移動局測位システム
【課題】システムに要求される測位精度と、前記拡散符号列の受信間隔の検出精度に応じて基地局どうしのクロック速度比検出の分解能を決定することのできる移動局測位システムおよび移動局測位方法を提供する。
【解決手段】受信間隔算出部82(SA1)により、基準基地局が符号数(符号間隔)を決定して1回発信し各普通基地局が受信した拡散符号列における2つの拡散符号の受信間隔が算出され、クロック速度比算出部54(SA2)により各普通基地局と基準基地局とのクロック速度比が算出され、時計ずれ算出部56(SA3)により基準基地局の時計に対する各普通基地局の時計の時刻ずれが算出され、受信時刻補正部58(SA4)により、各普通基地局における移動局からの電波の受信時刻が基準基地局の時計を基準とする時刻に補正され、測位部60(SA5)により補正された受信時刻を用いた移動局の測位が行われる。
【解決手段】受信間隔算出部82(SA1)により、基準基地局が符号数(符号間隔)を決定して1回発信し各普通基地局が受信した拡散符号列における2つの拡散符号の受信間隔が算出され、クロック速度比算出部54(SA2)により各普通基地局と基準基地局とのクロック速度比が算出され、時計ずれ算出部56(SA3)により基準基地局の時計に対する各普通基地局の時計の時刻ずれが算出され、受信時刻補正部58(SA4)により、各普通基地局における移動局からの電波の受信時刻が基準基地局の時計を基準とする時刻に補正され、測位部60(SA5)により補正された受信時刻を用いた移動局の測位が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である基地局のそれぞれにおける受信時刻の時間差に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、前記複数の基地局間のクロック速度比に基づいて受信時刻を補正することにより、精度のよい移動局の測位を行なうことのできる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信時刻の時間差に基づいて、移動局の位置の検出を行なう測位システムおよび測位方法が提案されている。
【0003】
かかる測位システムあるいは測位方法においては、複数の基地局間の電波の受信時間差を算出する必要があることから、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を共通した時刻に時刻合わせをしておく必要がある。
【0004】
一方、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を時刻合わせすることに代えて、予め前記複数の基地局のそれぞれが有する時計の傾向、すなわち、時計のクロック速度比や、時刻のずれなどを検出あるいは算出するなどにより把握しておき、それぞれの基地局の時計により検出された移動局からの電波の受信時刻を、前記時計の傾向に基づいて補正する技術が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術がそれである。
【0005】
【特許文献1】特許第3801123号公報
【0006】
前記特許文献1の記載によれば、1の基地局から複数回にわたって発信される信号の受信時間を複数ある他の基地局が各々のクロックにより測定し、それらの受信時間などに基づいて各基地局のクロック速度の比(クロック速度比)を推定し、推定されたクロック速度比に基づいて移動局からの電波の各基地局における受信時間を補正して移動局の位置の検出を行なう技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、実際のハードウェアにおいては、無線による信号の発信間隔の制御や受信間隔の検出は、その精度に限界がある。このような、発信間隔の制御や受信間隔の検出の精度に限界がある状況のもとでクロック速度比検出の精度を向上させる場合、発信間隔の制御および受信間隔の測定の精度がクロック速度比に及ぼす影響をいかに低減するかが問題となる。
【0008】
ここで、クロック速度比の算出は、例えば発信側の無線局の複数の信号の発信間隔と、受信側の無線局の対応する複数の信号の受信間隔との比を取ることによって行なわれるものであり、かかる場合において、前記発信間隔を長くすれば、発信間隔の制御や受信間隔の検出の精度がクロック速度比に与える影響は相対的に低減され、クロック速度比の精度を向上させることができる。しかしながら、前記発信間隔を長くすると、クロック速度比の算出に要する時間が長大化するという問題がある。
【0009】
一方、前記特許文献1においては、かかる点についての考慮がなく、特に、発信間隔の設定について「一定以上の時間をおいて」と記述するのみである。このように、最適な前記発信間隔を設定できない場合には、クロック速度比の算出に必要以上の時間を要するため、移動局の測位に要する時間が長大化することが考えられる。
【0010】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、前記複数の基地局のいずれか1の基地局である基準基地局から他の基地局へ発信される信号である拡散符号列の符号数をシステムに要求される測位精度と、前記拡散符号列の受信間隔の検出精度に応じて決定することのできる移動局測位システムおよび移動局測位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、(b)前記複数の基地局のうち、少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、(c)前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、(d)前記基準基地局が発信する前記拡散符号列の内容を決定する送信符号列決定手段と、(e)前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる少なくとも2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、(f)前記受信間隔算出手段によって算出された前記少なくとも2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記少なくとも2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、(g)前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、(h)前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、(i)該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、好適には、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号列と、該少なくとも2つ以上の拡散符号の間に1つ以上の間隔符号を含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、(a)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信しながら行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、(b)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、(c)前記受信間隔算出手段は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段と前記オフライン受信時刻検出手段とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、前記送信符号列決定手段は、前記間隔符号の数を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記拡散符号は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔を含むことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、前記送信符号列決定手段は、前記所定の間隔を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号よりも前に発信される予告符号を含み、(b)前記受信間隔算出手段は、該予告符号を受信した場合にはオンライン受信時刻検出手段からオフライン受信時刻検出手段に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる移動局測位システムによれば、前記送信符号列決定手段によってその内容が決定された少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列を前記基準基地局が1回発信し、前記受信間隔検出手段により、2以上の前記普通基地局がそれぞれ受信した少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列に含まれる少なくとも2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段により、前記受信間隔検出手段によってそれぞれ検出された各普通基地局における前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻の間隔である受信間隔と、前記基準基地局が前記少なくとも2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比が算出され、前記時計ずれ算出手段により、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計のずれが算出され、前記受信時刻補正手段により、前記普通基地局のそれぞれにより、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出された前記移動局からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比と前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正され、前記測位手段により、該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置が推定されるので、前記送信符号列決定手段によってその内容が決定された前記拡散符号列に対応したクロック速度比が得られる。
【0019】
また、請求項2にかかる移動局測位システムによれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つ以上の拡散符号の間に1つ以上の間隔符号を含むものであるので、前記クロック速度比算出手段によってクロック速度比の算出に用いる少なくとも2つの拡散符号の間隔を前記間隔符号の数によって設定することができる。
【0020】
また、請求項3にかかる移動局測位システムによれば、前記受信間隔算出手段は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段と前記オフライン受信時刻検出手段とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻を、前記拡散符号を受信しながら受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を行なう前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により電波の受信時刻を検出する前記オフライン受信時刻検出手段によって検出するので、前記2つの拡散符号の受信時刻を詳細な精度により検出することができる。
【0021】
また、請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記送信符号列決定手段は、前記間隔符号の数を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない符号数の符号列が決定される。
【0022】
また、請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔を含むので、前記クロック速度比算出手段によってクロック速度比の算出に用いられる少なくとも2つの拡散符号の間隔を前記所定の間隔を変更することによって設定することができる。また、前記2つの拡散符号の間は基準基地局は信号を発信することがなく、省電力化を行なうことができる。
【0023】
また、請求項6にかかる移動局測位システムによれば、前記送信符号列決定手段は、前記所定の間隔を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない長さの符号列が決定される。
【0024】
また、請求項7にかかる移動局測位システムによれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号よりも前に発信される予告符号を含み、前記受信間隔算出手段は、該予告符号を受信した場合にはオンライン受信時刻検出手段からオフライン受信時刻検出手段に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうので、前記受信間隔算出手段は、前記予告符号の受信に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の最初の拡散符号についてオフライン受信時刻検出手段による詳細な受信時刻の検出を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の移動局測位システムの構成の一例を示した図である。図1には、移動局10が移動可能な領域のうち、後述する基地局11、12によって移動局10の位置の検出(測位)を行なうことが可能な領域として測位可能領域5が表されている。また、前記測位可能領域5には、移動局10と無線により通信を行なう基地局として、1つの基準基地局11、および3つの普通基地局として第1普通基地局12A、第2普通基地局12B、および第3普通基地局12Cがそれぞれ設けられている。なお、基準基地局および普通基地局の数はその機能から、それぞれ基準基地局は1つ以上、普通基地局は2つ以上が存在する。これは、移動局10の位置を電波の伝搬時間を用いて算出する場合には少なくとも3個の基地局が必要であるためである。逆に言えば、前記測位可能領域5の何れの地点においても、少なくとも移動局10が3個の基地局と通信可能となるように基地局が配置されている。なお、基地局の数が多いほど移動局の位置の算出は正確に行うことができる。本実施例においては、図1に示すように基準基地局11および普通基地局12A乃至12Cがそれぞれ配置されている。本実施例においては、移動局10の数は1個とされているが、移動局の個数は特に限定されない。また、各基地局と例えば有線ケーブル52により接続されることにより通信可能とされた測位サーバ14が設けられ、前記移動局10によって発信され前記基地局12によって受信された電波に基づいて、前記測位可能領域内における基地局10の位置を算出する。なお、本明細書において、特に個々の普通基地局12A乃至12Cを区別しない場合には普通基地局12と表記する。また、基準基地局11と普通基地局12を区別しない場合には、基地局11、12と表記する。なお、前記測位可能領域5には図1に示すように便宜上x軸およびy軸による座標系が定義され、測位可能領域5上の点はこの座標によってその位置が特定されるようになっている。
【0027】
図2は移動局10の機能の概要を示す機能ブロック図である。移動局10は、移動局が電波の送受信を行なうアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29などを有している。また、移動局10は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記移動局10における無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29などの必要な作動が実行される。
【0028】
無線通信部26は、移動局10の無線通信を行なうものであって、移動局10が電波を発信する際において、電波を発信する発信手段である。具体的には、後述する発信符号生成部29によって生成された拡散符号列を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バラン(balun)などにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波が前記アンテナ20により発信される。また無線通信部26は基地局から送信される制御信号を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ20によって受信された電波に対し、無線通信部26は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0029】
信号処理部28は、無線通信部26により復調された信号を処理することにより基地局から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部30に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0030】
発信符号生成部29は、移動局が基地局11、12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部32によって生成される拡散符号と予告符号生成部33によって生成される予告符号とに基づいて生成する。この発信符号生成部29によって生成された発信符号は無線通信部26により無線により発信される。この発信符号生成部29は、後述するオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部32と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部33を有する。
【0031】
このうち、拡散符号生成部32は、後述する基地局11、12のオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する。また、予告符号生成部33は、前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は例えば、前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差であり、例えば予め決定され基地局11、12と移動局10との間で既知とされた値が用いられる。すなわち、前記発信符号生成部29によって生成される拡散符号列は、少なくとも前記予告符号と、前記所定時間だけ後に発信される前記拡散符号とを含んで構成される。
【0032】
また、時計31は、移動局10において電波の発信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0033】
制御部30は前記無線通信部26、信号処理部28、発信符号生成部29などの作動を制御する。例えば、移動局10の位置を測定するために基地局12に対し電波を発信する指令を受けた場合に、所定の出力で電波を発信する。
【0034】
また、制御部30は、移動局10が電波を発信する場合と電波を受信する場合とに応じて、前記無線通信部26、信号処理部28などの作動を切り換えるよう制御する。また制御部30は、基地局からの制御指令に基き測位のための拡散符号送信要求を受信したときに、発信符号生成部32に対して所定の時刻に拡散符号を無線通信部26に送信するように制御する
【0035】
図3は、基地局11、12の機能の概要を示す機能ブロック図である。基地局11、12はアンテナ35、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72を有し、これらはそれぞれ前述の移動局10が有するアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29と同様の機能を有する、また、基地局11、12はこれらのアンテナ20、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72に加え、オンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80、受信間隔算出部82、制御信号生成部37などを有する。また、基地局11、12は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記基地局11、12における無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72、オンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80、受信間隔算出部82、制御信号生成部37などの必要な作動が実行される。
【0036】
すなわち、無線通信部34は、基地局11、12の無線通信を行なうものであって、基地局11、12が電波を受信する際において、電波を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ35によって受信された電波に対し、無線通信部34は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0037】
また、信号処理部36は、無線通信部34により復調された信号を処理することにより後述する測位サーバ14から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部38に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0038】
制御信号生成部37は後述する基準基地局11における空きチャンネル探索のための制御信号の生成および普通基地局における空きチャンネル探索の応答信号を生成する。また移動局10に対して測位信号の送信を要求する信号を生成する。制御信号生成部37において生成された制御信号は無線通信部34に送信されてアンテナ35により無線送信される。
【0039】
なお、制御部38は移動局10の制御部30が移動局における電波の発信する状態と受信する状態を切り換えるのと同様に、基地局12の制御部38は、基地局12が電波を発信する状態と電波を受信する状態とを切り換えることができ、これらの状態に応じて、前記無線通信部34、信号処理部36などの作動を切り換えて制御する。
【0040】
また、無線通信部34は、制御信号生成部37によって生成された信号を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バランなどにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波がアンテナ35により発信される。このように、基地局12は電波を受信することに加え、発信することも可能である。一方、前述のように移動局10は電波を発信することに加え受信することも可能であることから、基地局12は移動局10に対し無線によりその作動を制御することが可能である。
【0041】
発信符号生成部72は、基地局11、12が基準基地局11として作動する場合において、基準基地局11が普通基地局12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部74によって生成される拡散符号と予告符号生成部76によって生成される予告符号とに基づいて生成する。この発信符号生成部72は後述する符号数設定部55とともに送信符号列決定手段に対応する。また、発信符号生成部72はこの拡散符号列を発信する際において、前記第2の拡散符号の発信完了時刻についての情報を、後述するサーバ通信部40を介して測位サーバ14に送信する。この発信符号生成部72は、後述するオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部74と、この拡散符号生成部74によって生成される2つの拡散符号の間に発信される間隔符号を生成する間隔符号生成部75と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部76とを有する。
【0042】
このうち、拡散符号生成部74は、後述するオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号であって、第1の拡散符号と第2の拡散符号の2つの拡散符号を含む拡散符号列を生成する。また、間隔符号生成部75は、前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との間に送信される間隔符号を、後述する測位サーバ14の符号数設定部55によって設定された個数だけ生成する。すなわち、この間隔符号の数を変更することにより、前記拡散符号生成部74が発信する拡散符号列における第1の拡散符号および第2の拡散符号の発信間隔を調整することができる。
【0043】
また、予告符号生成部76は、前記拡散符号生成部74によって生成される2つの拡散符号を含む拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は測位システムにより予め決められており、その情報に基づき制御部38は拡散符号生成部74と予告符号生成部76を制御する。
【0044】
前述のように、基地局11、12は共通する構成を有することから、基準基地局11として作動する基地局が、その作動に代えて、あるいはその作動に加えて普通基地局12としての作動を行うことが可能である。このようにすれば、基準基地局11として作動していた基地局が故障した場合に、それまで普通基地局12として作動していた基地局が新たに基準基地局11として作動することが可能となり、測位システム8としての冗長性を有することができる。
【0045】
図5は、発信符号生成部72が生成する拡散符号列の一例を説明する図である。図5においては、時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。すなわち、左に行くほど時刻が後において発生される拡散符号を表している。図5において、前記第1の拡散符号はPN1、前記第2の拡散符号はPN2、前記予告符号はPN3でそれぞれ表されている。
【0046】
まず、予告符号生成部76によって生成された予告符号PN3が、第1の拡散符号の発信の所定時間 p だけ前に発信される。このとき、予告符号PN3の発信完了時刻が Taq1' である。その後、この所定時間 p の経過後に、拡散符号生成部74により生成される第1の拡散符号PN1が発信される。さらに、間隔符号生成部75によって設定された個数であるm個の間隔符号が送信された後、前記拡散符号生成部74により生成される第2の拡散符号PN2が発信される。このとき、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻を tim_b0_trfend_b0 、第2の拡散符号PN2の発信完了時刻を tim_b0_trlend_b0 とする。また、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差 tim_b0_trlend_b0 - tim_b0_trfend_b0 は Tc とする。この発信時間差 Tc は、m個の間隔符号と第2の拡散符号PN2を発信するのに要する時間であり、逆に言えば、間隔符号の個数(m個)を増減させることによりこの発信時間差 Tc を変化させることができる。また、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻 tim_b0_trfend_b0 は、前述の予告符号PN3の発信完了時刻 Taq1' と前記発信時間差 p を用いて、 tim_b0_trfend_b0 = Taq1' + p と表される。
【0047】
また、図5に示す拡散符号列において、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されている。これは、この符号列を受信した場合において、受信側で同期検出を行う際のレプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さい符号であればよい。従って、レプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さいのであれば、PN0が全て同一の拡散符号である必要はない。このとき前記所定時間pは、前記予告符号PN3と第1の拡散符号PN1の間に発信される符号PN0の個数によって決定される。また、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3としては、好適には例えば同一の拡散符号が用いられる。
【0048】
図3に戻って、オンライン受信時刻検出部78は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波と、その受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局11、12による電波の受信時刻とする。なお、このような処理を同期検出という。このオンライン受信時刻検出部78は、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。このオンライン受信時刻検出部78は、例えば移動局10から測位のために発信される予告符号の各基地局11、12における受信時刻を検出するほか、普通基地局12においては、基準基地局11から発信される前記予告符号の受信時刻の検出にも用いられる。なお、前述のように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3として、同一の拡散符号が用いられる場合には、この同一の拡散符号と同一の符号である1つのレプリカ符号についてのみ同期検出を行なえばよい。
【0049】
