説明

移動体通信システム、移動端末、および移動体通信方法

【課題】他の移動端末を中継局として使用する通信において、いったん確立された接続を切断されにくいようにする。
【解決手段】本発明は、指向性を有するアンテナを搭載した移動端末が、近傍の端末から電波が到来する方向を推定し、所望の方向にアンテナの指向性を向けることができることを特徴とする。例えば、通信エリア外の携帯電話65が中継を要求した一次中継端末64は、どの基地局の通信エリア内にもないので、他の携帯電話を捜索し、二次中継端末63を発見する。この場合、二次中継端末63が、ある基地局61の通信エリア62内にあるために、二次中継端末63はこれ以上他の携帯電話を探すことはせずに、基地局61との接続を確立し、通信エリア外の携帯電話65は通信を開始することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システム、移動端末、および移動通信方法に関し、特に、通信可能圏内から外れた場所にある移動端末(以下単に端末という場合がある)であっても、通信できる移動体通信システム、移動端末、および移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、携帯電話システムのような移動体通信システムでは、各移動端末が基地局と直接通信する。したがって、ある移動端末がどの基地局の通信圏内からも外れた場所にある場合には、その移動端末は通信をすることができない。
【0003】
例えば、移動端末がどの基地局からも物理的に遠く、通信エリア外にある場合である。わが国の代表的な携帯電話システムの面積カバー率は比較的高く、しかもさらに漸増しているとはいえ、地方や山岳地では、未だに通信エリア外のまま残されている地域も多い。この様子を図7に示す。図7には、簡単のため2つの基地局(基地局A(71)および基地局B(74))と、それぞれの通信可能エリア72および75が示されている。携帯電話73および76はいずれかの基地局の通信可能エリアに存在するが、携帯電話77および78はどの基地局からも遠く、両携帯電話が存在する場所は通信エリア外となっている。
【0004】
また、移動端末が基地局からは近いが障害物(建物など)の影響により局所的に電界強度が弱い場所にある場合も、その移動端末はやはり通信をすることができない。さらに、通信開始時には十分な電界強度があり、問題なく通信できていたとしても、通信中に端末が移動して電界強度が弱い場所にさしかかった場合には、途中で通信が途絶してしまうこともある。
【0005】
こういった問題を改善するために、他の移動端末を中継局として使用することにより、適当な基地局との接続を確立し、実質的に通信エリアを拡大しようという提案がいくつかなされている。例えば、特許文献1には、無線基地局のサービスエリア外にいる移動通信端末装置が、自らから通信可能範囲かつサービスエリア内にいる他の移動通信端末装置に通信を中継させ、無線基地局と通信を行なう、という技術が開示されている。同様の技術は特許文献2、特許文献3、特許文献4にも開示されている。
【0006】
一方、各端末と各基地局との間の通信の確実性を向上させるために、移動端末において電波到来方向推定技術を採用するという提案もいくつかなされている。例えば、特許文献5には、複数のチップアンテナをPHS (Personal Handy-phone System)端末に搭載し、基地局の方向を液晶画面上に表示するという技術が開示されている。また、特許文献6には、移動通信用の無線通信装置にアレーアンテナを搭載し到来する電波の方向を推定するという技術が開示されている。ただし、これらは、移動端末が基地局と通信する際に電波到来方向を推定するという技術であり、各端末と基地局との間の通信の確実性はある程度向上するものの、他に特段の質的な改善が生じるものではない。
【0007】
【特許文献1】特開平7−162935号公報
【特許文献2】特開2000−049690号公報
【特許文献3】特開2001−186076号公報
【特許文献4】特開2003−179536号公報
【特許文献5】特開2002−016975号公報
【特許文献6】特開2003−348004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1ないし特許文献4に記載されたような従来技術では、通常の携帯端末が有する伸張アンテナや端末内部に存在するアンテナなどにより、通信を行っている。しかしながら、これらのアンテナは顕著な指向性を有しないため、端末が電波の到来する方向、すなわち、通信の中継を要求すべき他の端末の存在する方向を把握できない。したがって、端末は無数の不要波や雑音の中から目的とする信号を抽出しなければならず、一旦他の端末が中継して基地局との間に確立した接続も切断されやすいという課題があった。この課題が現実の移動体通信システムにこの技術を採用することを妨げていた。また、切断されやすいというこの傾向は、中継に関与する端末の数が増えれば増えるほど、指数関数的に顕著となり、仮に現実の移動体通信システムにこの技術を採用したとしても、1段程度の中継に限定され、実質的な通信エリアはさほど広がらないという課題があった。
【0009】
また、上記の従来技術では、通信の中継を要求する側の端末にとっては、通信エリア外からも通信することができるというメリットがある反面、通信の中継を受け入れた端末から通信内容が漏洩するリスクがあるというデメリットがある。一方、通信の中継を受け入れる端末にとっては、自端末とは全く関係のない通信のために、電力やCPUパワーなどのハードウエア資源を提供しなければならないというデメリットがある。また、通信システム全体としては、各端末が次々と近傍にある他端末を捜索して接続を確立し、しかも何らかの原因によりユーザの意図に反して接続が切断された場合には、再び端末の捜索と接続の確立を繰り返すため、通信トラフィックが増大して通信システム全体に多大な負荷を掛けるという課題がある。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、他の移動端末を中継局として使用する通信において、一旦確立された接続を切断されにくいものとすることである。特に、本発明は、中継に関与する端末の数が多い場合であっても、確立された接続を切断されにくいものとすることを目的としている。これにより、現実の移動体通信システムにこの中継技術を採用することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、他に、通信エリア外からも通信できる権利と他端末のためにリソースを提供する義務とのバランスをとること、中継に伴う通信内容の漏洩というリスクを低減すること、通信トラフィックを抑制してできるだけ通信システム全体に負荷を掛けないこと、等も目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、指向性を有するアンテナを搭載した移動端末が、近傍の端末から電波が到来する方向を推定し、所望の方向にアンテナの感度が極大になる方向を向け、所望の端末との接続を確立するという中継要求機能を特徴とする。
【0013】
上記アンテナはアダプティブアレーアンテナであることが望ましい。アレーアンテナを構成する各素子は、小型のチップアンテナであることが好ましい。特に、素子数は四が好ましい。また、アレーアンテナは付属キットのように脱着可能とすることが好ましい。
