説明

移動局測位システム

【課題】精度のよい測位を実行可能な移動局測位システムを提供する。
【解決手段】方角検出部28により移動局10の方角が検出され、移動局10もしくは複数の基地局12のうち一方から送信された電波を受信した他方における受信強度のそれぞれと、移動局10における相対的な方角ごとの受信強度と電波の伝搬距離についての予め得られ指向性強度情報記憶部48に記憶された関係である指向性強度情報と、方角検出部28によって検出された移動局10の方角とに基づいて、測位部52により移動局10の位置が算出されるので、移動局10からの方向によって電波の伝搬距離と減衰の程度がばらつく場合であっても、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局もしくは複数の基地局の一方から送信された電波を他方が受信し、受信した複数の電波の受信強度を測定し、該複数の受信強度と前記複数の基地局の位置についての情報とに基づいて該移動局の位置の算出を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、移動局における相対的な方角ごとに電波の受信強度と伝搬距離との関係が異なる場合において移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信強度、例えばRSSIなどの値に基づいて、移動局の位置の検出を行なう移動局測位システムが提案されている。
【0003】
かかる移動局測位システムにおいては、特定の送信電力などの所定の条件下について予め得られる電波の伝搬距離と電波の受信強度との関係に基づいて移動局と基地局との距離を算出する。これを複数の基地局のそれぞれと移動局とについて行ない、移動局の位置を算出する。
【0004】
【特許文献1】特開2005−176386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移動局は物に貼り付けられ、あるいは人に持ち運ばれるなどして移動させられる場合がある。かかる場合において、前記物、あるいは人の存在が、移動局によって送信あるいは受信される電波の伝搬に影響を生じる。そのため、移動局の備えるアンテナが無指向性アンテナである場合でも、移動局からの方角によっては電波の伝搬に差が生じることとなる。かかる場合には、移動局からの方角によって、同じ伝搬距離であっても電波の強さにばらつきが生じるため、これらを考慮しないで移動局の位置の算出(測位)を行なうと、精度のよい測位を行なうことができない。
【0006】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、前記移動局にその方角を検出する方角検出部を設け、その方角検出部によって検出される方角についての情報と、前記移動局からの方角についての電波の伝搬距離と電波の受信強度とについての予め得られる関係とに基づいて、移動局の位置を精度よく算出することのできる移動局測位システムを提供することにある。
【0007】
なお、前記特許文献1においては、移動局の次の位置を、メモリしている既知の位置情報と電界強度マップとを一致するかを比較し位置を決定する技術であって、移動局に移動検出器又は方向検出器を設けることにより、移動方向および移動速度から予測された予測移動位置以外のデータを排除する技術が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局もしくは複数の基地局の一方から送信された電波を他方が受信し、受信した複数の電波の受信強度を測定し、該複数の受信強度と前記複数の基地局の位置についての情報とに基づいて該移動局の位置の算出を行なう移動局測位システムであって、(b)前記移動局の方角を検出する方角検出部と、(c)前記移動局における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離についての予め得られた関係である指向性強度情報を記憶する指向性強度情報記憶部と、(d)前記複数の受信強度のそれぞれについて、該指向性強度情報記憶部に記憶された前記指向性強度情報と前記方角検出部によって検出された前記移動局の方角と、前記受信強度とに基づいて、移動局の位置を算出する測位部と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにすれば、前記方角検出部により移動局の方角が検出され、前記移動局もしくは複数の基地局のうち一方から送信された電波を受信した他方における受信強度のそれぞれと、前記移動局における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離についての予め得られ前記指向性強度情報記憶部に記憶された関係である前記指向性強度情報と、前記方角検出部によって検出された前記移動局の方角とに基づいて、測位部により移動局の位置が算出されるので、移動局からの方向によって電波の伝搬距離と減衰の程度がばらつく場合であっても、移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0010】
好適には、(a)前記指向性強度情報記憶部は前記指向性強度情報として、前記移動局の使用態様に応じた前記移動局における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離との関係についての複数の情報を記憶し、(b)前記測位部は、移動局の使用態様に応じて該複数の情報のいずれかを選択して前記移動局の位置を算出することを特徴とする。このようにすれば、前記指向性強度情報記憶部に記憶された前記指向性強度情報のうち、移動局の使用態様に応じた指向性強度情報が選択されて用いられるので、移動局が複数の態様により使用される場合であっても、その移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0011】
