説明

移動度測定装置及びその方法、並びに、抵抗率測定装置及びその方法

【課題】半導体中のキャリアの移動度及び半導体の電気抵抗率を非破壊で短時間に算出する。
【解決手段】本発明は、半導体中のキャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとの関係、及び、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係をそれぞれ記憶する記憶部101と、試料となる半導体にテラヘルツ光105を照射する光照射部103と、照射されたテラヘルツ光105に対する試料の反射光108を検出する検出部109と、照射されたテラヘルツ光105の強度に対する反射光108の強度の比率を求めることにより、試料の反射率Rexpを算出する反射率算出部111と、記憶された反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係を参照し、試料の反射率Rexpに対応する試料の減衰定数γexpを取得する取得部113と、取得した減衰定数γexpに基づいて、記憶された移動度μと減衰定数γexpとの関係から、試料の移動度μexpを算出する移動度算出部と、を有する移動度測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体中のキャリアの移動度を測定する移動度測定装置及びその方法、並びに、半導体の電気抵抗率測定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体のキャリアの移動度や電気抵抗率の測定には、ホール測定が一般的に用いられる。
【0003】
また、テラヘルツ波によるキャリアの減衰定数及び密度を求める方法が、非特許文献1に記載されている。この方法は、半導体のフォノン周波数の帯域を含めた広帯域のテラヘルツ波を試料に照射し、反射スペクトルを観測する。ついで、観測された反射スペクトルと計算した反射スペクトルとが整合するようにフィッティングを行い、キャリアの減衰定数及び密度を求める。
【0004】
また、二つのテラヘルツ波を用いて、半導体のキャリア密度を求める方法として、特許文献1に記載された方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−145223号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.Fu,M.Willander、Z.F.Li and W.Lu:"Electron,Mobilities,Hall Factors,and scattering process of n−type GaN epilayers studied by infrared reflection and Hall measurements."Physical Review B Vol.67(2003)p.113313
【非特許文献2】R.T.Holm,J.W.Gibson and E.D.Palik."Infrared reflectance studies of bulk and epitaxial−film n−type GaAs."Jounal of Applied Physics,Vol.48(1977)p.212−223
【非特許文献3】C.Kittel:固体物理学入門 第7版上巻、宇野良清、津屋昇、森田章、山下次郎訳(丸善株式会社、1998)
【非特許文献4】C.Wetzel,W.Walukiewicz,E.E.Haller,J.AgerIII,I.Grzegory,S.Porowski and T.Suski."Carrier Localization of as−grown n−type gallium nitride under large hydrostatic pressure"Physical Review B Vol.53,(1996)p.1322−1326
【非特許文献5】H.Ito, K. Suizu, T. Yamashita, A. Nawahara and T. Sato, "Random Frequency Accessible Broad Tunable Terahertz−Wave Source Using Phase−Matched 4−Dimethylamino−N−methyl−4−stilbazolium Tosylate Crystal,"Japanese Journal of Applied Physics Vol.46(2007)p.7321−7324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0008】
ホール測定は、ハンダを温めて、試料に電極を付けて、四端子を電極に合わせる接触測定である。電極を付けるため、試料を平面に加工する必要があり、破壊検査となる。
【0009】
また、非特許文献1記載の技術では、広帯域のテラヘルツ波を試料に照射し、反射スペクトルを観測するため、数十分の時間を要する。また、観測された反射スペクトルと計算値とを整合させるためには、観測された反射スペクトル毎に計算させる必要がある。また、フィッティングするためにさらに数十秒の時間が必要となる。
【0010】
さらに、特許文献1記載の技術では、テラヘルツ波に対する半導体の反射率とキャリアの減衰定数との関係が明らかにされておらず、キャリアの移動度及び電気抵抗率をいずれも求めることができない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体中のキャリアの移動度及び半導体の電気抵抗率を非破壊で短時間に算出することを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、半導体中のキャリアの移動度μを測定する移動度測定装置であって、
前記移動度μと前記キャリアの減衰定数γとの関係、及び、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ記憶する記憶部と、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射する光照射部と、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記試料の反射光を検出する検出部と、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出する反射率算出部と、
