,R20〜R40はそれぞれの受信機IDである。ただし、四角□で表した受信機R1〜R10は、施設の出入口及び各部屋Z3〜Z8の出入口に設置され、移動体の検知に加え入場か退場かの移動方向も検知する。一方、丸○で表した受信機R20〜R40には移動方向を検知する機能はなく、単に移動体を検知する。
【0019】
受信機R1〜R10,R20〜R40を結ぶ細い実線は、施設の経路に従った受信機間の接続関係を示す。移動体は経路に沿ってしか移動できないので、移動体の移動に伴い、基本的には隣接する受信機が順に移動体を検知する。例えば通路Z2に設置された受信機R24と、部屋Z4に設置された受信機R32とは距離的には近いがその間に壁が存在するため、移動体は受信機R24→R32へ直接移動することはできず、受信機R24→R21→R3→R32の順の経路を移動することになる。
【0020】
なお、図2では各受信機の受信領域は図示していないが、隣接する受信機間で受信領域が一部重複する場合は、先立って説明したように同時に二つの受信機が同じ移動体を検知することがある。また、施設の壁及び床の電波遮断能力が不十分であったり、出入口のドアや窓が開いたりしていると、壁及び床を超えて本来検知すべきではない移動体を誤検知することがある。さらに、移動体が想定以上の速度で移動したり、想定以上の数の移動体が存在したりする等、受信機の受信能力(移動体検知能力)を超えた場合や、同じ周波数帯を使用する無線装置が動作して受信機が電波干渉を受けた場合は、移動体を正しく検知できず検知に失敗して検知ミスが発生する。さらに、このような誤検知及び検知ミスが発生しないように予め設計及び設置されていたとしても、施設のリレイアウト及び建物改修工事等によりシステム運用途中で誤検知又は検知ミスが発生する可能性がある。
【0021】
そこで、本実施の形態1の追跡サーバ30は、このような誤検知及び検知ミスが発生した場合でも、移動体を正しく追跡できるよう構成する。以下、追跡サーバ30の詳細を説明する。
【0022】
図3は、図1に示す追跡サーバ30の内部構成を示すブロック図である。図3に示す追跡サーバ30は、受信機20からネットワーク60を介して移動体検知情報21を受信する受信部31と、移動体が移動体検知情報21の示す移動点に移動可能か否かを判定する移動判定部32と、移動可能と判定した移動点を用いて動線を作成する動線作成部33と、過去に受信した移動点で未だ移動可能と判定されず保留されている保留移動点を管理する移動点管理部34と、受信機20の情報を保持する受信機配置情報保持部35と、保留移動点の情報を保持する保留移動点リスト保持部36とを備える。
【0023】
図4は、追跡サーバ30の受信機配置情報保持部35が保持する受信機配置情報を説明する図である。受信機配置情報は、受信機管理テーブル35a及び受信機間距離テーブル35bに登録された情報から構成される。受信機管理テーブル35aは、「受信機ID」、「設置位置」、「隣接受信機」、追跡処理に有用な「他」の情報から構成され、各受信機20を管理するための情報を定義したテーブルである。設置位置としては、受信機20が設置されているフロア、フロア内の位置座標(X,Y)、並びに通路及び部屋等のゾーンが記述される。隣接受信機としては、隣接する受信機20の受信機IDが定義される。その他の情報としては、出入口に設置され移動体の移動方向検知機能を有する等の補足情報が記述される。この受信機管理テーブル35aより、例えば受信機R1は1FフロアのエントランスホールZ1の(X1,Y1)の位置に設置され、隣接する受信機IDにR2,R20,R21があり、建物出入口に配置された移動方向検知機能を有することが分かる。
【0024】
受信機間距離テーブル35bは、二つの受信機間の接続距離を定義したテーブルである。接続距離とは、移動体が経路に沿ってある受信機から別の受信機に移動する際の距離である。受信機Ra,Rb間の接続距離をL(Ra,Rb)で表現することとし、例えば受信機R24,R32間の接続距離はL(R24,R32)=L1(R24,R21)+L2(R21,R3)+L3(R3,R32)と計算される。この接続距離L(Ra,Rb)は、受信機Ra,Rb間の実際の物理距離(例えば10m)で定義してもよいし、隣接受信機間の物理距離が略同じになるよう配置されているのであれば隣接する受信機間の距離を1ホップとして定義してもよい。
また、接続距離に方向性を付加する場合も考えられる。例えば受信機Ra,Rb間に一方向のフラッパーゲートを配置し、受信機Raから受信機Rbへは移動できるが、反対に受信機Rbから受信機Raへは一度施設から退場し再度入場しなければいけないように構成した場合は、接続距離をL(Ra,Rb)=10m、かつ、L(Rb,Ra)=“移動不可”と定義する。
受信機管理テーブル35a及び受信機間距離テーブル35bの情報により、受信機間の接続関係が施設の経路に沿って定義される。
【0025】
図5は、追跡サーバ30が受信機20から受信する移動体検知情報21を説明する図である。移動体検知情報21は、送信機10から送信される移動体情報に記述された「移動体ID」、受信した受信機20の「受信機ID」、及び受信機20が移動体情報を受信した時刻である「検知時刻」を少なくとも含む。これらの情報の他に、受信機20の有する機能によっては検知した移動体の移動方向を含めたり、移動体情報を受信した際の電波強度を含めたりする等、追跡処理に有用な情報を含む構成にしてもよい。
【0026】
図6は、追跡サーバ30が生成して動線情報保持部40に保持させる動線情報を説明する図である。移動体管理テーブル40aは、「移動体ID」、移動体の関連情報を示す「移動体属性」情報、並びに移動体毎に全ての動線の数、抽出中動線の数、及び動線情報40bの記録位置を示すアドレスポインタを含む「動線参照」情報から構成される。動線情報40bとは、その動線に対応する「移動体ID」、「動線番号」、動線の「抽出状態」、その動線を構成する移動点の個数である「移動点数」、及び「移動点1,2,・・・」の移動点情報(移動履歴)から構成される。各移動点情報には、移動体検知情報21に記述された「検知時刻」、「受信機ID」、及び受信機管理テーブル35aに定義された受信機の設置位置である「検知位置」を記述する。抽出状態としては、抽出中、正常終了、異常終了がある。施設出入口に設置された受信機R1〜R10で移動体の退場を検知した場合、その移動点が移動可能と判定された抽出中動線は正常終了となる。また、同一移動体について複数の抽出中動線があってそのうちの一つの抽出中動線が正常終了となった場合、その他の抽出中動線は異常終了となる。
【0027】
図7は、追跡サーバ30の保留移動点リスト保持部36が保持する保留移動点リスト36aを説明する図である。移動判定部32によって移動不可能と判定された移動点は、移動点管理部34によって保留移動点リスト36aに登録される。登録内容としては、移動体検知情報21にある「受信機ID」、「検知時刻」、追跡処理に有用な「他」の情報が移動体毎にまとめて登録される。なお、動線として抽出されたり、一定時間経過しても動線として抽出されない等、与えられた条件に達した保留移動点は、移動点管理部34により保留移動点リスト保持部36から削除される。
【0028】
次に、追跡サーバ30の動作を説明する。図8は、実施の形態1に係る追跡サーバ30の動作を示すフローチャートである。
追跡サーバ30の追跡処理が開始されると、ステップST1において、受信部31が移動体検知情報21の受信を開始する(ステップST1)。受信部31が移動体検知情報21を受信すると(ステップST1“YES”)、ステップST2以降の動線作成処理に進む。
【0029】
ステップST2にて、移動判定部32は、動線情報保持部40の移動体管理テーブル40aを参照して、移動体検知情報21の示す移動体IDについて正常終了又は異常終了していない動線(以下、抽出中動線)が存在するか否かをチェックする。移動判定部32は、抽出中動線が存在すれば(ステップST2“YES”)、続くステップST3にて移動体検知情報21から移動点情報を抽出し、この移動点(以下、受信移動点)と抽出中動線の検知時刻が最新の移動点(以下、最新移動点)との間の接続距離Lを、受信機配置情報保持部35の受信機間距離テーブル35bを参照して求めると共に、受信移動点と最新移動点の検知時刻差Tを計算する。そして、移動判定部32は続くステップST4にて、接続距離Lと検知時刻差Tから移動体が移動可能か否かの判定を行う。
【0030】
図9は、移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。送信機10を携帯した移動体O1は、受信機R1,R2,R3が設置されたゾーンを移動しており、実線の矢印で示す動線が抽出中動線(R1→R2→R3)となる。この抽出中動線のうち、受信機R3で検知した移動点が最新移動点となる。受信機R3で移動体O1を検知した後、受信機R6で同一移動体IDの移動体O1を検知すると、移動判定部32が受信機R3(最新移動点)から受信機R6(受信移動点)への接続距離L36と検知時刻差T(=T2−T1)を求める。移動判定部32は、予め与えられた閾値Cに対して、L36/(T2−T1)≦Cならば移動可能と判定し(ステップST4“YES”)、L36/(T2−T1)>Cならば移動不可能と判定する(ステップST4“NO”)。
移動可能と判定されれば(ステップST4“YES”)、続くステップST5にて、動線作成部33が受信移動点をこの抽出中動線の最新の移動点として動線情報40bに追加する。
【0031】
図10は、受信機が検知ミスした場合の移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。図9と同様に、送信機10を携帯した移動体O1の抽出中動線はR1→R2→R3であり、受信機R3で移動体O1を検知した後、受信機R9で同一の移動体O1を検知したとする。移動判定部32は、受信機R3(最新移動点)から受信機R9(受信移動点)への接続距離L(=L36+L69)と検知時刻差T(=T2−T1)を求め、予め与えられた閾値Cに対して、(L36+L69)/(T2−T1)≦Cならば移動可能と判定し(ステップST4“YES”)、(L36+L69)/(T2−T1)>Cならば移動不可能と判定する(ステップST4“NO”)。
【0032】
さらに、移動判定部32は、ステップST4の移動判定において、受信機配置情報保持部35の受信機管理テーブル35aを参照して受信機R3,R9の経路上中間に受信機R6が位置することを確認し、この受信機R6の移動体検知情報21が受信されなかったことから、受信機R6で検知ミスが発生したと推定する。
【0033】
移動判定部32で移動可能と判定されれば(ステップST4“YES”)、続くステップST5にて、動線作成部33が受信移動点をこの抽出中動線の最新の移動点として動線情報40bに追加する。また、動線作成部33は検知ミスと推定された受信機R6の受信機IDと検知位置としての配置位置とを、抽出中動線を補完するための補完移動点として動線情報40bに追加する。なお、補完移動点をその他の移動点と区別するために、動線情報40bの検知時刻に運用上時刻として使用しない値を代入する。
【0034】
ステップST6にて、動線作成部33は受信移動点が施設を退場した際に検知されたものか否かをチェックする。具体的には、施設出入口に設置された移動方向検知機能を有する受信機20が移動体検知情報21に施設退場を示す情報を記述しておき、動線作成部33がこの情報を確認する。この受信移動点が施設退場を示すなら(ステップST6“YES”)、動線作成部33はステップST7にて、この受信移動点を追加した動線情報40bの抽出状態を正常終了とし、移動体O1に他の抽出中動線があればそれらの抽出状態を異常終了とする。また、動線作成部33は、移動点管理部34に指示して、保留移動点リスト保持部36から移動点O1に対応する保留移動点を削除する。削除される保留移動点は、誤検知等で正しく検知されなかった移動体検知情報となるため、必要に応じてエラーログ等の形式で保持又は出力すればよい。