このとき、オンライン受信時刻検出部78は、前記無線通信部34による電波の受信に伴って、すなわち前記無線通信部34の受信信号に対して即座に同期検出を行ういわゆるリアルタイムによる同期検出を行う。言い換えれば、受信する拡散符号の速度に合った速度で同期検出処理を行わなければならず、例えば拡散符号を順次受信する場合において、ある符号を受信したら、その符号の同期検出は次の符号を受信するまでに完了しなければならい。なお、このオンライン受信時刻検出部78がオンライン受信時刻検出手段に対応する。ところで、前述のように同期検出は、受信波とその受信波を発信する際に行なった拡散処理に用いた拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、その相関値のピークが出現した時刻を受信時刻とするものであるが、この同期検出の精度は、前記受信信号を微小時間ごとにずらす際に、どれほど細かく微小時間を設定し得るかによって左右される。すなわち、前記微小時間の長さと同期検出に要する計算の回数が反比例するためである。従って、前述のようなリアルタイムで同期検出を行う場合においては、計算を行うことのできる時間、すなわち計算の回数に制約が存在し、そのため、同期検出を行う際の精度に限界がある。
【0050】
オフライン受信時刻検出部80は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を前記オンライン受信時刻検出部78がおこなうよりもより高精度に測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波を一旦図示しない記憶装置に記憶しておき、その記憶された受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局12による電波の受信時刻とする。このとき、前記微小時間を前記オンライン受信時刻検出部78の同期検出における微小時間よりも短いものとすることにより、高精度の検出が可能となる。このオフライン受信時刻検出部80は、前記図示しない記憶装置に加え、前述のオンライン受信時刻検出部78と同様に、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。なお、このオフライン受信時刻検出部80がオフライン受信時刻検出手段に対応する。
【0051】
このオフライン受信時刻検出部80は、特に定められる時間区間においてのみ実行されることが可能である。すなわち、基地局11、12は前記オンライン受信時刻検出部78による受信時刻の検出を常時行うようにしておき、特にオフライン受信時刻検出部80により高精度な受信時刻の検出を行うように定められた時間区間においてのみ、前記オンライン受信時刻検出部78による受信時刻の検出に加えてあるいはこれに代えてオフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うようにしてもよい。このようにすれば、オフライン受信時刻検出部80はオンライン受信時刻検出部78に比べて演算に要する電力をより多く必要とするため、特に定められた時間区間においてのみオフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うことにより、基地局11、12の省電力化を図ることができる。
【0052】
例えば、後述する受信間隔算出部82によって算出される各普通基地局12における前記第1の拡散符号の受信時刻と前記第2の拡散符号の受信時刻との受信時間差はより高精度に算出されることが望ましい。そこで、オフライン受信時刻検出部80は、前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。例えば、オフライン受信時刻検出部80は前記基準基地局11において前記第1の拡散符号に先立って発信される予告符号に基づいて前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。
【0053】
図6は、前記基準基地局11が発信する前記予告符号PN3、前記第1の拡散符号PN1および前記第2の拡散符号PN2を含む拡散符号列を普通基地局12が受信した場合の受信信号を示した図である。図6においては、図5と同様に時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。ここで、普通基地局12においては、オンライン受信時刻検出部78が予告符号PN3の受信を検出すると、受信間隔算出部82は、その受信完了時刻 Taq1 から予告符号と第1の拡散符号との発信時間差 p の経過後よりもマージン ma だけ前を始点とし、その受信完了時刻 Taq1 から予告符号と第1の拡散符号との発信時間差 p および基準基地局11における第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の発信時間差 Tc の経過後よりもマージン ma だけ後を終点とする時間区間をオフライン受信時刻検出部80による検出対象時間区間として設定する。すなわち、オフライン受信時刻検出部80は Taq1 + p - ma ≦ t ≦ Taq1 + p + Tc + ma において、高精度な受信時刻の検出を実行する。ここで、マージン ma は、第1の拡散符号PN1と、この第1の拡散符号PN1、m個の間隔符号、および第2の拡散符号PN2の受信に要する時間と、基準基地局11の時計44と全ての普通基地局12の時計44との時刻のずれや、クロック速度の比などを考慮し、前記第1の拡散符号および第2の拡散符号の両方についてオフライン受信時刻検出部80による高精度な時刻の受信時刻の検出が行うことができるように設定される値である。
【0054】
図3に戻って受信間隔算出部82は、前記オフライン受信時刻検出部80によって検出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信間隔が算出する。すなわち、前記オフライン受信時刻検出部80においては、同期検出により、第1の拡散符号の受信完了時刻と第2の拡散符号の受信完了時刻とが検出されることから、これらの差を算出することにより、前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔が算出される。すなわち、この受信間隔算出部82が受信間隔検出手段に対応する。
【0055】
制御部38はまた、前記無線通信部34、信号処理部36、サーバ通信部40などの作動を制御する。
【0056】
サーバ通信部40は、有線ケーブル52を介して接続された後述する測位サーバ14との通信を必要に応じて行なうものであり、例えば、基地局11、12が移動局10から受信した電波についてオフライン受信時刻検出部80によって検出された受信時刻や、普通基地局12が基準基地局11から受信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との受信間隔や、基準基地局11の第2の拡散符号の発信終了時刻、発信符号生成部72が発信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との発信間隔などの値を測位サーバ14に対し発信したり、サーバーより指定される発信符号生成部72において生成する拡散符号列における第1の拡散符号と第2の拡散符号の間隔、あるいは基地局11、12に対する指令や移動局10に対し無線で行なう制御作動の指令を測位サーバ14から受信するなどの作動を行う。
【0057】
また、時計44は、基地局11、12において電波の発信時刻や受信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0058】
なお、図2および図3に示した移動局10および基地局11、12においては、本発明における制御作動に直接関与しない機能に対応する機能ブロックは省略されている。例えば、移動局10および基地局11、12においては、図示しない電源などが含まれている。この電源は、移動局10、基地局11、12および測位サーバ14のそれぞれに必要な電力を供給するものである。
【0059】
図4は測位サーバ14の機能の概要を示す機能ブロック図である。測位サーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、後述する基地局通信部53、符号数設定部55、クロック速度比算出部54、時計ずれ算出部56、受信時刻補正部58、測位部60などにおける処理を実行するようになっている。
【0060】
測位サーバ14は、ケーブル52を介して各基地局11、12と接続されており、基地局通信部53、符号数設定部55、クロック速度比算出部54、時計ずれ算出部56、受信時刻補正部58、測位部60、測位結果出力部62などを有する。このうち、基地局通信部53は、有線ケーブル52を介して接続された前記基地局11、12のサーバ通信部40との間で必要な通信、例えば測定データの送受信や、基地局11、12や移動局10の作動を制御する指令の送信などを行なう。
【0061】
クロック速度比算出部54は、前記各普通基地局12の受信間隔算出部82によって算出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、前記基準基地局11の発信符号生成部72において生成され、無線通信部34などにより発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、前記普通基地局12のそれぞれが有する時計44と、前記基準基地局11の有する時計44との速度の比であるクロック速度比を算出する。このクロック速度比算出部54がクロック速度比算出手段に相当する。
【0062】
具体的には、このクロック速度比rera_b0biは、基準基地局11が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準としたオフライン受信時刻検出部80による受信時刻であるtim_bi_rvlend_b0bi、前記第1の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準としたオフライン受信時刻検出部80による受信時刻tim_bi_rvfend_b0bi、および前記基準基地局11の発信符号生成部72による前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔Tcを用いて、以下の式(1)により得られる。
rera_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )/ Tc …(1)
なお、この発信間隔Tcは、図5に示すように前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との間に、前記第1の拡散符号、第2の拡散符号とその符号長が同一のm個の間隔符号が発信される場合には、符号周期Tsを用いて、Tc=(m+1)×Tsと表される。
【0063】
時計ずれ算出部56は、基準基地局11の時計44の時刻に対する普通基地局12のそれぞれの時計44の時刻のずれである時計ずれを算出する。この時計ずれは、基準基地局11の時計44の時刻に対する時刻の進みあるいは遅れであり、例えば基準基地局11から発信される電波の発信時刻と、その電波を受信した普通基地局12におけるその電波の受信時刻と、さらに基準基地局11と普通基地局12との既知の距離から算出される前記電波の伝搬時間とに基づいて算出される。この時計ずれ算出部が時計ずれ算出手段に対応する。
【0064】
具体的には例えば、この時計ずれte_aq_b0biは、基準基地局11の無線通信部34が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の送信完了を基準基地局11の時計44で測定した送信完了時刻である時刻tim_b0_trlend_b0と、前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信時刻をオフライン受信時刻検出部80により普通基地局12の時計44を用いて測定した受信完了時刻tim_bi_rvlend_b0biと、予めシステム8により既知である基準基地局11と普通基地局12との距離(例えば30m)に電波の速度c(=2.997×108(m/s))を除することにより算出される伝搬時間tau0_iを用いた以下の式(2)により得られる。
te_aq_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i …(2)
すなわち、前記第2の拡散符号を例として、基準基地局11における発信完了時刻と普通基地局12における受信完了時刻とから算出される見かけの電波の伝搬時間と、実際の基準基地局11と普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とを比較し、これらの値に差があれば、それが基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれである。
【0065】
受信時刻補正部58は、移動局10から発信された電波が各普通基地局12において受信された際に各普通基地局12におけるオンライン受信時刻検出部78によって各普通基地局12の時計44に基づいて検出された受信時刻を、前記クロック速度比算出部54において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44とのクロック速度比、および前記時計ずれ算出部56において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44との時刻ずれに基づいて、前記基準基地局11の時計44での時刻に補正する。この受信時刻補正部58が受信時刻補正手段に対応する。
【0066】
具体的には例えば、受信時刻補正部58は次の手順により受信時刻の補正を行う。まず、移動局10から発信された電波が基準基地局11および普通基地局12において受信された際の、それぞれのオンライン受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻が、基準基地局11においては、tim_b0_rvend_m1b0であり、各普通基地局12i(i=1,2,…)においてはtim_bi_rvend_m1biであったとする。このとき、普通基地局12iのオンライン受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを基準基地局11の時計44に基づいた時刻に換算すると、換算後の前記普通基地局12の受信時刻TOA_m1biは、次式(3)で表される。
TOA_M1bi = tim_bi_rvend_m1bi - ( tim_bi_rvend_m1b0 - tim_b0_rvend_m1b0 ) …(3)
ここで、この式(3)の右辺第1項であるtim_bi_rvend_m1biは移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻tim_b0_rvend_m1b0を普通基地局12の時計44に換算した時刻である。すなわち、右辺の括弧で囲まれた第2項は、移動局10からの電波を基準基地局11が受信した際の基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれを表す項である。
【0067】
また、前記式(3)におけるtim_bi_rvend_m1b0は、前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比rera_b0biを用いて、以下の式(4)で表される。
tim_b1_rvend_m1b0 = tim_bi_aq
+ ( tim_b0_rvend_m1b0 - tim_b0_aq ) × rera_b0bi …(4)
ここで、この式(4)の右辺第1項であるtim_bi_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の普通基地局12の時計44における時刻である。また、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、tim_b0_rvend_m1b0は移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻であり、rera_b0biは前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比である。すなわち、前記式(4)の右辺第2項は、前記基準基地局11において前記時計ずれ算出部56により時刻ずれが算出されてから前記移動局10からの電波を受信するまでの時間を前記基準基地局11の時計44により計測したものに、前記基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44とのクロック速度比を乗ずることにより、その時間を普通基地局12の時計44に対応する時間に換算した値となる。
【0068】
更に、前記式(4)におけるtim_bi_aqは、前記時計ずれ算出部56によって算出される基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれte_aq_b0biを用いて、以下の式(5)で表される。
tim_bi_aq = tim_b0_aq + te_aq_b0bi …(5)
ここで、前述のように、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、前述のように時刻ずれ算出部56は基準基地局11における第2の拡散符号の送信完了時刻(送信時刻)であるので、
tim_b0_aq=tim_b0_trlend_b0 …(6)
である。この式(6)と前記時刻ずれte_aq_b0biを表す式(2)を用いて前記式(5)を変形すると、
tim_bi_aq = tim_b0_trlend_b0 + ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i
= tim_bi_rvlend_b0bi - tau0_i …(7)
となる。以上より、受信時刻補正部58は、普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0069】
受信時刻補正部58は、前述の手順を普通基地局12の数だけ繰り返すことにより、全ての普通基地局12について、そのオフライン受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0070】
なお、本実施例においては、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮していない。これは、現実には前記伝搬時間は数ナノ(10-9)秒程度であり、したがって伝搬中のクロック速度比により発生する誤差は無視できるほど小さく、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮しないとしても差し支えないためである。もちろん、これを考慮することも可能である。
【0071】
ところで、前記オンライン受信時刻検出部78およびオフライン受信時刻検出部80においてマッチドフィルタによる同期検出を行う場合、同期検出の精度(分解能)は受信信号のサンプリング周波数に依存する。すなわちサンプリング周波数が高いほど高い分解能で同期検出を行なうことが可能であり、前記オフライン受信時刻検出部80においては前記オンライン受信時刻検出部78よりも高い周波数においてサンプリングを行なうことにより精度のよい受信時刻の検出を行なっている。一方、普通基地局12において基準基地局11からの拡散符号列の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出部80のサンプリングタイムをfs[Hz]、fcをチップレート[chip/sec]とすると、このときの前記オフライン受信時刻検出部80における同期検出分解能は、fc/fs[chip/sample]である。チップ周期は1/fc[sec/chip]であるので1/fs[sec/sample]=(fc/fs)×(1/fc)が検出可能な時間である。従って、クロック速度比算出部54によって前述の式(1)のように定義されて得られる相対クロック精度rera_b0biは、次式(8)のようにも表される。
rera_b0bi=( Tc ±( 1 / fs ))/ Tc = 1 ±( 1 /( Tc × fs )) …(8)
なお、Tc[sec]は図5に示すように、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差、すなわち符号間隔である。
【0072】
一方、クロック速度比rera_b0biは、相対クロック精度の分解能rp[ppm;part per million](普通基地局12の時計44の、基準基地局11の時計44に対する精度であって、基準基地局11の時計44の時計が100万クロック進む場合の普通基地局12の時計44のクロック数のずれとして算出される値)を用いて次の式(9)のようにも表される。
rera_b0bi=1+rp/106 …(9)
従って、前記式(8)および式(9)より、相対クロック精度の分解能rpは以下のように得られる。
rp/106 = 1/(Tc×fs)
rp=106/(Tc×fs)[ppm] …(10)
この式(10)は、例えばTc=1[msec]、fs=500[MHz]の場合にはrp=2[ppm]まで検出できることを表している。
【0073】
前述のように、前記相対クロック精度の分解能rpは式(10)のように表されることから、Tcが大きくなるほど前記相対クロック精度の分解能rpが小さくなりより正確な測定が可能になることがわかる。具体的なシミュレーション結果を次に示す。本シミュレーションにおいては、普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80においてはサンプリング周波数fsが5[MHz]によりサンプリングが行なわれている。また、送信側である基準基地局11の時計44のクロック精度は100[rpm]、受信側である普通基地局12の時計44のクロック精度は0[ppm]である。したがって送信機が受信機に対して100[ppm]だけ早く時を刻む。
【0074】
まず、符号間隔Tc=符号周期Ts=1.023[msec]である場合についてシミュレーションを行なう。これは例えば符号長が1023の拡散符号がチップ速度fc=1[μsec]で送信される場合において前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2とが連続して発信される場合に対応する。第1の拡散符号の同期検出による相関値がピークを生ずる時刻、すなわち受信時刻は1.0232×10−3[sec]、第2の拡散符号の受信時刻は2.04642×10−3[sec]となる。したがって、クロック誤差がある場合の同期間隔は1.023×10−3[sec](=2.04642×10−3−1.0232×10−3)である。したがってこのときのクロック速度比はrera_b0bi=1.023×10−3/1.023×10−3=1となる。
【0075】
続いて、符号間隔Tcを2倍、すなわちTc=2×Ts=2.046[msec]である場合についてシミュレーションを行なう。これは例えば符号長が1023の拡散符号がチップ速度fc=1[μsec]で送信される場合において前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に符号長が1023の間隔符号PN0が1つ発信される場合に対応する。この場合における第1の拡散符号の受信時刻は1.0232×10−3[sec]、第2の拡散符号の受信時刻は3.0694×10−3[sec]となる。したがって、クロック誤差がある場合の同期間隔は2.0462×10−3[sec](=3.0694×10−3−1.0232×10−3)である。したがってこのときのクロック速度比はrera_b0bi=2.0462×10−3/2.046×10−3=1.0000977となる。これをクロック精度に換算すると、rp=(1.0000977−1)×106=97.7[ppm]となる。このように、クロック速度比の検出において同期間隔を測定する対象である第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の間に発信される間隔符号の数を増やすことなどにより符号間隔Tcを大きくすることで、相対クロック精度の分解能rpが向上し、これによりクロック速度比検出の分解能も向上し、より精度のよいクロック速度比rera_b0biの算出が可能となることが分かる。
【0076】
しかしながら、クロック速度比の検出において同期間隔を測定する対象である第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の間に発信される間隔符号の数を必要以上に増やすと、同期検出に要する時間が長くなり、クロック速度比を得るための時間も長くなる。そのため、前記間隔符号の適当な数を決定することが必要となる。
【0077】
一方、後述する図8のフローチャートにおいて説明するように、前記クロック速度比算出部54によるクロック速度比の算出、時計ずれ算出部56による時計ずれの算出、および受信時刻補正部58による各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻の補正、測位部60による移動局10の測位が一連の作動として行なわれるような場合には、前記クロック速度比算出部54によるクロック速度比の算出、時計ずれ算出部56による時計ずれの算出が行なわれてから、受信時刻補正部58による各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻の補正、測位部60による移動局10の測位が行なわれるまでの期間に応じて基地局間時計ずれ量は大きくなる。この基地局間時計ずれ量は、測位部60による移動局10の位置の測位に直接的に誤差を生ずる。逆に、移動局10の測位に許容される誤差を決定すると、前記基地局間時計ずれ量の値の許容量が決定され、さらにこの基地局間時計ずれ量の許容量を達成するための相対クロック精度の分解能rpも決定される。
【0078】
かかる場合において、符号数設定部55は、前記間隔符号生成部75において生成される間隔符号の数を、(1)時計ずれ算出手段56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、(2)前記クロック速度比算出手段54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定する。この符号数設定部55は、前記基準基地局11の発信符号生成部72とともに送信符号列決定手段に対応する。
【0079】
具体的には、TOA検出時のクロック速度比検出分解能をz[nsec]とした場合、TOA検出時には移動局10の測位のために移動局10が基地局11,12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t[sec]が経過している。したがって、要求される相対クロック精度の分解能rp[ppm]はその定義から、
rp = ( z ×10-9 / t ) / ( 1.0 × 10-6 ) = ( z / t ) × 10-3 …(11)
である。一方、前記拡散符号列において前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との間に発信される間隔符号の数をm個とすると、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との符号間隔はTc=(m+1)×Tsとなるので、相対クロック精度の分解能rpは、前述の式(10)を導出したのと同様にして、
rp=(1/fs)/((m+1)×Ts)×106 …(12)
となる。この式(11)および(12)より、
(z/t)×10−3=(1/fs)/((m+1)×Ts)×106
であるので、前記間隔符号の数mは
m=(t×109)/(fs×Ts×z)−1 …(13)
のように求まる。このように、符号数設定部55は、前記間隔符号生成部75において生成される間隔符号の数mを、(1)時計ずれ算出手段56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度であるサンプリングレートfs、の少なくとも1つに基づいて決定している。
【0080】
例えば、測位の要求仕様として、誤差を30[cm]以内であることを満たすためにはTOA検出時のクロック速度比検出分解能zを1[nsec]程度とする必要がある。基地局間時間ずれ検出からTOA検出までに要する時間を0.1[sec]とした場合の間隔符号の数mは、
m=(0.1×109)/(500×106×0.001023×1)−1=199
となる。これは基準基地局11が発信する拡散符号列として、第1の拡散符号PN1に続き、199個の間隔符号、そして第2の拡散符号PN2の順で発信されるようにこれらを含むものであればよいことを意味している。また、このときのクロック速度比rera_b0biの検出に必要な時間は0.205623[sec](=0.001023×201)となる。
【0081】
図4に戻って、移動局の位置の算出、すなわち測位を行う測位部60は、前記受信時刻補正部58により基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正された各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、前記基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、既知の各基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の測位を行う。
【0082】
このとき、移動局10から発信される電波には、前述のように、発信符号生成部29によって生成された拡散符号列が含まれる。この拡散符号列は、予告符号生成部33によって生成された予告符号と、予告符号の発信後所定時刻経過後に発信される拡散符号生成部32により生成される拡散符号とを含む。そのため、各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記クロック速度比算出部54などにおいて用いる基準基地局11からの電波の受信時刻を算出したのと同様の手順により、まず、オンライン受信時刻検出部78によって移動局10から発信される前記予告符号を受信するとともに、オフライン受信時刻検出部80による検出対象時間区間を決定し、この区間においてオフライン受信時刻検出部80により移動局10から発信される前記拡散符号を受信することにより、精度よく移動局からの電波の受信時刻を検出することが可能となる。