また好適には、(a)前記移動局は複数のアンテナを有し、(b)前記指向性強度情報記憶部は前記指向性強度情報として、該複数のアンテナのそれぞれについての前記移動局における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離との関係についての複数の情報を記憶し、(c)前記測位部は、移動局において用いられるアンテナに応じて該複数の情報のいずれかを選択して前記移動局の位置を算出することを特徴とする。このようにすれば、移動局が複数のアンテナを有し、その複数のアンテナを切り換えて送受信を行なう場合であっても、予め前記指向性強度情報記憶部に記憶された複数のアンテナのそれぞれについての前記指向性強度情報から指向性強度情報が選択されて用いられるので、移動局が複数のアンテナを切り換えて送受信を行なう場合であっても、その移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の移動局測位システム8の構成の一例を示した図である。図1に示すように、移動局測位システム8は、移動可能な移動局10、既知の位置に固定され、前記移動局10と無線による通信を行なう機能を有する第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局12(以下、第1基地局12A乃至第4基地局12Dを区別しない場合、基地局12という。)、および測位サーバ14を含んで構成される。測位サーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成される。なお、移動局10の数は1個以上であればとくに限定されない。また、基地局12はそれぞれ、LANケーブル等の通信ケーブル18によって測位サーバ14と接続され、相互に通信可能とされている。
【0014】
なお、移動局10が移動可能な領域(図1の例であれば平面)には例えば図1に示すような座標系が設定され、移動局10、基地局12の位置はこの座標系における座標によって表現することができる。
【0015】
移動局10は人によって保持されたり、あるいは物に取り付けられ、前記人あるいは物が移動することによって移動局10が移動させられる。かかる場合において、前記人あるいは物と移動局10の相対的な位置関係は変化しないものとされている。図1においては、人に保持された移動局10の例が示されている。
【0016】
図2は、移動局10の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。このうち、無線部24は、後述する制御部26によって行なわれる制御の内容に応じて、アンテナ22を用いて電波の送受信を行なう。例えば無線部24は、後述する基地局12から送信される移動局10の作動を制御する指令を含む電波を受信したり、あるいは測位のための電波の送信指令を受けた場合には、所定の電波出力、あるいは所定の電波特性により電波を送信する。すなわち、無線部24は所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調する変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどによって実現される送信機能と、アンテナ22によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含む。
【0017】
また、アンテナ22は、前述の無線部24が電波を送受信する際に用いられるものであって、無線部24が送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。アンテナ22には例えば電波の伝搬方向に無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0018】
また、制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、移動局10の電波の送受信の切換や、送受信される電波の変復調、あるいは送信される電波に含まれる信号の生成などの処理を実行するようになっている。具体的には、無線部24が受信した電波を解析し、移動局10の作動に関する指令を取り出し、その指令に応じて無線部24から電波を送信させるなどの作動を行なう。また、後述する方角検出部28により検出される方角についての情報を前記無線部24により電波によって送信させる。
【0019】
方角検出部28は、移動局10の方角を検出するものであって、例えば磁気センサやジャイロスコープなどにより地磁気や角速度を検出することにより移動局10の向きを方位などにより検出する。この移動局10の向きは、移動局10の中心から予め定められた基準方向(例えば図1における矢印dir)の方角などとして定義される。
【0020】
図3は、基地局12の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。基地局12は、電波を送受信するためのアンテナ32、無線部34、制御部36、受信強度測定部38、通信インタフェース42等を有する。基地局12は例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記制御部36、受信強度測定部38の機能などを実現する。
【0021】
また、アンテナ32は、前述の移動局のアンテナ22と同様に無線部24が電波を送受信する際に用いられるものであって、無線部34が送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、アンテナ32は例えば電波の伝搬方向に無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0022】
無線部34は、前述の移動局10の無線部24と同様の機能、すなわち、アンテナ32を用いて電波を送受信する機能を有する。具体的には、無線部34が受信した電波から、例えば前記移動局10の方角検出部28により検出された移動局の向きについての情報を取り出すための復調処理を行なう。また、後述する通信インタフェース42により受信される測位サーバ14から送信される指令に応じて無線部34から電波を送信するなどの作動を行なう。
【0023】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、基地局12の電波の送受信の切換や、送受信される電波の変復調などの処理を実行するようになっている。具体的には、前記無線部34の送受信を切り換えたり、あるいは、後述する受信強度測定部38、誤り率算出部40の作動を制御する。また、後述する測位サーバ14からの指令に基づいて、前記移動局10の作動に関する指令を無線で送信する。
【0024】
受信強度測定部38は、無線部34において受信された電波(受信波)の受信強度(電界強度)を測定する。具体的には例えば、RSSI(Receive Signal Strength Indicator)と呼ばれるハードウェアに特有の電波の受信強度に対応した指標値を測定する。あるいは無線部34において電波を受信した際の受信電力によって測定する。
【0025】