【0014】
本発明は、移動端末が、近傍の端末を複数発見した場合には、それらの中から適当な一つを選択し、接続を確立して、通信の中継を要求することを特徴とする。
【0015】
本発明では、ユーザが通信を開始しようとしたときにはじめて、中継を要求できる他の端末の捜索を開始することが好ましい。あるいは、本発明は、ユーザの通信開始要求の有無にかかわらず、自端末が通信エリア外にあると判断したときは、中継を要求できる他の端末を常に捜索し、接続を確立しておくこともできる。
【0016】
本発明では、近傍の端末を複数発見した場合には、それらの中から適当な一つを選択する判断基準として、自端末に最も強い電界強度で電波を届けている端末を選択する。さらに、自端末に最も強い電界強度で電波を届けている端末を選んでも基地局まで辿り着けなった場合には、自端末に2番目・3番目に強い電界強度で電波を届けている端末を順次選ぶことが望ましい。
【0017】
あるいは、その判断基準として、基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している端末を選択する。さらに、基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している端末を選んでも基地局まで辿り着けなった場合には、基地局からの電波を2番目・3番目に強い電界強度で受信している端末を順次選ぶことが望ましい。
【0018】
本発明は、中継に関与する最大端末数を予め設定しておくことを特徴とする。この値はユーザ設定により変更できることが望ましい。ユーザが設定できる値には上限を設けておくと良い。
【0019】
本発明は、何番目に電界強度が強い端末まで試行するかを予め設定しておくことを特徴とする。この値はユーザ設定により変更できることが望ましい。ユーザが設定できる値には上限を設けておくと良い。
【0020】
あるいは、本発明は、通信エリア内にある端末が、予め近傍かつ通信エリア外の端末を捜索して、中継を申し出て、接続を確立しておき、当該通信エリア外の端末が通信を開始しようとした際に、当該通信エリア外の端末と基地局との間の通信を中継することを特徴とする。
【0021】
本発明では、電波が到来する方向を推定するためのアルゴリズムとして、ビームフォーミング法、あるいは、スーパーレゾリューション法を好ましく用いることができる。ビームフォーミング法とは、フーリエ変換法に基づく、最も基本的で伝統的な電波到来方向推定手法であって、一様励振(uniform)アレーアンテナのメインローブ(メインビーム)を全方向にわたって走査し、アレーの出力電力が大きくなる方向を探す手法のことをいう(例えば、菊間信良著、「アレーアンテナによる適応信号処理」、科学技術出版社、1999年)。スーパーレゾリューション法とは、アレーアンテナを用いた信号の到来方向推定およびレーダターゲットの識別などにおいて、固有値解析に基づいて電波到来方向を推定し、従来のビームフォーミング法やフーリエ変換に基づく方法の限界を超えた高分解能性を実現する手法の総称である。例えば、Multiple Signal Classification (MUSIC)法、Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques (ESPRIT)法、MODE法などが挙げられる。本発明は、スーパーレゾリューション法の中でもとりわけMUSIC法を好ましく用いることができる。MUSIC法とは、受信データの相関行列の固有値、および固有ベクトルの直行性を利用することにより、アレー長に依存しない高分解能な解析を実現する手法であり、受信データから構成される相関行列の固有値解析に基づいて解析を行うものである。
【0022】
本発明は、スペクトラム拡散方式を用いた通信に適用することが望ましい。スペクトラム拡散方式とは、デジタル信号を拡散符号と呼ばれる信号によって元の信号より広い帯域に拡散させた上で送信し、受信側で同じ拡散符号によって元のデジタル信号を復元する方式をいう。例えば、符号分割多重接続(Code Division Multiple Access、CDMA)方式、または、Wideband CDMA (W-CDMA)方式、または、CDMA2000方式による通信などが挙げられる。CDMA方式とは、携帯電話などの無線通信に使われる方式の一つであって、複数の発信者の音声信号にそれぞれ異なる符号を乗算し、すべての音声信号を合成して1つの周波数を使って送る方式のことをいう。これにより、受け手は自分と会話している相手の符号を合成信号に乗算することにより、相手の音声信号のみを取り出すことができる。W-CDMA方式とは、NTTドコモ株式会社・Ericsson社などが開発した第3世代(3G)携帯電話の通信方式である。CDMA2000方式とは、QUALCOMM社などを中心とする通信事業者の国際的な業界団体CDMA Development Group (CDG)が開発した次世代携帯電話の通信方式である。
【0023】
本発明では、通信内容が暗号化されていることが望ましい。
【0024】
本発明では、他端末に中継を要求する機能の有効/無効の切り替えが、ユーザの設定により、または、ユーザと通信キャリアとの間の契約により、可能であることが望ましい。また、本発明は、他端末から要求された中継の受け入れを許可するか否かの切り替えが、ユーザの設定により、または、ユーザと通信キャリアとの間の契約により、可能であることが望ましい。さらに本発明は、他端末からの中継の要求受け入れを許可している場合にのみ、他端末への中継の要求機能を有効にできることが望ましい。また、本発明は、110番などの緊急通話や災害時については、設定に関わらず、他端末に中継を要求する機能が有効となるように構成しておくのが良い。また、本発明は、緊急通話や災害時については、設定に関わらず、他端末からの中継要求を常に受け入れるように構成しておくのが良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、端末が通信エリア外にある場合であっても、他の端末に中継してもらうことにより、基地局と接続を確立して、通信が可能となる。すなわち、基地局を増設しなくとも、実質的に通信エリアが拡大したのと同じ効果がある。
【0026】
特に、本発明では、移動端末が、指向性を有し、かつ、その指向性の適応制御を行うことのできるアンテナを搭載することにより、近傍の中継依頼先の端末の方向にアンテナの指向性を向け、不要波に対してはアンテナのヌル点を向けることにより、当該中継依頼先端末からの受信感度の最適化を図ることができる。これにより、中継依頼元の端末は、無数の不要波や雑音の中にあっても、中継依頼先の端末との接続を容易に確立することができる。しかも、基地局との間に最終的に確立した接続が切断されにくいという利点がある。この利点により、初めて現実の移動体通信システムにこの技術を採用することができる。接続が切断されにくいため、何度も接続を確立しようとして通信トラフィックが増大し、通信システム全体に負荷を掛けることもない。
【0027】
