説明

移動局及び無線通信システムに使用される方法

【課題】SAR(Specific Absorption Rate)バックオフを実行可能な移動局の最大送信電力を決定するための技術を提供する。
【解決手段】SARバックオフ機能を備える移動局であって、SARバックオフが利用可能であることを示すSARシグナリングを基地局から受信するSARシグナリング受信部と、前記SARシグナリング受信部が前記SARシグナリングを受信したか否かに応じて、当該移動局の最大送信電力を決定する最大送信電力決定部とを有し、前記SARシグナリング受信部が前記SARシグナリングを受信したことに応答して、前記最大送信電力決定部は、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタを適用して前記最大送信電力を決定する移動局に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に無線通信システムに関し、より詳細には、SARバックオフを実行可能な移動局の送信電力を決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LTE(Long Term Evolution)方式では、アップリンク無線アクセス方式として直交周波数分割多重接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、ダウンリンク無線アクセス方式としてシングルキャリア周波数分割多重接続(SC−FDMA:Single−Carrier Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。
【0003】
OFDMA方式は、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各サブキャリアによりデータを伝送するマルチキャリア伝送方式である。OFDMA方式によると、サブキャリアを周波数軸上に直交させながら密に配置することによって、高速伝送を実現し、周波数の利用効率を向上させることが可能である。
【0004】
SC−FDMA方式は、周波数帯域を分割し、各移動局に異なる周波数帯域を割当てることによりデータを伝送するシングルキャリア伝送方式である。SC−FDMA方式によると、送信電力の変動を抑えることができるため、移動局の消費電力を低減することが可能である。
【0005】
LTE方式では、移動局がアップリンクで送信可能な最大送信電力は、基本的には移動局の電力能力、割り当てられたリソースブロック、適用される変調方式、隣接キャリア干渉などに基づき決定される。具体的には、各移動局は、アップリンクで送信可能な最大送信電力PcmaxをPcmax_L<Pcmax<Pcmax_Hの範囲内で決定する。ここで、下限値Pcmax_Lと上限値Pcmax_Hとは、それぞれ以下のように規定される。
【0006】
cmax_L=Min{PEMAX−ΔT,PPowerClass−(MPR+A-MPR)−ΔT
cmax_H=Min{PEMAX,PPowerClass
ここで、PEMAXはネットワーク側から通知される移動局の最大送信電力を表し、ΔTは帯域の端のリソースブロックを利用する際に許容可能な緩和量を表し、PPowerClassは、移動局が備えるべき最大送信電力を表す。また、MPR(Maximum Power Reduction)は変調方式(QPSKなど)とリソースブロック数により定められる許容可能な緩和量を表し、A-MPR(Additional Maximum Power Reduction)は隣接する他システムへの干渉を与えないために許容可能な緩和量を表す。
【0007】
このようにして算出された下限値Pcmax_Lと上限値Pcmax_Hとの範囲内において移動局の最大送信電力Pcmaxが決定され、この最大送信電力Pcmaxを超過しないように実際の送信電力が決定される。
【0008】
また、現在標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)において、LTEの発展型であるLTE−Advanced方式の標準化が進められている。LTE−Advanced方式では、LTE方式とのバックワードコンパチビリティを保持しながら、LTEを上回るスループットを実現するため、キャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)技術が導入される。CAでは、コンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)と呼ばれる複数のLTEキャリアを同時に用いて通信が実行される。CAが利用されるLTE−Advacend方式では、各CCに対して最大送信電力Pcmax,cが決定され、この最大送信電力Pcmax,cを超過しないように各CCに対する実際の送信電力が決定される。
【0009】
一方、移動局から送出される電磁波が人体に影響を及ぼす可能性があることが知られている。一般に、人体が電波を発する機器から一定時間に受けたエネルギー量を示す指標として比吸収率又はSAR(Specific Absorption Rate)が用いられ、人体に許容されるSARが規定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】3GPP TS36.101