通信インタフェース42は、例えばLANケーブルなどの通信ケーブル18を介して他の基地局12あるいは測位サーバ14と情報交換可能に接続される。本実施例においては、前述の図1で説明したように、各基地局のそれぞれは測位サーバ14と通信可能に接続されている。具体的には、前記受信強度測定部38により測定された受信波の受信強度に関する情報などを通信ケーブル18を介して測位サーバ14に送信する。また、測位サーバ14から送信された基地局12の作動に関する指令などを受信する。
【0026】
図4は、測位サーバ14の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。測位サーバ14はCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータなどにより構成され、通信インタフェース46、記憶部48、測位部52等を機能的に含んで構成される。このうち、通信インタフェース46は、通信ケーブル18を介して基地局12のそれぞれと情報交換可能に接続する。具体的には例えば、基地局12から前記受信波の受信強度に関する情報などを受信する。また、基地局12の作動に関する指令や、移動局10の作動に関する指令などを基地局12に対し送信する。これは、移動局10は通信インタフェースを有さない一方、測位サーバ14は無線部を有しないため、測位サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の無線部34を介して行なうためである。
【0027】
記憶部48は、前記通信インタフェース46により各基地局12から得られる情報の他、移動局10の指向性強度情報などを読み出し可能に記憶する。この指向性強度情報は、移動局10から送信された電波を受信した場合の受信強度を、電波の到達方向のそれぞれについて表わす情報であって、予め移動局10毎に実験的に測定されたり、あるいはシミュレーションによって求められるものである。なお、本実施例においては、移動局10から電波を送信し、基地局12がその電波を受信するので、指向性強度情報は、移動局10から送信された電波を受信した場合の受信強度を、電波の到達方向のそれぞれについて表わす情報として定義される。
【0028】
この指向性強度情報について説明する。図5は、電波の送信局と受信局との距離、すなわち電波の伝搬距離と、受信局におけるその電波の受信強度である受信電力との一般的な関係を示したものである。電波の送信局および受信局において指向性のないアンテナを用いた場合には、原理的には送信局と受信局の位置関係に関わらず図5に示す関係が成立する。しかしながら、前記送信局あるいは受信局の一方として用いられる移動局は人に持ち運ばれたり、あるいは物に付される態様が用いられる。このように、移動局の近傍に存在する人や物は、移動局から送受信される電波の伝搬に影響を及ぼすことがある。
【0029】
図6は、人に保持されるなどして人とともに移動させられる移動局10の基地局12との位置関係の取りうる態様、すなわち移動局10からみた基地局12の向きのうち、代表的な3つの例を示したものである。図6に示す移動局10は、その移動局10の背面と人とが対向するように保持されている。図6(a)は、移動局10の正面とされた面が基地局12の方向を向いている状態(移動局10と基地局12とが正対している状態)を示している。また図6(b)、(c)はそれぞれ移動局10の側面と基地局12とが向き合っている状態、移動局10の背面と基地局12とが向き合っている状態である。このように図6(a)乃至(c)のそれぞれ状態について、移動局10と基地局12との間の電波の送受信は移動局10を保持する人の影響を受ける。
【0030】
そこで、図6(a)〜(c)に示す移動局10の基地局12との位置関係の取りうる3つの代表的な態様のそれぞれについて、移動局10から所定の出力により電波を送信した場合の基地局12におけるその電波の受信強度を測定する。すなわち、図5に示すような電波の受信強度と伝搬距離の関係をそれぞれの態様の場合について算出する。そして、前記3つの態様のそれぞれについて、共通する受信強度となる伝搬距離を算出する。例えば、基地局12において図6(a)の態様にある移動局10から所定の出力により送信された電波を受信強度Vrにより検出する場合の移動局10と基地局12との距離がaであり、同様に図6(b)の態様の場合の移動局10と基地局12との距離がb、図6(c)の態様の場合の移動局10と基地局12との距離がcと算出される場合について説明する。この場合の指向性強度情報は、例えば、図7(a)における点線で表わされた曲線により定義される。図7(a)の指向性強度情報は、移動局10の位置を原点し、移動局10の向きを基準として設定とする移動局座標系において、次式(1)として定義される。
MS=b×cosθ, yMS=a×sinθ (0≦θ<π)
MS=b×cosθ, yMS=c×sinθ (−π≦θ<0) …(1)
この(1)式は長軸を2a、短軸を2bとする楕円の半分と長軸を2c、短軸を2bとする楕円の半分の組み合わせとして定義される。なお、前記移動局座標系は、例えば図7に示すように移動局10における基準方向dir(図1参照)がyMS軸と同じ方向となるように設定される。また、θは、図7のxMS軸と移動局10から電波を受信する基地局12への方向とのなす角の角度である。図7(a)に示すように、移動局10から受信される電波を基地局12において同じ受信強度で受信する場合であっても、移動局10と基地局12との位置関係の態様、すなわち移動局10からみた基地局12の向きによって、移動局10と基地局12との距離が異なる。例えばθ=0°の場合は移動局10と基地局12との距離は最も長いaとなり、θ=270°の場合は移動局10と基地局12との距離は最も短いcとなる。また、図7(b)は、基地局12における受信強度が図7(a)よりも小さい場合における指向性強度情報の例を示した図である。図7(a)と(b)とを比較すると、a’>a、b’>b、c’>cであり、基地局12と移動局10との距離は、図7(a)の場合に比べて図7(b)の場合がより大きい。
【0031】
このようにして得られる指向性強度情報は、移動局10がある送信強度により電波を送信し、その電波を特定の受信強度により受信する基地局12の位置の集合を表わしたものである。この指向性強度情報から、基地局12において特定の受信強度により電波を受信する場合に、ある送信強度により特定の向き(姿勢)で電波を送信する移動局10の位置の集合を表わした基地局指向性強度情報を算出することができる。
【0032】
