説明

移動式塗装小屋

【課題】移動式塗装小屋の提供。
【解決手段】移動式塗装小屋は、ローラー要素(6)を具備して移動可能なモジュール(1)からなり、従って、さまざまな場所で使用できる。その塗装小屋は、修理機器(2)、空気吸引及びフィルター手段(3)、乾燥手段(4)および照明手段(5)からなる、修理作業の実施に必要な各種の要素を統合してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小中規模の乗り物修理の塗装作業用に設計された塗装小屋に関する。
本発明の目的は、作業時間を最適化でき、動くことができ、それが故に異なった囲まれた場所で使用することができ、修繕作業を行うのに必要な全ての要素を統合した、非常に多用途性に富んだ作業小屋(キャビン)を開発することにある。
【背景技術】
【0002】
現在、市場には、小中規模の乗り物に対する修理たる塗装作業をなすためのいくつかのシステムが存在する。それらの中でも、乗り物(自動車等)と、乗り物に近づけられると共に、そのエリアで発生する汚染された空気を吸引し、塗料をろ過し、溶媒を保持して空気を作業場所に戻す移動式設備とを中に入れることが必要な旧来の塗装用キャビン・オーブンをあげることができる。これらのシステムは、上部に配置された空気注入式のプリナム部(訳注:内圧が外気圧より高い部位)を介して作業場にクリーンな空気を戻す三側面吸引ボックスからなる。
【0003】
別のシステムは、塗料および活性炭フィルターを含んで固定設置された吸引ボックスからなる。その活性炭フィルターは、ホースによって、自動車に取り付けられた一種のマスク材に連結されており、それを通じて塗装時に生じた汚染された空気が吸引されるものである。
【0004】
両装置においては、第1のものは移動式であり第2のものは固定的であるけれども、敷地の外への空気の放出により、吸引と空気浄化だけが起こる。そして、ホースにつながれたこのマスク材によってある種の機動性を確保している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の移動式塗装小屋は、個人所有の乗用車、産業用車両その他の塗装に適用可能なものであり、修理機器、空気吸引(機)、フィルター手段、乾燥手段および照明手段を単一モジュール、即ち(又は)一つの家具に統合するものである。前記モジュールは、移動を可能にして、それがために異なる車両への適用を容易にするローラー要素(小型の車輪)を具備している。
【0006】
このように、塗装小屋の使用は固定した場所に限定されず、しかも、新しい車両の塗装作業の開始が別の車両による塗装作業用空間の占拠によって条件付け(制約)を受ける必要が無いので、多目的の使用および作業時間の最適化が達成される。その名が示すように、この移動小屋は移動できるので、違う車両がある別の場所で使用することができる。
【0007】
従って、移動式モジュール内に全ての必要な装備(設備)を統合することで、小中規模の修理に関する全ての塗装作業を迅速且つ簡潔に行うことが可能になる。
【0008】
モジュールに統合されている空気吸引およびフィルター手段は、電動モーターで作動する内部遠心ファンと、吸引スクリーンであって、それを介して空気が吸引されると共に、残留蒸気を吸い込み、塗装作用としてスプレー(噴霧)する吸引スクリーンと、フィルター手段とを備える。そのフィルター手段は、好ましくは、いくつかの組み合わされたフィルターと、空気をろ過する活性炭床とを備えるものであり、通常、その後に、好ましくはモジュールの上部に配設された排気口を介して作業場に(空気を)放出するために空気を完全にきれいな状態にする。補足的には、排気口の後に、好ましくは作業者領域の上方に配置された固定式又は移動式のプリナム部(plenum)(訳注:内圧が外気圧より高い部位)を採用することもできる。その場合、それは再び空気をろ過し、吸引スクリーンによって再度吸引されることになる垂直空気流を生み出す。
【0009】
吸引スクリーンがモジュールに統合されること、及び、閉じ位置にあるときに全体的または部分的に前記吸引スクリーンを覆うドアを開くことにより接近可能であることは、好ましい。別のありうる解決策としては、この吸引スクリーンがアームから吊り下げられ、及び/又は、モジュールから引き出されることも可能である。
【0010】
モジュールは、塗装ガン、サンダー(砂まき装置)、クリーニングペーパー、へら、溶剤、紙、接続ホースなどの修理作業に必要な道具や材料を含むのみならず、研磨および塗装の機械、並びに制御パネルに提供される調節・ろ過及び空気潤滑化装置をも備えた修理機器を一体的に内包している。モジュールのローラー要素は、1又は2名の作業者が押すことで引きずられる固定式ホイール(車輪)及び/又はガイドからなってもよい。これらのホイールのいくつかは、モーターにつながれても良い。
【0011】
修理作業、特に塗装は、通常、起動された空気吸引及びフィルター手段によって実行される。この作業が一旦なされるや、乾燥手段が起動される。