本発明は、通信エリア外の端末と基地局との間の一つの接続の中継に関与する端末の数が増えれば増えるほど、効果が増す。すなわち、本発明によれば、多数の端末が中継しなければ基地局まで辿り着けない場合であっても、確実に接続を確立・維持することができる。したがって、多額のコストをかけて基地局を増設しなくとも、実質的な通信エリアを劇的に広げることができる。例えば、災害等により基地局が被害を受け、広範囲な一帯が通信エリア外となってしまった場合であっても、本発明により、実質的な通信エリアをその一帯にのばすことができる。
【0028】
また、このアンテナにより、複数の近傍の端末の中から、ある選択基準に基づいて中継依頼先の端末(後述のように、この端末からの電波の電界強度は必ずしも常に十分強い訳ではない)を選択して、接続を確立することが容易に可能となる。
【0029】
なお、本発明には、電波到来方向推定アルゴリズムを変更しても、アンテナ構成に変更はないので、ハードウエアに変更を加えずソフトウエアの変更だけで適宜アルゴリズムを変更することが可能であるという利点もある。
【0030】
本発明によれば、確立された接続の状況を基地局側で収集して解析することにより、通信エリア外に存在する端末の数、その分布、基地局より発せられる電波の品質、その分布などを調査することも可能となる。よって、これらをもとに、基地局を設置する際の有効なデータベースを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
《実施例1》
図2は本発明の一実施例の携帯電話の背面を示す概略図である。図1はかかる携帯電話の内部構成を示す概念図である。この携帯電話は、電波受信部1(11)と、電界強度監視部12と、電波受信部2(13)と、電波到来方向推定機能部14と、端末捜索部15と、接続確立部16と、から構成されている。電波到来方向推定機能部14と、端末捜索部15とは、協同して中継端末決定部17として作用する。電波受信部1(11)は、通常のアンテナ23に接続されており、基地局からの電波を受信する。電界強度監視部12は電波受信部1(11)から入力される電界の強度を常時所定の時間間隔で監視する。電波受信部2(13)は、小型チップアンテナ21からなるアレーアンテナ24にて近傍の携帯電話からのデータを受信する。電波到来方向推定機能部14は、電波受信部2(13)から入力された信号に電波到来方向を推定するための演算を施して、電波の到来方向、すなわち近傍の携帯電話の存在する方向を推定する。端末捜索部15は、電波到来方向推定機能部14により計算された最適な方向を選択し、その先の携帯電話を捜索する。接続確立部16は、その携帯電話と接続を確立する。
【0032】
本実施例1におけるアレーアンテナ24は、小型のチップアンテナ21を方形状に配列させた方形アレーの形態をとっている。図2には示されていないが、アレーアンテナ24は付属キットのように脱着可能となっている。
【0033】
本実施例1では、電波到来方向推定機能部14で電波到来方向を推定するためのアルゴリズムとして、スーパーレゾリューション法を用いている。スーパーレゾリューション法とは、アレーアンテナを用いた信号の到来方向推定およびレーダターゲットの識別などに固有値解析を用いる手法の総称であり、これを用いた場合、従来のビームフォーミング法並びにフーリエ変換の限界を超えた高分解能性が実現される。特に、本実施例1では、スーパーレゾリューション法のうち最も一般的な手法の一つであるMUSIC法を用いた。この手法は、アレーアンテナの各素子に位相がずれて入射された信号から相関行列を作り、固有値解析を行って信号成分と雑音成分を求めるものである。固有値の固有ベクトルが信号の雑音ベクトルと直交する性質をもつため、具体的には、例えば、角度を−180度から+180度まで0.1度刻みで掃引した場合に、評価式の値が発散する角度を、電波が到来する方向として推定する。この詳細については、例えば、ラルフ・O・シュミット(Ralph. O. Schmidt)著、「マルチプル・エミッタ・ロケーション・アンド・シグナル・パラメータ・エスティメーション(Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation)」、アイ・トリプル・イー・トランザクションズ・オン・アンテナス・アンド・プロパゲーション(IEEE Transactions on Antennas and Propagation) (アメリカ合衆国)、1986年3月、vol. AP-34, No. 3, p. 276-280などに記載されている。これにより、本実施例1では、近傍の携帯電話の存在する方向を推定することが可能となっている。
【0034】
図3は本実施例1の携帯電話で行われる処理の詳細を示すフローチャートである。ユーザが通信開始の操作を行ったら(S101)、携帯電話が所有する通常のアンテナ23により基地局からの電波を受信し(S102)、次にその携帯電話の存在地点における電界強度を監視する(S103)。電波が弱く通信が途切れる場合があるかどうかは、電界強度k(i)と所定の閾値Dとの比較により判断する(S104)。電波が強く、k(i)≧Dの場合には、通常の通信が可能である(S105)。電波が弱く、k(i)<Dの場合、通信を中継してくれる他の携帯電話を捜索するために、アレーアンテナ24により電波の到来方向推定を行う(S106)。他の携帯電話を発見できたか否か判定し(S107)、他の携帯電話を発見できなければ、通信は不可となる(S108)。他の携帯電話を発見できれば、本実施例1のアレーアンテナはアダプティブ機能を有しているため、自端末に最も強い電界強度で電波を届けている携帯電話を選んでアレーアンテナの指向性を向け、その携帯電話と接続を確立し(S109)、その携帯電話に通信の中継を要求する(S110)。このとき、中継依頼先の携帯電話が中継依頼のおおもとである自端末から数えて何番目であるかという序列i(この場合i=1)と、中継に関与する最大端末数nとを、中継依頼先に通知する(S110)。中継依頼先から通信可能である旨の回答が得られた場合には(S111)、通信可能となる(S112)。通信不可である旨の回答が得られた場合には(S113)、通信不可となる(S114)。何の回答も得られてない場合には、所定の時間が経過したか否か判定し(S115)、タイムアウトしていれば通信不可となる(S116)。まだタイムアウトしていない場合には再び通信可能または不可である旨の回答が得られたか否かの判定に戻る(S111およびS113)。
【0035】
図4は本実施例1の携帯電話が他端末より通信の中継を要求された場合の処理の詳細を示すフローチャートである。他の携帯電話から通信の中継を要求する旨の信号を受け取ったら(S201)、自端末が所有する通常のアンテナ23により電波を受信し(S202)、次にその携帯電話の存在地点における電界強度を監視する(S203)。電波が弱く通信が途切れる場合があるかどうかは、電界強度k(i)と所定の閾値Dとの比較により判断する(S204)。電波が強く、k(i)≧Dの場合には、通信が可能である旨の回答を中継依頼元へ返す(S205)。電波が弱く、k(i)<Dの場合、自端末で中継に関与する最大端末数に達しているか否かの判定を行うために、中継依頼元から受け取った、自端末がおおもとの携帯電話から数えて何番目であるかという序列iと、中継に関与する最大端末数nとを、比較する(S206)。最大端末数に達している場合には、通信が不可である旨の回答を中継依頼元へ返す(S207)。まだ最大端末数に達していない場合には、通信をさらに中継してくれる他の携帯電話を捜索するために、アレーアンテナ24により電波の到来方向推定を行う(S208)。