ところで、この基地局指向性強度情報は、移動局10から見た基地局12への方向と距離の組み合わせの集合であるので、基地局12からみた移動局10の方向と距離の集合に変換できる。この場合、移動局10の向き(姿勢)は変換前のままである。本実施例では前記指向性強度情報を表わす集合を移動局10の位置を中心として180°回転させ、さらに移動局10の向き(姿勢)に対応させて決定される回転角度だけ回転された集合が、その回転の中心にある基地局12についての基地局指向性強度情報となる。本実施例においては、前記回転角度は、基地局12の有する座標系におけるy軸(yBS)と移動局10の基準方向dirで表わされる移動局の向きとがなす角の角度α(deg)である。なお、本実施例においては、前記移動局座標系は、移動局10における基準方向dir(図1参照)がyMS軸と同じ方向となるように設定されるので、前記角度αは移動局座標系と基地局座標系との回転方向のずれ角αの大きさに相当する。
【0033】
このようにして得られる基地局指向性強度情報と、人の影響を考慮しない場合の強度情報とを比較した図が図8である。図8において点線74で示したのが人の影響を考慮しない場合の強度情報である。すなわち、図8の点線で表わされた円74上のいずれの位置にある移動局10から指向性のないアンテナ22により電波が送信される場合には、基地局12において同じ受信強度により移動局10から送信された電波を受信する。このように、移動局10と基地局12とがいずれも指向性のないアンテナ22、32を用い、例えば移動局10が単独で存在するなど移動局10から送信された電波の伝搬に影響を及ぼす物体などが存在しない場合には、強度情報は円状に表わされる。
【0034】
一方、図8の点線74で表わされる強度情報に対応する基地局指向性強度情報、すなわち、点線74で表わされる強度情報の場合と同じ送信出力で電波を送信する移動局10の基地局指向性強度は、図8の実線75により表わされる。なお、図8においては、移動局10の向きdirと基地局12の有する座標のy軸yBSとのなす角度αは0である。
【0035】
図9は、移動局10の向きdirに応じて前記基地局指向性強度情報が回転させられる様子を説明する図である。図9の移動局10の位置10aにおいては、移動局10の向きdir_aと基地局12の有する座標のy軸yBSとの角度はαaであるので、移動局10aに対する基地局指向性強度情報は図8のものに比べて基地局12の位置を中心にαaだけ回転させられている。図9の移動局10の位置10bに対する基地局指向性強度情報においても、同様に移動局10の向きdir_bと基地局12の有する座標のy軸yBSとの角度はαbだけ図8のものに比べて基地局12の位置を中心に回転させられている。
【0036】
記憶部48は、移動局10における電波の送信出力と、基地局における受信強度との両方に対応した基地局指向性強度情報を、それぞれ予め記憶する。具体的には、基地局指向性強度情報として、記憶部48は前記図8における実線75で表わされるような基地局指向性強度情報に対応する領域を表わす図形、あるいは数式などのみを記憶しておき、前記回転角度αが指示される場合においては、その都度記憶された前記図形あるいは数式などを回転させることにより基地局指向性強度情報を算出させることができる。
【0037】
測位部52は、前記移動局10の方角検出部28によって検出される移動局の向きについての情報と、前記複数の基地局12の受信強度測定部38によってそれぞれ測定される移動局10から送信される電波の受信強度と、前記記憶部48に記憶される移動局10についての基地局指向性強度情報とに基づいて、前記複数の基地局12のそれぞれについて移動局10の存在しうる領域を算出し、算出されるそれぞれの基地局12に対する領域が共通する部分を移動局10の位置であるとして算出する。なお、移動局10の方角検出部28によって検出される移動局の向きについての情報は、例えば移動局10から送信される電波に含められることにより基地局12により受信され、測位サーバ14に送信される。
【0038】
具体的には測位部52は、移動局12のそれぞれについて、前記複数の基地局12のそれぞれについて移動局10の存在しうる領域を例えば次のように算出する。まず、前記記憶部48に記憶される移動局10についての基地局指向性強度情報から、前記複数の基地局12の受信強度測定部38によってそれぞれ測定される移動局10から送信される電波の受信強度に応じた基地局指向性強度情報を読み出す。そして、読み出された基地局指向性強度情報を、前記移動局10の方角検出部28によって検出される移動局の向きに基づいて算出された角度、具体的には移動局10の向きdirと基地局12の有する座標のy軸yBSとの角度αだけ前記基地局指向性強度情報を回転させることによって、基地局12ごとに電波を送信した移動局10、すなわち測位の対象とする移動局10についての基地局指向性強度情報を算出する。そして、このように算出される基地局12のそれぞれについての基地局指向性強度情報の共通する部分である交点の位置を移動局10の位置であると算出する。さらに具体的には基地局指向性強度情報は座標である点の集合として表され、位置は積集合として演算されるのである。
【0039】
図10は測位部52による測位の概要を説明する図である。測位部52によって算出される図10の実線75a、75b、75cは、前記3つの基地局12a、12b、12cのそれぞれについての移動局10についての基地局指向性強度情報である。前述のように、移動局10からの電波の受信強度、前記記憶部48に記憶される移動局10についての基地局指向性強度情報および、前記移動局10の向きに基づいて算出されるものであり、受信強度によりその大きさは異なる(強度小なら大きく、強度小なら小さくなる)がここでは説明を簡単にするために同一の大きさで図示している。
【0040】
さらに測位部52は、図10の実線75a、75b、75cの交点である点79の位置を算出することにより、その位置を移動局10の位置とする。
【0041】
なお、図10において点線で表わされた74a、74b、74cはそれぞれ、前記3つの基地局12a、12b、12cのそれぞれについて移動局10を保持する人あるいは取り付けられる物の影響を考慮しない場合の強度情報を表わしたものであり、図8の点線74に対応するものである。このように移動局10を保持する人あるいは取り付けられる物の影響を考慮しない場合には、前記移動局10の存在しうる領域である強度情報74a、74b、74cの交点として移動局10の位置を算出すると、点78の位置とされてしまう。このように、本実施例においては、移動局10を保持する人あるいは取り付けられる物の影響を考慮することにより、移動局10の存在する位置を点79として誤差を少なく算出することができる。
