説明

移動式ビニールハウス

【課題】ビニールハウスの形態を保持した状態で別の圃場に移動できる移動式ビニールハウスを提供すること。
【解決手段】
ビニールハウスの本体の下部に移動用車輪を複数個配設し、ビニールハウスの本体は、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動用車輪により左右一対のレール上を移動可能とした移動式ビニールハウスである。また、レール間にはビニールハウス本体内で生育可能な圃場よりも広い面積を有する圃場を配設し、ビニールハウスの本体は、ビニールハウス本体内で生育可能な圃場以外の圃場にもビニールハウスの形態を保持した状態で移動可能とした移動式ビニールハウスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の上に温室で農作物を生育可能とするビニールハウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビニールハウスは、鋼材を躯体として合成樹脂のフィルムで被覆する構造を有しており、雨や結露による農作物への影響を防ぐ効果を有する。しかし、従来のビニールハウスでは、一定箇所に固定された状態であるので連作せざるを得ず、この連作のため、収量が低下する問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、一定箇所に固定された圃場以外の圃場に移動することができる農業用移動式ハウスが開示されている。この特許文献1に記載のビニールハウスは、ハウスフレームと、入口用枠と、後方枠と、接続金具と、ビニールシートと、シート張りバンドと、らせん杭が組立分解自在の構造に形成され、必要に応じて所望する箇所に移動して使用できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−169548号公報
【発明の概要】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のビニールハウスは、別の場所に移動するには、ビニールハウスの本体を構成する部品を取外しして、移動した後にまたそれらの部品を組み立てる作業が必要であった。このため、取外しする作業に手間が生じていた。
【0006】
また、前記特許文献1に記載のビニールハウスとは異なり、広い圃場を覆うビニールハウスを設置すると、ビニールハウス内を温室するにはその全体を温室にする必要があるので、生育に必要な圃場以外にも温室にする必要があり、暖房機の無駄な消費量が増える問題が生じる。
【0007】
そこで、本願発明は、ビニールハウスの形態を保持した状態で別の圃場に移動できる移動式ビニールハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ビニールハウスの本体の下部に移動用車輪を複数個配設し、ビニールハウスの本体は、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動用車輪により左右一対のレール上を移動可能としたことを特徴とする移動式ビニールハウスである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、レール間にはビニールハウス本体内で生育可能な圃場よりも広い面積を有する圃場を配設し、ビニールハウスの本体は、ビニールハウス本体内で生育可能な圃場以外の圃場にもビニールハウスの形態を保持した状態で移動可能としたことを特徴とする請求項1に記載の移動式ビニールハウスである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、レールに沿って所定間隙を有して複数個の繋止具を配設し、ビニールハウス本体は、各繋止具によりレール上にて繋止可能としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動式ビニールハウスである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の移動式ビニールハウスは、ビニールハウスの形態を保持した状態で、移動できるので、一定箇所の圃場にも温室で農作物の生育が可能となる。また、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動できるので、従来のように部品を取外しする手間生じず移動することができる。また、期間毎に圃場を移動して農作物を生育できるので、同じ土地で連作する必要もなく、収量も上げる効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の移動式ビニールハウスは、固定された圃場以外にも移動させて、移動した圃場で農作物を生育することができる。例えば、季節毎に、レール上のいずれかにおいてビニールハウス本体を移動させることにより、一定箇所に固定された圃場以外にも農作物の生育をすることができる。
【0013】
請求項3に記載の移動式ビニールハウスは、移動するレールに沿って、所定間隔を有して複数個の繋止具を配設しているので、レール間に配設されている圃場内であればどの圃場においてもビニールハウス本体を移動させて、このビニールハウス本体を繋ぎ止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る実施形態の移動式ビニールハウスの全体構造を示す正面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の移動式ビニールハウスの全体構造を示す側面図である。
【図3】本発明に係る実施形態の移動式ビニールハウスの移動車輪の構造を示す正面図である。