他の携帯電話を発見できたか否か判定し(S209)、他の携帯電話を発見できなければ、通信が不可である旨の回答を中継依頼元へ返す(S210)。他の携帯電話を発見できれば、本実施例1のアレーアンテナはアダプティブ機能を有しているため、自端末に最も強い電界強度で電波を届けている携帯電話を選んでアレーアンテナの指向性を向け、その携帯電話と接続を確立し(S211)、その携帯電話に処理を要求する(S212)。このとき、中継依頼元から受け取った、自端末がおおもとの携帯電話から数えて何番目であるかという序列iに1を加えた数(i+1)(中継依頼先の携帯電話がおおもとの携帯電話から数えて何番目であるかという序列)と、中継に関与する最大端末数nとを、中継依頼先に通知する(S212)。中継依頼先から通信可能である旨の回答が得られた場合には(S213)、通信が可能である旨の回答を中継依頼元へ返す(S214)。通信不可である旨の回答が得られた場合には(S215)、通信が不可である旨の回答を中継依頼元へ返す(S216)。何の回答も得られてない場合には、所定の時間が経過したか否か判定し(S217)、タイムアウトしていれば通信が不可である旨の回答を中継依頼元へ返す(S218)。まだタイムアウトしていない場合には再び通信可能または不可である旨の回答が得られたか否かの判定に戻る(S213およびS215)。
【0036】
以上の動作により、ユーザが通信エリア外にある携帯電話で通信を行おうとした場合に、近傍の携帯電話群の中から最も電界強度が強い経路を捜索し、接続を確立させ、最終的にいずれかの基地局の通信エリア内にある携帯電話を経由して基地局との通信が確立できるまで、捜索された携帯電話で次々に同様の処理を行う。こうして通信エリア外の携帯電話でも通信が可能となる。
【0037】
本実施例1で、通信エリア外の携帯電話が通信を行おうとした場合に、一つの携帯電話が中継するだけで基地局まで辿り着くことができた場合の概念図を図5に示す。この場合、通信エリア外の携帯電話54が中継を依頼した一次中継端末53が、ある基地局51の通信エリア52内にあるために、一次中継端末53はこれ以上他の携帯電話を探すことはせずに、基地局51との接続を確立し、通信エリア外の携帯電話54は通信を開始することができる。
【0038】
また、二つの携帯電話が中継して基地局まで辿り着くことができた場合の概念図を図6に示す。この場合、通信エリア外の携帯電話65が中継を依頼した一次中継端末64は、どの基地局の通信エリア内にもないので、他の携帯電話を捜索し、二次中継端末63を発見する。この場合、二次中継端末63が、ある基地局61の通信エリア62内にあるために、二次中継端末63はこれ以上他の携帯電話を探すことはせずに、基地局61との接続を確立し、通信エリア外の携帯電話65は通信を開始することができる。
【0039】
本実施例1では、上記のようにアンテナとしてアレーアンテナ24を採用することにより、現在も発展しつつある電波到来方向推定理論を採用することができるようになっている。
【0040】
本実施例1では、アレーアンテナ24を小型のチップアンテナ21で構成することにより、質量やサイズなどの点で厳しい制約のある携帯電話22にも、アレーアンテナ24を採用することができた。この背景には、近年、通信に使用する周波数が極めて高くなっていることが挙げられる。このため、小型のアンテナを採用できるようになり、移動端末という携帯機器においてもアレーアンテナ24を実装することが現実のものとなった。
【0041】
また、本実施例1では、アレーアンテナ24を構成する小型チップアンテナ21の素子数を四とすることにより、電波到来方向の推定精度(素子数が多ければ多いほどよい)と携帯電話22の質量やサイズ(一般的にはいずれも小さい方がよい)・コスト(低い方がよい)とのバランスをとっている。この背景には、近年、電波の到来方向推定理論が大きく発達したため、比較的少ない素子数(例えば本実施例1のように四素子)であっても高精度な推定を行うことができるようになったことが挙げられる。
【0042】
さらに、本実施例1では、アレーアンテナ24が脱着可能となっているため、電波が弱い地域では、アレーアンテナ24を装着して、従来ならば途切れるような通信を途切れず行うことができる一方、電波が強い地域では、アレーアンテナ24をはずしておき、端末の軽量化・小型化を図ることができるようになっている。
【0043】
本実施例1では、ユーザが通信を開始しようとしたときにはじめて、通信の中継を要求できる他の端末の捜索を開始することにより、不要な捜索や接続を抑制し、自端末や他端末の消費電力の節約やハードウエア資源の有効活用を図っている。
【0044】
本実施例1では、複数の近傍の端末の中から適当な一つを選択する判断基準として、自端末に届く電界強度を判断基準とすることにより、確実に接続を確立することができるように構成されている。
【0045】
本実施例1では、中継に関与する最大端末数nを予め設定しておくことで、無限に捜索を繰り返してしまい、無駄に他端末・自端末の電力やハードウエア資源を消費することがないように構成されている。さらに、この値をユーザ設定により変更できるようにしておけば、(1)接続を確立するまでに多少時間がかかったとしも、どうしても通信を行いたい場合と、(2)接続が確立するとしても長時間がかかるのであれば、あきらめたい場合とを、ユーザ自身が設定により使い分けることができる。さらに、ユーザが設定できる値には上限を設けておくことで、特定のユーザの通信のために他の携帯電話の電力やハードウエア資源が大量に消費されることを避けることができる。
【0046】
本実施例1では、MUSIC法というスーパーレゾリューション法を用いることにより、電波到来方向の高精度な推定を実現している。仮に、電波到来方向推定アルゴリズムとしてビームフォーミング法を用いたとすると、計算量が少なくて済むという利点がある。
【0047】
本実施例1では、CDMA方式に基づいた通信を行っている。CDMA方式に代表されるようなスペクトラム拡散方式に基づいた通信は秘話性が高いため、中継端末から通信内容が漏洩する懸念がなく、高いセキュリティが保たれるという効果がある。スペクトラム拡散方式でなくとも、通信を暗号化することによって、同様に高いセキュリティが保たれる。
【0048】
本実施例1において、他端末に通信の中継を要求する機能の有効/無効を選択できるようにしておけば、通信エリア外からも通信できるというメリットと、通信の中継要求を受け入れた端末から通信内容が漏洩するリスクがあるというデメリットをユーザ自身が計りに掛け、選択できるという利点がある。さらに、他端末から中継を要求された場合にその要求を受け入れるか/否かを選択できるようにしておけば、通信の中継を要求される端末にとっては、自端末とは全く関係のない通信のために、自身の電力やCPUパワーなどのハードウエア資源を提供しなければならないというデメリットを回避することができる。さらに、他端末への通信の中継要求機能と他端末からの中継要求受け入れ機能とが「共に有効」または「共に無効」の選択しかできないようにしておけば、特定の端末が、他端末の通信の中継という義務を果たさず、自らの通信の中継を他端末にさせるという権利ばかり享受することを回避することができる。
【0049】
また、本実施例1において、ユーザ設定に関わらず、災害時、および、110番などの緊急通話についてだけは、中継機能を常に有効とすることで、電波や通信システムの公共性というものを担保することができる。
