説明

移動手すり用点検装置

【課題】移動手すり用点検装置において、移動手すりのキャンバス面の全周をより精度よく、かつ、短時間でかつ容易に点検できるようにすることである。
【解決手段】移動手すり用点検装置は、少なくとも1のガイドレール14の一部を構成するレール要素28と交換されて、内側板13に着脱可能に取り付けられた点検ユニット32を含む。点検ユニット32は、移動手すり16の裏面を撮影する撮影部42を含む。撮影部42は、内側板13に点検ユニット32が取り付けられ、駆動装置により移動手すりが移動している状態で、移動手すりの裏面を連続的、または間欠的に撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの移動手すり装置において、少なくとも1の移動手すりの内面を点検するための移動手すり用点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの一種であるエスカレータは、例えば図8〜10に示すように構成される。図8は、エスカレータの1例を示す概略図である。図9は、エスカレータの片側の移動手すりの周辺部を示す概略断面図である。図10は、ガイドレールから取り外した状態で、移動手すりの裏側のキャンバス面の1例を示す斜視図である。図8〜10のエスカレータには、建物内の上側階床と下側階床とにかけわたすようにトラス10が設けられている。トラス10に、無端状のチェーン(図示せず)により連結された複数の踏段11(図9)が移動自在に設けられている。トラス10の上部で、踏段11の左右方向(図9の左右方向)両側に一対の欄干12が立設されている。図9に示すように、各欄干12は、レール支持部材である内側板13を含み、内側板13の上部に金属等により造られたガイドレール14が固定されている。例えば、内側板13の一部はガラス等により構成されることもできる。また、各ガイドレール14に摺動可能に係合されるように、踏段11の移動方向に移動手すり16がガイドレール14に取り付けられている。すなわち、移動手すり16は、踏段11の移動に伴って循環移動するように設けられている。移動手すり16は、ガイドレール14にしたがって、欄干12下側のデッキボード18内にも案内されている。なお、デッキボード18の外側に位置する移動手すり16の上側部分を往路側といい、移動手すり16の下側部分を帰路側という。
【0003】
移動手すり16は、一般にキャンバス材を積層したものを樹脂や接着剤で固め、表面をゴム材等でコーティングして形成されている。この移動手すり16は、図10に示すように、断面略C字形を有し、ガイドレール14の横方向(図9の左右方向)両側に突出する鍔部20をくわえ込むように取り付けられている。このため、図10に示すように、移動手すり16の裏面にはキャンバス面22が設けられている。
【0004】
移動手すり16は、欄干12下側のデッキボード18内で、図示しない駆動ローラと押圧ローラとにより厚さ方向に押圧され、駆動ローラが、スプロケット、チェーン等を介して駆動部である図示しない駆動装置により駆動されている。駆動装置は、モータ等により構成され、複数の踏段を連結するチェーンも駆動し、踏段11を移動させる。各移動手すり16は、駆動装置により、踏段11の移動方向に沿って踏段11と同期した速度で移動するように駆動される。なお、本発明に関する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−291567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように移動手すり16はガイドレール14に摺動して案内されるが、移動手すり16の裏面に設けられたキャンバス面22が目詰まりする等により、移動手すり16の裏面が汚れてくると移動手すり16を駆動ローラと押圧ローラとにより両側から圧接して駆動する際の摩擦力が低減して移動手すり16の駆動能力が低下する可能性がある。また、長期間の使用により、図10に示すように、キャンバス面22に劣化等によりひびや、破れ等の損傷Aが生じると、移動手すり16の摺動抵抗が過大となり、移動手すり16の駆動能力に悪影響を及ぼす可能性もある。このため、従来から、定期的な点検作業により、移動手すり16の裏面を点検することが行われる。