説明

移動体通信システム、ノード装置および網間移行制御方法

【課題】VCC−ASを配備することなく異なるアクセス網間においてハンドオーバを実現することができ、かつハンドオーバ処理時間を短縮することが可能な方法を提供する。
【解決手段】回線交換網とIP網とを相互接続する第1のゲートウェイノードと、ワイヤレスブロードバンド網を収容するコアネットワークとIP網を経由して接続する外部パケットデータネットワークとを相互接続する第2のゲートウェイノードとを一つの物理ノードとして統合するノード装置を備え、移動端末が前記回線交換網とワイヤレスブロードバンド網の内の一方の網から他方の網へ移行する際、第1のゲートウェイノードおよび第2のゲートウェイノードの内の移行先ノードは、移行元ノードが管理している呼接続パスの端点識別情報を、移行先ノードの新たな呼接続パスの端点識別情報として割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末の、回線交換網とワイヤレスブロードバンド網との間の網間移行制御を実行する移動体通信システム、ノード装置および網間移行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project/第3世代パートナーシップ・プロジェクト)において、異なるアクセス網間において音声サービスを継続させる方式についての検討が行われている。その1つの例として、VCC(Voice Call Continuity/音声呼の継続性)を挙げることができる(非特許文献1参照)。VCCは、具体的にはIMS(IP Multimedia Subsystem)内に配備されたVCC−AS(Application Server)を用いて行われる。
【0003】
図5は、非特許文献1等で規定されている一般的なアクセス・ドメイン間転送のエンド・ツー・エンド呼制御シナリオ図である。端末Bは、セルラー無線(3GPP−CS(Circuit Switched/回線交換))によってセルラー移動ネットワークにアクセスすることができるとともに、例えば宅内の無線LAN(Local Area Network)経由でIMSネットワークにアクセスすることができる。
【0004】
図5において、例えば、着信側の端末BがIMSドメインからCSドメインへ移動(すなわち、ハンドオーバ)する場合、当該端末Bは、CSドメインでの呼設定を開始する(1−CS)。すなわち、当該端末Bは、MSC(Mobile Services Switching Center/移動交換局)100に対してSETUPメッセージ(CS電話網での呼設定メッセージ)を送信する。この呼制御をVCC−AS104でアンカーリングさせるため、該呼設定メッセージは、MGCF(Media Gateway Control Function/メディアゲートウェイ制御機能)/MGW(Media Gateway/メディアゲートウェイ)101を介してCSCF(Call Server Control Function/呼セッション制御機能)103へ転送され(2および3)、さらに、CSCF103からVCC−AS104へ転送される(4)。次に、VCC−AS104は、呼接続の変更を開始するためのSIP UPDATE(セッションの更新)メッセージ、またはRe−INVITE(再セッション確立要求)メッセージをCSCF103へ送信する(5)。これらのメッセージによって、新しい呼接続パスを示すMGWのIP(Internet Protocol)アドレスと、新しいSDP(Session Description Protocol/セッション記述プロトコル)の情報とがVCC−AS104からCSCF103へ伝達される。SIP UPDATEメッセージまたはRe−INVITEメッセージは、CSCF103から相手側IMSドメイン内のCSCF105へ転送され(6)、そして、最終的に通信相手である端末Aまで転送される(7)。端末Aは、音声パケット転送先IPアドレスをMGWのIPアドレスに変更する。これにより、エンド・ツー・エンドで音声パケット転送パス(音声ベアラ)が切り替えられる。
【0005】