【0042】
図11は、本実施例の移動局測位システム8における制御作動の概要を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては測位サーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、移動局10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つに対し、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の無線部34から移動局10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、受信強度測定部38において受信強度を測定し、検出した受信強度を測位サーバ14に送信させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、測位サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、測位サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の有する基地局無線部32を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12である代表基地局は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0043】
SA2においては、各基地局12において、測位サーバ14からのSA1の指令が受信されたか否かが待機される。測位サーバ14からのSA1の指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA3が実行される。一方測位サーバ14からのSA1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSA1が実行されて、測位サーバ14からのSA1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0044】
SA3は、SA2の判断が肯定された場合に実行されるステップであって、SA2で受信された測位サーバ14からの指令が実行される。具体的には、前記(1)の指令を受信した代表基地局においては、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により移動局10に対して送信される。また、前記(2)の指令を受信した基地局12においては、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0045】
SA4においては、移動局10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SA3)が受信されたか否かが待機される。移動局10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSA5が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSA4が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0046】
移動局10の方角検出部28などに対応するSA5においては、移動局10の向きの検出が行なわれる。移動局10の向きは、移動局10の所定の方向が向く方角などとして予め定義される。
【0047】
移動局10の無線部24などに対応するSA6においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波には、SA5において検出された移動局10の向きについての情報が含められる。
【0048】
各基地局12の無線部34などに対応するSA7においては、移動局10から送信される測位のための電波が受信されたか否かが判断される。移動局10から送信される電波が受信された場合においては、本判断は肯定され、続くSA8が実行される。一方、移動局10から送信される電波が受信されない場合、本ステップの判断が否定され、SA9が実行される。
【0049】
受信強度測定部38に対応するSA8においては、SA7において受信が行なわれた移動局10からの測位のための電波の受信強度が測定されるまた、移動局10から送信される電波に含まれる前記移動局10の向きについての情報が取り出される。
【0050】
SA9においては、移動局からの電波の受信を開始してからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SA10が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、SA7に戻って引き続き移動局10からの電波の受信が行なわれる。
【0051】
SA9の判断が肯定された場合に実行されるSA10においては、SA9の判断が肯定された基地局については、移動局10からの電波を受信することができなかったとして、エラーが発生したとされる。また、SA11においては、エラーが発生した基地局12については、移動局10からの電波の受信強度に代えて、例えば移動局10からの電波を受信しなかった旨の情報が記憶される。
【0052】
SA12においては、各基地局12においてSA8で検出された移動局10からの電波の受信強度についての情報および移動局10の向きについての情報が測位サーバ14に送信される。なお、SA11で移動局10からの電波の受信強度に代えて、例えば移動局10からの電波を受信しなかった旨の情報が記憶された場合には、その基地局12においては移動局10からの電波を受信しなかった旨が送信される。
【0053】
SA13においては、各基地局12における移動局10からの電波の受信強度についての情報や移動局10の向きについての情報が、予め定められた所定数以上の数の基地局12から送信され、測位サーバ14に受信されたか否かが判断される。この所定数は、SA16において移動局10の位置の算出を行なうために必要となる数であって、例えば移動局10の移動が3次元空間であるい場合には4つであり、2次元平面である場合や、3次元空間であっても移動局10の高さについての情報を図示しない高さ検出手段などにより得ることが可能な場合には3つである。前記所定数以上の数の基地局12から受信強度についての情報が受信された場合には、本ステップの判断は肯定され、SA16が実行される。一方、前記所定数以上の数の基地局12から受信時刻についての情報が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、続くSA14が実行される。
