移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラム
【課題】 通信障害領域が存在する環境でも、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦可能にする。
【解決手段】 移動ロボット遠隔操縦システム100はCPU(80,20,40)およびメモリ(84,22,42)を含み、メモリの保存領域(170,130,150)には地図情報(138)が、一時記憶領域(180,140,160)には地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域(IO1〜IO5)を示す情報が仮想障害物情報(148)として記憶される。CPUは、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からの情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動ロボット10の少なくとも位置を検出し(S1,S5)、地図情報および仮想障害物情報と検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域を回避するように移動体を移動させる移動制御情報(182a)を作成する(S75,S105)。
【解決手段】 移動ロボット遠隔操縦システム100はCPU(80,20,40)およびメモリ(84,22,42)を含み、メモリの保存領域(170,130,150)には地図情報(138)が、一時記憶領域(180,140,160)には地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域(IO1〜IO5)を示す情報が仮想障害物情報(148)として記憶される。CPUは、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からの情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動ロボット10の少なくとも位置を検出し(S1,S5)、地図情報および仮想障害物情報と検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域を回避するように移動体を移動させる移動制御情報(182a)を作成する(S75,S105)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムに関し、特にたとえば、ロボットや無人搬送車両などの移動体を無線により遠隔操縦する、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや無人搬送車両などの移動体を無線により遠隔操縦する場合、移動体に取り付けられたカメラの画像や、移動体に付属または環境に配置したセンサから得られるセンサ情報,位置情報,周囲状況を示す地図情報などを基に移動制御が行われる。特に、人や他の移動体などが存在する環境下では、これらとの接触事故を防ぐためにも情報をリアルタイムに更新する必要があり、制御に使用する通信は低遅延かつ高信頼を維持しないと安全な操縦が困難である。
【0003】
しかし、屋内環境では、物陰や遠方となって電波が届きづらい場所(圏外)や、天井や壁,床で反射した複数経路の電波が相互干渉(マルチパス干渉)により弱めあう場所(不感帯)などのほか、同一地域において同一周波数を使用する他の無線機器からの電波のよる相互干渉の影響や、電磁ノイズの発生源、電子レンジなどの高周波利用設備からの電磁放射により、遠隔操縦に必要な通信品質が維持できない場所(通信障害領域)が多数存在するため、安定した通信を少ない設備で移動範囲全域にわたり確保するのは容易ではない。なかでも不感帯は送信アンテナに近い場所やアンテナが見える場所にも存在しうるため、移動体に面的な移動を行わせる無線操縦では、その移動範囲内に点在する不感帯が特に問題である。
【0004】
そこで、たとえば特許文献1では、移動ロボットは、移動しながら電波強度マップを作成し、通信不能な地点に移動した場合には電波強度マップに基づいて最も近い通信可能地点まで復帰するようにしている。
【特許文献1】特許第4252333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に、可動扉や車両,歩行者,他の無線操縦による移動体など、移動する物や人に起因する反射波が原因となる干渉では、不感帯の位置や大きさが時間とともに変化する。そのため、特許文献1に記載されているような最後に通信可能であった地点まで戻るといった対策は、この種の動的な不感帯では効果が少ない。このため、一般的には、アンテナ配置やアンテナ自体を工夫したり、ダイバーシチなどにより通信障害が起こる可能性を確率的に減らす対策がとられる。しかし、これには、高価な機器や多数の無線設備が必要となったり、複数の周波数を同時に使用することで無線リソースが足りなくなったりする問題がある。そのうえ、不感帯の発生を確率的に減らすことはできても根本的に無くすことは困難である。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、通信障害領域が存在する環境、とりわけ時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できる、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、移動体を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システムであって、地図情報を記憶する第1メモリ、地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域を示す情報を仮想障害物情報として記憶する第2メモリ、センサからのセンサ情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動体の少なくとも位置を検出する検出手段、および、地図情報および仮想障害物情報と検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域での無線通信障害を回避するように移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段を備える。
【0010】
第1の発明である遠隔操縦システム(100)では、移動体(10)は無線通信により遠隔操縦される。第1メモリ(170,130,150)には、地図情報(138)が記憶される。第2メモリ(180,140,160)には、地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域(IO1〜IO5)を示す情報が仮想障害物情報(148)として記憶される。検出手段(S1,S5)は、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からのセンサ情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動体の少なくとも位置を検出する。制御情報作成手段(S75,S105)は、地図情報および仮想障害物情報と、検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域での無線通信障害を回避するように移動体を制御する制御情報(182)を作成する。
【0011】
第1の発明によれば、仮想障害物情報を加味した地図情報と移動体の位置情報とに基づいて、通信障害領域での無線通信障害を回避するように移動体を制御することで、通信障害領域が存在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【0012】
なお、通信障害領域には、地図情報に対応する区域内で、アンテナから遠く離れたり物理的障害物等に隠れたりして電波が届き難くなった領域(圏外)や、同一のアンテナから射出されて異なる経路を経た電波同士が干渉して相互に弱め合う領域(不感帯)などが含まれる。そして、このような通信障害領域には、移動したり変形したり拡大/縮小したりしない静的なものと、移動したり変形したり拡大/縮小したりする動的なものとの2種類がある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、制御情報作成手段は、通信障害領域を回避するように移動体を移動させる移動制御情報(182a)を作成する。
【0014】
第2の発明によれば、移動制御情報に従って通信障害領域を回避するように移動体を移動させることで、圏外,不感帯などの通信障害領域が存在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となる。
【0015】
なお、通信障害領域には、地図情報に対応する区域内で、複数のアンテナが見通しとなる領域や、多数の移動体が集まる領域も含まれてよい。この種の領域では、無線通信で使用する周波数を変更することで、その領域で生じる通信障害を回避できる可能性がある。このような場合、制御情報作成手段は、移動制御情報に代えて、またはこれに加えて、移動体に周波数を変更させる周波数変更制御情報を作成してもよい。
【0016】
第3の発明は、第2の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、地図情報には、静的な物理的障害物の位置が記述されており、第2メモリは、地図情報に対応する区域内で移動する動的な物理的障害物に関する物理的障害物情報(146)をさらに記憶し、制御情報作成手段は、地図情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報と検出手段の検出結果とに基づいて、制御情報を作成する。
【0017】
第3の発明によれば、さらに動的な物理的障害物情報も加味することで、移動体をより安全に遠隔操縦ができるようになる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、検出手段は、動的な物理的障害物の少なくとも位置をさらに検出し、検出手段の検出結果に基づいて動的な物理的障害物の少なくとも位置を示す物理的障害物情報を作成する物理的障害物情報作成手段、および、地図情報および物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて、当該地図情報に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域および当該地図情報に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域について少なくとも位置を示す仮想障害物情報を作成する仮想障害物情報作成手段をさらに備え、第2メモリは、物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報および仮想障害物情報作成手段によって作成された仮想障害物情報を記憶する。
【0019】
第4の発明では、検出手段によって、動的な物理的障害物の少なくとも位置がさらに検出される。物理的障害物情報作成手段(S7)は、このような検出手段の検出結果に基づいて、動的な物理的障害物の少なくとも位置を示す物理的障害物情報を作成する。さらに、仮想障害物情報作成手段(S9)は、記憶された地図情報およびこうして作成された物理的障害物情報に基づいて、当該地図情報に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域、および当該地図情報に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域について、少なくとも位置を示す仮想障害物情報を作成する。第2メモリには、こうして作成された物理的障害物情報および仮想障害物情報が記憶される。
【0020】
第4の発明によれば、地図に記載されていない動的な物理的障害物(人物,車両など)をセンサで検出し、さらに、地図に記載された静的な障害物に起因して発生する静的な通信障害領域と、こうして検出した動的な障害物に起因して発生しかつ移動する動的な通信障害領域とを、たとえば計算,計測,統計処理等によって検出することで、静的な不感帯や圏外領域に加えて、時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【0021】
なお、仮想障害物情報作成手段は、地図情報および物理的障害物情報に基づいて、地図情報に対応する区域内で複数のアンテナが見通しとなる領域や多数の移動ロボットが集まる領域も通信障害領域としてさらに検出し、この種の領域も仮想障害物と見なした仮想障害物情報を作成してもよい。
【0022】
第5の発明は、第4の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、検出手段は、移動体の移動方向と、動的な物理的障害物の移動方向とをさらに検出し、物理的障害物情報作成手段は、検出手段の検出結果に基づいて動的な物理的障害物の位置および移動方向を示す物理的障害物情報を作成し、仮想障害物情報作成手段は、地図情報および物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて動的な障害領域の位置および移動方向を示す仮想障害物情報を作成し、制御情報作成手段は、移動体の移動方向に静的な物理的障害物および静的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合(S99:YES)には直ちに回避移動を行わせる移動制御情報を生成し、移動体の移動方向に、静的な物理的障害物および静的な仮想障害のいずれも存在せず、かつ移動する動的な物理的障害物および移動する動的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合(S99:N0→S101:YES)には、当該移動体の当該移動障害物への到達予想時間が閾値を下回った時点で回避移動を行わせる移動制御情報を生成する。
【0023】
第5の発明によれば、移動体の移動方向に存在する障害物が移動障害物か固定障害物かに応じて適切なタイミングで回避行動を行わせるので、移動体を安全かつ効率的に遠隔操縦できるようになる。
【0024】
第6の発明は、第3ないし5のいずれかにの発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、地図情報に対応する区域に配置されて移動体との間で無線通信を行うためのアンテナ(202a〜206a)をさらに備え、仮想障害物情報作成手段は、地図情報および物理的障害物情報に基づいてアンテナからの電界の強度分布を計算し、計算された電界強度が閾値よりも小さい領域を通信障害領域として特定し、そして、特定された通信障害領域の少なくとも位置を示す情報を仮想障害物情報として作成する。
【0025】
第6の発明によれば、精度の高い仮想障害物情報を計算によって作成することができる。
【0026】
第7の発明は、第6の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、ネットワーク(200)に接続されたサーバ(14)をさらに備え、アンテナは、移動体のネットワークへのアクセスポイント(202〜206)に設けられ、物理的障害物情報作成手段および仮想障害物情報作成手段はサーバに設けられ、そして制御情報作成手段は移動体に設けられる。
【0027】
第7の発明によれば、障害物情報の作成機能をサーバ側に集約する一方、制御情報の作成機能を移動体側に持たせることで、特に移動体の個数が多い場合に、効率的な制御が行える。
【0028】
第8の発明は、第7の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、ネットワークに接続された遠隔操作装置(12)をさらに備え、第1メモリおよび第2メモリは、サーバ,移動体および遠隔操縦装置の各々に設けられる。
【0029】
第8の発明によれば、サーバからネットワークを介して移動体および遠隔操縦装置の各々に障害物情報を配信することで、より安全な遠隔操縦が可能になる。
【0030】
第9の発明は、第1ないし8のいずれかにの発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、センサの一部(40,46,58,70,112a,112b)は移動体に設けられ、センサの他の一部(122,124)は地図情報に対応する区域に配置される。
【0031】
第9の発明によれば、移動体に搭載されたセンサからの情報と、移動体の移動区域内に配置されたセンサからの情報とに基づいて、移動体の位置や移動方向さらには動的な物理障害物の位置や移動方向を精度よく検出することができる。
【0032】
第10の発明は、移動体(10)を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システム(100)のコンピュータ(80&84,20&22,40&42)において実行される制御プログラム(174,134,136)であって、制御プログラムはコンピュータを、地図情報(138)を記憶する第1メモリ(170,130,150)、地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域(IO1〜IO5)を示す情報を仮想障害物情報(148)として記憶する第2メモリ(180,140,160)、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からのセンサ情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動体の少なくとも位置を検出する検出手段(S1,S5)、および、地図情報および仮想障害物情報と検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域通信障害領域での無線通信障害を回避するように前記移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段(S75)として機能させる。
【0033】
第10の発明でも、第1の発明と同様に、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、通信障害領域が存在する環境、とりわけ時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できる、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムが実現される。
【0035】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施例である移動ロボット遠隔操縦システムの構成を示す図解図であり、このシステムは、移動ロボット、サーバおよび遠隔操縦装置を含む。
【図2】移動ロボットの外観図を示す図解図である。
【図3】移動ロボットの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】遠隔操縦装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【図5】サーバの電気的構成の一例を示すブロック図である。
【図6】遠隔操作装置のディスプレイに表示される画面の一例を示す図解図であり、この画面には、移動ロボット遠隔操縦システムが適用される環境を示す地図が描かれる。
【図7】遠隔操作装置のディスプレイに表示される画面の他の一例を示す図解図であり、この画面には、図6の地図に重ねて、物理的/仮想的障害物がさらに描かれる。
【図8】サーバのメモリマップを示す図解図である。
【図9】遠隔操縦装置のメモリマップを示す図解図である。
【図10】移動ロボットのメモリマップを示す図解図である。
【図11】メモリマップ内の主要な項目の詳細を示す図解図であり、(A)は物理的障害物情報を、(B)は仮想障害物情報をそれぞれ示す。
【図12】サーバのCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図13】図12に示された仮想障害物の領域配置の計算処理の詳細を示すフロー図である。
【図14】遠隔操縦装置のCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図15】移動ロボットのCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図16】図15に示された移動制御情報生成処理の詳細を示すフロー図である。
【図17】図12に示された仮想障害物の領域配置の計算方法を示す図解図であり、(A)は格子状に分割された地図を、(B)は各格子点での電解強度に基づいて検出される仮想障害物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照して、この発明の一実施例である移動ロボット遠隔操縦システム(以下“遠隔操縦システム”)100は、たとえば博物館,アトラクション施設,イベント会場などに配置された移動ロボット10を、別の場所たとえば研究室,監視センタなどから、LAN,インターネットなどのネットワーク200を介して遠隔操縦するためのシステムである。
【0038】
最初に、概要を説明する。遠隔操縦システム100は、移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14を含む。ネットワーク200には、それぞれがアンテナ(202a〜206a:図6参照)を有する複数たとえば3つの無線アクセスポイント(以下“AP”)202〜206が設けられており、移動ロボット10は、AP202〜206のいずれか1つを介してネットワーク200に接続される。言い換えると、移動ロボット10は、移動に伴って接続先をたとえばAP202→AP204→…のように順次切替えていくこと(いわゆる“ハンドオーバ”)によって、ネットワーク200との接続を維持することができる。
