説明

移動体通信システム、移動局装置及び接続情報保持期間設定方法

【課題】複数の無線通信規格に準拠した移動局装置が実際に利用する無線通信規格の切り替えに関する設定に応じて、基地局装置が接続情報を保持する期間を変更可能な移動体通信システムを提供する。
【解決手段】移動体通信システム100において、移動局装置1は、第1の基地局装置2及び第2の基地局装置4のうちの一方と無線通信する第1のモードに設定されている場合、第1の保持期間を第1の基地局装置2へ通知し、第1の基地局装置2とのみ無線通信する第2のモードに設定されている場合、第1の保持期間よりも長い第2の保持期間を第1の基地局装置2へ通知する。第1の基地局装置2は、接続情報を、移動局装置1が第1の基地局装置2と無線通信できなくなってから、通知された保持期間が経過した時点で破棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、互いに異なる無線通信規格に準拠した複数の基地局装置の何れかと選択的に無線通信可能な移動局装置、そのような移動局装置を含む移動体通信システム及び接続情報保持期間設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムにおいて、複数の無線通信規格に準拠した移動局装置が開発されている。例えば、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)規格の一つであり、IEEE 802.16e-2005として規定されているモバイルWiMAXと、CDMA2000 1x EV-DO Rev.Aのうちの何れかを選択的に利用して無線通信可能な移動局装置が商用化されている。以下では、便宜上、複数の無線通信規格に準拠した移動局装置をマルチモード対応移動局装置と呼ぶ。マルチモード対応移動局装置は、例えば、通信速度が相対的に速いものの、利用可能なエリアが相対的に狭い無線通信規格に対応する基地局装置(以下、便宜上、高速通信用基地局装置と呼ぶ)と無線通信可能な場合は、その高速通信用基地局装置と無線通信する。一方、マルチモード対応移動局装置は、高速通信用基地局装置と無線通信できなくなると、通信速度は相対的に遅いものの、利用可能なエリアが相対的に広い無線通信規格に対応する基地局装置(以下、便宜上、低速通信用基地局装置と呼ぶ)に接続先を切り替える。このように、マルチモード対応移動局装置が、複数の無線通信規格の中から、使用する通信規格を通信状況に応じて動的に切り替える動作モードを、以下ではマルチモードと呼ぶ。
【0003】
マルチモード対応移動局装置によっては、例えば、ユーザの操作に応じて、高速通信用基地局装置とのみ無線通信可能に設定することが可能なものもある。このように、マルチモード対応移動局装置が、複数の無線通信規格のうちの特定の通信規格のみを使用する動作モードを、以下では専用モードと呼ぶ。
【0004】
また、移動局装置から基地局装置へ所定の動作に関する設定情報を通知することで、基地局装置がその所定の動作に関する設定を切り替える技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された通信システムでは、移動端末から要請された希望ページング周期と移動端末のサービング基地局が属したページンググループで共通して使用している基本ページング周期とを用いて移動端末に実際に割り当てるページング周期が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−508779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチモード対応移動局装置が専用モードで動作している場合には、高速通信用基地局装置は、その移動局装置が一旦通信不能となった後も、移動局装置と接続するために用いられる接続情報を比較的長く保持しておくことが好ましい。その移動局装置と高速通信用基地局装置とが再度通信可能となったときに、移動局装置がその高速通信用基地局装置と通信を再開するまでに要する時間を短縮できるためである。一方、マルチモード対応移動局装置がマルチモードで動作している場合には、高速通信用基地局装置は、その移動局装置が一旦通信不能となれば、接続情報を比較的短期間で廃棄することが好ましい。この場合には、高速通信用基地局装置と通信不能となった移動局装置は、低速通信用基地局装置を介して無線通信している可能性が高く、高速通信用移動局装置は、その移動局装置に割り当てた無線リソースを他の移動局装置のために利用できるためである。
【0007】
しかし、高速通信用基地局装置は、移動局装置が専用モードで動作しているのか、あるいはマルチモードで動作しているのかを知ることができなかった。そのため、高速通信用基地局装置は、マルチモード対応移動局装置が実行している動作モードに応じて、接続情報の保持期間を切り替えることができなかった。また特許文献1に開示された技術でも、移動局装置は、接続情報の保持期間を設定するために要する情報を高速通信用基地局装置へ送信しないので、高速通信用基地局装置は、適切な保持期間を設定することができなかった。
【0008】
そこで、本明細書は、複数の無線通信規格に準拠した移動局装置が実際に利用する無線通信規格の切り替えに関する設定に応じて、基地局装置が接続情報を保持する期間を変更可能な移動体通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施形態によれば、移動局装置と、移動局装置と第1の基地局装置と、第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置とを有する移動体通信システムが提供される。この移動体通信システムにおいて、移動局装置は、第1の基地局装置及び第2の基地局装置のうちの何れか一方を選択し、選択された方の基地局装置と無線通信する第1のモードに設定されている場合、第1の保持期間を第1の基地局装置へ通知し、一方、第1の基地局装置とのみ無線通信する第2のモードに設定されている場合、第1の保持期間よりも長い第2の保持期間を第1の基地局装置へ通知する。
第1の基地局装置は、移動局装置から第1の保持期間を通知されている場合、移動局装置を第1の基地局装置と接続するために用いられる接続情報を、移動局装置が第1の基地局装置と無線通信できなくなってから第1の保持期間が経過した時点で破棄し、一方、移動局装置から第2の保持期間を通知されている場合、その接続情報を、移動局装置が第1の基地局装置と無線通信できなくなってから第2の保持期間が経過した時点で破棄する。
【0010】
本発明の目的及び利点は、請求項において特に指摘されたエレメント及び組み合わせにより実現され、かつ達成される。
上記の一般的な記述及び下記の詳細な記述の何れも、例示的かつ説明的なものであり、請求項のように、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に開示された移動体通信システムでは、複数の無線通信規格に準拠した移動局装置が実際に利用する無線通信規格の切り替えに関する設定に応じて、基地局装置が接続情報を保持する期間を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一つの実施形態による移動体通信システムの構成図である。
【図2】接続情報の一例を示す図である。
【図3】高速通信用基地局装置が保持期間を決定するためのシーケンスの一例を示す図である。