【0083】
また、このようにして検出される各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記受信時刻補正部58によって基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正されているので、各基地局11、12の時計44の時刻が実際には同期させられていなくても、前記補正後の受信時刻を用いることにより、あたかも各基地局11、12の時計44が基準基地局11の時計44に同期されているかのように扱うことができる。なお、測位部60が測位手段に対応する。
【0084】
例えば、図7において、時刻t0において移動局10から電波が発信され、3つの基地局である基準基地局11、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bのオフライン受信時刻検出部80によりそれぞれ、時刻tim_b0_rvend_m1b0、tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2において移動局からの電波が受信されたとする。これらのうち普通基地局12においてそれら普通基地局12の時計44によって検出された受信時刻は、受信時刻補正部58により、基準基地局11の時計44の時刻を基準とする時刻に補正されている。すなわち、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bにおける移動局10からの電波の受信時刻tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2は、それぞれ、TOA_m1b1、TOA_M1b2に補正されている。なお、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻は受信時刻補正部58による補正がされないが、記号の統一のために、以下、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻をTOA_m1b0と記す。すなわち、TOA_m1b0 = tim_b0_rvend_m1b0である。
【0085】
このとき、実際の電波の伝搬時間は、各基地局11、12によって測定される受信時刻と移動局10の時計31によって測定される発信時刻との差に、前記基地局11、12の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれを考慮したものとなる。なお、前述のように、本発明においては、各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻は、基準基地局11の時計44の時刻に対応する受信時刻に補正されていることから、この補正後の受信時刻を用いることにより、各基地局11、12の時計44は基準基地局11の時計44と同期しているとみなすことができる。従って、前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれをΔtとすると、移動局10から基準基地局11への電波の伝搬時間は(TOA_m1b0−t0+Δt)、移動局10から第1普通基地局12Aへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b1−t0+Δt)、移動局10から第2普通基地局12Bへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b2−t0+Δt)となる。前述のように、図7において各基地局11、12の位置は既知であって、その位置を示す座標は、基準基地局11は(x0,y0)、第1普通基地局12Aは(x1,y1)、第2普通基地局12Bは(x2,y2)であり、測位の対象である移動局10の位置を示す座標を(x,y)とすると、電波の速度をc(m/s)を用いて、
(x−x0)2+(y−y0)2=(c×(TOA_m1b0−t0)+s)2,
(x−x1)2+(y−y1)2=(c×(TOA_m1b1−t0)+s)2,
(x−x2)2+(y−y2)2=(c×(TOA_m1b3−t0)+s)2 …(14)
となる。ただしs=Δt×cである。また、図7におけるr1、r2、r3はそれぞれ、r0=c×(TOA_m1b0−t0)、r1=c×(TOA_m1b1−t0)、r2=c×(TOA_m1b2−t0)を表している。ここで、式(14)の第2式および第3式のそれぞれの両辺の平方根をとり、更にその両辺から、第1式の両辺の平方根をとったものを引いて導出される式、
【数1】
を例えばニュートンラフソン法などにより解くことで、移動局10の位置(x,y)が算出される。なお、前記式(14)が式(15)のように変形されると、移動局10による電波の発信時刻t0および移動局10の時計31と基準基地局11の時計44の時刻ずれΔtに伴う距離sは式(15)から消去され、解の算出にあたりこれらの値を得る必要がない、いわゆるTDOA(Time Difference of Arrival)方式による測位となる。なお、図7においては、1つの基準基地局11および2つの普通基地局である3つの基地局11、12からなる場合について説明したが、4以上の基地局11、12が移動局10からの電波を受信した場合も同様であるので、説明を省略する。また3次元測位の場合においても未知数が一つ増えるだけであるので説明を省略する。
【0086】
図4に戻って、制御部59は、基地局通信部53、測位部60などの作動を制御するものである。また測位結果出力部62は、測位部60によって算出された移動局10の位置についての情報などを所定の方法、例えば図示しない出力装置として設けられたディスプレイ装置に表示するなどによって出力する。
【0087】
図8は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の概要を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、所定の間隔で基準基地局11から発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記各普通基地局12において受信される際の受信間隔が算出される受信間隔算出ルーチンが実行される。
【0088】
図9は、この受信間隔算出ルーチンの一例を説明するフローチャートである。まず測位サーバ14の符号数設定部55に対応するSB1においては、(1)時計ずれ算出部56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、(2)前記クロック速度比算出部54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて、例えば前記式(13)により後述するSB7において発信される拡散符号列における間隔符号の数が決定される。
【0089】
続いてSB2においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、基準基地局11から普通基地局12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSB3においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSB4以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSB2の探索が続けられる。
【0090】
SB4においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、基準基地局11から発信される拡散符号列を受信する命令がされる。続くSB5においては、SB4の命令を受けた各普通基地局12から、前記拡散符号列の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB6以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SB4における受信命令の送信が再度行われる。
【0091】
SB6においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、前記SB2で探索され発見された空きチャンネルを使用して前記拡散符号列を無線により送信する命令が送信される。そして、基準基地局11の発信符号生成部72、信号処理部36、無線通信部34などに対応するSB7においては、SB6の命令を受信した基準基地局11によって、前記予告符号PN3および第1の拡散符号PN1が所定の間隔pで、そして、第1の拡散符号PN1に続いてSB1で決定された個数の間隔符号、さらに第2の拡散符号PN2が順次発信されるように生成された拡散符号列が無線により発信される。
【0092】
普通基地局12の無線通信部34、信号処理部36、オンライン受信時刻検出部78などに対応するSB8においては、SB7において基準基地局11から発信された拡散符号列を受信したか否かが判断される。そして、全ての普通基地局12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB9が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SB6乃至SB8がくり返し実行され、全ての普通基地局12が基準基地局11から発信される拡散符号列を受信されるまで反復される。
【0093】
オフライン受信時刻検出部80、受信間隔算出部82などに対応するSB9においては、前記SB7において基準基地局11から発信され、SB8において受信された電波に含まれる前記第1の拡散符号および前記第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻が検出されるとともに、その受信間隔が算出される。このとき、受信時刻の検出においては、例えば受信波がいったん図示しない記憶装置などに記憶され、その記憶装置から適宜読み出された受信波をリアルタイムで同期検出を行う場合よりも小さい値に設定された遅延時間ごとに遅延させる遅延回路とマッチドフィルタなどを用いてレプリカ信号との相関値が算出され、相関値のピークを検出した受信完了時刻を受信時刻とするなどの方法により行われる。なお、本ステップは例えば、SB7において予告符号の受信を検出した時刻 Taq1 から所定時間後の予め算出された所定時間間隔であるTaq1 + p - ma ≦ t ≦ Taq1 + p + Tc + ma において実行される。このようにして算出された前記受信間隔が測位サーバ14に送信され、本ルーチンは終了する。
【0094】
図8に戻って、クロック速度比算出部54に対応するSA2においては、SA1において算出された各普通基地局12における前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との受信間隔( tim_bi_rvend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )と、SB6において基準基地局11から発信された前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との発信間隔Tcとに基づいて、基準基地局11の時計44と各普通基地局12のそれぞれの時計44とのクロック速度比rera_b0biが算出される。
【0095】
時計ずれ算出部56に対応するSA3においては、例えば、SA1において各普通基地局12における前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記基準基地局11による第2の拡散符号の発信時刻tim_bi_rvfend_b0biと、前記各普通基地局12における第2の拡散符号の受信時刻tim_bi_rvend_b0biと、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間tau0_iとに基づいて、前記基準基地局11の時計44の時刻と前記各普通基地局12の時計44の時刻との時刻ずれte_aq_b0biがそれぞれの普通基地局12について算出される。
【0096】
受信時刻補正部58に対応するSA4においては、前記各普通基地局12において受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記基準基地局11の時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SA2において算出されるクロック速度比、SA3において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0097】
測位部60に対応するSA5においては、移動局10の位置の算出を行うための測位ルーチンが実行される。
【0098】
図10は、この測位ルーチンの一例を説明する図である。まずSC1においては、図9の受信間隔算出ルーチンにおけるSB1乃至SB2と同様に、測位サーバ14から基準基地局11に対し、移動局10から各基地局11、12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSC2においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSC3以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSC1の探索が続けられる。
【0099】
SC3においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、移動局10から発信される拡散符号を受信する命令がされる。続くSC4においては、SC3の命令を受けた各基地局11、12から、前記拡散符号の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての基地局11、12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC5以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SC3における受信命令の送信が再度行われる。
【0100】
SC5においては、測位サーバ14から移動局10に対し、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が、例えば基準基地局11を介して送信される。すなわち、測位サーバ14からの命令を受けた基準基地局11により、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が無線により発信される。そして、移動局10の信号処理部28、無線通信部26、制御部30などに対応するSC6においては、SC5の命令を受信した移動局10によって、移動局10の測位のための拡散符号が発信される。このとき発信される拡散符号は、予め受信する基地局11、12においてレプリカ符号が準備される既知のものであれば何れの拡散符号でもよいが、例えば前述の予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、更に、これらの拡散符号の間に送信される拡散符号PN0の何れとも異なる拡散符号であれば、これを受信した基地局11、12において、移動局10から発信された拡散符号と基準基地局11から発信された予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2のそれぞれと区別をすることが可能である。
【0101】
基地局11、12の無線通信部34、信号処理部36、オンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80などに対応するSC7においては、SC6において移動局10から発信された移動局10の測位のための拡散符号を受信したか否かが判断される。そして、全ての基地局11、12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC8が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SC5乃至SC7がくり返し実行され、全ての基地局11、12が移動局10から発信される拡散符号を受信されるまで反復される。
【0102】
オンライン同期検出部78、オフライン受信時刻検出部80などに対応するSC8においては、前記SC6において移動局10から発信され、SC7において基地局11、12によって受信された電波に含まれる移動局10の測位のための拡散符号の受信時刻が同期検出により検出される。そして、算出された受信時刻が測位サーバ14に送信される。
【0103】
受信時刻補正部58に対応するSC9においては、前記SC8において検出され、測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、普通基地局12における受信時刻が、SA4において算出された補正のための式に従って基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正される。
【0104】
測位部60に対応するSC10においては、前記SC8において検出され測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、基準基地局11における受信時刻と、SC9において基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正された普通基地局12における受信時刻と、基準基地局11および普通基地局12の位置についての情報とにもとづいて、移動局10の測位が行われる。
【0105】
前述の実施例によれば、前記送信符号列決定手段に対応する発信符号生成部72および符号数設定部55によってその内容が決定された第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2を含む拡散符号列を基準基地局11が1回発信し、前記受信間隔検出手段としてのオンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80および受信間隔算出部82により、2以上の普通基地局12がそれぞれ受信した拡散符号列に含まれる第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段に対応するクロック速度比算出部54により、受信間隔算出部82によってそれぞれ検出された各普通基地局12における前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の受信間隔と、前記基準基地局11が前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局12のそれぞれと前記基準基地局11とのクロック速度の比rera_b0biがそれぞれ算出され、前記時計ずれ算出手段に対応する時計ずれ算出部56により、前記基準基地局11による前記拡散符号列に含まれる第1の拡散符号PN1または第2の拡散符号PN2の発信時刻と前記普通基地局12のそれぞれによる前記拡散符号列に含まれる第1の拡散符号PN1または第2の拡散符号PN2の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局11の時計44に対する前記普通基地局12のそれぞれの時計44のずれが算出され、前記受信時刻補正手段に対応する受信時刻補正部58により、前記普通基地局12のそれぞれにより、該普通基地局12のそれぞれの有する時計44に基づいて算出された前記移動局10からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比rera_b0biと前記基準基地局11の時計44に対する前記普通基地局12のそれぞれの時計44の時刻のずれとに基づいて前記基準基地局11の有する時計44に基づいた時刻に補正され、前記測位手段に対応する測位部60により、該受信時刻補正部58により補正された普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、前記基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、前記普通基地局11および基地局11、12の位置情報とに基づいて前記移動局10の位置が推定されるので、前記符号数設定部55によってその内容が決定された前記拡散符号列に対応したクロック速度比が得られ、得られたクロック速度比によってより精度のよい移動局10の測位が可能となる。
【0106】
また、前述の実施例によれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号である第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2と、この第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の間に1つ以上の間隔符号を含むものであるので、前記クロック速度比算出部54によってクロック速度比の算出に用いる第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の符号の発信間隔を前記間隔符号の数によって設定することができる。
【0107】
また、前述の実施例によれば、前記送信符号列決定手段に対応する発信符号生成部72および符号数設定部55は、前記間隔符号の数を、(1)時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度fs、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない符号数の符号列が決定される。
【0108】
また、前述の実施例によれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号である第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2よりも所定時間だけ前に発信される予告符号PN3を含み、前記受信間隔算出部82は、該予告符号PN3を受信した場合にはオンライン受信時刻検出部78からオフライン受信時刻検出部80に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうので、前記受信間隔算出手段は、前記予告符号の受信に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の最初の拡散符号についてオフライン受信時刻検出部80による詳細な受信時刻の検出を行なうことができる。
【0109】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0110】
前述の実施例1においては、受信間隔算出部82は、前記第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を、前記オンライン受信時刻検出部78よりも精度のよい検出が可能な前記オフライン受信時刻検出部80により行なうため、前記予告符号PN3を前記オンライン受信時刻検出部78により検出すると、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との発信時間差p、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差Tc、およびマージンmaの値に基づいて、具体的には Taq1 + p - ma ≦ t ≦ Taq1 + p + Tc + ma からなる時間区間において、オフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出を実行した。
【0111】
本実施例は、前記時間区間に基づく受信間隔算出部82によるオフライン受信時刻検出部80による詳細な受信時刻の検出の実行に代えて行なわれる、受信時刻算出部82によるオフライン受信時刻検出部80による詳細な受信時刻の検出の実行についての別の制御作動に関するものである。なお、本実施例においても、移動局測位システム8としては前述の実施例1の場合と同様に図1に示す構成を有し、また、移動局10、基地局11および12、測位サーバ14の構成も実施例1の場合と同様にそれぞれ図2乃至図4の機能ブロック図によって表される。また、後述する受信間隔算出部82によるオフライン受信時刻算出部80の実行に関する制御作動以外については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0112】
前述のように、基準基地局11から発信される拡散符号列は図5に示すようにされており、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間には、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3の何れでもない拡散符号PN0が発信されており、その個数は予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間隔がp(sec)となるように決定されている。この予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に発信される符号を予告間隔符号とし、その個数をn個とする。また、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間には、前記符号数設定部55によって設定された個数の間隔符号が、例えばm個送信されることとなっている。
【0113】
かかる場合において、受信間隔算出部82は、オフライン受信時刻検出部80により受信時刻を検出しようとする拡散符号である第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の前に送信される予告間隔符号および間隔符号を受信した数に基づいて、オフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出を実行する。すなわち、前記予告間隔符号および間隔符号の数が既知であることから、既に受信した前記予告間隔符号および間隔符号の数に基づいてオフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出の実行を開始することにより、オフライン受信時刻検出部80により受信時刻を検出しようとする拡散符号である第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2を受信する場合にのみオフライン受信時刻検出部80により受信時刻を検出を実行することができ、演算回数の増加に伴って前記オンライン受信時刻検出部78よりも消費電力の大きいオフライン受信時刻検出部80の実行時間を限定することにより、普通基地局12の消費電力を低減することができる。
【0114】
図11は普通基地局12において受信する拡散符号列と前記オンライン受信時刻検出部78による同期検出、および受信間隔算出部82によって実行されるオフライン受信時刻検出部80による同期検出の様子を同一の時間軸において表したものであり、図11においては右から左に向かって時間軸が設けられている。すなわち、左へいくほど時間が経過している。
【0115】
図11に示すように、オンライン受信時刻検出部78は常に同期検出を実行している。予告符号PN3のレプリカ符号との同期検出により予告符号PN3の受信を検出すると、予告符号PN3に続く予告間隔符号の同期検出を行なう。そして、検出した予告間隔符号の数を計測(カウント)する。図11には、オンライン受信時刻検出部78による同期検出の結果として、得られる相関値の時間変化が表されている。前述のように相関値がピークとなった時点が拡散符号の受信時刻であり、オンライン受信時刻検出部78により検出された予告間隔符号の数が併記されている。一方、受信間隔算出部82は、オンライン受信時刻検出部78により同期が検出された、すなわち受信された予告間隔符号の個数が、その全体の数であるn個よりも1つ少ない(n−1)個となった場合に、オフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の同期検出を開始する。すなわち、前述のようにオフライン受信時刻検出部80による詳細な同期検出を行なうため、受信した拡散符号を図示しない記憶装置への記憶を開始し、記憶された拡散符号に対する高精度な同期検出を開始する。そして、オフライン受信時刻検出部80による同期検出は、第1の拡散符号PN1の受信時刻を検出するまで実行される。図11においては、オフライン受信時刻検出部80による同期検出の結果として、オフライン受信時刻検出部80による同期検出の結果として、得られる相関値の時間変化が表されると共に、オフライン受信時刻検出部80による同期検出の非実行時は破線で表されている。
【0116】
一方、引き続き実行されているオンライン受信時刻検出部78は、第1の拡散符号PN1のレプリカ符号との同期検出により第1の拡散符号PN1の受信を検出すると、第1の拡散符号PN1に続く間隔符号の同期検出を行なう。そして、検出した予告間隔符号の数を計測する。前述の予告間隔符号の場合と同様に、図11には、オンライン受信時刻検出部78による同期検出の結果として、得られる相関値の時間変化が表されており、また、オンライン受信時刻検出部78により検出された間隔符号の数が併記されている。一方、受信間隔算出部82は、オンライン受信時刻検出部78により同期が検出された、すなわち受信された間隔符号の個数が、その全体の数であるm個よりも1つ少ない(m−1)個となった場合に、オフライン受信時刻検出部80による第2の拡散符号PN2の同期検出を開始する。前述の第1の拡散符号PN1の同期検出の場合と同様に、オフライン受信時刻検出部80による詳細な同期検出を行なうため、受信した拡散符号を図示しない記憶装置への記憶を開始し、記憶された拡散符号に対する高精度な同期検出を開始する。そして、オフライン受信時刻検出部80による同期検出は、第2の拡散符号PN2の受信時刻を検出するまで実行される。
