説明

移動体通信装置及び個人情報保護方法

【課題】特定のエリア内(自宅の周辺や勤務地の周辺など)において情報の送信を制御することによって個人情報が特定されることを防ぐ移動体通信装置及び個人情報保護方法を提供すること。
【解決手段】移動体に備えられ、操作部を介して任意に定められる保護地点の位置を基準とする保護範囲と前記移動体の現在位置を検出する現在位置検出部によって検出された前記移動体の現在位置とに基づいて、通信部を介して行われる前記移動体の移動体情報の送信を制御する制御部と、を備えることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信装置及び個人情報保護方法に関するものであり、特に、該移動体通信装置(該移動体通信装置を備える(所持する)移動体(歩行者、車両等)と言い換えることができる)の情報(現在位置、進行方向や端末IDなどを示す情報)を他の通信装置に送信する移動体通信装置及び個人情報保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークすることにより、交通事故や渋滞などといった道路交通問題の解決を目的とした高度道路通信システム(Intelligent Transport Systems、以下「ITS」という。)が研究、開発されている。ITSの中でも特に安全運転支援システムを扱う分野における自動車向け無線通信の形態は路車間通信と車車(歩車)間通信とに大別できる。路車間通信は路側機と車両が情報を通信するのに対し、車車(歩車)間通信は車両と車両(或いは歩行者)が直接情報の通信を行う。
【0003】
路車間通信により路側機から車両に発信される情報には交差点情報や信号機情報が含まれる。交差点情報としては交差点を識別するための識別情報、信号機情報としては信号機を識別するための識別情報、信号機の現在の信号表示情報(信号機の表示色を示す情報)、次の信号表示情報及び該信号表示に変更されるまでの時間等の情報が含まれる。
【0004】
車車間通信により車両から車両に発信される情報には車載通信装置の端末IDを示す情報、車両の現在位置、移動速度、進行方向などを示す情報が含まれ、歩車間通信により歩行者から車両に発信される情報には移動通信端末の端末IDを示す情報、歩行者等の現在位置、移動速度、進行方向などを示す情報が含まれる。(車歩間通信、歩歩間通信についても同様)
そして移動体通信装置は、該移動体通信装置を備える(所持する)移動体(自車)の情報(現在位置、進行方向、移動速度などを示す情報)と、ITS通信によって該移動体通信装置が他の通信装置から受信する該他の通信装置を備える(所持する)他の移動体(他の車両や歩行者等)の情報(現在位置、進行方向、移動速度などを示す情報)に基づいて、渋滞判定を行って渋滞していると判定された場合に渋滞回避経路の検索を行ったり、交通事故判定を行って交通事故発生の可能性がある場合に事故回避制御を行ったりするなど道路交通問題の解決に貢献している。
【0005】
一方で、移動体通信装置(移動体通信装置を備える移動体)の情報が不特定多数の通信装置に送信される(ブロードキャストされる)と、悪意ある者が受信した当該情報を悪用して、例えばある特定の端末IDを追跡し、その移動体通信装置を利用する者の自宅の位置や勤務地の位置などの個人情報を特定することが考えられる。
【0006】
特にITSにおいて無線通信を行なう際の周波数帯域は700MHz帯の周波数帯域であると考えられている。その場合、通信可能範囲は約300メートルであり、移動体通信装置は自身を中心として半径約300メートルの範囲内に存在する1又は2以上の他の通信装置に情報を送信し、又は他の通信装置から情報を受信する。
【0007】
よって、半径約300メートルの範囲内であれば、他の通信装置の表示画面に端末IDと現在位置が併せて表示されることが考えられる。そのような場合、直接視認することなく1ブロック後方や、別の道など被害者(追跡されている者)が視認できない位置から特定の端末IDを追跡することが可能である。
【0008】
このような個人情報の漏洩を未然に防止するために特許文献1に開示されている車車間通信装置においては、発行・配布される車両ID(端末ID)に有効期限を設定し、有効期限が切れるごとに車両IDを更新している。これにより特定の車両IDを長期に渡って追跡することを防止することができるので、個人情報の漏洩を未然に防止することができることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−174179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記先行技術文献に開示されている車車間通信装置は、他の車両が自車の車両IDや現在位置情報などに基づいて運転支援を行っている場合(例えば、互いの車両IDを登録し、登録した車両IDの現在位置を表示画面に強調表示する等して、グループ走行を行なっている場合)であっても、有効期限が切れることによって車両IDを更新するため、他の車両は自車を特定することができず動作が不安定となる可能性がある。
