説明

移動式圧縮ガス分配装置

【課題】輸送手段を用いて運搬される移動式の圧縮ガス分配装置。
【解決手段】圧縮ガス分配装置を運搬する輸送手段の駆動に用いられる駆動ユニットと、少なくとも1つの、圧縮された媒質の貯蔵に適する貯蔵容器と、1基もしくは複数基の上記貯蔵容器が圧縮ガス分配装置によって圧縮ガスを充填される外部の貯蔵容器に連結される少なくとも1個の導管と、少なくとも1基の圧縮機と、を含んで構成される移動式の圧縮ガス分配装置。本発明において、前記圧縮機の1基または少なくとも1基が、前記輸送手段の駆動ユニットと、該駆動ユニットによって駆動され得るような態様で有効に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送手段を用いて運搬される移動式の圧縮ガス分配装置、特に移動式の水素補給ステーションであって:
− 圧縮ガス分配装置を運搬する輸送手段の駆動に用いられる駆動ユニットと;
− 少なくとも1基の、圧縮された媒質の貯蔵の適する貯蔵容器と;
− 前記1基または複数基の貯蔵容器を、圧縮ガス分配装置によって充填されるべき外部貯蔵装置に連結できる少なくとも1個の導管と;
− 少なくとも1基の圧縮機と
を含んで構成される移動式圧縮ガス分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、「輸送手段」という用語は、それによって圧縮ガス分配装置を運搬し得る、あらゆる種類、タイプの車両、航空機及び船舶を指すものと解せられる。
【0003】
暫く前から、水素駆動車での初期実証試験が実施されている。この場合、これら自動車の燃料補給は、固定された水素補給ステーション −但し、それらの数は現在のところ数えるほどしかない− で行われるか、移動式の水素補給ステーションを用いて行われる。これら移動式水素補給ステーションは、現在、それらの使用場所もしくは設置場所へ、トラックを用いて輸送されている。そのような移動式水素補給ステーションは、典型的には1基または複数基の水素貯蔵容器、1基の圧縮機、該移動式水素補給ステーションと水素ガス補給を受けるべき自動車とを連結することができる1個の導管または継手システム、及び補給を受ける自動車に送られる水素ガスの圧縮に用いられる1基の圧縮機を含んで構成される。
【0004】
そのような水素補給ステーションは、典型的にはその設置場所で、利用できるインフラストラクチュア(電力供給施設、上水道施設など)に接続される。これに代わる方式として、移動式水素補給ステーションもしくはそれを運搬する輸送手段が、さらに、圧縮ガス分配装置または水素補給ステーションの稼働に必要な電力を発生するための発電機を少なくとも1基有していても良い。この代替方式では、原則的に一切の外部イフラストラクチュアを必要としない。しかしながら、この代替方式により大きなスペースを必要とし、そのため場合によってはより大型の輸送手段を必要とする。さらにこの代替方式の場合、発電機または供給システムと、いわゆるex領域(Ex-Bereich)の間の分離は、個々の構成部品に十分な間隔を設けること(輸送手段のサイズが大きくなる)、あるいはガス漏れしない分離(重量が増大する)が実現されるか、実現可能な場合を除き不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−32053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原理上は、いわゆる高圧貯蔵タンクシステム、すなわち水素ガスが1基または複数基の貯蔵容器内に比較的高い圧力で貯蔵されており、そのため燃料補給を受ける乗用車に水素ガス補給を行うために圧縮機を必要としない方式も実現することができる。しかるにこの方式は、貯蔵容器への再充填が、それに適する場所でしか行われ得ないという短所がある。それに加えて、上記1つまたは複数の貯蔵容器は複数回の補充プロセス実行後にガスが放出される結果、補給をうけるべき貯蔵容器中または自動車中には、その都度の貯蔵圧力までしか分配することができない。
【0007】
本発明の課題は、圧縮水素ガス分配に適するその種の圧縮ガス分配装置、特に移動式の水素補給ステーションであって、上述のような欠点が避けられ、かつ特に外部のインフラストラクチュアを必要としないような装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、この種の圧縮ガス分配装置であって、圧縮機または複数基ある圧縮機の内の少なくとも1基が、輸送手段の駆動ユニットと、該駆動ユニットによって駆動され得る様態で有効に連結されていることを特徴とする装置が提案されている。