【0039】
一方、遠隔操縦装置12およびサーバ14は、それぞれ専用のAP(図示せず)を介してネットワーク200に接続される。移動ロボット10と各AP202〜206との間の接続は、たとえばIEEE802.11方式などの無線接続であるが、遠隔操縦装置12およびサーバ14の各々とその専用APとの間の接続は、無線接続でも、LANケーブルなどによる有線接続でもよい。
【0040】
移動ロボット10は、たとえば自律型のロボットであり、遠隔操縦によってだけでなく、予め記憶した地図(間取り図)情報および自身に備わる各種センサからのセンサ情報に基づいて自律的に、移動ないし行動することもできる。移動ロボット10によるセンサ情報はまた、ネットワーク200経由で遠隔操縦装置12に送信される。
【0041】
サーバ14には、複数たとえば2つのレーザレンジファインダ(以下“LRF”)122,124が接続される。各LRF122,124は、移動ロボット10が移動できる場所(環境)に設置されて、自身から移動ロボット10までの距離を計測し、距離データを出力する。サーバ14は、移動ロボット10に記憶されたものと同じ地図情報を記憶しており、この地図情報および各LRF122,124からの距離データに基づいて、環境における移動ロボット10(および他の移動体や人体などの物理的障害物)の位置および移動方向を計算する。この計算結果を示す位置&方向情報は、ネットワーク200経由で移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信される。
【0042】
なお、LRFは一般に、レーザーを照射し、それが目標で反射して戻ってくるまでの時間に基づいて、当該目標までの距離を計測するものである。LRF122,124は、たとえば、トランスミッタ(図示せず)から照射したレーザーを回転ミラー(図示せず)で反射させて、前方を扇状に一定角度(たとえば0.5度)ずつスキャンすることで、単に目標までの距離を計測するだけでなく、目標の表面に関する2次元距離情報(表面の形状を角度および距離の2変数で記述した情報)も生成することができる。LRF122,124からの距離データには、このような2次元距離情報が含まれており、サーバ14は、目標が移動ロボット10であるか、他の移動体ないし人体といった物理的障害物であるかを識別することができる。
【0043】
なお、ここでいう「物理的障害物」には、前述の地図情報に記述されている静的な障害物(たとえば建造物,壁など)は含まれない。つまり、単に「物理的障害物」という場合、車や人といった移動する(動的な)物理的障害物を意味する。
【0044】
なお、環境に設置されて、移動ロボット10までの距離を計測するセンサ(距離センサ)は、LRFに限らず、たとえば赤外線距離センサやレーダなどでもよい。また、サーバ14には、距離センサ以外のセンサたとえばカメラ(イメージセンサ)なども接続されてよい。この場合、サーバ14は、LRF122,124からの距離データに加えて、カメラからの画像データも参照することで、移動ロボット10や物理的障害物をより高い精度で識別し、各々の領域配置(位置,サイズおよび形状など)をより正確に特定することができる。さらに、移動ロボット10が検出したセンサ情報をサーバ14に転送すれば、サーバ14は、物理的障害物の領域配置を特定する際にこれを利用することができる。
【0045】
こうして識別された物理的障害物に関する情報(種類ないし属性,領域配置など)は、物理的障害物情報として、サーバ14から移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信される。
【0046】
さらに、サーバ14は、地図情報および物理的障害物情報に基づいて、地図上での電界強度分布をレイトレーシングなどの手法で計算し、電界強度が閾値よりも低い領域の配置(位置,サイズおよび形状など)を特定する。その領域が移動している場合には、移動方向および速度も特定される。こうして特定された領域に関する情報(領域配置,移動方向および速度など)は、仮想障害物情報として、サーバ14から移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信される。
【0047】
遠隔操縦装置12は、移動ロボット10から得たセンサ情報およびサーバ14から得た位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報などを表示するディスプレイ(30:図4参照)と、オペレータによって操作される操作パネル(28:図4参照)とを備える。オペレータは、ディスプレイ(30)に表示される各種情報を通じて移動ロボット10の動き(移動および/または動作を含む)を監視し、必要に応じてその動きを制御するべく操作パネル(28)を操作する。操作パネル(28)の操作に基づく操作情報は、ネットワーク200経由で移動ロボット10に送信される。
【0048】
移動ロボット10では、記憶している地図情報、自らのセンサ情報、サーバ14からの位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報、ならびに遠隔操縦装置12からの操作情報に基づいて動き制御情報が生成され、この生成された動き制御情報に基づいて各種モータ(92〜98,110,36aおよび36b:図3参照)が駆動される。こうして、移動ロボット10の自律的な/遠隔操縦による動きが実現される。
【0049】
特に、移動ロボット10は、物理的障害物情報さらには仮想障害物情報を加味した地図情報に基づいて経路選択を行うことで、物理的障害物だけでなく、仮想障害物つまり電波強度の低い領域(圏外や不感帯)を回避しながら移動することができる。そして、物理的障害物情報および仮想障害物情報はリアルタイムに更新されるため、移動する物や人が存在したり、時間的に変化する不感帯が点在したりする環境でも、移動ロボット10を安全に遠隔操縦することができる。
【0050】
なお、移動ロボット10は、相互作用指向のロボットでもあり、人間のようなコミュニケーション対象との間で、身振り手振りのような身体動作あるいは音声による会話といったコミュニケーション行動を実行する機能も有している。
【0051】
次に、各要素について詳しく説明する。図2はこの実施例の移動ロボット10の外観を示す正面図である。図2を参照して、移動ロボット10は台車30を含み、台車30の下面には右車輪32aおよび左車輪32b(特に区別しない場合には「車輪32」と記す)ならびに1つの従輪34が設けられる。右車輪32aおよび左車輪32bは、右車輪モータ36aおよび左車輪モータ36b(図4参照)によってそれぞれ独立に駆動され、台車30ひいては移動ロボット10全体を前後左右の任意方向に動かすことができる。また、従輪34は車輪32を補助する補助輪である。
【0052】
台車30の上には、円柱形のセンサ取り付けパネル38が設けられ、このセンサ取り付けパネル38には、多数の赤外線距離センサ40が取り付けられる。これらの赤外線距離センサ40は、センサ取り付けパネル38つまり移動ロボット10自身と、その周囲の物体(人間や障害物など)との距離を測定するものである。
【0053】
なお、この実施例では、距離センサとして、赤外線距離センサを用いるようにしてあるが、赤外線距離センサに代えて、小型のLRF、超音波距離センサまたはミリ波レーダなどを用いることもできるし、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0054】
センサ取り付けパネル38の上には、胴体42が直立するように設けられる。また、胴体42の前方中央上部(人の胸に相当する位置)には、上述した赤外線距離センサ40がさらに設けられており、これによって前方の対象たとえば人間との距離を計測する。また、胴体42には、その側面側上端部のほぼ中央から伸びる支柱44が設けられ、支柱44の上には、アンテナ118ならびに全方位カメラ46が設けられる。
【0055】
アンテナ118は、各AP202〜206と無線通信を行うための無指向性アンテナであり、任意の方向からの無線信号を受信し、任意の方向に無線信号を送信する。なお、アンテナ118として、その指向性を電気的に変化させることが可能な可変指向性アンテナ(アレーアンテナなど)を用いてもよい。
【0056】
全方位カメラ46は、移動ロボット10の周囲を撮影するものであり、後述する眼カメラ70とは区別される。全方位カメラ46としては、たとえばCCDやCMOSのような固体撮像素子を用いるカメラを採用することができる。なお、これら赤外線距離センサ40,アンテナ118および全方位カメラ46の設置位置は、当該部位に限定されず適宜変更されてもよい。
【0057】
胴体42の両側面上端部(人の肩に相当する位置)には、それぞれ、肩関節48Rおよび肩関節48Lによって、上腕50Rおよび上腕50Lが設けられる。図示は省略するが、肩関節48Rおよび肩関節48Lは、それぞれ、直交する3軸の自由度を有する。すなわち、肩関節48Rは、直交する3軸のそれぞれの軸廻りにおいて上腕50Rの角度を制御できる。肩関節48Rの或る軸(ヨー軸)は、上腕50Rの長手方向(または軸)に平行な軸であり、他の2軸(ピッチ軸およびロール軸)は、その軸にそれぞれ異なる方向から直交する軸である。同様にして、肩関節48Lは、直交する3軸のそれぞれの軸廻りにおいて上腕50Lの角度を制御できる。肩関節48Lの或る軸(ヨー軸)は、上腕50Lの長手方向(または軸)に平行な軸であり、他の2軸(ピッチ軸およびロール軸)は、その軸にそれぞれ異なる方向から直交する軸である。
【0058】
また、上腕50Rおよび上腕50Lのそれぞれの先端には、肘関節52Rおよび肘関節52Lが設けられる。図示は省略するが、肘関節52Rおよび肘関節52Lは、それぞれ1軸の自由度を有し、この軸(ピッチ軸)の軸回りにおいて前腕54Rおよび前腕54Lの角度を制御できる。
【0059】
前腕54Rおよび前腕54Lのそれぞれの先端には、人の手に相当する球体56Rおよび球体56Lがそれぞれ固定的に設けられる。ただし、指や掌の機能が必要な場合には、人間の手の形をした「手」を用いることも可能である。また、図示は省略するが、台車30の前面、肩関節48Rと肩関節48Lとを含む肩に相当する部位、上腕50R、上腕50L、前腕54R、前腕54L、球体56Rおよび球体56Lには、それぞれ、接触センサ58(図3で包括的に示す)が設けられる。台車30の前面の接触センサ58は、台車30への人間や他の障害物の接触を検知する。したがって、移動ロボット10は、その自身の移動中に障害物との接触が有ると、それを検知し、直ちに車輪32の駆動を停止して移動ロボット10の移動を急停止させることができる。また、その他の接触センサ58は、当該各部位に触れたかどうかを検知する。なお、接触センサ58の設置位置は、当該部位に限定されず、適宜な位置(人の胸、腹、脇、背中および腰に相当する位置)に設けられてもよい。
【0060】
胴体42の中央上部(人の首に相当する位置)には首関節60が設けられ、さらにその上には頭部62が設けられる。図示は省略するが、首関節60は、3軸の自由度を有し、3軸の各軸廻りに角度制御可能である。或る軸(ヨー軸)は移動ロボット10の真上(鉛直上向き)に向かう軸であり、他の2軸(ピッチ軸、ロール軸)は、それぞれ、それと異なる方向で直交する軸である。
【0061】
頭部62には、人の口に相当する位置に、スピーカ64が設けられる。スピーカ64は、移動ロボット10が、それの周辺の人間に対して音声ないし音によってコミュニケーションを取るために用いられる。また、人の耳に相当する位置には、マイク66Rおよびマイク66Lが設けられる。以下、右のマイク66Rと左のマイク66Lとをまとめてマイク66と言うことがある。マイク66は、周囲の音、とりわけコミュニケーションを実行する対象である人間の音声を取り込む。さらに、人の目に相当する位置には、眼球部68Rおよび眼球部68Lが設けられる。眼球部68Rおよび眼球部68Lは、それぞれ眼カメラ70Rおよび眼カメラ70Lを含む。以下、右の眼球部68Rと左の眼球部68Lとをまとめて眼球部68と言うことがある。また、右の眼カメラ70Rと左の眼カメラ70Lとをまとめて眼カメラ70と言うことがある。
【0062】
眼カメラ70は、移動ロボット10に接近した人間の顔や他の部分ないし物体などを撮影して、それに対応する映像信号を取り込む。また、眼カメラ70は、上述した全方位カメラ46と同様のカメラを用いることができる。たとえば、眼カメラ70は、眼球部68内に固定され、眼球部68は、眼球支持部(図示せず)を介して頭部62内の所定位置に取り付けられる。図示は省略するが、眼球支持部は、2軸の自由度を有し、それらの各軸廻りに角度制御可能である。たとえば、この2軸の一方は、頭部62の上に向かう方向の軸(ヨー軸)であり、他方は、一方の軸に直交しかつ頭部62の正面側(顔)が向く方向に直行する方向の軸(ピッチ軸)である。眼球支持部がこの2軸の各軸廻りに回転されることによって、眼球部68ないし眼カメラ70の先端(正面)側が変位され、カメラ軸すなわち視線方向が移動される。なお、上述のスピーカ64、マイク66および眼カメラ70の設置位置は、当該部位に限定されず、適宜な位置に設けられてよい。
【0063】
このように、この実施例の移動ロボット10は、車輪32の独立2軸駆動、肩関節48の3自由度(左右で6自由度)、肘関節52の1自由度(左右で2自由度)、首関節60の3自由度および眼球支持部の2自由度(左右で4自由度)の合計17自由度を有する。
【0064】
図3は移動ロボット10の電気的な構成を示すブロック図である。図3を参照して、移動ロボット10は、CPU80を含む。CPU80は、マイクロコンピュータ或いはプロセッサとも呼ばれ、バス82を介して、メモリ84、モータ制御ボード86、センサ入力/出力ボード88および音声入力/出力ボード90に接続される。CPU80は、RTC(Real Time Clock)80aを含んでおり、各センサからの信号ないしデータ(センサ情報)に対してRTCに基づく時刻データを付加する。
【0065】
メモリ84は、図示は省略をするが、不揮発メモリ(保存領域)としてSSD(Solid State Drive)およびROMと、揮発メモリ(一時記憶領域)としてRAMとを含む。SSD,ROMつまり保存領域(180:図10参照)には、移動ロボット10自身の動きや遠隔操縦装置12,サーバ14との間の通信を制御するための各種の制御プログラム,地図情報など(後述)が予め記憶される。RAMつまり一時記憶領域(190:図10参照)は、ワークメモリないしバッファメモリとして、送受信データを一時保持したり、制御プログラムによって参照される各種の情報(後述)を更新可能に記憶したりする。
【0066】
モータ制御ボード86は、たとえばDSPで構成され、各腕や首関節および眼球部などの各軸モータの駆動を制御する。すなわち、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、右眼球部68Rの2軸のそれぞれの角度を制御する2つのモータ(図3では、まとめて「右眼球モータ92」と示す。)の回転角度を制御する。同様に、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、左眼球部68Lの2軸のそれぞれの角度を制御する2つのモータ(図3では、まとめて「左眼球モータ94」と示す。)の回転角度を制御する。
【0067】
また、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、肩関節48Rの直交する3軸のそれぞれの角度を制御する3つのモータと肘関節52Rの角度を制御する1つのモータとの計4つのモータ(図3では、まとめて「右腕モータ96」と示す。)の回転角度を制御する。同様に、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、肩関節48Lの直交する3軸のそれぞれの角度を制御する3つのモータと肘関節52Lの角度を制御する1つのモータとの計4つのモータ(図3では、まとめて「左腕モータ98」と示す。)の回転角度を制御する。
【0068】
さらに、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、首関節60の直交する3軸のそれぞれの角度を制御する3つのモータ(図3では、まとめて「頭部モータ110」と示す。)の回転角度を制御する。そして、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、右車輪32aを駆動する右車輪モータ36a、左車輪32bを駆動する左車輪モータ36bの回転角度を、それぞれ個別に制御する。なお、この実施例では、車輪モータ36を除くモータは、制御を簡素化するためにステッピングモータ(すなわち、パルスモータ)を用いる。ただし、車輪モータ36と同様に直流モータを用いるようにしてもよい。また、移動ロボット10の身体部位を駆動するアクチュエータは、電流を動力源とするモータに限らず適宜変更されてもよい。たとえば、他の実施例では、エアアクチュエータなどが適用されてもよい。
【0069】
センサ入力/出力ボード88は、モータ制御ボード86と同様に、たとえばDSPで構成され、各センサからの信号(センサ情報)を取り込んでCPU80に与える。すなわち、赤外線距離センサ40のそれぞれからの反射時間に関するデータがこのセンサ入力/出力ボード88を通じてCPU80に入力される。また、全方位カメラ46からの映像信号が、必要に応じてセンサ入力/出力ボード88で所定の処理を施してからCPU80に入力される。眼カメラ70からの映像信号も、同様に、CPU80に入力される。また、上述した複数の接触センサ58(図3では、まとめて「接触センサ58」と示す。)からの信号がセンサ入力/出力ボード88を介してCPU80に与えられる。
【0070】
また、センサ入力/出力ボード88には、右車輪32aの回転速度(車輪速)を検出する右車輪速センサ112a、左車輪32bの回転速度を検出する左車輪速センサ112bがさらに接続される。そして、右車輪速センサ112aおよび左車輪速センサ112bからのそれぞれから、一定時間における右車輪32aおよび左車輪32bの回転数(車輪速)に関するデータが、センサ入力/出力ボート88を通じて、CPU80に入力される。
【0071】
音声入力/出力ボード90も、他の入力/出力ボードと同様にたとえばDSPで構成され、図3ではCPU80,メモリ84または音声入力/出力ボード90から与えられる音声合成データに従った音声または声がスピーカ64から出力される。また、マイク66からの音声入力が、音声入力/出力ボード90を介してCPU80に与えられる。
【0072】
また、CPU80は、バス82を介して通信LANボード114に接続される。通信LANボード114は、たとえばDSPで構成され、CPU80から与えられた送信データを無線通信回路116に与え、無線通信回路116は送信データを、アンテナ118からネットワーク200を介して外部コンピュータ(遠隔操縦装置12,サーバ14)に送信する。また、通信LANボード114は、無線通信回路116を介してアンテナ118でデータを受信し、受信したデータをCPU80に与える。アンテナ118で受信される受信データには、遠隔操縦装置12からの操作情報、および/または、サーバ14からの位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報が含まれる。
【0073】
図4は、遠隔操縦装置12の電気的な構成を示すブロック図である。図4を参照して、遠隔操縦装置12は、CPU20,メモリ22,通信LANボード24,通信回路26,操作パネル28およびディスプレイ30を備える。通信回路26は、図示しない専用APを介してネットワーク200に無線または有線で接続される。
【0074】
操作パネル28は、各種の操作ボタン,タッチパネルなどで構成され、オペレータが移動ロボット10の動きを制御するべく行う操作を受け付けて、その操作データを出力する。CPU20は、RTC20aを含んでおり、操作パネル28により入力される操作データに対し、RTC20aに基づく時刻データを付加し、これ(時刻付き操作データ)を送信データ(操作情報)としてメモリ22に書き込む。CPU20はまた、メモリ22に記憶された送信データを時刻データに従って読み出し、通信LANボード24に与える。通信LANボード24は、たとえばDSPで構成され、CPU20から与えられた送信データを通信回路26からネットワーク200を通して移動ロボット10に送信する。
【0075】
通信LANボード24はまた、移動ロボット10およびサーバ14からネットワーク200経由で送られてくるデータ(センサ情報ならびに位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報)を通信回路26で受信し、その受信データをCPU20に与える。CPU20は、与えられた受信データをメモリ22に書き込みつつ、こうしてメモリ22に記憶された受信データに基づいて、保持している地図情報,移動ロボット10からのセンサ情報ならびにサーバ14からの位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報を視覚的に示す障害物付きの地図画面(図7参照)をディスプレイ30に表示する。先述したようなオペレータによる操作は、こうしてディスプレイ30に表示される地図画面を参照しながら行われる。
【0076】
メモリ22には、遠隔操縦装置12が以上のような動作を行うための各種の制御プログラム,地図情報など(図9参照:後述)が予め記憶される。
【0077】