【0011】
また、他の車両の表示装置に車両IDと現在位置が表示されている場合には、車両IDが更新されても現在位置に基づいて車両IDが更新されたことに気づかれる可能性がある。
【0012】
本発明は、上述した問題点に鑑み、特定のエリア内(自宅の周辺や勤務地の周辺など)において情報の送信を制御することによって個人情報が特定されることを防ぐ移動体通信装置及び個人情報保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の移動体通信装置は、移動体に備えられ、操作部を介して任意に定められる保護地点の位置を基準とする保護範囲と前記移動体の現在位置を検出する現在位置検出部によって検出された前記移動体の現在位置とに基づいて、通信部を介して行われる前記移動体の移動体情報の送信を制御する制御部と、を備えることを特徴としている。
【0014】
また上記構成の移動体通信装置において、前記制御部は、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内であるときに、前記通信部を介して行われる前記移動体の移動体情報の送信を制御することが望ましい。
【0015】
また上記構成の移動体通信装置において、前記移動体の移動体情報の送信の制御は、前記移動体の移動体情報を送信しないこと、又は、前記移動体の移動体情報として送信される前記移動体に関する情報を変更することであることが望ましい。
【0016】
また上記構成の移動体通信装置において、前記制御部は、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内であるときに、さらに、前記移動体の現在位置と前記保護地点の位置との位置関係に基づいて、前記移動体の移動体情報として送信される前記移動体に関する情報を変更することが望ましい。
【0017】
また上記構成の移動体通信装置において、前記制御部は、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内であっても、前記保護地点を通過すると判定したときには、前記移動体の移動体情報の送信について、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内でないときにおける制御を行うことが望ましい。
【0018】
上記目的を達成するために本発明の個人情報保護方法は、前記移動体の現在位置を取得するステップと、任意に定められた保護地点の位置を基準とする保護範囲と前記移動体の現在位置とに基づいて、通信部を介して行われる前記移動体の移動体情報の送信を制御するステップと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、特定のエリア内(自宅の周辺や勤務地の周辺など)において情報の送信を制御することによって個人情報が特定されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は、本発明のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】は、本発明のナビゲーション装置の制御部が実行する処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【図3】は、本発明のナビゲーション装置の制御部が実行する処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために本発明の移動体通信装置の一例であるナビゲーション装置を示すものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の装置にも等しく適応し得るものである。例えば、ナビゲーション機能を有しない装置や携帯電話等の移動通信端末であってもよい。なお、以下の説明では、ナビゲーション装置が自動車に取付けられた場合を例示するが、バイクや歩行者等がナビゲーション装置を備えて(保持して)いてもよい。また、以下の説明では、周囲(他人)に知られたくない保護地点(個人情報)として自宅や勤務先を例示するが、保護地点はこれに限ることなく、行きつけの店であったり、友人宅であったりしてもよい。すなわち、ユーザにとって他人に知られたくない任意の地点(施設など)が保護地点である(任意の地点(施設)との関わりが他人に知られたくない任意の地点)。
【0022】
図1は本発明のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置20は制御部1と、表示部2と、操作部3と、現在位置検出部4と、速度検出部5と、地図情報記憶部6と、バッテリ7と、通信部8とを備えている。
