説明

移動体通信端末の試験装置及び試験方法

【課題】異なる通信方式の基地局間の強制ハンドオーバ動作の試験を簡易に行う。
【解決手段】試験装置1は、通信方式LTEに対応した第1の擬似基地局装置2又は通信方式C2Kに対応した第2の擬似基地局装置3と試験端末11との間で信号をやり取りして試験端末11の通信動作試験を行う。第1の擬似基地局装置2は、予め決まった条件分岐の範囲で状態遷移して、それをループして行って試験端末11を試験するための基本シナリオを実行している際の停止操作による停止時に、試験端末11に第2の擬似基地局装置3への強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを選択して実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規に開発される携帯電話などの移動体通信端末が正常に通信動作するか否かの通信試験を行う移動体通信端末の試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の移動体通信方式としては、従来からの回線交換通信方式であるGSMやW−CDMA、CDMA2000(CDMA2000 1x、CDMA2000 EV−DOを含む、略称C2K)に対し、次世代のパケット通信方式であるLTEなどが登場してきている。
【0003】
通信事業者の多くは、将来的にLTE(Long Term Evolution )の採用を予定している。このLTEは、下りにOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access :直交周波数分割多元接続)、上りにSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access :シングルキャリア周波数分割多元接続)を採用し、ピークデータレートが下り方向100Mbps以上、上り方向50Mbps以上(何れも周波数帯域幅が20MHzにおいて)の通信速度を要求条件としている。
【0004】
しかしながら、LTEを採用するにあたっては、通信設備の整備の問題があり、当面はLTEと従来の通信方式を並存させ、徐々にLTEの通信エリアを拡大し、最終的には従来の通信方式を終了させてLTEに集中する方向である。
【0005】
この並存期間中、例えばLTEと従来の通信方式の両方の通信方式に対応した携帯電話が、LTE基地局と従来の通信方式の基地局との両方のサービスエリア内にいるとする。この場合、データ通信サービスにはLTEが、電話やSMS(Short Message Service )のサービスには従来の通信方式が用いられ、携帯電話はサービスに応じて、それぞれの基地局と通信する。これは、データ通信にはLTEが適している一方、電話やSMSは従来の通信方式が現時点でのサービス提供が容易であるためである。
【0006】
このような仕組みを実現する技術として、CSFB(Circuit switching fallback:パケット交換通信から回線交換通信へハンドオーバする技術、例えば特開2010−45428号公報の〔背景技術〕を参照)が検討されている。そして、携帯電話等の移動体通信端末やそれに用いるデバイスのメーカから、このCSFBのような、異なる通信方式の基地局間の強制ハンドオーバ動作の試験を簡易に行いたいという要望がある。
【0007】
ところで、従来技術として、下記特許文献1には、作業性を大幅に向上させ、試験に不慣れな者であっても、試験端末の現在の通信手順及び試験端末の接続状態を容易に把握することができる擬似基地局装置が開示されている。この擬似基地局装置は、同文献の図3のシーケンス表示部に示されるように、ある決まった条件分岐の範囲で状態遷移をして、それをループして行って試験端末を試験することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−50567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この従来の擬似基地局装置を、上述の異なる通信方式の基地局間の強制ハンドオーバ動作の試験に対応させようとすると、2台の擬似基地局の連動機能の追加や、表示画面構成の大幅な変更など、大きな変更が必要となり、多額の開発コストがかかってしまうという課題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、異なる通信方式の基地局間の強制ハンドオーバ動作の試験を簡易に行うことができる移動体通信端末の試験装置及び試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された移動体通信端末の試験装置は、第1の通信方式に対応した第1の擬似基地局装置2と、