一方、図5において、端末BがCSドメインからIMSドメインへ移動(すなわち、ハンドオーバ)する場合、当該端末Bは、IMSドメインでの呼設定を開始する(1−IMS)。すなわち、当該端末Bは、CSCF103に対してSIP INVITE(セッション確立要求)メッセージを送信する。該メッセージは、CSCF103からVCC−AS104へ転送される(4)。VCC−AS104は、呼接続の変更を開始するためのSIP UPDATE(セッションの更新)メッセージ、またはRe−INVITE(再セッション確立要求)メッセージをCSCF103へ送信する(5)。これらのメッセージによって、新しい呼接続パスの端点を示す端末BのIPアドレスと、新しいSDP情報とがCSCF103へ伝達される。SIP UPDATEメッセージまたはRe−INVITEメッセージは、CSCF103から相手側IMSドメイン内のCSCF105へ転送され(6)、そして、最終的に通信相手である端末Aまで転送される(7)。端末Aは、相手端末Bへの音声パケット転送先IPアドレスを変更する。これにより、エンド・ツー・エンドで音声パケット転送パス(音声ベアラ)が切り替えられる。
【0006】
以上はIMSドメインとCSドメイン間の音声サービス継続についての規定であるが、CSドメインと所定のワイヤレスブロードバンド(例えば、LTE(Long Term Evolution)アクセスやNon−3GPPアクセス)間で音声サービスを継続させる場合も上記と同様にVCC−ASの利用が予想される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS23.206 V7.5.0 “Voice Call Continuity(VCC) between Circuit Switched(CS) and IP Multimedia Subsystem(IMS)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、VCC−ASを用いて異なるアクセス網間で音声サービスを継続させる場合、上述したように、IMS内において、CSCFとVCC−ASとの間の通信処理(例えば、CSCFからVCC−ASへの呼設定メッセージの転送処理、VCC−ASからCSCFへのセッション更新メッセージや再セッション確立要求メッセージの転送処理等)が必要となる。すなわち、これらメッセージの転送処理のために多くの時間が費やされる。さらに、VCC−AS内部の処理でも多くの時間が費やされる。すなわち、VCCASを用いた場合、ハンドオーバ処理時間が増大するという問題が発生する。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、VCC−ASを配備することなく異なるアクセス網間においてハンドオーバを実現することができ、かつハンドオーバ処理時間を短縮することが可能な移動体通信システム、ノード装置および網間移行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の移動体通信システムは、回線交換網とワイヤレスブロードバンド網にアクセスすることが可能な少なくとも1つの移動端末を含む移動体通信システムであって、前記回線交換網とIP(Internet Protocol)網とを相互接続する第1のゲートウェイノードと、前記ワイヤレスブロードバンド網を収容するコアネットワークと前記IP網を経由して接続する外部パケットデータネットワークとを相互接続する第2のゲートウェイノードとを一つの物理ノードとして統合するノード装置を備え、前記移動端末が前記回線交換網と前記ワイヤレスブロードバンド網の内の一方の網から他方の網へ移行する際、前記第1のゲートウェイノードおよび前記第2のゲートウェイノードの内の移行先ノードは、移行元ノードが管理している呼接続パスの端点識別情報を、移行先ノードの新たな呼接続パスの端点識別情報として割り当てる。
【0011】
また、本発明のノード装置は、回線交換網とワイヤレスブロードバンド網にアクセスすることが可能な少なくとも1つの移動端末を含む移動体通信システム内に設けられるノード装置であって、前記ノード装置は、前記回線交換網とIP網とを相互接続する第1のゲートウェイノードと、前記ワイヤレスブロードバンド網を収容するコアネットワークと前記IP網を経由して接続する外部パケットデータネットワークとを相互接続する第2のゲートウェイノードとを一つの物理ノードとして統合し、前記移動端末が前記回線交換網と前記ワイヤレスブロードバンド網の内の一方の網から他方の網へ移行する際、前記第1のゲートウェイノードおよび前記第2のゲートウェイノードの内の移行先ノードは、移行元ノードが管理している呼接続パスの端点識別情報を、移行先ノードの新たな呼接続パスの端点識別情報として割り当てる。
【0012】