【0023】
制御部1はナビゲーション装置20全体を総括的に制御する制御手段である。制御部1はCPUとROMとRAM(いずれも不図示)とを含んでいる。ROMには制御部1が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なパラメータやデータが記憶されている。CPUはROMに記憶されている各種プログラムを実行する。RAMは各種処理の過程で得られるデータや各種処理の結果得られるデータを一時的に格納する。これらCPU、RAM、ROM等は、バスを介して接続されている。なお、CPU、ROM及びRAMはこれらの一部または全部を1チップに集積化しても構わない。また、制御部1は通信部8を介して行われる他の通信装置に対する自車(以下、「ナビゲーション装置20が搭載された車両」を「自車」ということもある。)の移動体情報(ナビゲーション装置20の移動体情報を、ナビゲーション装置20を備える移動体(自車)の移動体情報と言い換えることができる)の送信を制御する。制御部1は自車の現在位置と、保護地点の位置を基準とする保護範囲と(自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるか否か)に基づいて自車の移動体情報の送信を制御する(詳細は後述)。
【0024】
表示部2は地図画面(目的地への経路、自車の現在位置を示すマーク、地図情報記憶部6に記憶されている保護地点の位置を示すマークなどを含む地図画像を表示する画面)やメニュー画面を表示するための表示手段である。
【0025】
操作部3はユーザが目的地を入力したり、メニューを操作したりするための入力操作手段である。なお、操作部3としては、ナビゲーション装置本体に各種のキーやボタンを設けてもよいし、表示部2にタッチパネル機能を付加してもよい。また、操作部3としてナビゲーション装置20本体を遠隔操作するためのリモートコントローラを操作部3として用いても構わない。なお、本実施形態では、操作部3は、任意の保護地点の位置(位置に対応付けられた施設・位置座標・住所など)を特定する際に用いられるものであればよく、例えば、運転免許証から住所を読み取るカードリーダなども操作部3に含めることが望ましい。
【0026】
現在位置検出部4は自車の現在位置を検出するものであり、GPS受信機、自立航法手段、位置計算用CPU等を含んで構成される。自立航法手段は操角センサ、加速度センサ、距離センサや方位センサなどからなり、自車の走行距離と進行方向とをそれぞれ検出し、これらの値に基づいて現在位置を求める。また、GPS受信機は複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナで受信して3次元測位処理又は2次元測位処理を行って自車の絶対位置及び進行方向を計算する。ここで進行方向は現時点の自車位置と直前の自車位置とに基づいて計算される。なお、進行方向の検出方法は特に限定されず、例えばタイヤの回転方向から検出することとしてもよいし、方位センサを用いて検出してもよい。また、現在位置検出部4とは別に進行方向検出部を設けて自車の進行方向を検出するものとしてもよい。
【0027】
速度検出部5は自車の移動速度を検出する。移動速度は車速センサや加速度センサの出力から算出してもよいし、GPS履歴間の走行距離とGPS受信時刻の差から算出してもよい。なお、自車の移動速度は現在位置検出部4が検出することとしてもよい。現在位置検出部4が自車の現在位置に加えて移動速度を検出することができる場合には速度検出部5を別途設けない構成とすることができる。その場合、現在位置検出部4に速度検出部5が含まれる構成となる。
【0028】
なお、操角センサ、加速度センサ、速度センサや方位センサなどは、ナビゲーション装置20が備えていてもよいし、車両(自車)が上記各種センサを備えており、ナビゲーション装置20は、上記各種センサの出力を取得するインターフェースを備える構成としてもよい。
【0029】
地図情報記憶部6は目的地への経路探索や誘導を行う際に参照される地図情報や、当該地図情報上の特定の地点がユーザの自宅の位置、勤務先の位置、最寄り駅の位置等であることなどが記憶されている。地図情報には、ネットワークデータ(ノードデータ、リンクデータ)が含まれる。地図情報記憶部6としてはNANDフラッシュやSDメモリカードなどを好適に用いることができる。地図情報記憶部6はナビゲーション装置20に内蔵しても構わないし、ナビゲーション装置20に着脱可能な構成としても構わない。なお、地図情報には、地図画像が含まれていてもよいし、地図情報に含まれるネットワークデータ(ノードデータ、リンクデータ)に基づき地図画像を表示部2に描画してもよい。また、地図情報は予め地図情報記憶部6に記憶される以外にも、後述する通信部8が路側機などから地図情報を受信し、受信された地図情報が地図情報記憶部6に記憶されてもよい。
【0030】