【図4】高速通信用基地局装置が保持期間を決定するためのシーケンスの他の一例を示す図である。
【図5】高速通信用基地局装置が保持期間を決定するためのシーケンスのさらに他の一例を示す図である。
【図6】一つの実施形態による、移動局装置の構成図である。
【図7】移動局装置の通信制御部により実行される、保持期間設定処理の動作フローチャートである。
【図8】高速通信用基地局装置の構成図である。
【図9】高速通信用基地局装置の通信制御部により実行される、保持期間設定処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しつつ、一つの実施形態による、移動体通信システムについて説明する。この移動体通信システムは、高速通信用基地局装置と、低速通信用基地局装置と、第1及び第2の無線通信規格に対応したマルチモード対応移動局装置を有する。高速通信用基地局装置は第1の無線通信規格に準拠し、一方、低速通信用基地局装置は、第1の無線通信規格よりも通信速度が相対的に遅い第2の無線通信規格に準拠する。マルチモード対応移動局装置はその動作モードがマルチモードか専用モードの何れかに設定されると、設定された動作モードに応じた接続情報の保持期間を高速通信用基地局装置に通知する。高速通信用基地局装置は、マルチモード対応移動局装置と通信不能となってからも、通知された保持期間が経過するまで、その移動局装置についての接続情報を保持する。
【0014】
本明細書において、「高速」及び「低速」という用語は、絶対的な無線通信速度の尺度を表しているものではないことに留意されたい。「高速」とは、高速と呼称される機器が準拠する無線通信規格の最大通信速度が、他方の無線通信規格の最大通信速度よりも相対的に高速であることを表している。同様に、「低速」とは、低速と呼称される機器が準拠する無線通信規格の最大通信速度が、他方の無線通信規格の最大通信速度よりも相対的に低速であることを表している。また、高速通信用基地局装置は第1の基地局装置と呼ぶことがあり、低速通信用基地局装置は第2の基地局装置と呼ぶことがある。第1の基地局装置は第2の基地局装置に比べ通信速度は速いが、第1の基地局装置を利用可能なエリアは第2の基地局装置に比べて狭いことがある。また、第2の基地局装置は第1の基地局装置に比べ通信速度は遅いが、第2の基地局装置を利用可能なエリアは第1の基地局装置に比べて広いことがある。
【0015】
図1は、一つの実施形態による移動体通信システム100の構成図である。移動体通信システム100は、移動局装置1と、高速通信用基地局装置2と、アクセスサービスネットワークゲートウェイ3と、低速通信用基地局装置4と、パケットデータサービングノード5と、上位ノード装置6とを含む。なお、図1では、例示として、移動体通信システム100には、2台の基地局装置が含まれる。しかし、移動体通信システム100に含まれる高速通信用基地局装置及び低速通信用基地局装置の数は、それぞれ、複数であってもよい。また移動体通信システム1に含まれる移動局装置の数も1台に限られない。
【0016】
高速通信用基地局装置2及びアクセスサービスネットワークゲートウェイ(Access Service Network Gateway, ASN-GW)3は、第1の無線通信規格に準拠した、高速無線アクセスネットワーク7を形成している。例えば、第1の無線通信規格は、IEEE 802.16e-2005として規定されているモバイルWiMAXあるいはIEEE 802.16mとして規定されているWiMAX2である。高速通信用基地局装置2は、移動局装置1と上位ノード装置6とを中継する装置である。またASN-GW3は、高速通信用基地局装置2と上位ノード装置6との間に接続され、無線リソース管理、位置登録、認証及びQuality Of Survice(QoS)管理といった機能を有する。
【0017】
一方、低速通信用基地局装置4及びパケットデータサービングノード(Packet Data Serving Node, PDSN)5は、第1の無線通信規格よりも、移動局装置1に対する無線通信速度が遅い第2の無線通信規格に準拠した、低速無線アクセスネットワーク8を形成している。第2の無線通信規格は、例えば、Wideband Code Division Multiple Access(W-CDMA)、CDMA2000 1xまたはCDMA2000 1x EV-DOである。なお、低速通信用基地局装置4は、CDMA2000 1xとCDMA2000 1x EV-DOの両方に準拠していてもよい。低速通信用基地局装置4は、移動局装置1と上位ノード装置6とを中継する。PDSN5は、上位ノード装置6側のネットワークであるインターネットプロトコル(Internet Protocol, IP)ネットワークを終端する。また、低速無線アクセスネットワーク8は、低速通信用基地局装置4及びPDSN5と接続され、無線リソース管理、位置登録、認証及びQuality Of Survice(QoS)管理といった機能を有する無線ネットワークコントローラ(図示せず)を有してもよい。
【0018】
上位ノード装置6は、各無線アクセスネットワークとコアネットワーク間の通信を中継する装置である。上位ノード装置6は、例えば、ルーティング及び移動局装置1の位置情報を管理するHome Agent(HA)の機能を有するサーバと、認証、許可及び課金(Authentication, Authorization and Accounting, AAA)の機能を有するサーバとを含む。
【0019】
高速通信用基地局装置2がカバーするセル2aは、低速通信用基地局装置4がカバーするセル4aよりも狭く、セル4aに含まれている。移動局装置1がセル2a内に位置する場合、移動局装置1は、高速通信用基地局装置2と無線通信することができる。しかし、図1において矢印Aで示されるように、移動局装置1がセル2aの外へ移動すると、移動局装置1は、高速通信用基地局装置2と無線通信できなくなる。その後の一定期間、移動局装置1と高速通信用基地局装置2とは、移動局装置1が再度セル2a内に移動すると以前の通信セッションを利用して無線通信を直ちに再開できるように、接続情報を保持する。接続情報は、移動局装置1を高速無線アクセスネットワーク7を介してコアネットワークと接続するための情報である。そして一定期間が経過しても、移動局装置1がセル2a内に移動しなければ、移動局装置1及び高速通信用基地局装置2は、接続情報を破棄する。そして移動局装置1は、通信経路を、高速通信用基地局装置2を経由する経路から、低速通信用基地局装置4を経由する経路に切り替える。
【0020】
図2は、接続情報の一例を示す図である。接続情報200は、移動局装置1に割り当てられたIPアドレス201と、移動局装置1のユーザ及び移動局装置1を認証するための情報であるユーザ認証情報202及びデバイス認証情報203と、移動局装置1の通信能力を表す端末Capability情報204とを含む。端末Capability情報204は、例えば、移動局装置1がサポートしている変調・復調方法を表すフラグ、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing, OFDM)方式に従って変調された信号を多重化する際の高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT)する信号数のサイズを含む。さらに、端末Capability情報204は、Multiple Input Multiple Output(MIMO)技術を利用する際の受信アンテナ数、時空間符号化(Space Time Coding, STC)モード対応か否かを表すフラグ、及び送信アンテナ数といった情報を含んでもよい。