記憶された前記反射率Rと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、前記試料の反射率Rexpに対応する前記試料の減衰定数γexpを取得する取得部と、
取得した前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記移動度μと前記減衰定数γとの前記関係から、前記試料の前記移動度μexpを算出する移動度算出部と、を有することを特徴とする移動度測定装置が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、半導体中のキャリアの移動度μを測定する移動度測定方法であって、
キャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとの関係、及び、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ取得するステップと、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射するステップと、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記半導体の反射光を検出するステップと、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出するステップと、
記憶された前記反射率Rと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、前記試料の前記反射率Rexpに対応する前記試料の減衰定数γexpを取得するステップと、
取得した前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記移動度μと前記減衰定数γexpとの前記関係から、前記試料の前記移動度μexpを算出するステップと、
を含むことを特徴とする移動度測定方法が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、半導体の電気抵抗率ρを測定する半導体の電気抵抗率測定装置であって、
前記電気抵抗率ρと前記半導体中のキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記キャリア密度Nとの関係、及び、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ記憶する記憶部と、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射する光照射部と、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記試料の反射光を検出する検出部と、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出する反射率算出部と、
前記記憶された前記反射率Rと前記キャリア密度Nとの前記関係を参照し、前記試料の反射率Rexpに対応する前記試料の前記キャリア密度Nexpを取得するとともに、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、取得した前記キャリア密度Nexpに対応する前記試料の前記減衰定数γexpを取得する取得部と、
取得した前記キャリア密度Nexp及び前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記電気抵抗率ρと前記減衰定数γと前記キャリア密度Nとの前記関係から、前記試料の前記電気抵抗率ρexpを算出する抵抗率算出部と、
を有することを特徴とする抵抗率測定装置が提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、半導体の電気抵抗率を測定する抵抗率測定方法であって、
前記電気抵抗率ρと前記半導体中のキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記キャリア密度Nとの関係、及び、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ取得するステップと、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射するステップと、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記試料の反射光を検出するステップと、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出するステップと、
前記記憶された前記反射率Rと前記キャリア密度Nとの前記関係を参照し、前記試料の反射率Rexpに対応する前記試料の前記キャリア密度Nexpを取得するとともに、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、取得した前記キャリア密度Nexpに対応する前記試料の前記減衰定数γexpを取得するステップと
取得した前記キャリア密度Nexp及び前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記電気抵抗率ρと前記減衰定数γと前記キャリア密度Nとの前記関係から、前記試料の前記電気抵抗率ρexpを算出するステップと、
を含むことを特徴とする抵抗率測定方法が提供される。
【0016】
この発明によれば、半導体のテラヘルツ光に対する反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係をあらかじめ取得するため、テラヘルツ光に対する試料の反射率Rを測定することにより、対応するキャリアの減衰定数γを取得して試料中のキャリアの移動度μを算出することができる。また、半導体のテラヘルツ光に対する反射率Rと、キャリア密度Nとの関係も取得しておくことで、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rを測定することにより、対応するキャリアの減衰定数γ及び密度Nを取得して試料の電気抵抗率ρを算出することができる。したがって、半導体中のキャリアの移動度μ及び電気抵抗率ρを非破壊で短時間に測定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体中のキャリアの移動度μ及び電気抵抗率ρを非破壊で短時間に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る物性値測定装置を模式的に示すブロック図である。