図5は、サーバ14の電気的な構成を示すブロック図である。図5を参照して、サーバ14は、CPU40,メモリ42,通信LANボード44,通信回路46およびセンサ入力/出力ボード48を備える。通信回路46は、図示しない専用APを介してネットワーク200に無線または有線で接続される。センサ入力/出力ボード48には、図1に示したLRF122,124(さらにはレーダやカメラ)が接続される。
【0078】
CPU40は、RTC40aを含んでおり、LRF122,124からセンサ入力/出力ボード48を通して入力される距離データ(さらにはレーダの計測データ,カメラの画像データ)に対して、RTC40aから得られる時刻データを付加し、この時刻付き距離データ(さらには時刻付き計測データ,時刻付き画像データ)をメモリ42に書き込む。CPU40はまた、こうしてメモリ42に記憶された時刻付き距離データ等と、予めメモリ42に記憶された地図情報とに基づいて、環境における移動ロボット10の位置および移動方向ならびに物理的障害物の領域配置を計算し、この計算結果に基づいて仮想障害物の領域配置をさらに計算し、そして結果(位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報)を送信データとして再びメモリ42に書き込む。
【0079】
通信LANボード44は、たとえばDSPで構成され、こうしてメモリ42に記憶された送信データを通信回路46からネットワーク200を通して移動ロボット10に送信する。メモリ42には、サーバ14が以上のような動作を行うための各種の制御プログラム,地図情報など(図8参照:後述)が予め記憶される。
【0080】
図6には、遠隔操縦システム100が適用される環境に対応する地図が示される。遠隔操縦装置12で地図を表示させるモードが選択されると、ディスプレイ30には、メモリ22に記憶された地図情報に基づいて、図6に示すような地図画面が表示される。
【0081】
この環境は、たとえば博物館の一室であり、そこには、通路、6個の展示棚、および3個のAPに対応する3個のアンテナが適宜な位置に設けられている。移動ロボット10は、このような室内を自律的にまたは遠隔操縦によって移動する。
【0082】
この環境に対応する地図画面には、図6に示されるように、通路の画像300、展示棚の画像302〜312、およびAP202〜206に対応するアンテナの画像202a〜206aが描画されている。なお、以下では、通路の画像300や展示棚の画像302を単に通路300や展示棚302のように略記する。
【0083】
なお、環境は、図6のような屋内環境とは限らず、屋外環境でもよい。その場合、図6に示された展示棚の画像302〜312はビルなどの建造物を、通路の画像300は道路を示すものとなる。
【0084】
図7には、図6の地図上に物理的障害物および仮想障害物を配置した障害物付きの地図が示される。遠隔操作装置12で障害物付き地図を表示させる操作が行われると、ディスプレイ30には、メモリ22に記憶された地図情報,位置&移動方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報に基づいて、図7に示すような障害物付き地図画面が表示される。この障害物付き地図画面には、図6の地図上にさらに、移動ロボット10を示すマーク“R”、物理的障害物を示すマーク“PO”、および仮想障害物を示すマーク“IO”が描画される。仮想障害物には、移動したり変形したり拡大/縮小したりするもの(動的な仮想障害物)と、移動も変形も拡大/縮小もしないもの(静的な仮想障害物)との2種類がある。
【0085】
たとえば、展示室の右奥手には、展示棚310に隠れてどのアンテナも見通せない領域があり、そこが圏外となっている。この圏外領域は、移動も変形も拡大/縮小もしないため、静的な仮想障害物として検出される。展示室の右奥手に描かれた2つのマーク“IO1”および“IO2”は、このような静的な仮想障害物を示している。
【0086】
また、展示棚312の右手にも圏外領域が生じているが、こちらの圏外領域は、移動はしないものの、付近を通行する人や車両の影響で変形したり拡大/縮小したりするので、動的な仮想障害物として検出される。展示棚312の右手に描かれたマーク“IO5”は、このような動的な仮想障害物を示す。
【0087】
一方、通路300から展示棚306に向かって無人搬送車両(以下“車両”)が移動してきており、この車両が物理的障害物として地図上にマーク“PO1”で示されている。また、接近してきた車両に起因する不感帯が展示棚306の手前に発生しつつあり、この拡大する不感帯に対応する動的な仮想障害物を示すマーク“IO3”が、マーク“PO1”の近くに描画されている。
【0088】
また、展示棚308の手前を人が歩いており、この歩行者つまり物理的障害物を示すマーク“PO2”が展示棚308の手前に描画される。さらに、展示棚308の手前には、この歩行者に起因する不感帯が生じており、この移動する不感帯に対応する動的な仮想障害物を示すマーク“IO4”も描画される。
【0089】
図8には、サーバ14のメモリマップが示される。図8を参照して、メモリ42には、保存領域130および一時記憶領域140が形成され、保存領域130には、通信制御プログラム132、位置&移動方向計算プログラム134、障害物領域配置計算プログラム136および地図情報138などが記憶される。通信制御プログラム132は、サーバ14がネットワーク200を通じて移動ロボット10および遠隔操作装置12と通信を行うための制御プログラムであり、図12のステップS11に対応する。位置&移動方向計算プログラム134は、一時記憶領域140に記憶された距離データ(2次元距離情報)142に基づいて移動ロボット10の位置および移動方向を計算するためのプログラムであり、図12のステップS5に対応する。障害物領域配置計算プログラム136は、LRF122,124からの距離データ142に基づいて、移動ロボット10の移動範囲に存在する障害物(物理的障害物および仮想障害物)の領域配置を計算するためのプログラムであり、図12のステップS7およびS9に対応する。地図情報138は、移動ロボット10の移動範囲に対応する地図情報であり、たとえば図6の地図画面に対応する。
【0090】
一時記憶領域140には、距離データ142、位置&方向情報144、物理的障害物情報146および仮想障害物情報148などが一時記憶される。距離データ142は、LRF122,124から出力されたデータであり、これに基づいて移動ロボット10の位置および移動方向が計算される。また、距離データ142に含まれる2次元距離情報に基づいて、移動ロボット10および物理的障害物の領域配置が計算される。位置&方向情報144は、移動ロボット10(および他の移動体)の位置および移動方向を示す情報であり、移動ロボット10および遠隔操縦装置12の各々に送信される。物理的障害物情報146および仮想障害物情報148は、移動ロボット10の移動範囲に存在する物理的障害物および仮想障害物の領域配置を示す情報であり、移動ロボット10および遠隔操縦装置12の各々に送信される。
【0091】
図9には、遠隔操縦装置12のメモリマップが示される。図9を参照して、メモリ22には、保存領域150および一時記憶領域160が形成され、保存領域150には、通信制御プログラム152、入出力制御プログラム154および地図情報138などが記憶される。通信制御プログラム152は、遠隔操縦装置12がネットワーク200を通じて移動ロボット10およびサーバ14と通信を行うための制御プログラムであり、図14のステップS45に対応する。入出力制御プログラム154は、操作パネル28からの操作入力およびディスプレイ30への画面出力を制御するためのプログラムであり、図14のステップS41,S43およびS49に対応する。地図情報138は、サーバ14に記憶されているものと同じ地図情報である。
【0092】
一時記憶領域160には、センサ情報162、操作情報164、位置&方向情報144、物理的障害物情報146および仮想障害物情報148が一時記憶される。センサ情報162は、移動ロボット10から受信した情報であり、移動ロボット10に備わるセンサ(40,46,58,70,112aおよび112b)の検出結果を示す。操作情報164は、遠隔操縦装置12自身により行われた操作内容(コマンド)を示す情報であり、移動ロボット10に送信される。位置&方向情報144は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10(および他の移動体)の位置および移動方向を示す。物理的障害物情報146および仮想障害物情報148は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10の移動範囲に存在する物理的障害物および仮想障害物の領域配置を示す。
【0093】
図10には、移動ロボット10のメモリマップが示される。図10を参照して、メモリ84には、保存領域170、一時記憶領域180およびパラメータ領域190が形成され、保存領域170には、通信制御プログラム172、動き制御プログラム174および地図情報138などが記憶される。通信制御プログラム172は、移動ロボット10がネットワーク200を通じて遠隔操縦装置12およびサーバ14と通信を行うための制御プログラムであり、図15のステップS65およびS71に対応する。動き制御プログラム174は、動き制御情報182に基づいて移動ロボット10の動きを制御するためのプログラムであり、図15のステップS75およびS77に対応する。地図情報138は、サーバ14に記憶されているものと同じ地図情報である。
【0094】
一時記憶領域180には、センサ情報162、操作情報164、位置&方向情報144,物理的障害物情報146、仮想障害物情報148および動き制御情報182が記憶される。センサ情報162は、移動ロボット10自身に備わるセンサ(40,46,58,70,112aおよび112b)の検出結果を示す情報であり、具体的には、周辺に存在する対象物や壁面までの距離を示す距離情報、周辺を各種カメラで捉えた画像情報、対象物との接触情報、および左右の車輪の速度を示す車輪速情報などが含まれる。操作情報164は、遠隔操縦装置12から受信した情報であり、遠隔操縦装置12により行われた操作内容(コマンド)を示す。位置&方向情報144は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10自身(およびその他の移動体)の位置および移動方向を示す。物理的障害物情報146および仮想障害物情報148は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10自身の移動範囲に存在する物理的障害物および仮想障害物の領域配置を示す。
【0095】
動き制御情報182は、移動ロボット10自身の動き(各種モータ36a,36b,92〜98および110の動作)を制御するための情報であり、上述したセンサ情報162,操作情報164,位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて生成される。動き制御情報182には、移動(主として右左の車輪モータ36aおよび36bの動作)を制御するための移動制御情報182aと、動作(主として右左の眼球モータ92および94,右左の腕モータ96および98ならびに頭部モータ110の動作)を制御するための動作制御情報182bとが含まれる。
【0096】
パラメータ領域190には、ユーザによって設定される各種のパラメータ、具体的にはモード192および目標位置194が記憶され、必要に応じて仮の目標位置196がさらに記憶される。モード192には、所定の位置(動かない目標)に向かって移動するモード(通常モード)と、動く目標を追尾するモード(追尾モード)との2種類がある。目標位置194は、目標の位置(座標)を示すパラメータである。仮の目標位置196は、目標への進行方向に障害物がある場合に、目標に代えて設定される仮の目標の位置(座標)を示すパラメータである。
【0097】
図11(A)には、物理的障害物情報146の構成例が示される。図11(A)を参照して、物理的障害物情報146には、各物理的障害物PO1,PO2について、その物理的障害物を識別するID、その物理的障害物を検出した時刻、その物理的障害物の地図上での領域配置(位置,サイズ,形状など)、ならびにその物理的障害物の移動方向および速度が記述される。
【0098】
図11(B)には、仮想障害物情報148の構成例が示される。図11(B)を参照して、仮想障害物情報148には、各仮想障害物IO1〜IO5について、その仮想障害物を識別するID、その仮想障害物を検出した時刻、その仮想障害物の地図上での領域配置(位置,サイズ,形状など)、ならびにその仮想障害物の移動方向および速度(静的な仮想障害物の場合は“固定”)が記述される。
【0099】
なお、遠隔操縦システム100からサーバ14およびこれに付随するLRF122,124等を省略し、移動ロボット10が自身によるセンサ情報に基づいて位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を生成するようにしてもよい。または、サーバ14の役割をLRF122,124等からのセンサ情報の収集に限定し、移動ロボット10が自身によるセンサ情報およびサーバ14からのセンサ情報に基づいて位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を生成するようにしてもよい。
【0100】
サーバ14のCPU40は、メモリ42に記憶された通信制御プログラム132,位置&移動方向計算プログラム134および障害物領域配置計算プログラム136(図8参照)に基づいて、図12および図13のフローに従う処理を実行する。図12を参照して、まずステップS1で、LRF122,124から距離データ142を取得する。取得した距離データ142は、一時記憶領域140に書き込まれる。なお、サーバ14にカメラを接続する場合には、さらにカメラから画像データが取得されて一時記憶領域140に書き込まれる。
【0101】
一時記憶領域140には、前回の距離データ142も記憶されており、ステップS3では、今回取得した距離データ142を前回の距離データ142と比較して、変化があるか否かを判別し、ここでNOであればステップS1に戻る。なお、今回が初回の場合は、変化ありと見なされ、ステップS3の判別結果はYESとなる。ステップS3でYESであれば、ステップS5に進んで、今回の距離データ142および前回の距離データ142に基づいて移動ロボット10の位置および移動方向を計算する。この計算結果は、位置&方向情報144として一時記憶領域140に書き込まれる。
【0102】
次に、ステップS7で、保存領域130に記憶された地図情報138および一時記憶領域140に記憶された距離データ142に含まれる2次元距離情報(さらにはカメラからの画像データ)に基づいて物理的障害物の領域配置を計算する。この計算結果は、物理的障害物情報146として一時記憶領域140に書き込まれる。次のステップS9では、保存領域130に記憶された地図情報138および一時記憶領域140に記憶された物理的障害物情報146に基づいて仮想障害物の領域配置を計算する(詳細は後述)。この計算結果は、仮想障害物情報148として一時記憶領域140に書き込まれる。
【0103】
そしてステップS11で、一時記憶領域140に記憶された位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を、通信LANボード44を介して通信回路46から移動ロボット10および遠隔操縦装置12の各々に送信する。その後、ステップS1に戻って上記と同様の処理を繰り返す。
【0104】
これにより、移動ロボット10は、移動ロボット10自身の位置および移動方向を知ることができるので、自律的な移動が行える。また、遠隔操縦装置12を操作するオペレータは、移動ロボット10の位置および移動方向を知ることができるので、移動ロボット10の遠隔操縦が行える。なお、遠隔操縦システム100からサーバ14を省略して、移動ロボット10自身がセンサ情報156に基づいて位置および移動方向を計算してもよい。遠隔操縦装置12には、この計算結果(位置&方向情報144)が送信される。
【0105】
上記ステップS9つまり仮想障害物の領域配置の計算は、詳しくは図13のフローに従って実行される。図13を参照して、CPU40は、最初、ステップS21で、地図情報138に基づく地図上に、物理的障害物情報146に基づく物理的障害物を配置し、次に、ステップS23で、その地図を、たとえば図17(A)に示すように格子状に分割した後、ステップS25に進む。
【0106】
ステップS25では、地図上で、各アンテナ202a〜206aから各格子点に至る電波を追跡(レイトレーシング)して、各格子点における電界強度を計算する。次のステップS27では、その計算結果つまり各格子点における電界強度に基づいて、電界強度が閾値を下回る格子点群を囲む領域を検出する。
【0107】
たとえば、地図上のある区画において、図17(B)に示すように25個の格子点(1,1)〜(5,5)が定義されており、そのうち隣接する7個の格子点(2,2),(3,2),(2,3),(3,3),(4,3),(3,4)および(4,4)で電界強度が閾値を下回ったとすると、これら7個の格子点群を囲む領域IOiが検出される。なお、どの格子点の電界強度も閾値以上であるか、または、電界強度が閾値を下回る格子点があっても、それらの配置が離散的である場合には、該当領域なしとみなされる。
【0108】
次に、こうして検出された領域のサイズが閾値より大であるか否かをステップS29で判別する。なお、閾値は、検出領域の形状を楕円形とみなして、長径2m,短径1mなどのように決められる。ステップS29でNOであれば、ステップS39でその領域に対応する登録情報を抹消(対応する登録情報がなければ素通り)する。その後、上位のフロー(図12参照)に戻る。ステップS29でYESであれば、ステップS31に進む。
【0109】
ステップS31では、検出された領域を仮想障害物とみなして、その検出時刻および領域配置(位置,形状,サイズなど)を仮想障害物情報148(図10参照)に登録(または登録済みの情報を更新)する。次のステップS33では、検出された領域が移動しているか否かを仮想障害物情報148に登録された位置の変化に基づいて判別し、ここYESであれば、その位置変化から計算される移動方向/速度をステップS35で仮想障害物情報148にさらに登録する。ステップS33でNOであれば、移動方向/速度に代えて“固定”をステップS37で仮想障害物情報148にさらに登録する。こうして移動方向/速度または“固定”を登録した後、上位のフローに戻る。
【0110】
遠隔操縦装置12のCPU20は、メモリ22に記憶された通信制御プログラム152および入出力制御プログラム154(図9参照)に基づいて、図14のフローに従う制御処理を実行する。図14を参照して、まずステップS41で、ディスプレイ30に障害物付き地図画面(図7参照)を初期表示し、次に、ステップS43で、操作パネル28への操作入力があったか否かを判別して、NOであればステップS47に進む。ステップS43でYESであれば、ステップS45で、その操作入力の内容を示す操作情報を、通信LANボード24を介して通信回路26から移動ロボット10に送信した後、ステップS47に進む。
【0111】
ステップS47では、通信LANボード24によって移動ロボット10またはサーバ14から各種の情報(センサ情報,位置&方向情報144,物理的障害物情報146,仮想障害物情報148)が受信されたか否かを判別し、NOであればステップS43に戻る。ステップS47でYESであれば、ステップS49でディスプレイ30の障害物付き地図画面を受信情報に基づいて更新した後、ステップS43に戻る。そして、上記と同様の処理を繰り返す。
【0112】
これによって、ディスプレイ30には、移動ロボット10からのセンサ情報、ならびにサーバ14からの位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を視覚的に示す障害物付き地図画面が、リアルタイムに表示される。オペレータは、この画面を見ながら、必要に応じて操作パネル28を操作して、移動ロボット10の遠隔制御を行うことができる。
【0113】
移動ロボット10のCPU80は、通信制御プログラム172および動き制御プログラム174(図10参照)に基づいて、図15および図16のフローに従う制御処理を実行する。図15を参照して、最初、ステップS61で、初期処理を行う。初期処理には、一時記憶領域180の初期化、およびパラメータ領域190に記憶された各種パラメータ(モード192,目標位置194および仮の目標位置196)の初期設定といった処理が含まれる。
【0114】
モード192の初期設定では、たとえば遠隔操縦装置12の操作パネル28を介して、通常モードおよび追尾モードのいずれか1つがユーザにより選択され、その選択されたモードが記憶される。目標位置194の初期設定では、通常モードの場合、任意の位置がユーザによって指定され、その指定された位置を示す座標が記憶される。一方、追尾モードの場合には、任意の目標(人物,車両など)がユーザによって指定され、その指定された目標の初期位置を示す座標が記憶される。仮の目標位置196の初期設定では、“未設定”が記憶される。
【0115】
初期処理が完了すると、ステップS63に進んで、各種センサ(40,46,58,70,112aおよび112b)からセンサ情報を取得する。次のステップS65では、こうして取得したセンサ情報に基づいて、一時記憶領域180に記憶されたセンサ情報162を更新する。更新後のセンサ情報162は、通信LANボード114を介して、無線通信回路116によりアンテナ118で遠隔操縦装置12に送信される。その後、ステップS67に進む。
【0116】