【0050】
《実施例2》
実施例1では、ユーザが通信開始の操作を行ってから(図3のS101)、通信エリア内か否かの判定をし(S104)、通信エリア外であった場合にはじめて、自端末の通信を中継してくれる他の携帯電話の捜索を開始している(S106)。この方式は、必要な場合にのみこの中継機能を用いるという点で、到来方向推定機能部14等が消費する電力を節約できる、という利点がある。しかし、その反面、この方式では、たとえ最終的には基地局との接続を確立できるとしても、ユーザが通信を開始しようとしてから接続が確立されるまで、長時間かかる怖れがある。
【0051】
そこで、本発明の他の実施例である実施例2の携帯電話では、実施例1と異なり、常に自端末が通信エリア内にあるか否かを監視し、通信エリア外にあると判断した場合には、ユーザが通信を開始しようとしなくとも、予め通信を中継してくれる他の携帯電話を捜索し、基地局との通信を確立しておくようになっている。これにより本実施例2では、いざユーザが通信を開始しようとした場合に、即座に通信を開始することができる。
【0052】
本実施例について図1、図2、および図6を用いて説明する。携帯電話65(図6)は通常のアンテナ23(図2)により受信した基地局61(図6)からの電波を、電界強度監視部12(図1)を用いて常に監視する。電界強度が弱くなった場合、または、完全に通信エリア外になった場合(例えば携帯電話61(図6))には、携帯電話22(図2)の背面に埋め込まれた小型のチップ型のアンテナ21(図2)からなるアレーアンテナ24(図2)により、近傍の携帯電話64(図6)から受信した信号電波について電波到来方向推定機能部14(図1)を用いて電波の到来方向を推定し、近傍の携帯電話64(図6)の方向を見積もる。そして、接続確立部16(図1)を用いてその携帯電話64(図6)との間に接続を確立し、その端末が同様に通信エリアの外の場合には、その携帯電話64(図6)で同様の処理を行う。最終的に、基地局61(図6)の通信エリア62(図6)内の携帯電話63(図6)に辿り着くことができれば、通信エリア外の携帯電話65(図6)でも、通信エリア62(図6)内の携帯電話63(図6)を経由して、基地局61(図6)との接続を確立することができ、通信が可能となる。
【0053】
本実施例2の携帯電話での処理で、実施例1の携帯電話で行われる処理(図3)と異なるのは、ユーザによる通信開始操作があった場合だけでなく、常にこの図3に示された処理を行っておくことである。
【0054】
本実施例2では、ユーザの通信開始要求の有無にかかわらず、自端末が通信エリア外にあると判断した場合には、中継を要求できる他の端末を捜索し、接続を確立しておくことにより、いざユーザが通信を開始しようとした場合に、ユーザを待たせず、即座に通信を開始することができる。
【0055】
《実施例3》
実施例1の携帯電話では、自端末がおおもととなる場合(図3)、および、他の携帯電話から中継を要求された場合(図4)のいずれの場合であっても、近傍に複数の携帯電話を発見できたときには、それらの中から自端末に最も強い電界強度で電波を届けている携帯電話を選んで、その携帯電話と接続を確立し(S109およびS211)、その携帯電話に中継を要求している(S110およびS212)。しかしながら、こういった中継端末捜索アルゴリズムを用いた場合、自端末に最も強い電界強度で電波を届けている携帯電話が、必ずしも基地局に物理的に近いとは限らない。したがって、最終的には通信可能となったとしても、図3や図4に示した処理がなかなか収束せず通信開始まで時間がかかる、無駄に電力やハードウエア資源を消費してしまうなどの怖れがある。また、中継に関与する最大端末数nの値にもよるが、本来うまく経路を選べば基地局に辿り着けるはずであるにも関わらず、実際にはどの基地局にも辿り着けず通信不可となる怖れがある。
【0056】
そこで、本発明の他の実施例である実施例3の携帯電話は、近傍に複数の携帯電話を発見できたときには、本実施例のアレーアンテナはアダプティブ機能を有しているため、基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している携帯電話を選んでアレーアンテナの指向性を向け、その携帯電話と接続を確立し(S109およびS211)、その携帯電話に中継を要求する(S110およびS212)。
【0057】
本実施例3の携帯電話での処理で、実施例1の携帯電話で行われる処理と異なるのは、複数の携帯電話を発見できたときに、中継を要求するために接続を確立する携帯電話として(S109およびS211)、自端末に最も強い電界強度で電波を届けている携帯電話ではなく、基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している携帯電話を選ぶことである。このためには、まず近傍に発見した複数の携帯電話の一部または全部との接続をそれぞれ一旦確立し、各携帯電話にそれぞれがどの程度の強度で基地局からの電波を受信しているか問い合わせる。この問い合わせに対する各携帯電話からの回答を参照して、それらの中で、基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している携帯電話を選択すればよい。
【0058】
基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している携帯電話は基地局からの物理的な距離が近い可能性が高いので、こうした中継端末の選び方をおおもとの携帯電話と中継端末とで繰り返すことによって、徐々に基地局に近づいて行くことができ、最終的には基地局に辿り着ける確率が高い。
【0059】
《実施例4》
また、実施例1では、中継に関与する最大端末数nの範囲内で、基地局に辿り着けなかった場合、そこで通信不可としている。それに対し、本発明の他の実施例である実施例4の携帯電話では、近傍に複数の携帯電話を発見できているときには、そこで通信不可とはせず、それらの中から自端末に2番目・3番目に強い電界強度で電波を届けている携帯電話を順次選んで、その携帯電話と接続を確立し(S109およびS211)、その携帯電話に中継を要求する(S110およびS212)。これにより、自端末に最も強い電界強度で電波を届けている携帯電話の先が袋小路になっていた場合にも、最終的には基地局にたどり着くことができる可能性が生じる。
【0060】
ここで何番目に電界強度が強い携帯電話まで試行するかは、予め設定されていることが望ましい。これにより、混雑時など近傍に無数の携帯電話が存在する場合に、無限に探索を繰り返してしまうことが防止できる。この何番目に電界強度が強い携帯電話まで試行するかの限界はユーザ設定により変更できることが望ましい。
【0061】
本実施例4では、自端末に届く電界強度最も強い端末を選ぶことにより基地局まで辿り着けなった場合には、自端末に届く電界強度が2番目・3番目である端末への中継要求を試行することにより、本来うまく経路を選べば基地局に辿り着けるはずであるにも関わらず、実際にはどの基地局にも辿り着けず通信不可となるという事態を回避している。なお、本実施例では、アダプティブアレーアンテナを採用しているため、自端末に届く電界強度が最も強い中継端末だけでなく、2番目・3番目に強い端末を選択した場合であっても、確実に接続を確立することができる。