【0054】
SA14においては、SA1の指令を行なってからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SA15が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、SA13以降が繰り返し実行され、基地局12からの受信時刻についての情報の受信が行なわれる。
【0055】
SA14の判断が肯定された場合に実行されるSA15においては、移動局10の位置の算出を行なうために必要な数の基地局12から、移動局10からの電波の受信強度を受信することができなかったとして、エラー処理が行なわれる。具体的には例えば後述するSA16により算出される移動局10の位置の出力に代えて、移動局10の位置の算出に失敗した旨の情報が出力される。
【0056】
測位サーバ14の測位部52に対応するSA16においては、SA13で受信された各基地局12における移動局10からの電波の受信強度についての情報、および移動局10の向きについての情報、さらに記憶部48に記憶される基地局指向性強度情報に基づいて、移動局10の位置が算出するための測位ルーチンが実行される。
【0057】
図12はこの測位ルーチンにおける制御作動の概要を説明するフローチャートである。まず、SB1においては、記憶部48に予め記憶された基地局指向性強度情報から、SA13で受信された移動局10からの電波の基地局12における受信強度に対応した基地局指向性強度情報が基地局12ごとに読み出される。
【0058】
SB2においては、SB1で読み出された基地局指向性強度情報を前記SA5で検出されSA12で測位サーバ14に受信される移動局10の向きについての情報に基づいて回転させられることにより最適化される。具体的には、前述のように移動局10の向きdirと基地局12の有する座標のy軸yBSとの角度αだけ前記基地局指向性強度情報で表わされる移動局10の存在する領域を回転させる。
【0059】
SB3においては、移動局10からの電波を受信した各基地局12のそれぞれについて前記SB2により最適化された基地局指向性強度情報の交点の位置を算出し、移動局10の位置とする。具体的には例えば、前述の図10に示したように、各基地局12についての基地局指向性情報75a乃至75cの交点79を算出し、移動局10の位置とする。マルチパスなどの影響により交点が存在しない場合がありうるが、算出できなかった場合には基地局指向性情報75a乃至75cの3つからの距離の和が最も小さい(近い)座標を演算する。
【0060】
本実施例の移動局測位システム8によれば、方角検出部28により検出される方角により移動局10の向きについての情報が検出され、移動局10から送信された電波を受信した複数の基地局12のそれぞれにおける受信強度と、移動局10における相対的な方角ごとの受信強度と電波の伝搬距離についての予め得られ記憶部48に記憶された関係である指向性強度情報と、方角検出部28によって検出された移動局10の向きについての情報とに基づいて、測位部52により移動局10の位置が算出されるので、移動局10からの方向によって電波の伝搬距離と減衰の程度がばらつく場合であっても、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0061】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0062】
前述のように、本発明の移動局測位システム8においては移動局10が人に保持されたり物に取り付けられる場合、それらの人や物の電波の伝搬に与える影響を考慮した指向性強度情報を用いることにより、測位の精度を高めることができる。ここで、前記人や物の電波の伝搬に与える影響は、それら人や物によって異なる。そこで、本実施例の移動局測位システム8においては、指向性強度情報記憶部に対応する記憶部48は、移動局10を保持する人や取り付けられる物ごとに基地局指向性強度情報を記憶し、測位部52は、移動局10を保持する人や取り付けられる物についての情報に基づいて、その人や物についての指向性強度情報を用いて測位を行なうことができる。
【0063】
移動局10を保持する人や取り付けられる物についての情報は、例えば測位部52を有する測位サーバ14の入力手段、例えばキーボードやマウス等によって操作者によって予め入力することによって取得される。
【0064】
図13は、基地局指向性強度情報75の別の例であって、前述の実施例の図8の基地局指向性強度情報75に対応するものである。このように、移動局10が図8の場合とは異なる物体、例えば金属のような電波の伝搬に大きく影響を与える物体82に移動局10が取り付けられる場合には、基地局指向性強度情報75もその形状が大きく異なる。
【0065】
なお、前述の実施例においては、前記指向性強度情報は、図6の(a)乃至(c)の3つの態様における電波の受信強度と伝搬距離の関係から前記(1)式に基づいて生成したが、これに限られない。例えば、前述の図13のような基地局指向性強度情報を算出する場合には、電波の受信強度と伝搬距離の関係を移動局10と基地局12との位置関係の異なる多数の態様について実験により算出し、これらの態様のそれぞれについて共通する受信強度となる伝搬距離を算出し、その態様ごとの伝搬距離を表わす点を同一の移動局10に対する位置としてプロットした後、それらの点を直線で結ぶことにより得ることもできる。このようにすれば、例えば金属を含む物体に移動局10が取り付けられる場合などのように、移動局10から送信される電波が同一の受信強度により受信される電波の伝搬距離が、電波の伝搬方向に応じて著しく異なる場合であっても、精度の高い測位が可能となる。
【0066】
本実施例の移動局測位システム8によれば、記憶部48は指向性強度情報として、移動局10の使用態様、すなわち移動局10を保持する人や移動局10が取り付けられる物やに応じて移動局10における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離との関係についての複数の情報を記憶し、測位部52は、移動局10の使用態様に応じて該複数の情報のいずれかを選択して移動局10の位置を算出するので、移動局10が複数の態様により使用される場合であっても、その移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【実施例3】
