説明

移動性貴重文書のための認証装置

励起入射光によって励起されたとき事前選択された波長で光放射を放出する活性イオンを含む事前選択された隠れ組成物の均一または不均一分布をもつ移動性貴重文書を認証するために使用される認証装置。光放射は、第1および第2の検出器要素を有する少なくとも1つの光検出器上に画像化される。画像化された強度は貴重文書の速度に関連する所定の時間に捕捉される。同じ画像の場所または異なる画像の場所で測定された第2の検出器要素と第1の検出器要素との間の比は、事前選択された波長の発光の特有の減衰時間強度データを表す。貴重文書の真正性は、事前選択された波長の発光が少なくとも1つの光検出器で受け取られない場合、または出力電子信号比が期待値を満たさない場合、排除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2009年11月23日に出願した現在係属中の米国仮出願第61/263624号の利益を主張するものである。
【0002】
[0002]本技術分野は、一般に、貴重文書の中または上に組み込まれた隠れ組成物の発光の発光波長および強度の減衰定数を使用して移動性貴重文書を認証する検証装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]単純なものから複雑なものまで、貴重文書を検証するための多くの方法がある。いくつかの方法には、クレジットカードのホログラム、銀行券の浮出し像または透かし、機密保持フォイル、機密保持リボン、銀行券内の有色糸もしくは有色繊維、またはパスポートの浮揚画像および/または沈下画像などの、文書上のまたは文書に組み込まれた可視の(すなわち、公開の)フィーチャが含まれる。これらのフィーチャは眼で検出することが容易であり、認証のために装置を必要としない可能性があるが、これらの公開のフィーチャは、捏造者および/または偽造者を目指す者によって容易に特定される。そのため、公開のフィーチャに加えて、秘密の(すなわち、隠れ)フィーチャを貴重文書に組み込むことがある。隠れフィーチャには、貴重文書の基材に組み込まれる目に見えない蛍光繊維、化学的に敏感な着色料、蛍光顔料、染料が含まれる。隠れフィーチャは、貴重文書の基材上に印刷されるインクに、または積層構造の貴重文書で使用される膜を製作するのに使用される樹脂内に含むこともできる。隠れフィーチャは人間の眼で検出できないので、隠れフィーチャを検出するように構成された検出器が貴重文書を認証するのに必要である。
【0004】
[0004]例えば、銀行券を認証するのに使用される多くの検証システム(例えば、隠れフィーチャおよび対応する検出器)がある。例えば、Kaule等の米国特許第4,446,204号は、一方では、印刷された画像にさえ必要に応じて証券用紙のIR透過特性を検査することができ、他方では、磁気特性を有し、IR透過試験および磁気試験の両方は互いに影響されず、証券用紙の同じ位置で実行することができる付加または塗布された着色剤の形態の認証可能なフィーチャをもつ証券用紙を開示している。次に、既知の検出デバイスを使用して、検証のための認証可能なフィーチャの異なる位置のスペクトル領域に検出器を整合させる。
【0005】
[0005]さらに、Nagaseの米国特許第5,679,959号は、証書の表面上に刺激光を投射するための光源と、刺激光による照射に応じて証書表面から放出される光を光電効果で検出し、検出された光の量に応じて検出データを生成する光電子増倍管と、基準データを記憶するためのROMと、光電子増倍管によって生成された検出データとROMに記憶された基準データとを比較するための中央処理装置(「CPU」)とを含む証書識別装置を開示している。しかし、そのようなシステムは、偽造物からの検出された放出放射が真正の放出放射パラメータと同様である場合、偽造文書を検出することができない。
【0006】
[0006]多くの既知の検証システムは、隠した認証可能なフィーチャを検出することと、その発光スペクトルを評価することとを含む。発光のみが検出される場合、貴重文書は真正であると見なされ、そうでなければ偽造物として排除される。このタイプの既存の検証システムの1つの問題は、認証可能なフィーチャが基材上の印刷されたインクに全体的に含まれる場合に生じるが、それは、認証可能なフィーチャが摩耗および摩滅消失にさらされるからである。その結果、認証可能なフィーチャの発光スペクトルの振幅の予測できない劣化があり、したがって、認証装置は真正文書を偽造物として誤って特定する可能性がある。別の問題は、時が経つにつれて、偽造者がより巧妙になり、貴重文書のこれらのフィーチャの組み込みを検出することができる科学的装置をより一層利用できるようになるので、この方法はそれほど安全でなくなってきているということを含む。
【0007】