本発明において地図情報記憶部6はさらに、地図情報上の特定の地点のうち、ユーザの自宅の位置や勤務先の位置など個人情報保護の観点から重要な地点が保護地点として記憶されている。例えばユーザが操作部3を用いて住所や名称等を入力することによって特定された地点が自宅や勤務先として記憶された場合には、自動的に保護地点としても記憶することとしてもよいし、特定された地点を保護地点として記憶するようにユーザが操作したときに限り、保護地点として記憶することとしてもよい。また、ユーザのICカード運転免許証から住所を読み取り、保護地点として記憶することとしてもよい。さらに、表示部2に地図情報を表示して地図情報上の1点をユーザが指定することにより指定された地点を保護地点として記憶してもよい。
【0031】
なお、ユーザの自宅の位置や勤務先の位置は地図情報記憶部6に記憶される以外にも、制御部1に含まれるRAMなどにユーザの自宅の位置や勤務先の位置(緯度・経度)が記憶されてもよい。
【0032】
本発明においては、ネットワークデータに、道路のノードデータ・リンクデータが含まれる。自車の現在位置を特定する際には、制御部1が現在位置検出部4によって検出される自車の現在位置(進行方向や移動速度も加えてもよい)と地図情報とに基づき、マップマッチング処理を行うことで特定することができる。
【0033】
なお、マップマッチング処理については、制御部1が行なってもよいが、現在位置検出部4が行なってもよい。すなわち、GPS受信機及び/又は自律航法手段を用いて検出した現在位置と地図情報とに基づき、マップマッチング処理を行い、マップマッチング処理を行なった現在位置を現在位置として制御部1へ出力してもよい。或いは、制御部1のマップマッチング処理までを含めて現在位置検出部4としてもよい。
【0034】
バッテリ7はナビゲーション装置20の携帯使用時における電源供給手段であり、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池を好適に用いることが可能である。もちろん、バッテリ7として、アルカリマンガン乾電池やマンガン乾電池などの一次電池を用いても構わないし、燃料電池を用いても構わない。
【0035】
通信部8はナビゲーション装置20と通信可能な他の通信装置(以下、「他の通信装置」という。)に情報を送信する送信部(図示せず)と他の通信装置から送信される情報を受信する受信部(図示せず)とを有する。通信方法は無線通信や赤外線通信などの非接触通信とすることが好ましい。他の通信装置としては他の車両(他の移動体)に搭載されたナビゲーション装置等の車載通信装置(他の車両に歩行者が乗車している場合において、該歩行者が保持する携帯電話等の移動通信端末でもよい)、路側機、歩行者等(歩行者や自転車の運転手など)が所持する携帯電話等の移動通信端末などを挙げることができる。
【0036】
通信部8が他の車両に搭載されたナビゲーション装置等の車載通信装置から受信する情報には他の車両(他の移動体)の移動体情報が含まれる。他の車両の移動体情報には、ナビゲーション装置等の車載通信装置の端末IDを示す情報、ナビゲーション装置等の車載通信装置が搭載された他の車両(以下、「ナビゲーション装置等の車載通信装置が搭載された他の車両」を「他の車両」ということもある。)の現在位置、進行方向、移動速度を示す情報などが含まれる。
【0037】
また、通信部8が、歩行者等が所持している携帯電話等の移動通信端末から受信する情報には、歩行者等の移動体情報が含まれる。歩行者等の移動体情報には、携帯電話等の移動通信端末の端末IDを示す情報、携帯電話等の移動通信端末を所持する歩行者等(以下、「携帯電話等の移動通信端末を所持する歩行者等」を「歩行者等」ということもある。)の現在位置、進行方向、移動速度を示す情報などが含まれる。
【0038】
なお、他の車両及び歩行者等の現在位置は、マップマッチング処理後の現在位置であってもよいし、マップマッチング処理前の現在位置(GPS受信機等により測位された現在位置)であってもよい。マップマッチング処理前の現在位置であれば、制御部1(現在位置検出部4)がマップマッチング処理を行なってもよい。
【0039】
なお、上記において通信部8は、他の車両から他の車両の移動体情報を受信しているが、例えば路側機や携帯電話等の移動通信端末などから受信してもよい。また、歩行者等の移動体情報についても同様である。
[第1実施形態]
本発明のナビゲーション装置20の第1実施形態について図2を用いて説明する。図2は本発明のナビゲーション装置20の制御部1が実行する処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【0040】
ステップS01において制御部1は、現在位置検出部4によって検出される自車の現在位置と、現在位置検出部4(ナビゲーション装置20が進行方向検出部を備えるときは進行方向検出部でもよい)により検出される自車の進行方向、速度検出部5により検出される自車の移動速度などの自車に関する情報を取得する。
