説明

移動体通信端末の試験装置及び試験方法

【課題】試験のための多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握できる。
【解決手段】試験装置は、試験対象としての移動体通信端末が正常に通信動作するか否かを試験するものであり、移動体通信端末が多重通信を行ったときの多重通信関連情報として、少なくとも移動体通信端末のアドレスと移動体通信端末の通信相手を識別する情報を表示部6の多重通信関連表示部6dに一覧表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規に開発される携帯電話などの移動体通信端末が正常に通信動作するか否かの通信試験を行う移動体通信端末の試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話などの移動体通信端末を新規に開発する場合には、この移動体通信端末が接続先(通信先)との間で正常に通信動作するか否かを確認するための通信試験が必要になる。
【0003】
この通信試験を実行する場合には、試験対象となる移動体通信端末を実際の基地局を介して接続先(通信先)に接続することができないため、実際の基地局と同様の機能を有する擬似基地局装置を用いて移動体通信端末の接続先との間の通信動作を確認するようにしている。
【0004】
この種の擬似基地局装置は、移動体通信端末と接続先(通信先)又は測定器との間に通信回線が形成されるまでの間に、移動体通信端末との間で交わされる通信の手順及び通信の遷移状態、移動体通信端末と接続先(通信先)又は測定器との間に通信回線が形成されてから通信回線が切断され元の状態に至るまでの間に、移動体通信端末と接続先(通信先)又は測定器及び擬似基地局装置との間で交わされる通信の手順及び通信の遷移状態をその都度検出し、表示器にシーケンスとして表示している。例えば、下記特許文献1には、シーケンス状態や接続状態を表示することにより、簡易に移動体通信端末の通信試験を行うことができる擬似基地局装置が開示されている。
【0005】
このように、試験者は、上述した擬似基地局装置を用いることにより、試験対象の移動体通信端末が一連の通信試験のうち、現在どの通信の手順及び通信の遷移状態にあるかを表示内容から把握できる。その結果、異常発生時における異常原因を短時間で究明することができる。
【0006】
ところで、携帯電話などに用いられる移動体通信方式は、従来の通信方式であるGMS(Global System for Mobile Communication)やW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)に対し、次世代のパケット交換通信方式であるLTE(Long Term Evolution )が登場してきている。そして、移動体通信では、パケットによるデータ通信が急激に増加している。
【0007】
パケット通信では通信の多重が可能であり、例えば、Webページの閲覧、メールの送受信、パケット通信による通話(VoIP:Voice over Internet ProtocolあるいはVoLTE:Voice over LTE)などの複数の通信を多重することができる。このため、移動体通信端末がこのような多重通信を正常に行えるか否かを試験するための試験装置が求められている。
【0008】
そして、上記多重通信の試験を行う場合には、試験のための多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握することが、試験者にとって重要な要素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−50567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される従来の擬似基地局装置では、試験のための多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握することができなかった。
【0011】
このため、試験者は、試験のための多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握するべく、シナリオと呼ばれる試験手順を参照したり、試験装置の設定を参照していたが、労力と手間がかかるという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、試験のための多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握できる移動体通信端末の試験装置及び試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された移動体通信端末の試験装置は、試験対象としての移動体通信端末11が正常に通信動作するか否かを試験する移動体通信端末の試験装置1において、