この場合、従来は、エスカレータの駆動を停止させた状態で、移動手すり16の上側部分の少なくとも一部をガイドレール14から取り外して裏面のキャンバス面22を点検して、点検後に、移動手すり16を駆動装置により少し駆動させて位置を移動させた後、再度、移動手すり16の上側部分となる別の部分をガイドレール14から取り外して、キャンバス面22の別の部分を点検することを繰り返している。そして、この繰り返しにより、キャンバス面22の移動方向にわたる多くの部分を点検することが行われている。このような作業は、長時間を要するだけでなく、移動手すり16の取り外しとその後の駆動とを繰り返す回数を多くしても、キャンバス面22の全周部分を完全に点検することは難しい。このため、キャンバス面22の全周をより精度よく、かつ、短時間で容易に点検できるようにすることが望まれている。
【0007】
これに対して、特許文献1には、一対のレールフレームのそれぞれの上部の踏段の移動方向と直交する方向の片側に取り付けられた固定側レールと、他側に固定側レールと相対して、かつ、固定側レールの方向に移動可能に取り付けられた移動側レールとによりガイドレールを構成する移動手すりが記載されている。また、移動側レールを固定側レールの方向に移動させて、ガイドレールと移動手すりとの係合を解除して移動手すりの取り外しを可能とするとされている。この構成によれば、容易に、かつ、安全に移動手すりの着脱作業が行える可能性がある。ただし、この構成を利用する場合でも、移動手すりを駆動装置での駆動により移動させつつ、移動手すりをレールから取り外して作業者が移動手すりの裏面を多くの回数、点検する必要があるため、移動手すりのキャンバス面の点検作業の時間短縮と容易化とを図る面から改良の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、移動手すり用点検装置において、移動手すりのキャンバス面の全周をより精度よく、かつ、短時間でかつ容易に点検できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る移動手すり用点検装置は、踏段の両側に立設された一対のレール支持部材と、一対のレール支持部材の上部にそれぞれ固定されたガイドレールと、各ガイドレールに摺動可能に係合されるように、踏段の移動方向に移動可能に取り付けられた移動手すりと、各移動手すりを踏段の移動方向に沿って移動するように駆動する駆動部とを備えるエスカレータの移動手すり装置において、少なくとも1の移動手すりの裏面を点検するための移動手すり用点検装置であって、少なくとも1のガイドレールの一部を構成するレール要素と交換されて、レール支持部材に着脱可能に取り付けられた点検ユニットを備え、点検ユニットは、移動手すりの裏面を撮影する撮影部を含み、撮影部は、レール支持部材に点検ユニットが取り付けられ、駆動部が移動手すりを移動させている状態で、移動手すりの裏面を連続的、または間欠的に撮影することを特徴とする移動手すり用点検装置である。
【0010】
また、本発明に係る移動手すり用点検装置において、好ましくは、撮影部に接続され、撮影部の撮影動作を制御する制御部を備え、制御部は、移動手すりの移動開始に伴って撮影を開始するように撮影部を制御する。
【0011】
また、本発明に係る移動手すり用点検装置において、好ましくは、撮影部に接続され、撮影部の撮影動作を制御する制御部を備え、制御部は、操作者の操作に応じて撮影を開始するように撮影部を制御する。
【0012】
また、本発明に係る移動手すり用点検装置において、好ましくは、撮影部に接続され、撮影部で取得された撮影データが送信された場合に、撮影データを記録する記録部を備える。
【0013】
また、本発明に係る移動手すり用点検装置において、好ましくは、点検ユニットは、ボルト締結手段によりレール支持部材に着脱可能に取り付けられるケースを含み、ケースは、ケース上面に設けられた開口部または透明部を含み、撮影部は、ケース内に取り付けられている。
【0014】
また、本発明に係る移動手すり用点検装置において、好ましくは、ケース内に設けられた照明部を含む。
【0015】