[0007]可視または紫外光源によって励起された蛍光体の減衰時間を固定の状況で検出することを含む既存の検証システムがある。例えば、Vasic等の米国特許第7,030,371号は、発光強度および時定数などの特有のルミネセンスパラメータを迅速に抽出できるようにする方法およびデバイスによって認証される時間延期発光特性を示すルミネセンスマーカー化合物を保持する機密文書または物品を開示している。Allen等の米国特許公開第20090152468号は、使用されている特定のタガントの放射の減衰時間を正確に測定することによって、サンプルの励起の後にタガント材料サンプルから放出される赤外放射を検出するための技法および装置を開示している。しかし、これらのシステムは、移動性貴重文書の検出および認証を含んでいない。
【0008】
[0008]Morganの米国特許第5,459,323号は、サンプルを照明するように配置された励起光源と、所定の周期で励起光の強度を変調またはパルス化するための手段と、ルミネセンスの結果としてサンプルによって放出された光子を検出するための検出器手段と、検出した光子を表すデータを記憶するための手段であって、記憶データが光子の検出と周期的に変化する変調との間の位相差に応じて重み付けされる、手段と、記憶したデータから減衰時間重み付き情報を生成する手段とを備えるルミネセンスサンプルの減衰時間重み付き情報(例えば、減衰時間重み付き画像)を生成するための装置を開示している。しかし、この技法は、サンプルのいかなる移動も位相差検出を複雑にするので、ルミネセンスサンプルが静止している場合しか機能しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009]貴重文書を認証するための検証システムが存在するにもかかわらず、銀行券の分類および検出を含むシステムなどの移動性貴重文書を確実に正確に検出するシステムへの必要性が存在する。検証システムは、複製することが困難である機密フィーチャを貴重文書の中および/または上に組み込むべきであり、貴重文書の偽造および捏造を防止するのに十分に独特で複雑である検出識別方法およびフィーチャを有するべきである。銀行券などのこれらの貴重文書は高速で認証することができることも重要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]一態様では、等速度で移動する貴重文書を認証する装置が提供され、貴重文書は、励起入射光を吸収し、事前選択された発光波長を有する光放射を放出する事前選択された隠れ組成物を含む。この装置は、励起光源によって照明される区域内の事前選択された隠れ組成物を励起するのに十分な強度の照明を生成する励起光源を含む。オプションとして、この装置は、照明区域内の事前選択された隠れ組成物から放出された事前選択された発光波長をフィルタ処理する光学フィルタを含む。この装置は、少なくとも1つの光検出器に収容された第1の検出器要素および第2の検出器要素をさらに含み、第1の検出器要素が第1の時間に貴重文書のある区域の第1の画像を受け取り、第1の画像の電子信号データを出力し、第2の検出器要素が第2の時間に貴重文書の実質的に同じ区域の第2の画像を受け取り、第2の画像の電子信号データを出力し、第1および第2の画像が事前選択された隠れ組成物から放出された事前選択された発光波長の減衰時間強度に対応する。この装置は、出力電子信号データを収集および評価し、貴重文書の合格または不合格データを決定する処理装置をさらに含む。
【0011】
[0011]別の態様では、貴重文書を認証する方法が、励起入射光を吸収し、光放射を放出する事前選択された隠れ組成物を含む貴重文書のために提供される。この方法は、事前選択された隠れ組成物を励起するのに十分な強度を有する照明を生成する励起光源によって生成された照明区域を通り越して等速度で貴重文書を移動させるステップを含む。この方法は、貴重文書が光学フィルタをもつ検出窓を通過するとき照明区域内の事前選択された隠れ組成物からの事前選択された発光波長をフィルタ処理するステップをオプションとして含むことができる。この方法は、少なくとも1つの光検出器に収容された第1の検出器要素に貴重文書のある区域の第1の画像を第1の時間に供給するステップと、少なくとも1つの光検出器に収容された第2の検出器要素に貴重文書の実質的に同じ区域の第2の画像を第2の時間に供給するステップとをさらに含む。この方法は、光検出器からの第1および第2の画像の電子信号データを出力するステップをさらに含む。この方法は、処理装置において出力電子信号データを収集するステップと、貴重文書の合格または不合格状態を決定するステップとをさらに含むことができる。
【0012】
[0012]特定の例が図示および説明のために選ばれており、本明細書の一部を形成する添付図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[0013]認証装置の一例の概略図であり、貴重文書が励起光源の下を移動し、貴重文書の上また中の事前選択された隠れ組成物中の活性イオンからの放出された光放射強度が最初にフィルタ処理され、次に、活性イオンの時間減衰特性を測定する第1の検出器要素および第2の検出器要素を有するバイセル光検出器によって受け取られる。
