説明

移動式バックアンカー及びこれを用いたシールド発進方法

【課題】初期発進時にシールド機が自ら装備しているシールドジャッキを使用することで、大幅な工費削減を図った移動式バックアンカーとする。
【解決手段】発進立坑内において、シールド機Sのシールドジャッキ7群の先端にセグメント8が連結される。前記移動式バックアンカーは2以上に分割された分割構造とされるとともに、機能的にメインバックアンカー2とサブバックアンカー3,4とに区分される。前記メインバックアンカー2は、反力支持部20と、この反力支持部20の前面側に一体的に連設され、先端面がセグメントに連結されたプレス部21とからなり、前記サブバックアンカー3,4は、反力支持部30(40)と、この反力支持部30(40)の前面側に該反力支持部30(40)に固定された連結ジャッキ31(41)を介して連結され、前後進自在とされるとともに、先端面がセグメント8に連結されたプレス部32(42)とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進立坑内でシールド機を発進させる際、推進反力を受けるための移動式バックアンカー及びこれを用いたシールド発進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シールド機を発進立坑内から発進させる場合は、立坑の背面壁にバックアンカー(支圧壁)を組み立てた後、その前方側(発進方向)に順次、仮組セグメントを組み立て、これにシールドジャッキの反力を取りながらシールド機を前進させる方法が一般的に採用されていた。
【0003】
前記仮組セグメントは、上方を開口として設置されるセグメントであり、初期掘進時には、この仮組セグメントに形成された幅狭の上部開口から種々の資材、機材の搬出入やズリ出し等を行わなければならず、作業に大幅な制約を受けるため作業そのものが非常に非効率となる。また、初期掘進から本掘進への段取り替えの際には、仮組セグメントの解体作業を必要とするとともに、この解体作業の作業環境が悪く、非効率かつ危険な作業となっていたため、初期掘進から本掘進への段取り替えに1〜2ヶ月の期間を要する場合があった。
【0004】
そこで、下記特許文献1では、発進立坑内においてシールド機の後方側に取り付けられ、シールド機の前進に追従して移動可能とされるとともに、シールド機の前進ステップ毎に推進時反力を支持するための移動式バックアンカー装置であって、前記バックアンカー装置は、左右両側部に立坑側壁に対して圧着自在とされるグリッパを備えた枠状のバックアンカー本体と、このバックアンカー本体のシールド機がわ面に一体的に設けられ、シールド機からの推進時反力を受けるためのプレスリングとから構成されたものが提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、発進口近傍に発進方向に沿って架設される梁と、この梁の発進口側端部に先端が固定されるとともに後端が自由とされたガイド材と、このガイド材に対する少なくともガイド方向の固定およびその解放が可能な固定装置と、一端が前記固定装置に対して連結され他端が推進体に対して連結または係合される伸縮装置とからなり、前記固定装置を前記ガイド材に対して少なくともガイド方向に固定した状態で前記伸縮装置を伸張または収縮させることにより、前記伸縮装置が前記固定装置、ガイド材および梁をこの順に介して立坑後壁に対して反力を取りつつ前記推進体を地山中に推進させるように構成し、かつ、前記固定装置の前記ガイド材に対する固定を解放した状態で前記伸縮装置を前記推進時とは反対に収縮または伸張させることにより、前記伸縮装置が前記固定装置の位置を前記推進方向に移動させるように構成した発進口における推進体の推進装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−30091号公報
【特許文献2】特許第3753614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に係る移動式バックアンカー装置の場合は、装置自体がかなり大掛かりな装置となり、この装置の製作費が嵩むとともに、グリッパの反力を発進立坑の側壁に取るようにしているため、立坑の壁厚が厚くなるとともに、シールド機のバックリングを防止するために、補助工法を併用しなければならず、他の方法に比べて不経済となるなどの問題があった。
【0008】