また、本発明の網間移行制御方法は、回線交換網とワイヤレスブロードバンド網にアクセスすることが可能な少なくとも1つの移動端末を含む移動体通信システムにおける網間移行制御方法であって、前記回線交換網とIP網とを相互接続する第1のゲートウェイノードと、前記ワイヤレスブロードバンド網を収容するコアネットワークと前記IP網を経由して接続する外部パケットデータネットワークとを相互接続する第2のゲートウェイノードとを一つの物理ノードとして統合し、前記移動端末が前記回線交換網と前記ワイヤレスブロードバンド網の内の一方の網から他方の網へ移行する際、前記第1のゲートウェイノードおよび前記第2のゲートウェイノードの内の移行先ノードは、移行元ノードが管理している呼接続パスの端点識別情報を、移行先ノードの新たな呼接続パスの端点識別情報として割り当てる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、VCC−ASを配備することなく異なるアクセス網間においてハンドオーバを実現することができ、かつハンドオーバ処理時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係わる移動体通信システムの制御ブロック図の一例である。
【図2】図1に示す移動体通信システムにおいて3G−CSにより音声通話を行う場合のC−PlaneおよびU−Planeのパス設定と、LTEにより音声通話を行う場合のC−PlaneおよびU−Planeのパス設定の各々を示す図である。
【図3】3G−CSからLTEへハンドオーバする際の移動体通信システムの動作を説明するシーケンス図の一例である。
【図4】LTEから3G−CSへハンドオーバする際の移動体通信システムの動作を説明するシーケンス図の一例である。
【図5】一般的な、アクセス・ドメイン間転送のエンド・ツー・エンド呼制御シナリオ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係わる移動体通信システム10の制御ブロック図の一例である。移動体通信システム10は、CS(Circuit Switched/回線交換)網へアクセスする機能とワイヤレスブロードバンド網へアクセスする機能とを搭載する所謂デュアル端末としての少なくとも1つのUE(User Equipment/移動端末)20を備える。ここで、移動体通信システム10は、CS網の一例としての3G−CS網30と、ワイヤレスブロードバンド網の一例としてのEPC(Evolved Packet Core)網40を備える。
【0016】
3G−CS網30は、MSC(Mobile Services Switching Center/移動交換局)32と、RNC(Radio Network Controller/無線ネットワーク制御装置)34と、NB(Node B/無線基地局)36とを備える。
【0017】
MSC32は、回線交換呼(主に音声呼)を取り扱うコアネットワークノードである。RNC34は、無線基地局を制御するアクセスネットワークノードである。NB36は、UE20と通信を行う無線基地局装置である。
【0018】
EPC網40は、例えば、LTE(Long Term Evolution)アクセスを収容する。EPC網40は、第2のゲートウェイノードとしてのP−GW(Packet Data Network Gateway)42と、S−GW(Serving Gateway)44と、MME(Mobility Management Entity/移動管理機能)46と、eNB(evolved Node B)48とを備える。
【0019】
第2のゲートウェイノードとしてのP−GW42は、EPC網40と外部PDN(Packet Data Network)とを相互接続する機能を有する。ここで、EPC網40の場合、呼接続パスの端点識別情報(IPアドレス)は、UE20個別に設けられる。P−GW42は、UE20へのIPアドレスの割当ておよび管理を行う。S−GW44は、3GとLTEのU−plane(通信の主情報である「ユーザ情報」を転送する機能(またはプロトコル))を収容するノードである。MME46は、LTEのモビリティ管理を行うノードである。eNB48は、UE20と通信を行う無線基地局装置である。
【0020】
3G−CS網30およびEPC網40は、IMS(IP Multimedia Subsystem)50と接続する。IMS50は、アクセス網に依存することなくIPベースのマルチメディアサービスを端末に対して提供するシステムである。
