説明

移動式パネルの固定構造

【課題】シンプルな構造にして、それぞれ移動自在な複数枚の移動式パネルを、床面に係合孔を設けずに、所望の位置で固定することができ、移動式パネルをガラス板で構成した場合であっても、ガラス板部分の大面積化が実現する。
【解決手段】室内の天井部に固着したレールに縣吊され走行移動自在なパネル2の下端部と床面5との固定構造において、パネル2の下端辺に固着した下部フレーム8内に昇降自在な圧接フレーム9を設け、該圧接フレーム9を昇降押圧手段によって下降させ、床面に圧接させることによってパネルを床面に固定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内空間の間仕切り壁、パーティションを移動自在とした移動式間仕切り壁に関し、特に間仕切り壁の下辺部を床面に固定する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物内のオフィス、集会所、宴会場、講堂、会議室等の室内空間をパーティションボード等の間仕切り壁によって間仕切りし、プライバシーを確保すると共に、騒音を遮断できる機能的な快適空間を確保してきた。
【0003】
さらに、使用目的の変化に対応した大きさの室内空間スペースに容易に変更できるように、間仕切り用のパーティションボードをスライド移動可能にして隅部位置に収納可能にして、複数の小空間を1つの大空間として使用できるようにしたものも普及している。
【0004】
このような移動式パーティションを床面に固定する構造としては、パネル下端部に設けたフランス落し軸を、床面に設けた孔部内に挿入して固定する固定方法が知られている。
【0005】
例えば、特開平5−10062号公報には、天井等に設けられたハンガーレールに多数枚のパネルを移動可能に吊下支持し、ハンガーレールに沿って各パネルを召し合わせた状態で同パネルを床面に固定する接床装置を作動させて接床框を床面に圧接後、丸落としを床面に設けた係合孔に係合させる間仕切りパネルの固定装置が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、特開平8−42238号公報には、大きな部屋を小さな部屋に仕切る移動間仕切りの縁部材に、前記大きな部屋の内側に接する接圧部材を伸縮可能に設けると共に、この接圧部材を自動的に伸縮させる駆動手段を前記移動間仕切り内部に設置したことを特徴とする移動間仕切りの接圧装置が開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平5−10062号公報
【特許文献2】特開平8−42238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の間仕切りパネルの固定装置は、操作摘みを上下方向に移動操作することによって、上下に移動するラックとこれに噛み合う歯車を介して接床框を床面に当接し、この段階で丸落し部分のみを床面に設けた係合孔内を下降させて係合するものであるため、接床框が床面に対して押圧固定するものではなく、床面との固定は丸落しと係合孔の係合によるものであり、床面にパネルの丸落しと係合する係合孔を設けなければならない。このため、係合孔を設けない位置でパネルを固定しようとしても、丸落しのみが床面を押圧することになり、接床框を床面に十分に固定させることはできない。
【0008】
また、特許文献2に記載の移動間仕切りの接圧装置については、移動間仕切り壁に設けた接圧部材を各移動間仕切り壁内に設けたシリンダーや駆動モーター等によって自動的に昇降させて床面の敷居等に押し付け固定するものであるため、エア配管や電気配線も必要となり、内部構造が複雑となる。
【0009】
また、移動間仕切りが不透明なパネルの場合には、接圧部材を駆動するシリンダー等の駆動部分が透視できないため問題ないが、透明、半透明、または着色したガラス板等で構成したパネルとする場合には、駆動シリンダー等の駆動部分を露出させないようにしなければならないため下部金属フレーム枠の高さが高くなり、パネルを前記ガラス板のみで構成する場合には、ガラス板部分の面積が小さくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記問題点、すなわち、シンプルな構造にして、それぞれ移動自在な複数枚の移動式パネルを、床面に係合孔を設けずに、所望の位置で固定することができ、移動式パネルをガラス板で構成する場合であっても、ガラス板部分の大面積化が実現できることを目的とする。
【0011】
すなわち、本発明は、室内の天井部に固着したレールに縣吊され走行移動自在なパネルの下端部と床面との固定構造において、パネルの下端辺に固着した下部フレーム内に昇降自在な圧接フレームを設け、該圧接フレームを昇降押圧手段によって直線状に下降させ、床面に圧接させることによってパネルを床面に固定するようにしたことを特徴とする移動式パネルの固定構造である。