前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式に対応した第2の擬似基地局装置3と、
前記第1の擬似基地局装置からの信号又は前記第2の擬似基地局装置からの信号を試験対象の移動体通信端末11に送出可能であるとともに、前記移動体通信端末からの信号を前記第1の擬似基地局装置又は前記第2の擬似基地局装置に送出可能である結合部4とを備えた移動体通信端末の試験装置1において、
前記第1の擬似基地局装置は、予め決まった条件分岐の範囲で状態遷移して、それをループして行って前記移動体通信端末を試験するための基本シナリオを記憶するシナリオ記憶部24と、
前記基本シナリオを実行している際の停止操作による停止時に、前記移動体通信端末に前記第2の擬似基地局装置への強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを選択して実行するシナリオ実行部25を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された移動体通信端末の試験装置は、請求項1の移動体通信端末の試験装置において、
前記シナリオ記憶部24は、前記移動体通信端末11に強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを記憶する追加シナリオ記憶部24bを有し、
前記シナリオ実行部25は、前記追加シナリオが予め指定されているときに、この指定された追加シナリオを前記追加シナリオ記憶部から自動的に選択して実行することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された移動体通信端末の試験装置は、請求項1の移動体通信端末の試験装置において、
前記シナリオ実行部25は、前記追加シナリオが予め指定されていないときに、試験者に前記追加シナリオの指定を促して操作させるためのシナリオ選択画面を表示させ、該シナリオ選択画面上で指定された追加シナリオを選択して実行することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載された移動体通信端末の試験方法は、第1の通信方式に対応した第1の擬似基地局装置2又は前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式に対応した第2の擬似基地局装置3と試験対象の移動通信端末11との間で信号をやり取りして該移動通信端末の通信動作を試験する移動体通信端末の試験方法において、
予め決まった条件分岐の範囲で状態遷移して、それをループして行って前記移動体通信端末を試験するための基本シナリオを実行している際の停止操作による停止時に、前記移動体通信端末に前記第2の擬似基地局装置への強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを選択して実行するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載された移動体通信端末の試験方法は、請求項4の移動体通信端末の試験方法において、
前記移動体通信端末11に強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを記憶するステップと、
前記追加シナリオが予め指定されているときに、この指定された追加シナリオを前記記憶された追加シナリオから自動的に選択して実行するステップとを更に含むことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載された移動体通信端末の試験方法は、請求項4の移動体通信端末の試験方法において、
前記追加シナリオが予め指定されていないときに、試験者に前記追加シナリオの指定を促して操作させるためのシナリオ選択画面を表示させ、該シナリオ選択画面上で指定された追加シナリオを選択して実行するステップを更に含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る試験装置及び試験方法によれば、2台の擬似基地局の連動機能の追加や、表示画面構成の大幅な変更などが不要であり、多額の開発コストをかけることなく、異なる通信方式の基地局間の強制ハンドオーバ動作の試験を簡易な構成で行うことができる。また、試験前に追加シナリオを予め指定しておけば、試験中の追加シナリオの選択操作を省くことができ、より容易に試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る移動体通信端末の試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る移動体通信端末の試験装置の動作を示すフローチャート図