【0021】
IMS50は、第1のゲートウェイノードとしてのMGW(Media Gateway/メディア
ゲートウェイ)52およびMGCF(Media Gateway Control Function/メディアゲートウェイ制御機能)54と、CSCF(Call Server Control Function/呼セッション制御機能)56とを備える。
【0022】
MGW52は、U−plane上に設けられており、メディア変換(例えば、音声情報のCodec方式の変換)やQoS(Quality of Service/サービス品質)制御などを行う。MGCF54は、C−plane(端末の回線との接続(呼接続)や切断などを行う「制御情報」を転送する機能(またはプロトコル))において、SIP(Session Initiation Protocol)とISUP(ISDN User Part/ISDNで電話を設定する場合などに自分の電話番号や相手の電話番号などの情報を送るプロトコル)との間でプロトコル変換を行うノードである。CSCF56は、IMS50内においてSIPプロトコルによる呼制御(ユーザの登録やセッション設定)を行うノードである。
【0023】
PSTN(Public Switched Telephone Network)/VoIP(Voice over Internet Protocol)網60は、IMS50と音声通話する相手との間に位置するネットワークである。
【0024】
ここで、3G−CS網30の場合、UE20は個別のIPアドレスを持たない。従って、通信相手(PSTN/VoIP網60を経由して接続される相手側UE)から見た呼接続パスの端点識別情報(IPアドレス)は、該UE20を収容するMGCF54およびMGW52が使用するIPアドレスとなる。そして、MGCF54およびMGW52の少なくとも一方は、このIPアドレスを管理する。以下、MGCF54がこのIPアドレスを管理するものとして説明する。
【0025】
ノード装置70は、以前は全く連携していなかった第1のゲートウェイノードとしてのMGW52/MGCF54と、第2のゲートウェイノードとしてのP−GW42とを1つの物理ノードに統合する。ここで、「1つの物理ノードに統合する」とは、第1のゲートウェイノード(MGW52およびMGCF54)と第2のゲートウェイノード(P−GW42)とを同一の装置の中に組み込むことを意味する。MGW52およびMGCF54と、P−GW42とを1つの物理ノードに統合することにより、以前は双方が個別に管理していた情報をノード間で共有することが可能となる。
【0026】
具体的には、MGCF54は、P−GW42によって管理される情報であってEPC網40における呼接続パスの端点識別情報(例えば、UE20のIPアドレス)を取得することができる。一方、P−GW42は、MGCF54によって管理される情報であって3G−CS網30における呼接続パスの端点識別情報(例えば、MGW52およびMGCF54が使用するIPアドレス)を取得することができる。
【0027】
すなわち、3G−CS網30からEPC網40へのハンドオーバ時、P−GW42は、UE20が3G−CS網30に在圏している際にMGW52およびMGCF54が使用していたIPアドレスを、UE20がEPC網40在圏時に使用するIPアドレスとして割り当てる。一方、EPC網40から3G−CS網30へのハンドオーバ時、MGCF54は、UE20がEPC網40在圏時に使用していたIPアドレスを、MGW52およびMGCF54が使用するIPアドレスとして割り当てる。
【0028】
図2は、図1に示す移動体通信システム10において3G−CSにより音声通話を行う場合の各planeのパス設定と、LTEにより音声通話を行う場合の各planeのパス設定の各々を示す図である。尚、図2において、C−planeについてのパスを破線で示し、U−planeについてのパスを実線で示す。また、以下、3G−CSに在圏するUE20をUE(3G−CS)20とし、LTEに在圏するUE20をUE(LTE)20として説明する。
【0029】