【図2】[0014]第1の半円形検出器要素および第2の半円形検出器要素を有するシミュレートした4mm直径のバイセル光検出器を使用して決定された予測の出力電子信号比を示す図であり、貴重文書が図2に示された一定速度で図1の認証装置を通り抜けるとき、両方の半円形検出器要素が事前選択された活性イオンの様々な減衰時間を測定する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0015]本技術は、光学発光波長検出を貴重文書の中または上の発光活性イオンの減衰時間特性の検出と組み合わせることによって検証システムの機密精度および真正性精度を向上させる。より具体的には、本技術は、一定速度で移動する貴重文書の中または上にある事前選択された隠れ組成物内の少なくとも1つの事前選択された活性イオンを検出することによって機能する貴重文書認証装置および検出方法に関する。少なくとも1つの事前選択された活性イオンは、例えば、少なくとも1つの赤外放出蛍光体とすることができる。少なくとも1つの事前選択された活性イオンは光源で励起することができ、光源は移動性貴重文書の照明区域内の少なくとも1つの事前選択された活性イオンを照明する。励起に際して、少なくとも1つの事前選択された活性イオンは事前選択された波長を有する放射を放出することができる。少なくとも1つの例では、少なくとも1つの事前選択された活性イオンからの発光の事前選択された波長が赤外スペクトル内にある。多数の発光波長がありうるので、励起された1つまたは複数の活性イオンから放出された放射の発光波長をフィルタ処理して、事前選択された発光波長のみを少なくとも1つの光検出器に送ることができ、少なくとも1つの光検出器は減衰時間強度データを捕捉する。次に、減衰時間強度データは中央処理装置(CPU)において評価することができる。CPUは、貴重文書が真正であるかどうかを指し示す。
【0015】
[0016]本技術で使用することができる好適な隠れ組成物は、少なくとも1つの検出可能な発光波長および測定可能な減衰時間強度を有する。事前選択された隠れ組成物内の少なくとも1つの活性イオンは、典型的には、0.1ミリ秒超から10ミリ秒の減衰時間を有する。例えば、短い減衰時間を有する好適な事前選択された隠れ組成物には、約0.2ミリ秒の減衰定数を有するネオジムドープのイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)が含まれる。長い減衰時間を有する好適な事前選択された隠れ組成物の一例には、6ミリ秒を超える減衰定数を有するホルミウムドープのYAGが含まれる。同じまたは異なる発光活性イオンを含む多数の蛍光体を有することも許容することができ、活性イオンは両方とも同じ事前選択された発光波長域内で放出するが、一方の減衰時間は長く、他方の減衰時間は短い。少なくとも1つの活性イオンからの発光の強度値は時間依存性であり、短い減衰時間を有する材料では、より長い材料よりも迅速に減少する。したがって、十分なレベルの検出能力を達成するには、第1の検出器と第2の検出器との間の適切な距離、したがって第1の画像と第2の画像との間の適切な時間を特定の隠れ組成物に対して選択することができる。代替として、第2の画像が受け取られるとき検出可能であるように貴重文書中の化合物の量を増加させることができる。
【0016】
[0017]本技術では、高エネルギー光源、LED光、またはレーザなどの光源は、オーバーラップするパターンで、移動性貴重文書に入射する照明区域を照明し、それによって、貴重文書の中または上に含まれる事前選択された隠れ組成物内の少なくとも1つの活性イオンを励起する。少なくとも1つの例では、光源は赤外照明を行うことができる。活性イオンは、励起された直後に減衰し始める。光源の照明強度は、時間の関数として全く変化しないかまたは次第に変化することがあるが、照明用ビームの端から端までの強度分布の均一性は必要とされない。光源が事前選択された活性イオンを励起するのに十分な強度および幅を有する限り、光源の幅は検出装置に接続された検出窓の幅よりも小さく、等しく、または大きくすることができる。励起光源からの照明強度は励起光源窓を通過することができ、それにより、照明強度は照明区域の幅に対応して事前決定された幅で移動性貴重文書上に投射される。その結果として、照明区域の幅は励起発光の幅に相当する。少なくとも1つの光検出器の第1および第2の検出器要素上に画像化される貴重文書の区域の幅にほぼ等しい励起発光幅を有することが望ましい。広い励起発光を有しても利益はないが、狭い励起発光は依然として許容することができ、それは、少なくとも1つの光検出器のみが検出器要素の表面に当たる光子を測定し、第1の検出器要素に衝突したものが後で第2の検出器要素に衝突することになるからである。
【0017】