【0021】
本実施形態では、移動局装置1は、マルチモード対応移動局装置であり、ユーザの操作によってマルチモードまたは高速通信用基地局装置2のみを利用する専用モードの何れかに設定可能となっている。マルチモードでは、移動局装置1は、データを送受信するために、高速通信用基地局装置2及び低速通信用基地局装置4の何れかを選択的に利用する。この場合、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセル2aから外れると、比較的短い第1の保持期間で移動局装置1の接続先を低速通信用基地局装置4に切り替えることが好ましい。また移動局装置1及び高速通信用基地局装置2は、第1の保持期間を経過した時点で接続情報を破棄することが好ましい。これにより、移動局装置1は、移動局装置1が高速通信用基地局装置2と通信できなくなったときに、通信速度は低下するものの、比較的少ない待ち時間で通信を継続できる。また、高速通信用基地局装置2及びASN-GW3は、比較的短時間で移動局装置1用に用意した無線リソースを開放できるので、無線リソースの利用効率を向上できる。
【0022】
一方、専用モードでは、移動局装置1がセル2aから外れても、移動局装置1は通信経路を切り替えない。そのため、移動局装置1が再度セル2a内へ移動したときに、移動局装置1が直ちに通信を再開できるように、移動局装置1及び高速通信用基地局装置2は、第1の保持期間よりも長い第2の保持期間中、接続情報を保持し続けることが好ましい。なお、第1の保持期間は、例えば、5秒〜10秒に設定され、一方、第2の保持期間は、例えば、30秒〜50秒に設定される。
【0023】
高速通信用基地局装置2が、移動局装置1についての接続情報の保持期間を決定するために、移動局装置1は、設定されている動作モードに応じた保持期間を高速通信用基地局装置2へ通知する。例えば、移動局装置1は、移動局装置1がアイドルモードへ移行する際に、設定されている動作モードに応じた保持期間を高速通信用基地局装置2へ通知する。なお、アイドルモードは、移動局装置1が所定の周期ごとの一定期間内に限り、無線通信中の基地局装置から着信が有るか否かを通知する呼び出し信号を含む無線信号を受信する動作状態である。例えば、移動局装置1は、モバイルWiMAXまたはWiMAX2にて規定されている、アイドルモードへ移行することを高速通信用基地局装置2に対して要求する登録解除要求(DREG-REQ)メッセージ中のPaging Cycleを保持期間を表すパラメータとして利用する。
【0024】
図3は、高速通信用基地局装置2が保持期間を決定するためのシーケンスの一例を示す図である。
移動局装置1は、例えば、ユーザの操作に応じて、動作モードをマルチモードか専用モードの何れかに設定する(ステップS101)。動作モードが設定されると、移動局装置1は、設定された動作モードに応じた保持期間に設定する(ステップS102)。また移動局装置1は、高速通信用基地局装置2がカバーするセル内に位置し、例えば、移動局装置1にて動作するプログラムによりデータを送信または受信することが要求されると、高速通信用基地局装置2と無線にてデータ通信する。
【0025】
その後、移動局装置1がアイドルモードへ移行しようとする場合、移動局装置1は、高速通信用基地局装置2へ登録解除要求(DREG-REQ)メッセージを送信する(ステップS103)。移動局装置1の動作モードがマルチモードに設定されている場合、移動局装置1は、DREG-REQメッセージに含まれる、Paging Cycleパラメータを、第1の保持期間(例えば、5秒間)を表す値、例えば、'1024'に設定する。一方、移動局装置1の動作モードが専用モードに設定されている場合、移動局装置1は、DREG-REQメッセージに含まれる、Paging Cycleパラメータを、第2の保持期間(例えば、50秒間)を表す値、例えば、'256'に設定する。
【0026】
高速通信用基地局装置2は、DREG-REQメッセージを受け取ると、そのメッセージに含まれるPaging Cycleパラメータを参照して、保持期間の設定処理を実行する(ステップS104)。
高速通信用基地局装置2は、保持期間に応じて、すなわち、移動局装置1の動作モードに応じて、呼び出し信号の送信周期であるページング周期を変更してもよい。例えば、高速通信用基地局装置2は、移動局装置1がマルチモードで動作している場合、移動局装置1の消費電力を抑制するために、ページング周期を相対的に長い期間、例えば、5.12秒に設定する。一方、移動局装置1が専用モードで動作している場合、移動局装置1への着信があると移動局装置1がアイドルモードからアクティブモードへ早期に復帰できるように、ページング周期は、相対的に短い期間、例えば、1.28秒に設定される。そして高速通信用基地局装置2は、移動局装置1へ登録解除命令(DREG-CMD)メッセージを返信する(ステップS105)。その際、高速通信用基地局装置2は、DREG-CMDメッセージに含まれるPaging Cycleパラメータを、ページング周期PCに応じて異なる値に設定してもよい。例えば、ページング周期PCが5.12秒に設定される場合、高速通信用基地局装置2は、DREG-CMDメッセージに含まれるPaging Cycleパラメータを'1024'に設定する。一方、ページング周期PCが1.28秒に設定される場合、高速通信用基地局装置2は、DREG-CMDメッセージに含まれるPaging Cycleパラメータを'256'に設定する。この場合、移動局装置1は、DREG-CMDメッセージを受け取ると、そのメッセージに含まれるPaging Cycleパラメータの値に応じて、ページング周期を設定する。
【0027】
その後、設定されたページング周期にて、高速通信用基地局装置2から移動局装置1へ呼び出し信号が送信される(ステップS106)。なお、呼び出し信号は、例えば、モバイルWiMAXまたはWiMAX2では、報知チャネルを通じて送信される、MOB-PAG-ADVメッセージである。そしてMOB-PAG-ADVメッセージに含まれるAction Codeパラメータの値が、着信があることを示す値'Enter Network'であれば、移動局装置1は、アイドルモードからアクティブモードへ移行して、高速通信用基地局装置2を介したデータ通信を再開する。
【0028】
変形例によれば、DREG-REQメッセージに、移動局装置1の動作モードに応じた保持期間を通知するパラメータが新規に追加されてもよい。また、高速通信用基地局装置2が実際に設定した保持期間を移動局装置1に通知するパラメータが、DREG-CMDメッセージに追加されてもよい。
【0029】
変形例によれば、移動局装置1から高速通信用基地局装置2へ、移動局装置1の動作モードに応じた保持期間を通知するための新規なメッセージが用いられてもよい。例えば、この変形例において、移動局装置1から高速通信用基地局装置2に保持期間を通知するメッセージをActiveSessionRetentionReqと呼び、高速通信用基地局装置2から移動局装置1に保持期間を通知するメッセージをActiveSessionRetentionCMDと呼ぶ。ActiveSessionRetentionReqメッセージとActiveSessionRetentionCMDメッセージは、例えば、移動局装置1がアイドルモードへ移行することを要求するよりも前に、移動局装置1と高速通信用基地局装置2との間で交換される。