【0117】
図12は本実施例における各普通基地局12の拡散符号列の受信における制御作動を説明するルーチンであり、図9の受信間隔算出ルーチンにおけるステップSB8において実施例1での制御作動に代えて実行されるものである。
【0118】
ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1乃至SD3はオンライン受信時刻検出部78に対応するステップである。まず、SD1においては、受信波を受信するのに伴って行なう同期検出であるオンライン受信時刻検出処理の実行が開始させられる。そして、SD2においては、SD1において開始させられたオンライン受信時刻検出処理により、拡散符号列の一部である予告符号PN3の受信が検出される。
【0119】
続くSD3においては、拡散符号列において予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に受信される予告間隔符号の受信が検出され、受信された予告間隔符号の数が計測(カウント)される。そして、受信間隔算出部82に対応するSD4においては、SD3において計測された受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(n−1)個となったか否かが判断される。受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(n−1)個となった場合には本ステップの判断が肯定され、SD5以降が実行される。一方、受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(n−1)個に未だ達していない場合には、本ステップの判断が否定され、SD3がくり返し実行され、予告間隔符号の受信が行なわれる。
【0120】
オフライン受信時刻検出部80に対応するSD5においては、第1の拡散符号PN1の受信時刻を高精度で行なうため、受信波に含まれる拡散符号が記憶装置にいったん記憶され、その後記憶された拡散符号に対し、オンライン受信時刻検出処理よりも詳細な(高頻度による)同期検出であるオフライン受信時刻検出処理が実行される。このSD5におけるオフライン受信時刻検出処理は第1の拡散符号PN1の受信時刻を検出するまで実行され、その後終了させられる。
【0121】
SD6およびSD7はオンライン受信時刻検出部78に対応するステップである。このうち、SD6においては、第1の拡散符号PN1を受信したことに伴って、SD3において予告間隔符号を計測していたカウンタが0とされる。そして、続くSD7においては、SD3において予告間隔符号に対して行なったのと同様にして、拡散符号列において第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に受信される間隔符号の受信が検出され、受信された間隔符号の数が計測(カウント)される。そして、受信間隔算出部82に対応するSD4においては、SD8と同様に、SD7において計測された受信された間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(m−1)個となったか否かが判断される。受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(m−1)個となった場合には本ステップの判断が肯定され、SD9以降が実行される。一方、受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(m−1)個に未だ達していない場合には、本ステップの判断が否定され、SD7がくり返し実行され、予告間隔符号の受信が行なわれる。
【0122】
オフライン受信時刻検出部80に対応するSD9においては、SD5において第1の拡散符号PN1について行なったのと同様に、第2の拡散符号PN2の受信時刻を高精度で行なうため、受信波に含まれる拡散符号が記憶装置にいったん記憶され、その後記憶された拡散符号に対し、オンライン受信時刻検出処理よりも詳細な同期検出であるオフライン受信時刻検出処理が実行される。このSD9におけるオフライン受信時刻検出処理は第2の拡散符号PN2の受信時刻を検出するまで実行され、その後終了させられる。そして、SD10においては、第2の拡散符号PN2を受信したことに伴って、SD7において間隔符号を計測していたカウンタが0とされて本ルーチンが終了させられる。このようにして、各普通基地局12における第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の受信時刻が検出される。
【0123】
また、前述の実施例によれば、前記受信間隔算出部82は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段に対応するオンライン受信時刻検出部78と前記オフライン受信時刻検出手段に対応するオフライン受信時刻検出部80とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号である第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2の受信時刻を、前記拡散符号を受信しながら受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を行なう前記オンライン受信時刻検出部78よりも詳細な精度により電波の受信時刻を検出する前記オフライン受信時刻検出部80によって検出するので、前記第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の受信時刻を詳細な精度により検出することができる。
【実施例3】
【0124】
前述の実施例1においては、前記発信符号生成部72が生成する拡散符号列においては、例えば図5に示すように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されているように拡散符号列が生成された。特に、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信間隔Tcは、符号数設定部55によって設定される数だけ間隔符号生成部75によって生成される間隔符号によって設定された。
【0125】
本実施例は、前記発信符号生成部72による図5に示すような拡散符号列の生成に代えて行なわれる、発信符号生成部72による前記拡散符号列の生成についての別の制御作動に関するものである。なお、本実施例においても、測位システム8としては前述の実施例1の場合と同様に図1に示す構成を有し、また、移動局10、基地局11および12、測位サーバ14の構成も実施例1の場合と同様にそれぞれ図2乃至図4の機能ブロック図によって表される。また、後述する発信符号生成部72による拡散符号列の生成に関する制御作動以外については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0126】
前述の実施例1においては、前記符号数設定部55は、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間における間隔符号の数mは、(1)時計ずれ算出手段56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度であるサンプリングレートfs、に基づいて、前記式(13)
m=(t×109)/(fs×Ts×z)−1 …(13)
を用いて算出した。しかしながら、この間隔符号の数mは、第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2との発信間隔Tcを間隔符号を用いて表現する場合におけるパラメータに過ぎず、本来的には、基地局間時計ずれを検出してからt[sec]後の基地局間時計ずれ量をz[nsec]とした場合に要求される相対クロック精度の分解能rpを表す式(12)を満たすために必要となる第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2との発信間隔Tc(=(m+1)×Ts)を算出したことに意味がある。
【0127】
すなわち、第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2との発信間隔Tc(=(m+1)×Ts)とすることができれば、その発信間隔の間に前記間隔符号が存在する必要はない。そこで、本実施例においては、間隔符号生成部75は、符号数設定部55において設定された間隔符号を発信するのに相当する時間を算出する。そして、発信符号生成部72は、第1の拡散符号PN1を発信後、間隔符号設定部75において算出された間隔符号を発信するのに相当する時間だけ発信を行なわず、その間隔符号を発信するのに相当する時間の経過後第2の拡散符号PN2を発信するような拡散符号列を生成する。例えば、前記間隔符号を発信するのに相当する時間は符号を全て0とするなどの方法によって拡散符号列を生成する。
【0128】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72は、予告符号生成部76によって生成される予告符号PN3を第1の拡散符号PN1よりも測位システム8により予め定められた所定時間だけ先に発信されるように拡散符号列を生成した。そして、この所定時間の間は例えば図5に示すように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3の何れでもない拡散符号PN0を複数個設けることによって設定された。一方、本実施例においては、発信符号生成部72は、前述の間隔符号の場合と同様に、予告符号PN3の発信後、前記所定時間の間は発信を行なわず、前記所定時間の経過後に第1の拡散符号PN1が発信するような拡散符号列を生成する。例えば、前記間隔符号を発信するのに相当する時間は符号を全て0とするなどの方法によって拡散符号列を生成する。
【0129】
図13は本実施例において基準基地局11における発信符号生成部72によって生成される拡散符号列の一例を示した図である。図13においては、時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。すなわち、左に行くほど時刻が後において発生される拡散符号を表している。図13において、前記予告符号PN3と前記第1の拡散符号PN1との発信時間差p、および、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との発信時間差Tcに相当する時間は、拡散符号が発信されないようになっている。
【0130】
前述の実施例3によれば、前記拡散符号列は、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号と、該前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔Tsとを含むので、前記クロック速度比算出部54によってクロック速度比rera_b0biの算出に用いられる前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の間隔を前記所定の間隔Tsを変更することによって設定することができる。また、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号の発信時間差Tsの間は基準基地局は信号を発信することがなく、省電力化を行なうことができる。
【0131】
また、前述の実施例3によれば、前記発信符号生成部72は、前記所定の間隔を、(1)時計ずれ算出部56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度fs、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない長さの符号列が決定される。
【0132】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0133】
例えば、前述の実施例においては、基準基地局11と普通基地局12はともに図3に示すような共通する機能構成を有するものとされた。このようにすれば基地局は基準基地局11と普通基地局12の機能を切り換えたり、あるいは前述の実施例2に示すように、基準基地局11と普通基地局12の機能を同時に有したりすることができる。しかしながら、逆に言えばこのような態様に限られず、基準基地局11としてのみ作動する基地局においては、普通基地局12として作動する際に必要な受信間隔算出部82を有する必要がなく、また普通基地局12としてのみ作動する基地局においては、基準基地局11として作動する際に必要な発信符号生成部72を有する必要がない。このようにすれば、基準基地局11および普通基地局12はそれぞれ簡易な構成とすることができる。
【0134】
また、前述の実施例においては、普通基地局12における受信間隔算出部82はオフライン受信時刻検出部80によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出したが、これに限られず、例えば、オンライン受信時刻検出部78によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出してもよい。すなわち、オフライン受信時刻検出部80がなくても一定の効果が生ずる。
【0135】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72が生成する拡散符号列において、予告符号と第1の拡散符号との間隔は予め定められた所定時間とされたが、これに限られない。例えば、予告符号と第1の拡散符号との間隔を前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部74によって生成される前記第1の拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差としてその都度測定された値を用いることもできる。このとき、予告符号生成部76は、例えば前記制御部38を介して後述する普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80にこの発信時刻の差についての情報を伝達してもよい。この場合所定時間情報は測位サーバ14を介して普通基地局12へ送信される。
【0136】
また、前述の実施例においては、予告符号生成部76が生成する予告符号PN3と、拡散符号生成部74が生成する第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2のそれぞれは同一の拡散符号であるとされたが、これに限られない。すなわち、予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2はそれぞれ異なった拡散符号でもよく、この場合、受信する普通基地局12においてはそれぞれの異なる拡散符号と同一のそれぞれのレプリカ符号を用いて同期検出処理を行なう必要がある一方、受信側において予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2を取り違えることがない。なお、移動局10の発信符号生成部29において生成される拡散符号列についても同様であり、予告符号生成部33が生成する予告符号と拡散符号生成部32が生成する測位のための受信時刻検出のための拡散符号とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0137】
また、前述の実施例においては、測位部60は各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻の時間差を用いて移動局10の測位を行ったが(TDOA方式)、これに限られない。例えば、測位の前に少なくとも前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻の同期を行うことができれば、電波の発信時刻と受信時刻から算出される電波の伝搬時間に基づいて移動局10の測位を行うことができる(TOA方式)。
【0138】
また、前述の実施例においては、図9のステップSB4およびSB7において、全ての普通基地局からの応答があったか否かを判断したが、これに限られず、例えば移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局からの応答が合った場合にはこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。また、図10のステップSC4およびSC7においても同様であり、基準基地局11と移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局12からの応答が合った場合にこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。
【0139】
また、前述の実施例においては、図10のステップSC5において、基準基地局11から移動局10に対し測位のための電波の発信命令が行われたが、これに限られない。すなわち、移動局10に対して無線通信可能ないずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われてもよく、測位サーバ14によっていずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われるかが定められればよい。
【0140】
また、前述の実施例においては、各基地局11、12と測位サーバ14とは有線ケーブル52により接続され通信可能とされていたが、このような態様にかぎられず、各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能な状態とされていれば、その手段は限定されない。例えば、赤外線や、超音波、電波などにより各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能にされてもよく、この場合、有線ケーブルで接続される必要がない。
【0141】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72が生成する拡散符号列は、その拡散符号列を受信する普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号として第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の2つを含むものとされたが、これに限られず、前記オフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号として3以上の拡散符号を送信するようにすることもできる。この場合、例えば、発信符号生成部72は、前記オフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号を予め定められた所定の間隔で連続して発信するような拡散符号列を生成し、測位サーバ14や普通基地局12において何れの拡散符号をオフライン受信時刻検出部80の検出対象とするかを決定するようにしてもよい。
【0142】
また、前述の実施例2においては、受信間隔算出部82は、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではn個)予告間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された予告間隔符号の数に基づいて(図12のSD2〜4)オフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の受信時刻の検出を開始する(図12のSD5)とともに、同様に、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではm個)間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された間隔符号の数に基づいて(図12のSD7〜8)オフライン受信時刻検出部80による第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を開始する(図12のSD9)ようにしたが、このような態様に限られない。すなわち、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではn個)予告間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された予告間隔符号の数に基づいて(図12のSD2〜4)オフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の受信時刻の検出を開始する(図12のSD5)した後は、その後第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を完了するまでオフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行なってもよい。また、予告符号PN3を受信した後、前記予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間の所定の時間間隔pに基づいてオフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の受信時刻の検出を開始するとともに、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではm個)間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された間隔符号の数に基づいて(図12のSD7〜8)オフライン受信時刻検出部80による第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を開始する(図12のSD9)。すなわち、実施例2において、受信間隔算出部82によって開始されるオフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出は、第1の拡散符号PN1あるいは第2の拡散符号PN2のいずれか一方の検出にのみ適用することも可能である。
【0143】
前述のように、移動局10の発信符号生成部29が測位のために基地局11、12に対し発信する拡散符号列も、予告符号とオフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号、およびその間における所定の数の予告間隔符号とを含む拡散符号列とすることが可能である。この場合には、前述の実施例2における受信間隔算出部82によるオフライン受信時刻検出部80による検出の開始方法を用いることができる。すなわち、移動局10から発信される拡散符号列を受信する基地局11、12においては、前記拡散符号列のうち、予告符号をオンライン受信時刻検出部78において受信時刻の検出をした後、予告符号に続いて受信される所定の個数の予告間隔符号をオンライン受信時刻検出部78において受信時刻の検出を行なうと共に、検出した予告間隔符号の個数を計測する。そして、例えば、予告間隔符号の総数よりも1だけ少ない数だけ予告間隔符号を検出した場合には、オフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を開始し、その後に受信する測位のための拡散符号の受信時刻をオフライン受信時刻検出部80により検出する。このようにすれば、測位のために用いられる拡散符号の受信時刻を正確に検出することができるので、移動局10の測位を正確に行なうことができるとともに、計算量の増加に伴って消費電力が大きいオフライン受信時刻検出部80の実行を前記測位のために用いられる拡散符号の受信の前後においてのみに限定できることから、基地局11、12の省電力化を図ることができる。
【0144】
また、前述のように、移動局10の発信符号生成部29が測位のために基地局11、12に対し発信する拡散符号も、予告符号とオフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号、およびその間における所定の数の予告間隔符号とを含む拡散符号列とすることが可能であるとされたが、これに限られず、前記所定の数の予告間隔符号の発信に代えて、その所定の数の予告間隔符号の発信に要する時間に相当する時間だけ、何も発信しないような拡散符号列とすることができる。このようにすれば、前記所定の数の予告間隔符号の発信に要する時間に相当する時間においては移動局10は電波を発信しないことから移動局10の省電力化を図ることができる。
【0145】
なお、前述の実施例においては、移動局10が2次元平面を移動する場合の測位の例について示したが、これに限られず、移動局10が3次元空間を移動する場合も同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の移動局測位システム8の構成の概要の一例を説明する図である。
【図2】本発明の移動局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図3】本発明の基地局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図4】本発明の測位サーバの有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図5】基準基地局が発信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図6】普通基地局が受信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図7】測位部による測位の原理を説明する図である。
【図8】本発明の移動局測位システムによる測位における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートにおいて実行される受信間隔算出ルーチンを説明するフローチャートである。
【図10】図8のフローチャートにおいて実行される測位ルーチンを説明するフローチャートである。
【図11】本発明の別の実施例における基準基地局が発信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図であって、図5に対応する図である。
【図12】本発明の別の実施例における各普通基地局の拡散符号列の受信における制御作動を説明するルーチンであり、図9の受信間隔算出ルーチンにおけるステップSB8に代えて実行されるものである。
【図13】本発明の別の実施例における普通基地局が受信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図であって、図6に対応する図である。
【符号の説明】
【0147】
8:測位システム
11:基準基地局
12:普通基地局
14:測位サーバ
54:クロック速度比算出部
55:符号数設定部
56:時計ずれ算出部
58:受信時刻補正部
60:測位部
72:発信符号生成部
75:間隔符号生成部
80:オンライン受信時刻検出部
82:受信間隔算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である基地局のそれぞれにおける受信時刻の時間差に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、前記複数の基地局間のクロック速度比に基づいて受信時刻を補正することにより、精度のよい移動局の測位を行なうことのできる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信時刻の時間差に基づいて、移動局の位置の検出を行なう測位システムおよび測位方法が提案されている。
【0003】
かかる測位システムあるいは測位方法においては、複数の基地局間の電波の受信時間差を算出する必要があることから、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を共通した時刻に時刻合わせをしておく必要がある。
【0004】
一方、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を時刻合わせすることに代えて、予め前記複数の基地局のそれぞれが有する時計の傾向、すなわち、時計のクロック速度比や、時刻のずれなどを検出あるいは算出するなどにより把握しておき、それぞれの基地局の時計により検出された移動局からの電波の受信時刻を、前記時計の傾向に基づいて補正する技術が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術がそれである。
【0005】
【特許文献1】特許第3801123号公報
【0006】
前記特許文献1の記載によれば、1の基地局から複数回にわたって発信される信号の受信時間を複数ある他の基地局が各々のクロックにより測定し、それらの受信時間などに基づいて各基地局のクロック速度の比(クロック速度比)を推定し、推定されたクロック速度比に基づいて移動局からの電波の各基地局における受信時間を補正して移動局の位置の検出を行なう技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、実際のハードウェアにおいては、無線による信号の発信間隔の制御や受信間隔の検出は、その精度に限界がある。このような、発信間隔の制御や受信間隔の検出の精度に限界がある状況のもとでクロック速度比検出の精度を向上させる場合、発信間隔の制御および受信間隔の測定の精度がクロック速度比に及ぼす影響をいかに低減するかが問題となる。
【0008】
ここで、クロック速度比の算出は、例えば発信側の無線局の複数の信号の発信間隔と、受信側の無線局の対応する複数の信号の受信間隔との比を取ることによって行なわれるものであり、かかる場合において、前記発信間隔を長くすれば、発信間隔の制御や受信間隔の検出の精度がクロック速度比に与える影響は相対的に低減され、クロック速度比の精度を向上させることができる。しかしながら、前記発信間隔を長くすると、クロック速度比の算出に要する時間が長大化するという問題がある。