[0018]照明に際して、光放射が事前選択された隠れ組成物によって放出され、光学フィルタでフィルタ処理されて、事前選択された発光波長のみが少なくとも1つの光検出器で確実に検出されうる。光学フィルタは、例えば、ロングパススペクトルフィルタ、ショートパスフィルタ、バンドパスフィルタ、色ガラス、当技術分野で既知の他の光学フィルタ、および当技術分野で既知の他のスペクトルバンドリミッタなどの単一フィルタまたはフィルタの組合せとすることができる。いくつかの場合にはオプションであるが、光学フィルタの使用が好ましい。フィルタ処理の目的は、高度な確実性で認証することができるように検出における十分な信号対雑音比を達成することでありうる。事前選択された発光波長域を有していない偽造文書の場合には、減衰時間強度データを収集する必要がなく、文献は偽造物として本検証システムによって排除することができる。光学フィルタを使用する例では、時間の関数として指数関数的に減衰する光放射は、所定の発光波長通過帯域に関連する光学フィルタでフィルタ処理された後、移動性貴重文書上の照明区域からの距離の関数としての減衰時間強度データを一連の画像として捕捉する第1および第2の検出器要素で検出されうる。放出放射は、移動性文書の照明区域から所定の距離にある事前選択された画像の場所における画像の光子束に比例する電子信号として第1および第2の検出器要素で捕捉することができる。一般に、移動性貴重文書上の照明区域は、入射励起光源からの光がオプションの波長フィルタを通って少なくとも1つの光検出器に入らないように少なくとも1つの光検出器の少なくとも1つの検出窓から所定の距離にある。第1の測定画像の場所は、貴重文書の速度に応じて、事前選択された活性イオンの減衰時定数の0.5倍から2倍の間にある時間に相当する距離だけ隔てることができる。この時間の量は、一般に、励起光が貴重文書の表面から散乱する場合、励起光が検出窓に入らないように選ばれる。少なくとも1つの例では、本認証装置は、1m/sから12m/sの範囲の速度で許容可能な精度で移動性貴重文書の真正性を検証する。
【0018】
[0019]本技術で使用するのに好適な1つのタイプの光検出器は図1に示したバイセル光検出器100である。バイセル光検出器100は、シリコンまたはInGaAsなどの同じ検出材料の2つの隣接する検出器要素を収容し、第1の検出器要素および第2の検出器要素は、第1および第2の検出器要素110Aおよび110B、ならびに第1および第2の検出器要素112Aおよび112Bによって示されるように、分割または分離ラインを形成するように組み立てられる。市販のバイセル光検出器の一例は、Advanced Photonixで製造されている検出器モデルSD113−24−21−021である。分離ラインは貴重文書の移動面に対して垂直に向けられる。貴重文書はバイセル光検出器の下で、例えば、ローラーまたはベルトによって一定速度で移動しているので、貴重文書上の第1の画像の場所からの画像は第1の検出器要素に伝えられ、一方、貴重文書中の隣接する第2の画像の場所からの画像はバイセル光検出器の第2の検出器要素に伝えられる。バイセル光検出器はクワッドセル光検出器から構築することもでき、2対の光検出器はバイセル光検出器と同様に機能するような構成である。このクワッドセルの改造は、当業者なら標準技法を使用して行うことができる。許容可能なバイセル光検出器は、典型的には、各々1.22mmの寸法を有する第1および第2の検出器要素をもつ2.54mmのデバイスである。好ましくは、バイセル光検出器の幅は0.5ミリメートルから6ミリメートルの範囲にあることになる。バイセル光検出器は、円形、長方形、または正方形の形状を有することができる。円形バイセル光検出器の第1および第2の検出器要素は各々形状が半円形であり、一方、正方形バイセル光検出器では、第1および第2の検出器要素は共に形状が長方形である。貴重文書上の照明区域は、典型的にはバイセル検出器の開口の幅であり、その幅は個別の要素の両方の半円形の直径である。
【0019】
[0020]本技術で使用することができるバイセル光検出器は、光学的拡大構成要素を含む光学画像システムをさらに含む。画像システムは、検出窓内の貴重文書の照明区域からの放出光放射を収集し、バイセル光検出器に伝えるのに使用される。この画像システムは、光放射をバイセル光検出器に伝えるために光学的拡大構成要素を使用することができる。
【0020】
[0021]第1および第2の光検出器要素は、光放射強度を連続的に減少させる事前選択された隠れ組成物からの発光減衰時間強度データを受け取る。事前選択された隠れ組成物が貴重文書の中または上に均一に分配され、貴重文書上に付加的な不明瞭化がない場合、バイセル光検出器で受け取られた強度データは、貴重文書の画像化区域が励起光源に最も近い場合に最も高く、貴重文書の画像化区域が励起から最も遠いポイントで最も弱い。この関係は、一般に、ほとんどの蛍光体では時間の関数としての発光強度の指数関数的減衰である。本技術でバイセル光検出器を使用する場合、移動性貴重文書の第1の画像の場所の区域および隣接する第2の画像の場所の区域は、第1の検出器要素と第2の検出器要素との間の距離に等しくすることができる事前選択された距離だけ互いに隔てられる。この距離は、バイセル光検出器に含めることができる光学画像システムからのいかなる光学的拡大/縮小効果にも適合させることができる。貴重文書の固定速度のために、第1の画像の場所と第2の画像の場所との間を通過する固定の距離と固定の時間量とがある。その結果、活性イオンからの事前選択された発光波長はその材料の性質に起因して予想されるように減衰することになる。