【0035】
ステップST7の処理終了後、又は移動体が施設を退場しない場合(ステップST6“NO”)、追跡サーバ30がステップST8にて外部から追跡処理終了が指示されているか否かをチェックし、終了指示がなければ(ステップST8“NO”)、処理をステップST1に戻し、終了指示があれば(ステップST8“YES”)、追跡処理を終了する。
【0036】
移動体O1の抽出中動線が存在しない場合(ステップST2“NO”)、又は最新移動点から受信移動点へ移動不可能と判定された場合(ステップST4“NO”)には、ステップST9にて、移動判定部32が保留移動点リスト保持部36の保留移動点リスト36a中に保留移動点が存在するかチェックする。移動判定部32は、保留移動点が存在すれば(ステップST9“YES”)、続くステップST10にて受信移動点と保留移動点との接続距離L及び検知時刻差TをステップST3と同様の方法で計算し、続くステップST11にてステップST4と同様の方法で保留移動点から受信移動点への移動が移動か否かを判定する。
【0037】
保留移動点から受信移動点へ移動可能と判定されれば(ステップST11“YES”)、続くステップST12にて、動線作成部33が保留移動点と受信移動点とから新たな動線を作成し、動線情報40bに登録する。移動点管理部34は、新たな動線として登録されたこの保留移動点を保留移動点リスト36aから削除する。
【0038】
なお、ステップST11にて移動可能な保留移動点が複数存在する場合、動線作成部33は検知時刻差Tが小さいもの、若しくは接続距離Lが小さいもの、又はそれらの組み合わせで最も可能性の高いと推定されるものを保留移動点として選択する。状況及び目的に応じて適した選択方法が存在するので、動線作成部33を複数の選択方法を切り替えるように構成するか、選択方法を追加登録できる構成にすることが望ましい。
【0039】
他方、保留移動点リスト保持部36に保留移動点が存在しない場合(ステップST9“NO”)、又は受信移動点に対して移動可能な保留移動点が存在しない場合(ステップST11“NO”)には、続くステップST13にて移動点管理部34がその受信移動点を保留移動点として保留移動点リスト36aに登録する。
【0040】
ステップST12又はステップST13の処理が終了すると、続くステップST6の処理を行う。なお、図8では記載していないが、移動点管理部34は、保留移動点リスト保持部36に登録された保留移動点を所定タイミングでチェックし、一定時間経過した等の予め与えられた条件に達した保留移動点を削除し、必要に応じてエラーログとして保持又は出力する。
【0041】
図11は、受信機20が誤検知した場合の移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。なお、追跡サーバ30の一連の追跡処理については既に説明したので、ここでは誤検知の場合の追跡サーバ30の動作を簡単に説明する。
図11の場合、抽出中動線の最新移動点は受信機R1で検知した移動点である。移動体O1が受信機R1を通過して受信機R2の近傍に移動した際、受信機R2が移動体O1を検知時刻T2に検知するが、このとき、受信機R6が検知時刻T3に壁を越えて移動体O1を誤検知したとする。検知時刻T3<T2であれば受信機R6が検知した受信移動点と抽出中動線の最新移動点間で移動判定部32による判定処理が行われる(ステップST3)。この場合の判定は、接続距離L(=L12+L24+L46)が大きいために(L12+L24+L46)/(T3−T1)<Cとなり、移動判定部32が移動不可と判定する。この受信移動点は保留移動点リスト保持部36に登録されることとなる。
【0042】
一方、検知時刻T3≧T2であれば受信機R2が検知した受信移動点と最新移動点間で判定処理が行われ、接続距離L12が小さいため、移動判定部32が移動可能と判定する。従って、受信機R2が検知した正しい受信移動点が動線情報40bに追加される。これにより、壁及び床を越えて移動体O1を検知してしまうといった誤検知を動線として抽出しないようになっている。
【0043】
図12は、同一移動体IDを有する複数の送信機10が施設内に同時に存在する場合、及び複数の受信機20が広範囲に誤検知した場合の移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。
【0044】
先ず、同一移動体IDを有する複数の送信機10が施設内に同時に存在する場合を説明する。図12において、移動体O2が携帯する送信機10−O2の移動体ID改竄により、移動体O2が携帯する送信機10−O2の移動体IDと移動体O1が携帯する送信機10−O1の移動体IDとが同一になっていると仮定する。
まず、移動体O1が図12上を左側から移動してきて受信機R1およびR2により検知され、最新の移動点をR2、一つ前の移動点をR1とする動線として抽出されているとする。この時、移動体O2が図12上を右側から登場し受信機R11に検知されると、移動体O1と同じ移動体IDであるため、抽出中動線の最新移動点であるR2に対して接続距離L(R2,R11)=L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R10)+L(R10,R11)と検知時刻差Tが計算される。L(R2,R11)が大きいためL(R2,R11)/T>Cとなって移動不可能と判定され、受信移動点R11は移動保留点として移動保留点リストに保持される。その後、移動体O2が受信機R10に接近し検知されると、抽出中動線の最新移動点であるR2に対して接続距離L(R2,R10)=L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R10)と検知時刻差Tが計算され、L(R2,R10)が大きいためL(R2,R10)/T>Cとなって移動不可能と判定される。次に移動保留点リストの保留移動点R11に対して接続距離L(R10,R11)と検知時刻差Tが計算され、L(R10,R11)/T<Cとなって移動可能と判定され、移動点R1およびR2から構成される抽出中動線とは別に新しい動線(R11,R10)が抽出される。
【0045】
次に、複数の受信機20が広範囲に誤検知した場合を説明する。
図12において、施設において、壁又は床を隔てた同じような位置に受信機R1,R2、R12,R13が設置されている場合に、各受信機R1,R2,R12,R13を隔てる壁又は床の電波遮断が不十分なために、移動体O1の携帯する送信機10−O1が複数の受信機R1,R2,R12,R13に渡って連続して広範囲に誤検知されたとする。
まず、移動体O1が図12上を左側から移動してきて受信機R1により検知され、最新の移動点をR1とする動線として抽出されているとする。受信機R1に検知された直ぐ後で受信機R12に検知されると、抽出中動線の最新移動点であるR1に対して接続距離L(R1,R12)=L(R1,R2)+L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R8)+L(R8,R1)+L(R1,R12)と検知時刻差Tが計算され、L(R1,R12)が大きいためL(R1,R12)/T>Cとなって移動不可能と判定されて、受信移動点R12は移動保留点として移動保留点リストに保持される。その後、移動体O1が受信機R2に接近して検知されると、接続距離L(R1,R2)と検知時刻差Tが計算され、L(R1,R2)/T<Cで移動可能と判定されて受信移動点R2が抽出中動線に登録される。その後、移動体O1が受信機R13に検知されると、抽出中動線の最新移動点であるR2に対して接続距離L(R2,R13)=L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R8)+L(R8,R1)+L(R1,R13)と検知時刻差Tが計算され、L(R2,R13)が大きいためL(R2,R13)/T>Cとなって移動不可能と判定される。次に移動保留点リストの保留移動点R12に対して接続距離L(R12,R13)と検知時刻差Tが計算され、L(R12,R13)/T<Cとなって移動可能と判定され、移動点R1およびR2から構成される抽出中動線とは別に新しい動線(R12,R13)が抽出される。
これらのように、同一移動体IDを有する複数の送信機10が一定距離離れて存在すれば、お互い異なる動線として抽出するようになっている。
【0046】
以上より、実施の形態1によれば、移動体追跡システムを、移動体に携帯され、当該移動体を識別する移動体IDを含む移動体情報を無線で送信する送信機10と、施設に設置され、送信機10が送信した移動体情報を受信して移動体を検知し、受信機20を識別する受信機IDと移動体の検知時刻を含む移動体検知情報21を送信する受信機20と、複数の受信機20が送信した移動体検知情報21を受信する都度、移動体ID、受信機IDに基づく検知位置及び検知時刻よりなる移動点を生成し、移動点を移動体毎に検知時刻に基づく時系列に並べた動線情報40bを作成する追跡サーバ30とを備えるように構成した。そして、追跡サーバ30を、施設の経路に沿って受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報を保持する受信機配置情報保持部35と、受信機20が送信した移動体検知情報21を受信する受信部31と、受信部31で新たに受信した移動体検知情報21より生成した受信移動点から同一移動体IDの動線情報40bに含まれる最新移動点までの施設の経路に沿った接続距離Lを受信機配置情報より求めると共に、両移動点間の検知時刻差Tを各検知時刻より求め、接続距離L及び検知時刻差Tより同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定する移動判定部32と、移動判定部32が移動可能と判定した受信移動点を動線情報40bに追加する動線作成部33とを有するように構成した。このため、施設の壁及び床を越えて送信機10の信号を受信するといった受信機20の誤検知に対して、移動体が存在する施設領域を正しく検出して正確な動線情報40bを作成することができる。
【0047】
また、上記実施の形態1によれば、動線作成部33が、受信機配置情報で定義された受信機間の接続関係に基づいて、動線情報40bに含まれる最新移動点から移動判定部32が移動可能と判定した受信移動点までの経路上に、受信部31で移動体検知情報21を受信しなかった受信機20が存在するか検索し、存在する場合に、動線情報40bの最新移動点と受信移動点の間に移動体検知情報21を受信しなかった受信機20の情報を追加するように構成した。このため、送信機10から送信される移動体情報を受信できないといった受信機20の検知ミスに対して、検知ミスした経路上の移動点を動線情報40bに補完して、施設の経路に沿った正しい動線情報40bを作成することができる。
【0048】
また、上記実施の形態1によれば、移動判定部32が、受信部31で新たに受信した移動体検知情報21より作成した受信移動点を移動不可能と判定した場合に、さらに、過去に受信され過去に移動不可能と判定した移動点を保留移動点として登録した保留移動点リスト36aを参照して、保留移動点リスト36aに登録されている保留移動点と受信移動点の接続距離L及び検知時刻差Tを求めて、同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定し、動線作成部33が、移動判定部32が移動可能と判定した保留移動点と受信移動点より新たな動線情報40bを作成するように構成した。このため、送信機10の有する移動体IDを改竄して不正利用し、同一移動体IDを有する送信機10が施設内に同時に複数存在する場合にも、移動体それぞれについて動線情報40bを作成することができる。また、施設の床及び壁を越えて送信機10の信号を受信するといった受信機20の誤検知が複数の受信機20に渡って広範囲に発生する場合にも、連続する誤検知の移動体検知情報21から動線情報40bを作成して記録に残すことができる。
【0049】
実施の形態2.