なお、本実施形態において制御部1が自車に関する情報を取得するタイミングは当該タイミングとは限られない。定期的或いは不定期に取得されてもよく、定期的或いは不定期に複数回情報を取得する場合には、取得された情報のうち最も新しい情報を使用することとしてもよい。或いは、新たな自車に関する情報を取得すると、ステップS02以降の処理を行なうこととしてもよい。
【0041】
次にステップS02において制御部1は自車の現在位置が地図情報記憶部6に記憶されている保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるか否かを判定する。自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるとは、自車の現在位置が保護地点の位置を中心とする保護範囲内であること(言い換えると、自車の現在位置と保護地点の位置との直線距離が所定距離内であること)としてもよいし、自車の現在位置と保護地点の位置との間に存在する障害物を考慮に入れた迂回経路の中で最短経路の距離が所定距離内であることとしてもよい。また、自車の現在位置から目的地に向かう経路探索を行っており、且つ当該経路が保護地点を通過するものであれば当該経路探索の結果に従って走行した場合における自車の現在位置から保護地点の位置までの距離が所定距離内であることとしてもよい。
【0042】
なお、保護範囲(或いは所定距離)は特に限定されるものではなく、予めが定められている値(距離)としてもよいし、適宜ユーザが設定することとしてもよい。
【0043】
自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内である(ステップS02のY)ときにステップS03に進んで自車の移動体情報の送信について特別制御状態で行い(詳細は後述)、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内でない(ステップS02のN)ときはステップS04に進んで自車の移動体情報の送信について通常制御状態で行う(詳細は後述)。
【0044】
ここで通常制御状態による自車の移動体情報の送信とは、ITS通信において一般的に、車両に搭載された車載装置から他の通信装置に対して送信される車両の移動体情報と同様の情報が通信部8を介して送信されることである。移動体情報には車両(自車)に関する様々な情報が含まれており、通常制御状態において車両(自車)に関するどのような情報が車両(自車)の移動体情報として送信されるか(移動体情報にどのような車両(自車)に関する情報を含めるか)は予め設定されている。自車に関する情報としては、移動種別(車両であること)を示す情報、自車のID(ナビゲーション装置20の端末ID)を示す情報、自車の現在位置を示す情報、自車の進行方向を示す情報、自車の移動速度を示す情報、ヘッドライトの点灯状態を示す情報、ワイパーの稼動状態を示す情報などが挙げられる。
【0045】
一方、特別制御状態による自車の移動体情報の送信とは、通常制御状態とは異なる制御であり、例えば、自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更する制御、移動体情報の送信を停止する制御が考えられる。
【0046】
本実施形態において、自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更する場合には、例えば、通常制御状態時には上述した自車に関する情報(移動種別、端末ID、現在位置、進行方向、移動速度、ヘッドライト点灯状態、ワイパーの稼動状態)が自車の移動体情報として送信されるが、特別制御状態時には、保護地点(自宅や勤務先)が特定されないように、自車の現在位置を示す情報及び/又はナビゲーション装置20の端末IDを示す情報を自車の移動体情報として送信しない(自車の移動体情報に含めない)こととする。つまり、「自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更する」とは、通常制御状態において自車の移動体情報として送信される自車に関する情報の一部又は全部について変更する(一部を送信しない場合も含む)ことである。なお、自車の現在位置を示す情報が自車の移動体情報として送信されない場合、他の車両に搭載された車載通信装置などはその位置(自車の現在位置)に車両が存在していることを知ることができないため、自車(ナビゲーション装置20)において受信した他の車両の現在位置と自車の現在位置などに基づいて事故(衝突)判定を行い、衝突すると判定した場合には衝突の可能性があることを示す情報を他の車両に(他の車両に搭載された他の通信装置の端末IDを示す情報を付加して)送信することが望ましい。
【0047】