前記特許文献2に係る推進装置は、センターホールジャッキ(伸縮装置)を多数使用することになるため、この設置費用が嵩むとともに、これらジャッキの伸長速度やストローク長等を同調させる機器類も必要となり、作業性及び経済性の点で十分満足のいくものではなかった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、初期発進時においてもシールド機が自ら装備しているシールドジャッキを使用することで、初期発進時のみ使用するセンターホールジャッキや同調制御機器等の仮設設備を省略でき、かつ特殊で大掛かりな装置ではなく、汎用品の組合せからなる設備とすることで大幅な工費削減を図った移動式バックアンカー及びこれを用いたシールド発進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、発進立坑内においてシールド機の推進反力を受けるとともに、シールド機の前進に追従して移動可能とされる移動式バックアンカーであって、
シールド機の周囲に推進方向に沿って複数のレール部材が配設され、これら各レール部材に対してレール部材に沿って移動可能とされるとともに、レール部材の任意の位置で固定可能とされるクランプ装置を備え、かつシールド機内に装備されたシールドジャッキ群の先端に1リング分のセグメントが連結され、
前記移動式バックアンカーは2以上に分割された分割構造とされるとともに、機能的にメインバックアンカーとサブバックアンカーとに区分され、
前記メインバックアンカーは、シールド機の後端部に位置するとともに、前記クランプ装置群の内の幾つかに連結された反力支持部と、この反力支持部の前面側に一体的に連設され、先端面が前記セグメントに連結されたプレス部とからなり、
前記サブバックアンカーは、シールド機の後端部に位置するとともに、前記クランプ装置群の内の幾つかに連結された反力支持部と、この反力支持部の前面側に該反力支持部に固定された連結ジャッキを介して連結され、前後進自在とされるとともに、先端面が前記セグメントに連結されたプレス部とからなることを特徴とする移動式バックアンカーが提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明は、移動式バックアンカーを、2以上に分割された分割構造とし、これらのバックアンカーは、機能的にメインバックアンカーとサブバックアンカーとに区分される。そして、前記メインバックアンカーは、シールド機の後端部に位置するとともに、前記クランプ装置群の内の幾つかに連結された反力支持部と、この反力支持部の前面側に一体的に連設され、先端面が前記セグメントに連結されたプレス部とからなり、前記サブバックアンカーは、シールド機の後端部に位置するとともに、前記クランプ装置群の内の幾つかに連結された反力支持部と、この反力支持部の前面側に該反力支持部に固定された連結ジャッキを介して連結され、前後進自在とされるとともに、先端面が前記セグメントに連結されたプレス部とからなる構造とするものである。
【0012】
従って、後述の手順に従って、シールド機が自ら装備しているシールドジャッキを使用して初期掘進を行うことができ、前記特許文献2における、初期発進時のみ使用するセンターホールジャッキや同調制御機器等の仮設設備を省略することができ、また特許文献1のような特殊で大掛かりな装置ではなく、汎用品の組合せからなる設備とするにより、大幅な工費削減を図ることが可能となる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記セグメントに代えて、該セグメントに近似した形状のプレスリングを用いる請求項1記載の移動式バックアンカーが提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、前記セグメントに代えて、該セグメントに近似した形状のプレスリングを用いるようにしたものである。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記サブバックアンカーにおいて、連結ジャッキは外筒部が前記反力支持部を貫通した状態で保持され、ピストン部が前記プレス部に貫入した状態で連結され、前記連結ジャッキを収縮させた状態では、前記反力支持部とプレス部とが接触するようになっている請求項1,2いずれかに記載の移動式バックアンカーが提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、前記サブバックアンカーにおける連結ジャッキによる反力支持部とプレス部との連結態様を規定したものである。