【0030】
図4は、高速通信用基地局装置2が保持期間を決定するためのシーケンスの他の一例を示す図である。
移動局装置1は、例えば、ユーザの操作に応じて、動作モードをマルチモードか専用モードの何れかに設定する(ステップS201)。動作モードが設定されると、移動局装置1は、設定された動作モードに応じて保持期間を設定する(ステップS202)。
【0031】
その後、移動局装置1は、例えば、アイドルモードへ移行しようとするよりも前で、高速通信用基地局装置2との間で無線にてデータ通信を実行している間に、ActiveSessionRetentionReqメッセージを高速通信用基地局装置2へ送信する(ステップS203)。ActiveSessionRetentionReqメッセージは、保持期間を表すパラメータを含む。例えば、そのパラメータは2ビットで表され、移動局装置1がマルチモードで動作し、保持期間が例えば5秒に設定される場合、'00'の値を持つ。一方、移動局装置1が専用モードで動作し、保持期間が例えば50秒に設定される場合、そのパラメータは'11'の値を持つ。なお、保持期間を表すパラメータは、設定された保持期間を秒単位で表す数値を有してもよい。
【0032】
高速通信用基地局装置2は、ActiveSessionRetentionReqメッセージを受け取ると、そのメッセージに含まれるパラメータを参照して、保持期間の設定処理を実行する(ステップS204)。そして高速通信用基地局装置2は、移動局装置1へActiveSessionRetentionCMDメッセージを返信する(ステップS205)。ActiveSessionRetentionCMDメッセージも、ActiveSessionRetentionReqメッセージと同様に、高速通信用基地局装置2が設定した保持期間を表すパラメータを含んでもよい。
【0033】
その後、移動局装置1がアイドルモードへ移行しようとする場合、移動局装置1は、高速通信用基地局装置2へDREG-REQメッセージを送信する(ステップS206)。高速通信用基地局装置2は、DREG-REQメッセージを受け取ると、移動局装置1をアイドルモードへ移行させる準備を行うとともに、移動局装置1へDREG-CMDメッセージを返信する(ステップS207)。この変形例においても、高速通信用基地局装置2は、保持期間に応じて、ページング周期を設定し、DREG-CMDメッセージに含まれるPaging Cycleパラメータを、ページング周期を表す値としてもよい。
【0034】
その後、通信が再開されるまで、設定されたページング周期にて、高速通信用基地局装置2から移動局装置1へ呼び出し信号が送信される(ステップS208)。
【0035】
さらに他の変形例によれば、移動局装置1と高速通信用基地局装置2とが同期及び初期レンジング処理を実行した後に、移動局装置1と高速通信用基地局装置2は、保持期間を表すパラメータを含むメッセージを交換してもよい。この変形例では、例えば、移動局装置1がサポートできる能力を表す物理層に関するパラメータと認証関連能力の情報を含むSS Basic Capability-Request(SBC-REQ)メッセージに、保持期間を表すパラメータが追加される。同様に、SBC-REQメッセージに対する応答メッセージであるSS Basic Capability Negotiation Response(SBC-RSP)メッセージに、保持期間を表すパラメータが追加されてもよい。
【0036】
図5は、高速通信用基地局装置2が保持期間を決定するためのシーケンスのさらに他の一例を示す図である。
移動局装置1は、例えば、ユーザの操作に応じて、動作モードをマルチモードか専用モードの何れかに設定する(ステップS301)。動作モードが設定されると、移動局装置1は、設定された動作モードに応じた保持期間を設定する(ステップS302)。
【0037】
次に移動局装置1は、高速通信用基地局装置2から一定のフレーム周期(例えば、5ミリ秒)ごとに送信される無線信号に含まれるプリアンブル、フレーム制御ヘッダ及びダウンリンク及びアップリンクのマップ情報(DL-MAP、UL-MAP)を受け取る(ステップS303)。移動局装置1は、プリアンブルを参照して同期処理を実行する。また移動局装置1は、マップ情報を参照して、フレーム内での下りチャネル識別子(Downlink Channel Descriptor, DCD)及び上りチャネル識別子(Uplink Channel Descriptor, UCD)が割り当てられるデータブロックを特定する。そして移動局装置1は、高速通信用基地局装置2からUCDメッセージを含む無線信号を受信する(ステップS304)。移動局装置1は、UCDメッセージを参照して、初期レンジング割り当て領域、レンジングコード割り当て範囲などを特定する。そして移動局装置1は、初期レンジング用の符号分割多元接続(Code Division Multiple Access, CDMA)コードを高速通信用基地局装置2へ送信する(ステップS305)。
【0038】
高速通信用基地局装置2は、初期レンジング処理に成功すると、移動局装置1へレンジング応答(RNG-RSP)メッセージを送信する。さらに、高速通信用基地局装置2は、初期レンジング要求(RNG-REQ)メッセージを割り当てるリソースを表すCDMA Allocation IEを示すUL-MAPを移動局装置1へ送信する(ステップS306)。
移動局装置1は、受け取ったUL-MAPからCDMA Allocation IEを抽出し、そのCDMA Allocation IEで割り当てられたリソースを用いて、初期RNG-REQメッセージを送信する(ステップS307)。なお、初期RNG-REQメッセージには、移動局装置1のMedia Access Control(MAC)アドレス及び要求下り送信レベルなどが含まれる。高速通信用基地局装置2は、初期RNG-REQメッセージを受け取ると、その応答として、RNG-RSPメッセージを移動局装置1へ返信する(ステップS308)。このRNG-RSPメッセージには、移動局装置1のMACアドレスと、移動局装置1が高速通信用基地局装置2で一意に識別できるように割り当てられたベーシックコネクション識別子(Connection IDentifier, CID)及びプライマリCIDが含まれる。これにより、初期レンジング手順が終了する。
【0039】
その後、移動局装置1は、高速通信用基地局装置2と移動局装置の基本能力をネゴシエーションするために、SBC-REQメッセージを送信する(ステップS309)。この変形例では、SBC-REQメッセージが保持期間を表すパラメータを含む。例えば、そのパラメータは2ビットで表され、移動局装置1がマルチモードで動作し、保持期間が例えば5秒に設定される場合、'00'の値を持つ。一方、移動局装置1が専用モードで動作し、保持期間が例えば50秒に設定される場合、そのパラメータは'11'の値を持つ。この例でも、保持期間を表すパラメータは、設定された保持期間を秒単位で表す数値を有してもよい。
【0040】