【0009】
本発明の移動式圧縮ガス分配装置のさらに有利な実施形態であり、本発明の従属請求項に示される構成要件は:
− 少なくとも1つのエネルギーを消費する補助システムが備えられているならば、該補 助システムまたは複数の補助システムの内の少なくとも1つが、前記輸送手段の駆動 ユニットと、この駆動ユニットによって駆動され得る態様、及び/またはエネルギー 供給され得るような態様で有効に連結されており;
− 圧縮機と駆動ユニットの間の有効な連結、及び/または圧縮機と補助システムの間の 有効な連結が、1つもしくは複数の流体圧作動装置の形態で実現されており;
− 圧縮機と駆動ユニットの間の有効な接続、及び/または圧縮機と補助システムの間の 有効な連結が、確動係合(Formschlussige Verbindung)、摩擦係合(Reibschlussi ge Verbindung)及び/または非確動係合(Kraftschlussige Verbindun)のうちの1 つまたは複数の形態で実現されており;
− 少なくとも1基の発電機が備えられており、かつこの発電機が駆動ユニットによって 駆動され得るような様態で該発電機が駆動ユニットに有効に連結されており;
かつ
− 圧縮ガス分配装置を運搬する輸送手段が冷却システムを有するならば、該冷却システ ムが、上記圧縮ガス分配装置から分配される圧縮ガスを、少なくとも一時的に冷却す るように構成されていること
を特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明による移動式圧縮ガス分配装置は、使用場所に存在するインフラストラクチュアから独立して利用できるという長所を有する。また、従来必要とされた接続作業が全く不要となるので、使用場所に到着後、より迅速に稼働可能な状態になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
さて、本発明に従って、牽引用または運搬用の輸送手段の駆動ユニットは、圧縮機に動力を供給するために利用される。好ましくは、該駆動ユニットと圧縮機の連結は、1個の(補助)液圧システムを介して行われる。このシステムは駆動ユニットに接続されており、本発明の圧縮ガス分配装置の運転者または操作者がスイッチを入れることができる。接続されているシステムの制御は、輸送手段に所属する、特に必要なエネルギー量を考慮し、それに従って適合せしめられた電子装置を用いて行われることが好ましい。
【0012】
圧縮機の駆動は、液圧作動装置を介して行われることが好ましい。その種の装置は、圧縮機を駆動し得るために必要なトルクを持っている。圧縮機のエネルギー消費量の調節は、上記液圧モータに到達する作動液の量を介して行うことができる。この場合、調節は補助駆動手段に付属するスイングポンプ、もしくは他の流量に関する制御変数を用いて行われる。このようにして、駆動ユニットが圧縮機の駆動に必要なエネルギーを発生し得ることが保証される。液圧システムが使用される場合、それに応じてエネルギー供給が前記Ex領域から確実に分離されることも保証される。駆動ユニットと圧縮機駆動装置の間の接続は、作動油で満たされた配管システムのみを介して行われる。該配管システムは十分な高圧下にあるので、圧縮されるべき媒質、すなわち圧縮されるべき水素ガスがこの導管システムに侵入する可能性はない。
【0013】
設計によっては、この種の圧縮ガス分配装置は、さらに、例えば送水ポンプ、冷却風ファン、空気圧縮機等のようなエネルギーを消費する補助システムを有する。有利な方式では、その種の補助システムも駆動ユニットと、それによって駆動され得るような態様、及び/または該駆動ユニットによってエネルギーを供給されるような態様で接続される。有利な方式では、駆動ユニットと補助システムの間のこの接続も、液圧作動装置によって行われる。
【0014】
輸送手段によって運搬される圧縮ガス分配装置の制御、もしくは上記制御に必要なエネルギーの供給も、輸送手段の駆動ユニットを介して行われる。そのために、上記駆動ユニット、及びそれに割り当てられ、輸送手段の電気系統に電流を供給する発電機は、それに応じて適切な大きさに定められる必要がある。
【0015】
これに加えて、あるいは代わりに、1基の追加発電機が設置されても良いが、該発電機も液圧作動装置を介して前記駆動ユニットと有効に接続されていることが好ましい。