【0062】
《実施例5》
実施例1では、通信エリア外にある携帯電話54(図5)が、近傍の携帯電話53(図5)に中継を要求して、最終的に、基地局51(図5)との接続を確立している。これに対し、本実施例5では、通信エリア内にある携帯電話53(図5)が、予め近傍かつ通信エリア外の携帯電話54(図5)を捜索して基地局51(図5)との中継を申し出ることにより、通信エリア外にある携帯電話54(図5)基地局51(図5)との間の接続を確立しておく。したがって、当該通信エリア外の携帯電話54(図5)のユーザが通信を開始しようとした際に、直ちに通信を行うことができる。
【0063】
このように、本実施例5では、通信エリア外にある携帯電話54(図5)が自らの通信を中継してくれる端末を効率的に発見することができる。また、当該通信エリア外の携帯電話54(図5)が通信を開始しようとした際に、直ちに通信を行うことができる。
【0064】
これまで述べた実施形態では、本発明を携帯電話に適用した実施例を述べたが、本発明の適用はこれに限られるものではない。本発明は、携帯電話だけでなく、移動電話・自動車電話・携帯端末・移動端末・モバイル端末などから構成される移動体通信システムであればどのような名称・形態のものであっても、適用することができる。
【0065】
近傍の端末を複数発見した場合に、それらの中から適当な一つを選択する判断基準としては、上記実施形態に述べた2種類(自端末に最も強い電界強度で電波を届けている端末を選ぶ、および、基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している端末を選ぶ)に限られるものではない。例えば、近傍の各端末から自端末に届く電波の電界強度と、近傍の各端末が受信している基地局からの電波の電界強度とから、ある評価関数に基づいて、中継に関与する端末数が比較的少なく、かつ、基地局との間に確立した接続が比較的確実であると推測されるものを選ぶ、ということもできる。
【0066】
アレーアンテナを構成する各素子は、実施例1では方形状に配置したが(図2)、その他、円状・直線状など様々な配置が可能である。
【0067】
実施例1では電波到来方向を推定するためのアルゴリズムとして、MUSIC法を採用したが、この他、各種の手法を用いることができる。例えば、現在は、MUSIC法に較正処理を付加したアルゴリズムが開発されている(例えば、新井隆宏、他3名、「既知の波源を用いたスーパレゾリューションアレー校正法について」、電子情報通信学会論文誌(B), 2003年3月, vol. J86-B, no. 3, p. 527-535)。こういった手法を用いることにより、アレーアンテナの各素子間にカップリングや特性誤差などが存在する現実のアンテナにおいても、さらに高精度かつ確実な推定をすることが可能となる。
【0068】
実施例1ではスペクトラム拡散方式としてCDMA方式を採用したが、他にもW-CDMA方式・CDMA2000方式などを支障なく採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明を実施した例である移動端末の構成を表す図である。
【図2】本発明を実施した例である移動端末のアレーアンテナを示す図である。小型チップアンテナが円状に配置されている。
【図3】本発明を実施した例である移動端末が通信を開始する際に行う処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明を実施した例である移動端末が中継を要求された場合に行う処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明を実施した例である移動体通信システムにおいて、一つの端末が中継するだけで基地局まで辿り着くことができた場合の移動端末および基地局の通信の様子を示す概念図である。
【図6】本発明を実施した例である移動体通信システムにおいて、二つの端末が中継して基地局まで辿り着くことができた場合の移動端末および基地局の通信の様子を示す概念図である。
【図7】従来技術による移動体通信システムの通信の様子を示す概念図である。
【符号の説明】
【0070】
11 電波受信部1 (通常のアンテナ)
12 電界強度監視部
13 電波受信部2 (アレーアンテナ)
14 到来方向推定機能部
15 端末捜索部
16 接続確立部
17 中継端末決定部
21 小型チップアンテナ
22 携帯電話(背面から見たところ)
23 通常のアンテナ
24 アレーアンテナ
51 基地局
52 基地局の通信エリア
53 基地局の通信エリア内の携帯電話
54 通信エリア外の携帯電話
61 基地局
62 基地局の通信エリア
63 基地局の通信エリア内の携帯電話
64 通信エリア外の携帯電話
65 通信エリア外の携帯電話
71 基地局A
72 基地局Aの通信エリア
73 基地局Aの通信エリア内の携帯電話
74 基地局B
75 基地局Bの通信エリア
76 基地局Bの通信エリア内の携帯電話
77 通信エリア外の携帯電話
78 通信エリア外の携帯電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を有するアンテナを搭載し、かつ、
前記アンテナを用いて一または二以上の近傍の端末から電波が到来する方向を推定する機能と、
推定された電波到来方向の中から一の所望の端末の方向に前記アンテナの感度が極大になる方向を向ける機能と、
これにより前記所望の端末との接続を確立する機能と、を少なくとも含む、
他端末への通信中継要求機能を有することを特徴とする、移動端末。
【請求項2】
請求項1記載の移動端末であって、前記アンテナが、アダプティブアレーアンテナであることを特徴とする、移動端末。
【請求項3】
請求項2記載の移動端末であって、前記アダプティブアレーアンテナが、チップアンテナから構成されていることを特徴とする、移動端末。
【請求項4】
請求項3記載の移動端末であって、前記チップアンテナが、移動端末に搭載できる程度に小型であることを特徴とする、移動端末。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4記載の移動端末であって、前記アダプティブアレーアンテナが、四素子から構成されていることを特徴とする、移動端末。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5記載の移動端末であって、前記アダプティブアレーアンテナが、移動端末に脱着可能であることを特徴とする、移動端末。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6記載の移動端末であって、前記電波到来方向の推定を、通信要求が発生してから開始することを特徴とする、移動端末。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6記載の移動端末であって、自端末がいずれの基地局の通信エリア内にもないと判断したときには、通信要求の有無に関わらず、前記電波到来方向の推定を開始することを特徴とする、移動端末。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8記載の移動端末であって、前記近傍の端末を複数発見した場合には、それらの中から自端末に最も強い電界強度で電波を届けている端末を前記所望の端末として選択することを特徴とする、移動端末。