【非特許文献2】3GPP TS36.213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したような最大送信電力Pcmax又はPcmax,cにより移動局が送信を実行した場合、規定されたSARを充足しない可能性が生じうる。このため、このようなSAR規定を充足しないケースを想定して、移動局の最大送信電力を低減することを許容するため、移動局は、最大送信電力を低減するためのSARバックオフ機能を有するよう構成される。
【0012】
具体的には、上述した最大送信電力Pcmaxについては、下限値Pcmax_Lを低減するための低減ファクタが導入され、Pcmax_Lが以下のように規定されることが提案されている。
【0013】
cmax_L=Min{PEMAX−ΔT,PPowerClass−MAX(MPR+A-MPR,P-MPR)−ΔT
ここで、P-MPR(Power-Maximum Power Reduction)は、人体に許容されるSAR規定を充足するよう送信電力を低減するための低減量を表す。
【0014】
LTE−Advanced方式では、同様にして各CCに対して最大送信電力Pcmax,cの下限値Pcmax,c_LがP-MPRを考慮して決定される。
【0015】
しかしながら、このようなSAR規定を考慮して、P-MPRを導入することによって最大送信電力を低減するSARバックオフの利用は、すべての国又は地域で許可されているとは限らない。例えば、現時点において、P-MPRを利用したSARバックオフの利用は、米国では認められているが、日本では認められていない。LTE方式及びLTE−Advanced方式では、世界的に共通に利用可能な周波数帯域であるグローバルバンドを割当てることが提案されている。このため、グローバルバンドに対応してSARバックオフを実行可能な移動局が、SARバックオフの利用が認められていない国又は地域においてSARバックオフを適用してしまう事態が想定される。
【0016】
上記問題点に鑑み、本発明の課題は、SARバックオフを実行可能な移動局の最大送信電力を決定するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の一特徴は、SARバックオフ機能を備える移動局であって、SARバックオフが利用可能であることを示すSARシグナリングを基地局から受信するSARシグナリング受信部と、前記SARシグナリング受信部が前記SARシグナリングを受信したか否かに応じて、当該移動局の最大送信電力を決定する最大送信電力決定部とを有し、前記SARシグナリング受信部が前記SARシグナリングを受信したことに応答して、前記最大送信電力決定部は、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタを適用して前記最大送信電力を決定する移動局に関する。
【0018】
本発明の他の特徴は、SARバックオフ機能を備える移動局であって、基地局から報知情報を受信し、前記受信した報知情報に含まれるカントリーコードを抽出するカントリーコード受信部と、各カントリーコードに係る各国又は各地域においてSARバックオフが利用可能であるか否かを示すSARバックオフ利用可能性情報を参照して、当該移動局の最大送信電力を決定する最大送信電力決定部とを有し、前記抽出したカントリーコードに係る国又は地域において前記SARバックオフが利用可能である場合、前記最大送信電力決定部は、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタを適用して前記最大送信電力を決定する移動局に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、SARバックオフを実行可能な移動局の最大送信電力を決定するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施例による無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例による移動局を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施例による無線通信システムにおける一例となる処理を示すシーケンス図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施例による無線通信システムにおける他の例となる処理を示すシーケンス図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施例による移動局を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施例による無線通信システムにおける一例となる処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明の一実施例による無線通信システムを説明する。本実施例による無線通信システムは、キャリアアグリゲーション(CA)技術を利用して無線通信を行うLTE−Advancedシステムである。CAでは、広帯域伝送を可能にするため、コンポーネントキャリア(CC)と呼ばれる複数のキャリアを同時に用いて通信が実行される。しかしながら、本発明は、LTE−Advancedシステムに限定されるものでなく、LTEシステムなどのSARバックオフを適用して移動局の最大送信電力の決定する何れか適切な無線通信システムに適用されてもよい。