【0012】
あるいは、本発明は、前記圧接フレームの昇降押圧手段として、前記下部フレームにラチェット歯車を設け、さらに押圧バネによって該ラチェット歯車と噛合しラチェット歯車の逆回転を防止するストッパー爪を設け、ラチェット歯車の正回転により圧接フレームを下降させ、ストッパー爪とラチェット歯車との噛合の解除操作で、復帰バネにより圧接フレームを上昇させるようにしたことを特徴とする上述の移動式パネルの固定構造である。
【0013】
あるいはまた、本発明は、前記ラチェット歯車と同軸で回転する円板状部にU字状の切欠部を設け、該切欠部内に内接する駆動ピンを圧接フレームに設けて、前記ラチェット歯車と同時に円板状部を回転させる時に切欠部内の駆動ピンが切欠部の範囲内にあって、駆動ピンの昇降軌跡が垂直方向となるように昇降できるようにしたことを特徴とする上述の移動式パネルの固定構造である。
【0014】
あるいはまた、本発明は、前記圧接フレームの下端面に弾性ゴムシートを貼着し、圧接フレームを床面に押し付けた時に、該ゴムシートを床面に圧接させることによって吊下げ移動式のパネルを床面に固定させるようにしたことを特徴とする上述のいずれかに記載の移動式パネルの固定構造である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、それぞれ移動自在な複数枚のガラス板で構成した間仕切り壁のそれぞれを独立して移動できるので、移動パーティションの所望のいずれか一部のみ、または全部をオープン状態とすることができる。
【0016】
また、移動パーティションの下端に設けた移動式パネルを床面に固定する場合には、床面に係合孔を設けず、圧接フレームを床面に押し付けるだけで固定させるので、所望の位置で固定することができる。
【0017】
さらに、ラチェット歯車と同軸で回転するように設けた円板状部のU字状の切欠部内に内接する駆動ピンが、前記ラチェット歯車と共に円板状部を回転させた時に切欠部内の範囲内で相対的に移動できるので、前記ラチェット歯車の回転だけで垂直方向に昇降でき、ラックやシリンダを設ける必要がないので、下部フレームの上下高さを低くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図6、図7に示すように、建物の室内のパーティション(間仕切り壁)1を設置する部分の天井に移動式パネル2の移動用のレール3と、前記移動式パネル2を収納するための収納スペース5を前記レール3の片側端部近傍となる室内隅部に配設した。
【0019】
また、前記レール3に沿って摺動かつ走行自在な吊下金具6より吊下ボルト7を垂下させ、該吊下ボルト7の下端に支持金具4が固定され、前記の各移動式パネル2、2、・・の上端部に設けた穿孔部に挿通したボルトとナットの締付からなる支持金具4によって吊下げ支持するものであり、移動式パネル2、2、・・はすべて同一レール3上を移動する。
【0020】
本発明は、このような室内の天井部に固着したレールに縣吊され走行移動自在な移動式パネル2の下端部を床面5に固定する構造である。
【0021】
図1、図2は、本発明の移動式パネルの圧接フレームの縦断面図であり、それぞれ面方向と厚み方向からみた固定前の縦断面図であり、図3、図4は、本発明の移動式パネルの圧接フレームの縦断面図であり、それぞれ面方向と厚み方向からみた固定後の縦断面図である。
【0022】
図1に示すように、パネルの下端辺全辺にわたって、図2に示すような縦断面がH型形状の下部フレーム8の上端側開口部内に介装部材を介してガラス板、樹脂板や化粧板等のパネルを装着し、該下部フレーム8の下端側の開口部内に断面略コ字状の圧接フレーム9を昇降自在に設け、該圧接フレーム9の開口部は上方に向けた状態とした。
【0023】
該圧接フレーム9は上昇させることにより、図1、図2に示すように下部フレーム8内に完全に収納された状態とすることができ、該圧接フレーム9を下降させれば図3、図4に示すように下部フレームの下端開口部から突出し、該圧接フレーム9を床面5と当接した状態とすることができる。
【0024】
圧接フレーム9の下端面はほぼフラット面を有し、該フラット面には弾性ゴムシート10を貼着して、圧接フレーム9を床面5に押し付けていくと、パネルは吊下げ状態から床面5での自立状態となるため、パネルの自重によって該ゴムシート10を圧縮変形させることができ、これによって移動式パネル2を床面5に固定させることができる。
【0025】
前記圧接フレーム9の昇降押圧手段として、前記下部フレーム8の内部にラチェット歯車11と該ラチェット歯車11と噛合するストッパー爪12を設けた。
【0026】