【図2】反射スペクトルの計算値の一例を示す図である。
【図3】キャリアの減衰定数γ、キャリア密度N、LOフォノン周波数ω、フォノンの減衰定数Гの関係を示す図である。
【図4】実施の形態に係る物性値測定装置の構成図である。
【図5】キャリア密度Nと相対反射率Rrrの関係を示す図である。
【図6】GaNの反射スペクトルの測定値及び計算値を示す図である。
【図7】GaN中のキャリアの移動度μのホール測定結果と本発明による測定結果を比較した図である。横軸がホール測定結果であり、縦軸が本発明による測定結果を示す。
【図8】GaNの電気抵抗率ρのホール測定結果と本発明による測定結果を比較した図である。横軸がホール測定結果であり、縦軸が本発明による測定結果を示す。
【図9】テラヘルツ波に対するシリコンの反射率測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
(第一の実施形態)
本実施の形態は、半導体中のキャリアの移動度μを測定する移動度測定装置である。図1は、物性値測定装置100を模式的に示すブロック図である。本実施形態では、この物性値測定装置100を移動度測定装置として用いる。
【0021】
本実施の形態の移動度測定装置は、半導体中のキャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとの関係、及び、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係をそれぞれ記憶する記憶部101と、試料となる半導体にテラヘルツ光105を照射する光照射部103と、照射されたテラヘルツ光105に対する試料の反射光108を検出する検出部109と、照射されたテラヘルツ光105の強度に対する反射光108の強度の比率を求めることにより、試料の反射率Rexpを算出する反射率算出部111と、記憶された反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係を参照し、試料の反射率Rexpに対応する試料の減衰定数γexpを取得する取得部113と、取得した減衰定数γexpに基づいて、記憶された移動度μと減衰定数γexpとの関係から、試料の移動度μexpを算出する物性値算出部115(移動度算出部)と、を有する。
【0022】
また、物性値測定装置100は、試料設置部107を備える。試料設置部107は、試料となる半導体を設置する。
【0023】
半導体には、GaN、SiC、GaAs、GaAlN(窒化アルミニウムガリウム)、GaP、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlGaP、AlGaAs、AlGaSb、GaInN、GaInP、GaInAs、GaInSb、AlInN、AlInP、AlInAs、AlInSb、Si、Ge等が使用できる。
【0024】
半導体は、不純物がドープされていてもよい。ドープする不純物(添加物)は、p型、n型の種類によらず何でも良い。たとえば、n型(ドナー)として珪素、窒素またはリン等を用いることができる。p型として珪素、ホウ素等を用いることができる。
【0025】
記憶部101は、キャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとの関係を式(1)として記憶する。eは、電子の電荷[C]であり、mは、電子の有効質量[kg]である。
【0026】
【数1】

【0027】
また、記憶部101は、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係を記憶する。反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係は、下記(2)〜(5)で表される。各パラメータを表1に示す。式(2)は、非特許文献2に記載される式である。
【0028】
【表1】

【0029】
【数2】

【0030】
式(3)はプラズマ周波数を示す式である。プラズマとは同じ密度の正と負の電荷からなる媒質であると非特許文献3に記載されている。プラズマとなる周波数をプラズマ周波数と呼ぶ。式(3)中のキャリア密度Nは、正もしくは負の電荷の密度を表すこととなる。正が自由電子の密度を示し、負が正孔の密度を示す。
【0031】
【数3】

【0032】
【数4】

【0033】
また、式(5)は、非特許文献4で記載される式である。式(5)のa、b、cは定数である。
【0034】
【数5】

【0035】
また、フォノンの減衰定数Г、及び、キャリアの減衰定数γは、図3(a)、(c)で示すように、キャリア密度Nと1次の関係式(γ=d×N+e、Г=f×N+g、d〜gは定数)で表される。したがって、反射スペクトルから、反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係を導くことができる。
【0036】
また、半導体の反射スペクトルは、特定の周波数帯域では常に高反射であるが、LOフォノン振動数ω、フォノンの減衰定数Г、キャリアの減数定数γ、キャリア密度Nの違いによりの反射スペクトルの形状が異なってくる帯域がある。たとえば、半導体にGaNを用いた場合の反射スペクトルの計算値を図2に示す。表2に図2、3の計算に用いたパラメータを示す。GaNでは、LOフォノン振動数ω、フォノンの減衰定数Г、キャリアの減数定数γ、キャリア密度Nの違いにより22THz付近の反射スペクトルの形状が異なってくる。一方、19THz付近は、常に高反射である。
【0037】
【表2】

【0038】
そこで、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rがキャリアの減衰定数γに依存して変化する帯域を測定帯域とし、半導体の反射率Rがキャリアの減衰定数γに依存して変化しない帯域を参照帯域とすると、測定帯域のテラヘルツ光に対する反射率を測定反射率R(ωout)とし、参照帯域のテラヘルツ光に対する反射率を参照反射率R(ωin)として、式(6)から、相対反射率Rrrを算出することができる。記憶部101は、算出された相対反射率Rrrとキャリアの減衰定数γとの関係を記憶部101に記憶してもよい。