【0009】
一方、前記特許文献1においては、かかる点についての考慮がなく、特に、発信間隔の設定について「一定以上の時間をおいて」と記述するのみである。このように、最適な前記発信間隔を設定できない場合には、クロック速度比の算出に必要以上の時間を要するため、移動局の測位に要する時間が長大化することが考えられる。
【0010】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、前記複数の基地局のいずれか1の基地局である基準基地局から他の基地局へ発信される信号である拡散符号列の符号数をシステムに要求される測位精度と、前記拡散符号列の受信間隔の検出精度に応じて決定することのできる移動局測位システムおよび移動局測位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、(b)前記複数の基地局のうち、少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、(c)前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、(d)前記基準基地局が発信する前記拡散符号列の内容を決定する送信符号列決定手段と、(e)前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる少なくとも2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、(f)前記受信間隔算出手段によって算出された前記少なくとも2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記少なくとも2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、(g)前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、(h)前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、(i)該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、好適には、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号列と、該少なくとも2つ以上の拡散符号の間に1つ以上の間隔符号を含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、(a)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信しながら行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、(b)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、(c)前記受信間隔算出手段は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段と前記オフライン受信時刻検出手段とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、前記送信符号列決定手段は、前記間隔符号の数を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記拡散符号は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔を含むことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、前記送信符号列決定手段は、前記所定の間隔を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号よりも前に発信される予告符号を含み、(b)前記受信間隔算出手段は、該予告符号を受信した場合にはオンライン受信時刻検出手段からオフライン受信時刻検出手段に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる移動局測位システムによれば、前記送信符号列決定手段によってその内容が決定された少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列を前記基準基地局が1回発信し、前記受信間隔検出手段により、2以上の前記普通基地局がそれぞれ受信した少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列に含まれる少なくとも2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段により、前記受信間隔検出手段によってそれぞれ検出された各普通基地局における前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻の間隔である受信間隔と、前記基準基地局が前記少なくとも2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比が算出され、前記時計ずれ算出手段により、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計のずれが算出され、前記受信時刻補正手段により、前記普通基地局のそれぞれにより、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出された前記移動局からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比と前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正され、前記測位手段により、該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置が推定されるので、前記送信符号列決定手段によってその内容が決定された前記拡散符号列に対応したクロック速度比が得られる。
【0019】
また、請求項2にかかる移動局測位システムによれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つ以上の拡散符号の間に1つ以上の間隔符号を含むものであるので、前記クロック速度比算出手段によってクロック速度比の算出に用いる少なくとも2つの拡散符号の間隔を前記間隔符号の数によって設定することができる。
【0020】
また、請求項3にかかる移動局測位システムによれば、前記受信間隔算出手段は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段と前記オフライン受信時刻検出手段とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻を、前記拡散符号を受信しながら受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を行なう前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により電波の受信時刻を検出する前記オフライン受信時刻検出手段によって検出するので、前記2つの拡散符号の受信時刻を詳細な精度により検出することができる。
【0021】
また、請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記送信符号列決定手段は、前記間隔符号の数を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない符号数の符号列が決定される。
【0022】
また、請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔を含むので、前記クロック速度比算出手段によってクロック速度比の算出に用いられる少なくとも2つの拡散符号の間隔を前記所定の間隔を変更することによって設定することができる。また、前記2つの拡散符号の間は基準基地局は信号を発信することがなく、省電力化を行なうことができる。
【0023】
また、請求項6にかかる移動局測位システムによれば、前記送信符号列決定手段は、前記所定の間隔を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない長さの符号列が決定される。
【0024】
また、請求項7にかかる移動局測位システムによれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号よりも前に発信される予告符号を含み、前記受信間隔算出手段は、該予告符号を受信した場合にはオンライン受信時刻検出手段からオフライン受信時刻検出手段に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうので、前記受信間隔算出手段は、前記予告符号の受信に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の最初の拡散符号についてオフライン受信時刻検出手段による詳細な受信時刻の検出を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の移動局測位システムの構成の一例を示した図である。図1には、移動局10が移動可能な領域のうち、後述する基地局11、12によって移動局10の位置の検出(測位)を行なうことが可能な領域として測位可能領域5が表されている。また、前記測位可能領域5には、移動局10と無線により通信を行なう基地局として、1つの基準基地局11、および3つの普通基地局として第1普通基地局12A、第2普通基地局12B、および第3普通基地局12Cがそれぞれ設けられている。なお、基準基地局および普通基地局の数はその機能から、それぞれ基準基地局は1つ以上、普通基地局は2つ以上が存在する。これは、移動局10の位置を電波の伝搬時間を用いて算出する場合には少なくとも3個の基地局が必要であるためである。逆に言えば、前記測位可能領域5の何れの地点においても、少なくとも移動局10が3個の基地局と通信可能となるように基地局が配置されている。なお、基地局の数が多いほど移動局の位置の算出は正確に行うことができる。本実施例においては、図1に示すように基準基地局11および普通基地局12A乃至12Cがそれぞれ配置されている。本実施例においては、移動局10の数は1個とされているが、移動局の個数は特に限定されない。また、各基地局と例えば有線ケーブル52により接続されることにより通信可能とされた測位サーバ14が設けられ、前記移動局10によって発信され前記基地局12によって受信された電波に基づいて、前記測位可能領域内における基地局10の位置を算出する。なお、本明細書において、特に個々の普通基地局12A乃至12Cを区別しない場合には普通基地局12と表記する。また、基準基地局11と普通基地局12を区別しない場合には、基地局11、12と表記する。なお、前記測位可能領域5には図1に示すように便宜上x軸およびy軸による座標系が定義され、測位可能領域5上の点はこの座標によってその位置が特定されるようになっている。
【0027】
図2は移動局10の機能の概要を示す機能ブロック図である。移動局10は、移動局が電波の送受信を行なうアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29などを有している。また、移動局10は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記移動局10における無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29などの必要な作動が実行される。
【0028】
無線通信部26は、移動局10の無線通信を行なうものであって、移動局10が電波を発信する際において、電波を発信する発信手段である。具体的には、後述する発信符号生成部29によって生成された拡散符号列を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バラン(balun)などにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波が前記アンテナ20により発信される。また無線通信部26は基地局から送信される制御信号を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ20によって受信された電波に対し、無線通信部26は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0029】
信号処理部28は、無線通信部26により復調された信号を処理することにより基地局から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部30に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0030】
発信符号生成部29は、移動局が基地局11、12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部32によって生成される拡散符号と予告符号生成部33によって生成される予告符号とに基づいて生成する。この発信符号生成部29によって生成された発信符号は無線通信部26により無線により発信される。この発信符号生成部29は、後述するオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部32と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部33を有する。
【0031】
このうち、拡散符号生成部32は、後述する基地局11、12のオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する。また、予告符号生成部33は、前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は例えば、前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差であり、例えば予め決定され基地局11、12と移動局10との間で既知とされた値が用いられる。すなわち、前記発信符号生成部29によって生成される拡散符号列は、少なくとも前記予告符号と、前記所定時間だけ後に発信される前記拡散符号とを含んで構成される。
【0032】
また、時計31は、移動局10において電波の発信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0033】
制御部30は前記無線通信部26、信号処理部28、発信符号生成部29などの作動を制御する。例えば、移動局10の位置を測定するために基地局12に対し電波を発信する指令を受けた場合に、所定の出力で電波を発信する。
【0034】
また、制御部30は、移動局10が電波を発信する場合と電波を受信する場合とに応じて、前記無線通信部26、信号処理部28などの作動を切り換えるよう制御する。また制御部30は、基地局からの制御指令に基き測位のための拡散符号送信要求を受信したときに、発信符号生成部32に対して所定の時刻に拡散符号を無線通信部26に送信するように制御する
【0035】
図3は、基地局11、12の機能の概要を示す機能ブロック図である。基地局11、12はアンテナ35、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72を有し、これらはそれぞれ前述の移動局10が有するアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29と同様の機能を有する、また、基地局11、12はこれらのアンテナ20、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72に加え、オンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80、受信間隔算出部82、制御信号生成部37などを有する。また、基地局11、12は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記基地局11、12における無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72、オンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80、受信間隔算出部82、制御信号生成部37などの必要な作動が実行される。
【0036】
すなわち、無線通信部34は、基地局11、12の無線通信を行なうものであって、基地局11、12が電波を受信する際において、電波を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ35によって受信された電波に対し、無線通信部34は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0037】
また、信号処理部36は、無線通信部34により復調された信号を処理することにより後述する測位サーバ14から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部38に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0038】
制御信号生成部37は後述する基準基地局11における空きチャンネル探索のための制御信号の生成および普通基地局における空きチャンネル探索の応答信号を生成する。また移動局10に対して測位信号の送信を要求する信号を生成する。制御信号生成部37において生成された制御信号は無線通信部34に送信されてアンテナ35により無線送信される。
【0039】
なお、制御部38は移動局10の制御部30が移動局における電波の発信する状態と受信する状態を切り換えるのと同様に、基地局12の制御部38は、基地局12が電波を発信する状態と電波を受信する状態とを切り換えることができ、これらの状態に応じて、前記無線通信部34、信号処理部36などの作動を切り換えて制御する。
【0040】
また、無線通信部34は、制御信号生成部37によって生成された信号を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バランなどにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波がアンテナ35により発信される。このように、基地局12は電波を受信することに加え、発信することも可能である。一方、前述のように移動局10は電波を発信することに加え受信することも可能であることから、基地局12は移動局10に対し無線によりその作動を制御することが可能である。
【0041】
発信符号生成部72は、基地局11、12が基準基地局11として作動する場合において、基準基地局11が普通基地局12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部74によって生成される拡散符号と予告符号生成部76によって生成される予告符号とに基づいて生成する。この発信符号生成部72は後述する符号数設定部55とともに送信符号列決定手段に対応する。また、発信符号生成部72はこの拡散符号列を発信する際において、前記第2の拡散符号の発信完了時刻についての情報を、後述するサーバ通信部40を介して測位サーバ14に送信する。この発信符号生成部72は、後述するオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部74と、この拡散符号生成部74によって生成される2つの拡散符号の間に発信される間隔符号を生成する間隔符号生成部75と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部76とを有する。
【0042】
このうち、拡散符号生成部74は、後述するオフライン受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号であって、第1の拡散符号と第2の拡散符号の2つの拡散符号を含む拡散符号列を生成する。また、間隔符号生成部75は、前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との間に送信される間隔符号を、後述する測位サーバ14の符号数設定部55によって設定された個数だけ生成する。すなわち、この間隔符号の数を変更することにより、前記拡散符号生成部74が発信する拡散符号列における第1の拡散符号および第2の拡散符号の発信間隔を調整することができる。
【0043】
また、予告符号生成部76は、前記拡散符号生成部74によって生成される2つの拡散符号を含む拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は測位システムにより予め決められており、その情報に基づき制御部38は拡散符号生成部74と予告符号生成部76を制御する。
【0044】
前述のように、基地局11、12は共通する構成を有することから、基準基地局11として作動する基地局が、その作動に代えて、あるいはその作動に加えて普通基地局12としての作動を行うことが可能である。このようにすれば、基準基地局11として作動していた基地局が故障した場合に、それまで普通基地局12として作動していた基地局が新たに基準基地局11として作動することが可能となり、測位システム8としての冗長性を有することができる。
【0045】
図5は、発信符号生成部72が生成する拡散符号列の一例を説明する図である。図5においては、時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。すなわち、左に行くほど時刻が後において発生される拡散符号を表している。図5において、前記第1の拡散符号はPN1、前記第2の拡散符号はPN2、前記予告符号はPN3でそれぞれ表されている。
【0046】
まず、予告符号生成部76によって生成された予告符号PN3が、第1の拡散符号の発信の所定時間 p だけ前に発信される。このとき、予告符号PN3の発信完了時刻が Taq1' である。その後、この所定時間 p の経過後に、拡散符号生成部74により生成される第1の拡散符号PN1が発信される。さらに、間隔符号生成部75によって設定された個数であるm個の間隔符号が送信された後、前記拡散符号生成部74により生成される第2の拡散符号PN2が発信される。このとき、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻を tim_b0_trfend_b0 、第2の拡散符号PN2の発信完了時刻を tim_b0_trlend_b0 とする。また、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差 tim_b0_trlend_b0 - tim_b0_trfend_b0 は Tc とする。この発信時間差 Tc は、m個の間隔符号と第2の拡散符号PN2を発信するのに要する時間であり、逆に言えば、間隔符号の個数(m個)を増減させることによりこの発信時間差 Tc を変化させることができる。また、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻 tim_b0_trfend_b0 は、前述の予告符号PN3の発信完了時刻 Taq1' と前記発信時間差 p を用いて、 tim_b0_trfend_b0 = Taq1' + p と表される。
【0047】
また、図5に示す拡散符号列において、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されている。これは、この符号列を受信した場合において、受信側で同期検出を行う際のレプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さい符号であればよい。従って、レプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さいのであれば、PN0が全て同一の拡散符号である必要はない。このとき前記所定時間pは、前記予告符号PN3と第1の拡散符号PN1の間に発信される符号PN0の個数によって決定される。また、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3としては、好適には例えば同一の拡散符号が用いられる。
【0048】
図3に戻って、オンライン受信時刻検出部78は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波と、その受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局11、12による電波の受信時刻とする。なお、このような処理を同期検出という。このオンライン受信時刻検出部78は、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。このオンライン受信時刻検出部78は、例えば移動局10から測位のために発信される予告符号の各基地局11、12における受信時刻を検出するほか、普通基地局12においては、基準基地局11から発信される前記予告符号の受信時刻の検出にも用いられる。なお、前述のように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3として、同一の拡散符号が用いられる場合には、この同一の拡散符号と同一の符号である1つのレプリカ符号についてのみ同期検出を行なえばよい。
【0049】
このとき、オンライン受信時刻検出部78は、前記無線通信部34による電波の受信に伴って、すなわち前記無線通信部34の受信信号に対して即座に同期検出を行ういわゆるリアルタイムによる同期検出を行う。言い換えれば、受信する拡散符号の速度に合った速度で同期検出処理を行わなければならず、例えば拡散符号を順次受信する場合において、ある符号を受信したら、その符号の同期検出は次の符号を受信するまでに完了しなければならい。なお、このオンライン受信時刻検出部78がオンライン受信時刻検出手段に対応する。ところで、前述のように同期検出は、受信波とその受信波を発信する際に行なった拡散処理に用いた拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、その相関値のピークが出現した時刻を受信時刻とするものであるが、この同期検出の精度は、前記受信信号を微小時間ごとにずらす際に、どれほど細かく微小時間を設定し得るかによって左右される。すなわち、前記微小時間の長さと同期検出に要する計算の回数が反比例するためである。従って、前述のようなリアルタイムで同期検出を行う場合においては、計算を行うことのできる時間、すなわち計算の回数に制約が存在し、そのため、同期検出を行う際の精度に限界がある。
【0050】
オフライン受信時刻検出部80は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を前記オンライン受信時刻検出部78がおこなうよりもより高精度に測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波を一旦図示しない記憶装置に記憶しておき、その記憶された受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局12による電波の受信時刻とする。このとき、前記微小時間を前記オンライン受信時刻検出部78の同期検出における微小時間よりも短いものとすることにより、高精度の検出が可能となる。このオフライン受信時刻検出部80は、前記図示しない記憶装置に加え、前述のオンライン受信時刻検出部78と同様に、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。なお、このオフライン受信時刻検出部80がオフライン受信時刻検出手段に対応する。
【0051】
このオフライン受信時刻検出部80は、特に定められる時間区間においてのみ実行されることが可能である。すなわち、基地局11、12は前記オンライン受信時刻検出部78による受信時刻の検出を常時行うようにしておき、特にオフライン受信時刻検出部80により高精度な受信時刻の検出を行うように定められた時間区間においてのみ、前記オンライン受信時刻検出部78による受信時刻の検出に加えてあるいはこれに代えてオフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うようにしてもよい。このようにすれば、オフライン受信時刻検出部80はオンライン受信時刻検出部78に比べて演算に要する電力をより多く必要とするため、特に定められた時間区間においてのみオフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うことにより、基地局11、12の省電力化を図ることができる。
【0052】
例えば、後述する受信間隔算出部82によって算出される各普通基地局12における前記第1の拡散符号の受信時刻と前記第2の拡散符号の受信時刻との受信時間差はより高精度に算出されることが望ましい。そこで、オフライン受信時刻検出部80は、前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。例えば、オフライン受信時刻検出部80は前記基準基地局11において前記第1の拡散符号に先立って発信される予告符号に基づいて前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。
【0053】