該ストッパー爪12は、略くの字形状、または略S字形状部材の略中心を軸として片側の先端側にラチェット歯車11と噛合する先端爪部12aを形成し、他端側と下部フレーム8間には押圧バネ13を設けて、該押圧バネ13の復元力により常時先端爪部12aがラチェット歯車11に噛み合うようにし、ラチェット歯車11が操作部20によって正回転させるときは、歯車の歯が先端爪部12aを押し上げることができるのでラチェット歯車11を正回転させることができ、操作部20によって逆回転方向に回転させようとしても先端爪部12aとの噛み合いによって逆回転を防止することができる。
【0027】
また、下部フレーム8と圧接フレーム9間には、それぞれの端部間同士を復帰バネ15、15で連結し、先端爪部12aをラチェット歯車11から離して、それぞれが噛合していない状態で、圧接フレーム9を上昇可能にして下部フレーム8内に納まるようにした。
【0028】
前記ラチェット歯車11を操作部20によって正回転させると、圧接フレーム9は復帰バネ15、15を引き伸ばしながら下降し、前記ストッパー爪12のくの字形状またはS字形状部材の中心軸に設けた解除操作部14を回転させて、ストッパー爪12とラチェット歯車11との噛合を解除して切り離す操作を行うと、引き伸ばされた復帰バネ15、15の復元力により圧接フレーム9を瞬時に上昇させることができる。
【0029】
前記ラチェット歯車11には、同軸で回転する円板状部16にU字状の切欠部17を設け、該切欠部17内に内接するように駆動ピン18を圧接フレーム9側に固着して設けたので、図5に示したように、前記ラチェット歯車11を約90度の角度範囲で回転させると、円板状部16の切欠部17内に内接する駆動ピン18は、円弧状の軌跡を描いて移動する切欠部17の範囲内で相対的に位置を変更できるので、駆動ピン18は、符号18’、18”で点線で示したように垂直方向に直線的に移動し、駆動ピン18に固着した圧接フレーム9の昇降軌跡も垂直方向となり、隣接するパネル2の配設後であっても互いに緩衝することなく昇降させることができる。
【0030】
以上、好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられる。
【0031】
尚、本発明で使用するパネル2としては、ガラス板、樹脂板、あるいは合板等が対象であり、下部フレーム8、および圧接フレーム9は、アルミニウム、あるいはステンレス等の金属製とするのが良い。
【0032】
移動式パネル2の下部フレーム8より圧接フレーム9を下降させる場合に、圧接フレーム9が床面5に当接した後、さらに圧接フレーム9を下降させようとすると、パネルは吊下げ状態から床面5での自立状態となるため、床面5からの反発力によって吊下げ支持されているパネル2自体を持上げてしまうのでパネルの自重によって該ゴムシート10を圧縮変形させることができ、通常、パネル2の自重により圧接フレーム9下面に貼着したゴムシート10が圧縮変形し、パネル2が床面5に固定される。
【0033】
移動式パネル2と床面5との固定は、圧接フレーム9を床面5に押し付けて行えば所望位置で固定できるが、特に、全ての移動式パネルを用いて室内を完全に仕切る場合には、全パネルを配設後、ドア付きのパネルに隣接するパネルだけにフランス落しを用いてドア側にパネル2がずれないようにするのが良い。
【0034】
さらには、ドアを有したパネル2とは反対側のレールの端部側に配設したパネル2についてもフランス落し等を設け、床面5にも受けた孔部に落とし込んで固定させ、圧接フレームを床面5に圧接するだけで固定したパネルを挟み込むようにすると良い。
【0035】
次いで、本発明の移動式パネルの床面5への固定方法について述べる。
【0036】
図6、図7に示すように、建物の室内の間仕切り位置端部に配設した収納スペース5内に格納された複数枚の移動式パネル2、2、・・より、天井面に設けたレール3に沿って吊下金具6及び支持金具4を介してガラス板等の移動式パネル2、2、・・を吊下支持し、レール3の下部の所望の間仕切り位置に移動式パネル2、2、・・を移動させた。
【0037】
各移動式パネル2は、収納スペース5内での格納時、およびレール3に沿って移動させる時は、前記断面H字状の下部フレーム8の下端側開口部内に圧接フレーム9を収納した状態で行う。
【0038】
本発明の移動式パネル2はレール3を敷設した所望の位置で固定できるが、移動式パネル2の全てを用いて室内を完全に仕切る場合には、全パネル2、2、・・を配設後、順次パネル2を床面5と固定していく。
【0039】
また、移動式パネルの全てを用いて室内を完全に仕切る場合は、全パネルを配設後、ドア付きのパネル2に隣接するパネル2に設けたフランス落しを床面5の孔部内に落とし込んで固定し、該パネルがドア側のパネルにずれ込まないようにさせる。
【0040】