また、自車の移動体情報の送信を停止する場合には、通常制御状態時には自車の移動体情報の送信を行い、特別制御状態時には自車の移動体情報の送信を行わないこととする。
【0048】
また、本実施形態においては、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるか否かによって自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更することとしたが、制御部1は、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内である場合において、さらに、自車の現在位置と保護地点の位置との位置関係に基づいて、自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更することとしてもよい。例えば、自車の現在位置と保護地点の位置との間の直線距離が近くなるにつれて、自車の移動体情報として送信される自車に関する情報が段階的に減る(例えば、1キロ<直線距離≦1.5キロであればナビゲーション装置20の端末IDを示す情報を自車の移動体情報として送信せず、500メートル<直線距離≦1キロであればナビゲーション装置20の端末IDを示す情報と自車の現在位置を示す情報を自車の移動体情報として送信せず、500メートル≧直線距離であれば選択可能な全ての自車に関する情報を自車の移動体情報として送信しない、或いは、自車の移動体情報を他の通信装置に送信しない)こととしてもよいし、自車の現在位置と保護地点の位置との間の直線距離によって、自車の移動体情報から減らされる自車に関する情報が異なる(例えば、500メートル<直線距離≦1キロであればナビゲーション装置20の端末IDを示す情報を自車の移動体情報として送信せず、直線距離≦500メートルであれば自車の現在位置を示す情報を自車の移動体情報として送信しない)こととしてもよい。
【0049】
なお、直線距離に限られず、例えば、現在位置から保護地点の位置までの経路を探索し、当該経路の距離であってもよい。なお、経路探索は、出発地(現在位置)、目的地(保護地点の位置)及び地図情報を参照してダイクストラ法などの手法を用いて行なわれる。
【0050】
本実施形態によれば、移動体の現在位置と保護地点の位置を基準とする保護範囲とに基づいて、自車の移動体情報の送信を制御する(自車の移動体情報の送信について通常制御状態又は特別制御状態で行う)ので、自車の移動体情報の送信について特別制御状態で行った場合には、個人情報(自宅の位置や勤務先等)が特定されることを防ぐことができる。
[第2実施形態]
本発明のナビゲーション装置20の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、ステップS03において制御部1が自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更する場合について、通常制御状態において自車の移動体情報として送信される複数の自車に関する情報の一部又は全部について自車の移動体情報として送信しないこととしたが本実施形態においては、複数の自車に関する情報の全部について自車の移動体情報として送信するが(通常制御状態において自車の移動体情報として送信される自車に関する情報の全てを送信するが)、その一部又は全部について内容を変更するものとして説明する。
【0051】
なお、以下、自車の移動体情報として送信される自車の現在位置を示す情報の内容を変更する場合を例に説明する。自車の現在位置を示す情報には、位置座標(緯度、経度)を示す情報に加え、位置の誤差範囲を示す情報が含まれている。位置の誤差範囲は自車の現在位置座標を観測しているGPS衛星の数(自車の現在位置座標を特定するためにいくつのGPS衛星から電波(GPS衛星から送られてくる電波)を受信したか)によって異なり、4つ以上のGPS衛星から電波を受信して自車の現在位置座標を特定(検出)した場合には位置の誤差範囲は0mとなる(位置の範囲誤差0mを示す情報が付加される)が、4つ未満のGPS衛星から電波を受信して自車の現在位置を特定した場合にはGPS衛星の数により位置の誤差範囲が設定され、例えば、一つのGPS衛星からしか電波を受信せずに自車の現在位置座標を特定した場合(自立航法によって相対位置(現在位置)を特定した場合)には、位置の誤差範囲として10mを示す情報が付加される。
【0052】
すなわち、自車の現在位置を示す情報として位置座標(緯度、経度)を示す情報と位置の誤差範囲(例えば10m)を示す情報が含まれている場合には、該位置座標から半径10m以内の範囲に自車が存在していることが分かる。
【0053】