ステップS67では、サーバ14から各種の情報(位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148)を受信したか否かを判別し、NOであればステップS71に進む。ステップS67でYESであれば、ステップS69で、一時記憶領域180に記憶された位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を受信情報に基づいて更新した後、ステップS71に進む。
【0117】
ステップS71では、遠隔操縦装置12から操作情報を受信したか否かを判別し、NOであればステップS75に進む。ステップS71でYESであれば、ステップS73で、一時記憶領域180に記憶された操作情報164を受信情報に基づいて更新した後、ステップS75に進む。
【0118】
ステップS75では、センサ情報162,操作情報164,位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて動き制御情報182を生成し、そしてステップS77で、この動き制御情報182に基づいて各種モータ(92〜98,110,36aおよび36b)を駆動する。その後、ステップS63に戻って上記と同様の処理を繰り返す。これによって、移動ロボット10の様々な動き、たとえば先述したような移動やコミュニケーション行動などが実現される。
【0119】
上記ステップS75で生成される動き制御情報182には、移動制御情報182aおよび動作制御情報182bが含まれており、このうち移動制御情報182aは、たとえば図16に示すフローに従って生成される。なお、動作制御情報182bについての説明は省略する。
【0120】
図16を参照して、最初のステップS91では、現時点のモード、つまりパラメータ領域190に記憶されたモード192が、追尾モードを示すか否かを判別する。ここでNO、つまりモード192が通常モードを示す場合には、ステップS95に進む。ステップS91でYESであれば、ステップS93で目標位置194を追尾相手の現在位置に更新した後、ステップS95に進む。なお、追尾相手の現在位置は、一時記憶領域180に記憶された位置&方向情報144から抽出される。
【0121】
ステップS95では、目標位置194までの距離、つまり移動ロボット10自身と追尾相手との間の距離が、閾値(たとえば1m)以内か否かを判別し、ここでYESであれば、処理はステップS109(後述)に分岐する。
【0122】
なお、ステップS95の判別で用いる閾値は、固定値とは限らず、可変値であってもよい。たとえば、閾値を1つのパラメータとしてパラメータ領域190に記憶し、ステップS61の初期処理を通じて、環境に応じた値(たとえば屋外では2m,屋内では1mなど)を設定してもよい。
【0123】
ステップS95でNOであれば、ステップS97で、位置&方向情報144を参照して、移動ロボット10自身の位置および目標位置194から進行すべき方向を計算する。次のステップS99では、計算した進行方向に固定障害物があるか否かを地図情報138および仮想障害物情報148に基づいて判別する。ここで、固定障害物とは、具体的には、地図情報138に記載された静的な物理的障害物(屋外地図の場合は建物や道路など、間取り図の場合は壁面や展示棚など。固定的に決められた通行禁止区域も含めてよい)、および仮想障害物情報148に登録された“固定”障害物(静的な仮想障害物、および動的な仮想障害物のうち移動しないもの)のいずれかに該当する物または領域をいう。
【0124】
ステップS97で計算した進行方向に上記のような固定障害物が存在する場合には、ステップS99でYESと判別して、ステップS105(後述)に進む。一方、計算した進行方向に上記のような固定障害物が存在しない場合には、ステップS99でNOと判別して、ステップS101に進む。ステップS101では、計算した進行方向に移動障害物があるか否かを物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて判別する。ここで、移動障害物とは、具体的には、物理的障害物情報146に登録された動的な物理的障害物、および仮想障害物情報148に登録された“移動”障害物(動的な仮想障害物のうち移動するもの)のいずれかに該当する物または領域をいう。
【0125】
ステップS97で計算した進行方向に上記のような移動障害物が存在しない場合には、ステップS101でNOと判別して、ステップS107(後述)に進む。一方、計算した進行方向に上記のような移動障害物が存在する場合には、ステップS101でYESと判別して、ステップS103に進む。ステップS103では、位置&方向情報144から抽出される移動ロボット10自身の速度と、物理的障害物情報146または仮想障害物情報148から抽出されるその移動障害物の速度とに基づいて、その移動障害物への到達予想時間を計算し、その計算した到達予想時間が閾値以上か否かを判別する。なお、到達予想時間は、たとえば、通信環境の悪化による影響がロボット制御の安全上許容される時間を基に、移動ロボット10自身の移動速度およびその移動障害物の移動速度の、2つの移動速度の関数として設定される。ステップS103でNOであればステップS105に進む一方、YESであればステップS107に進む。
【0126】
ステップS105では、その移動障害物を避ける仮の目標位置196を設定する。好ましくは、仮の目標位置196は、これに基づいて新たに計算される進行方向と、ステップS97で計算した進行方向との差分が、その移動障害物を回避可能な範囲で極力小さくなるような位置に設定される。これにより、迂回路をできるだけ短くすることができる。設定の後、ステップS97に戻って上記と同様の処理を繰り返す。なお、仮の目標位置196が設定された状態で実行されるステップS97では、目標位置194に代えて、仮の目標位置196を用いて計算する。
【0127】
ステップS107では、ステップS97で計算した進行方向への移動を示す移動制御情報182aを生成する。具体的には、ステップS97で計算した進行方向が、位置&方向情報144から抽出される移動ロボット10自身の現在の進行方向と一致していれば、右左の車輪モータ36aおよび36bの回転を現状維持させる移動制御情報182aを生成する。一方、計算した進行方向が現在の進行方向と異なっていれば、両者が一致するように右左の車輪モータ36aおよび36bの回転を変化させる移動制御情報182aを生成する。生成の後、上位のフロー(図15参照)に復帰する。
【0128】
ステップS95でYESと判別された場合の処理は、以下のようになる。ステップS109では、目標位置194が仮の目標位置196であるか否か(つまり仮の目標位置196が設定されている状態か否か)を判別し、ここでYESであれば、仮の目標位置196を元の目標位置194に戻した後(つまり仮の目標位置196を削除した後)、ステップS97に戻る。したがって、次回のステップS97では、目標位置194が参照される。ステップS109でNOであれば、ステップS113で移動停止を示す移動制御情報182aを生成した後、上位のフローに復帰する。
【0129】
なお、図示はしていないが、図16のような移動方向の制御と同時に、移動速度の制御も、近隣障害物との距離,モード,周囲状況等に応じて適宜行われている。
【0130】
なお、物理的障害物は、この実施例では、LRF122,124によって検出したが、これに代えてレーダ,赤外線測距,カメラ画像の立体視処理などによって検出してもよく、これらの適宜な組み合わせによって検出してもよい。
【0131】
一方、仮想障害物は、この実施例では、地図情報138および物理的障害物情報146を基にしたレイトレーシングの手法であるレイラウンチング法やイメージング法によって検出(予測)したが、これに限らず様々なレイトレーシングの手法やFDTD(Finite Difference Time Domain)法などの様々な電磁界解析手法を用いても予測できるほか、近隣障害物との距離や移動速度、周囲状況、電波の周波数など条件に応じてこれらを組み合わせて予測することもできる。または、移動体の位置と不感帯の発生確率,無線リソースへの影響量などとの間の関係を示す実測データを収集し、過去の実測データから統計的手法などにより予測することもできる。あるいは、電磁界解析手法や統計的手法などを用いた計算によって予測する以外に、環境に配置されたセンサや移動体に搭載されたセンサからもたらされる実測情報に基づいて検出してもよいし、計算による予測とセンサによる実測とを組み合わせて検出してもよい。
【0132】
また、この実施例では仮想障害物の判定に電界強度を用いているが、より高度な判定方法として、電界強度に代えてノイズ源の位置や伝搬路情報などから求められる信号対ノイズ比や所望波干渉波比を用いることも可能である。そのほかにも、これら物理的に決まる情報とエラー訂正能力などのシステムパラメータから計算したビット誤り率やパケットエラー率などの指標を用いることも可能である。
【0133】
以上から明らかなように、この実施例の移動ロボット遠隔操縦システム100は、移動ロボット10、遠隔操縦装置12、サーバ14、AP202〜206およびセンサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)を含む。遠隔操縦装置12およびサーバ14はそれぞれネットワーク200に接続され、移動ロボット10はAP202〜206を介してネットワーク200に接続される。移動ロボット10にはセンサの一部(40,46,58,70,112a,112b)が設けられ、サーバ14にはセンサの他の一部(122,124)が接続される。移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14の保存領域170,130および150には、静的な物理的障害物302〜312の配置を記述した地図情報138(図6参照)が記憶される。
【0134】
サーバ14のCPU40は、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からのセンサ情報に基づいて、地図情報138に対応する区域での移動ロボット10の位置および移動方向を検出する(S1,S5)。また、地図情報138に対応する区域内で移動する動的な物理的障害物PO1,PO2(図7参照)の位置および移動方向をさらに検出し、検出結果に基づいて動的な物理的障害物PO1,PO2の少なくとも位置を示す物理的障害物情報146を作成する(S7)。検出結果を示す位置&移動方向情報144および作成された物理的障害物情報146は、ネットワーク200を通じて移動ロボット10および遠隔操縦装置14に送信され、この結果、移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14の一時記憶領域180,140および160に位置&移動方向情報144および物理的障害物情報146が記憶される。
【0135】
サーバ14のCPU40はさらに、地図情報138および物理的障害物情報146に基づいて、地図情報138に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域IO1,IO2(図7参照)および当該地図情報138に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域IO3〜IO5(図7参照)について少なくとも位置を示す仮想障害物情報148を作成する(S9)。作成された仮想障害物情報148は、ネットワーク200を通じて移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信され、この結果、移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14の一時記憶領域180,140および160に仮想障害物情報148がさらに記憶される。
【0136】
遠隔操縦装置12のCPU20は、地図情報138,位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて、たとえば図7のような障害物付き地図画面をディスプレイ30に表示し(S41,S49)、操作パネル28による操作を受け付け(S43)、移動ロボット10に操作情報164を送信する(S45)。
【0137】
移動ロボット10のCPU80は、地図情報138,位置&移動方向情報144,物理的障害物情報146,仮想障害物情報148および操作情報164に基づいて、静的な物理的障害物302〜312、動的な物理的障害物PO1,PO2、静的な仮想障害物IO1,IO2および動的な仮想障害物IO3〜IO5を回避するように移動ロボット10を移動させる移動制御情報182aを作成する(S75,S105)。
【0138】
これにより、静的な不感帯や圏外領域に加えて、時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【0139】
なお、この実施例では、サーバ14を用いたが、遠隔操縦装置12がサーバ14の機能を兼ねてもよい。ただし、サーバ14を用いることで、多数の移動ロボット10を遠隔操縦する場合の制御が容易になる。また、この実施例では、ネットワーク200(およびこれに設けられたAP202〜206)を介して遠隔操縦を行ったが、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信により直接、移動ロボット10を遠隔操縦してもよい。
【0140】
なお、この実施例では、移動経路選択に使用する地図上に移動の妨げとなる無線の圏外領域や不感帯を仮想障害物として配置し、これらを避ける経路を選択することで、通信障害による遠隔操縦への悪影響を防止したが、仮想障害物は、圏外領域や不感帯に限らない。
【0141】
たとえば、数多くのアンテナが同時に見通しとなる場所では、移動ロボット10の通信相手が定まらずに通信が困難ないし不安定となる場合があるため、圏外領域や不感帯と同様に仮想障害物として取り扱うことができる。また、多数の移動ロボット10が集まっている場所(移動ロボット10の密度が一定以上の領域)では、混信により通信が困難ないし不安定となる可能性があるため、これも同様に取り扱うことが可能である。
【0142】
そして、この種の通信障害領域については、これを避ける経路を選択する代わりに、仮想障害物に到達または接近した時点で無線通信に用いる周波数を変更することによって、その領域で生じる通信障害を回避できる可能性がある。そこで、移動制御情報182aに代えて、またはこれに加えて、移動ロボット10の通信LANボード114に、無線通信回路116が無線通信で用いる周波数を変更させる周波数変更情報(図示せず)を作成してもよい。
【0143】
一般には、個々の無線リソースの利用を困難にしたり通信システム全体の安定動作に悪影響を与えたりする領域を仮想障害物として地図上に配置して、これを避ける経路を選択したり周波数を変更したりといった回避動作を行うことで、通信品質の維持が可能となり、円滑なロボット制御が実現される。
【0144】
言い換えると、通信障害が起こる可能性を減らすのとは逆に、通信障害が起こりうる場所への移動を避けたり、発生を事前に予測して通信周波数を変更したりすることで、低遅延かつ高信頼の通信を維持することができ、その結果、安全な操縦が行える。
【0145】
なお、以上の説明では、一実施例である遠隔操縦システム100について説明したが、この発明は、移動ロボットや無人カートといった移動体を、ネットワークを介した無線通信または直接の無線通信によって、離れた場所から遠隔操縦するための遠隔操縦システムに適用できる。
【符号の説明】
【0146】
10 …移動ロボット
12 …遠隔操縦装置
14 …サーバ
20,40,80 …CPU
22,42,84 …メモリ
24,44,114 …通信LANボード
26,46 …通信回路
116 …無線通信回路
118 …移動ロボット用のアンテナ
122,124 …LRF(レーザレンジファインダ)
200 …ネットワーク
202〜206 …AP(アクセスポイント)
202a〜206a …AP用のアンテナ
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムに関し、特にたとえば、ロボットや無人搬送車両などの移動体を無線により遠隔操縦する、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや無人搬送車両などの移動体を無線により遠隔操縦する場合、移動体に取り付けられたカメラの画像や、移動体に付属または環境に配置したセンサから得られるセンサ情報,位置情報,周囲状況を示す地図情報などを基に移動制御が行われる。特に、人や他の移動体などが存在する環境下では、これらとの接触事故を防ぐためにも情報をリアルタイムに更新する必要があり、制御に使用する通信は低遅延かつ高信頼を維持しないと安全な操縦が困難である。
【0003】
しかし、屋内環境では、物陰や遠方となって電波が届きづらい場所(圏外)や、天井や壁,床で反射した複数経路の電波が相互干渉(マルチパス干渉)により弱めあう場所(不感帯)などのほか、同一地域において同一周波数を使用する他の無線機器からの電波のよる相互干渉の影響や、電磁ノイズの発生源、電子レンジなどの高周波利用設備からの電磁放射により、遠隔操縦に必要な通信品質が維持できない場所(通信障害領域)が多数存在するため、安定した通信を少ない設備で移動範囲全域にわたり確保するのは容易ではない。なかでも不感帯は送信アンテナに近い場所やアンテナが見える場所にも存在しうるため、移動体に面的な移動を行わせる無線操縦では、その移動範囲内に点在する不感帯が特に問題である。
【0004】
そこで、たとえば特許文献1では、移動ロボットは、移動しながら電波強度マップを作成し、通信不能な地点に移動した場合には電波強度マップに基づいて最も近い通信可能地点まで復帰するようにしている。
【特許文献1】特許第4252333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に、可動扉や車両,歩行者,他の無線操縦による移動体など、移動する物や人に起因する反射波が原因となる干渉では、不感帯の位置や大きさが時間とともに変化する。そのため、特許文献1に記載されているような最後に通信可能であった地点まで戻るといった対策は、この種の動的な不感帯では効果が少ない。このため、一般的には、アンテナ配置やアンテナ自体を工夫したり、ダイバーシチなどにより通信障害が起こる可能性を確率的に減らす対策がとられる。しかし、これには、高価な機器や多数の無線設備が必要となったり、複数の周波数を同時に使用することで無線リソースが足りなくなったりする問題がある。そのうえ、不感帯の発生を確率的に減らすことはできても根本的に無くすことは困難である。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、通信障害領域が存在する環境、とりわけ時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できる、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、移動体を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システムであって、地図情報を記憶する第1メモリ、地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域を示す情報を仮想障害物情報として記憶する第2メモリ、センサからのセンサ情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動体の少なくとも位置を検出する検出手段、および、地図情報および仮想障害物情報と検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域での無線通信障害を回避するように移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段を備える。
【0010】
第1の発明である遠隔操縦システム(100)では、移動体(10)は無線通信により遠隔操縦される。第1メモリ(170,130,150)には、地図情報(138)が記憶される。第2メモリ(180,140,160)には、地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域(IO1〜IO5)を示す情報が仮想障害物情報(148)として記憶される。検出手段(S1,S5)は、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からのセンサ情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動体の少なくとも位置を検出する。制御情報作成手段(S75,S105)は、地図情報および仮想障害物情報と、検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域での無線通信障害を回避するように移動体を制御する制御情報(182)を作成する。
【0011】
第1の発明によれば、仮想障害物情報を加味した地図情報と移動体の位置情報とに基づいて、通信障害領域での無線通信障害を回避するように移動体を制御することで、通信障害領域が存在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【0012】
なお、通信障害領域には、地図情報に対応する区域内で、アンテナから遠く離れたり物理的障害物等に隠れたりして電波が届き難くなった領域(圏外)や、同一のアンテナから射出されて異なる経路を経た電波同士が干渉して相互に弱め合う領域(不感帯)などが含まれる。そして、このような通信障害領域には、移動したり変形したり拡大/縮小したりしない静的なものと、移動したり変形したり拡大/縮小したりする動的なものとの2種類がある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、制御情報作成手段は、通信障害領域を回避するように移動体を移動させる移動制御情報(182a)を作成する。