【0021】
[0022]上述のように、活性イオンによって放出されたフィルタ処理済みの事前選択された発光波長はバイセル光検出器の第1の検出器要素および第2の検出器要素で画像化される。バイセル光検出器は2つの検出器要素を含むので、個別の画像は各々2つの検出器要素間で空間的に分割される。したがって、バイセル光検出器要素は画像を同時に受け取り、分割し、第1および第2の検出器要素の各々は画像の半分を受け取り、次に、両方の検出器要素は対応する電子信号を生成し、その電子信号は処理のためにCPUに送出される。画像の第1の半分は、励起光源により近いので、画像の第2の半分の第2の画像の場所からの強度データよりも第1の画像の場所から生じる大きい強度データをもたらす。言い換えれば、活性イオンの発光強度は、励起光源による励起の時間から時間の関数として指数関数的に減衰するので、第2の検出器要素で受け取られた発光強度データおよび対応する第2の検出器の電子信号は、第1の検出器要素で受け取られた発光強度データおよび対応する第1の検出器の電子信号と比較して大きさが小さいことになる。第1の検出器要素(A)からの電子信号データ出力に対する第2の検出器要素(B)からの電子信号データ出力に由来する信号の比は、次式の
Tau(τ)=−T/ln(B/A)
によって、事前選択された活性イオンの減衰定数に近似的に関連し、ここで、Tau(τ)は近似的に材料減衰定数であり、Tは、1の光学的拡大を仮定して、第1の検出器要素の中心から第2の検出器要素まで移動するのに要する秒単位での時間の量である。第1および第2の検出器要素の各々からの出力電子信号データは処理装置に引き渡され、第1の検出器要素(A)からの電子信号データ出力に対する第2の検出器要素(B)からの電子信号データ出力に由来する信号の比である測定出力電子信号の比を計算することができる。処理装置は、さらに、測定出力電子信号比の平均値を生成するために、一連の連続する画像からの測定出力電子信号比を平均化することができる。測定出力電子信号比の平均値を計算すると、貴重文書の測定した隠れ組成物の減衰定数Tauを決定し、それを真正の隠れ組成物の既知の減衰定数Tauと比較するのにより高い精度と整合性を与えることができる。
【0022】
[0023]本明細書で使用される「出力電子信号比」という句は、第1の検出器要素からの電子信号に対する第2の検出器要素から電子信号の比を指し、事前選択された活性イオンの測定したまたは既知の指数関数的減衰特性と、第1の検出器要素と第2の検出器要素との間の距離と、バイセル光検出器の寸法および性質と、画像システムの拡大の性質と、貴重文書が認証装置を通り抜けるときの貴重文書の速度とに基づいて計算することができる精密な値である。多数の連続する画像の間に得られた第1および第2の検出器要素からの出力電子信号比を平均化すると、比の精度が向上する。そのような平均化を使用して、精度を向上させ、かつ異なる比を示すスペクトル的に類似の活性イオンを含む偽造の貴重文書を排除するのに必要とされる計算した比の受入れ帯を減少させることができる。
【0023】
[0024]バイセル光検出器によって収集された減衰時間強度データに対応する出力電子信号比は、活性イオンの実際の減衰時間によって強く影響されるだけでなく、バイセル光検出器の第1の検出器要素と第2の検出器要素との間の距離と、図2に示すように、貴重文書が認証装置を通り抜けるときの貴重文書の一定速度とによっても影響されることになる。電子信号比が1に極めて近い場合、減衰時間を識別するための能力は、システムがいくつかの連続画像からの第1および第2の検出器要素からの強度データを平均化しない限り貧弱である。平均化に使用される連続画像が多いほど、識別するための認証システムの能力は向上することになる。平均化によって、システムは、0.97±0.01の比などの区別のために許容できる比を得ることになる。特に、励起光源からの照明が活性イオンからの発光の検出を妨害しないので、認証装置は検出器の感度および雑音排除に応じて0.05から0.98の範囲の出力電子信号比を認証するように設計することができる。さらに、バイセル光検出器は円形の幾何形状を有することができるので、第1および第2の検出器要素の各々による強度データ出力は各検出器要素の露出した区域の端から端まで積分することによって数学的に計算することができる。当業者ならこれらの計算を行うことができるはずである。幾何学的な考慮に基づいて、出力電子信号比は、円形のバイセル光検出器と比較して、正方形のバイセル光検出器では異なることが予想される。
【0024】