【請求項10】
請求項9記載の移動端末であって、前記近傍の端末を複数発見した場合に、それらの中から自端末に最も強い電界強度で電波を届けている端末を選択した結果、いずれの基地局との接続も確立できなかったときには、電界強度の順に2番目以降所定の順位までの端末を順次選ぶことを特徴とする、移動端末。
【請求項11】
請求項1ないし請求項8記載の移動端末であって、前記近傍の端末を複数発見した場合には、それらの中から基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している端末を選択することを特徴とする、移動端末。
【請求項12】
請求項11記載の移動端末であって、前記近傍の端末を複数発見した場合に、それらの中から基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している端末を選択した結果、いずれの基地局との接続も確立できなかったときには、基地局からの受信電界強度の順に2番目以降所定の順位までの端末を順次選んで行くことを特徴とする、移動端末。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12記載の移動端末であって、通信の中継に関与する最大端末数が予め設定されていることを特徴とする、移動端末。
【請求項14】
請求項13記載の移動端末であって、前記最大端末数が変更可能であることを特徴とする、移動端末。
【請求項15】
請求項14記載の移動端末であって、前記最大端末数に、上限が設けられていることを特徴とする、移動端末。
【請求項16】
請求項10または請求項12記載の移動端末であって、前記所定の順位が変更可能であることを特徴とする、移動端末。
【請求項17】
請求項16記載の移動端末であって、前記所定の順位に、上限が設けられていることを特徴とする、移動端末。
【請求項18】
請求項1ないし請求項8記載の移動端末であって、自端末がいずれかの基地局の通信エリア内にあると判断したときには、自端末の近傍であって、かつ、いずれの基地局の通信エリア内にもない移動端末を捜索して、自端末が中継することを申し出ることを特徴とする、移動端末。
【請求項19】
請求項1ないし請求項18記載の移動端末であって、前記電波到来方向の推定に、ビームフォーミング法を用いることを特徴とする、移動端末。
【請求項20】
請求項1ないし請求項18記載の移動端末であって、前記電波到来方向の推定に、スーパーレゾリューション法を用いることを特徴とする、移動端末。
【請求項21】
請求項20記載の移動端末であって、前記電波到来方向の推定に、Multiple Signal Classification (MUSIC)法を用いることを特徴とする、移動端末。
【請求項22】
請求項1ないし請求項21記載の移動端末であって、通信方式としてスペクトラム拡散方式を用いることを特徴とする、移動端末。
【請求項23】
請求項22記載の移動端末であって、通信方式としてCode Division Multiple Access (CDMA)方式、または、Wideband CDMA (W-CDMA)方式、または、CDMA2000方式を用いることを特徴とする、移動端末。
【請求項24】
請求項1ないし請求項23記載の移動端末であって、通信内容が暗号化されていることを特徴とする、移動端末。
【請求項25】
請求項1ないし請求項24記載の移動端末であって、前記移動端末はさらに、前記他端末への通信中継要求機能の有効/無効の切り替えが可能であることを特徴とする、移動端末。
【請求項26】
請求項1ないし請求項24記載の移動端末であって、前記移動端末はさらに、他端末からの前記通信中継要求の受け入れの許否を設定可能であることを特徴とする、移動端末。
【請求項27】
請求項25または請求項26記載の移動端末であって、他端末からの前記通信中継要求の受け入れが許可されているときのみ、前記他端末への通信中継要求機能を有効にできることを特徴とする、移動端末。
【請求項28】
請求項25ないし請求項27記載の移動端末であって、災害時には、他端末への前記通信中継要求機能が常に有効となることを特徴とする、移動端末。
【請求項29】
請求項25ないし請求項27記載の移動端末であって、災害時には、他端末からの前記通信中継要求を常に受け入れることを特徴とする、移動端末。
【請求項30】
請求項25ないし請求項27記載の移動端末であって、緊急通話時には、他端末への前記通信中継要求機能が常に有効となることを特徴とする、移動端末。
【請求項31】
請求項25ないし請求項27記載の移動端末であって、他端末からの緊急通話の通信中継要求については、常にそれを受け入れることを特徴とする、移動端末。
【請求項32】
基地局と複数の移動端末を含む移動体通信システムであって、
前記複数の移動端末は、請求項1ないし請求項30記載のいずれかの請求項に記載された移動端末を含むことを特徴とする移動体通信システム。
【請求項33】
指向性を有するアンテナを用いて一または二以上の近傍の端末からの電波到来方向を推定する工程と、
推定された電波到来方向の中から一の所望の端末の方向に前記アンテナの感度が極大になる方向を向ける工程と、
これにより前記所望の端末との接続を確立する工程と、
前記所望の端末への通信中継を要求する工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項34】
請求項33記載の移動体通信方法であって、前記アンテナが、アダプティブアレーアンテナであることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項35】
請求項34記載の移動体通信方法であって、前記アダプティブアレーアンテナが、チップアンテナから構成されていることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項36】
請求項35記載の移動体通信方法であって、前記チップアンテナが、移動端末に搭載できる程度に小型であることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項37】
請求項34ないし請求項36記載の移動体通信方法であって、前記アダプティブアレーアンテナが、四素子から構成されていることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項38】
請求項34ないし請求項37記載の移動体通信方法であって、前記アダプティブアレーアンテナが、移動端末に脱着可能であることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項39】
請求項33ないし請求項38記載の移動体通信方法であって、通信要求が発生してから、前記電波到来方向の推定工程を行うことを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項40】
請求項33ないし請求項38記載の移動体通信方法であって、自端末がいずれの基地局の通信エリア内にもないと判断したときには、通信要求の有無に関わらず、前記電波到来方向の推定工程を開始することを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項41】