【0016】
この種の移動式圧縮ガス分配装置の場合における基本的な問題は、環境条件の変化、特に環境温度の変化である。さらに、燃料補給を受ける車両に供給される水素ガスは、通常、燃料補給を受ける車両の燃料貯蔵容器に注入される以前に冷却されなければならない。これに必要なエネルギーが、圧縮ガス分配装置を運搬する輸送手段の冷却システムによって供給されるようにすると有利である。圧縮ガス、すなわち水素ガスを冷却するために必要となる追加の熱交換器は、輸送手段の冷却システムをより高価かつ複雑にするものの、この方式をとらなければ当該圧縮ガス分配装置に接続しなければならないであろう外部冷却システムの設置は不要になる。
【0017】
冒頭に説明した従来技術と比較する時、本発明による移動式圧縮ガス分配配置は、使用場所に存在するインフラストラクチュアから独立して利用できるという長所を有する。また、従来必要とされた接続作業が全く不要となるので、使用場所に到着後、より迅速に稼働可能な状態になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式の圧縮ガス分配装置、特に輸送手段によって運搬される移動式の水素補給ステーションであって:
− 圧縮ガス分配装置を運搬する輸送手段の駆動に用いられる駆動ユニットと;
− 少なくとも1基の、圧縮された媒質の貯蔵に適する貯蔵容器と;
− 少なくとも1個の導管であって、それを通じて上記1基または複数基の貯蔵容器が、圧縮ガス分配装置によって充填されるべき1つの外部貯蔵容器に接続され得る導管と;
− 少なくとも1基の圧縮機と
を含んで構成される移動式圧縮ガス分配装置であって、上記圧縮機または少なくとも1基の圧縮機が輸送手段の駆動ユニットに、該駆動ユニットによって駆動され得るような態様で有効に連結されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
さらに少なくとも1つのエネルギーを消費する補助システムが追加設置されており、かつ該補助システムまたは複数ある内の少なくとも1つの補助システムが輸送手段の駆動ユニットと、該駆動ユニットによって駆動され得る、及び/またはエネルギーを供給され得るような態様で有効に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の移動式圧縮ガス分配装置。
【請求項3】
圧縮機と駆動ユニットの間の有効な連結、及び/または圧縮機と補助システムの間の有効な連結が、1つまたは複数の流体圧作動装置の形で実現されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の移動式ガス分配装置。
【請求項4】
圧縮機と駆動ユニットの間の有効な連結、及び/または圧縮機と補助システムの間の有効な連結が、1個または複数個の確動係合、摩擦係合、及び/または非確動係合の形で実現されていることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動式圧縮ガス分配装置。
【請求項5】
少なくとも1基の発電機が備えられており、該発電機が駆動ユニットと、該駆動ユニットによって駆動され得るような態様で有効に連結されていることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動式圧縮ガス分配装置。
【請求項6】
圧縮ガス分配装置を運搬する輸送手段が1つの冷却システムを有しており、該冷却システムが、圧縮ガス分配装置から分配される圧縮ガスを少なくとも一時的に冷却することを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動式圧縮ガス分配装置。

【公開番号】特開2012−154486(P2012−154486A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13890(P2012−13890)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシャフト (106)
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Klosterhofstrasse 1, D−80331 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】