3G−CSにより音声通話を行う場合について説明する。C−planeに関して、UE(3G−CS)20は、CC(Call Control/呼制御)プロトコルによりMSC32と通信し、MSC32は、ISUPプロトコルによりMGCF54と通信する。MGCF54は、ISUPとSIPの間でプロトコル変換を行う。MGCF54とCSCF56との間およびCSCF56とPSTN/VoIP網60との間の通信は、SIPプロトコルにより行われる。U−planeに関しては、UE(3G−CS)20とMGW52との間に伝送路に合わせたCSベアラが設定される。MGW52とPSTN/VoIP網60との間の通信は、RTP(Real-time Transport Protocol)/IPにより行われる。ここで、3G−CSにより音声通話を行う場合のIPアドレスは、MGCF54/MGW52で終端され、以降、該IPアドレスをIPA(3G−CS)とする。
【0030】
LTEにより音声通話を行う場合について説明する。C−planeに関して、UE(LTE)20は、UE(LTE)20のLTEへのアクセス切替処理において設定されるDefaultベアラ(SIPメッセージ送受信用のU−planeパス)上にてP−GW42との間でSIPプロトコルによる通信を行う。P−GW42とCSCF56との間およびCSCF56とPSTN/VoIP網60との間の通信は、SIPプロトコルにより行われる。U−planeに関して、UE(LTE)20とPSTN/VoIP網60との間で、RTP/IPによる通信が行われる。ここで、LTEにより音声通話を行う場合のIPアドレスは、UE(LTE)20で終端され、以降、該IPアドレスをIPA(LTE)とする。
【0031】
図3は、3G−CSからLTEへハンドオーバする際の移動体通信システム10の動作を説明するシーケンス図の一例である。
【0032】
UE(3G−CS)20が通信相手(PSTN/VoIP網60を経由して接続される相手側UE)と音声通話する際、ユーザ情報は、UE(3G−CS)20とMGW52との間においてはCSベアラにより通信し、MGW52とPSTN/VoIP網60との間においてはIPベアラにて通信する(ステップS1)。
【0033】
無線状況の悪化等の要因により、UE20が3G−CSからLTEへ移行する(ステップS2)。
【0034】
ここで、LTEへ移行したUE20(以下、このUE20をUE(LTE)20と呼ぶ)は、P−GW42との間で、LTEへのアクセス切替処理を実行する(ステップS3)。このアクセス切替処理において、第1に、P−GW42は、LTEへ移行してきたUE(LTE)20に対してIPアドレスの割り当てを行う。IPアドレスをどのように割り当てるかについて以下詳細に説明する。
【0035】
前述したように、ノード装置70は、MGW52およびMGCF54と、P−GW42とを1つの物理ノードに統合する。MGW52およびMGCF54と、P−GW42とを1つの物理ノードに統合することにより、以前は双方が個別に管理していたIPアドレス情報をノード間で共有することが可能となる。従って、P−GW42は、IMS50内にてMGW52/MGCF54が各々にU−plane/C−planeの通信に使用するIPアドレスIPA(3G−CS)を取得することができる。P−GW42は、この取得したIPアドレスIPA(3G−CS)を、UE(LTE)20がLTE側で使用するIPアドレスIPA(LTE)として割り当てる。また、該アクセス切替処理において、第2に、P−GW42は、UE(LTE)20とP−GW42との間にSIPメッセージ送受信用のU−planeパスであるDefaultベアラを設定する。
【0036】
UE(LTE)20は、P−GW42から割り当てられたIPアドレスIPA(LTE)を使用し、CSCF56に対してSIP INVITE(セッション確立要求)メッセージを送信する(ステップS5)。CSCF56は、SIP INVITEメッセージを、通話する相手が存在するPSTN/VoIP網60へ送信する(ステップS6)。
【0037】
UE(LTE)20と通話する相手との間でSIPプロトコルによる音声コーデック、QoSなどのネゴシエーションが行われた後、CSCF56は、PSTN/VoIP網60からSIP 200 OKメッセージを受信する(ステップS7)。CSCF56からUE(LTE)20に対してのSIP 200 OKメッセージ送信(ステップS8)により、UE(LTE)20とP−GW42との間で音声用のパス(Dedicated Bearer)が設定される(ステップS9)。これにより、UE(LTE)20とPSTN/VoIP網60との間でIPベアラが確立され、ハンドオーバ手順が完了する(ステップS10)。すなわち、3G−CSとLTEとの間において音声サービスが継続する。
【0038】