高速通信用基地局装置2は、SBC-REQメッセージを受け取ると、そのメッセージに含まれるパラメータを参照して、保持期間の設定処理を実行する(ステップS310)。そして高速通信用基地局装置2は、移動局装置1へSBC-RSPメッセージを返信する(ステップS311)。SBC-RSPメッセージも、SBC-REQメッセージと同様に、高速通信用基地局装置2が設定した保持期間を表すパラメータを含んでもよい。
その後、移動局装置1と高速通信用基地局装置2との間でデータ通信が開始される。
この変形例でも、高速通信用基地局装置2は、保持期間に応じてページング周期を設定し、高速通信用基地局装置2から移動局装置1へ送信されるDREG-CMDメッセージのPaging Cycleパラメータを用いてページング周期を移動局装置1へ通知してもよい。
【0041】
図6は、移動局装置1の構成図である。この移動局装置1は、例えば、いわゆるスマートフォン、携帯情報端末、モバイルルータあるいはタブレットPCであり、内蔵電源から供給される電力にて動作する、携帯可能な無線端末である。移動局装置1は、ユーザインターフェース部10と、プロセッサ11と、アンテナ12−1〜12−4と、第1データ通信デバイス13と、第2データ通信デバイス14と、記憶部15と、通信制御部16とを有する。移動局装置1が有するこれらの各部は、筺体(図示せず)内に収容される。移動局装置1は、さらに、スピーカ、マイクロホン、カメラ及び他の機器と通信可能に接続するためのインターフェース回路を有していてもよい。
【0042】
ユーザインターフェース部10は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置と、複数のボタンスイッチを有する入力装置とを有する。あるいは、ユーザインターフェース部10は、表示装置と入力装置とが一体化された、タッチパネルディスプレイを有してもよい。ユーザインターフェース部10は、プロセッサ11から受け取った表示用の情報を表示装置上に表示する。またユーザインターフェース部10は、ユーザによる入力装置の操作に応じた入力信号をプロセッサ11へ渡す。
【0043】
本実施形態では、ユーザは、ユーザインターフェース部10を操作することにより、移動局装置1の動作モードをマルチモードか専用モードの何れかに設定できる。そして移動局装置2の動作モードについての設定操作が行われると、ユーザインターフェース部10は、入力信号の一例として、設定された動作モードを表すモード信号をプロセッサ11へ渡す。
【0044】
プロセッサ11は、移動局装置1全体を制御する。またプロセッサ11は、例えば、ユーザの操作による入力信号に従ってアプリケーションプログラムを実行する。プロセッサ11は、そのアプリケーションプログラムに従って無線にてデータ通信する場合、基地局装置からの無線信号に含まれるデータを第1データ通信デバイス13または第2データ通信デバイス14を介して受け取る。またプロセッサ11は、基地局装置へ送信するデータを第1データ通信デバイス13または第2データ通信デバイス14へ渡す。さらにプロセッサ11は、音声通話の実行中、マイクロホンを介して入力された音声信号を第2データ通信デバイス14へ渡し、一方、基地局装置から受信した無線信号に含まれる音声信号を第2データ通信デバイス14から受け取り、その音声信号をスピーカを介して出力する。
【0045】
第1データ通信デバイス13は、アンテナ12−1及び12−2を介して、高速通信用基地局装置2と無線にてデータ通信するために利用される。したがって、アンテナ12−1、12−2、及び第1データ通信デバイス13は、高速通信用基地局装置2が準拠する無線通信規格、例えば、モバイルWiMAXまたはWiMAX2に準拠する。
【0046】
第1データ通信デバイス13は、例えば、高速通信用基地局装置2から、直交周波数分割多元接続(Orthogonal Frequency Division Multiple Access, OFDMA)方式に従って多重化されたダウンリンク信号を含む無線信号を受信する。一方、第1データ通信デバイス13は、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing, OFDM)方式に従って多重化されたアップリンク信号を含む無線信号を送信する。第1データ通信デバイス13と高速通信用基地局装置2とは、例えば、時分割複信(Time Division Duplexing, TDD)方式に従って、ダウンリンク信号を含む無線信号とアップリンク信号を含む無線信号とを、フレーム単位で交互に送受信する。そして一つのフレームには、高速通信用基地局装置2から移動局装置1へ送信されるダウンリンクのサブフレームと、移動局装置1から高速通信用基地局装置2へ送信されるアップリンクのサブフレームとが含まれる。
【0047】
第1データ通信デバイス13は、第1無線処理部131及び第1ベースバンド処理部132を有する。第1無線処理部131及び第1ベースバンド処理部132は、それぞれ、別個の回路であってもよく、あるいは、これらの各部は、それら回路が集積された一つの集積回路であってもよい。
第1無線処理部131は、アップリンク信号及びダウンリンク信号の増幅、デジタル/アナログ変換及び周波数変換といった処理を行う。一方、第1ベースバンド処理部132は、ベースバンド周波数を持つアップリンク信号及びダウンリンク信号に対する処理を実行する。
【0048】
アップリンク信号に関して、第1ベースバンド処理部132は、アップリンク信号に対して畳込み符号化あるいはターボ符号化などの誤り訂正用符号化処理などの送信処理を実行する。さらに第1ベースバンド処理部132は、符号化されたアップリンク信号を所定の変調方式に従って変調するとともに、OFDM方式に従ってアップリンク信号を多重化することで、アップリンクのサブフレームを作成する。第1ベースバンド処理部132は、アップリンクのサブフレームを第1無線処理部131へ出力する。
【0049】
第1無線処理部131は、第1ベースバンド処理部132から受け取ったアップリンクのサブフレームをデジタル/アナログ変換した後、無線周波数を持つ搬送波に重畳する。そして第1無線処理部131は、搬送波に重畳されたアップリンクのサブフレームをハイパワーアンプ(図示せず)により増幅した後、デュプレクサ(図示せず)を介してアンテナ12−1へ出力する。そしてアンテナ12−1は、アップリンクのサブフレームを無線信号として放射する。
【0050】
ダウンリンク信号に関して、第1無線処理部131は、アンテナ12−1により受信されたダウンリンクのサブフレームを含む無線信号をデュプレクサを介して受け取る。また第1無線処理部131は、アンテナ12−2により受信されたダウンリンクのサブフレームを含む無線信号を受け取る。そして第1無線処理部131は、その二つのアンテナからそれぞれ受け取ったダウンリンクのサブフレームのうち、信号強度が強い方を選択する。そして第1無線処理部131は、選択したサブフレームを低ノイズアンプにより増幅し、その増幅されたサブフレームに局部発信周波数を持つ周期信号を重畳することにより、ダウンリンクのサブフレームの周波数を無線周波数からベースバンド周波数に変換する。そして第1無線処理部131は、ベースバンド周波数を持つダウンリンクのサブフレームをアナログ/デジタル変換した後、第1ベースバンド処理部132に渡す。
あるいは、高速通信用基地局装置2がMIMO技術に従って複数のアンテナからダウンリンクのサブフレームを送信している場合には、第1無線処理部131は、各アンテナで受信したダウンリンクのサブフレームに対して、それぞれ増幅、周波数変換及びアナログ/デジタル変換を行う。その後、第1無線処理部131は、各サブフレームを第1ベースバンド処理部132に渡す。