【図3】追加シナリオの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれる。
【0020】
図1は本発明に係る移動体通信端末の試験装置の概略構成を示すブロック図、図2は同試験装置の動作を示すフローチャート図、図3は同試験装置による追加シナリオの一例を示す図である。
【0021】
本発明に係る試験装置及び試験方法は、新規に開発される携帯電話などの試験対象となる移動体通信端末との間で所定の通信方式(例えばLTE、GSM、GSM/GPRS、W−CDMA、CDMA2000、TD−SCDMA、WiMAX、Wi−Fiなど)に基づく信号(RF信号)を送受信することにより基地局を模擬して移動体通信端末の通信動作を試験するものであり、特に、異なる通信方式の基地局間の強制ハンドオーバ動作の試験を簡易な構成で行う機能を有している。
【0022】
本例の試験装置1は、上記機能を実現するための構成要素として、図1に示すように、第1の擬似基地局装置2と、第2の擬似基地局装置3と、結合部4とを備えて概略構成される。以下、各構成要素について説明する。
【0023】
第1の擬似基地局装置2は、第1の通信方式(LTE)に対応しており、第1の通信方式(LTE)に基づく試験端末11の動作試験を行う擬似基地局として機能するものである。第1の擬似基地局装置2は、図1に示すように、操作部21、送受信部22、表示部23、シナリオ記憶部24、シナリオ実行部25を備えている。
【0024】
操作部21は、例えば第1の擬似基地局装置2の筐体前面に設けられるスイッチやボタンなどの操作パネルで構成される。操作部21は、試験対象となる移動体通信端末(以下、試験端末と略称する)11の通信動作試験の開始や停止の指示、シナリオ選択画面上での追加シナリオの指定操作を含め、異なる通信方式の基地局間(第1の擬似基地局装置2と第2の擬似基地局装置3との間)の強制ハンドオーバ動作の試験に必要な設定、第1の通信方式(LTE)に基づく試験端末11の通信動作試験に必要な各種設定などを行っている。
【0025】
送受信部22は、シナリオ実行部25の制御により、不図示の仮想接続先からの信号(RF信号)を試験端末11に送信し、試験端末11から受信した信号(RF信号)を不図示の仮想接続先に入力している。さらに説明すると、送受信部22は、試験端末11から結合部4を介して受信した信号をRF(高周波)入力処理し、その信号をさらに低周波数化して順次復調処理及びデコード処理を行い、このデコード処理されたデータに基づいて、仮想接続先選択などを含む交換機の機能を実行し、試験端末11が指定する仮想接続先を呼び出している。また、送受信部22は、仮想接続先から入力されたデータを順次変調処理及び高周波数化処理したRF信号を試験端末11に送信している。
【0026】
なお、仮想接続先は、第1の擬似基地局装置2の内部に組み込まれ、シナリオ実行部25の制御によって試験端末11と接続可能な相手先であり、例えば仮想通話先、仮想サーバ、仮想TV電話などからなる。
【0027】
表示部23は、液晶パネルなどの表示器で構成され、後述するシナリオ選択部25bからの指令によるシナリオ選択画面の表示を含め、試験端末11の通信動作試験に関わる各種画面を表示している。
【0028】
なお、特に図示はしないが、表示部23は、試験端末11の通信動作試験に関わる各種画面を表示するものとして、例えば特許文献1に開示されるように、第1の擬似基地局装置2を介しての試験端末11と不図示の仮想接続先との間のサービス毎のパケットデータ通信に関して、試験端末11と不図示の仮想接続先との間の通信手順及び通信の遷移状態を示す複数のシーケンスを表示するシーケンス表示部と、試験端末11と第1の擬似基地局装置2を介した不図示の仮想接続先との接続状態を表示する接続状態表示部と、試験端末1が第1の擬似基地局装置2を介して接続される一つの仮想接続先を図式化して表示する接続先表示部とを有している。
【0029】
シナリオ記憶部24は、シナリオ実行部25によって実行されるシナリオを記憶するもので、基本シナリオ記憶部24aと追加シナリオ記憶部24bを有している。
【0030】
基本シナリオ記憶部24aは、ある決まった条件分岐の範囲で状態遷移をして、それをループして行って試験端末11を試験するための第1の基本シナリオを記憶している。第1の基本シナリオは、第1の通信方式(LTE)に基づく通信シーケンスをシミュレーションするための一連の動作の試験手順を記述したものである。