【0023】
図1は、本発明の一実施例による無線通信システムを示すブロック図である。図1に示されるように、無線通信システム10は、基地局(BS)50と移動局(UE)100とを有する。図示された実施例では、1つの基地局50しか示されていないが、典型的には、無線通信システム10では、当該システムのサービスエリアをカバーするよう複数の基地局50が配置される。基地局50は、ある地理的エリアをカバーし、当該エリアに在圏する移動局100と無線通信することによって、移動局100に各種通信サービスを提供する。
【0024】
本実施例による移動局100は、典型的には、携帯電話端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどのユーザ装置(UE)である。移動局100は、典型的には、補助記憶装置、メモリ装置、CPU、通信装置、表示装置、入力装置などの各種ハードウェアリソースの1以上から構成される。補助記憶装置は、ハードディスクやフラッシュメモリなどから構成され、後述される各種処理を実現するプログラムやデータを格納する。メモリ装置は、RAM(Random Access Memory)などから構成され、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置からプログラムを読み出して格納する。CPUは、情報を処理するプロセッサとして機能し、メモリ装置に格納されたプログラムに従って後述される各種機能を実現する。通信装置は、ネットワークを介しサーバなどの他の装置と有線及び/又は無線接続するための各種通信回路から構成される。表示装置及び入力装置は、移動局100とユーザとの間のユーザインタフェースを提供する。
【0025】
図2〜4を参照して、本発明の第1実施例による移動局を説明する。本実施例では、基地局50が、移動局100によるSARバックオフの利用を許可するためのSARシグナリングを移動局100に送信し、当該SARシグナリングを受信した場合に、移動局100はSARバックオフを適用して各CCの最大送信電力Pcmax,cを決定する。
【0026】
図2は、本発明の第1実施例による移動局を示すブロック図である。図2に示されるように、移動局100は、SARシグナリング受信部110と、スケジューリング情報受信部120と、SAR状況解析部130と、Pcmax,c_H計算部140と、Pcmax,c_L計算部150と、Pcmax,c計算部160とを有する。
【0027】
SARシグナリング受信部110は、SARバックオフの利用を許可するためのSARシグナリングを基地局50から受信する。一実施例では、基地局50は、SARシグナリングを報知情報として報知する。この場合、SARシグナリング受信部110は、受信した報知情報からSARシグナリングを検出し、検出したSARシグナリングをSAR状況解析部130に提供する。また、他の実施例では、基地局50は、移動局100との接続処理の開始後に、RRCメッセージなどによりSARシグナリングを移動局100に個別に送信する。この場合、SARシグナリング受信部110は、受信したRRCメッセージからSARシグナリングを検出し、検出したSARシグナリングをSAR状況解析部130に提供する。
【0028】
スケジューリング情報受信部120は、基地局50から制御信号を受信する。この制御信号は、典型的にはアップリンク通信のための各種制御情報から構成され、基地局50によって各CCに割り当てられたリソースブロックなどのスケジューリング情報を含む。スケジューリング情報受信部120は、受信した制御信号からスケジューリング情報を抽出し、抽出したスケジューリング情報をSAR状況解析部130に提供する。
【0029】
SAR状況解析部130は、SARシグナリング受信部110からSARシグナリングを受信すると、無線通信システム10においてSARバックオフが適用可能であると判断し、SARバックオフが適用可能であることをPcmax,c_L計算部150に通知する。また、SAR状況解析部130は、何れのCCにリソースブロックが割り当てられたか通知するため、スケジューリング情報受信部120から提供されたスケジューリング情報をPcmax,c_L計算部150に提供する。
【0030】
cmax,c_H計算部140は、各CCについて移動局100の送信可能な最大送信電力Pcmax,cの範囲の上限値Pcmax,c_Hを算出する。具体的には、Pcmax,c_H計算部140は、各CCについて、
cmax,c_H=Min{PEMAX,PPowerClass
を計算し、各CCに対する移動局100の最大送信電力Pcmax,cの上限値Pcmax,c_Hを算出する。ここで、PEMAXは、移動局100に対して許可された各CCにおける最大送信電力を表し、PPowerClassは、移動局100が送信可能な電力量(23dBmなど)を表す。なお、本発明はこれに限定されるものでなく、移動局100の送信可能な最大送信電力の上限値は、基地局50によって許可された最大送信電力と移動局100が送信可能な最大送信電力とを超過しない値に設定されさえすればよい。Pcmax,c_H計算部140は、このようにして算出したPcmax,c_HをPcmax,c決定部160に通知する。
【0031】