【0017】
請求項4に係る本発明として、請求項1〜3いずれかに記載の移動式バックアンカーを用いた立坑内でのシールド発進方法であって、
立坑内でシールド機を組み立てたならば、シールド機の周囲に推進方向に沿って複数のレール部材を配設し、これら各レール部材に対してレール部材に沿って移動可能とされるとともに、レール部材の任意の位置で固定可能とされるクランプ装置を設け、かつシールド機内で1リング分のセグメントを組み立てるとともに、このセグメントにシールドジャッキ群の先端を連結し、請求項1〜3いずれかに記載の移動式バックアンカーを設置する準備手順と、
前記メインバックアンカー及びサブバックアンカーのクランプ装置を固定した状態で、シールドジャッキを伸長させシールド機を所定長だけ前進させる第1手順と、
前記メインバックアンカーのクランプ装置のみを解放するとともに、シールドジャッキのリリーフ弁を解放して自由に収縮できる状態とした上で、前記サブバックアンカーの連結ジャッキを伸長させて、前記セグメント及びメインバックアンカーを前進させる第2手順と、
前記メインバックアンカーのクランプ装置を固定した状態で、前記サブバックアンカーのクランプ装置を解放し、前記連結ジャッキを収縮させて該サブバックアンカーを前進させた後、クランプ装置を固定する第3手順とからなる手順の繰り返しにより、シールド機を順次前進させることを特徴とするシールド発進方法が提供される。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記セグメントに代えて、該セグメントに近似した形状のプレスリングを用いる請求項4記載のシールド発進方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上詳説のとおり本発明によれば、初期発進時においてもシールド機が自ら装備しているシールドジャッキを使用することで、初期発進時のみ使用するセンターホールジャッキや同調制御機器等の仮設設備を省略でき、かつ特殊で大掛かりな装置ではなく、汎用品の組合せからなる設備とすることで大幅な工費削減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る移動式バックアンカー1を設置した状態での縦断面図である。
【図2】本発明に係る移動式バックアンカー1を設置した状態での横断面図である。
【図3】本発明に係る移動式バックアンカー1を設置した状態での背面図である。
【図4】レール部材5の配置状態を示す背面側からの視図である。
【図5】クランプ装置6を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図6】メインバックアンカー2を示す、(A)は平面図、(B)は背面図である。
【図7】上部サブバックアンカー3を示す、(A)は伸長状態平面図、(B)は収縮状態平面図、(C)は背面図である。
【図8】下部サブバックアンカー4を示す、(A)は伸長状態平面図、(B)は収縮状態平面図、(C)は背面図である。
【図9】シールド発進の準備手順(その1)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図10】シールド発進の準備手順(その2)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図11】シールド発進の第1手順を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図12】シールド発進の第2手順を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図13】シールド発進の第3手順を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図14】シールド発進の第4手順を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔移動式バックアンカー1〕
本発明に係る移動式バックアンカー1は、発進立坑内においてシールド機Sの推進反力を受けるとともに、シールド機Sの前進に追従して移動可能とされる移動式バックアンカーである。
【0022】
シールド機Sの周囲に推進方向に沿って複数のレール部材5,5…が配設され、これら各レール部材5,5…に対して、レール部材5に沿って移動可能とされるとともに、レール部材5の任意の位置で固定可能とされるクランプ装置6を備え、かつシールド機S内に装備されたシールドジャッキ群7,7…の先端に1リング分のセグメント8が連結される。