[0025]本技術の貴重文書認証装置は、それが第1および第2の検出器要素から受け取った測定出力電子信号比を計算し、測定出力電子信号比が既知の真正の隠れ組成物の少なくとも1つの活性イオンの所定の許容範囲内にあると決定する場合、合格データを決定し、それにより、貴重文書を検証することができる。所定の許容範囲は、貴重文書の認証を行う際に導入されることがある実験誤差の妥当な量に基づいて選択することができる。例えば、所定の許容範囲は、信号の比の約2%までの1シグマ標準偏差とすることができる。異なるホスト格子内の異なる活性イオンまたは同じ活性イオンが偽造者によって使用され、所定の発光波長と同様の発光波長を有することになる場合、偽造文書は、特有の発光波長に基づいて単に検出および検証する任意の先行技術の検証システムによって認証されることになる。しかし、蛍光体はホスト格子、形成温度、ドープレベルなどに応じた組成特有の減衰時間を有するので、本技術の装置は事前選択された活性イオンの減衰特性を有していないような偽造文書を多分排除することになる。さらに、出力電子信号比が所定の許容範囲内にない場合、貴重文書は偽造物として排除されることになる。
【0025】
[0026]本技術の一例では、事前選択された隠れ組成物は貴重文書の基材の中または上に均一に組み込まれる。これは、基材の製紙用パルプ内に事前選択された隠れ組成物を均一に混合することによって、またはインク基剤に均一に混合された事前選択された隠れ組成物の均一な下層を貴重文書の基材上に印刷することによって達成することができる。均一分布のために、バイセル光検出器の第2の検出器要素の電子信号と第1の検出器要素の電子信号との間で測定された出力電子信号比は一定のままであり、貴重文書の印刷されていない/汚されていない場所が画像化される場合、事前選択された活性イオンの減衰特性を反映する。貴重文書は、出力電子信号比が所定の許容範囲内にある場合、認証されることになる。いくつかの連続する画像を第1および第2の検出器要素の各々で取得することができる。対応する連続する出力電子信号比を平均化してシステムの精度を改善することができる。
【0026】
[0027]バイセル光検出器の第1の検出器要素および第2の検出器要素は、画像が捕捉されるとき、移動性貴重文書の隣接しているが異なる部分から電子信号の形態の減衰時間強度データを収集する。貴重文書のこれらの部分が活性イオンの異なる濃度を有するか、もしくは異なるレベルの減衰性印刷により覆われている場合、または発光活性イオンが貴重文書基材ではなく印刷インクに組み込まれている場合、出力電子信号比は、以下でさらに詳細に説明するように蛍光体減衰と励起された蛍光体の量との両方を明らかにする。
【0027】
[0028]本技術の別の例では、印刷インクに隠れ組成物が加えられ、印刷濃度が変化する場合などに、貴重文書は事前選択された隠れ組成物の均一分布を有していない。代替として、事前選択された隠れ組成物の均一分布をもつ貴重文書基材は吸収インクなどの遮蔽剤で印刷され、それによって、蛍光体発光の不均一分布を生成することができる。これが意味することは、第1の検出器要素は、第2の検出器要素と比較して異なる量の有効な蛍光体からの発光強度を検出することができることである。いずれにしても、貴重文書上の印刷パターンが変えられる、かつ/または有効な事前選択された隠れ組成物の量が貴重文書上の場所ごとに異なる場合、文書は、事前選択された隠れ組成物の不均一分布を有するものとして扱われることになる。そのような場合、測定される出力電子信号比は、蛍光体の減衰挙動と、場所ごとに印刷に起因する発光信号のあらゆる減衰を考慮した存在する蛍光体の量との両方の組合せとなる。正確に認証するために、第1の検出器要素および第2の検出器要素の両方は、ある期間にわたって移動性貴重文書の同じ区域または実質的に同じ区域を画像化することになる。したがって、第1の検出器要素は第1の時間に貴重文書のある区域から画像を受け取ることができ、第2の検出器要素は第2の時間に貴重文書の同じ区域または実質的に同じ区域の画像を受け取ることができる。これは、第1の検出器要素の画像が後続の画像読み取り中に第2の検出器要素と一致できるようにする時間の量だけ第1の画像の場所と第2の画像の場所を隔てることによって達成することができる。本明細書で使用される「一致期間」という句は、第1の検出器要素の画像が後で第2の検出器要素で検出されるほぼ同じ空間的な画像の場所になるのに必要とされる時間の量として定義される。一致期間はすぐ隣の画像となるように選択することができ、それによって、第1の検出器要素の第1の画像の場所は第2の検出器要素の第1の画像の場所と一致することになる。認証システムは、第1の検出器要素によって測定される文書の各画像区間が同様に第2の検出器要素によって近似的に測定される場合、十分に正確であることになる。認証装置内のソフトウェアは、平均の出力電子信号比を計算するために適切な一致画像を選択し、不均一分布の事前選択された隠れ組成物をもつ貴重文書に妥当な結果をもたらすように設計することができる。したがって、本認証装置の演算処理装置は、貴重文書上に存在する印刷物質による発光強度のいかなる吸収の変動にもかかわらず、貴重文書から取得されたいくつかの連続する画像にわたって平均化されるならばその吸収の変動は測定出力電子信号比に影響を与えないので、事前選択された隠れ組成物の不均一分布をもつ貴重文書を認証または排除することができる。対応する計算した比を平均化して、システムの精度を改善することができる。