図4は、LTEから3G−CSへハンドオーバする際の移動体通信システム10の動作を説明するシーケンス図の一例である。
【0039】
UE(LTE)20が通信相手(PSTN/VoIP網60を経由して接続される相手側UE)と音声通話する際、ユーザ情報は、UE(LTE)20とPSTN/VoIP網60との間においてIPベアラにより通信する(ステップS21)。
【0040】
無線状況の悪化等の要因によりUE20がLTEから3G−CSへ移行する(ステップS22)。
【0041】
ここで、3G−CSへ移行したUE20(以下、このUE20をUE(3G−CS)20と呼ぶ)は、MSC32との間で、3G−CSへのアクセス切替処理を実行する(ステップS23)。このアクセス切替処理自体は公知であるため、その説明は省略する。次いで、UE(3G−CS)20は、音声用パス設定のため、MSC32に対してCC SETUP(呼設定)メッセージを送信する(ステップS24)。MSC32は、MGCF54に対してISUP IAM(Initial Address Message/アドレス・メッセージ。ダイヤルの数字情報などの情報が入っている。)を送信する(ステップS25)。
【0042】
ここで、前述したように、ノード装置70は、MGW52およびMGCF54と、PGW42とを1つの物理ノードに統合する。MGW52およびMGCF54と、P−GW42とを1つの物理ノードに統合することにより、以前は双方が個別に管理していたIPアドレス情報をノード間で共有することが可能となる。従って、MGCF54は、UE(LTE)20がLTE在圏時に使用していたIPアドレスIPA(LTE)を取得することができる。MGCF54は、このIPアドレスIPA(LTE)を、IMS50内にてMGW52/MGCF54が各々にU−plane/C−planeの通信に使用するIPアドレスIPA(3G−CS)として割り当てる(ステップS26)。MGCF54は、この割り当てられたIPアドレスIPA(3G−CS)を使用し、CSCF56に対してSIP INVITE(セッション確立要求)メッセージを送信する(ステップS27)。
【0043】
CSCF56は、通話する相手が存在するPSTN/VoIP網60へSIP INVITEメッセージを送信する(ステップS28)。UE(3G−CS)と通話の相手との間で音声コーデック、QoSなどのネゴシエーションが行われた後、CSCF56は、PSTN/VoIP網60からSIP 200 OKメッセージを受信する(ステップS29)。CSCF56は、MGCF54に対してSIP 200 OKメッセージを送信する(ステップS30)。MGCF54は、SIP−ISUP間でプロトコル変換を行い、MSC32に対してISUP ANM(Answer Message/応答メッセージ)を送信する(ステップS31)。MSC32からUE(3G−CS)20に対してのCC CONNECTメッセージの送信により(ステップS32)、UE(3G−CS)とMGW52との間で音声用のパス(CSベアラ)が設定される。すなわち、UE(3G−CS)20とMGW52との間にCSベアラが確立され、MGW52とPSTN/VoIP網60との間にIPベアラが確立され、ハンドオーバ手順が完了する(S33)。従って、3G−CSとLTEとの間において音声サービスが継続する。
【0044】
以上説明した本発明の実施形態の移動体通信システム10において、ノード装置70は、以前は全く連携していなかった第1のゲートウェイノードとしてのMGW52およびMGCF54と、第2のゲートウェイノードとしてのP−GW42とを、1つの物理ノードに統合する。MGW52およびMGCF54と、P−GW42とを1つの物理ノードに統合することにより、以前は双方が個別に管理していたIPアドレスをノード間で共有することが可能となる。
【0045】
具体的には、MGCF54は、P−GW42が管理するIPアドレスであって、UE(LTE)20がLTE在圏時に使用していたIPアドレスIPA(LTE)を取得することができる。一方、P−GW42は、MGCF54が管理するIPアドレスであって、IMS50内にてMGW52/MGCF54が各々にU−plane/C−planeの通信に使用するIPアドレスIPA(3G−CS)を取得することができる。
【0046】
よって、3G−CSからLTEへのハンドオーバ時、P−GW42は、UE20に対してIPアドレスIPA(3G−CS)を割り当てることができる。一方、LTEから3G−CSへのハンドオーバ時、MGCF54は、MGW52/MGCF54に対してIPアドレスIPA(LTE)を割り当てることができる。