図6は、前記基準基地局11が発信する前記予告符号PN3、前記第1の拡散符号PN1および前記第2の拡散符号PN2を含む拡散符号列を普通基地局12が受信した場合の受信信号を示した図である。図6においては、図5と同様に時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。ここで、普通基地局12においては、オンライン受信時刻検出部78が予告符号PN3の受信を検出すると、受信間隔算出部82は、その受信完了時刻 Taq1 から予告符号と第1の拡散符号との発信時間差 p の経過後よりもマージン ma だけ前を始点とし、その受信完了時刻 Taq1 から予告符号と第1の拡散符号との発信時間差 p および基準基地局11における第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の発信時間差 Tc の経過後よりもマージン ma だけ後を終点とする時間区間をオフライン受信時刻検出部80による検出対象時間区間として設定する。すなわち、オフライン受信時刻検出部80は Taq1 + p - ma ≦ t ≦ Taq1 + p + Tc + ma において、高精度な受信時刻の検出を実行する。ここで、マージン ma は、第1の拡散符号PN1と、この第1の拡散符号PN1、m個の間隔符号、および第2の拡散符号PN2の受信に要する時間と、基準基地局11の時計44と全ての普通基地局12の時計44との時刻のずれや、クロック速度の比などを考慮し、前記第1の拡散符号および第2の拡散符号の両方についてオフライン受信時刻検出部80による高精度な時刻の受信時刻の検出が行うことができるように設定される値である。
【0054】
図3に戻って受信間隔算出部82は、前記オフライン受信時刻検出部80によって検出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信間隔が算出する。すなわち、前記オフライン受信時刻検出部80においては、同期検出により、第1の拡散符号の受信完了時刻と第2の拡散符号の受信完了時刻とが検出されることから、これらの差を算出することにより、前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔が算出される。すなわち、この受信間隔算出部82が受信間隔検出手段に対応する。
【0055】
制御部38はまた、前記無線通信部34、信号処理部36、サーバ通信部40などの作動を制御する。
【0056】
サーバ通信部40は、有線ケーブル52を介して接続された後述する測位サーバ14との通信を必要に応じて行なうものであり、例えば、基地局11、12が移動局10から受信した電波についてオフライン受信時刻検出部80によって検出された受信時刻や、普通基地局12が基準基地局11から受信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との受信間隔や、基準基地局11の第2の拡散符号の発信終了時刻、発信符号生成部72が発信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との発信間隔などの値を測位サーバ14に対し発信したり、サーバーより指定される発信符号生成部72において生成する拡散符号列における第1の拡散符号と第2の拡散符号の間隔、あるいは基地局11、12に対する指令や移動局10に対し無線で行なう制御作動の指令を測位サーバ14から受信するなどの作動を行う。
【0057】
また、時計44は、基地局11、12において電波の発信時刻や受信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0058】
なお、図2および図3に示した移動局10および基地局11、12においては、本発明における制御作動に直接関与しない機能に対応する機能ブロックは省略されている。例えば、移動局10および基地局11、12においては、図示しない電源などが含まれている。この電源は、移動局10、基地局11、12および測位サーバ14のそれぞれに必要な電力を供給するものである。
【0059】
図4は測位サーバ14の機能の概要を示す機能ブロック図である。測位サーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、後述する基地局通信部53、符号数設定部55、クロック速度比算出部54、時計ずれ算出部56、受信時刻補正部58、測位部60などにおける処理を実行するようになっている。
【0060】
測位サーバ14は、ケーブル52を介して各基地局11、12と接続されており、基地局通信部53、符号数設定部55、クロック速度比算出部54、時計ずれ算出部56、受信時刻補正部58、測位部60、測位結果出力部62などを有する。このうち、基地局通信部53は、有線ケーブル52を介して接続された前記基地局11、12のサーバ通信部40との間で必要な通信、例えば測定データの送受信や、基地局11、12や移動局10の作動を制御する指令の送信などを行なう。
【0061】
クロック速度比算出部54は、前記各普通基地局12の受信間隔算出部82によって算出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、前記基準基地局11の発信符号生成部72において生成され、無線通信部34などにより発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、前記普通基地局12のそれぞれが有する時計44と、前記基準基地局11の有する時計44との速度の比であるクロック速度比を算出する。このクロック速度比算出部54がクロック速度比算出手段に相当する。
【0062】
具体的には、このクロック速度比rera_b0biは、基準基地局11が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準としたオフライン受信時刻検出部80による受信時刻であるtim_bi_rvlend_b0bi、前記第1の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準としたオフライン受信時刻検出部80による受信時刻tim_bi_rvfend_b0bi、および前記基準基地局11の発信符号生成部72による前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔Tcを用いて、以下の式(1)により得られる。
rera_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )/ Tc …(1)
なお、この発信間隔Tcは、図5に示すように前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との間に、前記第1の拡散符号、第2の拡散符号とその符号長が同一のm個の間隔符号が発信される場合には、符号周期Tsを用いて、Tc=(m+1)×Tsと表される。
【0063】
時計ずれ算出部56は、基準基地局11の時計44の時刻に対する普通基地局12のそれぞれの時計44の時刻のずれである時計ずれを算出する。この時計ずれは、基準基地局11の時計44の時刻に対する時刻の進みあるいは遅れであり、例えば基準基地局11から発信される電波の発信時刻と、その電波を受信した普通基地局12におけるその電波の受信時刻と、さらに基準基地局11と普通基地局12との既知の距離から算出される前記電波の伝搬時間とに基づいて算出される。この時計ずれ算出部が時計ずれ算出手段に対応する。
【0064】
具体的には例えば、この時計ずれte_aq_b0biは、基準基地局11の無線通信部34が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の送信完了を基準基地局11の時計44で測定した送信完了時刻である時刻tim_b0_trlend_b0と、前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信時刻をオフライン受信時刻検出部80により普通基地局12の時計44を用いて測定した受信完了時刻tim_bi_rvlend_b0biと、予めシステム8により既知である基準基地局11と普通基地局12との距離(例えば30m)に電波の速度c(=2.997×108(m/s))を除することにより算出される伝搬時間tau0_iを用いた以下の式(2)により得られる。
te_aq_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i …(2)
すなわち、前記第2の拡散符号を例として、基準基地局11における発信完了時刻と普通基地局12における受信完了時刻とから算出される見かけの電波の伝搬時間と、実際の基準基地局11と普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とを比較し、これらの値に差があれば、それが基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれである。
【0065】
受信時刻補正部58は、移動局10から発信された電波が各普通基地局12において受信された際に各普通基地局12におけるオンライン受信時刻検出部78によって各普通基地局12の時計44に基づいて検出された受信時刻を、前記クロック速度比算出部54において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44とのクロック速度比、および前記時計ずれ算出部56において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44との時刻ずれに基づいて、前記基準基地局11の時計44での時刻に補正する。この受信時刻補正部58が受信時刻補正手段に対応する。
【0066】
具体的には例えば、受信時刻補正部58は次の手順により受信時刻の補正を行う。まず、移動局10から発信された電波が基準基地局11および普通基地局12において受信された際の、それぞれのオンライン受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻が、基準基地局11においては、tim_b0_rvend_m1b0であり、各普通基地局12i(i=1,2,…)においてはtim_bi_rvend_m1biであったとする。このとき、普通基地局12iのオンライン受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを基準基地局11の時計44に基づいた時刻に換算すると、換算後の前記普通基地局12の受信時刻TOA_m1biは、次式(3)で表される。
TOA_M1bi = tim_bi_rvend_m1bi - ( tim_bi_rvend_m1b0 - tim_b0_rvend_m1b0 ) …(3)
ここで、この式(3)の右辺第1項であるtim_bi_rvend_m1biは移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻tim_b0_rvend_m1b0を普通基地局12の時計44に換算した時刻である。すなわち、右辺の括弧で囲まれた第2項は、移動局10からの電波を基準基地局11が受信した際の基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれを表す項である。
【0067】
また、前記式(3)におけるtim_bi_rvend_m1b0は、前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比rera_b0biを用いて、以下の式(4)で表される。
tim_b1_rvend_m1b0 = tim_bi_aq
+ ( tim_b0_rvend_m1b0 - tim_b0_aq ) × rera_b0bi …(4)
ここで、この式(4)の右辺第1項であるtim_bi_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の普通基地局12の時計44における時刻である。また、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、tim_b0_rvend_m1b0は移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻であり、rera_b0biは前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比である。すなわち、前記式(4)の右辺第2項は、前記基準基地局11において前記時計ずれ算出部56により時刻ずれが算出されてから前記移動局10からの電波を受信するまでの時間を前記基準基地局11の時計44により計測したものに、前記基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44とのクロック速度比を乗ずることにより、その時間を普通基地局12の時計44に対応する時間に換算した値となる。
【0068】
更に、前記式(4)におけるtim_bi_aqは、前記時計ずれ算出部56によって算出される基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれte_aq_b0biを用いて、以下の式(5)で表される。
tim_bi_aq = tim_b0_aq + te_aq_b0bi …(5)
ここで、前述のように、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、前述のように時刻ずれ算出部56は基準基地局11における第2の拡散符号の送信完了時刻(送信時刻)であるので、
tim_b0_aq=tim_b0_trlend_b0 …(6)
である。この式(6)と前記時刻ずれte_aq_b0biを表す式(2)を用いて前記式(5)を変形すると、
tim_bi_aq = tim_b0_trlend_b0 + ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i
= tim_bi_rvlend_b0bi - tau0_i …(7)
となる。以上より、受信時刻補正部58は、普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0069】
受信時刻補正部58は、前述の手順を普通基地局12の数だけ繰り返すことにより、全ての普通基地局12について、そのオフライン受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0070】
なお、本実施例においては、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮していない。これは、現実には前記伝搬時間は数ナノ(10-9)秒程度であり、したがって伝搬中のクロック速度比により発生する誤差は無視できるほど小さく、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮しないとしても差し支えないためである。もちろん、これを考慮することも可能である。
【0071】
ところで、前記オンライン受信時刻検出部78およびオフライン受信時刻検出部80においてマッチドフィルタによる同期検出を行う場合、同期検出の精度(分解能)は受信信号のサンプリング周波数に依存する。すなわちサンプリング周波数が高いほど高い分解能で同期検出を行なうことが可能であり、前記オフライン受信時刻検出部80においては前記オンライン受信時刻検出部78よりも高い周波数においてサンプリングを行なうことにより精度のよい受信時刻の検出を行なっている。一方、普通基地局12において基準基地局11からの拡散符号列の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出部80のサンプリングタイムをfs[Hz]、fcをチップレート[chip/sec]とすると、このときの前記オフライン受信時刻検出部80における同期検出分解能は、fc/fs[chip/sample]である。チップ周期は1/fc[sec/chip]であるので1/fs[sec/sample]=(fc/fs)×(1/fc)が検出可能な時間である。従って、クロック速度比算出部54によって前述の式(1)のように定義されて得られる相対クロック精度rera_b0biは、次式(8)のようにも表される。
rera_b0bi=( Tc ±( 1 / fs ))/ Tc = 1 ±( 1 /( Tc × fs )) …(8)
なお、Tc[sec]は図5に示すように、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差、すなわち符号間隔である。
【0072】
一方、クロック速度比rera_b0biは、相対クロック精度の分解能rp[ppm;part per million](普通基地局12の時計44の、基準基地局11の時計44に対する精度であって、基準基地局11の時計44の時計が100万クロック進む場合の普通基地局12の時計44のクロック数のずれとして算出される値)を用いて次の式(9)のようにも表される。
rera_b0bi=1+rp/106 …(9)
従って、前記式(8)および式(9)より、相対クロック精度の分解能rpは以下のように得られる。
rp/106 = 1/(Tc×fs)
rp=106/(Tc×fs)[ppm] …(10)
この式(10)は、例えばTc=1[msec]、fs=500[MHz]の場合にはrp=2[ppm]まで検出できることを表している。
【0073】
前述のように、前記相対クロック精度の分解能rpは式(10)のように表されることから、Tcが大きくなるほど前記相対クロック精度の分解能rpが小さくなりより正確な測定が可能になることがわかる。具体的なシミュレーション結果を次に示す。本シミュレーションにおいては、普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80においてはサンプリング周波数fsが5[MHz]によりサンプリングが行なわれている。また、送信側である基準基地局11の時計44のクロック精度は100[rpm]、受信側である普通基地局12の時計44のクロック精度は0[ppm]である。したがって送信機が受信機に対して100[ppm]だけ早く時を刻む。
【0074】
まず、符号間隔Tc=符号周期Ts=1.023[msec]である場合についてシミュレーションを行なう。これは例えば符号長が1023の拡散符号がチップ速度fc=1[μsec]で送信される場合において前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2とが連続して発信される場合に対応する。第1の拡散符号の同期検出による相関値がピークを生ずる時刻、すなわち受信時刻は1.0232×10−3[sec]、第2の拡散符号の受信時刻は2.04642×10−3[sec]となる。したがって、クロック誤差がある場合の同期間隔は1.023×10−3[sec](=2.04642×10−3−1.0232×10−3)である。したがってこのときのクロック速度比はrera_b0bi=1.023×10−3/1.023×10−3=1となる。
【0075】
続いて、符号間隔Tcを2倍、すなわちTc=2×Ts=2.046[msec]である場合についてシミュレーションを行なう。これは例えば符号長が1023の拡散符号がチップ速度fc=1[μsec]で送信される場合において前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に符号長が1023の間隔符号PN0が1つ発信される場合に対応する。この場合における第1の拡散符号の受信時刻は1.0232×10−3[sec]、第2の拡散符号の受信時刻は3.0694×10−3[sec]となる。したがって、クロック誤差がある場合の同期間隔は2.0462×10−3[sec](=3.0694×10−3−1.0232×10−3)である。したがってこのときのクロック速度比はrera_b0bi=2.0462×10−3/2.046×10−3=1.0000977となる。これをクロック精度に換算すると、rp=(1.0000977−1)×106=97.7[ppm]となる。このように、クロック速度比の検出において同期間隔を測定する対象である第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の間に発信される間隔符号の数を増やすことなどにより符号間隔Tcを大きくすることで、相対クロック精度の分解能rpが向上し、これによりクロック速度比検出の分解能も向上し、より精度のよいクロック速度比rera_b0biの算出が可能となることが分かる。
【0076】
しかしながら、クロック速度比の検出において同期間隔を測定する対象である第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の間に発信される間隔符号の数を必要以上に増やすと、同期検出に要する時間が長くなり、クロック速度比を得るための時間も長くなる。そのため、前記間隔符号の適当な数を決定することが必要となる。
【0077】
一方、後述する図8のフローチャートにおいて説明するように、前記クロック速度比算出部54によるクロック速度比の算出、時計ずれ算出部56による時計ずれの算出、および受信時刻補正部58による各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻の補正、測位部60による移動局10の測位が一連の作動として行なわれるような場合には、前記クロック速度比算出部54によるクロック速度比の算出、時計ずれ算出部56による時計ずれの算出が行なわれてから、受信時刻補正部58による各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻の補正、測位部60による移動局10の測位が行なわれるまでの期間に応じて基地局間時計ずれ量は大きくなる。この基地局間時計ずれ量は、測位部60による移動局10の位置の測位に直接的に誤差を生ずる。逆に、移動局10の測位に許容される誤差を決定すると、前記基地局間時計ずれ量の値の許容量が決定され、さらにこの基地局間時計ずれ量の許容量を達成するための相対クロック精度の分解能rpも決定される。
【0078】
かかる場合において、符号数設定部55は、前記間隔符号生成部75において生成される間隔符号の数を、(1)時計ずれ算出手段56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、(2)前記クロック速度比算出手段54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定する。この符号数設定部55は、前記基準基地局11の発信符号生成部72とともに送信符号列決定手段に対応する。
【0079】
具体的には、TOA検出時のクロック速度比検出分解能をz[nsec]とした場合、TOA検出時には移動局10の測位のために移動局10が基地局11,12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t[sec]が経過している。したがって、要求される相対クロック精度の分解能rp[ppm]はその定義から、
rp = ( z ×10-9 / t ) / ( 1.0 × 10-6 ) = ( z / t ) × 10-3 …(11)
である。一方、前記拡散符号列において前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との間に発信される間隔符号の数をm個とすると、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との符号間隔はTc=(m+1)×Tsとなるので、相対クロック精度の分解能rpは、前述の式(10)を導出したのと同様にして、
rp=(1/fs)/((m+1)×Ts)×106 …(12)
となる。この式(11)および(12)より、
(z/t)×10−3=(1/fs)/((m+1)×Ts)×106
であるので、前記間隔符号の数mは
m=(t×109)/(fs×Ts×z)−1 …(13)
のように求まる。このように、符号数設定部55は、前記間隔符号生成部75において生成される間隔符号の数mを、(1)時計ずれ算出手段56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度であるサンプリングレートfs、の少なくとも1つに基づいて決定している。
【0080】
例えば、測位の要求仕様として、誤差を30[cm]以内であることを満たすためにはTOA検出時のクロック速度比検出分解能zを1[nsec]程度とする必要がある。基地局間時間ずれ検出からTOA検出までに要する時間を0.1[sec]とした場合の間隔符号の数mは、
m=(0.1×109)/(500×106×0.001023×1)−1=199
となる。これは基準基地局11が発信する拡散符号列として、第1の拡散符号PN1に続き、199個の間隔符号、そして第2の拡散符号PN2の順で発信されるようにこれらを含むものであればよいことを意味している。また、このときのクロック速度比rera_b0biの検出に必要な時間は0.205623[sec](=0.001023×201)となる。
【0081】
図4に戻って、移動局の位置の算出、すなわち測位を行う測位部60は、前記受信時刻補正部58により基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正された各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、前記基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、既知の各基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の測位を行う。
【0082】
このとき、移動局10から発信される電波には、前述のように、発信符号生成部29によって生成された拡散符号列が含まれる。この拡散符号列は、予告符号生成部33によって生成された予告符号と、予告符号の発信後所定時刻経過後に発信される拡散符号生成部32により生成される拡散符号とを含む。そのため、各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記クロック速度比算出部54などにおいて用いる基準基地局11からの電波の受信時刻を算出したのと同様の手順により、まず、オンライン受信時刻検出部78によって移動局10から発信される前記予告符号を受信するとともに、オフライン受信時刻検出部80による検出対象時間区間を決定し、この区間においてオフライン受信時刻検出部80により移動局10から発信される前記拡散符号を受信することにより、精度よく移動局からの電波の受信時刻を検出することが可能となる。
【0083】
また、このようにして検出される各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記受信時刻補正部58によって基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正されているので、各基地局11、12の時計44の時刻が実際には同期させられていなくても、前記補正後の受信時刻を用いることにより、あたかも各基地局11、12の時計44が基準基地局11の時計44に同期されているかのように扱うことができる。なお、測位部60が測位手段に対応する。
【0084】
例えば、図7において、時刻t0において移動局10から電波が発信され、3つの基地局である基準基地局11、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bのオフライン受信時刻検出部80によりそれぞれ、時刻tim_b0_rvend_m1b0、tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2において移動局からの電波が受信されたとする。これらのうち普通基地局12においてそれら普通基地局12の時計44によって検出された受信時刻は、受信時刻補正部58により、基準基地局11の時計44の時刻を基準とする時刻に補正されている。すなわち、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bにおける移動局10からの電波の受信時刻tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2は、それぞれ、TOA_m1b1、TOA_M1b2に補正されている。なお、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻は受信時刻補正部58による補正がされないが、記号の統一のために、以下、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻をTOA_m1b0と記す。すなわち、TOA_m1b0 = tim_b0_rvend_m1b0である。
【0085】
このとき、実際の電波の伝搬時間は、各基地局11、12によって測定される受信時刻と移動局10の時計31によって測定される発信時刻との差に、前記基地局11、12の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれを考慮したものとなる。なお、前述のように、本発明においては、各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻は、基準基地局11の時計44の時刻に対応する受信時刻に補正されていることから、この補正後の受信時刻を用いることにより、各基地局11、12の時計44は基準基地局11の時計44と同期しているとみなすことができる。従って、前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれをΔtとすると、移動局10から基準基地局11への電波の伝搬時間は(TOA_m1b0−t0+Δt)、移動局10から第1普通基地局12Aへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b1−t0+Δt)、移動局10から第2普通基地局12Bへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b2−t0+Δt)となる。前述のように、図7において各基地局11、12の位置は既知であって、その位置を示す座標は、基準基地局11は(x0,y0)、第1普通基地局12Aは(x1,y1)、第2普通基地局12Bは(x2,y2)であり、測位の対象である移動局10の位置を示す座標を(x,y)とすると、電波の速度をc(m/s)を用いて、
(x−x0)2+(y−y0)2=(c×(TOA_m1b0−t0)+s)2,
(x−x1)2+(y−y1)2=(c×(TOA_m1b1−t0)+s)2,