図13は、この発明の実施の形態2に係る追跡サーバ30の構成を示すブロック図であり、図3と同一又は相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。図13に示す追跡サーバ30は、図3に示す上記実施の形態1の追跡サーバ30に新たに統計処理部37、統計情報保持部38及び処理変更部39を追加した構成である。この統計処理部37は、移動判定部32が判定した移動判定結果及び動線作成部33が作成した動線情報40bに基づいて所望の統計情報を計算する。統計情報保持部38は、統計処理部37が計算した統計情報を保持する。処理変更部39は、統計情報に基づいて、移動判定部32の移動判定処理及び受信機20の移動体検知処理の各処理内容及び設定情報を変更する。なお、本実施の形態2の移動体追跡システムの構成は、図1に示す移動体追跡システムと図面上では同様の構成であるため、以下では図1を援用して説明する。
【0050】
以下、新たに追加した統計処理部37、統計情報保持部38、処理変更部39による処理の内容を中心に説明する。
図14は、追跡サーバ30の統計情報保持部38が保持する統計情報を説明する図である。統計情報は、移動体検知エラーに関する統計情報38a及び交通流に関する統計情報38bから構成される。移動体検知エラーに関する統計情報38aは、受信した受信機20の「受信機ID」毎に算出した、「検知ミス」エラーの発生頻度、発生時の移動パターン及び電波強度等、並びに「誤検知」エラーの発生頻度、発生時の移動パターン及び電波強度等、エラー解析に役立つ統計情報である。移動判定部32の移動判定処理及び動線作成部33の動線作成処理において上記実施の形態1の図11〜図13に示すような受信機の誤検知及び検知ミスがあった場合に、逐次、統計処理部37が移動判定部32の判定結果及び動線作成部33の動線情報40bを用いてオンラインで計算して移動体検知エラーに関する統計情報38aを作成する。
【0051】
また、交通流に関する統計情報38bは、「受信機ID」毎又は近傍の受信機グループ毎に算出した、受信機20の近傍を通過する移動体の数、移動方向及び移動速度に関する「交通流」の統計情報である。移動体検知エラーに関する統計情報38aと同様に、統計処理部37が移動判定部32の判定結果及び動線作成部33の動線情報40bを用いてオンラインで計算して交通流に関する統計情報38bを作成する。
【0052】
このような統計情報は、補完移動点を含む動線情報40b及びエラーログ(保留移動点等の情報)をオフラインで読み出して計算して作成することもできるが、本実施の形態2のように移動判定あるいは動線作成を行う際にオンラインで統計情報を生成する構成にすることにより、動線作成処理の途中経過のデータをオンラインで利用してリアルタイムかつ少ない計算量で統計情報を得ることができる。
【0053】
統計処理部37が計算する統計情報としては、移動体検知エラーに関する統計情報38a及び交通流に関する統計情報38bの他に、隣接する受信機20が同一移動体IDの移動体検知情報21を略同時刻に検知するといった検知パターンに関する統計情報、受信機20又は近傍の受信機グループにおいて高頻度で検知する移動体ID等の移動体検知頻度に関する統計情報等、施設及び用途に応じて種々の統計情報が考えられる。
【0054】
統計処理部37は、作成した統計情報を統計情報保持部38に記憶させると共に、処理変更部39へ出力する。統計情報保持部38は、統計処理部37が作成した統計情報を保持する。表示装置50は、追跡サーバ30内部の統計情報保持部38から現在又は過去の統計情報を取得して提示する。
【0055】
処理変更部39は、移動体検知エラーに関する統計情報38aに基づき、移動判定部32の移動判定処理及び受信機20の移動体検知処理に関わる処理内容及び設定情報を自動的に変更する。あるいは、処理変更部39が統計情報の提示と処理内容変更に必要な対話機能を備え、ユーザが表示装置50と入力装置等を用いて入力する処理内容の変更指示に従って移動判定部32及び受信機20に関わる処理内容及び設定情報を対話的に変更する。
【0056】
例えば、隣接する受信機20が同一移動体IDの移動体検知情報21を略同時刻に検知する頻度が増加してきた場合に、どちらか一方の受信機20に検知させるようにするために、受信機配置情報保持部35が保持する受信機配置情報中の受信機間の接続距離Lを大きくする。また、検知ミスが多い受信機20に対して、電波強度の閾値を低く設定しなおして検知感度を上げたり検知領域を広げたりする。また、誤検知が多い受信機20に対して、電波強度の閾値を高く設定しなおして検知感度を下げたり検知領域を狭くしたりする。さらに、施設の工事又はリレイアウトにより新たに通路が発生し経路が変更されたにもかかわらず受信機配置情報保持部35が保持する受信機配置情報が更新されていなければ、その近傍で誤検知が増加する。このような場合、処理変更部39が誤検知の多い箇所を検出してフロア図面上に表示させ、ユーザが現場を確認の上、受信機配置情報の設定を対話的に変更する。
【0057】
以上より、実施の形態2によれば、追跡サーバ30が、移動判定部32の判定結果及び動線作成部33が作成した動線情報40bを用いた統計処理を行い、受信機20の移動体検知に関する統計情報を作成する統計処理部37を有するように構成した。このため、誤検知及び検知ミスといった受信機20の検知エラーの発生状況、並びに受信機20間の交通流量の把握に役立つ統計情報を得ることができる。
【0058】
また、実施の形態2によれば、追跡サーバ30が、移動判定部32に設定されている、移動点間を同一移動体が移動可能であるか判定するために用いる受信機配置情報等を、統計処理部37が作成した統計情報に基づいて変更する処理変更部39を有するように構成した。また、処理変更部39が、受信機20に設定されている、移動体を検知するために用いる電波強度の閾値設定等を、統計処理部37が作成した統計情報に基づいて変更するように構成した。このため、統計情報から判明した受信機20の検知感度に影響する電波環境の変化、設置位置変更等に対応して、移動判定部32と受信機20の処理内容と設定情報を自動的又は対話的に変更することができ、より適切な移動体追跡を行うことが可能となる。
【0059】
なお、上記実施の形態1,2では、送信機10が、自機を携帯する移動体の移動体IDを保持及び送信する構成にしたが、これに限定されるものではなく、送信機10が自機を識別する送信機IDを保持及び送信すると共に追跡サーバ30等が送信機IDとその送信機10を携帯する移動体の移動体IDを対応付ける情報を管理する構成にして、移動体を追跡するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態1,2では、施設及び部屋の出入口には移動体の移動方向を検知する受信機20、その他の場所には移動体を検知する受信機20を設置する構成にしたが、これに限定されるものではなく、全ての場所に移動方向検知機能を有する受信機20又は移動方向検知機能を有しない受信機20を設置する構成であってもよい。
【0061】
また、上記実施の形態1,2の移動判定部32では、最新移動点及び受信移動点の二つの移動点に対して接続距離Lを検知時刻差Tで除した値を閾値と比較する移動判定を実行するように構成したが、これに限定されるものではなく、例えば接続距離L及び検知時刻差Tそれぞれに閾値を設け、接続距離L及び検知時刻差Tそれぞれが各閾値を超えた場合に移動不可能と判定する処理を先ず実行し、その後に上述の移動判定を実行する構成であってもよい。
さらに、移動判定部32は接続距離Lと検知時刻差Tにより移動判定を実行するように構成したが、移動体検知情報に含まれる電波強度等の他の情報を用いる判定を組み合わせる構成にしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態1,2の動線作成部33では、移動判定部32により移動可能と判定された受信移動点を全て抽出中動線の動線情報40bに登録する構成にしたが、これに限定されるものではなく、同一受信機20から時間的に連続して受信した移動点に対して、最初に登録した移動点と最新の移動点のみ登録し、中間の移動点に関する情報を削除する構成にして、動線情報保持部40のデータ量を削減してもよい。
さらに、動線作成部33は施設からの退場をチェックするように構成したが、これに限定されるものではなく、退場に加えて入場もチェックして、移動点が施設に入場した際に検知されたものであれば動線情報40bの抽出状態を正常開始とし、その他の場合を異常開始とする構成にしてもよい。
さらに、抽出中動線が存在するときに動線作成部33が同じ移動体IDに対して新たな動線を作成した場合、又は入退場のチェックで異常と判定した場合に、表示装置50に指示して警告を提示するように構成してもよい。
【0063】
なお、追跡サーバ30をコンピュータで構成する場合、受信部31、移動判定部32、動線作成部33、移動点管理部34、統計処理部37、処理変更部39の処理内容を記述している追跡処理プログラムをコンピュータのメモリに格納して、コンピュータのCPUがメモリに格納されている追跡処理プログラムを実行し、HDD等の記憶媒体を受信機配置情報保持部35、保留移動点リスト保持部36、統計情報保持部38、動線情報保持部40として使用すればよい。
【符号の説明】
【0064】
10−O1,10−O2 送信機、20 受信機、21 移動体検知情報、30 追跡サーバ、31 受信部、32 移動判定部、33 動線作成部、34 移動点管理部、35 受信機配置情報保持部、35a 受信機管理テーブル、35b 受信機間距離テーブル、36 保留移動点リスト保持部、36a 保留移動点リスト、37 統計処理部、38 統計情報保持部、38a 移動体検知エラーに関する統計情報、38b 交通流に関する統計情報、39 処理変更部、40 動線情報保持部、40a 移動体管理テーブル、40b 動線情報、50 表示装置、60 ネットワーク。
【技術分野】
【0001】
この発明は、施設に設置された複数の受信機と移動体が携帯する送信機を用いて移動体の位置を追跡する移動体追跡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体追跡システムでは、施設に設置された複数の受信機が、各受信領域に存在する送信機(移動体が携帯している)の信号を受信して移動体を検知し、移動体検知情報を追跡サーバに送信する。追跡サーバは、受信機から送られた移動体検知情報に基づき、送信機毎に受信機が設置された位置と検知時刻を時系列に並べて移動履歴(動線)を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成の移動体追跡システムでは、近傍に設置された受信機間で受信領域が重複する場合に、複数の受信機が同じ送信機を同時に検知することがある。この場合に、特許文献1に係る移動体追跡システムでは、移動履歴にて同時に複数の受信領域に移動体が存在すると記述するか、あるいは受信領域の属性等に基づき一つの受信領域を移動体の存在領域として選択するようにしていた。また、別の従来システムでは、追跡サーバが受信機の受信の電波強度をチェックし、閾値以下であれば移動体として検知しないか、あるいは最大の電波強度で受信した受信機の受信領域を移動体の存在領域とする等、電波強度を用いて判定するようにしていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−5511号公報(段落0036、0184等)