前記移動体通信端末が多重通信を行ったときの少なくとも前記移動体通信端末のアドレスと該移動体通信端末の通信相手を識別する情報とを含む多重通信関連情報を表示部6に一覧表示する表示制御部5を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載された移動体通信端末の試験装置は、請求項1の移動体通信端末の試験装置において、
前記表示制御部5は、前記移動体通信端末11と仮想接続先12との論理的な接続によるサービス毎のパケットデータ通信の従属関係を前記表示部6に識別表示することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載された移動体通信端末の試験装置は、請求項2の移動体通信端末の試験装置において、
前記移動体通信端末11からのサービス毎のパケットに含まれる情報に基づいて前記従属関係を決定する表示情報決定部13を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載された移動体通信端末の試験方法は、試験対象としての移動体通信端末11が正常に通信動作するか否かを試験する移動体通信端末の試験方法において、
前記移動体通信端末が多重通信を行ったときの少なくとも前記移動体通信端末のアドレスと該移動体通信端末の通信相手を識別する情報とを含む多重通信関連情報を表示部6に一覧表示するステップを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載された移動体通信端末の試験方法は、請求項4の移動体通信端末の試験方法において、
前記移動体通信端末11と仮想接続先12との論理的な接続によるサービス毎のパケットデータ通信の従属関係を識別表示するステップを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載された移動体通信端末の試験方法は、請求項5の移動体通信端末の試験方法において、
前記移動体通信端末11からのサービス毎のパケットに含まれる情報に基づいて前記従属関係を決定するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握でき、端末の多重通信の試験を容易に行うことができる。
【0020】
また、多重通信の従属関係を直接示す情報が無い場合であっても、多重通信の従属関係を判断して試験者に識別可能に表示し、多重通信の従属関係を認識した上で端末の多重通信の試験を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る移動体通信端末の試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a) LTEにより移動体通信端末が発信する場合の従属関係情報の一例を示す図である。 (b) GSM/W−CDMAにより移動体通信端末が発信する場合の従属関係情報の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る移動体通信端末の試験装置及び試験方法による具体的な表示例を示す図である。
【図4】本発明に係る移動体通信端末の試験装置及び試験方法において、試験装置が発信する場合の表示処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る移動体通信端末の試験装置及び試験方法において、移動体通信端末が発信する場合の表示処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る移動体通信端末の試験装置及び試験方法において、移動体通信端末が発信する場合の従属関係情報の決定手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれる。
【0023】
図1は本発明に係る移動体通信端末の試験装置の概略構成を示すブロック図、図2(a)はLTEにより移動体通信端末が発信する場合の従属関係情報の一例を示す図、図2(b)はGSM/W−CDMAにより移動体通信端末が発信する場合の従属関係情報の一例を示す図、図3は同試験装置及び試験方法による具体的な表示例を示す図、図4は同試験装置及び試験方法において、試験装置が発信する場合の表示処理手順の一例を示すフローチャート、図5は同試験装置及び試験方法において、移動体通信端末が発信する場合の表示処理手順の一例を示すフローチャート、図6は同試験装置及び試験方法において、移動体通信端末が発信する場合の従属関係情報の決定手順の一例を示すフローチャートである。
【0024】
本発明に係る試験装置及び試験方法は、新規に開発される携帯電話などの移動体通信端末との間で所定の通信規格(例えばLTE、GSM、GSM/GPRS、W−CDMA、CDMA2000、TD−SCDMA、WiMAX、Wi−Fiなど)に基づく信号(RF信号)を送受信することにより基地局を模擬して移動体通信端末の通信動作を試験するものであり、特に、多重通信の従属関係を示す情報を含め、多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握するための表示機能を有している。
【0025】