【0031】
追加シナリオ記憶部24bは、試験端末11に強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを記憶している。追加シナリオは、第1の基本シナリオと比較してシナリオの長さが極めて短く、試験者が容易に作成できるものである。
【0032】
図3は追加シナリオ記憶部24bに記憶される追加シナリオの一例を示している。図3の追加シナリオは、シナリオを実行するために必要十分な関数の取り込みを示す部分A、シナリオ使用の宣言を示す部分B、試験装置の実行を示す部分C、メッセージ送信開始指示ボタンを示す部分D、メッセージ種別コメントを示す部分E、実際のメッセージ本体(16進数)を示す部分F、メッセージ送信処理を示す部分G、送信完了表示を示す部分Hから構成される。なお、詳細な追加シナリオの一例について図3に示したが、図中のD,E,Hを省略することも可能である。
【0033】
シナリオ実行部25は、操作部21からの操作により、第1の通信方式(LTE)に基づくシナリオを実行するもので、図1に示すように、シナリオ停止処理部25a、シナリオ選択部25b、シナリオ実行処理部25cを有している。
【0034】
シナリオ停止処理部25aは、第1の通信方式(LTE)に基づく第1の基本シナリオにより試験端末11の動作試験を行っている際に、試験者が操作部21を操作して停止指示が行われると、実行中の第1の基本シナリオを停止させている。
【0035】
シナリオ選択部25bは、試験者が操作部21を操作して予め追加シナリオを指定しているときに、その指定された追加シナリオを追加シナリオ記憶部24bから呼び出して自動的に選択している。また、シナリオ選択部25aは、予め追加シナリオが指定されていないときに、追加シナリオの指定を試験者に促して操作部21の手動操作により指定させるためのシナリオ選択画面を表示部23に表示させている。
【0036】
シナリオ実行処理部25cは、第1の通信方式(LTE)に基づく試験端末11の動作試験を行うべく、基本シナリオ記憶部24aに記憶された第1の基本シナリオを実行している。また、シナリオ実行処理部25cは、シナリオ停止処理部25bによって第1の基本シナリオによる動作試験が停止したときに、シナリオ選択部25aによって自動的に選択された追加シナリオ、又は操作部21の手動操作の指定によりシナリオ選択画面から選択された追加シナリオを実行している。
【0037】
次に、第2の擬似基地局装置3は、第1の擬似基地局装置2の第1の通信方式(LTE)と異なる第2の通信方式(GSM,W−CDMA,C2Kなど)に対応しており、第2の通信方式(GSM,W−CDMA,C2Kなど)に基づく試験端末11の動作試験を行う擬似基地局として機能するものである。第2の擬似基地局装置3は、例えば特許文献1に開示される従来の擬似基地局装置と同じ構成であり、図1に示すように、操作部31、送受信部32、表示部33、シナリオ記憶部34、シナリオ実行部35を備えている。
【0038】
操作部31は、第1の擬似基地局装置2の操作部21と同様に、例えば第2の擬似基地局装置3の筐体前面に設けられるスイッチやボタンなどの操作パネルで構成される。操作部31は、試験端末11の通信動作試験の開始や停止の指示を含め、第2の通信方式(GSM,W−CDMA,C2Kなど)に基づく試験端末11の通信動作試験に必要な各種設定などを行っている。
【0039】
送受信部32は、第1の擬似基地局装置2の送受信部22と同様に、シナリオ実行部35の制御により、不図示の仮想接続先からの信号(RF信号)を試験端末11に送信し、試験端末11から受信した信号(RF信号)を不図示の仮想接続先に入力している。
【0040】
表示部33は、第1の擬似基地局装置2の表示部23と同様に、液晶パネルなどの表示器で構成され、試験端末11の通信動作試験に関わる各種画面(例えば上述した特許文献1に開示されるシーケンス表示部、接続状態表示部、接続先表示部)を表示している。
【0041】
シナリオ記憶部34は、ある決まった条件分岐の範囲で状態遷移をして、それをループして行って試験端末11を試験するための第2の基本シナリオを記憶する基本シナリオ記憶部34aを有している。第2の基本シナリオは、第2の通信方式(GSM,W−CDMA,C2Kなど)に基づく通信シーケンスをシミュレーションするための一連の動作の試験手順を記述したものである。
【0042】