【0012】
乾燥手段は、好ましくは、乾燥スクリーン、通常は赤外線スクリーンを備える。そのスクリーンは、伸張式多関節展開装置に取り付け可能であり、その伸張式多関節展開装置は、モジュール上にまとめられた回転伸縮アームから吊り下げられている。この場合、不使用位置において前記赤外線スクリーンを収納するドアを具備した区画を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、赤外線スクリーンは、対応するドアを開いた後にモジュールから取り除かれ、回転伸縮アーム及び伸張式多関節展開装置の動作により、乾燥したい対象の車両の領域と反対側の位置に配置される。
【0014】
別の実施形態では、乾燥手段は、赤外線スクリーンを、紫外線スクリーンやそれに相当する修理技術が求める他の設備によって置き換えることができる。
【0015】
照明手段は、好ましくは、照明スクリーンを具備したドアに具体化される。ただし、前記照明スクリーンは、モジュールの別の場所(例えば屋根)や伸縮アームに配置可能である。このドアは、閉じ位置において吸引スクリーンを部分的に覆う。ひとたびドアが畳まれると、照明スクリーンはスイッチオンとなり、作業者の作業領域を照らし、同時に吸引スクリーンへの空気の吸い込みのために通路を無障害状態にする。
【0016】
移動式塗装小屋の好ましい実施形態によれば、その動作は次のように起きる。即ち、当該移動式塗装小屋が車両に近づき、電気用プラグが引き出され、必要な空気流を提供する別の流体圧プラグが引き出され、前記二つの前面ドアが開かれて空気吸引スクリーンを見せ、照明スクリーンをスイッチオンする。そして、空気吸引及びフィルター手段を作動させて修理が行われ、その後にひとたび車両が塗装されると、乾燥のために車両に適用される赤外線スクリーンが引き出される。作業が行われると、赤外線装置が回収され、ドアが閉じられ、その家具に導入されていた空気及び電気のホースがはずされ、別の作業場所へ移動する準備が整う。
【0017】
追加的には、移動式塗装小屋を軽量折り畳みシール(シール材)を伴って作り上げることもできる。その軽量折り畳みシールは、作業領域の周囲に囲いを作るべく、透明プラスチック製カーテンあるいは他の素材によって形成されてもよく、補足的には、例えば、前記カーテンを支持してその展開および畳み込みを容易にする伸縮アームまたは巻取り可能なアームを有している。
【0018】
以下、発明の詳細な説明を補足するために、そして、好ましい実施形態に従って発明の特徴のより良い理解を導くために、一群の図面が添付されている。説明に有益な特徴も非制限的な特徴も以下の図面に表されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の目的物を構成する移動式塗装小屋の、閉じ位置での前方斜視図。
【図2】図2は、垂直位置における折り畳まれていない赤外線スクリーンを備えた、開き位置での移動式塗装小屋の斜視図。
【図3】図3は、塗装作業中の移動式塗装小屋を観察可能な平面図。
【図4】図4は、乾燥作業中の移動式塗装小屋を観察可能な、前図同様の平面図。
【図5】図5は、水平位置における折り畳まれていない赤外線スクリーンを備えた、開き位置での移動式塗装小屋の斜視図。
【図6】図6は、移動式塗装小屋の、閉じ位置での後方斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の目的物を構成する移動式塗装小屋の好ましい一実施形態を以下に説明する。
【0021】
移動式塗装小屋は、修理機器(2)、空気吸引及びフィルター手段(3)、乾燥手段(4)、並びに照明手段(5)を、図1に示すような単一モジュール(1)に統合したものであり、前記単一モジュール(1)は、その移動を可能(容易)にするローラー要素(6)を具備するものである。
【0022】
空気吸引及びフィルター手段(3)は、図3又は図4に示すようなファンであって、電動モーターで作動する内部遠心ファン(7)と、図2に示すような吸引スクリーンであって、それを介して空気が吸引されると共に、残留蒸気を吸い込み、塗装作用としてスプレー(噴霧)する吸引スクリーン(8)と、空気をろ過して空気を総じてきれいにしておく図示しないフィルター手段と、モジュール(1)の上部に配置されて、きれいな空気が放出される排気口(9)と、を備えている。
【0023】
図2からわかるように、モジュール(1)は、第1のドア(10)及び第2のドア(11)を有する。第1のドア(10)は、照明スクリーン(12)と一体化して、開きもする。その照明スクリーンは、塗装段階では図3に示すように作業領域を明るく照らす。第2のドア(11)は、吸引スクリーン(8)を通しての(空気)循環を良くするために開かれる。図1に示すように、閉じ位置においてドア(10,11)は吸引スクリーン(8)を覆う。
【0024】