本例の試験装置1は、上記表示機能を実現するための構成要素として、図1に示すように、操作部2、送受信部3、擬似基地局制御部4、表示制御部5、表示部6を備えて概略構成される。以下、各構成要素について説明する。
【0026】
操作部2は、例えば試験装置1の筐体前面に設けられるスイッチやボタンなどの操作パネルで構成される。操作部2は、試験対象となる移動体通信端末(以下、端末と略称する)11の通信動作試験の開始や停止の指示、表示部6(後述するシーケンス表示部6a、接続状態表示部6b、接続先表示部6c、多重通信関連表示部6d)に所望の表示を行うために必要な各種情報の設定を含め、端末11の通信動作試験に必要な各種設定を選択的に行っている。
【0027】
送受信部3は、擬似基地局制御部4の制御により、仮想接続先12からの信号(RF信号)を試験対象の端末11に送信し、端末11から受信した信号(RF信号)を仮想接続先12に入力している。
【0028】
仮想接続先12は、試験装置1の内部に組み込まれ、擬似基地局制御部4の制御によって端末11と接続可能な相手先であり、図1に示すように、例えば仮想通話先12a、仮想サーバ12b、仮想TV電話12cなどからなる。
【0029】
擬似基地局制御部4は、所定のシナリオを実行して端末11の通信動作試験を行うべく、操作部2の操作情報に基づいて送受信部3、表示制御部5、表示部6の各部を統括制御している。
【0030】
なお、シナリオは、基地局を模擬する試験装置1で予め決められた通信規格(例えばLTE規格、GSM規格、GSM/GPRS規格、W−CDMA規格、CDMA2000規格、TD−SCDMA規格、WiMAX規格、Wi−Fi規格など)に基づく通信シーケンスをシミュレーションするための一連の動作の試験手順を記述したものである。
【0031】
また、擬似基地局制御部4は、端末11が多重通信を行ったときに、操作部2からの操作情報(設定情報を含む)や端末11からの通知情報に基づいて後述する多重通信関連表示部6dに表示する各種表示情報を決定する表示情報決定部13を有している。
【0032】
さらに説明すると、表示情報決定部13は、図1に示すように、Priority決定部13a、Status決定部13b、PDN/PDP−Type決定部13c、IP(Internet Protocol )−version決定部13d、QCI決定部13e、EBI(EPS Bearer Identifier )/NSAPI(Network Service Access Point Identifier )決定部13f、Linked−EBI/Linked−NSAPI決定部13g、UE−Address決定部13h、DNS(Domain Name System)−Address決定部13i、Access−Point−Name決定部13jからなる。
【0033】
Priority決定部13aは、試験装置1の内部において、PDN(Packet Data Network )やPDP(Packet Data Protocol)を区別するための番号であるPriorityを決定している。このPriorityは、端末11が発信する場合、端末11からの発信を受けて、試験装置1が自動的に付加する。また、試験装置1が発信する場合には、試験者が操作部2を操作して事前に設定する。
【0034】
なお、PDNやPDPは、パケットデータ通信網を介しての端末(以下、UEとも言う)11と仮想接続先12との間のサービス毎のパケットデータ通信による論理的な接続であり、LTEではPDNと呼称し、GSM/W−CDMAではPDPと呼称する。
【0035】
また、マルチPDP(マルチPDN)は、PDP(PDN)が複数である、つまり多重接続であることを意味しており、大きく分けて、以下に示す(イ),(ロ)の2種類があり、混在する場合も有る。
【0036】
(イ)全く別のサービスによるPDPが多重されている。この場合、各通信先はそれぞれ別のIPアドレスになり、UEは異なるIPアドレスの通信先と多重接続することになる。それぞれのPDP−Typeは、Primary(LTEでは、Default)になる。なお、通信先だけでなく、1つのUEが複数のIPアドレスで複数の通信を行う場合もある。この場合も、マルチPDPとなる。
【0037】
(ロ)互いに関連するサービスによるPDPが多重されている。例えば、VoIP(Voice over Internet Protocol)で音声データを通信する場合、UEはSIP(Session Intiation Protocol)サーバと制御情報(ログインや着信通知など)をやりとりするとともに、音声データをやりとりする。この場合、制御情報と音声データとは別のPDPになり、マルチPDPとなる。ここで、それぞれのPDP−Typeは、制御情報がPrimary(LTEでは、Default)になり、音声データがSecondary(LTEでは、Dedicated)になる。
【0038】
なお、VoIPは、音声を各種符号化方式で圧縮しパケットに変換した上でIPネットワークでリアルタイム伝送する技術である。LTEは、パケット交換通信方式なので、VoIPにより通話を行う。
【0039】