シナリオ実行部35は、第2の通信方式(GSM,W−CDMA,C2Kなど)に基づくシナリオを実行するもので、シナリオ実行処理部35aを有している。シナリオ実行処理部35aは、操作部31からの操作により、シナリオ記憶部34に記憶された第2の通信方式(GSM,W−CDMA,C2Kなど)に基づく第2の基本シナリオを呼び出して実行している。
【0043】
次に、結合部4は、第1の擬似基地局装置2又は第2の擬似基地局装置3の一方と試験端末11との間で信号のやり取りを行っている。すなわち、結合部4は、第1の擬似基地局装置2からのRF信号又は第2の擬似基地局装置3からのRF信号を試験端末11に送出可能としている。また、結合部4は、試験端末11からのRF信号を第1の擬似基地局装置2又は第2の擬似基地局装置3に送出可能としている。
【0044】
次に、上記のように構成される試験装置1において、異なる通信方式の基地局間(第1の擬似基地局装置2と第2の擬似基地局装置3との間)の強制ハンドオーバ動作の試験を行う場合の動作について図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
なお、図2では、第1の擬似基地局装置2と第2の擬似基地局装置3の装置毎に動作内容を図示している。
【0046】
まず、試験者は、図2のフローチャートに基づく強制ハンドオーバ動作の試験を行うにあたって、第2の擬似基地局装置3に必要な設定(試験端末11の情報など、強制ハンドオーバ動作のハンドオーバ先基地局の動作に必要な設定)を行っておく。
【0047】
・第1の擬似基地局装置2の動作
シナリオ実行部25は、試験が開始されると、シナリオ記憶部24の基本シナリオ記憶部24aに記憶された第1の基本シナリオを実行する(ST1)。そして、シナリオ停止処理部25aは、操作部21による停止操作がなされたか否かを判別する(ST2)。シナリオ停止処理部25aは、操作部21による停止操作がなされていないと判別すると、最終シーケンスか否かを判別する(ST3)。シナリオ停止処理部25aは、最終シーケンスでないと判別すると、次のシーケンスに移行し(ST4)、ST1の処理に戻る。これに対し、シナリオ停止処理部25aは、最終シーケンスであると判別すると、最初のシーケンスに移行し(ST5)、ST1の処理に戻る。
【0048】
一方、シナリオ停止処理部25aは、操作部21による停止操作がなされたと判別すると、シナリオ選択部25bにて自動又は手動による追加シナリオの選択がなされる(ST6)。自動による追加シナリオの選択は、シナリオ記憶部24の追加シナリオ記憶部24bに予め記憶された追加シナリオをシナリオ選択部25bが呼び出すことによって行われる。また、手動による追加シナリオの選択は、シナリオ選択部25aからの指令に基づくシナリオ選択画面から操作部21の指定操作によって行われる。そして、シナリオ実行処理部25cは、追加シナリオが選択されると、その追加シナリオを実行し(ST7)、試験を終了する。その際、選択された追加シナリオの制御により、試験端末11が第2の擬似基地局装置3に向かって発信する(ST8)。
【0049】
・第2の擬似基地局装置3の動作
シナリオ実行部35は、試験が開始されると、シナリオ記憶部34の基本シナリオ記憶部34aに記憶された第2の基本シナリオを動作させ、試験端末11からの発信待ち状態に移行する(ST11)。そして、シナリオ実行部35は、試験端末11から発信があるか否かを判別する(ST12)。シナリオ実行部35は、試験端末11から発信ありと判別すると、第2の基本シナリオを実行し(ST13)、試験を終了する。これに対し、シナリオ実行部35は、試験端末11から発信なしと判別すると、ST11の試験端末11からの発信待ち状態に戻る。なお、ST13の第2の基本シナリオの実行にあたっては、第1の基本シナリオと同様に、操作部21による停止操作が行われるまで、最初から最後までのシーケンスが繰り返される。
【0050】
このように、本例の試験装置1では、第2の擬似基地局装置3に必要な設定(試験端末11の情報など、強制ハンドオーバ動作のハンドオーバ先基地局の動作に必要な設定)を行っておき、第2の擬似基地局装置3の第2の基本シナリオを動作させ、試験端末11からの発信待ち状態とし、第1の擬似基地局装置2の第1の基本シナリオを実行させる。そして、任意のタイミングで試験者が操作部21による停止操作を行い、それに応じて追加シナリオが実行され、それにより試験端末11から第2の擬似基地局装置3への発信が行われる。そして、試験端末11から発信を受けた第2の擬似基地局装置3は、自身の第2の基本シナリオに沿って動作して試験端末11を試験する。
【0051】