各パネル2を床面5に固定させるには、ラチェット歯車11を操作部20によって正回転させて、圧接フレーム9を下降させる。各パネルの下部フレームに設けられたラチェット歯車11の軸部である操作部20だけを下部フレーム側面より露出させ、該軸部に着脱自在なハンドルを取り付け、これによってラチェット歯車11を正回転させると、圧接フレーム9は復帰バネ15、15を引き伸ばしながら下降する。
【0041】
また、各パネル2の床面5への固定を解除するには、前記ストッパー爪12のくの字形状またはS字形状部材の中心軸部に設けた解除操作部14を回転させて、ストッパー爪12とラチェット歯車11との噛合を解除して切り離す操作を行うと、復帰バネ15、15の復元力により圧接フレーム9を瞬時に上昇させることができる。尚、前記解除操作部14は、ボルト状で下部フレーム8の側面より露出している。
【0042】
前記ラチェット歯車11には、同一軸で回転する円板状部16にU字状の切欠部17を設け、該切欠部17内に内接する駆動ピン18は圧接フレーム9側に固着して設けたので、図5に示したように、前記ラチェット歯車11を約90度の角度範囲で回転させると、円板状部16の切欠部17は、円弧状の軌跡を描いて移動するが、該切欠部17内に内接する駆動ピン18は、切欠部17内の範囲内で相対的に内接位置が変化するので、駆動ピン18は垂直方向に直線的に移動することになり、駆動ピン18に固着した圧接フレーム9の昇降軌跡は垂直方向となり、隣接するパネル2が当接した状態にあってもパネル2が昇降時に互いに干渉することなく昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の移動式パネルの長手方向からみた固定構造の固定前の縦断面図。
【図2】本発明の移動式パネルの厚み方向からみた固定構造の固定前の縦断面図。
【図3】本発明の移動式パネルの長手方向からみた固定構造の固定後の縦断面図。
【図4】本発明の移動式パネルの厚み方向からみた固定構造の固定後の縦断面図。
【図5】本発明の圧接フレームの昇降機構を説明する図。
【図6】本発明の移動式パネルの全体正面図。
【図7】本発明の移動式パネルの全体平面図。
【符号の説明】
【0044】
1 パーティション(間仕切り壁)
2 パネル
3 レール
4 支持金具
5 床面
6 吊下げ金具
7 吊下げボルト
8 下部フレーム
9 圧接フレーム
10 ゴムシート
11 ラチェット歯車
12 ストッパ爪
13 押圧バネ
14 解除操作部
15 復帰バネ
16 円板状部
17 切欠部
18 駆動ピン
19 フランス落し
20 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の天井部に固着したレールに縣吊され走行移動自在なパネルの下端部と床面との固定構造において、パネルの下端辺に固着した下部フレーム内に昇降自在な圧接フレームを設け、該圧接フレームを昇降押圧手段によって直線状に下降させ、床面に圧接させることによってパネルを床面に固定するようにしたことを特徴とする移動式パネルの固定構造。
【請求項2】
前記圧接フレームの昇降押圧手段として、前記下部フレームにラチェット歯車を設け、さらに押圧バネによって該ラチェット歯車と噛合しラチェット歯車の逆回転を防止するストッパー爪を設け、ラチェット歯車の正回転により圧接フレームを下降させ、ストッパー爪とラチェット歯車との噛合の解除操作で、復帰バネにより圧接フレームを上昇させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の移動式パネルの固定構造。
【請求項3】
前記ラチェット歯車と同軸で回転する円板状部にU字状の切欠部を設け、該切欠部内に内接する駆動ピンを圧接フレームに設けて、前記ラチェット歯車と同時に円板状部を回転させる時に切欠部内の駆動ピンが切欠部の範囲内にあって、駆動ピンの昇降軌跡が垂直方向となるように昇降できるようにしたことを特徴とする請求項2記載の移動式パネルの固定構造。
【請求項4】
前記圧接フレームの下端面に弾性ゴムシートを貼着し、圧接フレームを床面に押し付けた時に、該ゴムシートを床面に圧接させることによって吊下げ移動式のパネルを床面に固定させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動式パネルの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−183360(P2006−183360A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379411(P2004−379411)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)