また、SIPは、例えば電話やテレビ電話のような双方向のリアルタイム通信において、セッションの開始、変更、終了などの操作を行うためのセッション制御プロトコルである。VoIPに用いられているSIPサーバは、UE間の通信の仲介を行う。
【0040】
Status決定部13bは、接続状態を表すStatusを決定している。後述する多重通信関連表示部6cでは、Status決定部13bで決定されたStatusに基づく表示制御部5の制御により、接続状態(PDNやPDPが登録されている状態)と切断状態(PDNやPDPが未登録である状態)の2つの状態が、図3に示すように、それぞれ対応したアイコンにより区別して表示される。この表示は、試験装置1が状態を判断して自動的に切り替えが行われる。
【0041】
ここで、接続状態とはIPアドレスが割り振られている状態であり、切断状態はIPアドレスが割り振られていない状態である。単に通信していないからという切断状態ではない。なお、実際の動作においても、通信中にトンネルに入って瞬間的に無線通信が切断されてもPDP登録は維持され、無線通信が復旧したら通信が再開される。自発的な切断処理や、長時間のタイムアウトにより切断状態となることはある。
【0042】
PDN/PDP−Type決定部13cは、PDNの種別を表すPDN−TypeやPDPの種別を表すPDP−Typeを決定している。
【0043】
PDN−Typeは、DefaultとDedicatedとの2種類があり、PDP−Typeは、PrimaryとSecondaryとの2種類がある。
【0044】
さらにPDP−Typeを例にとって説明すると、Primaryは、IPアドレスを持つPDPであり、いわば親のPDPである。PrimaryのPDPは複数存在できる。
【0045】
また、Secondaryは、IPアドレスを持たないPDPであり、いわば子のPDPである。PrimaryのPDPは、単独で存在できるのに対し、SecondaryのPDPは、PrimaryのPDPに従属する関係になる。1つのPrimaryのPDPに、複数のSecondaryのPDPが従属することができる。なお、PDN−Typeでは、DefaultがPrimaryに相当し、DedicatedがSecondaryに相当する。
【0046】
PDN/PDP−Type決定部13cは、通信規格がLTEかGSM/W−CDMAかによってPDN−TypeやPDP−Typeの値の決定方法が異なる。
【0047】
すなわち、PDN/PDP−Type決定部13cは、通信規格がLTEであって、端末11が発信する場合は、端末11がPDN−Typeを決定して通知してくるので、その情報を表示制御部5に出力する。また、PDN/PDP−Type決定部13cは、通信規格がLTEであって、試験装置1が発信する場合は、試験者が操作部2を操作してPDN−Typeを事前に設定する。なお、PDN−Typeは、試験装置1が自動設定することも可能である。
【0048】
PDN/PDP−Type決定部13cは、通信規格がGSM/W−CDMAであって、端末11が発信する場合は、端末11がPDP−Typeを決定して通知してくるので、その情報を表示制御部5に出力する。また、PDN/PDP−Type決定部13cは、通信規格がGSM/W−CDMAであって、試験装置1が発信する場合は、試験装置1からAccess−Point−Nameの通知に対応して、端末11がPDP−TypeとNSAPIを通知してくるので、その情報に基づいて決定する。
【0049】
そして、後述する多重通信関連表示部6dでは、PDN/PDP−Type決定部13cが決定したPDN−TypeやPDP−Typeに基づく表示制御部5の制御により、例えば図3に示す表示形態でDefault(Primary)とDedicated(Secondary)のいずれかを表示する。
【0050】
IP−version決定部13dは、IPの種別を表すIP−versionを決定している。さらに説明すると、IP−version決定部13dは、端末11が発信する場合、端末11がIP−versionを決定して通知してくるので、その情報を表示制御部5に出力する。これに対し、試験装置1が発信する場合は、試験者が操作部2を操作してIP−versionを事前に設定する。なお、試験装置1がIP−versionを自動設定することも可能である。
【0051】
そして、後述する多重通信関連表示部6dでは、IP−version決定部13dが決定したIP−versionに基づく表示制御部5の制御により、例えば図3に示す表示形態でIPv4,IPv6,IPv4v6のいずれかを表示する。
【0052】
なお、IPv4v6はデュアルスタックの意味である。デュアルスタックとは、IPv4とIPv6とを共存させて用いる技術であり、1台の試験装置1がIPv4とIPv6のアドレスをそれぞれ持って両プロトコルを混在させることができる。
【0053】
QCI決定部13eは、サービス内容と対応付けされたサービスのクラスを示す識別符号であるQCIを決定している。このQCIは、試験装置1の擬似基地局制御部4が決定する。従って、端末11が発信する場合でも試験装置1が発信する場合でも、試験者が操作部2を操作して事前に設定する。なお、試験装置1がQCIを自動設定することも可能である。