(x−x2)2+(y−y2)2=(c×(TOA_m1b3−t0)+s)2 …(14)
となる。ただしs=Δt×cである。また、図7におけるr1、r2、r3はそれぞれ、r0=c×(TOA_m1b0−t0)、r1=c×(TOA_m1b1−t0)、r2=c×(TOA_m1b2−t0)を表している。ここで、式(14)の第2式および第3式のそれぞれの両辺の平方根をとり、更にその両辺から、第1式の両辺の平方根をとったものを引いて導出される式、
【数1】
を例えばニュートンラフソン法などにより解くことで、移動局10の位置(x,y)が算出される。なお、前記式(14)が式(15)のように変形されると、移動局10による電波の発信時刻t0および移動局10の時計31と基準基地局11の時計44の時刻ずれΔtに伴う距離sは式(15)から消去され、解の算出にあたりこれらの値を得る必要がない、いわゆるTDOA(Time Difference of Arrival)方式による測位となる。なお、図7においては、1つの基準基地局11および2つの普通基地局である3つの基地局11、12からなる場合について説明したが、4以上の基地局11、12が移動局10からの電波を受信した場合も同様であるので、説明を省略する。また3次元測位の場合においても未知数が一つ増えるだけであるので説明を省略する。
【0086】
図4に戻って、制御部59は、基地局通信部53、測位部60などの作動を制御するものである。また測位結果出力部62は、測位部60によって算出された移動局10の位置についての情報などを所定の方法、例えば図示しない出力装置として設けられたディスプレイ装置に表示するなどによって出力する。
【0087】
図8は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の概要を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、所定の間隔で基準基地局11から発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記各普通基地局12において受信される際の受信間隔が算出される受信間隔算出ルーチンが実行される。
【0088】
図9は、この受信間隔算出ルーチンの一例を説明するフローチャートである。まず測位サーバ14の符号数設定部55に対応するSB1においては、(1)時計ずれ算出部56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、(2)前記クロック速度比算出部54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて、例えば前記式(13)により後述するSB7において発信される拡散符号列における間隔符号の数が決定される。
【0089】
続いてSB2においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、基準基地局11から普通基地局12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSB3においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSB4以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSB2の探索が続けられる。
【0090】
SB4においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、基準基地局11から発信される拡散符号列を受信する命令がされる。続くSB5においては、SB4の命令を受けた各普通基地局12から、前記拡散符号列の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB6以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SB4における受信命令の送信が再度行われる。
【0091】
SB6においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、前記SB2で探索され発見された空きチャンネルを使用して前記拡散符号列を無線により送信する命令が送信される。そして、基準基地局11の発信符号生成部72、信号処理部36、無線通信部34などに対応するSB7においては、SB6の命令を受信した基準基地局11によって、前記予告符号PN3および第1の拡散符号PN1が所定の間隔pで、そして、第1の拡散符号PN1に続いてSB1で決定された個数の間隔符号、さらに第2の拡散符号PN2が順次発信されるように生成された拡散符号列が無線により発信される。
【0092】
普通基地局12の無線通信部34、信号処理部36、オンライン受信時刻検出部78などに対応するSB8においては、SB7において基準基地局11から発信された拡散符号列を受信したか否かが判断される。そして、全ての普通基地局12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB9が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SB6乃至SB8がくり返し実行され、全ての普通基地局12が基準基地局11から発信される拡散符号列を受信されるまで反復される。
【0093】
オフライン受信時刻検出部80、受信間隔算出部82などに対応するSB9においては、前記SB7において基準基地局11から発信され、SB8において受信された電波に含まれる前記第1の拡散符号および前記第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻が検出されるとともに、その受信間隔が算出される。このとき、受信時刻の検出においては、例えば受信波がいったん図示しない記憶装置などに記憶され、その記憶装置から適宜読み出された受信波をリアルタイムで同期検出を行う場合よりも小さい値に設定された遅延時間ごとに遅延させる遅延回路とマッチドフィルタなどを用いてレプリカ信号との相関値が算出され、相関値のピークを検出した受信完了時刻を受信時刻とするなどの方法により行われる。なお、本ステップは例えば、SB7において予告符号の受信を検出した時刻 Taq1 から所定時間後の予め算出された所定時間間隔であるTaq1 + p - ma ≦ t ≦ Taq1 + p + Tc + ma において実行される。このようにして算出された前記受信間隔が測位サーバ14に送信され、本ルーチンは終了する。
【0094】
図8に戻って、クロック速度比算出部54に対応するSA2においては、SA1において算出された各普通基地局12における前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との受信間隔( tim_bi_rvend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )と、SB6において基準基地局11から発信された前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との発信間隔Tcとに基づいて、基準基地局11の時計44と各普通基地局12のそれぞれの時計44とのクロック速度比rera_b0biが算出される。
【0095】
時計ずれ算出部56に対応するSA3においては、例えば、SA1において各普通基地局12における前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記基準基地局11による第2の拡散符号の発信時刻tim_bi_rvfend_b0biと、前記各普通基地局12における第2の拡散符号の受信時刻tim_bi_rvend_b0biと、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間tau0_iとに基づいて、前記基準基地局11の時計44の時刻と前記各普通基地局12の時計44の時刻との時刻ずれte_aq_b0biがそれぞれの普通基地局12について算出される。
【0096】
受信時刻補正部58に対応するSA4においては、前記各普通基地局12において受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記基準基地局11の時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SA2において算出されるクロック速度比、SA3において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0097】
測位部60に対応するSA5においては、移動局10の位置の算出を行うための測位ルーチンが実行される。
【0098】
図10は、この測位ルーチンの一例を説明する図である。まずSC1においては、図9の受信間隔算出ルーチンにおけるSB1乃至SB2と同様に、測位サーバ14から基準基地局11に対し、移動局10から各基地局11、12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSC2においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSC3以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSC1の探索が続けられる。
【0099】
SC3においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、移動局10から発信される拡散符号を受信する命令がされる。続くSC4においては、SC3の命令を受けた各基地局11、12から、前記拡散符号の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての基地局11、12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC5以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SC3における受信命令の送信が再度行われる。
【0100】
SC5においては、測位サーバ14から移動局10に対し、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が、例えば基準基地局11を介して送信される。すなわち、測位サーバ14からの命令を受けた基準基地局11により、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が無線により発信される。そして、移動局10の信号処理部28、無線通信部26、制御部30などに対応するSC6においては、SC5の命令を受信した移動局10によって、移動局10の測位のための拡散符号が発信される。このとき発信される拡散符号は、予め受信する基地局11、12においてレプリカ符号が準備される既知のものであれば何れの拡散符号でもよいが、例えば前述の予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、更に、これらの拡散符号の間に送信される拡散符号PN0の何れとも異なる拡散符号であれば、これを受信した基地局11、12において、移動局10から発信された拡散符号と基準基地局11から発信された予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2のそれぞれと区別をすることが可能である。
【0101】
基地局11、12の無線通信部34、信号処理部36、オンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80などに対応するSC7においては、SC6において移動局10から発信された移動局10の測位のための拡散符号を受信したか否かが判断される。そして、全ての基地局11、12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC8が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SC5乃至SC7がくり返し実行され、全ての基地局11、12が移動局10から発信される拡散符号を受信されるまで反復される。
【0102】
オンライン同期検出部78、オフライン受信時刻検出部80などに対応するSC8においては、前記SC6において移動局10から発信され、SC7において基地局11、12によって受信された電波に含まれる移動局10の測位のための拡散符号の受信時刻が同期検出により検出される。そして、算出された受信時刻が測位サーバ14に送信される。
【0103】
受信時刻補正部58に対応するSC9においては、前記SC8において検出され、測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、普通基地局12における受信時刻が、SA4において算出された補正のための式に従って基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正される。
【0104】
測位部60に対応するSC10においては、前記SC8において検出され測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、基準基地局11における受信時刻と、SC9において基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正された普通基地局12における受信時刻と、基準基地局11および普通基地局12の位置についての情報とにもとづいて、移動局10の測位が行われる。
【0105】
前述の実施例によれば、前記送信符号列決定手段に対応する発信符号生成部72および符号数設定部55によってその内容が決定された第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2を含む拡散符号列を基準基地局11が1回発信し、前記受信間隔検出手段としてのオンライン受信時刻検出部78、オフライン受信時刻検出部80および受信間隔算出部82により、2以上の普通基地局12がそれぞれ受信した拡散符号列に含まれる第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段に対応するクロック速度比算出部54により、受信間隔算出部82によってそれぞれ検出された各普通基地局12における前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2の受信間隔と、前記基準基地局11が前記第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局12のそれぞれと前記基準基地局11とのクロック速度の比rera_b0biがそれぞれ算出され、前記時計ずれ算出手段に対応する時計ずれ算出部56により、前記基準基地局11による前記拡散符号列に含まれる第1の拡散符号PN1または第2の拡散符号PN2の発信時刻と前記普通基地局12のそれぞれによる前記拡散符号列に含まれる第1の拡散符号PN1または第2の拡散符号PN2の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局11の時計44に対する前記普通基地局12のそれぞれの時計44のずれが算出され、前記受信時刻補正手段に対応する受信時刻補正部58により、前記普通基地局12のそれぞれにより、該普通基地局12のそれぞれの有する時計44に基づいて算出された前記移動局10からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比rera_b0biと前記基準基地局11の時計44に対する前記普通基地局12のそれぞれの時計44の時刻のずれとに基づいて前記基準基地局11の有する時計44に基づいた時刻に補正され、前記測位手段に対応する測位部60により、該受信時刻補正部58により補正された普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、前記基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、前記普通基地局11および基地局11、12の位置情報とに基づいて前記移動局10の位置が推定されるので、前記符号数設定部55によってその内容が決定された前記拡散符号列に対応したクロック速度比が得られ、得られたクロック速度比によってより精度のよい移動局10の測位が可能となる。
【0106】
また、前述の実施例によれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号である第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2と、この第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の間に1つ以上の間隔符号を含むものであるので、前記クロック速度比算出部54によってクロック速度比の算出に用いる第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の符号の発信間隔を前記間隔符号の数によって設定することができる。
【0107】
また、前述の実施例によれば、前記送信符号列決定手段に対応する発信符号生成部72および符号数設定部55は、前記間隔符号の数を、(1)時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度fs、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない符号数の符号列が決定される。
【0108】
また、前述の実施例によれば、前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号である第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2よりも所定時間だけ前に発信される予告符号PN3を含み、前記受信間隔算出部82は、該予告符号PN3を受信した場合にはオンライン受信時刻検出部78からオフライン受信時刻検出部80に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうので、前記受信間隔算出手段は、前記予告符号の受信に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の最初の拡散符号についてオフライン受信時刻検出部80による詳細な受信時刻の検出を行なうことができる。
【0109】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0110】
前述の実施例1においては、受信間隔算出部82は、前記第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を、前記オンライン受信時刻検出部78よりも精度のよい検出が可能な前記オフライン受信時刻検出部80により行なうため、前記予告符号PN3を前記オンライン受信時刻検出部78により検出すると、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との発信時間差p、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差Tc、およびマージンmaの値に基づいて、具体的には Taq1 + p - ma ≦ t ≦ Taq1 + p + Tc + ma からなる時間区間において、オフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出を実行した。
【0111】
本実施例は、前記時間区間に基づく受信間隔算出部82によるオフライン受信時刻検出部80による詳細な受信時刻の検出の実行に代えて行なわれる、受信時刻算出部82によるオフライン受信時刻検出部80による詳細な受信時刻の検出の実行についての別の制御作動に関するものである。なお、本実施例においても、移動局測位システム8としては前述の実施例1の場合と同様に図1に示す構成を有し、また、移動局10、基地局11および12、測位サーバ14の構成も実施例1の場合と同様にそれぞれ図2乃至図4の機能ブロック図によって表される。また、後述する受信間隔算出部82によるオフライン受信時刻算出部80の実行に関する制御作動以外については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0112】
前述のように、基準基地局11から発信される拡散符号列は図5に示すようにされており、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間には、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3の何れでもない拡散符号PN0が発信されており、その個数は予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間隔がp(sec)となるように決定されている。この予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に発信される符号を予告間隔符号とし、その個数をn個とする。また、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間には、前記符号数設定部55によって設定された個数の間隔符号が、例えばm個送信されることとなっている。
【0113】
かかる場合において、受信間隔算出部82は、オフライン受信時刻検出部80により受信時刻を検出しようとする拡散符号である第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の前に送信される予告間隔符号および間隔符号を受信した数に基づいて、オフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出を実行する。すなわち、前記予告間隔符号および間隔符号の数が既知であることから、既に受信した前記予告間隔符号および間隔符号の数に基づいてオフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出の実行を開始することにより、オフライン受信時刻検出部80により受信時刻を検出しようとする拡散符号である第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2を受信する場合にのみオフライン受信時刻検出部80により受信時刻を検出を実行することができ、演算回数の増加に伴って前記オンライン受信時刻検出部78よりも消費電力の大きいオフライン受信時刻検出部80の実行時間を限定することにより、普通基地局12の消費電力を低減することができる。
【0114】
図11は普通基地局12において受信する拡散符号列と前記オンライン受信時刻検出部78による同期検出、および受信間隔算出部82によって実行されるオフライン受信時刻検出部80による同期検出の様子を同一の時間軸において表したものであり、図11においては右から左に向かって時間軸が設けられている。すなわち、左へいくほど時間が経過している。
【0115】
図11に示すように、オンライン受信時刻検出部78は常に同期検出を実行している。予告符号PN3のレプリカ符号との同期検出により予告符号PN3の受信を検出すると、予告符号PN3に続く予告間隔符号の同期検出を行なう。そして、検出した予告間隔符号の数を計測(カウント)する。図11には、オンライン受信時刻検出部78による同期検出の結果として、得られる相関値の時間変化が表されている。前述のように相関値がピークとなった時点が拡散符号の受信時刻であり、オンライン受信時刻検出部78により検出された予告間隔符号の数が併記されている。一方、受信間隔算出部82は、オンライン受信時刻検出部78により同期が検出された、すなわち受信された予告間隔符号の個数が、その全体の数であるn個よりも1つ少ない(n−1)個となった場合に、オフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の同期検出を開始する。すなわち、前述のようにオフライン受信時刻検出部80による詳細な同期検出を行なうため、受信した拡散符号を図示しない記憶装置への記憶を開始し、記憶された拡散符号に対する高精度な同期検出を開始する。そして、オフライン受信時刻検出部80による同期検出は、第1の拡散符号PN1の受信時刻を検出するまで実行される。図11においては、オフライン受信時刻検出部80による同期検出の結果として、オフライン受信時刻検出部80による同期検出の結果として、得られる相関値の時間変化が表されると共に、オフライン受信時刻検出部80による同期検出の非実行時は破線で表されている。
【0116】
一方、引き続き実行されているオンライン受信時刻検出部78は、第1の拡散符号PN1のレプリカ符号との同期検出により第1の拡散符号PN1の受信を検出すると、第1の拡散符号PN1に続く間隔符号の同期検出を行なう。そして、検出した予告間隔符号の数を計測する。前述の予告間隔符号の場合と同様に、図11には、オンライン受信時刻検出部78による同期検出の結果として、得られる相関値の時間変化が表されており、また、オンライン受信時刻検出部78により検出された間隔符号の数が併記されている。一方、受信間隔算出部82は、オンライン受信時刻検出部78により同期が検出された、すなわち受信された間隔符号の個数が、その全体の数であるm個よりも1つ少ない(m−1)個となった場合に、オフライン受信時刻検出部80による第2の拡散符号PN2の同期検出を開始する。前述の第1の拡散符号PN1の同期検出の場合と同様に、オフライン受信時刻検出部80による詳細な同期検出を行なうため、受信した拡散符号を図示しない記憶装置への記憶を開始し、記憶された拡散符号に対する高精度な同期検出を開始する。そして、オフライン受信時刻検出部80による同期検出は、第2の拡散符号PN2の受信時刻を検出するまで実行される。
【0117】
図12は本実施例における各普通基地局12の拡散符号列の受信における制御作動を説明するルーチンであり、図9の受信間隔算出ルーチンにおけるステップSB8において実施例1での制御作動に代えて実行されるものである。
【0118】
ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1乃至SD3はオンライン受信時刻検出部78に対応するステップである。まず、SD1においては、受信波を受信するのに伴って行なう同期検出であるオンライン受信時刻検出処理の実行が開始させられる。そして、SD2においては、SD1において開始させられたオンライン受信時刻検出処理により、拡散符号列の一部である予告符号PN3の受信が検出される。
【0119】
続くSD3においては、拡散符号列において予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に受信される予告間隔符号の受信が検出され、受信された予告間隔符号の数が計測(カウント)される。そして、受信間隔算出部82に対応するSD4においては、SD3において計測された受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(n−1)個となったか否かが判断される。受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(n−1)個となった場合には本ステップの判断が肯定され、SD5以降が実行される。一方、受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(n−1)個に未だ達していない場合には、本ステップの判断が否定され、SD3がくり返し実行され、予告間隔符号の受信が行なわれる。
【0120】
オフライン受信時刻検出部80に対応するSD5においては、第1の拡散符号PN1の受信時刻を高精度で行なうため、受信波に含まれる拡散符号が記憶装置にいったん記憶され、その後記憶された拡散符号に対し、オンライン受信時刻検出処理よりも詳細な(高頻度による)同期検出であるオフライン受信時刻検出処理が実行される。このSD5におけるオフライン受信時刻検出処理は第1の拡散符号PN1の受信時刻を検出するまで実行され、その後終了させられる。
【0121】
SD6およびSD7はオンライン受信時刻検出部78に対応するステップである。このうち、SD6においては、第1の拡散符号PN1を受信したことに伴って、SD3において予告間隔符号を計測していたカウンタが0とされる。そして、続くSD7においては、SD3において予告間隔符号に対して行なったのと同様にして、拡散符号列において第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に受信される間隔符号の受信が検出され、受信された間隔符号の数が計測(カウント)される。そして、受信間隔算出部82に対応するSD4においては、SD8と同様に、SD7において計測された受信された間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(m−1)個となったか否かが判断される。受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(m−1)個となった場合には本ステップの判断が肯定され、SD9以降が実行される。一方、受信された予告間隔符号の数が、全体の数よりも1つ少ない(m−1)個に未だ達していない場合には、本ステップの判断が否定され、SD7がくり返し実行され、予告間隔符号の受信が行なわれる。
【0122】
オフライン受信時刻検出部80に対応するSD9においては、SD5において第1の拡散符号PN1について行なったのと同様に、第2の拡散符号PN2の受信時刻を高精度で行なうため、受信波に含まれる拡散符号が記憶装置にいったん記憶され、その後記憶された拡散符号に対し、オンライン受信時刻検出処理よりも詳細な同期検出であるオフライン受信時刻検出処理が実行される。このSD9におけるオフライン受信時刻検出処理は第2の拡散符号PN2の受信時刻を検出するまで実行され、その後終了させられる。そして、SD10においては、第2の拡散符号PN2を受信したことに伴って、SD7において間隔符号を計測していたカウンタが0とされて本ルーチンが終了させられる。このようにして、各普通基地局12における第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の受信時刻が検出される。