【特許文献2】特開2008−175734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の移動体追跡システムは以上のように構成されているので、近傍に設置された受信機間で受信領域が重複する場合、オープンスペースであれば、特許文献1のように同時に複数の近傍領域に移動体が存在すると判定しても実用上問題ない。しかし、受信機が壁及び床等を越えて送信機の信号を受信してしまう誤検知があった場合に、実際には移動体が存在しない施設領域に誤って存在すると判定及び記録されてしまうのは問題である。例えば、送信機を携帯した移動体が廊下を歩いているのに、その廊下に面した入出許可されていない部屋に設置された受信機が壁を越えて誤検知してしまい、入出許可されていない部屋に存在すると判定されてしまう場合が問題となる。
【0006】
特許文献2の電波強度を利用する判定方法であれば壁及び床等を越えて受信する誤検知の確率を軽減することができるが、ドアが開いている際に誤検知してしまう等の誤検知の課題は完全に解決することができない。また、建物のリレイアウト及び干渉する無線装置の使用により電波環境が変化すると、移動体検知用の閾値を含めた判定方法を変更する必要があり、運用が煩雑になる。
【0007】
また、従来の移動体追跡システムでは、移動体が想定より早く移動する又は受信領域に多数の送信機が存在する等、受信機の検知能力を超えてしまうと正しく移動体を検知できない場合があった。追跡サーバでは受信機によるこの検知ミスを判定できないため、移動履歴に記録される動線は施設の経路に沿って連続とはならず、正しい移動履歴を抽出することができない。
【0008】
さらに、送信機の移動体識別情報を改竄して別の送信機で不正利用した場合、同じ移動体識別情報を有する送信機が施設内に同時に複数存在しても、追跡サーバは単独の移動体による移動履歴として抽出するため、不正利用をその場で検知できない又は別の移動履歴として区別して表示できないといった課題がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、移動体が存在する施設領域を正しく検知して正確な動線(移動履歴)を作成する移動体追跡システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る移動体追跡システムは、移動体に携帯され、当該移動体を識別する移動体識別情報を含む移動体情報を無線で送信する送信機と、施設に設置され、送信機が送信した移動体情報を受信して移動体を検知し、受信機を識別する受信機識別情報と移動体の検知時刻情報を含む移動体検知情報を送信する受信機と、複数の受信機が送信した移動体検知情報を受信する都度、移動体識別情報、受信機識別情報に基づく検知位置及び検知時刻情報よりなる移動点を生成し、当該移動点を移動体毎に検知時刻に基づく時系列に並べた動線情報を作成する追跡サーバとを備える移動体追跡システムであって、追跡サーバは、施設の経路に沿って受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報を保持する受信機配置情報保持部と、受信機が送信した移動体検知情報を受信する受信部と、受信部で新たに受信した移動体検知情報より生成した新たな移動点から同一移動体の動線情報に含まれる最新の移動点までの施設の経路に沿った接続距離を受信機配置情報より求めると共に、当該両移動点間の検知時刻差を各検知時刻情報より求め、接続距離及び検知時刻差より同一移動体が当該両移動点間を移動可能であるか判定する移動判定部と、移動判定部が移動可能と判定した新たな移動点を動線情報に追加する動線作成部とを有するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、新たに受信した移動体検知情報より生成した新たな移動点から同一移動体の動線情報に含まれる最新の移動点までの施設の経路に沿った接続距離を受信機配置情報より求めると共に、両移動点間の検知時刻差を各検知時刻情報より求め、接続距離及び検知時刻差より同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定し、移動可能と判定した新たな移動点を動線情報に追加するようにしたので、移動体が存在する施設領域を正しく検知して正確な動線を作成する移動体追跡システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る移動体追跡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す受信機の施設内配置例を示す図である。
【図3】図1に示す追跡サーバの内部構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す追跡サーバの受信機配置情報保持部が保持する受信機配置情報を説明する図である。
【図5】図1に示す追跡サーバが受信機から受信する移動体検知情報を説明する図である。
【図6】図3に示す追跡サーバが生成して動線情報保持部に保持させる動線情報を説明する図である。
【図7】図3に示す追跡サーバの保留移動点リスト保持部が保持する保留移動点リストを説明する図である。
【図8】実施の形態1に係る追跡サーバの動作を示すフローチャートである。
【図9】移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図10】受信機が検知ミスした場合の移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図11】受信機が誤検知した場合の移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図12】同一移動体IDを有する複数の送信機が同時に存在する場合、又は複数の受信機が広範囲に渡って連続して誤検知した場合の移動判定部の移動判定処理を説明する図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係る移動体追跡システムの追跡サーバの内部構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示す追跡サーバの統計情報保持部が保持する統計情報を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る移動体追跡システムの構成を示すブロック図である。送信機10は、追跡対象となる人及び物品等の移動体が携帯する。この送信機10は自機を携帯する移動体O1,O2を識別する移動体識別情報(以下、移動体ID)を内部に保持しておき、所定のタイミングで移動体IDを含む移動体情報を無線にて送信する。図1のシステム構成例では、移動体O1の移動体IDを設定した送信機10−O1と、移動体O2の移動体IDを設定した送信機10−O2とがある。なお、以下の説明では、送信機10−O1,10−O2を区別する必要がないときには単に送信機10と称す。
【0014】
複数の受信機20は、近傍の受信機間で相互に受信領域が重複しない、あるいは一部重複するように施設内に設置されている。各受信機20は、自機を識別する受信機識別情報(以下、受信機ID)を内部に保持する。受信機20は自機の受信領域に存在する送信機10から移動体情報を受信すると、その送信機10を携帯する移動体を検知したと判定して、その受信時刻である検知時刻、移動体ID、及び受信機IDを含む移動体検知情報をLAN(Local Area Network)等のネットワーク60に送信する。
【0015】
なお、送信機10と受信機20による位置検出技術は公知のため、詳細な説明は省略するが、位置検出方式としては、狭い受信領域を有する受信機20を多数設置して、送信機10が一定周期で移動体情報を送信するアクティブ方式、又は広い受信領域を有する少数の受信機20と、送信機10に移動体情報送信を促す信号を発信するトリガアンテナを多数設置するセミアクティブ方式等の様々な方式を利用することができる。本実施の形態1では、送信機10と受信機20の位置検出方式としてアクティブ方式を利用した場合を例にして説明するが、これに限定されるものではなく、セミアクティブ方式等の他の方式を利用してもよい。
【0016】
追跡サーバ30は、ネットワーク60を介して受信機20から移動体検知情報を受信し、後述する追跡処理により、移動体がいつどの受信機20の近傍に存在したかを示す動線情報を作成し、動線情報保持部40に保持させる。また、追跡サーバ30は、動線情報保持部40に対して、移動体、時刻、場所等を検索キーとする時空間検索を行い、該当する動線情報を得る。
【0017】
動線情報保持部40は、追跡サーバ30が作成した動線情報を保持する。表示装置50は、追跡サーバ30が時空間検索を行って動線情報保持部40から取得した最新又は過去の動線情報を、フロア図面上を移動体が移動する様子等の画面として提示する。
【0018】
図2は、図1に示す受信機20の施設内配置例を示す図である。図2において、太い実線は施設の壁を表し、この施設は4つの出入口、エントランスホールZ1、上下左右にのびる通路Z2、複数の部屋Z3〜Z8で構成される。図2に示す受信機R1〜R10,R20〜R40は図1に示す受信機20に相当し、R1〜R10,R20〜R40はそれぞれの受信機IDである。ただし、四角□で表した受信機R1〜R10は、施設の出入口及び各部屋Z3〜Z8の出入口に設置され、移動体の検知に加え入場か退場かの移動方向も検知する。一方、丸○で表した受信機R20〜R40には移動方向を検知する機能はなく、単に移動体を検知する。
【0019】
受信機R1〜R10,R20〜R40を結ぶ細い実線は、施設の経路に従った受信機間の接続関係を示す。移動体は経路に沿ってしか移動できないので、移動体の移動に伴い、基本的には隣接する受信機が順に移動体を検知する。例えば通路Z2に設置された受信機R24と、部屋Z4に設置された受信機R32とは距離的には近いがその間に壁が存在するため、移動体は受信機R24→R32へ直接移動することはできず、受信機R24→R21→R3→R32の順の経路を移動することになる。
【0020】
なお、図2では各受信機の受信領域は図示していないが、隣接する受信機間で受信領域が一部重複する場合は、先立って説明したように同時に二つの受信機が同じ移動体を検知することがある。また、施設の壁及び床の電波遮断能力が不十分であったり、出入口のドアや窓が開いたりしていると、壁及び床を超えて本来検知すべきではない移動体を誤検知することがある。さらに、移動体が想定以上の速度で移動したり、想定以上の数の移動体が存在したりする等、受信機の受信能力(移動体検知能力)を超えた場合や、同じ周波数帯を使用する無線装置が動作して受信機が電波干渉を受けた場合は、移動体を正しく検知できず検知に失敗して検知ミスが発生する。さらに、このような誤検知及び検知ミスが発生しないように予め設計及び設置されていたとしても、施設のリレイアウト及び建物改修工事等によりシステム運用途中で誤検知又は検知ミスが発生する可能性がある。