【0047】
すなわち、ノード装置70は、ハンドオーバ時にVCC−ASで必要とされる機能と同等の機能を実行する。従って、ノード装置70により、VCC−ASを不要とすることができる。よって、VCC−AS使用時に必要であったCSCF56とVCC−ASとの間の通信処理(例えば、CSCF56からVCC−ASへの呼設定メッセージの転送処理、VCC−ASからCSCF56へのセッション更新メッセージや再セッション確立要求メッセージの転送処理等)や、VCC−AS自体の処理を省くことができる。従って、IMS50内部でのコールトラフィックが削減され、結果としてハンドオーバ処理時間を短縮させることができる。さらに、VCC−AS自体が不要となったことにより、IMS50の装置規模およびコストを低減することが可能となる。
【0048】
尚、上記ではワイヤレスブロードバンド網の一例としてLTEアクセスを挙げたが、ワイヤレスブロードバンド網はLTEアクセスのみに限定されず、例えば、Non−3GPPアクセスを含むことができる。その場合、Non−3GPPアクセスを、例えば、WLAN(Wireless LAN)やWiMAX(Worldwide interoperability for Microwave Access)アクセス等とすることができる。また、CS網は、3G−CS網30に限定されず、2G(2nd Generation/第2世代)のCS網とすることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 移動体通信システム
20 UE
30 3G−CS網
32 MSC
40 EPC網
42 P−GW
50 IMS
52 MGW
54 MGCF
56 CSCF
60 PSTN/VoIP網
70 ノード装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線交換網(CS:Circuit Switched)をサポートする第1のネットワークと、パケット網(PS:Packet Switched)をサポートする第2のネットワークと、IPベースのマルチメディアサービスをサポートするIMS(Internet Protocol Multimedia Subsystem)網と、前記第1のネットワークと前記第2のネットワークとに選択的にアクセス可能な第1のUE(User Equipment)と、前記第1のUEと通信を行う第2のUEと、を具備する移動通信システムであって、
前記IMS網はC−Planeで転送制御を行う機能を備えるノードと、ゲートウェイと、から構成されるノード装置を備え、
前記ノード装置は、前記第1のUEと前記第2のUEとの接続経路を、前記第1のネットワークを介した経路から前記第2のネットワークを介した経路に切り替える、
ことを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記ゲートウェイは、前記第1のネットワークとPSTN/VoIP(Public Switched Telephone Network/Voice over Internet Protocol)網とを接続する第1のゲートウェイ及び前記第2のネットワークと前記PSTN/VoIP網とを接続する第2のゲートウェイを含み、
前記第1のUEが前記第1のネットワーク及び前記第2のネットワークの内の一方から他方へ移行する際、前記第1のゲートウェイおよび前記第2のゲートウェイの内の移行先のゲートウェイは、移行元のゲートウェイが管理している呼接続パスの端点識別情報を、移行先のゲートウェイの新たな呼接続パスの端点識別情報として割り当てることを特徴とする、請求項1に記載された移動体通信システム。
【請求項3】
前記第1のネットワークにおける前記呼接続パスの端点識別情報は、前記第1のゲートウェイのIPアドレスであり、
前記第2のネットワークにおける前記呼接続パスの端点識別情報は、前記第1のUEのIPアドレスであることを特徴とする、請求項2に記載された移動体通信システム。
【請求項4】
前記第1のネットワークは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で規定された回線交換網である、請求項1乃至3のいずれかに記載された移動体通信システム。
【請求項5】