【0014】
第2の発明によれば、移動制御情報に従って通信障害領域を回避するように移動体を移動させることで、圏外,不感帯などの通信障害領域が存在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となる。
【0015】
なお、通信障害領域には、地図情報に対応する区域内で、複数のアンテナが見通しとなる領域や、多数の移動体が集まる領域も含まれてよい。この種の領域では、無線通信で使用する周波数を変更することで、その領域で生じる通信障害を回避できる可能性がある。このような場合、制御情報作成手段は、移動制御情報に代えて、またはこれに加えて、移動体に周波数を変更させる周波数変更制御情報を作成してもよい。
【0016】
第3の発明は、第2の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、地図情報には、静的な物理的障害物の位置が記述されており、第2メモリは、地図情報に対応する区域内で移動する動的な物理的障害物に関する物理的障害物情報(146)をさらに記憶し、制御情報作成手段は、地図情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報と検出手段の検出結果とに基づいて、制御情報を作成する。
【0017】
第3の発明によれば、さらに動的な物理的障害物情報も加味することで、移動体をより安全に遠隔操縦ができるようになる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、検出手段は、動的な物理的障害物の少なくとも位置をさらに検出し、検出手段の検出結果に基づいて動的な物理的障害物の少なくとも位置を示す物理的障害物情報を作成する物理的障害物情報作成手段、および、地図情報および物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて、当該地図情報に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域および当該地図情報に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域について少なくとも位置を示す仮想障害物情報を作成する仮想障害物情報作成手段をさらに備え、第2メモリは、物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報および仮想障害物情報作成手段によって作成された仮想障害物情報を記憶する。
【0019】
第4の発明では、検出手段によって、動的な物理的障害物の少なくとも位置がさらに検出される。物理的障害物情報作成手段(S7)は、このような検出手段の検出結果に基づいて、動的な物理的障害物の少なくとも位置を示す物理的障害物情報を作成する。さらに、仮想障害物情報作成手段(S9)は、記憶された地図情報およびこうして作成された物理的障害物情報に基づいて、当該地図情報に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域、および当該地図情報に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域について、少なくとも位置を示す仮想障害物情報を作成する。第2メモリには、こうして作成された物理的障害物情報および仮想障害物情報が記憶される。
【0020】
第4の発明によれば、地図に記載されていない動的な物理的障害物(人物,車両など)をセンサで検出し、さらに、地図に記載された静的な障害物に起因して発生する静的な通信障害領域と、こうして検出した動的な障害物に起因して発生しかつ移動する動的な通信障害領域とを、たとえば計算,計測,統計処理等によって検出することで、静的な不感帯や圏外領域に加えて、時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【0021】
なお、仮想障害物情報作成手段は、地図情報および物理的障害物情報に基づいて、地図情報に対応する区域内で複数のアンテナが見通しとなる領域や多数の移動ロボットが集まる領域も通信障害領域としてさらに検出し、この種の領域も仮想障害物と見なした仮想障害物情報を作成してもよい。
【0022】
第5の発明は、第4の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、検出手段は、移動体の移動方向と、動的な物理的障害物の移動方向とをさらに検出し、物理的障害物情報作成手段は、検出手段の検出結果に基づいて動的な物理的障害物の位置および移動方向を示す物理的障害物情報を作成し、仮想障害物情報作成手段は、地図情報および物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて動的な障害領域の位置および移動方向を示す仮想障害物情報を作成し、制御情報作成手段は、移動体の移動方向に静的な物理的障害物および静的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合(S99:YES)には直ちに回避移動を行わせる移動制御情報を生成し、移動体の移動方向に、静的な物理的障害物および静的な仮想障害のいずれも存在せず、かつ移動する動的な物理的障害物および移動する動的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合(S99:N0→S101:YES)には、当該移動体の当該移動障害物への到達予想時間が閾値を下回った時点で回避移動を行わせる移動制御情報を生成する。
【0023】
第5の発明によれば、移動体の移動方向に存在する障害物が移動障害物か固定障害物かに応じて適切なタイミングで回避行動を行わせるので、移動体を安全かつ効率的に遠隔操縦できるようになる。
【0024】
第6の発明は、第3ないし5のいずれかにの発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、地図情報に対応する区域に配置されて移動体との間で無線通信を行うためのアンテナ(202a〜206a)をさらに備え、仮想障害物情報作成手段は、地図情報および物理的障害物情報に基づいてアンテナからの電界の強度分布を計算し、計算された電界強度が閾値よりも小さい領域を通信障害領域として特定し、そして、特定された通信障害領域の少なくとも位置を示す情報を仮想障害物情報として作成する。
【0025】
第6の発明によれば、精度の高い仮想障害物情報を計算によって作成することができる。
【0026】
第7の発明は、第6の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、ネットワーク(200)に接続されたサーバ(14)をさらに備え、アンテナは、移動体のネットワークへのアクセスポイント(202〜206)に設けられ、物理的障害物情報作成手段および仮想障害物情報作成手段はサーバに設けられ、そして制御情報作成手段は移動体に設けられる。
【0027】
第7の発明によれば、障害物情報の作成機能をサーバ側に集約する一方、制御情報の作成機能を移動体側に持たせることで、特に移動体の個数が多い場合に、効率的な制御が行える。
【0028】
第8の発明は、第7の発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、ネットワークに接続された遠隔操作装置(12)をさらに備え、第1メモリおよび第2メモリは、サーバ,移動体および遠隔操縦装置の各々に設けられる。
【0029】
第8の発明によれば、サーバからネットワークを介して移動体および遠隔操縦装置の各々に障害物情報を配信することで、より安全な遠隔操縦が可能になる。
【0030】
第9の発明は、第1ないし8のいずれかにの発明に従属する移動体遠隔操縦システムであって、センサの一部(40,46,58,70,112a,112b)は移動体に設けられ、センサの他の一部(122,124)は地図情報に対応する区域に配置される。
【0031】
第9の発明によれば、移動体に搭載されたセンサからの情報と、移動体の移動区域内に配置されたセンサからの情報とに基づいて、移動体の位置や移動方向さらには動的な物理障害物の位置や移動方向を精度よく検出することができる。
【0032】
第10の発明は、移動体(10)を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システム(100)のコンピュータ(80&84,20&22,40&42)において実行される制御プログラム(174,134,136)であって、制御プログラムはコンピュータを、地図情報(138)を記憶する第1メモリ(170,130,150)、地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域(IO1〜IO5)を示す情報を仮想障害物情報(148)として記憶する第2メモリ(180,140,160)、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からのセンサ情報に基づいて、地図情報に対応する区域での移動体の少なくとも位置を検出する検出手段(S1,S5)、および、地図情報および仮想障害物情報と検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、通信障害領域通信障害領域での無線通信障害を回避するように前記移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段(S75)として機能させる。
【0033】
第10の発明でも、第1の発明と同様に、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、通信障害領域が存在する環境、とりわけ時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できる、移動体遠隔操縦システムおよびそのための制御プログラムが実現される。
【0035】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施例である移動ロボット遠隔操縦システムの構成を示す図解図であり、このシステムは、移動ロボット、サーバおよび遠隔操縦装置を含む。
【図2】移動ロボットの外観図を示す図解図である。
【図3】移動ロボットの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】遠隔操縦装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【図5】サーバの電気的構成の一例を示すブロック図である。
【図6】遠隔操作装置のディスプレイに表示される画面の一例を示す図解図であり、この画面には、移動ロボット遠隔操縦システムが適用される環境を示す地図が描かれる。
【図7】遠隔操作装置のディスプレイに表示される画面の他の一例を示す図解図であり、この画面には、図6の地図に重ねて、物理的/仮想的障害物がさらに描かれる。
【図8】サーバのメモリマップを示す図解図である。
【図9】遠隔操縦装置のメモリマップを示す図解図である。
【図10】移動ロボットのメモリマップを示す図解図である。
【図11】メモリマップ内の主要な項目の詳細を示す図解図であり、(A)は物理的障害物情報を、(B)は仮想障害物情報をそれぞれ示す。
【図12】サーバのCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図13】図12に示された仮想障害物の領域配置の計算処理の詳細を示すフロー図である。
【図14】遠隔操縦装置のCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図15】移動ロボットのCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図16】図15に示された移動制御情報生成処理の詳細を示すフロー図である。
【図17】図12に示された仮想障害物の領域配置の計算方法を示す図解図であり、(A)は格子状に分割された地図を、(B)は各格子点での電解強度に基づいて検出される仮想障害物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照して、この発明の一実施例である移動ロボット遠隔操縦システム(以下“遠隔操縦システム”)100は、たとえば博物館,アトラクション施設,イベント会場などに配置された移動ロボット10を、別の場所たとえば研究室,監視センタなどから、LAN,インターネットなどのネットワーク200を介して遠隔操縦するためのシステムである。
【0038】
最初に、概要を説明する。遠隔操縦システム100は、移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14を含む。ネットワーク200には、それぞれがアンテナ(202a〜206a:図6参照)を有する複数たとえば3つの無線アクセスポイント(以下“AP”)202〜206が設けられており、移動ロボット10は、AP202〜206のいずれか1つを介してネットワーク200に接続される。言い換えると、移動ロボット10は、移動に伴って接続先をたとえばAP202→AP204→…のように順次切替えていくこと(いわゆる“ハンドオーバ”)によって、ネットワーク200との接続を維持することができる。
【0039】
一方、遠隔操縦装置12およびサーバ14は、それぞれ専用のAP(図示せず)を介してネットワーク200に接続される。移動ロボット10と各AP202〜206との間の接続は、たとえばIEEE802.11方式などの無線接続であるが、遠隔操縦装置12およびサーバ14の各々とその専用APとの間の接続は、無線接続でも、LANケーブルなどによる有線接続でもよい。
【0040】
移動ロボット10は、たとえば自律型のロボットであり、遠隔操縦によってだけでなく、予め記憶した地図(間取り図)情報および自身に備わる各種センサからのセンサ情報に基づいて自律的に、移動ないし行動することもできる。移動ロボット10によるセンサ情報はまた、ネットワーク200経由で遠隔操縦装置12に送信される。
【0041】
サーバ14には、複数たとえば2つのレーザレンジファインダ(以下“LRF”)122,124が接続される。各LRF122,124は、移動ロボット10が移動できる場所(環境)に設置されて、自身から移動ロボット10までの距離を計測し、距離データを出力する。サーバ14は、移動ロボット10に記憶されたものと同じ地図情報を記憶しており、この地図情報および各LRF122,124からの距離データに基づいて、環境における移動ロボット10(および他の移動体や人体などの物理的障害物)の位置および移動方向を計算する。この計算結果を示す位置&方向情報は、ネットワーク200経由で移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信される。
【0042】
なお、LRFは一般に、レーザーを照射し、それが目標で反射して戻ってくるまでの時間に基づいて、当該目標までの距離を計測するものである。LRF122,124は、たとえば、トランスミッタ(図示せず)から照射したレーザーを回転ミラー(図示せず)で反射させて、前方を扇状に一定角度(たとえば0.5度)ずつスキャンすることで、単に目標までの距離を計測するだけでなく、目標の表面に関する2次元距離情報(表面の形状を角度および距離の2変数で記述した情報)も生成することができる。LRF122,124からの距離データには、このような2次元距離情報が含まれており、サーバ14は、目標が移動ロボット10であるか、他の移動体ないし人体といった物理的障害物であるかを識別することができる。
【0043】
なお、ここでいう「物理的障害物」には、前述の地図情報に記述されている静的な障害物(たとえば建造物,壁など)は含まれない。つまり、単に「物理的障害物」という場合、車や人といった移動する(動的な)物理的障害物を意味する。
【0044】
なお、環境に設置されて、移動ロボット10までの距離を計測するセンサ(距離センサ)は、LRFに限らず、たとえば赤外線距離センサやレーダなどでもよい。また、サーバ14には、距離センサ以外のセンサたとえばカメラ(イメージセンサ)なども接続されてよい。この場合、サーバ14は、LRF122,124からの距離データに加えて、カメラからの画像データも参照することで、移動ロボット10や物理的障害物をより高い精度で識別し、各々の領域配置(位置,サイズおよび形状など)をより正確に特定することができる。さらに、移動ロボット10が検出したセンサ情報をサーバ14に転送すれば、サーバ14は、物理的障害物の領域配置を特定する際にこれを利用することができる。
【0045】
こうして識別された物理的障害物に関する情報(種類ないし属性,領域配置など)は、物理的障害物情報として、サーバ14から移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信される。
【0046】
さらに、サーバ14は、地図情報および物理的障害物情報に基づいて、地図上での電界強度分布をレイトレーシングなどの手法で計算し、電界強度が閾値よりも低い領域の配置(位置,サイズおよび形状など)を特定する。その領域が移動している場合には、移動方向および速度も特定される。こうして特定された領域に関する情報(領域配置,移動方向および速度など)は、仮想障害物情報として、サーバ14から移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信される。
【0047】
遠隔操縦装置12は、移動ロボット10から得たセンサ情報およびサーバ14から得た位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報などを表示するディスプレイ(30:図4参照)と、オペレータによって操作される操作パネル(28:図4参照)とを備える。オペレータは、ディスプレイ(30)に表示される各種情報を通じて移動ロボット10の動き(移動および/または動作を含む)を監視し、必要に応じてその動きを制御するべく操作パネル(28)を操作する。操作パネル(28)の操作に基づく操作情報は、ネットワーク200経由で移動ロボット10に送信される。
【0048】
移動ロボット10では、記憶している地図情報、自らのセンサ情報、サーバ14からの位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報、ならびに遠隔操縦装置12からの操作情報に基づいて動き制御情報が生成され、この生成された動き制御情報に基づいて各種モータ(92〜98,110,36aおよび36b:図3参照)が駆動される。こうして、移動ロボット10の自律的な/遠隔操縦による動きが実現される。
【0049】
特に、移動ロボット10は、物理的障害物情報さらには仮想障害物情報を加味した地図情報に基づいて経路選択を行うことで、物理的障害物だけでなく、仮想障害物つまり電波強度の低い領域(圏外や不感帯)を回避しながら移動することができる。そして、物理的障害物情報および仮想障害物情報はリアルタイムに更新されるため、移動する物や人が存在したり、時間的に変化する不感帯が点在したりする環境でも、移動ロボット10を安全に遠隔操縦することができる。
【0050】
なお、移動ロボット10は、相互作用指向のロボットでもあり、人間のようなコミュニケーション対象との間で、身振り手振りのような身体動作あるいは音声による会話といったコミュニケーション行動を実行する機能も有している。
【0051】
次に、各要素について詳しく説明する。図2はこの実施例の移動ロボット10の外観を示す正面図である。図2を参照して、移動ロボット10は台車30を含み、台車30の下面には右車輪32aおよび左車輪32b(特に区別しない場合には「車輪32」と記す)ならびに1つの従輪34が設けられる。右車輪32aおよび左車輪32bは、右車輪モータ36aおよび左車輪モータ36b(図4参照)によってそれぞれ独立に駆動され、台車30ひいては移動ロボット10全体を前後左右の任意方向に動かすことができる。また、従輪34は車輪32を補助する補助輪である。
【0052】
台車30の上には、円柱形のセンサ取り付けパネル38が設けられ、このセンサ取り付けパネル38には、多数の赤外線距離センサ40が取り付けられる。これらの赤外線距離センサ40は、センサ取り付けパネル38つまり移動ロボット10自身と、その周囲の物体(人間や障害物など)との距離を測定するものである。
【0053】
なお、この実施例では、距離センサとして、赤外線距離センサを用いるようにしてあるが、赤外線距離センサに代えて、小型のLRF、超音波距離センサまたはミリ波レーダなどを用いることもできるし、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0054】
センサ取り付けパネル38の上には、胴体42が直立するように設けられる。また、胴体42の前方中央上部(人の胸に相当する位置)には、上述した赤外線距離センサ40がさらに設けられており、これによって前方の対象たとえば人間との距離を計測する。また、胴体42には、その側面側上端部のほぼ中央から伸びる支柱44が設けられ、支柱44の上には、アンテナ118ならびに全方位カメラ46が設けられる。
【0055】
アンテナ118は、各AP202〜206と無線通信を行うための無指向性アンテナであり、任意の方向からの無線信号を受信し、任意の方向に無線信号を送信する。なお、アンテナ118として、その指向性を電気的に変化させることが可能な可変指向性アンテナ(アレーアンテナなど)を用いてもよい。
【0056】