【0021】
そこで、本実施の形態1の追跡サーバ30は、このような誤検知及び検知ミスが発生した場合でも、移動体を正しく追跡できるよう構成する。以下、追跡サーバ30の詳細を説明する。
【0022】
図3は、図1に示す追跡サーバ30の内部構成を示すブロック図である。図3に示す追跡サーバ30は、受信機20からネットワーク60を介して移動体検知情報21を受信する受信部31と、移動体が移動体検知情報21の示す移動点に移動可能か否かを判定する移動判定部32と、移動可能と判定した移動点を用いて動線を作成する動線作成部33と、過去に受信した移動点で未だ移動可能と判定されず保留されている保留移動点を管理する移動点管理部34と、受信機20の情報を保持する受信機配置情報保持部35と、保留移動点の情報を保持する保留移動点リスト保持部36とを備える。
【0023】
図4は、追跡サーバ30の受信機配置情報保持部35が保持する受信機配置情報を説明する図である。受信機配置情報は、受信機管理テーブル35a及び受信機間距離テーブル35bに登録された情報から構成される。受信機管理テーブル35aは、「受信機ID」、「設置位置」、「隣接受信機」、追跡処理に有用な「他」の情報から構成され、各受信機20を管理するための情報を定義したテーブルである。設置位置としては、受信機20が設置されているフロア、フロア内の位置座標(X,Y)、並びに通路及び部屋等のゾーンが記述される。隣接受信機としては、隣接する受信機20の受信機IDが定義される。その他の情報としては、出入口に設置され移動体の移動方向検知機能を有する等の補足情報が記述される。この受信機管理テーブル35aより、例えば受信機R1は1FフロアのエントランスホールZ1の(X1,Y1)の位置に設置され、隣接する受信機IDにR2,R20,R21があり、建物出入口に配置された移動方向検知機能を有することが分かる。
【0024】
受信機間距離テーブル35bは、二つの受信機間の接続距離を定義したテーブルである。接続距離とは、移動体が経路に沿ってある受信機から別の受信機に移動する際の距離である。受信機Ra,Rb間の接続距離をL(Ra,Rb)で表現することとし、例えば受信機R24,R32間の接続距離はL(R24,R32)=L1(R24,R21)+L2(R21,R3)+L3(R3,R32)と計算される。この接続距離L(Ra,Rb)は、受信機Ra,Rb間の実際の物理距離(例えば10m)で定義してもよいし、隣接受信機間の物理距離が略同じになるよう配置されているのであれば隣接する受信機間の距離を1ホップとして定義してもよい。
また、接続距離に方向性を付加する場合も考えられる。例えば受信機Ra,Rb間に一方向のフラッパーゲートを配置し、受信機Raから受信機Rbへは移動できるが、反対に受信機Rbから受信機Raへは一度施設から退場し再度入場しなければいけないように構成した場合は、接続距離をL(Ra,Rb)=10m、かつ、L(Rb,Ra)=“移動不可”と定義する。
受信機管理テーブル35a及び受信機間距離テーブル35bの情報により、受信機間の接続関係が施設の経路に沿って定義される。
【0025】
図5は、追跡サーバ30が受信機20から受信する移動体検知情報21を説明する図である。移動体検知情報21は、送信機10から送信される移動体情報に記述された「移動体ID」、受信した受信機20の「受信機ID」、及び受信機20が移動体情報を受信した時刻である「検知時刻」を少なくとも含む。これらの情報の他に、受信機20の有する機能によっては検知した移動体の移動方向を含めたり、移動体情報を受信した際の電波強度を含めたりする等、追跡処理に有用な情報を含む構成にしてもよい。
【0026】
図6は、追跡サーバ30が生成して動線情報保持部40に保持させる動線情報を説明する図である。移動体管理テーブル40aは、「移動体ID」、移動体の関連情報を示す「移動体属性」情報、並びに移動体毎に全ての動線の数、抽出中動線の数、及び動線情報40bの記録位置を示すアドレスポインタを含む「動線参照」情報から構成される。動線情報40bとは、その動線に対応する「移動体ID」、「動線番号」、動線の「抽出状態」、その動線を構成する移動点の個数である「移動点数」、及び「移動点1,2,・・・」の移動点情報(移動履歴)から構成される。各移動点情報には、移動体検知情報21に記述された「検知時刻」、「受信機ID」、及び受信機管理テーブル35aに定義された受信機の設置位置である「検知位置」を記述する。抽出状態としては、抽出中、正常終了、異常終了がある。施設出入口に設置された受信機R1〜R10で移動体の退場を検知した場合、その移動点が移動可能と判定された抽出中動線は正常終了となる。また、同一移動体について複数の抽出中動線があってそのうちの一つの抽出中動線が正常終了となった場合、その他の抽出中動線は異常終了となる。
【0027】
図7は、追跡サーバ30の保留移動点リスト保持部36が保持する保留移動点リスト36aを説明する図である。移動判定部32によって移動不可能と判定された移動点は、移動点管理部34によって保留移動点リスト36aに登録される。登録内容としては、移動体検知情報21にある「受信機ID」、「検知時刻」、追跡処理に有用な「他」の情報が移動体毎にまとめて登録される。なお、動線として抽出されたり、一定時間経過しても動線として抽出されない等、与えられた条件に達した保留移動点は、移動点管理部34により保留移動点リスト保持部36から削除される。
【0028】
次に、追跡サーバ30の動作を説明する。図8は、実施の形態1に係る追跡サーバ30の動作を示すフローチャートである。
追跡サーバ30の追跡処理が開始されると、ステップST1において、受信部31が移動体検知情報21の受信を開始する(ステップST1)。受信部31が移動体検知情報21を受信すると(ステップST1“YES”)、ステップST2以降の動線作成処理に進む。
【0029】
ステップST2にて、移動判定部32は、動線情報保持部40の移動体管理テーブル40aを参照して、移動体検知情報21の示す移動体IDについて正常終了又は異常終了していない動線(以下、抽出中動線)が存在するか否かをチェックする。移動判定部32は、抽出中動線が存在すれば(ステップST2“YES”)、続くステップST3にて移動体検知情報21から移動点情報を抽出し、この移動点(以下、受信移動点)と抽出中動線の検知時刻が最新の移動点(以下、最新移動点)との間の接続距離Lを、受信機配置情報保持部35の受信機間距離テーブル35bを参照して求めると共に、受信移動点と最新移動点の検知時刻差Tを計算する。そして、移動判定部32は続くステップST4にて、接続距離Lと検知時刻差Tから移動体が移動可能か否かの判定を行う。
【0030】
図9は、移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。送信機10を携帯した移動体O1は、受信機R1,R2,R3が設置されたゾーンを移動しており、実線の矢印で示す動線が抽出中動線(R1→R2→R3)となる。この抽出中動線のうち、受信機R3で検知した移動点が最新移動点となる。受信機R3で移動体O1を検知した後、受信機R6で同一移動体IDの移動体O1を検知すると、移動判定部32が受信機R3(最新移動点)から受信機R6(受信移動点)への接続距離L36と検知時刻差T(=T2−T1)を求める。移動判定部32は、予め与えられた閾値Cに対して、L36/(T2−T1)≦Cならば移動可能と判定し(ステップST4“YES”)、L36/(T2−T1)>Cならば移動不可能と判定する(ステップST4“NO”)。
移動可能と判定されれば(ステップST4“YES”)、続くステップST5にて、動線作成部33が受信移動点をこの抽出中動線の最新の移動点として動線情報40bに追加する。
【0031】
図10は、受信機が検知ミスした場合の移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。図9と同様に、送信機10を携帯した移動体O1の抽出中動線はR1→R2→R3であり、受信機R3で移動体O1を検知した後、受信機R9で同一の移動体O1を検知したとする。移動判定部32は、受信機R3(最新移動点)から受信機R9(受信移動点)への接続距離L(=L36+L69)と検知時刻差T(=T2−T1)を求め、予め与えられた閾値Cに対して、(L36+L69)/(T2−T1)≦Cならば移動可能と判定し(ステップST4“YES”)、(L36+L69)/(T2−T1)>Cならば移動不可能と判定する(ステップST4“NO”)。
【0032】
さらに、移動判定部32は、ステップST4の移動判定において、受信機配置情報保持部35の受信機管理テーブル35aを参照して受信機R3,R9の経路上中間に受信機R6が位置することを確認し、この受信機R6の移動体検知情報21が受信されなかったことから、受信機R6で検知ミスが発生したと推定する。
【0033】
移動判定部32で移動可能と判定されれば(ステップST4“YES”)、続くステップST5にて、動線作成部33が受信移動点をこの抽出中動線の最新の移動点として動線情報40bに追加する。また、動線作成部33は検知ミスと推定された受信機R6の受信機IDと検知位置としての配置位置とを、抽出中動線を補完するための補完移動点として動線情報40bに追加する。なお、補完移動点をその他の移動点と区別するために、動線情報40bの検知時刻に運用上時刻として使用しない値を代入する。
【0034】
ステップST6にて、動線作成部33は受信移動点が施設を退場した際に検知されたものか否かをチェックする。具体的には、施設出入口に設置された移動方向検知機能を有する受信機20が移動体検知情報21に施設退場を示す情報を記述しておき、動線作成部33がこの情報を確認する。この受信移動点が施設退場を示すなら(ステップST6“YES”)、動線作成部33はステップST7にて、この受信移動点を追加した動線情報40bの抽出状態を正常終了とし、移動体O1に他の抽出中動線があればそれらの抽出状態を異常終了とする。また、動線作成部33は、移動点管理部34に指示して、保留移動点リスト保持部36から移動点O1に対応する保留移動点を削除する。削除される保留移動点は、誤検知等で正しく検知されなかった移動体検知情報となるため、必要に応じてエラーログ等の形式で保持又は出力すればよい。
【0035】
ステップST7の処理終了後、又は移動体が施設を退場しない場合(ステップST6“NO”)、追跡サーバ30がステップST8にて外部から追跡処理終了が指示されているか否かをチェックし、終了指示がなければ(ステップST8“NO”)、処理をステップST1に戻し、終了指示があれば(ステップST8“YES”)、追跡処理を終了する。
【0036】