【0123】
また、前述の実施例によれば、前記受信間隔算出部82は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段に対応するオンライン受信時刻検出部78と前記オフライン受信時刻検出手段に対応するオフライン受信時刻検出部80とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号である第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2の受信時刻を、前記拡散符号を受信しながら受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を行なう前記オンライン受信時刻検出部78よりも詳細な精度により電波の受信時刻を検出する前記オフライン受信時刻検出部80によって検出するので、前記第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の受信時刻を詳細な精度により検出することができる。
【実施例3】
【0124】
前述の実施例1においては、前記発信符号生成部72が生成する拡散符号列においては、例えば図5に示すように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されているように拡散符号列が生成された。特に、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信間隔Tcは、符号数設定部55によって設定される数だけ間隔符号生成部75によって生成される間隔符号によって設定された。
【0125】
本実施例は、前記発信符号生成部72による図5に示すような拡散符号列の生成に代えて行なわれる、発信符号生成部72による前記拡散符号列の生成についての別の制御作動に関するものである。なお、本実施例においても、測位システム8としては前述の実施例1の場合と同様に図1に示す構成を有し、また、移動局10、基地局11および12、測位サーバ14の構成も実施例1の場合と同様にそれぞれ図2乃至図4の機能ブロック図によって表される。また、後述する発信符号生成部72による拡散符号列の生成に関する制御作動以外については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0126】
前述の実施例1においては、前記符号数設定部55は、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間における間隔符号の数mは、(1)時計ずれ算出手段56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局10の測位のために移動局10が基地局11、12へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段54によって算出されるクロック速度の比rera_b0biの分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度であるサンプリングレートfs、に基づいて、前記式(13)
m=(t×109)/(fs×Ts×z)−1 …(13)
を用いて算出した。しかしながら、この間隔符号の数mは、第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2との発信間隔Tcを間隔符号を用いて表現する場合におけるパラメータに過ぎず、本来的には、基地局間時計ずれを検出してからt[sec]後の基地局間時計ずれ量をz[nsec]とした場合に要求される相対クロック精度の分解能rpを表す式(12)を満たすために必要となる第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2との発信間隔Tc(=(m+1)×Ts)を算出したことに意味がある。
【0127】
すなわち、第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2との発信間隔Tc(=(m+1)×Ts)とすることができれば、その発信間隔の間に前記間隔符号が存在する必要はない。そこで、本実施例においては、間隔符号生成部75は、符号数設定部55において設定された間隔符号を発信するのに相当する時間を算出する。そして、発信符号生成部72は、第1の拡散符号PN1を発信後、間隔符号設定部75において算出された間隔符号を発信するのに相当する時間だけ発信を行なわず、その間隔符号を発信するのに相当する時間の経過後第2の拡散符号PN2を発信するような拡散符号列を生成する。例えば、前記間隔符号を発信するのに相当する時間は符号を全て0とするなどの方法によって拡散符号列を生成する。
【0128】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72は、予告符号生成部76によって生成される予告符号PN3を第1の拡散符号PN1よりも測位システム8により予め定められた所定時間だけ先に発信されるように拡散符号列を生成した。そして、この所定時間の間は例えば図5に示すように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3の何れでもない拡散符号PN0を複数個設けることによって設定された。一方、本実施例においては、発信符号生成部72は、前述の間隔符号の場合と同様に、予告符号PN3の発信後、前記所定時間の間は発信を行なわず、前記所定時間の経過後に第1の拡散符号PN1が発信するような拡散符号列を生成する。例えば、前記間隔符号を発信するのに相当する時間は符号を全て0とするなどの方法によって拡散符号列を生成する。
【0129】
図13は本実施例において基準基地局11における発信符号生成部72によって生成される拡散符号列の一例を示した図である。図13においては、時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。すなわち、左に行くほど時刻が後において発生される拡散符号を表している。図13において、前記予告符号PN3と前記第1の拡散符号PN1との発信時間差p、および、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との発信時間差Tcに相当する時間は、拡散符号が発信されないようになっている。
【0130】
前述の実施例3によれば、前記拡散符号列は、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号と、該前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔Tsとを含むので、前記クロック速度比算出部54によってクロック速度比rera_b0biの算出に用いられる前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の間隔を前記所定の間隔Tsを変更することによって設定することができる。また、前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号の発信時間差Tsの間は基準基地局は信号を発信することがなく、省電力化を行なうことができる。
【0131】
また、前述の実施例3によれば、前記発信符号生成部72は、前記所定の間隔を、(1)時計ずれ算出部56における基準基地局11が普通基地局12へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間t、(2)前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能z、(3)前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度fs、の少なくとも1つに基づいて決定するので、所望の要件を満たしつつ必要以上に長くなることがない長さの符号列が決定される。
【0132】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0133】
例えば、前述の実施例においては、基準基地局11と普通基地局12はともに図3に示すような共通する機能構成を有するものとされた。このようにすれば基地局は基準基地局11と普通基地局12の機能を切り換えたり、あるいは前述の実施例2に示すように、基準基地局11と普通基地局12の機能を同時に有したりすることができる。しかしながら、逆に言えばこのような態様に限られず、基準基地局11としてのみ作動する基地局においては、普通基地局12として作動する際に必要な受信間隔算出部82を有する必要がなく、また普通基地局12としてのみ作動する基地局においては、基準基地局11として作動する際に必要な発信符号生成部72を有する必要がない。このようにすれば、基準基地局11および普通基地局12はそれぞれ簡易な構成とすることができる。
【0134】
また、前述の実施例においては、普通基地局12における受信間隔算出部82はオフライン受信時刻検出部80によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出したが、これに限られず、例えば、オンライン受信時刻検出部78によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出してもよい。すなわち、オフライン受信時刻検出部80がなくても一定の効果が生ずる。
【0135】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72が生成する拡散符号列において、予告符号と第1の拡散符号との間隔は予め定められた所定時間とされたが、これに限られない。例えば、予告符号と第1の拡散符号との間隔を前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部74によって生成される前記第1の拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差としてその都度測定された値を用いることもできる。このとき、予告符号生成部76は、例えば前記制御部38を介して後述する普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80にこの発信時刻の差についての情報を伝達してもよい。この場合所定時間情報は測位サーバ14を介して普通基地局12へ送信される。
【0136】
また、前述の実施例においては、予告符号生成部76が生成する予告符号PN3と、拡散符号生成部74が生成する第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2のそれぞれは同一の拡散符号であるとされたが、これに限られない。すなわち、予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2はそれぞれ異なった拡散符号でもよく、この場合、受信する普通基地局12においてはそれぞれの異なる拡散符号と同一のそれぞれのレプリカ符号を用いて同期検出処理を行なう必要がある一方、受信側において予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2を取り違えることがない。なお、移動局10の発信符号生成部29において生成される拡散符号列についても同様であり、予告符号生成部33が生成する予告符号と拡散符号生成部32が生成する測位のための受信時刻検出のための拡散符号とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0137】
また、前述の実施例においては、測位部60は各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻の時間差を用いて移動局10の測位を行ったが(TDOA方式)、これに限られない。例えば、測位の前に少なくとも前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻の同期を行うことができれば、電波の発信時刻と受信時刻から算出される電波の伝搬時間に基づいて移動局10の測位を行うことができる(TOA方式)。
【0138】
また、前述の実施例においては、図9のステップSB4およびSB7において、全ての普通基地局からの応答があったか否かを判断したが、これに限られず、例えば移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局からの応答が合った場合にはこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。また、図10のステップSC4およびSC7においても同様であり、基準基地局11と移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局12からの応答が合った場合にこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。
【0139】
また、前述の実施例においては、図10のステップSC5において、基準基地局11から移動局10に対し測位のための電波の発信命令が行われたが、これに限られない。すなわち、移動局10に対して無線通信可能ないずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われてもよく、測位サーバ14によっていずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われるかが定められればよい。
【0140】
また、前述の実施例においては、各基地局11、12と測位サーバ14とは有線ケーブル52により接続され通信可能とされていたが、このような態様にかぎられず、各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能な状態とされていれば、その手段は限定されない。例えば、赤外線や、超音波、電波などにより各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能にされてもよく、この場合、有線ケーブルで接続される必要がない。
【0141】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72が生成する拡散符号列は、その拡散符号列を受信する普通基地局12のオフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号として第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の2つを含むものとされたが、これに限られず、前記オフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号として3以上の拡散符号を送信するようにすることもできる。この場合、例えば、発信符号生成部72は、前記オフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号を予め定められた所定の間隔で連続して発信するような拡散符号列を生成し、測位サーバ14や普通基地局12において何れの拡散符号をオフライン受信時刻検出部80の検出対象とするかを決定するようにしてもよい。
【0142】
また、前述の実施例2においては、受信間隔算出部82は、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではn個)予告間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された予告間隔符号の数に基づいて(図12のSD2〜4)オフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の受信時刻の検出を開始する(図12のSD5)とともに、同様に、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではm個)間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された間隔符号の数に基づいて(図12のSD7〜8)オフライン受信時刻検出部80による第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を開始する(図12のSD9)ようにしたが、このような態様に限られない。すなわち、予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではn個)予告間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された予告間隔符号の数に基づいて(図12のSD2〜4)オフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の受信時刻の検出を開始する(図12のSD5)した後は、その後第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を完了するまでオフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行なってもよい。また、予告符号PN3を受信した後、前記予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との間の所定の時間間隔pに基づいてオフライン受信時刻検出部80による第1の拡散符号PN1の受信時刻の検出を開始するとともに、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との間に位置する所定の数(例えば図5の例ではm個)間隔符号の受信時刻の検出をおこない、検出された間隔符号の数に基づいて(図12のSD7〜8)オフライン受信時刻検出部80による第2の拡散符号PN2の受信時刻の検出を開始する(図12のSD9)。すなわち、実施例2において、受信間隔算出部82によって開始されるオフライン受信時刻検出部80による受信時刻の検出は、第1の拡散符号PN1あるいは第2の拡散符号PN2のいずれか一方の検出にのみ適用することも可能である。
【0143】
前述のように、移動局10の発信符号生成部29が測位のために基地局11、12に対し発信する拡散符号列も、予告符号とオフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号、およびその間における所定の数の予告間隔符号とを含む拡散符号列とすることが可能である。この場合には、前述の実施例2における受信間隔算出部82によるオフライン受信時刻検出部80による検出の開始方法を用いることができる。すなわち、移動局10から発信される拡散符号列を受信する基地局11、12においては、前記拡散符号列のうち、予告符号をオンライン受信時刻検出部78において受信時刻の検出をした後、予告符号に続いて受信される所定の個数の予告間隔符号をオンライン受信時刻検出部78において受信時刻の検出を行なうと共に、検出した予告間隔符号の個数を計測する。そして、例えば、予告間隔符号の総数よりも1だけ少ない数だけ予告間隔符号を検出した場合には、オフライン受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を開始し、その後に受信する測位のための拡散符号の受信時刻をオフライン受信時刻検出部80により検出する。このようにすれば、測位のために用いられる拡散符号の受信時刻を正確に検出することができるので、移動局10の測位を正確に行なうことができるとともに、計算量の増加に伴って消費電力が大きいオフライン受信時刻検出部80の実行を前記測位のために用いられる拡散符号の受信の前後においてのみに限定できることから、基地局11、12の省電力化を図ることができる。
【0144】
また、前述のように、移動局10の発信符号生成部29が測位のために基地局11、12に対し発信する拡散符号も、予告符号とオフライン受信時刻検出部80の検出対象となる拡散符号、およびその間における所定の数の予告間隔符号とを含む拡散符号列とすることが可能であるとされたが、これに限られず、前記所定の数の予告間隔符号の発信に代えて、その所定の数の予告間隔符号の発信に要する時間に相当する時間だけ、何も発信しないような拡散符号列とすることができる。このようにすれば、前記所定の数の予告間隔符号の発信に要する時間に相当する時間においては移動局10は電波を発信しないことから移動局10の省電力化を図ることができる。
【0145】
なお、前述の実施例においては、移動局10が2次元平面を移動する場合の測位の例について示したが、これに限られず、移動局10が3次元空間を移動する場合も同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の移動局測位システム8の構成の概要の一例を説明する図である。
【図2】本発明の移動局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図3】本発明の基地局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図4】本発明の測位サーバの有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図5】基準基地局が発信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図6】普通基地局が受信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図7】測位部による測位の原理を説明する図である。
【図8】本発明の移動局測位システムによる測位における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートにおいて実行される受信間隔算出ルーチンを説明するフローチャートである。
【図10】図8のフローチャートにおいて実行される測位ルーチンを説明するフローチャートである。
【図11】本発明の別の実施例における基準基地局が発信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図であって、図5に対応する図である。
【図12】本発明の別の実施例における各普通基地局の拡散符号列の受信における制御作動を説明するルーチンであり、図9の受信間隔算出ルーチンにおけるステップSB8に代えて実行されるものである。
【図13】本発明の別の実施例における普通基地局が受信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図であって、図6に対応する図である。
【符号の説明】
【0147】
8:測位システム
11:基準基地局
12:普通基地局
14:測位サーバ
54:クロック速度比算出部
55:符号数設定部
56:時計ずれ算出部
58:受信時刻補正部
60:測位部
72:発信符号生成部
75:間隔符号生成部
80:オンライン受信時刻検出部
82:受信間隔算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、
前記複数の基地局のうち、少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、
前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、
前記基準基地局が発信する前記拡散符号列の内容を決定する送信符号列決定手段と、
前記普通基地局のそれぞれが受信した前記拡散符号列に含まれる少なくとも2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、
前記受信間隔算出手段によって算出された前記少なくとも2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記少なくとも2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、
前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、
該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つ以上の拡散符号の間に1つ以上の間隔符号を含むことを特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号の受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、
前記受信間隔算出手段は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段と前記オフライン受信時刻検出手段とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出すること、
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記送信符号列決定手段は、前記間隔符号の数を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔を含むことを特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記送信符号列決定手段は、前記所定の間隔を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする請求項5に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号よりも前に発信される予告符号を含み、
前記受信間隔算出手段は、該予告符号を受信した場合にはオンライン受信時刻検出手段からオフライン受信時刻検出手段に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうこと
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項1】
移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、
前記複数の基地局のうち、少なくとも2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、
前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、
前記基準基地局が発信する前記拡散符号列の内容を決定する送信符号列決定手段と、
前記普通基地局のそれぞれが受信した前記拡散符号列に含まれる少なくとも2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記少なくとも2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、
前記受信間隔算出手段によって算出された前記少なくとも2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記少なくとも2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、
前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、
該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つ以上の拡散符号の間に1つ以上の間隔符号を含むことを特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号の受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、
前記受信間隔算出手段は、前記拡散符号列に含まれる拡散符号の数と前記オンライン受信時刻検出手段により受信時刻を検出した拡散符号の数とに基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段と前記オフライン受信時刻検出手段とを切り換え、前記少なくとも2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出すること、
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記送信符号列決定手段は、前記間隔符号の数を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号と、該少なくとも2つの拡散符号の間に設けられた所定の間隔を含むことを特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記送信符号列決定手段は、前記所定の間隔を、時計ずれ算出手段における基準基地局が普通基地局へ送信する拡散符号列の送信完了から、移動局測位のために移動局が基地局へ送信する拡散符号の基地局における受信完了までの時間、前記クロック速度比算出手段によって算出されるクロック速度の比の分解能、前記オフライン受信時刻検出手段による同期検出処理の精度、の少なくとも1つに基づいて決定することを特徴とする請求項5に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記拡散符号列は、前記少なくとも2つの拡散符号よりも前に発信される予告符号を含み、
前記受信間隔算出手段は、該予告符号を受信した場合にはオンライン受信時刻検出手段からオフライン受信時刻検出手段に切り換えて前記拡散符号列の受信時刻の検出を行なうこと
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−85781(P2009−85781A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256365(P2007−256365)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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