そこで制御部1は自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であり、自車の現在位置を示す情報の内容を変更する場合、位置の誤差範囲の値を広くする。これにより、位置の誤差範囲が広がるため、他の通信装置(例えば他の車両)は、自車の現在位置を正確に特定することができなくなる。また、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内である場合おいて、自車の現在位置が保護地点の位置に近づくにつれて、位置の誤差範囲の値を段階的に広くすることとしてもよい。
【0054】
上述のように位置の誤差範囲を示す情報のみを変更することとしてもよいが、これによれば位置座標が変更されていないため位置の誤差範囲を広くしても該位置座標を現在位置として特定されてしまう可能性がある(特に4つ以上のGPS衛星により自車の現在位置座標を特定した場合)。そこで、制御部1は位置の誤差範囲を示す情報の内容のみではなく、位置座標を示す情報の内容も変更することとしてもよい。位置座標を示す情報の内容を変更する場合には、変更後の位置座標と位置の誤差範囲(変更後の位置座標を中心とする位置誤差の範囲)に、変更前の位置座標と位置の誤差範囲(変更前の位置座標を中心とする位置誤差の範囲)の全てが含まれるように変更する。
【0055】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。加えて、自車の移動体情報として他の通信装置にとって重要な自車に関する情報(例えば衝突判定のための自車の現在位置を示す情報)が送信されるので、他の通信装置が行う安全支援を妨げることがない。
[第3実施形態]
本発明のナビゲーション装置20の第3実施形態について図3を用いて説明する。図3は本発明のナビゲーション装置20の制御部1が実行する処理の流れを示す第2のフローチャートである。なお、本実施形態のステップS11、ステップS13〜ステップS15は、それぞれ第1実施形態のステップS01、ステップS02〜ステップS04と同一であるため説明を省略する。
【0056】
ステップS12において制御部1は、自車の移動速度が所定速度以上か否かを判定する。ここで自車の移動速度が所定速度以上か否かを判定するのは、自車の移動速度が所定速度以上であれば、その時点における目的地は保護地点ではない、すなわち保護地点を通過すると考えられるため、自車の移動体情報の送信について特別制御状態で行う必要がないからである。
【0057】
自車の移動速度が所定速度以上ではないとき(ステップS12のN)はステップS13に進み、自車の移動速度が所定速度以上であるとき(ステップS12のY)はステップS15に進んで自車の移動体情報の送信について通常制御状態で行う。
【0058】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。加えて、自車の移動速度が所定速度以上である場合には、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるか否かに関わらず、自車の移動体情報の送信について通常制御状態で行うので自車の目的地が保護地点ではないときに他の通信装置が行う安全支援等を妨げることがない。
【0059】
なお、本実施形態においてはステップS12で自車の移動速度が所定速度以上か否かを判定し、自車の移動速度が所定速度以下であるときのみステップS13において自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるであるか否かを判定しているが、順番はフローチャートに示した順序でなくてもよく、例えば先に、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるか否かを判定し、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であるときに自車の移動速度が所定速度以上か否かを判定するものであってもよい。
【0060】
なお、第3実施形態では、移動速度に基づいて保護地点を通過するか否かを判定したが、ステップS12では、保護地点を通過する(保護地点が目的地でない)ことが分かればステップS15に進む処理であればよいため、例えば、目的地までの経路が探索されており、当該経路付近又は当該経路上に保護地点がある場合であっても、当該保護地点が経由地又は目的地に設定されていなければ、自車の現在位置が保護地点の位置を基準とする保護範囲内であっても、自車の移動体情報の送信について通常制御状態で行うこととしてもよい。
【0061】