移動体O1の抽出中動線が存在しない場合(ステップST2“NO”)、又は最新移動点から受信移動点へ移動不可能と判定された場合(ステップST4“NO”)には、ステップST9にて、移動判定部32が保留移動点リスト保持部36の保留移動点リスト36a中に保留移動点が存在するかチェックする。移動判定部32は、保留移動点が存在すれば(ステップST9“YES”)、続くステップST10にて受信移動点と保留移動点との接続距離L及び検知時刻差TをステップST3と同様の方法で計算し、続くステップST11にてステップST4と同様の方法で保留移動点から受信移動点への移動が移動か否かを判定する。
【0037】
保留移動点から受信移動点へ移動可能と判定されれば(ステップST11“YES”)、続くステップST12にて、動線作成部33が保留移動点と受信移動点とから新たな動線を作成し、動線情報40bに登録する。移動点管理部34は、新たな動線として登録されたこの保留移動点を保留移動点リスト36aから削除する。
【0038】
なお、ステップST11にて移動可能な保留移動点が複数存在する場合、動線作成部33は検知時刻差Tが小さいもの、若しくは接続距離Lが小さいもの、又はそれらの組み合わせで最も可能性の高いと推定されるものを保留移動点として選択する。状況及び目的に応じて適した選択方法が存在するので、動線作成部33を複数の選択方法を切り替えるように構成するか、選択方法を追加登録できる構成にすることが望ましい。
【0039】
他方、保留移動点リスト保持部36に保留移動点が存在しない場合(ステップST9“NO”)、又は受信移動点に対して移動可能な保留移動点が存在しない場合(ステップST11“NO”)には、続くステップST13にて移動点管理部34がその受信移動点を保留移動点として保留移動点リスト36aに登録する。
【0040】
ステップST12又はステップST13の処理が終了すると、続くステップST6の処理を行う。なお、図8では記載していないが、移動点管理部34は、保留移動点リスト保持部36に登録された保留移動点を所定タイミングでチェックし、一定時間経過した等の予め与えられた条件に達した保留移動点を削除し、必要に応じてエラーログとして保持又は出力する。
【0041】
図11は、受信機20が誤検知した場合の移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。なお、追跡サーバ30の一連の追跡処理については既に説明したので、ここでは誤検知の場合の追跡サーバ30の動作を簡単に説明する。
図11の場合、抽出中動線の最新移動点は受信機R1で検知した移動点である。移動体O1が受信機R1を通過して受信機R2の近傍に移動した際、受信機R2が移動体O1を検知時刻T2に検知するが、このとき、受信機R6が検知時刻T3に壁を越えて移動体O1を誤検知したとする。検知時刻T3<T2であれば受信機R6が検知した受信移動点と抽出中動線の最新移動点間で移動判定部32による判定処理が行われる(ステップST3)。この場合の判定は、接続距離L(=L12+L24+L46)が大きいために(L12+L24+L46)/(T3−T1)<Cとなり、移動判定部32が移動不可と判定する。この受信移動点は保留移動点リスト保持部36に登録されることとなる。
【0042】
一方、検知時刻T3≧T2であれば受信機R2が検知した受信移動点と最新移動点間で判定処理が行われ、接続距離L12が小さいため、移動判定部32が移動可能と判定する。従って、受信機R2が検知した正しい受信移動点が動線情報40bに追加される。これにより、壁及び床を越えて移動体O1を検知してしまうといった誤検知を動線として抽出しないようになっている。
【0043】
図12は、同一移動体IDを有する複数の送信機10が施設内に同時に存在する場合、及び複数の受信機20が広範囲に誤検知した場合の移動判定部32の移動判定処理を説明する図である。
【0044】
先ず、同一移動体IDを有する複数の送信機10が施設内に同時に存在する場合を説明する。図12において、移動体O2が携帯する送信機10−O2の移動体ID改竄により、移動体O2が携帯する送信機10−O2の移動体IDと移動体O1が携帯する送信機10−O1の移動体IDとが同一になっていると仮定する。
まず、移動体O1が図12上を左側から移動してきて受信機R1およびR2により検知され、最新の移動点をR2、一つ前の移動点をR1とする動線として抽出されているとする。この時、移動体O2が図12上を右側から登場し受信機R11に検知されると、移動体O1と同じ移動体IDであるため、抽出中動線の最新移動点であるR2に対して接続距離L(R2,R11)=L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R10)+L(R10,R11)と検知時刻差Tが計算される。L(R2,R11)が大きいためL(R2,R11)/T>Cとなって移動不可能と判定され、受信移動点R11は移動保留点として移動保留点リストに保持される。その後、移動体O2が受信機R10に接近し検知されると、抽出中動線の最新移動点であるR2に対して接続距離L(R2,R10)=L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R10)と検知時刻差Tが計算され、L(R2,R10)が大きいためL(R2,R10)/T>Cとなって移動不可能と判定される。次に移動保留点リストの保留移動点R11に対して接続距離L(R10,R11)と検知時刻差Tが計算され、L(R10,R11)/T<Cとなって移動可能と判定され、移動点R1およびR2から構成される抽出中動線とは別に新しい動線(R11,R10)が抽出される。
【0045】
次に、複数の受信機20が広範囲に誤検知した場合を説明する。
図12において、施設において、壁又は床を隔てた同じような位置に受信機R1,R2、R12,R13が設置されている場合に、各受信機R1,R2,R12,R13を隔てる壁又は床の電波遮断が不十分なために、移動体O1の携帯する送信機10−O1が複数の受信機R1,R2,R12,R13に渡って連続して広範囲に誤検知されたとする。
まず、移動体O1が図12上を左側から移動してきて受信機R1により検知され、最新の移動点をR1とする動線として抽出されているとする。受信機R1に検知された直ぐ後で受信機R12に検知されると、抽出中動線の最新移動点であるR1に対して接続距離L(R1,R12)=L(R1,R2)+L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R8)+L(R8,R1)+L(R1,R12)と検知時刻差Tが計算され、L(R1,R12)が大きいためL(R1,R12)/T>Cとなって移動不可能と判定されて、受信移動点R12は移動保留点として移動保留点リストに保持される。その後、移動体O1が受信機R2に接近して検知されると、接続距離L(R1,R2)と検知時刻差Tが計算され、L(R1,R2)/T<Cで移動可能と判定されて受信移動点R2が抽出中動線に登録される。その後、移動体O1が受信機R13に検知されると、抽出中動線の最新移動点であるR2に対して接続距離L(R2,R13)=L(R2,R3)+L(R3,R6)+L(R6,R9)+L(R9,R8)+L(R8,R1)+L(R1,R13)と検知時刻差Tが計算され、L(R2,R13)が大きいためL(R2,R13)/T>Cとなって移動不可能と判定される。次に移動保留点リストの保留移動点R12に対して接続距離L(R12,R13)と検知時刻差Tが計算され、L(R12,R13)/T<Cとなって移動可能と判定され、移動点R1およびR2から構成される抽出中動線とは別に新しい動線(R12,R13)が抽出される。
これらのように、同一移動体IDを有する複数の送信機10が一定距離離れて存在すれば、お互い異なる動線として抽出するようになっている。
【0046】
以上より、実施の形態1によれば、移動体追跡システムを、移動体に携帯され、当該移動体を識別する移動体IDを含む移動体情報を無線で送信する送信機10と、施設に設置され、送信機10が送信した移動体情報を受信して移動体を検知し、受信機20を識別する受信機IDと移動体の検知時刻を含む移動体検知情報21を送信する受信機20と、複数の受信機20が送信した移動体検知情報21を受信する都度、移動体ID、受信機IDに基づく検知位置及び検知時刻よりなる移動点を生成し、移動点を移動体毎に検知時刻に基づく時系列に並べた動線情報40bを作成する追跡サーバ30とを備えるように構成した。そして、追跡サーバ30を、施設の経路に沿って受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報を保持する受信機配置情報保持部35と、受信機20が送信した移動体検知情報21を受信する受信部31と、受信部31で新たに受信した移動体検知情報21より生成した受信移動点から同一移動体IDの動線情報40bに含まれる最新移動点までの施設の経路に沿った接続距離Lを受信機配置情報より求めると共に、両移動点間の検知時刻差Tを各検知時刻より求め、接続距離L及び検知時刻差Tより同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定する移動判定部32と、移動判定部32が移動可能と判定した受信移動点を動線情報40bに追加する動線作成部33とを有するように構成した。このため、施設の壁及び床を越えて送信機10の信号を受信するといった受信機20の誤検知に対して、移動体が存在する施設領域を正しく検出して正確な動線情報40bを作成することができる。
【0047】
また、上記実施の形態1によれば、動線作成部33が、受信機配置情報で定義された受信機間の接続関係に基づいて、動線情報40bに含まれる最新移動点から移動判定部32が移動可能と判定した受信移動点までの経路上に、受信部31で移動体検知情報21を受信しなかった受信機20が存在するか検索し、存在する場合に、動線情報40bの最新移動点と受信移動点の間に移動体検知情報21を受信しなかった受信機20の情報を追加するように構成した。このため、送信機10から送信される移動体情報を受信できないといった受信機20の検知ミスに対して、検知ミスした経路上の移動点を動線情報40bに補完して、施設の経路に沿った正しい動線情報40bを作成することができる。
【0048】
また、上記実施の形態1によれば、移動判定部32が、受信部31で新たに受信した移動体検知情報21より作成した受信移動点を移動不可能と判定した場合に、さらに、過去に受信され過去に移動不可能と判定した移動点を保留移動点として登録した保留移動点リスト36aを参照して、保留移動点リスト36aに登録されている保留移動点と受信移動点の接続距離L及び検知時刻差Tを求めて、同一移動体が両移動点間を移動可能であるか判定し、動線作成部33が、移動判定部32が移動可能と判定した保留移動点と受信移動点より新たな動線情報40bを作成するように構成した。このため、送信機10の有する移動体IDを改竄して不正利用し、同一移動体IDを有する送信機10が施設内に同時に複数存在する場合にも、移動体それぞれについて動線情報40bを作成することができる。また、施設の床及び壁を越えて送信機10の信号を受信するといった受信機20の誤検知が複数の受信機20に渡って広範囲に発生する場合にも、連続する誤検知の移動体検知情報21から動線情報40bを作成して記録に残すことができる。
【0049】
実施の形態2.