【0054】
EBI/NSAPI決定部13fは、PDNやPDPに割り振られるIDで、PDNを識別する基本情報であるEBIやPDPを識別する基本情報であるNSAPIを決定している。EBI/NSAPIは、LTEではEBIと呼称し、GSM/W−CDMAではNSAPIと呼称する。
【0055】
EBI/NSAPI決定部13fは、通信規格がLTEかGSM/W−CDMAかによって値の決定方法が異なる。
【0056】
すなわち、EBI/NSAPI決定部13fは、通信規格がLTEであって、端末11が発信する場合は、端末11がEBIを決定して通知してくるので、その情報を表示制御部5に出力する。図2(a)の例では、通信規格LTEにおいて、端末11がPDN1(Default)のEBI「5」、PDN2(Dedicated)のEBI「6」を通知してくるので、これらの情報を表示制御部5に出力する。また、EBI/NSAPI決定部13fは、通信規格がLTEであって、試験装置1が発信する場合は、試験者が操作部2を操作して事前にEBIを設定する。なお、試験装置1がEBIを自動設定することも可能である。
【0057】
これに対し、EBI/NSAPI決定部13fは、通信規格がGSM/W−CDMAであって、端末11が発信する場合は、端末11がNSAPIを決定して通知してくるので、その情報を表示制御部5に出力する。図2(b)の例では、通信規格GSM/W−CDMAにおいて、端末11がPDN1(Primary)のNSAPI「5」、PDN2(Secondary)のNSAPI「6」を通知してくるので、これらの情報を表示制御部5に出力する。また、EBI/NSAPI決定部13fは、通信規格がGSM/W−CDMAであって、試験装置1が発信する場合は、試験者が操作部2を操作して事前にNSAPIを設定する。なお、試験装置1がNSAPIを自動設定することも可能である。
【0058】
Linked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gは、操作部2の操作による設定情報や端末11からのサービス毎のパケットに含まれる情報(通知情報)に基づいてLinked−EBI/Linked−NSAPIを決定している。Linked−EBI/Linked−NSAPIは、SecondaryのPDP(DedicatedのPDN)のみに割り振られ、どのPrimaryのPDP(DefaultのPDN)に所属するかの従属関係を示す従属関係識別情報である。
【0059】
Linked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gは、通信規格がLTEかGSM/W−CDMAかによってLinked−EBI/Linked−NSAPIの値の決定方法が異なる。
【0060】
さらに説明すると、Linked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gは、通信規格がLTEであって、端末11が発信する場合は、端末11がLinked−EBIを決定して通知してくるので、その情報を表示制御部5に出力する。図2(a)の例では、通信規格LTEにおいて、端末11がPDN2(Dedicated)のLinked−EBI「5」を通知してくるので、このLinked−EBI「5」を表示制御部5に出力する。また、通信規格がLTEであって、試験装置1が発信する場合は、試験者が操作部2を操作してLinked−EBIを事前に設定する。なお、試験装置1がLinked−EBIを自動設定することも可能である。
【0061】
これに対し、通信規格がGSM/W−CDMAであって、端末11が発信する場合は、先に、PrimaryのPDPを設定するための通知があり、その中にNSAPIとTI(Transaction Identifier:処理(処理群)を識別するための識別子)の値が含まれている。次に、SecondaryのPDPを設定するための通知があり、その中にLinked−TIの値が含まれている。ここで、PrimaryのPDP1のTIの値とSecondaryのPDP2のLinked−TIの値とが同じときは両者が親子関係にある。これを利用して、Linked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gは、端末11から通知されたSecondaryのPDPがどのPrimaryのPDPに従属するかを判断し、従属元のPrimaryのPDPのNSAPIの値を従属先のSecondaryのPDPのLinked−TIの値として決定する。図2(b)の例では、通信規格GSM/W−CDMAにおいて、PrimaryのPDP1のTIの値とSecondaryのPDP2のLinked−TIの値がともに「0」で同じ値なので、PrimaryのPDP1とSecondaryのPDP2とが親子関係にあると判断し、従属元のPrimaryのPDP1のNSAPIの値「5」を従属先のSecondaryのPDP2のLinked−NSAPIの値「5」として決定する。
【0062】