【0039】
【数6】

【0040】
また、記憶部101は、図3(a)に示すキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係、及び、図5に示すテラヘルツ光に対する半導体の相対反射率Rrrとキャリア密度Nとの関係をそれぞれ記憶することで、反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係を記憶することもできる。
【0041】
光照射部103は、Nd:YAGレーザー(ネオジウム・ヤグレーザー)の第二高調波(波長:532nm)を、KTP結晶(KTiOPO)を使用した光パラメトリック発振器に入射し、1.3μm帯の二波長を発振させ、その二波長をDAST結晶(4−dimethylamino−N−methyl−4−stilabazolium−tosylate)に入射して1.5THz以上40THz以下のテラヘルツ帯域の光波を照射する。なお、試料となる半導体にテラヘルツ光を照射することができれば、DAST結晶の変わりに他の結晶を使用しても差し支えない。また、フェムト秒レーザーを使用して発振したテラヘルツ帯域の光波を使用しても差し支えない。光照射部103は、照射した光の波長、光量、試料に対する入射角等の情報を記憶部101に記憶する。
【0042】
検出部109は、検出した反射光に関する情報を反射率算出部111に送出する。検出部109は、DTGS(Deuterated Triglycine Sulfate)検出器を用いることができる。
【0043】
反射率算出部111は、検出部109が検出した反射光の入射角、光量等の情報を検出部109から受け付け、記憶部101に記憶された照射光の情報と、受け付けた反射光の情報とから試料の反射率Rexpを算出する。算出された反射率Rexpは、取得部113に送出される。また、算出された反射率Rexpは、記憶部101に記憶してもよいし、出力してもよい。
【0044】
反射率Rexpは、以下のように測定することができる。まず、試料設置部107に参照板(例えば、金ミラー)を置く。照射光が金ミラーで反射した光を照射光強度と定義する。次に、試料設置部107に半導体を置く。照射光が半導体で反射した光を反射光強度と定義する。反射光強度を照射光強度で割った値が反射率Rexpとして得られる。
【0045】
取得部113は、記憶部101を参照し、記憶された反射率Rexpとキャリアの減衰定数γとの関係に基づいて、反射率算出部111から受け付けた反射率Rexpから対応するキャリアの減衰定数γを取得する。取得部113は、取得した減衰定数γを物性値算出部115に送出する。
【0046】
物性値算出部115は、記憶部101を参照し、記憶されたキャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとの関係から試料中のキャリアの移動度μexpを算出する。物性値算出部115は、算出したキャリアの移動度μexpを出力してもよい。
【0047】
また、光照射部103は、測定帯域のテラヘルツ光および参照帯域のテラヘツ光を試料にそれぞれ照射することもできる。反射率算出部111は、測定帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された測定反射率R(ωoutexpと、参照帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された反射率R(ωinexpと、を対比して、試料の相対反射率Rrr expを算出する。取得部113は、記憶部101に記憶された相対反射率Rrrとキャリアの減衰定数γとの関係を参照し、算出された試料の相対反射率Rrr expに対応するキャリアの減衰定数γexpを取得する。このように取得したキャリアの減衰定数γexpを式(1)に代入して、試料中のキャリアの移動度μexpを算出する。
【0048】
参照帯域は、TOフォノン周波数とLOフォノン周波数との間の高反射帯域とすることができる。TOフォノン周波数及びLOフォノン周波数は、比誘電率が0となる周波数であり、TOフォノン周波数とLOフォノン周波数との間では、比誘電率の値が負になる。比誘電率の値が0より小さい範囲は、テラヘルツ波が半導体中を伝播しにくいため、高反射する範囲となる。ここでいう「高反射帯域」とは、TOフォノン周波数とLOフォノン周波数との間の帯域において、式(7)で示す反射率Rsより反射率が高い帯域をいう。nは、十分高い周波数での比誘電率εの平方根である。また、nは空気の屈折率又は半導体を取り巻く媒質の屈折率である。
【0049】
【数7】

【0050】
を空気の屈折率とすると、nは1と表される。空気中に置かれたGaNの場合、√ε=n=2.31となり、Rs=(2.31−1)/(2.31+1)=0.156となる。したがって、空気中に置かれたGaNの参照帯域は、TOフォノン周波数とLOフォノン周波数との間の帯域において、反射率が約16%より高い帯域とすることができる。
【0051】
以下、図面を参照して本実施形態に係わる物性値測定装置の構成についてさらに具体的に説明する。
【0052】
図4は、物性値測定装置の構成図の一例を示す。テラヘルツ光発振装置として、非特許文献5に記載のDAST結晶11を用いた光パラメトリック発振器3を用いている。光パラメトリック発振器3の励起光2にはNd:YAGレーザー1の第二高調波(波長:532nm)を用いている。励起光2が光パラメトリック発振器3に入射される。光パラメトリック発振器3内は、反射鏡4と透過鏡5で構成する一台の共振器内に結晶角度が僅かに異なるKTP結晶(KTiOPO結晶)が2個設置されて、KTP結晶6、7から異なる1.3μm帯の二波長9が発振される。1.3μm帯の二波長9が反射鏡8と反射鏡10で反射し、DAST結晶11に入射することで、非線形光学効果により1.5THz以上47THz以下のテラヘルツ光12(図4ではテラヘルツ波)を取り出すことができる。発振したテラヘルツ光12は、反射鏡13で反射することにより、半導体14に照射される。半導体14で反射したテラヘルツ光12を反射鏡15で反射し、DTGS検出器16(図4では、DTGS)で受光する。
【0053】