【0023】
この構造条件の下で、前記移動式バックアンカー1は、2以上に分割された分割構造とされるとともに、機能的にメインバックアンカー2とサブバックアンカー3,4とに区分される。
【0024】
前記メインバックアンカー2は、シールド機Sの後端部に位置するとともに、前記クランプ装置6、6…群の内の幾つかに連結された反力支持部20と、この反力支持部20の前面側に一体的に連設され、先端面が前記セグメント8に連結されたプレス部21とからなり、
前記サブバックアンカー3,4は、シールド機Sの後端部に位置するとともに、前記クランプ装置6,6…群の内の幾つかに連結された反力支持部30,40と、この反力支持部30,40の前面側に該反力支持部30,40に固定された連結ジャッキ31,41を介して連結され、前後進自在とされるとともに、先端面が前記セグメント8に連結されたプレス部32,42とからなる。前記連結ジャッキは、外筒部が前記反力支持部を貫通した状態で保持され、ピストン部が前記プレス部に貫入した状態で連結され、前記連結ジャッキ31、41を収縮させた状態では、前記反力支持部30,40とプレス部32、42とが接触するようになっている。
【0025】
以下、更に具体的に詳述する。
【0026】
シールド機Sの周囲に推進方向に沿って複数のレール部材5,5…は、詳細には図3及び図4に示されるように、シールド機Sのスキンプレートの外側にシールド機Sを囲むように、シールド機Sの軸方向に沿って配設されたレール部材である。このレール部材5としては、H鋼材を横向きに配向したものであり、図4に示されるように、同じくH鋼材からなる支柱によって支持されている。なお、このレール部材5としては、後述するクランプ装置6との関係で、平板状の水平フランジ部を有する部材が使用され、H鋼材又はCT形鋼などが好適に使用される。
【0027】
前記レール部材5に沿って移動可能とされるとともに、レール部材5の任意の位置で固定可能とされるクランプ装置6は、市販のクランプ装置であり、詳細には、図5に示されるように、下面に走行ローラを有し、水平フランジ部の上面を走行可能とされるとともに、両側に水平フランジ部を上下方向に挟持するチャック部60、60を有する装置である。このクランプ装置6は、オックスジャッキ株式会社や建設機械系のレンタル・リース会社などより容易に入手が可能である。
【0028】
前記移動式バックアンカー1は、シールド機Sの後端部に位置し、図3に示されるように、シールド機Sのほぼ中央に配置されたメインバックアンカー2と、このメインバックアンカー2の上部側に配置された上部サブバックアンカー3と、前記メインバックアンカー2の下部側に配置された下部サブバックアンカー4とからなる3分割構造のバックアンカーである。
【0029】
前記メインバックアンカー2は、詳細には図6に示されるように、前記クランプ装置6,6…群の内の幾つかと連結された反力支持部20と、この反力支持部20の前面側に一体的に連設され、先端面が前記セグメント8に連結されたプレス部21とからなる。前記反力支持部20の両側にはブラケット部20a、20a…を有し、前記クランプ装置6、6…と連結される。前記プレス部21は、正面視で小判リング形を成す筒状部材であり、シールド機Sのスキンプレート内に挿入され、先端面がセグメント8に連結される。
【0030】
前記上部サブバックアンカー3は、詳細には図7に示されるように、前記クランプ装置6,6…群の内の幾つかに連結された反力支持部30と、この反力支持部30の前面側に該反力支持部30に固定された連結ジャッキ31を介して連結され、前後進自在とされるとともに、先端面が前記セグメント8に連結されたプレス部32とからなる。前記反力支持部30の両側にはブラケット部30a、30a…を有し、前記クランプ装置6と連結される。前記連結ジャッキ31は、外筒部31Aが前記反力支持部30を貫通した状態で保持され、ピストン部31Bが前記プレス部32に貫入した状態で連結され、前記連結ジャッキ31を収縮させた状態では、図7(B)に示されるように、前記反力支持部30とプレス部32とが接触するようになっている。前記プレス部32は、シールド機Sのスキンプレート内に挿入可能なように円弧状を成している。
【0031】