図13は、この発明の実施の形態2に係る追跡サーバ30の構成を示すブロック図であり、図3と同一又は相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。図13に示す追跡サーバ30は、図3に示す上記実施の形態1の追跡サーバ30に新たに統計処理部37、統計情報保持部38及び処理変更部39を追加した構成である。この統計処理部37は、移動判定部32が判定した移動判定結果及び動線作成部33が作成した動線情報40bに基づいて所望の統計情報を計算する。統計情報保持部38は、統計処理部37が計算した統計情報を保持する。処理変更部39は、統計情報に基づいて、移動判定部32の移動判定処理及び受信機20の移動体検知処理の各処理内容及び設定情報を変更する。なお、本実施の形態2の移動体追跡システムの構成は、図1に示す移動体追跡システムと図面上では同様の構成であるため、以下では図1を援用して説明する。
【0050】
以下、新たに追加した統計処理部37、統計情報保持部38、処理変更部39による処理の内容を中心に説明する。
図14は、追跡サーバ30の統計情報保持部38が保持する統計情報を説明する図である。統計情報は、移動体検知エラーに関する統計情報38a及び交通流に関する統計情報38bから構成される。移動体検知エラーに関する統計情報38aは、受信した受信機20の「受信機ID」毎に算出した、「検知ミス」エラーの発生頻度、発生時の移動パターン及び電波強度等、並びに「誤検知」エラーの発生頻度、発生時の移動パターン及び電波強度等、エラー解析に役立つ統計情報である。移動判定部32の移動判定処理及び動線作成部33の動線作成処理において上記実施の形態1の図11〜図13に示すような受信機の誤検知及び検知ミスがあった場合に、逐次、統計処理部37が移動判定部32の判定結果及び動線作成部33の動線情報40bを用いてオンラインで計算して移動体検知エラーに関する統計情報38aを作成する。
【0051】
また、交通流に関する統計情報38bは、「受信機ID」毎又は近傍の受信機グループ毎に算出した、受信機20の近傍を通過する移動体の数、移動方向及び移動速度に関する「交通流」の統計情報である。移動体検知エラーに関する統計情報38aと同様に、統計処理部37が移動判定部32の判定結果及び動線作成部33の動線情報40bを用いてオンラインで計算して交通流に関する統計情報38bを作成する。
【0052】
このような統計情報は、補完移動点を含む動線情報40b及びエラーログ(保留移動点等の情報)をオフラインで読み出して計算して作成することもできるが、本実施の形態2のように移動判定あるいは動線作成を行う際にオンラインで統計情報を生成する構成にすることにより、動線作成処理の途中経過のデータをオンラインで利用してリアルタイムかつ少ない計算量で統計情報を得ることができる。
【0053】
統計処理部37が計算する統計情報としては、移動体検知エラーに関する統計情報38a及び交通流に関する統計情報38bの他に、隣接する受信機20が同一移動体IDの移動体検知情報21を略同時刻に検知するといった検知パターンに関する統計情報、受信機20又は近傍の受信機グループにおいて高頻度で検知する移動体ID等の移動体検知頻度に関する統計情報等、施設及び用途に応じて種々の統計情報が考えられる。
【0054】
統計処理部37は、作成した統計情報を統計情報保持部38に記憶させると共に、処理変更部39へ出力する。統計情報保持部38は、統計処理部37が作成した統計情報を保持する。表示装置50は、追跡サーバ30内部の統計情報保持部38から現在又は過去の統計情報を取得して提示する。
【0055】
処理変更部39は、移動体検知エラーに関する統計情報38aに基づき、移動判定部32の移動判定処理及び受信機20の移動体検知処理に関わる処理内容及び設定情報を自動的に変更する。あるいは、処理変更部39が統計情報の提示と処理内容変更に必要な対話機能を備え、ユーザが表示装置50と入力装置等を用いて入力する処理内容の変更指示に従って移動判定部32及び受信機20に関わる処理内容及び設定情報を対話的に変更する。
【0056】
例えば、隣接する受信機20が同一移動体IDの移動体検知情報21を略同時刻に検知する頻度が増加してきた場合に、どちらか一方の受信機20に検知させるようにするために、受信機配置情報保持部35が保持する受信機配置情報中の受信機間の接続距離Lを大きくする。また、検知ミスが多い受信機20に対して、電波強度の閾値を低く設定しなおして検知感度を上げたり検知領域を広げたりする。また、誤検知が多い受信機20に対して、電波強度の閾値を高く設定しなおして検知感度を下げたり検知領域を狭くしたりする。さらに、施設の工事又はリレイアウトにより新たに通路が発生し経路が変更されたにもかかわらず受信機配置情報保持部35が保持する受信機配置情報が更新されていなければ、その近傍で誤検知が増加する。このような場合、処理変更部39が誤検知の多い箇所を検出してフロア図面上に表示させ、ユーザが現場を確認の上、受信機配置情報の設定を対話的に変更する。
【0057】
以上より、実施の形態2によれば、追跡サーバ30が、移動判定部32の判定結果及び動線作成部33が作成した動線情報40bを用いた統計処理を行い、受信機20の移動体検知に関する統計情報を作成する統計処理部37を有するように構成した。このため、誤検知及び検知ミスといった受信機20の検知エラーの発生状況、並びに受信機20間の交通流量の把握に役立つ統計情報を得ることができる。
【0058】
また、実施の形態2によれば、追跡サーバ30が、移動判定部32に設定されている、移動点間を同一移動体が移動可能であるか判定するために用いる受信機配置情報等を、統計処理部37が作成した統計情報に基づいて変更する処理変更部39を有するように構成した。また、処理変更部39が、受信機20に設定されている、移動体を検知するために用いる電波強度の閾値設定等を、統計処理部37が作成した統計情報に基づいて変更するように構成した。このため、統計情報から判明した受信機20の検知感度に影響する電波環境の変化、設置位置変更等に対応して、移動判定部32と受信機20の処理内容と設定情報を自動的又は対話的に変更することができ、より適切な移動体追跡を行うことが可能となる。
【0059】
なお、上記実施の形態1,2では、送信機10が、自機を携帯する移動体の移動体IDを保持及び送信する構成にしたが、これに限定されるものではなく、送信機10が自機を識別する送信機IDを保持及び送信すると共に追跡サーバ30等が送信機IDとその送信機10を携帯する移動体の移動体IDを対応付ける情報を管理する構成にして、移動体を追跡するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態1,2では、施設及び部屋の出入口には移動体の移動方向を検知する受信機20、その他の場所には移動体を検知する受信機20を設置する構成にしたが、これに限定されるものではなく、全ての場所に移動方向検知機能を有する受信機20又は移動方向検知機能を有しない受信機20を設置する構成であってもよい。
【0061】
また、上記実施の形態1,2の移動判定部32では、最新移動点及び受信移動点の二つの移動点に対して接続距離Lを検知時刻差Tで除した値を閾値と比較する移動判定を実行するように構成したが、これに限定されるものではなく、例えば接続距離L及び検知時刻差Tそれぞれに閾値を設け、接続距離L及び検知時刻差Tそれぞれが各閾値を超えた場合に移動不可能と判定する処理を先ず実行し、その後に上述の移動判定を実行する構成であってもよい。
さらに、移動判定部32は接続距離Lと検知時刻差Tにより移動判定を実行するように構成したが、移動体検知情報に含まれる電波強度等の他の情報を用いる判定を組み合わせる構成にしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態1,2の動線作成部33では、移動判定部32により移動可能と判定された受信移動点を全て抽出中動線の動線情報40bに登録する構成にしたが、これに限定されるものではなく、同一受信機20から時間的に連続して受信した移動点に対して、最初に登録した移動点と最新の移動点のみ登録し、中間の移動点に関する情報を削除する構成にして、動線情報保持部40のデータ量を削減してもよい。
さらに、動線作成部33は施設からの退場をチェックするように構成したが、これに限定されるものではなく、退場に加えて入場もチェックして、移動点が施設に入場した際に検知されたものであれば動線情報40bの抽出状態を正常開始とし、その他の場合を異常開始とする構成にしてもよい。
さらに、抽出中動線が存在するときに動線作成部33が同じ移動体IDに対して新たな動線を作成した場合、又は入退場のチェックで異常と判定した場合に、表示装置50に指示して警告を提示するように構成してもよい。
【0063】