つづいて、キャリアの移動度測定方法について、GaNを例に挙げて図4を用いつつ説明する。まず、キャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとの関係式である式(1)を取得する。ついで、GaNのテラヘルツ光に対する反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係を取得する。当該関係は、式(2)〜式(5)を用いて計算により求めてもよいし、標準品となるGaNのサンプルの反射スペクトルを測定することにより求めてもよい。計算による方法としては、たとえば、表2で示すサンプルから計算で導いたGaNの周波数に対する反射率Rの関係を調べ、図2で示すような反射スペクトルを得る方法がある。図2で示すスペクトルの横軸は周波数[THz]、縦軸は反射率Rを示す。また、図2のスペクトルには、キャリアの減衰定数γ447、580、774および969[cm−1]のGaNについての計算結果が示されている。GaNでは、17THz以上20THz以下の帯域でキャリアの減衰定数γの変化によらず全反射する。また、21THz以上23THz以下の帯域では、キャリアの減衰定数γの変化により、反射率Rが変動する。したがって、17THz以上20THz以下の帯域を参照帯域とし、21THz以上23THz以下の帯域を測定帯域とし、参照帯域における反射率R(ωin)に対する測定帯域における反射率R(ωout)から相対反射率Rrrを求める。そして、図5で示すように、相対反射率Rrrとキャリア密度Nとの関係を求める。また、図3(a)で示すように、GaN中のキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係を求める。こうすることにより、相対反射率Rrrを反射率Rとして、反射率Rとキャリアの減衰定数γとの関係を取得することができる。
【0054】
ついで、キャリアの移動度μが未知のGaNの試料を用意し、試料設置部107に設置する。光照射部103は、参照帯域として高反射帯域の17THz以上20THz以下のテラヘルツ光を一光波、測定帯域としてキャリアの減衰定数γに応じて反射率Rが変化する21THz以上23THz以下のテラヘルツ波を一光波、計二光波を試料にそれぞれ照射する。
【0055】
ついで、照射された参照帯域のテラヘルツ光と検出された反射光とを対比して、参照反射率R(ωinexpを算出する。また、照射された測定帯域のテラヘルツ光と検出された反射光とを対比して、測定反射率R(ωoutexpを算出する。そして、式(6)に基づき測定反射率R(ωoutexpと参照反射率R(ωinexpとを対比して試料の相対反射率Rrrを算出する。
【0056】
ついで、あらかじめ取得した相対反射率Rrrとキャリアの減衰定数γとの関係を参照し、算出された試料の相対反射率Rrr expに対応する試料のキャリアの減衰定数γexpを取得する。
【0057】
ついで、取得したキャリアの減衰定数γexpを式(1)に代入して、試料のキャリアの移動度μexpを算出する。
【0058】
つづいて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施の形態では、半導体のテラヘルツ光に対する反射率Rと、キャリアの減衰定数γとの関係をあらかじめ取得するため、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rを測定することにより、対応するキャリアの減衰定数γを取得して試料中のキャリアの移動度μを算出することができる。したがって、半導体のキャリアの移動度μを非破壊で短時間に測定することができる。
【0059】
(第二の実施形態)
本実施の形態では、図1で示す物性値測定装置100を抵抗率測定装置とてして用いる。本実施形態では、記憶部101に、電気抵抗率ρと半導体中のキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rとキャリア密度Nとの関係、及び、キャリア密度Nとキャリアの減衰定数γとの関係をそれぞれ記憶する。取得部113は、記憶された反射率Rとキャリア密度Nとの関係を参照し、試料の反射率Rexpに対応する試料のキャリア密度Nexpを取得するとともに、キャリア密度Nとキャリアの減衰定数γとの関係を参照し、取得したキャリア密度Nexpに対応する試料のキャリアの減衰定数γexpを取得する。物性値算出部115(抵抗率算出部)は、取得したキャリア密度Nexp及びキャリアの減衰定数γexpに基づいて、記憶された電気抵抗率ρと減衰定数γとキャリア密度Nとの関係から、試料の電気抵抗率ρexpを算出する。その他の構成は、第一の実施形態と同様である。
【0060】
記憶部101は、電気抵抗率ρとキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係を式(8)として記憶する。
【0061】
【数8】

【0062】
テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rとキャリア密度Nとの関係は、たとえば、図5で示すようなグラフとして記憶部101に記憶される。図5では、反射率Rを相対反射率Rrrとして示している。相対反射率Rrrは、第一の実施形態で説明したように、式(6)から求められる。
【0063】
キャリア密度Nとキャリアの減衰定数γとの関係は、図3(a)で示されるように、キャリアの減衰定数γがキャリア密度Nに対して線形に推移する関係として記憶部101に記憶される。
【0064】
取得部113は、記憶部101を参照し、記憶された反射率Rとキャリア密度Nとの関係に基づいて、反射率算出部111から受け付けた反射率Rexpから対応するキャリア密度Nexpを取得する。取得部113は、取得したキャリア密度Nexpを物性値算出部115に送出する。
【0065】
物性値算出部115は、記憶部101を参照し、記憶されたキャリア密度Nとキャリアの減衰定数γとの関係から試料中のキャリアの減衰定数γexpを取得する。さらに、物性値算出部115は、記憶部101を参照し、記憶された電気抵抗率ρとキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係から試料の電気抵抗率ρを算出する。物性値算出部115は、算出した電気抵抗率ρを出力してもよい。
【0066】