全方位カメラ46は、移動ロボット10の周囲を撮影するものであり、後述する眼カメラ70とは区別される。全方位カメラ46としては、たとえばCCDやCMOSのような固体撮像素子を用いるカメラを採用することができる。なお、これら赤外線距離センサ40,アンテナ118および全方位カメラ46の設置位置は、当該部位に限定されず適宜変更されてもよい。
【0057】
胴体42の両側面上端部(人の肩に相当する位置)には、それぞれ、肩関節48Rおよび肩関節48Lによって、上腕50Rおよび上腕50Lが設けられる。図示は省略するが、肩関節48Rおよび肩関節48Lは、それぞれ、直交する3軸の自由度を有する。すなわち、肩関節48Rは、直交する3軸のそれぞれの軸廻りにおいて上腕50Rの角度を制御できる。肩関節48Rの或る軸(ヨー軸)は、上腕50Rの長手方向(または軸)に平行な軸であり、他の2軸(ピッチ軸およびロール軸)は、その軸にそれぞれ異なる方向から直交する軸である。同様にして、肩関節48Lは、直交する3軸のそれぞれの軸廻りにおいて上腕50Lの角度を制御できる。肩関節48Lの或る軸(ヨー軸)は、上腕50Lの長手方向(または軸)に平行な軸であり、他の2軸(ピッチ軸およびロール軸)は、その軸にそれぞれ異なる方向から直交する軸である。
【0058】
また、上腕50Rおよび上腕50Lのそれぞれの先端には、肘関節52Rおよび肘関節52Lが設けられる。図示は省略するが、肘関節52Rおよび肘関節52Lは、それぞれ1軸の自由度を有し、この軸(ピッチ軸)の軸回りにおいて前腕54Rおよび前腕54Lの角度を制御できる。
【0059】
前腕54Rおよび前腕54Lのそれぞれの先端には、人の手に相当する球体56Rおよび球体56Lがそれぞれ固定的に設けられる。ただし、指や掌の機能が必要な場合には、人間の手の形をした「手」を用いることも可能である。また、図示は省略するが、台車30の前面、肩関節48Rと肩関節48Lとを含む肩に相当する部位、上腕50R、上腕50L、前腕54R、前腕54L、球体56Rおよび球体56Lには、それぞれ、接触センサ58(図3で包括的に示す)が設けられる。台車30の前面の接触センサ58は、台車30への人間や他の障害物の接触を検知する。したがって、移動ロボット10は、その自身の移動中に障害物との接触が有ると、それを検知し、直ちに車輪32の駆動を停止して移動ロボット10の移動を急停止させることができる。また、その他の接触センサ58は、当該各部位に触れたかどうかを検知する。なお、接触センサ58の設置位置は、当該部位に限定されず、適宜な位置(人の胸、腹、脇、背中および腰に相当する位置)に設けられてもよい。
【0060】
胴体42の中央上部(人の首に相当する位置)には首関節60が設けられ、さらにその上には頭部62が設けられる。図示は省略するが、首関節60は、3軸の自由度を有し、3軸の各軸廻りに角度制御可能である。或る軸(ヨー軸)は移動ロボット10の真上(鉛直上向き)に向かう軸であり、他の2軸(ピッチ軸、ロール軸)は、それぞれ、それと異なる方向で直交する軸である。
【0061】
頭部62には、人の口に相当する位置に、スピーカ64が設けられる。スピーカ64は、移動ロボット10が、それの周辺の人間に対して音声ないし音によってコミュニケーションを取るために用いられる。また、人の耳に相当する位置には、マイク66Rおよびマイク66Lが設けられる。以下、右のマイク66Rと左のマイク66Lとをまとめてマイク66と言うことがある。マイク66は、周囲の音、とりわけコミュニケーションを実行する対象である人間の音声を取り込む。さらに、人の目に相当する位置には、眼球部68Rおよび眼球部68Lが設けられる。眼球部68Rおよび眼球部68Lは、それぞれ眼カメラ70Rおよび眼カメラ70Lを含む。以下、右の眼球部68Rと左の眼球部68Lとをまとめて眼球部68と言うことがある。また、右の眼カメラ70Rと左の眼カメラ70Lとをまとめて眼カメラ70と言うことがある。
【0062】
眼カメラ70は、移動ロボット10に接近した人間の顔や他の部分ないし物体などを撮影して、それに対応する映像信号を取り込む。また、眼カメラ70は、上述した全方位カメラ46と同様のカメラを用いることができる。たとえば、眼カメラ70は、眼球部68内に固定され、眼球部68は、眼球支持部(図示せず)を介して頭部62内の所定位置に取り付けられる。図示は省略するが、眼球支持部は、2軸の自由度を有し、それらの各軸廻りに角度制御可能である。たとえば、この2軸の一方は、頭部62の上に向かう方向の軸(ヨー軸)であり、他方は、一方の軸に直交しかつ頭部62の正面側(顔)が向く方向に直行する方向の軸(ピッチ軸)である。眼球支持部がこの2軸の各軸廻りに回転されることによって、眼球部68ないし眼カメラ70の先端(正面)側が変位され、カメラ軸すなわち視線方向が移動される。なお、上述のスピーカ64、マイク66および眼カメラ70の設置位置は、当該部位に限定されず、適宜な位置に設けられてよい。
【0063】
このように、この実施例の移動ロボット10は、車輪32の独立2軸駆動、肩関節48の3自由度(左右で6自由度)、肘関節52の1自由度(左右で2自由度)、首関節60の3自由度および眼球支持部の2自由度(左右で4自由度)の合計17自由度を有する。
【0064】
図3は移動ロボット10の電気的な構成を示すブロック図である。図3を参照して、移動ロボット10は、CPU80を含む。CPU80は、マイクロコンピュータ或いはプロセッサとも呼ばれ、バス82を介して、メモリ84、モータ制御ボード86、センサ入力/出力ボード88および音声入力/出力ボード90に接続される。CPU80は、RTC(Real Time Clock)80aを含んでおり、各センサからの信号ないしデータ(センサ情報)に対してRTCに基づく時刻データを付加する。
【0065】
メモリ84は、図示は省略をするが、不揮発メモリ(保存領域)としてSSD(Solid State Drive)およびROMと、揮発メモリ(一時記憶領域)としてRAMとを含む。SSD,ROMつまり保存領域(180:図10参照)には、移動ロボット10自身の動きや遠隔操縦装置12,サーバ14との間の通信を制御するための各種の制御プログラム,地図情報など(後述)が予め記憶される。RAMつまり一時記憶領域(190:図10参照)は、ワークメモリないしバッファメモリとして、送受信データを一時保持したり、制御プログラムによって参照される各種の情報(後述)を更新可能に記憶したりする。
【0066】
モータ制御ボード86は、たとえばDSPで構成され、各腕や首関節および眼球部などの各軸モータの駆動を制御する。すなわち、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、右眼球部68Rの2軸のそれぞれの角度を制御する2つのモータ(図3では、まとめて「右眼球モータ92」と示す。)の回転角度を制御する。同様に、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、左眼球部68Lの2軸のそれぞれの角度を制御する2つのモータ(図3では、まとめて「左眼球モータ94」と示す。)の回転角度を制御する。
【0067】
また、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、肩関節48Rの直交する3軸のそれぞれの角度を制御する3つのモータと肘関節52Rの角度を制御する1つのモータとの計4つのモータ(図3では、まとめて「右腕モータ96」と示す。)の回転角度を制御する。同様に、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、肩関節48Lの直交する3軸のそれぞれの角度を制御する3つのモータと肘関節52Lの角度を制御する1つのモータとの計4つのモータ(図3では、まとめて「左腕モータ98」と示す。)の回転角度を制御する。
【0068】
さらに、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、首関節60の直交する3軸のそれぞれの角度を制御する3つのモータ(図3では、まとめて「頭部モータ110」と示す。)の回転角度を制御する。そして、モータ制御ボード86は、CPU80からの制御データを受け、右車輪32aを駆動する右車輪モータ36a、左車輪32bを駆動する左車輪モータ36bの回転角度を、それぞれ個別に制御する。なお、この実施例では、車輪モータ36を除くモータは、制御を簡素化するためにステッピングモータ(すなわち、パルスモータ)を用いる。ただし、車輪モータ36と同様に直流モータを用いるようにしてもよい。また、移動ロボット10の身体部位を駆動するアクチュエータは、電流を動力源とするモータに限らず適宜変更されてもよい。たとえば、他の実施例では、エアアクチュエータなどが適用されてもよい。
【0069】
センサ入力/出力ボード88は、モータ制御ボード86と同様に、たとえばDSPで構成され、各センサからの信号(センサ情報)を取り込んでCPU80に与える。すなわち、赤外線距離センサ40のそれぞれからの反射時間に関するデータがこのセンサ入力/出力ボード88を通じてCPU80に入力される。また、全方位カメラ46からの映像信号が、必要に応じてセンサ入力/出力ボード88で所定の処理を施してからCPU80に入力される。眼カメラ70からの映像信号も、同様に、CPU80に入力される。また、上述した複数の接触センサ58(図3では、まとめて「接触センサ58」と示す。)からの信号がセンサ入力/出力ボード88を介してCPU80に与えられる。
【0070】
また、センサ入力/出力ボード88には、右車輪32aの回転速度(車輪速)を検出する右車輪速センサ112a、左車輪32bの回転速度を検出する左車輪速センサ112bがさらに接続される。そして、右車輪速センサ112aおよび左車輪速センサ112bからのそれぞれから、一定時間における右車輪32aおよび左車輪32bの回転数(車輪速)に関するデータが、センサ入力/出力ボート88を通じて、CPU80に入力される。
【0071】
音声入力/出力ボード90も、他の入力/出力ボードと同様にたとえばDSPで構成され、図3ではCPU80,メモリ84または音声入力/出力ボード90から与えられる音声合成データに従った音声または声がスピーカ64から出力される。また、マイク66からの音声入力が、音声入力/出力ボード90を介してCPU80に与えられる。
【0072】
また、CPU80は、バス82を介して通信LANボード114に接続される。通信LANボード114は、たとえばDSPで構成され、CPU80から与えられた送信データを無線通信回路116に与え、無線通信回路116は送信データを、アンテナ118からネットワーク200を介して外部コンピュータ(遠隔操縦装置12,サーバ14)に送信する。また、通信LANボード114は、無線通信回路116を介してアンテナ118でデータを受信し、受信したデータをCPU80に与える。アンテナ118で受信される受信データには、遠隔操縦装置12からの操作情報、および/または、サーバ14からの位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報が含まれる。
【0073】
図4は、遠隔操縦装置12の電気的な構成を示すブロック図である。図4を参照して、遠隔操縦装置12は、CPU20,メモリ22,通信LANボード24,通信回路26,操作パネル28およびディスプレイ30を備える。通信回路26は、図示しない専用APを介してネットワーク200に無線または有線で接続される。
【0074】
操作パネル28は、各種の操作ボタン,タッチパネルなどで構成され、オペレータが移動ロボット10の動きを制御するべく行う操作を受け付けて、その操作データを出力する。CPU20は、RTC20aを含んでおり、操作パネル28により入力される操作データに対し、RTC20aに基づく時刻データを付加し、これ(時刻付き操作データ)を送信データ(操作情報)としてメモリ22に書き込む。CPU20はまた、メモリ22に記憶された送信データを時刻データに従って読み出し、通信LANボード24に与える。通信LANボード24は、たとえばDSPで構成され、CPU20から与えられた送信データを通信回路26からネットワーク200を通して移動ロボット10に送信する。
【0075】
通信LANボード24はまた、移動ロボット10およびサーバ14からネットワーク200経由で送られてくるデータ(センサ情報ならびに位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報)を通信回路26で受信し、その受信データをCPU20に与える。CPU20は、与えられた受信データをメモリ22に書き込みつつ、こうしてメモリ22に記憶された受信データに基づいて、保持している地図情報,移動ロボット10からのセンサ情報ならびにサーバ14からの位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報を視覚的に示す障害物付きの地図画面(図7参照)をディスプレイ30に表示する。先述したようなオペレータによる操作は、こうしてディスプレイ30に表示される地図画面を参照しながら行われる。
【0076】
メモリ22には、遠隔操縦装置12が以上のような動作を行うための各種の制御プログラム,地図情報など(図9参照:後述)が予め記憶される。
【0077】
図5は、サーバ14の電気的な構成を示すブロック図である。図5を参照して、サーバ14は、CPU40,メモリ42,通信LANボード44,通信回路46およびセンサ入力/出力ボード48を備える。通信回路46は、図示しない専用APを介してネットワーク200に無線または有線で接続される。センサ入力/出力ボード48には、図1に示したLRF122,124(さらにはレーダやカメラ)が接続される。
【0078】
CPU40は、RTC40aを含んでおり、LRF122,124からセンサ入力/出力ボード48を通して入力される距離データ(さらにはレーダの計測データ,カメラの画像データ)に対して、RTC40aから得られる時刻データを付加し、この時刻付き距離データ(さらには時刻付き計測データ,時刻付き画像データ)をメモリ42に書き込む。CPU40はまた、こうしてメモリ42に記憶された時刻付き距離データ等と、予めメモリ42に記憶された地図情報とに基づいて、環境における移動ロボット10の位置および移動方向ならびに物理的障害物の領域配置を計算し、この計算結果に基づいて仮想障害物の領域配置をさらに計算し、そして結果(位置&方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報)を送信データとして再びメモリ42に書き込む。
【0079】
通信LANボード44は、たとえばDSPで構成され、こうしてメモリ42に記憶された送信データを通信回路46からネットワーク200を通して移動ロボット10に送信する。メモリ42には、サーバ14が以上のような動作を行うための各種の制御プログラム,地図情報など(図8参照:後述)が予め記憶される。
【0080】
図6には、遠隔操縦システム100が適用される環境に対応する地図が示される。遠隔操縦装置12で地図を表示させるモードが選択されると、ディスプレイ30には、メモリ22に記憶された地図情報に基づいて、図6に示すような地図画面が表示される。
【0081】
この環境は、たとえば博物館の一室であり、そこには、通路、6個の展示棚、および3個のAPに対応する3個のアンテナが適宜な位置に設けられている。移動ロボット10は、このような室内を自律的にまたは遠隔操縦によって移動する。
【0082】
この環境に対応する地図画面には、図6に示されるように、通路の画像300、展示棚の画像302〜312、およびAP202〜206に対応するアンテナの画像202a〜206aが描画されている。なお、以下では、通路の画像300や展示棚の画像302を単に通路300や展示棚302のように略記する。
【0083】
なお、環境は、図6のような屋内環境とは限らず、屋外環境でもよい。その場合、図6に示された展示棚の画像302〜312はビルなどの建造物を、通路の画像300は道路を示すものとなる。
【0084】
図7には、図6の地図上に物理的障害物および仮想障害物を配置した障害物付きの地図が示される。遠隔操作装置12で障害物付き地図を表示させる操作が行われると、ディスプレイ30には、メモリ22に記憶された地図情報,位置&移動方向情報,物理的障害物情報および仮想障害物情報に基づいて、図7に示すような障害物付き地図画面が表示される。この障害物付き地図画面には、図6の地図上にさらに、移動ロボット10を示すマーク“R”、物理的障害物を示すマーク“PO”、および仮想障害物を示すマーク“IO”が描画される。仮想障害物には、移動したり変形したり拡大/縮小したりするもの(動的な仮想障害物)と、移動も変形も拡大/縮小もしないもの(静的な仮想障害物)との2種類がある。
【0085】
たとえば、展示室の右奥手には、展示棚310に隠れてどのアンテナも見通せない領域があり、そこが圏外となっている。この圏外領域は、移動も変形も拡大/縮小もしないため、静的な仮想障害物として検出される。展示室の右奥手に描かれた2つのマーク“IO1”および“IO2”は、このような静的な仮想障害物を示している。
【0086】
また、展示棚312の右手にも圏外領域が生じているが、こちらの圏外領域は、移動はしないものの、付近を通行する人や車両の影響で変形したり拡大/縮小したりするので、動的な仮想障害物として検出される。展示棚312の右手に描かれたマーク“IO5”は、このような動的な仮想障害物を示す。
【0087】
一方、通路300から展示棚306に向かって無人搬送車両(以下“車両”)が移動してきており、この車両が物理的障害物として地図上にマーク“PO1”で示されている。また、接近してきた車両に起因する不感帯が展示棚306の手前に発生しつつあり、この拡大する不感帯に対応する動的な仮想障害物を示すマーク“IO3”が、マーク“PO1”の近くに描画されている。
【0088】
また、展示棚308の手前を人が歩いており、この歩行者つまり物理的障害物を示すマーク“PO2”が展示棚308の手前に描画される。さらに、展示棚308の手前には、この歩行者に起因する不感帯が生じており、この移動する不感帯に対応する動的な仮想障害物を示すマーク“IO4”も描画される。
【0089】
図8には、サーバ14のメモリマップが示される。図8を参照して、メモリ42には、保存領域130および一時記憶領域140が形成され、保存領域130には、通信制御プログラム132、位置&移動方向計算プログラム134、障害物領域配置計算プログラム136および地図情報138などが記憶される。通信制御プログラム132は、サーバ14がネットワーク200を通じて移動ロボット10および遠隔操作装置12と通信を行うための制御プログラムであり、図12のステップS11に対応する。位置&移動方向計算プログラム134は、一時記憶領域140に記憶された距離データ(2次元距離情報)142に基づいて移動ロボット10の位置および移動方向を計算するためのプログラムであり、図12のステップS5に対応する。障害物領域配置計算プログラム136は、LRF122,124からの距離データ142に基づいて、移動ロボット10の移動範囲に存在する障害物(物理的障害物および仮想障害物)の領域配置を計算するためのプログラムであり、図12のステップS7およびS9に対応する。地図情報138は、移動ロボット10の移動範囲に対応する地図情報であり、たとえば図6の地図画面に対応する。
【0090】
一時記憶領域140には、距離データ142、位置&方向情報144、物理的障害物情報146および仮想障害物情報148などが一時記憶される。距離データ142は、LRF122,124から出力されたデータであり、これに基づいて移動ロボット10の位置および移動方向が計算される。また、距離データ142に含まれる2次元距離情報に基づいて、移動ロボット10および物理的障害物の領域配置が計算される。位置&方向情報144は、移動ロボット10(および他の移動体)の位置および移動方向を示す情報であり、移動ロボット10および遠隔操縦装置12の各々に送信される。物理的障害物情報146および仮想障害物情報148は、移動ロボット10の移動範囲に存在する物理的障害物および仮想障害物の領域配置を示す情報であり、移動ロボット10および遠隔操縦装置12の各々に送信される。
【0091】
図9には、遠隔操縦装置12のメモリマップが示される。図9を参照して、メモリ22には、保存領域150および一時記憶領域160が形成され、保存領域150には、通信制御プログラム152、入出力制御プログラム154および地図情報138などが記憶される。通信制御プログラム152は、遠隔操縦装置12がネットワーク200を通じて移動ロボット10およびサーバ14と通信を行うための制御プログラムであり、図14のステップS45に対応する。入出力制御プログラム154は、操作パネル28からの操作入力およびディスプレイ30への画面出力を制御するためのプログラムであり、図14のステップS41,S43およびS49に対応する。地図情報138は、サーバ14に記憶されているものと同じ地図情報である。
【0092】
一時記憶領域160には、センサ情報162、操作情報164、位置&方向情報144、物理的障害物情報146および仮想障害物情報148が一時記憶される。センサ情報162は、移動ロボット10から受信した情報であり、移動ロボット10に備わるセンサ(40,46,58,70,112aおよび112b)の検出結果を示す。操作情報164は、遠隔操縦装置12自身により行われた操作内容(コマンド)を示す情報であり、移動ロボット10に送信される。位置&方向情報144は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10(および他の移動体)の位置および移動方向を示す。物理的障害物情報146および仮想障害物情報148は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10の移動範囲に存在する物理的障害物および仮想障害物の領域配置を示す。