【0051】
第1ベースバンド処理部132は、第1無線処理部131から受信したダウンリンクのサブフレームに含まれる、個々のダウンリンク信号を復調する。そして第1ベースバンド処理部132は、復調されたダウンリンク信号に対して誤り訂正復号処理を実行する。そして第1ベースバンド処理部132は、復号されたダウンリンク信号をプロセッサ11へ出力する。
なお、基地局装置がMIMO技術に従って複数のアンテナからダウンリンク信号を送信していることがある。この場合には、第1ベースバンド処理部132は、個々のダウンリンク信号を復調する前に、アンテナ12−1、12−2のそれぞれで同時に受信したダウンリンク信号の組に対して、例えば最小平均二乗誤差法あるいは最尤推定法に従って、信号分離処理を行う。
【0052】
第2データ通信デバイス14は、アンテナ12−3及び12−4を介して、低速通信用基地局装置4と無線にてデータ通信または音声通信するために利用される。したがって、アンテナ12−3、12−4、及び第2データ通信デバイス14は、低速通信用基地局装置4が準拠する無線通信規格、例えば、cdma 2000 1xまたは cdma 1x EV-DOに準拠する。そして第2データ通信デバイス14は、例えば、cdma方式により多重化されたアップリンク信号を低速通信用基地局装置4へ送信し、一方、cdma方式により多重化されたダウンリンク信号を低速通信用基地局装置4から受信する。
【0053】
第2データ通信デバイス14は、第2無線処理部141及び第2ベースバンド処理部142を有する。第2無線処理部141及び第1ベースバンド処理部142は、それぞれ、別個の回路であってもよく、あるいは、これらの各部は、それら回路が集積された一つの集積回路であってもよい。
第2無線処理部141は、第1無線処理部131と同様に、アップリンク信号及びダウンリンク信号の増幅、デジタル/アナログ変換及び周波数変換といった処理を行う。一方、第2ベースバンド処理部142は、第1ベースバンド処理部132と同様に、ベースバンド周波数を持つアップリンク信号及びダウンリンク信号に対する処理を実行する。ただし、第2無線処理部141及び第2ベースバンド処理部142は、第1データ通信デバイス13が準拠する無線通信規格にはなく、第2データ通信デバイス14が準拠する無線通信規格に規定されている処理も実行する。例えば、第2ベースバンド処理部142は、アップリンク信号に対する拡散処理及びダウンリンク信号に対する逆拡散処理も実行する。
【0054】
記憶部15は、揮発性の半導体メモリ回路と不揮発性の半導体メモリ回路とを有する。そして記憶部15は、例えば、プロセッサ11上で動作する様々なアプリケーションプログラム、及びアプリケーションプログラムなどで利用されるデータを記憶する。
さらに記憶部15は、設定された動作モードを表すフラグを記憶する。さらに記憶部15は、移動局装置1が何れかの基地局装置と無線通信している間、及び、移動局装置1が無線通信していた基地局装置がカバーするセル外へ出てから保持期間の間、接続情報を記憶する。
【0055】
通信制御部16は、少なくとも一つのプロセッサ及びメモリを有する。そして通信制御部16は、移動局装置1が何れかの基地局装置と無線通信を開始する際、その基地局装置が準拠する無線通信規格に規定された手順に従って接続設定処理を実行する。また通信制御部16は、移動局装置1と基地局装置との間でデータが送受信されている状態であるアクティブモードの実行中、ハンドオーバ、送信電力制御、及びアップリンク信号の変調方式の決定などを実行する。
【0056】
さらに、通信制御部16は、移動局装置1について設定された動作モードに応じて、保持期間を設定する。
【0057】
図7は、通信制御部16により制御される、保持期間設定処理の動作フローチャートである。
通信制御部16は、記憶部15に記憶されている動作モードを表すフラグを参照して、動作モードがマルチモードか否か判定する(ステップS401)。動作モードがマルチモードに設定されている場合(ステップS401−Yes)、通信制御部16は、保持期間をP1(例えば、5秒)に設定する。一方、動作モードが専用モードに設定されている場合(ステップS401−No)、通信制御部16は、保持期間をP1よりも長いP2(例えば、50秒)に設定する(ステップS403)。その際、通信制御部16は、例えば、動作モードと保持期間の対応関係を表す参照テーブルを参照することにより、設定された動作モードに応じた保持期間を設定してもよい。そのような参照テーブルは、例えば、予め記憶部15に記憶される。
ステップS402またはS403の後、通信制御部16は、保持期間を表すパラメータを含むメッセージを生成し、そのメッセージをアップリンク信号に含めて送信することで、高速通信用基地局装置2へ保持期間を通知する(ステップS404)。
ステップS404の後、通信制御部16は、保持期間設定処理を終了する。
【0058】
通信制御部16は、動作モードがマルチモードである場合、高速通信用基地局装置1がカバーするセル内に移動局装置1がいるか否かに応じて、データ通信する基地局装置を切り替える。例えば、移動局装置1と高速通信用基地局装置2とデータ通信しているときに、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセルの外へ移動してから保持期間P1が経過すると、通信制御部16は、高速通信用基地局装置2と通信するための接続情報を記憶部15から消去する。そして通信制御部16は、低速通信用基地局装置4とのデータ通信を開始する。その後、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセル内へ移動すると、通信制御部16は、データ通信先を、低速通信用基地局装置4から高速通信用基地局装置2へ切り替える。なお、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセルの外へ移動しても、保持期間P1内に移動局装置1がそのセル内に移動すると、通信制御部16は、記憶部15に記憶されている接続情報を利用して、以前の通信セッションを再開する。
【0059】
一方、動作モードが専用モードである場合も、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセルの外へ移動してから保持期間P2が経過すると、通信制御部16は、高速通信用基地局装置2と通信するための接続情報を記憶部15から消去する。その後、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセル内へ移動すると、通信制御部16は、高速通信用基地局装置2と新たな通信セッションを開始し、接続情報も新たに作成する。また、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセルの外へ移動してから保持期間P2内に移動局装置1がそのセル内に移動すると、通信制御部16は、記憶部15に記憶されている接続情報を利用して、以前の通信セッションを再開する。なお、上記のように、動作モードが専用モードである場合の保持期間P2は、動作モードがマルチモードである場合の保持期間P1よりも長く設定される。
【0060】