また、光照射部103は、測定帯域のテラヘルツ光および参照帯域のテラヘツ光を試料にそれぞれ照射することもできる。反射率算出部111は、測定帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された反射率R(ωoutexpと、参照帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された反射率R(ωinexpとを対比して、試料の相対反射率Rrr expを算出する。取得部113は、記憶部101に記憶された相対反射率Rrrとキャリア密度Nとの関係を参照し、算出された試料の相対反射率Rrr expに対応するキャリア密度Nexpを取得する。このように取得したキャリア密度Nexpから、試料中のキャリアの減衰定数γexpを取得し、記憶された電気抵抗率ρとキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係から試料の電気抵抗率ρexpを算出する。
【0067】
参照帯域は、TOフォノン周波数とLOフォノン周波数との間の高反射帯域とすることができる。
【0068】
つづいて、抵抗率測定方法についてGaNを例に挙げて図4を用いつつ説明する。まず、キャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係式である式(7)を取得する。ついで、GaNのテラヘルツ光に対する反射率Rと、キャリア密度Nとの関係を取得する。当該関係は、式(2)〜式(5)を用いて計算により求めてもよいし、標準品となるGaNのサンプルの反射スペクトルを測定することにより求めてもよい。計算による方法としては、たとえば、表2で示すサンプルから計算で導いたGaNの周波数に対する反射率Rの関係を調べ、図2で示すような反射スペクトルを得る方法がある。図2のスペクトルには、キャリア密度N0.0246、0.425、1.03および1.73[×1018cm−3]のGaNについての計算結果が示されている。17THz以上20THz以下の帯域を参照帯域とし、21THz以上23THz以下の帯域を測定帯域とし、参照帯域における反射率R(ωin)に対する測定帯域における反射率R(ωout)から相対反射率Rrrを求める。そして、この相対反射率Rrrを反射率Rとして、図5で示すような、相対反射率Rrrとキャリア密度Nとの関係を求める。また、図3(a)で示すように、GaN中のキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係を求める。
【0069】
ついで、電気抵抗率ρが未知のGaNの試料を用意し、試料設置部107に設置する。光照射部103は、参照帯域として高反射帯域の17THz以上20THz以下のテラヘルツ光を一光波、測定帯域としてキャリア密度Nに応じて反射率が変化する21THz以上23THz以下のテラヘルツ波を一光波、計二光波を試料にそれぞれ照射する。そして、第一の実施形態で説明したように、測定反射率R(ωoutexpと参照反射率R(ωinexpとを対比して試料の相対反射率Rrr expを取得する。
【0070】
ついで、あらかじめ取得しておいた相対反射率Rrrとキャリア密度Nとの関係を参照し、算出された試料の相対反射率Rrr expに対応する試料のキャリア密度Nexpを取得する。また、あらかじめ取得しておいたキャリア密度Nとキャリアの減衰定数γとの関係を参照し、算出された試料の相対反射率Rrr expに対応する試料のキャリアの減衰定数γexpを取得する。
【0071】
ついで、取得したキャリアの減衰定数γexp及びキャリア密度Nexpを式(8)に代入して、試料の電気抵抗率ρexpを算出する。
【0072】
つづいて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施の形態では、この発明によれば、半導体のテラヘルツ光に対する反射率Rと、キャリア密度Nとの関係、及び、キャリア密度Nとキャリアの減衰定数γとの関係をあらかじめ取得するため、テラヘルツ光に対する半導体の反射率Rを測定することにより、対応するキャリアの減衰定数γexpを取得して試料の電気抵抗率ρexpを算出することができる。したがって、半導体の電気抵抗率ρを非破壊で短時間に測定することができる。
【0073】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
用いたGaNの試料は15mm×15mmの四角形状、厚さ0.1mmから1mmである。試料は測定面に加工、研磨等を施していないas−grown結晶である。反射率測定結果と計算値を図6に示す。実線が測定結果で、点線が計算値である。測定結果と計算値は整合している。17THz〜20THzで高反射している。また、21THz〜23THzで、反射率の変化が確認される。17THz〜20THzで参照周波数を選択し、また、21THz〜23THzか、もしくは17THzより小さい周波数で測定周波数を選択し、測定により得られた相対反射率から移動度及び電気抵抗率を算出した。結果を表3に示す。また、表3には、ホール測定から求めた移動度μHall、電気抵抗率ρHallを合わせて示す。移動度について、テラヘルツ測定とホール測定の結果を比較した結果を図7に示す。また、電気抵抗率について、テラヘルツ測定とホール測定の結果を比較した結果を図8に示す。テラヘルツ測定結果はホール測定結果と一致しており、相対反射率Rrrに対してキャリア密度Nは図5で示される。RrrとNとの関係がわかり、Nとγとの関係が明らかであるので、参照周波数及び測定周波数の2種類の周波数における反射率を測定することによりキャリアの減衰定数及び密度の値をそれぞれ算出して、移動度及び電気抵抗率を求めることができる。
【0075】
【表3】

【0076】
この他、SiC、GaAs、GaP、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、においても、キャリアの減衰定数、密度に依存せず反射率が一定である参照帯域、および、キャリアの減衰定数、密度に依存して反射率が変化する測定帯域の二つのテラヘルツ波を半導体に照射し、両光波の反射率の対比により移動度、電気抵抗率を算出できると考えられる。
【0077】
(実施例2)