前記下部サブバックアンカー4も、詳細には図8に示されるように、前記クランプ装置6,6…群の内の幾つかに連結された反力支持部40と、この反力支持部40の前面側に該反力支持部40に固定された連結ジャッキ41を介して連結され、前後進自在とされるとともに、先端面が前記セグメント8に連結されたプレス部42とからなる。前記反力支持部40の両側及び下側にはブラケット部40a、40a…を有し、前記クランプ装置6と連結される。前記連結ジャッキ41は、外筒部41Aが前記反力支持部40を貫通した状態で保持され、ピストン部41Bが前記プレス部42に貫入した状態で連結され、前記連結ジャッキ41を収縮させた状態では、図8(B)に示されるように、前記反力支持部40とプレス部42とが接触するようになっている。前記プレス部42は、シールド機Sのスキンプレート内に挿入可能なように円弧状を成している。
【0032】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、シールドジャッキ7、7…と各バックアンカー2〜4との間にセグメント8を介在させるようにしたが、このセグメント8に代えて、該セグメント8に近似した形状のプレスリングを用いるようにしてもよい。
(2)上記形態例では、前記移動式バックアンカー1は、シールド機Sの後端部に位置し、図3に示されるように、上下方向中央に配置されたメインバックアンカー2と、このメインバックアンカー2の上部側に配置された上部サブバックアンカー3と、前記メインバックアンカー2の下部側に配置された下部サブバックアンカー4とからなる3分割構造としたが、例えば2分割構造として、一方をメインバックアンカーとし、他方をサブバックアンカーとしてもよい。
【0033】
〔シールド機Sの発進手順〕
以下、前記移動式バックアンカー1を用いたシールド機Sの発進手順について詳述する。
【0034】
〈準備手順〉
図9に示されるように、立坑内にH鋼材により発進架台9を組み立て、この発進架台9上にシールド機Sを組み立てる。シールド機S内では、1リング分のセグメント8を組み立てるとともに、このセグメント8にシールドジャッキ7,7…群の先端を連結する。また、立坑壁には、反力受け鋼材10を設置する。
【0035】
次に、図10に示されるように、シールド機Sの周囲に推進方向に沿って複数のレール部材5,5…を配設し、これら各レール部材5に対してレール部材5に沿って移動可能とされるとともに、レール部材5の任意の位置で固定可能とされるクランプ装置6を設ける。更に、メインバックアンカー2、上部サブバックアンカー3及び下部サブバックアンカー4からなる移動式バックアンカー1を設置する。
【0036】
〈第1手順〉
以上の準備手順が完了したならば、図11に示されるように、前記メインバックアンカー2及びサブバックアンカー3,4のクランプ装置6,6…(すべて)を固定し、かつサブバックアンカー3,4の連結ジャッキ31,41を収縮させた状態とし、前記シールドジャッキ7,7…を伸長させ、シールド機Sを所定長(1ストローク)だけ前進させる。
【0037】
〈第2手順〉
次に、図12に示されるように、前記メインバックアンカー2のクランプ装置6,6…のみを解放するとともに、メインバックアンカー2と連携しているシールドジャッキ7,7…のリリーフ弁を解放して自由に収縮できる状態とした上で、前記サブバックアンカー3,4の連結ジャッキ31(41)を伸長させて、前記セグメント8及びメインバックアンカー2を前進させる。
【0038】
本方法では、前記メインバックアンカー2のクランプ装置6,6…を解放した際でも、地山からの土圧や水圧によるシールド機Sのバックリングは、サブバックアンカー3,4によって支持されるようになっている。
【0039】
また、前記メインバックアンカー2と連携しているシールドジャッキ7,7…のリリーフ弁を解放し、前記サブバックアンカー3,4の連結ジャッキ31(41)を伸長させるため、ジャッキ間の同調制御が不要であり、油圧の制御が容易である。また、シールドジャッキ7,7…との間に、セグメント8を介在させているため、連結ジャッキ31(41)プレス力が周方向に均一化されるようになっている。
【0040】
〈第3手順〉
図13に示されるように、前記メインバックアンカー2のクランプ装置6,6…を固定した状態で、前記サブバックアンカー3,4のクランプ装置6,6…を解放した後、前記連結ジャッキ31(41)を収縮させて該サブバックアンカー3,4を前進させた後、サブバックアンカー3,4のクランプ装置6,6…を固定する。この状態は、第1手順の初期状態と同じである。
【0041】