図2及び図5からわかるように、乾燥手段(4)は、モジュール(1)上にまとめられた回転伸縮アーム(15)から吊り下げられた伸張式多関節展開装置(14)に取り付けられた赤外線スクリーン(13)を備えている。その赤外線スクリーンは、人が乾かしたい車両(17)の反対側に対しても当該赤外線スクリーン(13)をいろいろな方向から向けられるように取り付けられている。図5の場合、赤外線スクリーン(13)は垂直位置にあり、図6の場合、水平位置にある。図4は、垂直位置にある赤外線スクリーン(13)での車両(17)の乾燥操作を示す。
【0025】
その一方で、図1は、伸縮アーム(15)が引っ込められることで、赤外線スクリーン(13)がモジュール(1)内に組み込まれて不使用位置にある状態を示す。モジュール(1)が、赤外線スクリーン(13)を収納するドア(16)を具備した区画(20)を有することが、はっきりと示されている。
【0026】
図6は、レギュレーター及び空気フィルター(18)のような修理機器(2)の一部を形成するいくつかの要素や、コントロールパネル(19)を備えたモジュール(1)を示す。なお、修理機器(2)の他の要素はモジュール(1)の内側に統合されている。
【0027】
図3からわかるように、移動式塗装小屋は、オプションとして、軽量折り畳みシール(21,22)を組み込むことができる。その軽量折り畳みシールは、カーテン(22)によって、並びに、前記カーテン(22)を支持してその展開および畳み込みを容易にするアーム(21)によって形成されるところの囲いを、作業領域の回りに作り出す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式塗装小屋であって、
修理機器(2)、空気吸引及びフィルター手段(3)、乾燥手段(4)および照明手段(5)を統合したモジュール(1)を備え、
前記モジュール(1)は、その移動、並びに、異なる箇所で当該モジュールに統合された前記修理機器(2)および前記各手段(3,4,5)の操作を可能にするローラー要素(6)を具備している、ことを特徴とする移動式塗装小屋。
【請求項2】
前記空気吸引及びフィルター手段(3)は、
内部遠心ファン(7)と、
吸引スクリーンであって、それを介して空気が吸引されると共に、残留蒸気を吸い込み、塗装作用として噴霧する吸引スクリーン(8)と、
空気をろ過するフィルター手段と、
モジュール(1)に配置されて、きれいな空気が放出される排気口(9)と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の移動式塗装小屋。
【請求項3】
前記照明手段(5)は、前記モジュール(1)の一部を形成する第1のドア(10)を備え、その第1のドアは、閉じ位置において前記吸引スクリーン(8)を部分的に覆う照明スクリーン(12)を具備しており、その照明スクリーン(12)は、開き位置において作業者の作業領域を明るく照らす、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動式塗装小屋。
【請求項4】
前記乾燥手段(4)は、伸張式多関節展開装置(14)に取り付けられた乾燥スクリーン(13)を備え、その伸張式多関節展開装置は、前記モジュール(1)上にまとめられた回転伸縮アーム(15)から吊り下げられて、前記乾燥スクリーン(13)をいろいろな方向に向けさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の移動式塗装小屋。
【請求項5】
前記モジュール(1)は、不使用時において前記乾燥スクリーン(13)を収納するドア(16)を具備した区画(20)を有する、ことを特徴とする請求項1又は4に記載の移動式塗装小屋。
【請求項6】
前記乾燥スクリーン(13)は赤外線スクリーン(13)である、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の移動式塗装小屋。
【請求項7】
前記作業領域の回りに囲いを生み出す軽量折り畳みシール(21,22)を更に備えてなる、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の移動式塗装小屋。
【請求項8】
前記軽量折り畳みシール(21,22)は、カーテン(22)、並びに、そのカーテン(22)を支持してその展開および畳み込みを容易にするアーム(21)によって形成されている、ことを特徴とする請求項7に記載の移動式塗装小屋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−115706(P2011−115706A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−274306(P2009−274306)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(509332338)ロイスバー サービシャス,エス.エル. (1)
【Fターム(参考)】