用いたシリコンの試料は直径2インチの円状で厚さ0.1mmから1mmである。電気抵抗は既知のサンプルを使用した。反射率測定結果を図9に示す。電気抵抗率の違いにより、反射スペクトルに違いが見られる。したがって、反射率が高い3THz以上4THz以下の周波数から参照周波数を選択し、反射スペクトルが変わる4THz〜18THzの周波数から測定周波数を選択し、参照周波数及び測定周波数の2種類の周波数における反射率を測定することによりキャリアの減衰定数及び密度の値をそれぞれ算出して、移動度及び電気抵抗率を求めることができる。
【0078】
この他、Geにおいても、キャリアの減衰定数、密度に依存せず反射率が一定である参照帯域、および、キャリアの減衰定数、密度に依存して反射率が変化する測定帯域の二つのテラヘルツ波を半導体に照射し、両光波の反射率の対比により移動度、電気抵抗率を算出できると考えられる。
【符号の説明】
【0079】
1 Nd:YAGレーザー
2 励起光
3 光パラメトリック発振器
4 反射鏡
5 透過鏡
6 KTP結晶
7 KTP結晶
8 反射鏡
9 1.3μ帯二波長
10 反射鏡
11 DAST結晶
12 テラヘルツ光
13 反射鏡
14 半導体
15 反射鏡
16 DTGS検出器
100 物性値測定装置
101 記憶部
103 光照射部
105 テラヘルツ光
107 試料設置部
108 反射光
109 検出部
111 反射率算出部
113 取得部
115 物性値算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体中のキャリアの移動度μを測定する移動度測定装置であって、
前記移動度μと前記キャリアの減衰定数γとの関係、及び、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ記憶する記憶部と、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射する光照射部と、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記試料の反射光を検出する検出部と、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出する反射率算出部と、
記憶された前記反射率Rと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、前記試料の反射率Rexpに対応する前記試料の減衰定数γexpを取得する取得部と、
取得した前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記移動度μと前記減衰定数γとの前記関係から、前記試料の前記移動度μexpを算出する移動度算出部と、
を有することを特徴とする移動度測定装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記減衰定数γと前記半導体のキャリア密度Nとの関係、及び、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記キャリア密度Nとの関係をそれぞれ記憶することで、前記反射率Rと前記減衰定数γとの前記関係を記憶することを特徴とする請求項1に記載の移動度測定装置。
【請求項3】
前記光照射部は、1.5THz以上40THz以下のテラヘルツ光を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の移動度測定装置。
【請求項4】
前記テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rが前記キャリアの減衰定数γに依存して変化する測定帯域のテラヘルツ光に対する前記反射率Rを測定反射率R(ωout)とし、前記テラヘルツ光に対する前記半導体の前記反射率Rが前記キャリアの減衰定数γに依存して変化しない参照帯域のテラヘルツ光に対する前記反射率Rを参照反射率R(ωin)とし、前記測定反射率R(ωout)と前記参照反射率R(ωin)とを対比して相対反射率Rrrを算出し、算出された前記相対反射率Rrrを前記反射率Rとして、前記反射率Rと前記減衰定数γとの関係を前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の移動度測定装置。
【請求項5】
前記光照射部は、前記測定帯域のテラヘルツ光および前記参照帯域のテラヘルツ光を前記試料にそれぞれ照射し、
前記反射率算出部は、前記測定帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された測定反射率R(ωoutexpと、前記参照帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された前記参照反射率R(ωinexpとを対比して、前記試料の相対反射率Rrr expを算出し、
前記取得部は、記憶された前記相対反射率Rrrと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、算出された前記試料の前記相対反射率Rrr expに対応する前記試料の前記減衰定数γexpを取得することを特徴とする請求項4に記載の移動度測定装置。
【請求項6】
前記参照帯域はTOフォノン周波数とLOフォノン周波数との間の高反射帯域であることを特徴とする請求項4または5に記載の移動度測定装置。
【請求項7】
前記半導体が窒化ガリウムであり、
前記測定帯域が21THz以上23THz以下であり、
前記参照帯域が17THz以上20THz以下であることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の移動度測定装置。
【請求項8】
前記半導体がシリコンであり、
前記測定帯域が4THz以上18THz以下であり、
前記参照帯域が3THz以上4THz以下であることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の移動度測定装置。
【請求項9】
半導体中のキャリアの移動度μを測定する移動度測定方法であって、
キャリアの移動度μとキャリアの減衰定数γとの関係、及び、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ取得するステップと、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射するステップと、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記半導体の反射光を検出するステップと、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出するステップと、