以降は、第1手順から第3手順の繰り返しにより(図14は第4手順(図11の第1手順と同じ)である。)、シールド機Sを前進させ仮掘進終了位置まで掘り進んだならば、その後に本掘進に入る。
【符号の説明】
【0042】
1…移動式バックアンカー、2…メインバックアンカー、3…上部サブバックアンカー、4…下部サブバックアンカー、5…レール部材、6…クランプ装置、7…シールドジャッキ、8…セグメント、9…発進架台、10…反力受け鋼材、20・30・40…反力支持部、21・32・42…プレス部、31・41…連結ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑内においてシールド機の推進反力を受けるとともに、シールド機の前進に追従して移動可能とされる移動式バックアンカーであって、
シールド機の周囲に推進方向に沿って複数のレール部材が配設され、これら各レール部材に対してレール部材に沿って移動可能とされるとともに、レール部材の任意の位置で固定可能とされるクランプ装置を備え、かつシールド機内に装備されたシールドジャッキ群の先端に1リング分のセグメントが連結され、
前記移動式バックアンカーは2以上に分割された分割構造とされるとともに、機能的にメインバックアンカーとサブバックアンカーとに区分され、
前記メインバックアンカーは、シールド機の後端部に位置するとともに、前記クランプ装置群の内の幾つかに連結された反力支持部と、この反力支持部の前面側に一体的に連設され、先端面が前記セグメントに連結されたプレス部とからなり、
前記サブバックアンカーは、シールド機の後端部に位置するとともに、前記クランプ装置群の内の幾つかに連結された反力支持部と、この反力支持部の前面側に該反力支持部に固定された連結ジャッキを介して連結され、前後進自在とされるとともに、先端面が前記セグメントに連結されたプレス部とからなることを特徴とする移動式バックアンカー。
【請求項2】
前記セグメントに代えて、該セグメントに近似した形状のプレスリングを用いる請求項1記載の移動式バックアンカー。
【請求項3】
前記サブバックアンカーにおいて、連結ジャッキは外筒部が前記反力支持部を貫通した状態で保持され、ピストン部が前記プレス部に貫入した状態で連結され、前記連結ジャッキを収縮させた状態では、前記反力支持部とプレス部とが接触するようになっている請求項1,2いずれかに記載の移動式バックアンカー。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の移動式バックアンカーを用いた立坑内でのシールド発進方法であって、
立坑内でシールド機を組み立てたならば、シールド機の周囲に推進方向に沿って複数のレール部材を配設し、これら各レール部材に対してレール部材に沿って移動可能とされるとともに、レール部材の任意の位置で固定可能とされるクランプ装置を設け、かつシールド機内で1リング分のセグメントを組み立てるとともに、このセグメントにシールドジャッキ群の先端を連結し、請求項1〜3いずれかに記載の移動式バックアンカーを設置する準備手順と、
前記メインバックアンカー及びサブバックアンカーのクランプ装置を固定した状態で、シールドジャッキを伸長させシールド機を所定長だけ前進させる第1手順と、
前記メインバックアンカーのクランプ装置のみを解放するとともに、シールドジャッキのリリーフ弁を解放して自由に収縮できる状態とした上で、前記サブバックアンカーの連結ジャッキを伸長させて、前記セグメント及びメインバックアンカーを前進させる第2手順と、
前記メインバックアンカーのクランプ装置を固定した状態で、前記サブバックアンカーのクランプ装置を解放し、前記連結ジャッキを収縮させて該サブバックアンカーを前進させた後、クランプ装置を固定する第3手順とからなる手順の繰り返しにより、シールド機を順次前進させることを特徴とするシールド発進方法。
【請求項5】
前記セグメントに代えて、該セグメントに近似した形状のプレスリングを用いる請求項4記載のシールド発進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−41748(P2012−41748A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184240(P2010−184240)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(594140395)ヒロサワ機械株式会社 (4)
【Fターム(参考)】