【図4】本発明に係る実施形態の移動式ビニールハウスの移動車輪と繋止具の構造を示す側面図である。
【図5】本発明に係る実施形態の移動式ビニールハウスの移動の状態を説明する斜視図である。
【図6】本発明に係る実施形態の移動式ビニールハウスの移動の状態を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る移動式ビニールハウスは、ビニールハウスの本体の下部に移動用車輪を複数個配設し、ビニールハウスの本体は、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動用車輪によりレール上を移動可能としている。
【0016】
ここで、ビニールハウスの形態を保持した状態とは、鋼材を躯体として合成樹脂のフィルムで被覆した状態のままで別の圃場に移動できることをいう。すなわち、ビニールハウスを移動するのに、ビニールハウス本体を構成する部品などを取外しすることなく、移動することをいう。
【0017】
また、別の特徴的構造として、レール間に各期間毎に生育できる複数の土壌を配設し、ビニールハウスの本体は、各土壌毎にビニールハウスの形態を保持した状態で移動して農作物を生育可能としている。
【0018】
これにより、本実施形態におけるビニールハウス本体は、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動できるので、一定箇所の圃場にも温室で農作物の生育が可能となる。また、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動できるので、従来のように部品を取外しする手間生じずに移動することができる。
【0019】
さらに、別の特徴的構造として、レールに沿って所定間隙を有して複数個の繋止具を配設し、ビニールハウス本体は、各繋止具によりレール上にて繋止可能としている。
【0020】
これにより、本実施形態におけるビニールハウス本体は、レール間に配設されている圃場内であればどの圃場においてもビニールハウス本体を移動させて、このビニールハウス本体を繋ぎ止めることができる。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。
実施例における移動式ビニールハウスは、図1〜図2に示すように、通常のビニールハウスと同じように、小屋の形状のビニールハウス本体Aを有する。
【0022】
ビニールハウス本体Aは、図1に示すように、棟本体を構成する棟本体部11と、その棟本体部の外方にて合成樹脂製のフィルムを支持しながら張設するフィルム張設部12とにより構成されている。
【0023】
棟本体部11は、ビニールハウス本体Aの骨組みを形成するもので、底枠13と、支柱14と、梁15と、垂木16と、棟木17とにより構成されている。各部材は、みぞ形鋼で形成されている。
【0024】
底枠13は、ビニールハウスの長さ方向に伸延して配設された縦フレーム13a(図3に示す)と、幅方向に伸延して配設された横フレーム13b(図4に示す)とにより平面視枠形状に構成されている。
【0025】
図1に示すように、フィルム張設部12には、前側壁部18aと後側壁部18bと左側壁部19aと右側壁部19bとの各壁部と、屋根部20とのそれぞれに合成樹脂製のフィルムが外側から被覆されている。
【0026】
また、図1及び図2に示すように、前側壁部18a及び後側壁部18bには、扉体21,21を配設している。扉体21,21の開閉によりビニールハウス本体A内に人が自由に出入り自由としている。また、前側壁部18a及び後側壁部18bには、扉体21の上方に換気扇22本体が据え付けられている。
【0027】
また、左側壁部19a及び右側壁部19bには、ビニールハウス本体A内を換気するために、合成樹脂製のフィルム24の一部を巻き上げる巻上装置23が配設されている。
【0028】
さらに、ビニールハウス本体Aの内部には、図示しない暖房機などを配設することができる。この暖房機を設けることにより、ビニールハウス本体Aの内部を温室にして温室栽培することができる。
【0029】
上記のように、ビニールハウス本体A内で温室栽培するには、ビニールハウス本体A内を略密閉された空間にする必要がある。レールR間には、ビニールハウス本体A下部と圃場との間に隙間が生じるので、この隙間を埋めるように塞ぎ板25を配設するようにしている。
【0030】
ビニールハウス本体Aの下部には、移動車輪30が配設されている。移動車輪30は、図3及び図4に示すように、底枠13の横フレーム13bの下部に所定間隔を有して離間して配設されている。移動車輪30は、図3に示すように、底枠13より下方に左右一対の支持ブラケット31,31を突出させ、その支持ブラケット31,31間に車軸32を配設し、その車軸32を軸として車輪33を回転自在に配設している。
【0031】
レールRは、図1に示すように、左右一対で構成され、その長さ方向に伸延して設けられる。レールRは、図3に示すように、打設されたコンクリート台座34の上に沿って、上向きに凸状として配設されている。なおレールRの形状は、上記のような上向き凸状に形成されたものに限られず、断面視凹形状の溝を有するものでもよい。
【0032】
そして、上向きに凸状に突出したレールR上に、前記移動車輪30を載置している。これにより、ビニールハウス本体AはレールR上において移動可能としている。
【0033】
また、図4に示すように、レールRに沿って所定間隙を有して複数個の繋止具35を配設している。繋止具35は、コンクリート台座34の側壁面に配設された固定具36と、固定具36と取付具37を連結する連結具38とにより構成されている。
【0034】