【0067】
図14は、本発明の別の実施例における移動局測位システム8を構成する移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって、前述の実施例における図2に対応する図である。図14の移動局10は、2本のアンテナ22A、22B、およびアンテナ切換部30を有する点において図2の移動局10と異なる。
【0068】
アンテナ22Aおよび22Bは移動局10の異なる位置に配設される。これらのアンテナ22Aおよびアンテナ22Bはそれぞれ指向性のないアンテナとされてもよいし、それぞれ指向性の異なるアンテナとされてもよい。
【0069】
アンテナ切換部30は、制御部26により制御され、無線部24によって送信される電波を2つのアンテナ22Aおよび22Bの何れを用いて送信するかを切り換える。このとき、移動局10から送信される電波には、2つのアンテナ22Aおよび22Bのうち何れのアンテナを用いて送信されたかについての情報が含められることにより、この電波を受信した基地局12においては受信した電波が何れのアンテナを用いて送信されたかについての情報を得ることができる。
【0070】
具体的には、本実施例の移動局測位システム8の制御作動の概要も前述の実施例と同様に図11のフローチャートによって説明される。ただし、SA6乃至SA11が移動局10の有するアンテナの本数ぶんだけ繰り返し実行される。具体的には例えば、SA5において移動局10の向きの検出が行なわれた後、移動局10のアンテナ切換部30により送信に用いられるアンテナがアンテナA22Aに切り換えられた後、SA6乃至SA11が実行される。続いてアンテナ切換部30により送信に用いられるアンテナがアンテナB22Bに切り換えられた後、再度SA6乃至SA11が実行される。このとき、前述のように移動局10から送信される電波には、2つのアンテナ22Aおよび22Bのうち何れのアンテナを用いて送信されたかについての情報が含められるので、基地局12においては、移動局10の何れのアンテナにより送信された電波であるかを識別することができる。また、SA12においては、各基地局12において受信されたそれぞれのアンテナから送信された電波の受信強度についての情報と移動局10の向きについての情報が測位サーバ14に送信される。
【0071】
また、測位ルーチンを説明する図12のフローチャートにおいて、SB1において、記憶部48に予め記憶された基地局指向性強度情報から、SA13で受信された移動局10からの電波の基地局12における受信強度に対応した基地局指向性強度情報が基地局12ごとに読み出される際には、例えば、移動局10の2つのアンテナからそれぞれ送信された電波を受信した基地局12については、より強い受信強度で受信した電波に対応するアンテナの基地局指向性強度情報が用いられる。
【0072】
図15は、(a)本実施例における移動局10の態様の具体例と、(b)その移動局10に対応する基地局指向性強度情報75の例を示した図である。図15(a)の例においては、移動局10の正面に2つのアンテナであるアンテナA22AとアンテナB22Bとが配設されている。また、図15(b)には、移動局10がアンテナA22Aを用いて電波を送信した場合に対応する基地局指向性強度情報75Aが実線で、また、移動局10がアンテナB22Bを用いて電波を送信した場合に対応する基地局指向性強度情報75Bが一点鎖線でそれぞれ表わされている。
【0073】
図16は、(a)本実施例における移動局10の別の態様の具体例と、(b)その移動局10に対応する基地局指向性強度情報75の例を示した図であって図15に対応する図である。図16(a)の例においては、移動局10の正面にアンテナA22Aが配設されており、また、アンテナB22Bは前記アンテナA22Aと移動局10介して反対側であって移動局10を保持する人を介した位置に配設されている。また、図16(b)には、移動局10がアンテナA22Aを用いて電波を送信した場合に対応する基地局指向性強度情報75Aが実線で、また、移動局10がアンテナB22Bを用いて電波を送信した場合に対応する基地局指向性強度情報75Bが一点鎖線でそれぞれ表わされている。
【0074】
図15(b)および図16(b)に示すように、移動局10が送信に用いるアンテナに応じて基地局指向性強度情報75は異なるので、基地局12においてより前記2つのアンテナのそれぞれから送信された電波を受信した場合に、より強い電界強度で電波を受信した際のアンテナを用いて移動局10の測位を行なうような場合でも、そのアンテナに応じた基地局指向性強度情報を用いることができ、測位の精度を向上させることができる。
【0075】
特に図16においては、アンテナA22AとアンテナB22Bとが、それらが送信する電波の伝搬に影響を与える人を介して対称に配設されていることから、移動局10から送信される電波の受信範囲を実質的に広げることができるとともに、そのような場合でも、そのアンテナに応じた基地局指向性強度情報を用いることができ、測位の精度を向上させることができる。
【0076】
本実施例の移動局測位システム8によれば、移動局10は複数のアンテナ22A、22Bを有し、記憶部48は指向性強度情報として、複数のアンテナ22A、22Bのそれぞれについての移動局10における相対的な方角ごとの受信強度と電波の伝搬距離との関係についての複数の情報を記憶し、測位部52は、移動局10において用いられるアンテナ22A、22Bに応じて複数の情報のいずれかを選択して移動局10の位置候補を算出するので、移動局10が複数のアンテナ22A、22Bを切り換えて送受信を行なう場合であっても、その移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0078】
例えば、前述の実施例においては、方角検出部28として例えば磁気センサやジャイロスコープなどが用いられたが、これに限定されない。すなわち、基地局12が基準とする向きとの相対的な角度を算出することができれば方法は限定されない。例えば、移動局10が移動可能な領域に複数の赤外線受信機を設置し、移動局10が特定の方向に赤外線を送信可能な赤外線送信機を有しておき、その赤外線送信機から送信される赤外線をいずれの赤外線受信機が受信したかに基づいて移動局10の向きを検出することも可能である。
【0079】
また、前述の実施例においては、移動局10から送信される電波を3局以上の基地局12により受信し、各基地局12における受信強度に基づいて測位部52が移動局10の位置を算出したが、このような態様に限られない。例えば、3局よりも少ない基地局12により移動局10から送信される電波を受信し、移動局10の位置の候補を複数算出すると共に、移動局10の移動履歴や移動局10の移動可能な領域についての情報に基づいて前記移動局10の位置の候補から移動局10の位置を選択することによって移動局10の位置を算出してもよい。