また、通信規格がGSM/W−CDMAであって、試験装置1が発信する場合は、試験者が操作部2を操作して事前にLinked−NSAPIを設定する。なお、試験装置1がLinked−NSAPIを自動設定することも可能である。
【0063】
なお、本例では、通信規格GSM/W−CDMAにおいて、通信規格LTEのLinked−EBIに対応するものをLinked−NSAPIと呼称している。
【0064】
そして、後述する多重通信関連表示部6dでは、Linked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gで決定されたLinked−EBIやLinked−NSAPIによる表示制御部5の制御により、例えば図3に示す表示形態で従属元のEBIやNSAPIの値が表示される。
【0065】
UE−Address決定部13hは、試験対象の端末11のIPアドレスであるUE−Addressを決定している。この端末11のIPアドレスは、試験装置1の擬似基地局制御部4が決定する。従って、端末11が発信する場合でも試験装置1が発信する場合でも、試験者が操作部2を操作して事前に設定する。なお、試験装置1が端末11のIPアドレスを自動設定することも可能である。
【0066】
DNS−Address決定部13iは、DNSサーバのアドレスであるDNS−Addressを決定している。このDNS−Addressは、試験者が操作部2を操作して事前に設定する。なお、DNS−Addressは、試験装置1が自動設定することも可能である。
【0067】
DNSサーバは、ドメイン名とIPアドレスとの対応づけを管理するサーバである。試験装置1は、内部に擬似ネットワーク機能を有しており、DNSサーバも擬似する。DNS−AddressのPrimary/Secondaryは、主系統と副系統の意味である(DNSサーバは通常2系統以上用意することになっている)。
【0068】
そして、後述する多重通信関連表示部6dでは、DNS−Address決定部13iで決定されたDNS−Addressによる表示制御部5の制御により、例えば図3に示す表示形態でDNSサーバのアドレスが表示される。
【0069】
Access−Point−Name決定部13jは、通信事業者のドメイン名であるAccess−Point−Nameを決定している。携帯電話のように特定の通信事業者と契約して通信を行う端末11は、その通信事業者のAccess−Pointを介して通信を行う。試験装置1は、内部に擬似ネットワーク機能を有しており、通信事業者のドメインも模擬する。
【0070】
Access−Point−Name決定部13jは、端末11が発信する場合、端末11がAccess−Point−Nameを決定して通知してくるので、その情報を表示制御部5に出力する。また、Access−Point−Name決定部13jは、試験装置1が発信する場合、試験者が操作部2を操作して事前にAccess−Point−Nameを設定する。
【0071】
なお、試験装置1がAccess−Point−Nameを自動設定することも可能である。実際には、端末開発者である試験者は、端末11がどのようなAccess−Point−Nameを通知してくるか知っているので、そのAccess−Point−Nameを試験装置1に設定しておく。
【0072】
表示制御部5は、設定情報に基づく擬似基地局制御部4からの制御信号により、例えば図3に示す表示形態で所望の表示を行うべく表示部6を制御している。
【0073】
表示部6は、液晶パネルなどの表示器で構成され、前述した特許文献1に開示されるシーケンス表示部6a、接続状態表示部6b、接続先表示部6cに加え、多重通信関連表示部6dを有している。
【0074】
シーケンス表示部6aは、試験装置1を介しての端末11と仮想接続先12との間のサービス毎のパケットデータ通信に関して、端末11と仮想接続先12との間の通信手順及び通信の遷移状態を示す複数のシーケンスを表示している。
【0075】
具体的に、シーケンス表示部6aは、図3に示すように、端末11の電源OFF状態を示す「Power Off(電源OFF)」シーケンス、端末11の位置登録解除状態を示す「Detach(位置登録解除)」シーケンス、端末11の位置登録状態を示す「(Registration(位置登録)」シーケンス、端末11の待ち受け状態を示す「Idle(待ち受け状態)」シーケンス、端末11の発信状態を示す「Origination(発信)」シーケンス、端末11の着信状態を示す「Termination(着信)」シーケンス、端末11の通信状態を示す「Communication(通信状態)」シーケンス、端末11からの切断状態を示す「UE(user equipment) Release(端末切断)」シーケンス、仮想接続先12からの切断状態を示す「NW(network ) Release(接続先切断)」シーケンスを複数のシーケンスとして表示している。
【0076】