固定具36は、コンクリート台座34に固定するための固定片36aと連結具38を取り付けるための取付片36bとを有する。固定片36aは、コンクリート台座34の側面と平行に垂設された面を有し、その面にコンクリート台座34に取り付けるためのボルト挿入孔36cが穿設されている。また、取付片36bは上記固定片36aより垂直に配設された面を有し、その面に挿入孔36dが穿設されている。
【0035】
取付具37は、ビニールハウス本体Aの底枠13の横フレーム13bの側部に所定間隔を有して複数個配設されている。取付具37には、連結具38としての長ボルト38aの基端側を挿入する挿入する挿入孔37aが穿設されている。連結具38は、長ボルト38aで構成されている。
【0036】
そして、繋止具35は、この長ボルト38aを固定具36の挿入孔36dと取付具37の挿入孔37aとに挿入し、固定具36側の取付片36bの上面側と下面側にナット39で固定することにより、ビニールハウス本体AをレールR上において繋止するようにしている。
【0037】
また、上記繋止具35に加えて、ビニールハウス本体A側方の地面に図示しないアンカー杭を打ち、そのアンカー杭とビニールハウス本体Aの側壁部上部との間に図示しない連結チェーンを配設することによりビニールハウス本体AをレールR上において繋止するようにしてもよい。
【0038】
さらに、底枠13の左右側部にはゴムカバー40が固設されている。ゴムカバー40は、その上端部が底枠13の横フレーム13bの側壁部に固定され、下端部は自由端とし、中途部はコンクリート台座34の上部角部に持たせ掛けている。
【0039】
ビニールハウス本体Aは、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動できるので、移動時の部品などを取外し及び取り付ける手間が生じない。また、期間毎にビニールハウスを移動して農作物を生育できるので、同じ土地で連作する必要もなく、収量も上げる効果を有する。
【0040】
そして、左右一対で構成したレールR間には、ビニールハウス本体A内で農作物を生育する圃場Gが配設される。圃場Gは、ビニールハウスで生育可能な圃場G1と、その生育可能な圃場以外の圃場G2とすることができる。ビニールハウス本体A内で生育可能な圃場G1よりも広い面積を有する圃場G2を配設する。
【0041】
以下、上記のような構成を有するビニールハウス本体Aにおいて、本実施例におけるビニールハウス本体Aを移動する方法について図5及び図6を参照して説明する。
【0042】
まず、圃場G1を有するレールR上で繋ぎ止めされているビニールハウス本体Aにおいて、固定具36と取付具37との間に連結して留められた連結具38としての長ボルト38aを取外しする。
【0043】
次いで、ビニールハウス本体Aの前側壁部18aの下部と、後側壁部18bの下部とに設置していた塞ぎ板25を取外しする。また、ビニールハウス本体A内部で移動時に支障があるものを取外しする。
【0044】
そして、ビニールハウス本体Aを、図5及び図6に示すように、人手や牽引物、現在使用していた圃場G1から別の圃場G2に移動させる。人手の場合は、ビニールハウス本体Aを移動したい方向に手で押すなどして移動させる。牽引物を使用する場合は、移動側より牽引してビニールハウス本体Aを移動させる。
【0045】
ビニールハウス本体Aを移動させた後は、その移動させた場所に設置されている固定具36と、ビニールハウス本体A側に設置されている取付具37との間に、長ボルト38aを連結することにより、ビニールハウス本体Aを別の圃場G2にて繋止具35にて繋止する。
【0046】
このようにして、本実施例におけるビニールハウス本体Aは、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動できるので、移動時にビニールハウスを構成する部品を取外しする手間が生じない。
【0047】
また、本実施例におけるビニールハウスは、固定された圃場G以外にも移動させて、移動した圃場Gで農作物を生育することができる。また、例えば、圃場Gを変更して移動しながら期間毎に農作物を生育できるので、同じ土地で連作する必要もなく、収量も上げることができる。
【符号の説明】
【0048】
A ビニールハウス本体
R レール
G 圃場
30 移動車輪
35 繋止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスの本体の下部に移動用車輪を複数個配設し、
ビニールハウスの本体は、ビニールハウスの形態を保持した状態で移動用車輪により左右一対のレール上を移動可能としたことを特徴とする移動式ビニールハウス。
【請求項2】
レール間にはビニールハウス本体内で生育可能な圃場よりも広い面積を有する圃場を配設し、
ビニールハウスの本体は、ビニールハウス本体内で生育可能な圃場以外の圃場にもビニールハウスの形態を保持した状態で移動可能としたことを特徴とする請求項1に記載の移動式ビニールハウス。
【請求項3】
レールに沿って所定間隙を有して複数個の繋止具を配設し、
ビニールハウス本体は、各繋止具によりレール上にて繋止可能としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動式ビニールハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−24060(P2012−24060A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168851(P2010−168851)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(510205995)株式会社壽総合建設 (1)
【Fターム(参考)】