【0093】
図10には、移動ロボット10のメモリマップが示される。図10を参照して、メモリ84には、保存領域170、一時記憶領域180およびパラメータ領域190が形成され、保存領域170には、通信制御プログラム172、動き制御プログラム174および地図情報138などが記憶される。通信制御プログラム172は、移動ロボット10がネットワーク200を通じて遠隔操縦装置12およびサーバ14と通信を行うための制御プログラムであり、図15のステップS65およびS71に対応する。動き制御プログラム174は、動き制御情報182に基づいて移動ロボット10の動きを制御するためのプログラムであり、図15のステップS75およびS77に対応する。地図情報138は、サーバ14に記憶されているものと同じ地図情報である。
【0094】
一時記憶領域180には、センサ情報162、操作情報164、位置&方向情報144,物理的障害物情報146、仮想障害物情報148および動き制御情報182が記憶される。センサ情報162は、移動ロボット10自身に備わるセンサ(40,46,58,70,112aおよび112b)の検出結果を示す情報であり、具体的には、周辺に存在する対象物や壁面までの距離を示す距離情報、周辺を各種カメラで捉えた画像情報、対象物との接触情報、および左右の車輪の速度を示す車輪速情報などが含まれる。操作情報164は、遠隔操縦装置12から受信した情報であり、遠隔操縦装置12により行われた操作内容(コマンド)を示す。位置&方向情報144は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10自身(およびその他の移動体)の位置および移動方向を示す。物理的障害物情報146および仮想障害物情報148は、サーバ14から受信した情報であり、移動ロボット10自身の移動範囲に存在する物理的障害物および仮想障害物の領域配置を示す。
【0095】
動き制御情報182は、移動ロボット10自身の動き(各種モータ36a,36b,92〜98および110の動作)を制御するための情報であり、上述したセンサ情報162,操作情報164,位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて生成される。動き制御情報182には、移動(主として右左の車輪モータ36aおよび36bの動作)を制御するための移動制御情報182aと、動作(主として右左の眼球モータ92および94,右左の腕モータ96および98ならびに頭部モータ110の動作)を制御するための動作制御情報182bとが含まれる。
【0096】
パラメータ領域190には、ユーザによって設定される各種のパラメータ、具体的にはモード192および目標位置194が記憶され、必要に応じて仮の目標位置196がさらに記憶される。モード192には、所定の位置(動かない目標)に向かって移動するモード(通常モード)と、動く目標を追尾するモード(追尾モード)との2種類がある。目標位置194は、目標の位置(座標)を示すパラメータである。仮の目標位置196は、目標への進行方向に障害物がある場合に、目標に代えて設定される仮の目標の位置(座標)を示すパラメータである。
【0097】
図11(A)には、物理的障害物情報146の構成例が示される。図11(A)を参照して、物理的障害物情報146には、各物理的障害物PO1,PO2について、その物理的障害物を識別するID、その物理的障害物を検出した時刻、その物理的障害物の地図上での領域配置(位置,サイズ,形状など)、ならびにその物理的障害物の移動方向および速度が記述される。
【0098】
図11(B)には、仮想障害物情報148の構成例が示される。図11(B)を参照して、仮想障害物情報148には、各仮想障害物IO1〜IO5について、その仮想障害物を識別するID、その仮想障害物を検出した時刻、その仮想障害物の地図上での領域配置(位置,サイズ,形状など)、ならびにその仮想障害物の移動方向および速度(静的な仮想障害物の場合は“固定”)が記述される。
【0099】
なお、遠隔操縦システム100からサーバ14およびこれに付随するLRF122,124等を省略し、移動ロボット10が自身によるセンサ情報に基づいて位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を生成するようにしてもよい。または、サーバ14の役割をLRF122,124等からのセンサ情報の収集に限定し、移動ロボット10が自身によるセンサ情報およびサーバ14からのセンサ情報に基づいて位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を生成するようにしてもよい。
【0100】
サーバ14のCPU40は、メモリ42に記憶された通信制御プログラム132,位置&移動方向計算プログラム134および障害物領域配置計算プログラム136(図8参照)に基づいて、図12および図13のフローに従う処理を実行する。図12を参照して、まずステップS1で、LRF122,124から距離データ142を取得する。取得した距離データ142は、一時記憶領域140に書き込まれる。なお、サーバ14にカメラを接続する場合には、さらにカメラから画像データが取得されて一時記憶領域140に書き込まれる。
【0101】
一時記憶領域140には、前回の距離データ142も記憶されており、ステップS3では、今回取得した距離データ142を前回の距離データ142と比較して、変化があるか否かを判別し、ここでNOであればステップS1に戻る。なお、今回が初回の場合は、変化ありと見なされ、ステップS3の判別結果はYESとなる。ステップS3でYESであれば、ステップS5に進んで、今回の距離データ142および前回の距離データ142に基づいて移動ロボット10の位置および移動方向を計算する。この計算結果は、位置&方向情報144として一時記憶領域140に書き込まれる。
【0102】
次に、ステップS7で、保存領域130に記憶された地図情報138および一時記憶領域140に記憶された距離データ142に含まれる2次元距離情報(さらにはカメラからの画像データ)に基づいて物理的障害物の領域配置を計算する。この計算結果は、物理的障害物情報146として一時記憶領域140に書き込まれる。次のステップS9では、保存領域130に記憶された地図情報138および一時記憶領域140に記憶された物理的障害物情報146に基づいて仮想障害物の領域配置を計算する(詳細は後述)。この計算結果は、仮想障害物情報148として一時記憶領域140に書き込まれる。
【0103】
そしてステップS11で、一時記憶領域140に記憶された位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を、通信LANボード44を介して通信回路46から移動ロボット10および遠隔操縦装置12の各々に送信する。その後、ステップS1に戻って上記と同様の処理を繰り返す。
【0104】
これにより、移動ロボット10は、移動ロボット10自身の位置および移動方向を知ることができるので、自律的な移動が行える。また、遠隔操縦装置12を操作するオペレータは、移動ロボット10の位置および移動方向を知ることができるので、移動ロボット10の遠隔操縦が行える。なお、遠隔操縦システム100からサーバ14を省略して、移動ロボット10自身がセンサ情報156に基づいて位置および移動方向を計算してもよい。遠隔操縦装置12には、この計算結果(位置&方向情報144)が送信される。
【0105】
上記ステップS9つまり仮想障害物の領域配置の計算は、詳しくは図13のフローに従って実行される。図13を参照して、CPU40は、最初、ステップS21で、地図情報138に基づく地図上に、物理的障害物情報146に基づく物理的障害物を配置し、次に、ステップS23で、その地図を、たとえば図17(A)に示すように格子状に分割した後、ステップS25に進む。
【0106】
ステップS25では、地図上で、各アンテナ202a〜206aから各格子点に至る電波を追跡(レイトレーシング)して、各格子点における電界強度を計算する。次のステップS27では、その計算結果つまり各格子点における電界強度に基づいて、電界強度が閾値を下回る格子点群を囲む領域を検出する。
【0107】
たとえば、地図上のある区画において、図17(B)に示すように25個の格子点(1,1)〜(5,5)が定義されており、そのうち隣接する7個の格子点(2,2),(3,2),(2,3),(3,3),(4,3),(3,4)および(4,4)で電界強度が閾値を下回ったとすると、これら7個の格子点群を囲む領域IOiが検出される。なお、どの格子点の電界強度も閾値以上であるか、または、電界強度が閾値を下回る格子点があっても、それらの配置が離散的である場合には、該当領域なしとみなされる。
【0108】
次に、こうして検出された領域のサイズが閾値より大であるか否かをステップS29で判別する。なお、閾値は、検出領域の形状を楕円形とみなして、長径2m,短径1mなどのように決められる。ステップS29でNOであれば、ステップS39でその領域に対応する登録情報を抹消(対応する登録情報がなければ素通り)する。その後、上位のフロー(図12参照)に戻る。ステップS29でYESであれば、ステップS31に進む。
【0109】
ステップS31では、検出された領域を仮想障害物とみなして、その検出時刻および領域配置(位置,形状,サイズなど)を仮想障害物情報148(図10参照)に登録(または登録済みの情報を更新)する。次のステップS33では、検出された領域が移動しているか否かを仮想障害物情報148に登録された位置の変化に基づいて判別し、ここYESであれば、その位置変化から計算される移動方向/速度をステップS35で仮想障害物情報148にさらに登録する。ステップS33でNOであれば、移動方向/速度に代えて“固定”をステップS37で仮想障害物情報148にさらに登録する。こうして移動方向/速度または“固定”を登録した後、上位のフローに戻る。
【0110】
遠隔操縦装置12のCPU20は、メモリ22に記憶された通信制御プログラム152および入出力制御プログラム154(図9参照)に基づいて、図14のフローに従う制御処理を実行する。図14を参照して、まずステップS41で、ディスプレイ30に障害物付き地図画面(図7参照)を初期表示し、次に、ステップS43で、操作パネル28への操作入力があったか否かを判別して、NOであればステップS47に進む。ステップS43でYESであれば、ステップS45で、その操作入力の内容を示す操作情報を、通信LANボード24を介して通信回路26から移動ロボット10に送信した後、ステップS47に進む。
【0111】
ステップS47では、通信LANボード24によって移動ロボット10またはサーバ14から各種の情報(センサ情報,位置&方向情報144,物理的障害物情報146,仮想障害物情報148)が受信されたか否かを判別し、NOであればステップS43に戻る。ステップS47でYESであれば、ステップS49でディスプレイ30の障害物付き地図画面を受信情報に基づいて更新した後、ステップS43に戻る。そして、上記と同様の処理を繰り返す。
【0112】
これによって、ディスプレイ30には、移動ロボット10からのセンサ情報、ならびにサーバ14からの位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を視覚的に示す障害物付き地図画面が、リアルタイムに表示される。オペレータは、この画面を見ながら、必要に応じて操作パネル28を操作して、移動ロボット10の遠隔制御を行うことができる。
【0113】
移動ロボット10のCPU80は、通信制御プログラム172および動き制御プログラム174(図10参照)に基づいて、図15および図16のフローに従う制御処理を実行する。図15を参照して、最初、ステップS61で、初期処理を行う。初期処理には、一時記憶領域180の初期化、およびパラメータ領域190に記憶された各種パラメータ(モード192,目標位置194および仮の目標位置196)の初期設定といった処理が含まれる。
【0114】
モード192の初期設定では、たとえば遠隔操縦装置12の操作パネル28を介して、通常モードおよび追尾モードのいずれか1つがユーザにより選択され、その選択されたモードが記憶される。目標位置194の初期設定では、通常モードの場合、任意の位置がユーザによって指定され、その指定された位置を示す座標が記憶される。一方、追尾モードの場合には、任意の目標(人物,車両など)がユーザによって指定され、その指定された目標の初期位置を示す座標が記憶される。仮の目標位置196の初期設定では、“未設定”が記憶される。
【0115】
初期処理が完了すると、ステップS63に進んで、各種センサ(40,46,58,70,112aおよび112b)からセンサ情報を取得する。次のステップS65では、こうして取得したセンサ情報に基づいて、一時記憶領域180に記憶されたセンサ情報162を更新する。更新後のセンサ情報162は、通信LANボード114を介して、無線通信回路116によりアンテナ118で遠隔操縦装置12に送信される。その後、ステップS67に進む。
【0116】
ステップS67では、サーバ14から各種の情報(位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148)を受信したか否かを判別し、NOであればステップS71に進む。ステップS67でYESであれば、ステップS69で、一時記憶領域180に記憶された位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148を受信情報に基づいて更新した後、ステップS71に進む。
【0117】
ステップS71では、遠隔操縦装置12から操作情報を受信したか否かを判別し、NOであればステップS75に進む。ステップS71でYESであれば、ステップS73で、一時記憶領域180に記憶された操作情報164を受信情報に基づいて更新した後、ステップS75に進む。
【0118】
ステップS75では、センサ情報162,操作情報164,位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて動き制御情報182を生成し、そしてステップS77で、この動き制御情報182に基づいて各種モータ(92〜98,110,36aおよび36b)を駆動する。その後、ステップS63に戻って上記と同様の処理を繰り返す。これによって、移動ロボット10の様々な動き、たとえば先述したような移動やコミュニケーション行動などが実現される。
【0119】
上記ステップS75で生成される動き制御情報182には、移動制御情報182aおよび動作制御情報182bが含まれており、このうち移動制御情報182aは、たとえば図16に示すフローに従って生成される。なお、動作制御情報182bについての説明は省略する。
【0120】
図16を参照して、最初のステップS91では、現時点のモード、つまりパラメータ領域190に記憶されたモード192が、追尾モードを示すか否かを判別する。ここでNO、つまりモード192が通常モードを示す場合には、ステップS95に進む。ステップS91でYESであれば、ステップS93で目標位置194を追尾相手の現在位置に更新した後、ステップS95に進む。なお、追尾相手の現在位置は、一時記憶領域180に記憶された位置&方向情報144から抽出される。
【0121】
ステップS95では、目標位置194までの距離、つまり移動ロボット10自身と追尾相手との間の距離が、閾値(たとえば1m)以内か否かを判別し、ここでYESであれば、処理はステップS109(後述)に分岐する。
【0122】
なお、ステップS95の判別で用いる閾値は、固定値とは限らず、可変値であってもよい。たとえば、閾値を1つのパラメータとしてパラメータ領域190に記憶し、ステップS61の初期処理を通じて、環境に応じた値(たとえば屋外では2m,屋内では1mなど)を設定してもよい。
【0123】
ステップS95でNOであれば、ステップS97で、位置&方向情報144を参照して、移動ロボット10自身の位置および目標位置194から進行すべき方向を計算する。次のステップS99では、計算した進行方向に固定障害物があるか否かを地図情報138および仮想障害物情報148に基づいて判別する。ここで、固定障害物とは、具体的には、地図情報138に記載された静的な物理的障害物(屋外地図の場合は建物や道路など、間取り図の場合は壁面や展示棚など。固定的に決められた通行禁止区域も含めてよい)、および仮想障害物情報148に登録された“固定”障害物(静的な仮想障害物、および動的な仮想障害物のうち移動しないもの)のいずれかに該当する物または領域をいう。
【0124】
ステップS97で計算した進行方向に上記のような固定障害物が存在する場合には、ステップS99でYESと判別して、ステップS105(後述)に進む。一方、計算した進行方向に上記のような固定障害物が存在しない場合には、ステップS99でNOと判別して、ステップS101に進む。ステップS101では、計算した進行方向に移動障害物があるか否かを物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて判別する。ここで、移動障害物とは、具体的には、物理的障害物情報146に登録された動的な物理的障害物、および仮想障害物情報148に登録された“移動”障害物(動的な仮想障害物のうち移動するもの)のいずれかに該当する物または領域をいう。
【0125】
ステップS97で計算した進行方向に上記のような移動障害物が存在しない場合には、ステップS101でNOと判別して、ステップS107(後述)に進む。一方、計算した進行方向に上記のような移動障害物が存在する場合には、ステップS101でYESと判別して、ステップS103に進む。ステップS103では、位置&方向情報144から抽出される移動ロボット10自身の速度と、物理的障害物情報146または仮想障害物情報148から抽出されるその移動障害物の速度とに基づいて、その移動障害物への到達予想時間を計算し、その計算した到達予想時間が閾値以上か否かを判別する。なお、到達予想時間は、たとえば、通信環境の悪化による影響がロボット制御の安全上許容される時間を基に、移動ロボット10自身の移動速度およびその移動障害物の移動速度の、2つの移動速度の関数として設定される。ステップS103でNOであればステップS105に進む一方、YESであればステップS107に進む。
【0126】
ステップS105では、その移動障害物を避ける仮の目標位置196を設定する。好ましくは、仮の目標位置196は、これに基づいて新たに計算される進行方向と、ステップS97で計算した進行方向との差分が、その移動障害物を回避可能な範囲で極力小さくなるような位置に設定される。これにより、迂回路をできるだけ短くすることができる。設定の後、ステップS97に戻って上記と同様の処理を繰り返す。なお、仮の目標位置196が設定された状態で実行されるステップS97では、目標位置194に代えて、仮の目標位置196を用いて計算する。
【0127】
ステップS107では、ステップS97で計算した進行方向への移動を示す移動制御情報182aを生成する。具体的には、ステップS97で計算した進行方向が、位置&方向情報144から抽出される移動ロボット10自身の現在の進行方向と一致していれば、右左の車輪モータ36aおよび36bの回転を現状維持させる移動制御情報182aを生成する。一方、計算した進行方向が現在の進行方向と異なっていれば、両者が一致するように右左の車輪モータ36aおよび36bの回転を変化させる移動制御情報182aを生成する。生成の後、上位のフロー(図15参照)に復帰する。
【0128】
ステップS95でYESと判別された場合の処理は、以下のようになる。ステップS109では、目標位置194が仮の目標位置196であるか否か(つまり仮の目標位置196が設定されている状態か否か)を判別し、ここでYESであれば、仮の目標位置196を元の目標位置194に戻した後(つまり仮の目標位置196を削除した後)、ステップS97に戻る。したがって、次回のステップS97では、目標位置194が参照される。ステップS109でNOであれば、ステップS113で移動停止を示す移動制御情報182aを生成した後、上位のフローに復帰する。
【0129】
なお、図示はしていないが、図16のような移動方向の制御と同時に、移動速度の制御も、近隣障害物との距離,モード,周囲状況等に応じて適宜行われている。
【0130】
なお、物理的障害物は、この実施例では、LRF122,124によって検出したが、これに代えてレーダ,赤外線測距,カメラ画像の立体視処理などによって検出してもよく、これらの適宜な組み合わせによって検出してもよい。
【0131】
一方、仮想障害物は、この実施例では、地図情報138および物理的障害物情報146を基にしたレイトレーシングの手法であるレイラウンチング法やイメージング法によって検出(予測)したが、これに限らず様々なレイトレーシングの手法やFDTD(Finite Difference Time Domain)法などの様々な電磁界解析手法を用いても予測できるほか、近隣障害物との距離や移動速度、周囲状況、電波の周波数など条件に応じてこれらを組み合わせて予測することもできる。または、移動体の位置と不感帯の発生確率,無線リソースへの影響量などとの間の関係を示す実測データを収集し、過去の実測データから統計的手法などにより予測することもできる。あるいは、電磁界解析手法や統計的手法などを用いた計算によって予測する以外に、環境に配置されたセンサや移動体に搭載されたセンサからもたらされる実測情報に基づいて検出してもよいし、計算による予測とセンサによる実測とを組み合わせて検出してもよい。
【0132】