【0028】
[0029]図1は認証装置100の概略図を示し、貴重文書101は励起光源窓102および検出窓103の下を移動される。励起光は蛍光体励起光源104から来て、励起光源窓102を通過し、貴重文書上の照明区域内で貴重文書101の中または上に含まれる活性イオンを励起する。活性イオンからの光放射はレンズ105で概略でコリメートされ、事前選択された隠れ組成物に組み込まれた活性イオンの事前選択された発光波長を分離するために光学フィルタ106を通りすぎる。次に、事前選択された発光波長はレンズ107によってバイセル光検出器108上に収束される。図1の詳細図に示されるように、バイセル光検出器108は円形とし、第1の検出器要素110Aおよび第2の検出器要素110Bを有することができ、または長方形もしくは正方形とし、第1の検出器要素112Aおよび第2の検出器要素112Bを有することができる。出力電子信号比は活性イオンの減衰特性に関係する。中央制御装置(CPU)109は、貴重文書上の照明区域からの事前選択された距離に関係する所定の時間間隔で第1および第2の検出器要素110Aおよび110B、または112Aおよび112Bからの出力電子信号を収集し、測定出力電子信号比を計算し、貴重文書の合格または不合格データを決定し、合格または不合格データを出力して貴重文書が真正であるかどうかをオペレータに示すことができる。CPU109が貴重文書の合格または不合格データを決定することができる1つの方法は、測定出力電子信号比を、既知の真正隠れ組成物に対応する記憶データと比較することである。CPUは、さらに、連続する画像からの測定出力電子信号比を平均化して、検証システムの測定の精度を向上させることができる。
【0029】
[0030]図2は、2つの半円形の第1および第2の検出器要素が貴重文書の移動面に対して垂直な分割ラインで一緒に組み立てられているシミュレートした4mmのバイセル光検出器を使用して測定されるときに、図示の速度で認証装置を通って移動する様々な特有の減衰時間を有する発光蛍光体の予測される出力電子信号比を示す。短い寿命比は0.05もの低い出力電子信号比を与え、一方、長い寿命の蛍光体は、特に貴重文書の高速において、0.97もの高い比を与える。バイセル光検出器は非常に正確な検証システムをもたらし、バイセル光検出器は出力電子信号比を計算するのに使用される強度データを検出し、貴重文書の中または上の事前選択された活性イオンが識別される。
【0030】
[0031]このようにかなり詳細に本発明を説明したが、そのような詳細は厳密に固執する必要はなく、当業者なら追加の改変および変更を提案することができ、すべては添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にあることが理解されよう。
【0031】
[0032]他のタイプの光検出器を本技術のいくつかの例で使用することもできる。したがって、バイセル光検出器の特定の例が上述で説明されているが、それは一例であり、本技術はバイセル光検出器に限定されないことが理解されるべきである。例えば、第1および第2の検出器要素は分離することができ、別々に収容することができ、それにより、精度を改善することができる。そのような方法では、バイセルセンサ要素は2つの別個のセンサに物理的に分割することができ、またはさもなければ同じタイプの2つの別個のセンサを用意し、各光検出器要素間を非常に大きく分離することができる。この例では、別個の光システムを分離の増加に対処するように設けることができるが、信号標本化の方法は同じままであることになる。データ捕捉に関して、データ標本抽出率は、第1の検出器要素下で標本化される区域が後で第2の検出器要素下で同様に完全に標本化されるように同期化することができ、それはバイセル適用で説明した方法と同じ方法である。センサ要素および光学システムへの要求事項はバイセル光検出器に関して上述したものと同じままである。計算も同じとすることができるが、一方、個別の信号値は、第2のセンサ要素からの信号値を取得し、それを第1のセンサ要素からの信号値で除算することによって、取り調べている銀行券の同じ空間区域に対して区分される。貴重文書の長さにわたって、第2のセンサの信号の和を第1のセンサからの信号の和で同様に除算して、統計的方法により精度を向上させることができる。この例では、減衰時定数Tauが、貴重文書の輸送速度と組み合わせた第1および第2の検出器要素の分離と比較して長い場合、減衰時間測定の精度を最大にすることが可能である。信号レベルが第2の検出器要素で測定され、第1の検出器要素から測定された同じ空間区域に対するその値と比較されたときに約1/e値に減衰した場合により高い精度を得ることができる。貴重文書の速度が既知である場合、検出器要素の分離は事前選択されたタガントに対して計算することができる。好ましくは、データ標本化は選ばれた距離の整数倍であり、その結果、同じ区域が各検出器要素によって、しかし異なる時間に読み込まれる。