なお、追跡サーバ30をコンピュータで構成する場合、受信部31、移動判定部32、動線作成部33、移動点管理部34、統計処理部37、処理変更部39の処理内容を記述している追跡処理プログラムをコンピュータのメモリに格納して、コンピュータのCPUがメモリに格納されている追跡処理プログラムを実行し、HDD等の記憶媒体を受信機配置情報保持部35、保留移動点リスト保持部36、統計情報保持部38、動線情報保持部40として使用すればよい。
【符号の説明】
【0064】
10−O1,10−O2 送信機、20 受信機、21 移動体検知情報、30 追跡サーバ、31 受信部、32 移動判定部、33 動線作成部、34 移動点管理部、35 受信機配置情報保持部、35a 受信機管理テーブル、35b 受信機間距離テーブル、36 保留移動点リスト保持部、36a 保留移動点リスト、37 統計処理部、38 統計情報保持部、38a 移動体検知エラーに関する統計情報、38b 交通流に関する統計情報、39 処理変更部、40 動線情報保持部、40a 移動体管理テーブル、40b 動線情報、50 表示装置、60 ネットワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に携帯され、当該移動体を識別する移動体識別情報を含む移動体情報を無線で送信する送信機と、
施設に設置され、前記送信機が送信した前記移動体情報を受信して前記移動体を検知し、受信機を識別する受信機識別情報と前記移動体の検知時刻情報を含む移動体検知情報を送信する受信機と、
複数の前記受信機が送信した前記移動体検知情報を受信する都度、前記移動体識別情報、前記受信機識別情報に基づく検知位置及び前記検知時刻情報よりなる移動点を生成し、当該移動点を移動体毎に検知時刻に基づく時系列に並べた動線情報を作成する追跡サーバとを備える移動体追跡システムであって、
前記追跡サーバは、
前記施設の経路に沿って前記受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報を保持する受信機配置情報保持部と、
前記受信機が送信した前記移動体検知情報を受信する受信部と、
前記受信部で新たに受信した前記移動体検知情報より生成した新たな移動点から同一移動体の前記動線情報に含まれる最新の移動点までの前記施設の経路に沿った接続距離を前記受信機配置情報より求めると共に、当該両移動点間の検知時刻差を前記各検知時刻情報より求め、前記接続距離及び前記検知時刻差より前記同一移動体が当該両移動点間を移動可能であるか判定する移動判定部と、
前記移動判定部が移動可能と判定した新たな移動点を前記動線情報に追加する動線作成部とを有することを特徴とする移動体追跡システム。
【請求項2】
動線作成部は、受信機配置情報で定義された受信機間の接続関係に基づいて、動線情報に含まれる最新の移動点から移動判定部が移動可能と判定した新たな移動点までの経路上に、移動体検知情報を受信しなかった受信機が存在するか検索し、存在する場合に、前記動線情報の前記最新の移動点と前記新たな移動点の間に当該移動体検知情報を受信しなかった受信機の情報を追加することを特徴とする請求項1記載の移動体追跡システム。
【請求項3】
移動判定部は、受信部で新たに受信した移動体検知情報より生成した新たな移動点を移動不可能と判定した場合に、さらに、過去に受信され過去に移動不可能と判定した移動点を保留移動点として登録した保留移動点リストを参照して、前記保留移動点リストに登録されている前記保留移動点と前記新たな移動点の接続距離及び検知時刻差を求めて、同一移動体が当該両移動点間を移動可能であるか判定し、
動線作成部は、前記移動判定部が移動可能と判定した前記保留移動点と前記新たな移動点より新たな動線情報を作成することを特徴とする請求項1記載の移動体追跡システム。
【請求項4】
追跡サーバは、
移動判定部が動線情報に含まれる最新の移動点及び保留移動点リストに登録されている保留移動点を用いてそれぞれ判定した結果、移動不可能と判定した新たな移動点を保留移動点として保留移動点リストに登録すると共に、前記移動判定部が移動可能と判定して動線作成部が新たな動線情報を作成した保留移動点を前記保留移動点リストから削除する移動点管理部を有することを特徴とする請求項3記載の移動体追跡システム。
【請求項5】
追跡サーバは、
移動判定部の判定結果及び動線作成部が作成した動線情報を用いた統計処理を行い、受信機の移動体検知に関する統計情報を作成する統計処理部を有することを特徴とする請求項1記載の移動体追跡システム。
【請求項6】
追跡サーバは、
移動判定部に設定されている、移動点間を同一移動体が移動可能であるか判定する判定条件を、統計処理部が作成した統計情報に基づいて変更する処理変更部を有することを特徴とする請求項5記載の移動体追跡システム。
【請求項7】
追跡サーバは、
受信機に設定されている移動体を検知する検知条件を、統計処理部が作成した統計情報に基づいて変更する処理変更部を有することを特徴とする請求項5記載の移動体追跡システム。
【請求項1】
移動体に携帯され、当該移動体を識別する移動体識別情報を含む移動体情報を無線で送信する送信機と、
施設に設置され、前記送信機が送信した前記移動体情報を受信して前記移動体を検知し、受信機を識別する受信機識別情報と前記移動体の検知時刻情報を含む移動体検知情報を送信する受信機と、
複数の前記受信機が送信した前記移動体検知情報を受信する都度、前記移動体識別情報、前記受信機識別情報に基づく検知位置及び前記検知時刻情報よりなる移動点を生成し、当該移動点を移動体毎に検知時刻に基づく時系列に並べた動線情報を作成する追跡サーバとを備える移動体追跡システムであって、
前記追跡サーバは、
前記施設の経路に沿って前記受信機間の接続関係を定義した受信機配置情報を保持する受信機配置情報保持部と、
前記受信機が送信した前記移動体検知情報を受信する受信部と、
前記受信部で新たに受信した前記移動体検知情報より生成した新たな移動点から同一移動体の前記動線情報に含まれる最新の移動点までの前記施設の経路に沿った接続距離を前記受信機配置情報より求めると共に、当該両移動点間の検知時刻差を前記各検知時刻情報より求め、前記接続距離及び前記検知時刻差より前記同一移動体が当該両移動点間を移動可能であるか判定する移動判定部と、
前記移動判定部が移動可能と判定した新たな移動点を前記動線情報に追加する動線作成部とを有することを特徴とする移動体追跡システム。
【請求項2】
動線作成部は、受信機配置情報で定義された受信機間の接続関係に基づいて、動線情報に含まれる最新の移動点から移動判定部が移動可能と判定した新たな移動点までの経路上に、移動体検知情報を受信しなかった受信機が存在するか検索し、存在する場合に、前記動線情報の前記最新の移動点と前記新たな移動点の間に当該移動体検知情報を受信しなかった受信機の情報を追加することを特徴とする請求項1記載の移動体追跡システム。
【請求項3】
移動判定部は、受信部で新たに受信した移動体検知情報より生成した新たな移動点を移動不可能と判定した場合に、さらに、過去に受信され過去に移動不可能と判定した移動点を保留移動点として登録した保留移動点リストを参照して、前記保留移動点リストに登録されている前記保留移動点と前記新たな移動点の接続距離及び検知時刻差を求めて、同一移動体が当該両移動点間を移動可能であるか判定し、
動線作成部は、前記移動判定部が移動可能と判定した前記保留移動点と前記新たな移動点より新たな動線情報を作成することを特徴とする請求項1記載の移動体追跡システム。
【請求項4】
追跡サーバは、
移動判定部が動線情報に含まれる最新の移動点及び保留移動点リストに登録されている保留移動点を用いてそれぞれ判定した結果、移動不可能と判定した新たな移動点を保留移動点として保留移動点リストに登録すると共に、前記移動判定部が移動可能と判定して動線作成部が新たな動線情報を作成した保留移動点を前記保留移動点リストから削除する移動点管理部を有することを特徴とする請求項3記載の移動体追跡システム。
【請求項5】
追跡サーバは、
移動判定部の判定結果及び動線作成部が作成した動線情報を用いた統計処理を行い、受信機の移動体検知に関する統計情報を作成する統計処理部を有することを特徴とする請求項1記載の移動体追跡システム。
【請求項6】
追跡サーバは、
移動判定部に設定されている、移動点間を同一移動体が移動可能であるか判定する判定条件を、統計処理部が作成した統計情報に基づいて変更する処理変更部を有することを特徴とする請求項5記載の移動体追跡システム。
【請求項7】
追跡サーバは、
受信機に設定されている移動体を検知する検知条件を、統計処理部が作成した統計情報に基づいて変更する処理変更部を有することを特徴とする請求項5記載の移動体追跡システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−96174(P2011−96174A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251926(P2009−251926)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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