これら一連のシーケンスは、表示制御部5の制御により、各シーケンス間で各通信手順及び通信状態の遷移方向を示す矢印を伴ってフローチャート状に表示される。その際、遷移状態に応じて表示状態が変化する。すなわち、該当するシーケンスが遷移状態となったときに、それまでの表示状態とは異なる表示状態、例えば表示色を変えたり、表示輝度を変えて該当するシーケンスを表示する。
【0077】
なお、図3において、シーケンス表示部6aにおける各シーケンス間の矢印は、各通信手順及び通信状態の遷移方向を示している。
【0078】
接続状態表示部6bは、端末11と試験装置1を介した仮想接続先12(仮想通話先12a、仮想サーバ12b、仮想TV電話12c)との接続状態を表示している。
【0079】
さらに説明すると、接続状態表示部6bは、表示制御部5の制御により、端末11、擬似基地局制御部4、仮想接続先12(仮想通話先12a、仮想サーバ12b、仮想TV電話12c)をそれぞれ図形化したアイコンとして表示するとともに、接続の有無に応じて表示状態を変化させ、擬似基地局制御部4に対する端末11、仮想接続先12(仮想通話先12a、仮想サーバ12b、仮想TV電話12c)それぞれの間の複数の接続線を図形化して表示する。すなわち、接続の有無に応じて該当する接続線の表示色を変えたり、表示輝度を変えて表示する。
【0080】
接続先表示部6cは、端末11が擬似基地局制御部4を介して接続される一つの仮想接続先12(仮想通話先12a、仮想サーバ12b、仮想TV電話12cの何れか)を図形化して表示している。
【0081】
なお、上述したシーケンス表示部6a、接続状態表示部6b、接続先表示部6dの詳細な説明については、特許文献1を参照されたい。
【0082】
多重通信関連表示部6dは、端末11が多重通信を行ったときに、擬似基地局制御部4を介しての表示制御部5の制御により、多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握するべく表示情報決定部13で決定された多重通信関連情報として、前述したPriority、Status、PDN/PDP−Type、IP−version、QCI、EBI/NSAPI、Linked−EBI/Linked−NSAPI、UE−Address、DNS−Address、Access−Point−Nameを例えば図3に示す表示形態の一覧表形式で表示している。
【0083】
次に、上記のように構成される試験装置1の表示処理動作について図4〜図6のフローチャートを参照しながら説明する。まずは、試験装置1が発信する場合の表示処理手順について図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0084】
試験装置1は、擬似基地局制御部4の制御により、送受信部3から端末11にパケットを発信すると(ST1)、表示部6に表示する情報のうち、操作部2の操作入力により試験装置1に予め設定されている情報を擬似基地局制御部4を介して表示制御部5が取得する(ST2)。続いて、試験装置1は、端末11が応答して発信したパケットを送受信部3で受信する(ST3)。その後、試験装置1は、表示部6に表示する情報のうち、端末11からのパケットに含まれる情報を擬似基地局制御部4を介して表示制御部5が取得する(ST4)。次に、試験装置1は、表示部6に表示する情報のうち、端末11からのパケットに含まれる情報に基づいて表示情報決定部13が決定した情報を擬似基地局制御部4を介して表示制御部5が取得する(ST5)。そして、表示部6は、表示制御部5が取得した情報を例えば図3に示す表示形態で表示する(ST6)。
【0085】
次に、端末11が発信する場合の表示処理手順について図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0086】
試験装置1は、擬似基地局制御部4の制御により、端末11が発信したパケットを送受信部3で受信すると(ST11)、表示部6に表示する情報のうち、端末11からのパケットに含まれる情報を擬似基地局制御部4を介して表示制御部5が取得する(ST12)。続いて、試験装置1は、表示部6に表示する情報のうち、試験装置1に予め設定されている情報を擬似基地局制御部4を介して表示制御部5が取得する(ST13)。次に、試験装置1は、表示部6に表示する情報のうち、端末11からのパケットに含まれる情報に基づいて表示情報決定部13が決定した情報を擬似基地局制御部4を介して表示制御部5が取得する(ST14)。そして、表示部6は、表示制御部5が取得した情報を例えば図3に示す表示形態で表示する(ST15)。
【0087】
次に、端末11が発信する場合のLinked−NSAPIの決定手順(従属関係を直接示す情報が無い場合)について図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0088】