請求項33ないし請求項40記載の移動体通信方法であって、前記移動体通信方法は、さらに、前記近傍の端末を複数発見した場合には、それらの中から自端末に最も強い電界強度で電波を届けている端末を前記所望の端末として選択する、という工程を含むことを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項42】
請求項41記載の移動体通信方法であって、前記近傍の端末を複数発見した場合に、それらの中から自端末に最も強い電界強度で電波を届けている端末を選択した結果、いずれの基地局との接続も確立できなかったときには、電界強度の順に2番目以降所定の順位までの端末を順次選ぶ、という工程を含むことを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項43】
請求項33ないし請求項40記載の移動体通信方法であって、前記近傍の端末を複数発見した場合には、それらの中から基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している端末を選択する、という工程を含むことを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項44】
請求項43記載の移動体通信方法であって、前記近傍の端末を複数発見した場合に、それらの中から基地局からの電波を最も強い電界強度で受信している端末を選択した結果、いずれの基地局との接続も確立できなかったときには、基地局からの受信電界強度の順に2番目以降所定の順位までの端末を順次選んで行くという工程を含むことを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項45】
請求項33ないし請求項44記載の移動体通信方法であって、通信の中継に関与する最大端末数が予め設定されていることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項46】
請求項45記載の移動体通信方法であって、前記最大端末数が変更可能であることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項47】
請求項46記載の移動体通信方法であって、前記最大端末数に、上限が設けられていることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項48】
請求項42または請求項44記載の移動体通信方法であって、前記所定の順位が変更可能であることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項49】
請求項48記載の移動体通信方法であって、前記所定の順位に、上限が設けられていることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項50】
請求項33ないし請求項40記載の移動体通信方法であって、自端末がいずれかの基地局の通信エリア内にあると判断したときには、自端末の近傍であって、かつ、いずれの基地局の通信エリア内にもない移動端末を捜索して、自端末が中継することを申し出ることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項51】
請求項33ないし請求項50記載の移動体通信方法であって、前記電波到来方向の推定工程に、ビームフォーミング法を用いることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項52】
請求項33ないし請求項50記載の移動体通信方法であって、前記電波到来方向の推定工程に、スーパーレゾリューション法を用いることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項53】
請求項52記載の移動体通信方法であって、前記電波到来方向の推定工程に、Multiple Signal Classification (MUSIC)法を用いることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項54】
請求項33ないし請求項53記載の移動体通信方法であって、通信方式としてスペクトラム拡散方式を用いることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項55】
請求項54記載の移動体通信方法であって、通信方式としてCode Division Multiple Access (CDMA)方式、または、Wideband CDMA (W-CDMA)方式、または、CDMA2000方式を用いることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項56】
請求項33ないし請求項55記載の移動体通信方法であって、通信内容が暗号化されていることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項57】
請求項33ないし請求項56記載の移動体通信方法であって、前記移動体通信方法はさらに、他端末への通信中継要求機能の有効/無効の切り替えが可能であることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項58】
請求項33ないし請求項56記載の移動体通信方法であって、前記移動体通信方法はさらに、他端末からの前記通信中継要求を受け入れることの許否を設定可能であることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項59】
請求項57または請求項58記載の移動体通信方法であって、他端末からの前記通信中継要求を受け入れることが許可されているときのみ、他端末への通信中継要求機能を有効としうることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項60】
請求項57ないし請求項59記載の移動体通信方法であって、災害時には、他端末への前記通信中継要求機能が常に有効となることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項61】
請求項57ないし請求項59記載の移動体通信方法であって、災害時には、他端末からの前記通信中継要求を常に受け入れることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項62】
請求項57ないし請求項59記載の移動体通信方法であって、緊急通話時には、他端末への前記通信中継要求機能が常に有効となることを特徴とする、移動体通信方法。
【請求項63】
請求項57ないし請求項59記載の移動体通信方法であって、他端末からの緊急通話の通信中継要求については、常にそれを受け入れることを特徴とする、移動体通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−166321(P2006−166321A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358191(P2004−358191)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】