cmax,c_L計算部150は、各CCについて移動局100の送信可能な最大送信電力Pcmax,cの範囲の下限値Pcmax,c_Lを算出する。具体的には、Pcmax,c_L計算部150は、無線通信システム10においてSARバックオフが適用可能であることを示す通知をSAR状況解析部130から受信した場合、人体に許容されるSAR規定を充足させるための送信電力を低減するための低減量を表すP-MPRを考慮して、すなわち、
cmax,c_L=Min{PEMAX−ΔT,PPowerClass−MAX(MPR+A-MPR,P-MPR)−ΔT
に従って下限値Pcmax,c_Lを算出する。ここで、PEMAXは、基地局50から通知される、基地局50によって移動局100に許可された各CCにおける最大送信電力を表し、ΔTは、帯域の端のリソースブロックを利用する際に許容可能な緩和量を表し、PPowerClassは、移動局100の送信可能な最大送信電力を表し、MPR(Maximum Power Reduction)は、変調方式(QPSKなど)とリソースブロック数により定められる許容可能な緩和量を表し、A-MPR(Additional Maximum Power Reduction)は、隣接する他システムへの干渉を与えないために許容可能な緩和量を表す。
【0032】
他方、SAR状況解析部130から無線通信システム10においてSARバックオフが適用可能であることを示す通知を受信しない場合、Pcmax,c_L計算部150は、P-MPRを考慮することなく、上述したPcmax,c_Lの計算式においてP-MPR=0と設定して、すなわち、
cmax,c_L=Min{PEMAX−ΔT,PPowerClass−(MPR+A-MPR)−ΔT
に従って下限値Pcmax,c_Lを算出する。
【0033】
cmax,c_L計算部150は、SAR状況解析部130から受信したスケジューリング情報に基づき、リソースブロックが割り当てられた各CCについて、選択された計算式に従って下限値Pcmax,c_Lを算出する。Pcmax,c_L計算部150は、このようにして算出したPcmax,c_LをPcmax,c決定部160に通知する。
【0034】
cmax,c決定部160は、Pcmax,c_H計算部140から受信した上限値Pcmax,c_HとPcmax,c_L計算部150から受信した下限値Pcmax,c_Lとにより規定された範囲内で、基地局50により割り当てられた各CCの最大送信電力Pcmax,cを決定する。Pcmax,cの決定方法は、各移動局100に搭載されるRF回路の特性を考慮して、各移動局100において適宜決定される。
【0035】
図3は、本発明の第1実施例による無線通信システムにおける一例となる処理を示すシーケンス図である。本実施例では、移動局が基地局から報知される報知情報からSARシグナリングを検出し、SARバックオフが適用可能であることを検出する処理を説明する。
【0036】
ステップS301において、基地局(BS)50は、無線通信システム10においてSARバックオフが適用可能であることを示すSARシグナリングを含む報知情報を定期的に報知する。
【0037】
ステップS303において、基地局50から報知情報を受信すると、移動局(UE)100は、受信した報知情報からSARシグナリングを検出し、検出したSARシグナリングに基づき無線通信システム10においてSARバックオフが適用可能であると判断する。
【0038】
ステップS305において、移動局100は、受信した報知情報に従って接続処理を実行し、基地局50との無線接続を確立する。無線接続の確立後、移動局100は、各CCに対して、上述したP-MPRを導入した計算式に従ってSAR規定を充足するPcmax,c_Lを算出し、最大送信電力Pcmax,cを算出する。
【0039】
図4は、本発明の第1実施例による無線通信システムにおける他の例となる処理を示すシーケンス図である。本実施例では、移動局100が、基地局50との無線接続の接続処理の開始後に、RRCメッセージを介しSARシグナリングを個別に受信し、SARバックオフが適用可能であることを検出する処理を説明する。
【0040】
ステップS401において、基地局(BS)50は、報知情報を定期的に報知する。
【0041】
ステップS403において、基地局50又は移動局(UE)100において、呼の発生などの何れかの接続トリガーイベントが発生する。
【0042】
ステップS405において、基地局50と移動局100との間で接続処理が実行される。
【0043】
ステップS407において、基地局50は、SARバックオフが適用可能であることを示すSARシグナリングを含むRRCメッセージを移動局100に個別に送信する。
【0044】
ステップS409において、基地局50からRRCメッセージを受信すると、移動局100は、受信したRRCメッセージからSARシグナリングを検出し、検出したSARシグナリングに基づき無線通信システム10においてSARバックオフが適用可能であると判断する。
【0045】
ステップS411において、移動局100は、各CCに対して、上述したP-MPRを導入した計算式に従ってSAR規定を充足するPcmax,c_Lを算出し、最大送信電力Pcmax,cを算出する。
【0046】
上述した実施例では、SARバックオフを実現するためのファクタであるP-MPRが、最大送信電力Pcmax,cの下限値Pcmax,c_Lを算出するのに適用可能であるか否かについて説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものでなく、基地局から提供される情報に従って選択的に適用される他の何れかのファクタを考慮した移動局の最大送信電力決定処理に適用されてもよい。