【0080】
また前述の実施例においては、移動局測位システム8は、移動局10から送信される電波を複数の基地局12が受信し、その受信電力に基づいて測位を行なったが、このような態様に限られない。例えば、複数の基地局12からそれぞれ電波を送信し、その電波を移動局10が受信しそれぞれ受信強度を測定し、その結果に基づいて測位を行なうこともできる。この場合、前述の実施例において用いられた基地局指向性強度情報に代えて、移動局が同一の受信強度により電波を受信することのできる移動局10から見た方向ごとの距離についての情報である移動局指向性強度情報を予め算出し、記憶部48に記憶すればよい。
【0081】
また、前述の実施例3においては、移動局10は2本のアンテナ22Aおよび22Bを有するものとされたが、これに限られず、3本以上のアンテナを有していてもよい。
【0082】
また、前述の実施例においては、移動局10が平面内を移動する場合について説明したが、これに限られず、移動局10が3次元空間を移動する場合についても、移動局10から送信される電波を4以上の基地局によって受信することによって同様の手法により移動局10の位置の算出を行なうことができる。
【0083】
また、前述の実施例においては、測位部52は、移動局10の取り付けられる物、あるいは移動局10を持ち運ぶ人などに応じた指向性強度情報に基づいて基地局指向性強度情報を算出し、算出された基地局指向性強度情報を用いて移動局10の測位を行なった。ここで、前記指向性強度情報は、移動局10の取り付けの態様、あるいは持ち運びの態様に応じた複数種類が予め記憶部48などに記憶され、それらが選択されて用いられるようにしてもよい。移動局10の取り付けの態様、あるいは持ち運びの態様とは、例えば、移動局10が金属筐体の上面、側面、プラスチック筐体の上面、側面のそれぞれや、人体に取り付けられたりした場合に対応するものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成する測位サーバの有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。
【図5】電波の受信強度の一種である受信電力と、その受信電力において電波を受信する際の電波の伝搬距離の関係を説明する図である。
【図6】人に保持される移動局と基地局との位置関係の代表的な3つの態様を説明する図である。
【図7】移動局から送信された電波を等しい受信強度で受信する位置の集合を表わす指向性強度情報の生成を説明する図である。
【図8】基地局において等しい受信強度で電波を受信しうる移動局の位置の集合を表わす基地局指向性強度情報の例を説明する図である。
【図9】移動局の向きと、その向きに応じて最適化される基地局指向性強度情報の例を説明する図である。
【図10】測位部による移動局の位置の算出を説明する図である。
【図11】本発明の移動局測位システム8の一実施例における制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図12】図11の測位ルーチンを説明するフローチャートである。
【図13】本発明の別の実施例における基地局指向性強度情報の例を説明する図である。
【図14】本発明の別の実施例において、図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって、図2に対応する図である。
【図15】図14の移動局の有するアンテナの態様の例と、それらのアンテナのそれぞれに対応する基地局指向性強度情報の例を説明する図である。
【図16】図14の移動局の有するアンテナの態様の別の例と、それらのアンテナのそれぞれに対応する基地局指向性強度情報の例を説明する図であって、図15に対応する図である。
【符号の説明】
【0085】
8:測位システム
10:移動局
12:基地局
22A、22B:複数のアンテナ
28:方角検出部
48:記憶部(指向性強度情報記憶部)
52:測位部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局もしくは複数の基地局の一方から送信された電波を他方が受信し、受信した電波の複数の受信強度を測定し、該複数の受信強度と前記複数の基地局の位置についての情報とに基づいて該移動局の位置の算出を行なう移動局測位システムであって、
前記移動局の方角を検出する方角検出部と、
前記移動局における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離についての予め得られた関係である指向性強度情報を記憶する指向性強度情報記憶部と、
前記複数の受信強度のそれぞれについて、該指向性強度情報記憶部に記憶された前記指向性強度情報と前記方角検出部によって検出された前記移動局の方角と、前記受信強度とに基づいて、移動局の位置を算出する測位部と、を有すること、
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記指向性強度情報記憶部は前記指向性強度情報として、前記移動局の使用態様に応じた前記移動局における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離との関係についての複数の情報を記憶し、
前記測位部は、移動局の使用態様に応じて該複数の情報のいずれかを選択して前記移動局の位置を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記移動局は複数のアンテナを有し、
前記指向性強度情報記憶部は前記指向性強度情報として、該複数のアンテナのそれぞれについての前記移動局における相対的な方角ごとの前記受信強度と電波の伝搬距離との関係についての複数の情報を記憶し、
前記測位部は、移動局において用いられるアンテナに応じて該複数の情報のいずれかを選択して前記移動局の位置を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−78528(P2010−78528A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249230(P2008−249230)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】