これにより、本発明によれば、2台の擬似基地局の連動機能の追加や、表示画面構成の大幅な変更などが不要であり、多額の開発コストをかけることなく、異なる通信方式の基地局間の強制ハンドオーバ動作の試験を簡易な構成で行うことができる。また、予め試験前に追加シナリオを指定しておけば、試験中の追加シナリオの選択操作を省くことができ、より容易に試験を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 試験装置
2 第1の擬似基地局装置
3 第2の擬似基地局装置
4 結合部
11 試験端末(移動体通信端末)
21 操作部
22 送受信部
23 表示部
24 シナリオ記憶部
24a 基本シナリオ記憶部
24b 追加シナリオ記憶部
25 シナリオ実行部
25a シナリオ停止処理部
25b シナリオ選択部
25c シナリオ実行処理部
31 操作部
32 送受信部
33 表示部
34 シナリオ記憶部
34a 基本シナリオ記憶部
35 シナリオ実行部
35a シナリオ実行処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信方式に対応した第1の擬似基地局装置(2)と、
前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式に対応した第2の擬似基地局装置(3)と、
前記第1の擬似基地局装置からの信号又は前記第2の擬似基地局装置からの信号を試験対象の移動体通信端末(11)に送出可能であるとともに、前記移動体通信端末からの信号を前記第1の擬似基地局装置又は前記第2の擬似基地局装置に送出可能である結合部(4)とを備えた移動体通信端末の試験装置(1)において、
前記第1の擬似基地局装置は、予め決まった条件分岐の範囲で状態遷移して、それをループして行って前記移動体通信端末を試験するための基本シナリオを記憶するシナリオ記憶部(24)と、
前記基本シナリオを実行している際の停止操作による停止時に、前記移動体通信端末に前記第2の擬似基地局装置への強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを選択して実行するシナリオ実行部(25)を備えたことを特徴とする移動体通信端末の試験装置。
【請求項2】
前記シナリオ記憶部(24)は、前記移動体通信端末(11)に強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを記憶する追加シナリオ記憶部(24b)を有し、
前記シナリオ実行部(25)は、前記追加シナリオが予め指定されているときに、この指定された追加シナリオを前記追加シナリオ記憶部から自動的に選択して実行することを特徴とする請求項1記載の移動体通信端末の試験装置。
【請求項3】
前記シナリオ実行部(25)は、前記追加シナリオが予め指定されていないときに、試験者に前記追加シナリオの指定を促して操作させるためのシナリオ選択画面を表示させ、該シナリオ選択画面上で指定された追加シナリオを選択して実行することを特徴とする請求項1記載の移動体通信端末の試験装置。
【請求項4】
第1の通信方式に対応した第1の擬似基地局装置(2)又は前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式に対応した第2の擬似基地局装置(3)と試験対象の移動通信端末(11)との間で信号をやり取りして該移動通信端末の通信動作を試験する移動体通信端末の試験方法において、
予め決まった条件分岐の範囲で状態遷移して、それをループして行って前記移動体通信端末を試験するための基本シナリオを実行している際の停止操作による停止時に、前記移動体通信端末に前記第2の擬似基地局装置への強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを選択して実行するステップを含むことを特徴とする移動体通信端末の試験方法。
【請求項5】
前記移動体通信端末(11)に強制ハンドオーバを指示するための追加シナリオを記憶するステップと、
前記追加シナリオが予め指定されているときに、この指定された追加シナリオを前記記憶された追加シナリオから自動的に選択して実行するステップとを更に含むことを特徴とする請求項4記載の移動体通信端末の試験方法。
【請求項6】
前記追加シナリオが予め指定されていないときに、試験者に前記追加シナリオの指定を促して操作させるためのシナリオ選択画面を表示させ、該シナリオ選択画面上で指定された追加シナリオを選択して実行するステップを更に含むことを特徴とする請求項4記載の移動体通信端末の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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