【0047】
また、SARバックオフを実現するための電力低減ファクタP-MPRは、所定の値に限定されるものでなく、可変的な値であってもよい。例えば、各国又は地域において異なるSAR規定が設けられる可能性が考えられ、これに伴って、各無線通信システムに対して異なるP-MPRが設定される可能性が考えられる。この場合、基地局50から送信されるSARシグナリングは、SARバックオフの利用可能性を示すだけでなく、当該無線通信システムにおいて適用されるべきP-MPRの値もまた通知してもよい。
【0048】
次に、図5〜6を参照して、本発明の第2実施例による移動局を説明する。本実施例では、基地局から報知される報知情報に含まれるカントリーコード(Country Code)を用いて、移動局が、無線通信システムにおいてSARバックオフが適用可能であるか判断し、判断結果に応じて各CCの最大送信電力Pcmax,cを決定する。
【0049】
図5は、本発明の第2実施例による移動局を示すブロック図である。図5に示されるように、移動局200は、カントリーコード受信部210と、スケジューリング情報受信部220と、SAR状況解析部230と、Pcmax,c_H計算部240と、Pcmax,c_L計算部250と、Pcmax,c計算部260とを有する。ここで、Pcmax,c_H計算部240、Pcmax,c_L計算部250及びPcmax,c計算部260は、Pcmax,c_H計算部140、Pcmax,c_L計算部150及びPcmax,c計算部160と同様の処理を実行するため、重複する説明は省く。
【0050】
カントリーコード受信部210は、基地局50から報知情報を受信し、受信した報知情報からカントリーコードを抽出し、抽出したカントリーコードをSAR状況解析部230に提供する。
【0051】
スケジューリング情報受信部220は、基地局50から制御信号を受信する。この制御信号は、典型的にはアップリンク通信のための各種制御情報から構成され、基地局50によって各CCに割り当てられたリソースブロックなどのスケジューリング情報を含む。スケジューリング情報受信部220は、受信した制御信号からスケジューリング情報を抽出し、抽出したスケジューリング情報をSAR状況解析部230に提供する。
【0052】
SAR状況解析部230は、各カントリーコードに係る各国又は地域においてSARバックオフが利用可能性であるか示すSARバックオフ利用可能性情報を有する。SARバックオフ利用可能性情報は、好ましくは、適宜更新可能とされる。SAR状況解析部230は、カントリーコード受信部210からカントリーコードを受信すると、SARバックオフ利用可能性情報を参照して、受信したカントリーコードに対応する国又は地域においてSARバックオフが利用可能であるか確認する。当該国又は地域においてSARバックオフが利用可能である場合、SAR状況解析部230は、SARバックオフが適用可能であることをPcmax,c_L計算部250に通知する。また、SAR状況解析部230は、何れのCCにリソースブロックが割り当てられたか通知するため、スケジューリング情報受信部220から提供されたスケジューリング情報をPcmax,c_L計算部250に提供する。
【0053】
図6は、本発明の第2実施例による無線通信システムにおける一例となる処理を示すシーケンス図である。本実施例では、移動局が基地局から報知される報知情報からカントリーコードを検出し、SARバックオフが適用可能であるか判断する処理を説明する。
【0054】
ステップS601において、基地局(BS)50は、基地局50が属する無線通信システム10が設けられている国を示すカントリーコードを含む報知情報を定期的に報知する。
【0055】
ステップS603において、基地局50から報知情報を受信すると、移動局(UE)200は、受信した報知情報からカントリーコードを抽出し、移動局200に格納されているSARバックオフ利用可能性情報を参照して、抽出したカントリーコードに対応する国又は地域においてSARバックオフが利用可能であるか判断する。
【0056】
ステップS605において、移動局200は、受信した報知情報に従って接続処理を実行し、基地局50との無線接続を確立する。無線接続の確立後、移動局200は、SARバックオフが利用可能である場合、各CCに対して上述したP-MPRを導入した計算式に従ってSAR規定を充足するPcmax,c_Lを算出し、最大送信電力Pcmax,cを算出する。他方、SARバックオフが利用不可である場合、移動局200は、各CCに対してP-MPRを導入しない計算式に従ってPcmax,c_Lを算出し、最大送信電力Pcmax,cを算出する。
【0057】
上述した実施例では、SARバックオフを実現するためのファクタであるP-MPRが、最大送信電力Pcmax,cの下限値Pcmax,c_Lを算出するのに適用可能であるか否かについて説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものでなく、基地局から提供される情報に従って選択的に適用される他の何れかのファクタを考慮した移動局の最大送信電力決定処理に適用されてもよい。
【0058】