試験装置1は、擬似基地局制御部4の制御により、端末11が発信したPrimaryのPDPのパケットを送受信部3で受信すると(ST21)、表示情報決定部13のLinked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gが受信パケットからNSAPIとTIの値を取得する(ST22)。続いて、試験装置1は、端末11が発信したSecondaryのPDPのパケットを送受信部3で受信すると(ST23)、表示情報決定部13のLinked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gが受信パケットからNSAPIとTIの値を取得する(ST24)。そして、表示情報決定部13のLinked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gは、Linked−TIの値と同じTIの値を持つPrimaryのPDPを探し、そのPDPのNSAPIの値を、当該SecondaryのPDPのLinked−NSAPIの値として決定する(ST25)。そして、表示情報決定部13のLinked−EBI/Linked−NSAPI決定部13gは、決定したLinked−NSAPIの値を表示制御部5へ送出する(ST26)。
【0089】
なお、本例の試験装置1による表示処理動作は上述した図4〜図6に示すフローチャートの処理手順に限定されるものではなく、その順序が入れ替わったり、手順の一部が省略される場合もある。
【0090】
このように、本発明に係る試験装置及び試験方法によれば、設定したPDPやPDNの情報とその状態を一覧表示するための多重通信関連表示部6dを新たに設けたので、多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を目視により把握することができる。しかも、多重通信の従属関係を示す情報も合わせて表示するので、多重通信の設定内容や試験中の多重通信の状態を把握でき、端末の多重通信の試験を容易に行うことができる。
【0091】
また、本発明に係る試験装置及び試験方法では、例えばGSMやW−CDMAのように多重通信の従属関係を直接示す情報が無い場合であっても、設定情報や端末からの通知情報により多重通信の従属関係を判断して試験者に識別可能に多重通信関連表示部6dに表示している。これにより、試験者は、多重通信の従属関係を認識した上で端末の多重通信の試験を容易に行うことができる。
【0092】
ところで、上述した実施の形態では、通信規格GSM/W−CDMA、LTEによる多重通信の例について説明したが、上記通信規格のみに限定されるものではない。例えばCDMA2000、TD−SCDMA、WiMAX、Wi−Fiなどの他の通信規格にも本発明の構成及び方法を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 試験装置
2 操作部
3 送受信部
4 擬似基地局制御部
5 表示制御部
6 表示部
6a シーケンス表示部
6b 接続状態表示部
6c 接続先表示部
6d 多重通信関連表示部
11 端末(移動体通信端末)
12 仮想接続先
13 表示情報決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象としての移動体通信端末(11)が正常に通信動作するか否かを試験する移動体通信端末の試験装置(1)において、
前記移動体通信端末が多重通信を行ったときの少なくとも前記移動体通信端末のアドレスと該移動体通信端末の通信相手を識別する情報とを含む多重通信関連情報を表示部(6)に一覧表示する表示制御部(5)を備えたことを特徴とする移動体通信端末の試験装置。
【請求項2】
前記表示制御部(5)は、前記移動体通信端末(11)と仮想接続先(12)との論理的な接続によるサービス毎のパケットデータ通信の従属関係を前記表示部(6)に識別表示することを特徴とする請求項1記載の移動体通信端末の試験装置。
【請求項3】
前記移動体通信端末(11)からのサービス毎のパケットに含まれる情報に基づいて前記従属関係を決定する表示情報決定部(13)を備えたことを特徴とする請求項2記載の移動体通信端末の試験装置。
【請求項4】
試験対象としての移動体通信端末(11)が正常に通信動作するか否かを試験する移動体通信端末の試験方法において、
前記移動体通信端末が多重通信を行ったときの少なくとも前記移動体通信端末のアドレスと該移動体通信端末の通信相手を識別する情報とを含む多重通信関連情報を表示部(6)に一覧表示するステップを含むことを特徴とする移動体通信端末の試験方法。
【請求項5】
前記移動体通信端末(11)と仮想接続先(12)との論理的な接続によるサービス毎のパケットデータ通信の従属関係を識別表示するステップを含むことを特徴とする請求項4記載の移動体通信端末の試験方法。
【請求項6】
前記移動体通信端末(11)からのサービス毎のパケットに含まれる情報に基づいて前記従属関係を決定するステップを含むことを特徴とする請求項5記載の移動体通信端末の試験方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−9254(P2013−9254A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141886(P2011−141886)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】