図8は、高速通信用基地局装置2の構成図である。高速通信用基地局装置2は、アンテナ21−1、21−2と、無線処理部22と、ベースバンド処理部23と、有線インターフェース部24と、記憶部25と、通信制御部26とを有する。
【0061】
無線処理部22、ベースバンド処理部23、記憶部25及び通信制御部26は、それぞれ、別個の回路であってもよく、あるいは、これらの各部は、それら回路が集積された一つの集積回路であってもよい。
無線処理部22は、アップリンク信号及びダウンリンク信号の増幅、デジタル/アナログ変換及び周波数変換といった処理を行う。一方、ベースバンド処理部23は、ベースバンド周波数を持つアップリンク信号及びダウンリンク信号に対する処理を実行する。
無線処理部22及びベースバンド処理部23は、それぞれ、図6に示した移動局装置1の第1無線処理部131及び第1ベースバンド処理部132と、同様の機能を有する。そのため、無線処理部22及びベースバンド処理部23についての詳細な説明は省略する。
【0062】
有線インターフェース部24は、高速通信用基地局装置2を、コアネットワーク側に位置する他の装置、例えば、ASN−GW3と接続するための通信インターフェース回路を有する。そして有線インターフェース部24は、ASN−GW3などから受信したダウンリンク信号をベースバンド処理部23に渡す。また有線インターフェース部24は、ASN−GW3などから受信した、高速通信用基地局装置2に対する制御信号を、通信制御部26に渡す。
一方、有線インターフェース部24は、ベースバンド処理部23から受け取ったアップリンク信号をASN−GW3などへ出力する。
【0063】
記憶部25は、例えば、書き換え可能な不揮発性半導体メモリまたは揮発性半導体メモリを有する。そして記憶部25は、高速通信用基地局装置2がカバーするセルの識別番号、セルにおいて使用される無線周波数など、移動局装置と無線接続するための制御に利用される各種の情報を記憶する。また記憶部25は、アップリンク信号あるいはダウンリンク信号を一時的に記憶してもよい。さらに記憶部25は、高速通信用基地局装置2と無線通信している移動局装置ごとに、保持期間を記憶する。そして記憶部25は、高速通信用基地局装置2が移動局装置1と無線通信している間、及び、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセル外へ出てから保持期間が経過するまで、接続情報を記憶する。
【0064】
通信制御部26は、少なくとも一つのプロセッサ及びメモリを有する。そして通信制御部26は、移動局装置1が高速通信用基地局装置2と無線通信を開始する際、高速通信用基地局装置2が準拠する無線通信規格に規定された手順に従って接続設定処理を実行する。また通信制御部26は、移動局装置1と無線通信中、ハンドオーバ、送信電力制御、及びダウンリンク信号の変調方式の決定などを実行する。
【0065】
さらに、通信制御部26は、移動局装置1から通知された保持期間を表すメッセージに基づいて、保持期間を設定する。
【0066】
図9は、通信制御部26により制御される、保持期間設定処理の動作フローチャートである。
通信制御部26は、移動局装置1から受信したメッセージに含まれる、保持期間を表すパラメータを参照して、保持期間がP1か否か判定する(ステップS501)。保持期間がP1であれば(ステップS501−Yes)、通信制御部26は、保持期間を表すパラメータの値をP1に相当する値に設定し、そのパラメータを移動局装置1の識別情報(例えば、移動局装置1のMACアドレス)とともに記憶部25に記憶する(ステップS502)。一方、保持期間がP2であれば(ステップS501−No)、通信制御部26は、保持期間を表すパラメータの値をP2に相当する値に設定し、そのパラメータを移動局装置1の識別情報とともに記憶部25に記憶する(ステップS503)。
ステップS502またはS503の後、通信制御部26は、保持期間設定処理を終了し、設定された保持期間を高速通信用無線アクセスネットワーク7内の他の機器へ通知する。また通信制御部26は、設定された保持期間を表すパラメータを含むメッセージを移動局装置1へ返信してもよい。
【0067】
通信制御部26は、移動局装置1と高速通信用基地局装置2とデータ通信しているときに、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセルの外へ移動してから保持期間が経過すると、移動局装置1についての接続情報を記憶部25から消去する。その後、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセル内へ再度移動すると、通信制御部26は、移動局装置1と新たな通信セッションを開始する。なお、移動局装置1が高速通信用基地局装置2がカバーするセルの外へ移動しても、設定された保持期間内に移動局装置1がそのセル内に移動すると、通信制御部26は、記憶部25に記憶されている接続情報を利用して、以前の通信セッションを再開する。
【0068】
以上に説明してきたように、この移動体通信システムは、移動局装置がマルチモードに設定されている場合の保持期間を、移動局装置が専用モードに設定されている場合の保持期間よりも短くする。これにより、移動局装置が高速通信用基地局装置がカバーするセルの外へ移動してからすぐに通信経路を低速通信用基地局装置を経由する通信経路に切り替える場合には、高速通信用基地局装置は、移動局装置に割り当てたリソースを早期に開放できる。そのため、高速通信用基地局装置は、リソースの使用効率を向上できる。
【0069】
なお、移動局装置が低速通信用基地局装置と接続するための接続情報の保持期間は、例えば、予め定められた期間(例えば、10秒間)に設定されればよい。そしてマルチモードに設定されている移動局装置が低速通信用基地局装置と通信できなくなったときには、通信できなくなってからその保持期間が経過した時点で、移動局装置及び低速通信用基地局装置は接続情報を破棄する。
また、他の変形例によれば、移動局装置が通信可能な二つの基地局装置の利用可能なエリアは、互いに異なるが、その二つの基地局装置の通信速度は同一であってもよい。
【0070】
ここに挙げられた全ての例及び特定の用語は、読者が、本発明及び当該技術の促進に対する本発明者により寄与された概念を理解することを助ける、教示的な目的において意図されたものであり、本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する、本明細書の如何なる例の構成、そのような特定の挙げられた例及び条件に限定しないように解釈されるべきものである。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0071】
100 移動体通信システム
1 移動局装置
2 高速通信用基地局装置
3 アクセスサービスネットワークゲートウェイ(ASN-GW)
4 低速通信用基地局装置
5 パケットデータサービングノード(PDSN)
6 上位ノード装置
7 高速無線アクセスネットワーク
8 低速無線アクセスネットワーク
10 ユーザインターフェース部
11 プロセッサ
12−1〜12−4
13 第1データ通信デバイス
131 第1無線処理部
132 第1ベースバンド処理部
14 第2データ通信デバイス
141 第2無線処理部
142 第2ベースバンド処理部
15 記憶部
16 通信制御部
21−1〜21−2 アンテナ
22 無線処理部
23 ベースバンド処理部