また、SARバックオフを実現するための電力低減ファクタP-MPRは、所定の値に限定されるものでなく、可変的な値であってもよい。例えば、各国又は地域において異なるSAR規定が設けられる可能性が考えられ、これに伴って、各無線通信システムに対して異なるP-MPRが設定される可能性が考えられる。この場合、移動局200に格納されるSARバックオフ利用可能性情報は、受信したカントリーコードに係る国又は地域におけるSARバックオフの利用可能性を示すだけでなく、適用されるべきP-MPRの値もまた格納するようにしてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 無線通信システム
50 基地局
100,200 移動局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARバックオフ機能を備える移動局であって、
SARバックオフが利用可能であることを示すSARシグナリングを基地局から受信するSARシグナリング受信部と、
前記SARシグナリング受信部が前記SARシグナリングを受信したか否かに応じて、当該移動局の最大送信電力を決定する最大送信電力決定部と、
を有し、
前記SARシグナリング受信部が前記SARシグナリングを受信したことに応答して、前記最大送信電力決定部は、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタを適用して前記最大送信電力を決定する移動局。
【請求項2】
前記SARシグナリング受信部が前記SARシグナリングを受信したことに応答して、前記最大送信電力決定部は、前記電力低減ファクタを適用して前記最大送信電力の下限値を決定する、請求項1記載の移動局。
【請求項3】
前記SARシグナリング受信部は、前記基地局から報知される報知情報から前記SARシグナリングを検出する、請求項1又は2記載の移動局。
【請求項4】
前記SARシグナリング受信部は、前記基地局と当該移動局との接続処理の開始後に、前記基地局から個別に送信される制御信号から前記SARシグナリングを検出する、請求項1又は2記載の移動局。
【請求項5】
前記SARシグナリングはさらに、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタの指定された値を含み、
前記最大送信電力決定部は、前記電力低減ファクタの指定された値を適用して前記最大送信電力を決定する、請求項1乃至4何れか一項記載の移動局。
【請求項6】
SARバックオフ機能を備える移動局と、前記移動局と無線通信する基地局とを有する無線通信システムに使用される方法であって、
前記基地局が、前記無線通信システムにおいてSARバックオフが利用可能であることを示すSARシグナリングを前記移動局に送信するステップと、
前記移動局が、前記SARシグナリングを受信するステップと、
前記移動局が、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタを適用して前記移動局の最大送信電力を決定するステップと、
を有する方法。
【請求項7】
SARバックオフ機能を備える移動局であって、
基地局から報知情報を受信し、前記受信した報知情報に含まれるカントリーコードを抽出するカントリーコード受信部と、
各カントリーコードに係る各国又は各地域においてSARバックオフが利用可能であるか否かを示すSARバックオフ利用可能性情報を参照して、当該移動局の最大送信電力を決定する最大送信電力決定部と、
を有し、
前記抽出したカントリーコードに係る国又は地域において前記SARバックオフが利用可能である場合、前記最大送信電力決定部は、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタを適用して前記最大送信電力を決定する移動局。
【請求項8】
前記抽出したカントリーコードに係る国又は地域において前記SARバックオフが利用可能である場合、前記最大送信電力決定部は、前記電力低減ファクタを適用して前記最大送信電力の下限値を決定する、請求項7記載の移動局。
【請求項9】
前記SARバックオフ利用可能性情報はさらに、各カントリーコードに係る各国又は各地域において適用される電力低減ファクタの指定された値を含み、
前記最大送信電力決定部は、前記電力低減ファクタの指定された値を適用して前記最大送信電力を決定する、請求項7又は8記載の移動局。
【請求項10】
SARバックオフ機能を備える移動局と、前記移動局と無線通信する基地局とを有する無線通信システムに使用される方法であって、
前記基地局は、前記無線通信システムに係るカントリーコードを含む報知情報を報知するステップと、
前記移動局は、前記報知情報を受信し、前記受信した報知情報から前記カントリーコードを抽出するステップと、
前記移動局は、各カントリーコードに係る各国又は各地域においてSARバックオフが利用可能であるか否かを示すSARバックオフ利用可能性情報を参照して、前記抽出したカントリーコードに係る国又は地域において前記SARバックオフが利用可能であるか判断するステップと、
前記移動局は、前記抽出したカントリーコードに係る国又は地域において前記SARバックオフが利用可能である場合、前記SARバックオフに係る電力低減ファクタを適用して前記移動局の最大送信電力を決定するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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