【0032】
[0033]前述の説明から、特定の例を例証のために本明細書で説明したが、本開示の趣旨または範囲を逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されよう。したがって、前述の詳細な説明は限定ではなく例示と見なされ、かつすべての均等物を含む以下の特許請求の範囲は、特許請求される対象を特定して指摘し明確に請求するものであることが理解されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速度(uniform velocity)で移動する貴重文書(value document)を認証する(authenticates)装置であって、励起入射光(exciting incident light)を吸収し、事前選択された発光波長を有する光放射を放出する事前選択された隠れ組成物(covert composition)を前記貴重文書が含み、前記装置が、
励起光源によって照明される区域内(area)の前記事前選択された隠れ組成物を励起するのに十分な強度の照明を生成する励起光源と、
オプションとして(optionally)、前記照明区域内(within the illuminated area)の前記事前選択された隠れ組成物から放出された前記事前選択された発光波長をフィルタ処理する(filters)光学フィルタと、
少なくとも1つの光検出器に収容された(housed)第1の検出器要素(detector element)および第2の検出器要素であり、前記第1の検出器要素が第1の時間(at a first time)に前記貴重文書のある区域(area)の第1の画像を受け取り、前記第1の画像の(for the first image)電子信号データを出力し、前記第2の検出器要素が第2の時間に前記貴重文書の実質的に(substantially)同じ区域の第2の画像を受け取り、前記第2の画像の電子信号データを出力し、前記第1および第2の画像が前記事前選択された隠れ組成物から放出された前記事前選択された発光波長の減衰時間強度(decay time intensity)に対応する、第1の検出器要素および第2の検出器要素と、
前記出力電子信号データを収集(collects)および評価し(evaluates)、前記貴重文書の合格(pass)または不合格(failure)データを決定する処理装置と
を備える、装置。
【請求項2】
前記光放射が0.1ミリ秒から10ミリ秒の範囲の減衰時定数(decay time constant)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光検出器が前記第1の検出器要素および前記第2の検出器要素の両方を収容するバイセル(bi-cell)光検出器であり、前記バイセル光検出器の幅が約0.5ミリメートルから約6ミリメートルまでである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記貴重文書が前記等速度で移動される場合、前記第1の画像および前記第2の画像が、前記光放射の発光の減衰時定数の0.5倍と2倍との間にある時間に相当する(represents)距離だけオフセットされる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記移動性貴重文書の前記等速度が1m/sから12m/sの範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記処理装置が、測定出力電子信号比(measured output electronic signal ratio)を、既知の(known)真正の(authentic)隠れ組成物に対応する記憶データと比較することによって前記貴重文書の合格または不合格データを決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記貴重文書が銀行券(bank note)である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記励起光源が赤外照明を行う、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記事前選択された発光波長が赤外スペクトル内にある、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511926(P2013−511926A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540124(P2012−540124)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/057564
【国際公開番号】WO2011/063317
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】