24 有線インターフェース部
25 記憶部
26 通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局装置と、第1の基地局装置と、該第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置とを有する移動体通信システムであって、
前記移動局装置は、
前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のうちの何れか一方を選択し、該選択された方の基地局装置と無線通信する第1のモードに設定されている場合、第1の保持期間を前記第1の基地局装置へ通知し、一方、前記第1の基地局装置とのみ無線通信する第2のモードに設定されている場合、前記第1の保持期間よりも長い第2の保持期間を前記第1の基地局装置へ通知し、
前記第1の基地局装置は、
前記移動局装置から前記第1の保持期間を通知されている場合、前記移動局装置を前記第1の基地局装置と接続するために用いられる接続情報を、前記移動局装置が前記第1の基地局装置と無線通信できなくなってから前記第1の保持期間が経過した時点で破棄し、一方、前記移動局装置から前記第2の保持期間を通知されている場合、前記接続情報を、前記移動局装置が前記第1の基地局装置と無線通信できなくなってから前記第2の保持期間が経過した時点で破棄する、
移動体通信システム。
【請求項2】
前記移動局装置は、前記第1のモードに設定されている場合、所定周期ごとに前記第1の基地局装置からの無線信号を受信するアイドルモードへ移行することを前記第1の基地局装置に対して要求する第1のメッセージに、前記第1の保持期間を表すパラメータを含め、一方、前記第2のモードに設定されている場合、前記第1のメッセージに前記第2の保持期間を表すパラメータを含めることにより、前記第1の基地局装置に対して前記第1の保持期間または前記第2の保持期間を通知する、請求項1に記載の移動体通信システム。
【請求項3】
前記移動局装置は、前記第1のモードに設定されている場合、前記第1の基地局装置との接続を開始するために当該移動局装置の通信能力を通知する第2のメッセージに、前記第1の保持期間を表すパラメータを含め、一方、前記第2のモードに設定されている場合、前記第2のメッセージに前記第2の保持期間を表すパラメータを含めることにより、前記第1の基地局装置に対して前記第1の保持期間または前記第2の保持期間を通知する、請求項1に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
前記移動局装置は、前記第1のモードに設定されている場合、第3のメッセージに前記第1の保持期間を表すパラメータを含め、一方、前記第2のモードに設定されている場合、前記第3のメッセージに前記第2の保持期間を表すパラメータを含め、前記第1の基地局装置と無線通信中に前記第3のメッセージを送信することで、前記第1の保持期間または前記第2の保持期間を通知する、請求項1に記載の移動体通信システム。
【請求項5】
前記第1の基地局装置は、前記移動局装置が所定周期ごとに当該第1の基地局装置からの無線信号を受信するアイドルモードへ移行するとき、前記第1の保持期間が通知されていると、前記所定周期を第1の呼び出し周期に設定するとともに前記移動局装置へ当該第1の呼び出し周期を通知し、一方、前記第2の保持期間が通知されていると、前記所定周期を前記第1の呼び出し周期よりも短い第2の呼び出し周期に設定するとともに前記移動局装置へ当該第2の呼び出し周期を通知する、請求項1〜4の何れか一項に記載の移動体通信システム。
【請求項6】
第1の基地局装置または該第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置と通信する移動局装置であって、
前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のうちの何れか一方を選択し、該選択された方の基地局装置と無線通信する第1のモード、または前記第1の基地局装置とのみ無線通信する第2のモードの何れかに設定するユーザインターフェース部と、
前記移動局装置を前記第1の基地局装置と接続するために用いられる接続情報を記憶する記憶部と、
前記移動局装置が前記第1のモードに設定されている場合、前記移動局装置が前記第1の基地局装置と無線通信できなくなってから前記第1の保持期間が経過した時点で前記接続情報を前記記憶部から消去し、一方、前記移動局装置が前記第2のモードに設定されている場合、前記移動局装置が前記第1の基地局装置と無線通信できなくなってから、前記第1の保持期間よりも長い第2の保持期間が経過した時点で前記接続情報を前記記憶部から消去する通信制御部と、
を有する移動局装置。
【請求項7】
前記通信制御部は、前記移動局装置が前記第1のモードに設定されている場合、前記第1の基地局装置へ通知するメッセージに前記第1の保持期間を表すパラメータを含め、一方、前記移動局装置が前記第2のモードに設定されている場合、前記メッセージに前記第2の保持期間を表すパラメータを含める、
請求項6に記載の移動局装置。
【請求項8】
移動局装置と無線通信可能な基地局装置であって、
前記移動局装置を前記基地局装置と接続するために用いられる接続情報と、前記移動局装置から通知された保持期間を記憶する記憶部と、
前記移動局装置が前記基地局装置と無線通信できなくなってから、前記保持期間が経過した時点で前記接続情報を前記記憶部から消去する通信制御部と、
を有する基地局装置。
【請求項9】
移動局装置と、第1の基地局装置と、該第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置とを有する移動体通信システムにおける、前記移動局装置が前記第1の基地局装置と接続するための接続情報の保持期間の設定方法であって、
前記移動局装置は、
前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のうちの何れか一方を選択し、該選択された方の基地局装置と無線通信する第1のモードに設定されている場合、第1の保持期間を前記第1の基地局装置へ通知し、一方、前記第1の基地局装置とのみ無線通信する第2のモードに設定されている場合、前記第1の保持期間よりも長い第2の保持期間を前記第1の基地局装置へ通知し、
前記第1の基地局装置は、
前記移動局装置から前記第1の保持期間を通知されている場合、前記移動局装置が前記第1の基地局装置と無線通信できなくなってから前記接続情報を破棄するまでの期間を当該第1の保持期間に設定し、一方、前記移動局装置から前記第2の保持期間を通知されている場合、前記移動局装置が前記第1の基地局装置と無線通信できなくなってから前記接続情報を破棄するまでの期間を当該第2の保持期間に設定する、
ことを含む保持期間の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−77960(P2013−77960A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216386(P2011−216386)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(310022372)富士通モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】