前記第2のネットワークは、LTE(Long Term Evolution)アクセスを収容するEPC(Evolved Packet Core)網である、請求項1乃至4のいずれかに記載された移動体通信システム。
【請求項6】
回線交換網(CS)をサポートする第1のネットワークと、パケット網(PS)をサポートする第2のネットワークと、IPベースのマルチメディアサービスをサポートするIMS網からなる移動通信システムで用いられる移動端末(UE)であって、
前記第1のネットワークと前記第2のネットワークに選択的にアクセスして他の移動端末と通信を行なう手段を備え、
前記他の移動端末との接続経路は、前記IMS網にあるC−Planeで転送制御を行う機能をもつノードと、ゲートウェイと、から構成されるノード装置により、前記第1のネットワークを介した経路から前記第2のネットワークを介した経路に切り替えられる、
ことを特徴とする移動端末。
【請求項7】
回線交換網(CS)をサポートする第1のネットワークと、パケット網(PS)をサポートする第2のネットワークと、IPベースのマルチメディアサービスをサポートするIMS網と、前記第1のネットワークと前記第2のネットワークに選択的にアクセス可能な第1のUEと、前記第1のUEと通信を行う第2のUEとを具備する移動通信システムに用いられるノード装置であって、
前記IMS網内に実装され、C−Planeで転送制御を行う機能をもつノードと、ゲートウェイと、から構成され、
前記第1のUEと前記第2のUEとの接続経路を、前記第1のネットワークを介した経路から前記第2のネットワークを介した経路に切り替える、
ことを特徴とするノード装置。
【請求項8】
回線交換網(CS)をサポートする第1のネットワークと、パケット網(PS)をサポートする第2のネットワークと、IPベースのマルチメディアサービスをサポートするIMS網と、前記第1のネットワークと前記第2のネットワークに選択的にアクセス可能な第1のUEと、前記第1のUEと通信を行う第2のUEと、を備える移動通信システムの通信方法であって、
前記IMS網に備えられた、C−Planeで転送制御を行う機能をもつノードと、ゲートウェイと、から構成されるノード装置が、前記第1のUEと前記第2のUEとの接続経路を、前記第1のネットワークを介した経路から前記第2のネットワークを介した経路に切り替える、
ことを特徴とする移動通信システムの通信方法。
【請求項9】
回線交換網(CS)をサポートする第1のネットワークと、パケット網(PS)をサポートする第2のネットワークと、IPベースのマルチメディアサービスをサポートするIMS網からなる移動通信システムに用いられる移動端末(UE)の制御方法であって、
前記第1のネットワークと前記第2のネットワークに選択的にアクセスして他の移動端末と通信を行ない、
前記他の移動端末との接続経路が、前記IMS網に備えられた、C−Planeで転送制御を行う機能をもつノードと、ゲートウェイと、から構成されるノード装置により、前記第1のネットワークを介した経路から前記第2のネットワークを介した経路に切り替えられる、
ことを特徴とする移動端末の制御方法。
【請求項10】
回線交換網(CS)をサポートする第1のネットワークと、パケット網(PS)をサポートする第2のネットワークと、IPベースのマルチメディアサービスをサポートするIMS網と、前記第1のネットワークと前記第2のネットワークに選択的にアクセス可能な第1のUEと、前記第1のUEと通信を行う第2のUEとを具備する移動通信システムに用いられるノード装置の制御方法であって、
前記IMS網内に実装され、C−Planeで転送制御を行う機能をもつノードと、ゲートウェイとから構成された前記ノード装置において、前記第1のUEと前記第2のUEとの接続経路を、前記第1のネットワークを介した経路から前記第2のネットワークを介した経路に切り替える、
ことを特徴とするノード装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−257261(P2012−257261A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157081(P2012−157081)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2008−145211(P2008−145211)の分割
【原出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】