また、この実施例では仮想障害物の判定に電界強度を用いているが、より高度な判定方法として、電界強度に代えてノイズ源の位置や伝搬路情報などから求められる信号対ノイズ比や所望波干渉波比を用いることも可能である。そのほかにも、これら物理的に決まる情報とエラー訂正能力などのシステムパラメータから計算したビット誤り率やパケットエラー率などの指標を用いることも可能である。
【0133】
以上から明らかなように、この実施例の移動ロボット遠隔操縦システム100は、移動ロボット10、遠隔操縦装置12、サーバ14、AP202〜206およびセンサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)を含む。遠隔操縦装置12およびサーバ14はそれぞれネットワーク200に接続され、移動ロボット10はAP202〜206を介してネットワーク200に接続される。移動ロボット10にはセンサの一部(40,46,58,70,112a,112b)が設けられ、サーバ14にはセンサの他の一部(122,124)が接続される。移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14の保存領域170,130および150には、静的な物理的障害物302〜312の配置を記述した地図情報138(図6参照)が記憶される。
【0134】
サーバ14のCPU40は、センサ(122,124,40,46,58,70,112a,112b)からのセンサ情報に基づいて、地図情報138に対応する区域での移動ロボット10の位置および移動方向を検出する(S1,S5)。また、地図情報138に対応する区域内で移動する動的な物理的障害物PO1,PO2(図7参照)の位置および移動方向をさらに検出し、検出結果に基づいて動的な物理的障害物PO1,PO2の少なくとも位置を示す物理的障害物情報146を作成する(S7)。検出結果を示す位置&移動方向情報144および作成された物理的障害物情報146は、ネットワーク200を通じて移動ロボット10および遠隔操縦装置14に送信され、この結果、移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14の一時記憶領域180,140および160に位置&移動方向情報144および物理的障害物情報146が記憶される。
【0135】
サーバ14のCPU40はさらに、地図情報138および物理的障害物情報146に基づいて、地図情報138に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域IO1,IO2(図7参照)および当該地図情報138に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域IO3〜IO5(図7参照)について少なくとも位置を示す仮想障害物情報148を作成する(S9)。作成された仮想障害物情報148は、ネットワーク200を通じて移動ロボット10および遠隔操縦装置12に送信され、この結果、移動ロボット10,遠隔操縦装置12およびサーバ14の一時記憶領域180,140および160に仮想障害物情報148がさらに記憶される。
【0136】
遠隔操縦装置12のCPU20は、地図情報138,位置&方向情報144,物理的障害物情報146および仮想障害物情報148に基づいて、たとえば図7のような障害物付き地図画面をディスプレイ30に表示し(S41,S49)、操作パネル28による操作を受け付け(S43)、移動ロボット10に操作情報164を送信する(S45)。
【0137】
移動ロボット10のCPU80は、地図情報138,位置&移動方向情報144,物理的障害物情報146,仮想障害物情報148および操作情報164に基づいて、静的な物理的障害物302〜312、動的な物理的障害物PO1,PO2、静的な仮想障害物IO1,IO2および動的な仮想障害物IO3〜IO5を回避するように移動ロボット10を移動させる移動制御情報182aを作成する(S75,S105)。
【0138】
これにより、静的な不感帯や圏外領域に加えて、時間的に変化する不感帯が点在する環境でも、高い通信品質の維持が可能となり、簡単な構成で移動体を安全に遠隔操縦できるようになる。
【0139】
なお、この実施例では、サーバ14を用いたが、遠隔操縦装置12がサーバ14の機能を兼ねてもよい。ただし、サーバ14を用いることで、多数の移動ロボット10を遠隔操縦する場合の制御が容易になる。また、この実施例では、ネットワーク200(およびこれに設けられたAP202〜206)を介して遠隔操縦を行ったが、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信により直接、移動ロボット10を遠隔操縦してもよい。
【0140】
なお、この実施例では、移動経路選択に使用する地図上に移動の妨げとなる無線の圏外領域や不感帯を仮想障害物として配置し、これらを避ける経路を選択することで、通信障害による遠隔操縦への悪影響を防止したが、仮想障害物は、圏外領域や不感帯に限らない。
【0141】
たとえば、数多くのアンテナが同時に見通しとなる場所では、移動ロボット10の通信相手が定まらずに通信が困難ないし不安定となる場合があるため、圏外領域や不感帯と同様に仮想障害物として取り扱うことができる。また、多数の移動ロボット10が集まっている場所(移動ロボット10の密度が一定以上の領域)では、混信により通信が困難ないし不安定となる可能性があるため、これも同様に取り扱うことが可能である。
【0142】
そして、この種の通信障害領域については、これを避ける経路を選択する代わりに、仮想障害物に到達または接近した時点で無線通信に用いる周波数を変更することによって、その領域で生じる通信障害を回避できる可能性がある。そこで、移動制御情報182aに代えて、またはこれに加えて、移動ロボット10の通信LANボード114に、無線通信回路116が無線通信で用いる周波数を変更させる周波数変更情報(図示せず)を作成してもよい。
【0143】
一般には、個々の無線リソースの利用を困難にしたり通信システム全体の安定動作に悪影響を与えたりする領域を仮想障害物として地図上に配置して、これを避ける経路を選択したり周波数を変更したりといった回避動作を行うことで、通信品質の維持が可能となり、円滑なロボット制御が実現される。
【0144】
言い換えると、通信障害が起こる可能性を減らすのとは逆に、通信障害が起こりうる場所への移動を避けたり、発生を事前に予測して通信周波数を変更したりすることで、低遅延かつ高信頼の通信を維持することができ、その結果、安全な操縦が行える。
【0145】
なお、以上の説明では、一実施例である遠隔操縦システム100について説明したが、この発明は、移動ロボットや無人カートといった移動体を、ネットワークを介した無線通信または直接の無線通信によって、離れた場所から遠隔操縦するための遠隔操縦システムに適用できる。
【符号の説明】
【0146】
10 …移動ロボット
12 …遠隔操縦装置
14 …サーバ
20,40,80 …CPU
22,42,84 …メモリ
24,44,114 …通信LANボード
26,46 …通信回路
116 …無線通信回路
118 …移動ロボット用のアンテナ
122,124 …LRF(レーザレンジファインダ)
200 …ネットワーク
202〜206 …AP(アクセスポイント)
202a〜206a …AP用のアンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システムであって、
地図情報を記憶する第1メモリ、
前記地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域を示す情報を仮想障害物情報として記憶する第2メモリ、
センサからのセンサ情報に基づいて、前記地図情報に対応する区域での前記移動体の少なくとも位置を検出する検出手段、および
前記地図情報および前記仮想障害物情報と前記検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、前記通信障害領域での無線通信障害を回避するように前記移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段を備える、移動体遠隔操縦システム。
【請求項2】
前記制御情報作成手段は、前記通信障害領域を回避するように前記移動体を移動させる移動制御情報を作成する、請求項1記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項3】
前記地図情報には、静的な物理的障害物の位置が記述されており、
前記第2メモリは、前記地図情報に対応する区域内で移動する動的な物理的障害物に関する物理的障害物情報をさらに記憶し、
前記制御情報作成手段は、前記地図情報,前記物理的障害物情報および前記仮想障害物情報と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記移動制御情報を作成する、請求項2記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記動的な物理的障害物の少なくとも位置をさらに検出し、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記動的な物理的障害物の少なくとも位置を示す物理的障害物情報を作成する物理的障害物情報作成手段、および
前記地図情報および前記物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて、当該地図情報に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域および当該地図情報に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域について少なくとも位置を示す仮想障害物情報を作成する仮想障害物情報作成手段をさらに備え、
前記第2メモリは、前記物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報および前記仮想障害物情報作成手段によって作成された仮想障害物情報を記憶する、請求項3記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項5】
前記検出手段は、前記移動体の移動方向と、前記動的な物理的障害物の移動方向とをさらに検出し、
前記物理的障害物情報作成手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記動的な物理的障害物の位置および移動方向を示す物理的障害物情報を作成し、
前記仮想障害物情報作成手段は、前記地図情報および前記物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて前記動的な障害領域の位置および移動方向を示す仮想障害物情報を作成し、
前記制御情報作成手段は、
前記移動体の移動方向に静的な物理的障害物および静的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合には直ちに回避移動を行わせる移動制御情報を生成し、
前記移動体の移動方向に、静的な物理的障害物および静的な仮想障害のいずれも存在せず、かつ移動する動的な物理的障害物および移動する動的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合には、当該移動体の当該移動障害物への到達予想時間が閾値を下回った時点で回避移動を行わせる移動制御情報を生成する、請求項4記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項6】
前記地図情報に対応する区域に配置されて前記移動体との間で無線通信を行うためのアンテナをさらに備え、
前記仮想障害物情報作成手段は、前記地図情報および前記物理的障害物情報に基づいて前記アンテナからの電界の強度分布を計算し、計算された電界強度が閾値よりも小さい領域を通信障害領域として特定し、そして、特定された通信障害領域の少なくとも位置を示す情報を前記仮想障害物情報として作成する、請求項3ないし5のいずれかに記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項7】
ネットワークに接続されたサーバをさらに備え、
前記アンテナは、前記移動体の前記ネットワークへのアクセスポイントに設けられ、
前記物理的障害物情報作成手段および前記仮想障害物情報作成手段は前記サーバに設けられ、そして前記制御情報作成手段は前記移動体に設けられる、請求項6記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項8】
前記ネットワークに接続された遠隔操作装置をさらに備え、
前記第1メモリおよび前記第2メモリは、前記サーバ,前記移動体および前記遠隔操縦装置の各々に設けられる、請求項7記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項9】
前記センサの一部は前記移動体に設けられ、前記センサの他の一部は前記地図情報に対応する区域に配置される、請求項1ないし8のいずれかに記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項10】
移動体を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システムのコンピュータにおいて実行される制御プログラムであって、
前記制御プログラムは前記コンピュータを、
地図情報を記憶する第1メモリ、
前記地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域を示す情報を仮想障害物情報として記憶する第2メモリ、
センサからのセンサ情報に基づいて、前記地図情報に対応する区域での前記移動体の少なくとも位置を検出する検出手段、および
前記地図情報および前記仮想障害物情報と前記検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、前記通信障害領域での無線通信障害を回避するように前記移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段として機能させる、制御プログラム。
【請求項1】
移動体を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システムであって、
地図情報を記憶する第1メモリ、
前記地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域を示す情報を仮想障害物情報として記憶する第2メモリ、
センサからのセンサ情報に基づいて、前記地図情報に対応する区域での前記移動体の少なくとも位置を検出する検出手段、および
前記地図情報および前記仮想障害物情報と前記検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、前記通信障害領域での無線通信障害を回避するように前記移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段を備える、移動体遠隔操縦システム。
【請求項2】
前記制御情報作成手段は、前記通信障害領域を回避するように前記移動体を移動させる移動制御情報を作成する、請求項1記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項3】
前記地図情報には、静的な物理的障害物の位置が記述されており、
前記第2メモリは、前記地図情報に対応する区域内で移動する動的な物理的障害物に関する物理的障害物情報をさらに記憶し、
前記制御情報作成手段は、前記地図情報,前記物理的障害物情報および前記仮想障害物情報と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記移動制御情報を作成する、請求項2記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記動的な物理的障害物の少なくとも位置をさらに検出し、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記動的な物理的障害物の少なくとも位置を示す物理的障害物情報を作成する物理的障害物情報作成手段、および
前記地図情報および前記物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて、当該地図情報に対応する区域内で発生する静的な通信障害領域および当該地図情報に対応する区域内で発生しかつ移動する動的な通信障害領域について少なくとも位置を示す仮想障害物情報を作成する仮想障害物情報作成手段をさらに備え、
前記第2メモリは、前記物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報および前記仮想障害物情報作成手段によって作成された仮想障害物情報を記憶する、請求項3記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項5】
前記検出手段は、前記移動体の移動方向と、前記動的な物理的障害物の移動方向とをさらに検出し、
前記物理的障害物情報作成手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記動的な物理的障害物の位置および移動方向を示す物理的障害物情報を作成し、
前記仮想障害物情報作成手段は、前記地図情報および前記物理的障害物情報作成手段によって作成された物理的障害物情報に基づいて前記動的な障害領域の位置および移動方向を示す仮想障害物情報を作成し、
前記制御情報作成手段は、
前記移動体の移動方向に静的な物理的障害物および静的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合には直ちに回避移動を行わせる移動制御情報を生成し、
前記移動体の移動方向に、静的な物理的障害物および静的な仮想障害のいずれも存在せず、かつ移動する動的な物理的障害物および移動する動的な仮想障害物の少なくとも1つが存在する場合には、当該移動体の当該移動障害物への到達予想時間が閾値を下回った時点で回避移動を行わせる移動制御情報を生成する、請求項4記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項6】
前記地図情報に対応する区域に配置されて前記移動体との間で無線通信を行うためのアンテナをさらに備え、
前記仮想障害物情報作成手段は、前記地図情報および前記物理的障害物情報に基づいて前記アンテナからの電界の強度分布を計算し、計算された電界強度が閾値よりも小さい領域を通信障害領域として特定し、そして、特定された通信障害領域の少なくとも位置を示す情報を前記仮想障害物情報として作成する、請求項3ないし5のいずれかに記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項7】
ネットワークに接続されたサーバをさらに備え、
前記アンテナは、前記移動体の前記ネットワークへのアクセスポイントに設けられ、
前記物理的障害物情報作成手段および前記仮想障害物情報作成手段は前記サーバに設けられ、そして前記制御情報作成手段は前記移動体に設けられる、請求項6記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項8】
前記ネットワークに接続された遠隔操作装置をさらに備え、
前記第1メモリおよび前記第2メモリは、前記サーバ,前記移動体および前記遠隔操縦装置の各々に設けられる、請求項7記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項9】
前記センサの一部は前記移動体に設けられ、前記センサの他の一部は前記地図情報に対応する区域に配置される、請求項1ないし8のいずれかに記載の移動体遠隔操縦システム。
【請求項10】
移動体を無線通信により遠隔操縦するための移動体遠隔操縦システムのコンピュータにおいて実行される制御プログラムであって、
前記制御プログラムは前記コンピュータを、
地図情報を記憶する第1メモリ、
前記地図情報に対応する区域内で無線通信に障害が生じる通信障害領域を示す情報を仮想障害物情報として記憶する第2メモリ、
センサからのセンサ情報に基づいて、前記地図情報に対応する区域での前記移動体の少なくとも位置を検出する検出手段、および
前記地図情報および前記仮想障害物情報と前記検出手段の検出結果とに少なくとも基づいて、前記通信障害領域での無線通信障害を回避するように前記移動体を制御する制御情報を作成する制御情報作成手段として機能させる、制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−137909(P2012−137909A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289307(P2010−289307)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年6月19日付け、支出負担行為担当官 総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「高齢者・障がい者(チャレンジド)のためのユビキタスネットワークロボット技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年6月19日付け、支出負担行為担当官 総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「高齢者・障がい者(チャレンジド)のためのユビキタスネットワークロボット技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
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