なお、第1実施形態では自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更する場合について、通常制御状態において自車の移動体情報として送信される複数の自車に関する情報の一部又は全部について自車の移動体情報として送信しないこととし、第2実施形態では自車の移動体情報として送信される自車に関する情報を変更する場合について、通常制御状態において自車の移動体情報として送信される複数の自車に関する情報の一部又は全部について内容を変更することとしたが、これらを組み合わせることとしてもよい。例えば通常制御状態において自車の移動体情報として自車の現在位置を示す情報、自車の進行方向を示す情報、自車の移動速度を示す情報の三つの自車に関する情報が送信されている場合において、特別制御状態において自車の現在位置を示す情報を自車の移動体情報として送信せず(自車の進行方向を示す情報、自車の移動速度を示す情報を自車の移動体情報として送信し)、自車の進行方向を示す情報は進行方向を別の方向に変更して自車の移動体情報として送信することとしてもよい。
【0062】
なお、上記実施形態においては、現在位置を検出する現在位置検出部4や表示部2などの構成をナビゲーション装置20が備える構成として説明を行なったが、これに限ることはなく、例えば、ナビゲーション装置20が搭載された車両に搭載された現在位置検出部4を備える通信装置と無線又は有線通信を行うことで現在位置を取得してもよいし、同様に、表示部2を備える通信装置と無線又は有線通信を介して表示指示を行うことで表示部2に画像が表示されてもよい。
【0063】
また、上記実施例では、通信部8が他の移動体(他の車両)に備えられた他の通信装置(車載通信装置)などと無線通信(移動体情報の送受信)を行なう場合を記載したが、例えば、第3の通信装置が他の通信装置から他の車両の移動体情報を受信し、第3の通信装置から無線又は有線通信を介して通信部8が他の車両の移動体情報を受信してもよい。送信についても同様に通信部8から無線又は有線通信を介して第3の通信装置へ自車の移動体情報を送信し、第3の通信装置から他の通信装置へ自車の移動体情報が送信されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、移動体の移動体情報を他の通信装置に送信する移動体通信装置及び個人情報保護方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1・・・制御部
2・・・表示部
3・・・操作部
4・・・現在位置検出部
5・・・速度検出部
6・・・地図情報記憶部
7・・・バッテリ
8・・・通信部
20・・・ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備えられ、
操作部を介して任意に定められる保護地点の位置を基準とする保護範囲と前記移動体の現在位置を検出する現在位置検出部によって検出された前記移動体の現在位置とに基づいて、通信部を介して行われる前記移動体の移動体情報の送信を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする移動体通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内であるときに、前記通信部を介して行われる前記移動体の移動体情報の送信を制御することを特徴とする請求項1に記載の移動体通信装置。
【請求項3】
前記移動体の移動体情報の送信の制御は、前記移動体の移動体情報を送信しないこと、又は、前記移動体の移動体情報として送信される前記移動体に関する情報を変更することであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動体通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内であるときに、さらに、前記移動体の現在位置と前記保護地点の位置との位置関係に基づいて、前記移動体の移動体情報として送信される前記移動体に関する情報を変更することを特徴とする請求項3に記載の移動体通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内であっても、前記保護地点を通過すると判定したときには、前記移動体の移動体情報の送信について、前記移動体の現在位置が前記保護地点の位置を基準とする前記保護範囲内でないときにおける制御を行うことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の移動体通信装置。
【請求項6】
移動体に備えられた移動体通信装置の個人情報保護方法であって、
前記移動体の現在位置を取得するステップと、
任意に定められた保護地点の位置を基準とする保護範囲と前記移動体の現在位置とに基づいて、通信部を介して行われる前記移動体の移動体情報の送信を制御するステップと、
を有することを特徴とする個人情報保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−199780(P2012−199780A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62655(P2011−62655)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】