記憶された前記反射率Rと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、前記試料の前記反射率Rexpに対応する前記試料の減衰定数γexpを取得するステップと、
取得した前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記移動度μと前記減衰定数γexpとの前記関係から、前記試料の前記移動度μexpを算出するステップと、
を含むことを特徴とする移動度測定方法。
【請求項10】
半導体の電気抵抗率ρを測定する半導体の電気抵抗率測定装置であって、
前記電気抵抗率ρと前記半導体中のキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記キャリア密度Nとの関係、及び、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ記憶する記憶部と、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射する光照射部と、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記試料の反射光を検出する検出部と、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出する反射率算出部と、
前記記憶された前記反射率Rと前記キャリア密度Nとの前記関係を参照し、前記試料の反射率Rexpに対応する前記試料の前記キャリア密度Nexpを取得するとともに、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、取得した前記キャリア密度Nexpに対応する前記試料の前記減衰定数γexpを取得する取得部と、
取得した前記キャリア密度Nexp及び前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記電気抵抗率ρと前記減衰定数γと前記キャリア密度Nとの前記関係から、前記試料の前記電気抵抗率ρexpを算出する抵抗率算出部と、
を有することを特徴とする抵抗率測定装置。
【請求項11】
前記テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rが前記キャリア密度Nに依存して変化する測定帯域のテラヘルツ光に対する前記反射率Rを測定反射率R(ωoutexpとし、前記テラヘルツ光に対する前記半導体の前記反射率が前記キャリア密度Nに依存して変化しない参照帯域のテラヘルツ光に対する前記反射率を参照反射率R(ωinexpとし、前記測定反射率R(ωoutexpと前記参照反射率R(ωinexpとを対比して相対反射率Rrrを算出し、算出された前記相対反射率Rrrを前記反射率Rとして、前記反射率Rと前記キャリア密度Nとの前記関係を前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項10に記載の抵抗率測定装置。
【請求項12】
前記光照射部は、前記測定帯域のテラヘルツ光および前記参照帯域のテラヘルツ光を前記試料にそれぞれ照射し、
前記反射率算出部は、前記測定帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された前記測定反射率R(ωoutexpと、前記参照帯域のテラヘルツ光を照射したとき算出された前記参照反射率R(ωinexpとを対比して、前記試料の相対反射率Rrr expを算出し、
前記取得部は、記憶された前記相対反射率Rrrと前記キャリア密度Nとの前記関係を参照し、算出された前記試料の相対反射率Rrr expに対応する前記試料の前記キャリア密度Nexpを取得することを特徴とする請求項11に記載の抵抗率測定装置。
【請求項13】
前記参照帯域はTOフォノン周波数とLOフォノン周波数との間の高反射帯域であることを特徴とする請求項11または12に記載の抵抗率測定装置。
【請求項14】
前記半導体が窒化ガリウムであり、
前記測定帯域が21THz以上23THz以下であり、
前記参照帯域が17THz以上20THz以下であることを特徴とする請求項11乃至13いずれかに記載の抵抗率測定装置。
【請求項15】
前記半導体がシリコンであり、
前記測定帯域が4THz以上18THz以下であり、
前記参照帯域が3THz以上4THz以下であることを特徴とする請求項11乃至13いずれかに記載の抵抗率測定装置。
【請求項16】
半導体の電気抵抗率を測定する抵抗率測定方法であって、
前記電気抵抗率ρと前記半導体中のキャリアの減衰定数γとキャリア密度Nとの関係、テラヘルツ光に対する前記半導体の反射率Rと前記キャリア密度Nとの関係、及び、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの関係をそれぞれ取得するステップと、
試料となる前記半導体にテラヘルツ光を照射するステップと、
照射された前記テラヘルツ光に対する前記試料の反射光を検出するステップと、
照射された前記テラヘルツ光の強度に対する前記反射光の強度の比率を求めることにより、前記試料の反射率Rexpを算出するステップと、
前記記憶された前記反射率Rと前記キャリア密度Nとの前記関係を参照し、前記試料の反射率Rexpに対応する前記試料の前記キャリア密度Nexpを取得するとともに、前記キャリア密度Nと前記減衰定数γとの前記関係を参照し、取得した前記キャリア密度Nexpに対応する前記試料の前記減衰定数γexpを取得するステップと
取得した前記キャリア密度Nexp及び前記減衰定数γexpに基づいて、記憶された前記電気抵抗率ρと前記減衰定数γと前記キャリア密度Nとの前記関係から、前記試料の前記電気抵抗率ρexpを算出するステップと、
を含むことを特徴とする抵抗率測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−54863(P2011−54863A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204352(P2009−204352)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】