また、本発明に係る移動手すり用点検装置において、好ましくは、撮影部は、ケース内に、開口部または透明部を通じて、移動手すりの移動方向に対し傾斜する方向に撮影可能に取り付けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る移動手すり用点検装置によれば、レール支持部材に、ガイドレールを構成するレール要素と交換するように点検ユニットを取り付けた状態で、移動手すりを移動させながら移動手すりの裏面を撮影するので、移動手すりの裏面に設けられたキャンバス面の全周をより精度よく、かつ、短時間でかつ容易に点検できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態の移動手すり用点検装置を示す構成図である。
【図2】左右両側の移動手すりにおいて、レール要素と点検ユニットとを交換する様子を示す概略図である。
【図3】点検ユニットの撮影部により移動手すりを撮影する様子を示す概略断面図である。
【図4】点検ユニットを取り付ける以前において、レール支持部材にガイドレールを取り付けている様子を示す図であり、一部を断面にして示す概略透視斜視図である。
【図5】レール支持部材にレール要素と交換して点検ユニットを取り付けている様子を示す図であり、一部を断面にして示す概略透視斜視図である。
【図6】図5において、点検ユニットを上方から下方に見た図である。
【図7】別構造のレール支持部材に点検ユニットを取り付けている様子を示す、図5に対応する図である。
【図8】エスカレータの1例を示す概略図である。
【図9】エスカレータの片側の移動手すりの周辺部を示す概略断面図である。
【図10】ガイドレールから取り外した状態で、移動手すりの裏側のキャンバス面の1例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1は、本実施の形態の移動手すり用点検装置を示す構成図である。
【0019】
なお、本実施の形態により点検する対象であるエスカレータの基本的構成は、上記の図8〜10に示した構成と同様である。すなわち、エスカレータは、上記の図8〜10のように、左右一対のレール支持部材である内側板13と、内側板13上部に固定されたガイドレール14と、各ガイドレール14に摺動可能に係合されるように、踏段11の移動方向に移動可能に取り付けられた移動手すり16と、各移動手すり16を踏段11の移動方向に沿って踏段と同期した速度で移動するように駆動する駆動部である駆動装置24(図1)とを備える。なお、以下の説明では、図8〜10の構成と同様の要素には同一の符号を付して説明する。
【0020】
図1に示す本実施の形態の移動手すり用点検装置は、上記のエスカレータにおいて、左右の移動手すり16のうち、少なくとも一方の移動手すり16の裏面を点検するために使用される。また、移動手すり用点検装置は、左右のガイドレール14のうち、少なくとも一方のガイドレール14の一部を構成するレール要素28(図2)と交換されて、内側板13に着脱可能に取り付けられた点検ユニット32と、制御部である制御装置34と、移動手すり16と踏段11が連結されたチェーン(図示せず)とを駆動する駆動部である駆動装置24と、パーソナルコンピュータ(PC)等のディスプレイを有する外部コンピュータ36とを備える。
【0021】
図2は、左右両側の移動手すり16(図3〜5)において、レール要素28と点検ユニット32とを交換する様子を示す概略図である。図2に示すように、両側のガイドレール14は、それぞれ内側板13の上部に移動手すり16の移動方向(図3のα方向)に沿って並べるように配置された複数のレール要素26,28,30により構成されている。複数のレール要素26,28,30は互いに接触させても、隙間をあけて配置させても、さらには連結させてもよい。各レール要素26,28,30は、後述する図4に示すように、ボルト38により着脱可能に内側板13の上部に固定されている。この場合、本実施の形態では、欄干12の上側に配置されている往路側の移動手すり16の一部を、ガイドレール14から取り外した状態で、図2に示すように、1のレール要素28を内側板13から取り外し、1のレール要素28の代わりに点検ユニット32を配置して、内側板13の上部に点検ユニット32をボルト結合により着脱可能に固定している。図2の例では、左右のガイドレール14で点検ユニット32をレール要素28の代わりに配置しているが、一方のガイドレール14のみで点検ユニット32を固定して点検するようにしてもよい。
【0022】
図1に戻って、点検ユニット32は、ガイドレール14(図2)にボルト等により固定可能なケース40と、ケース40内にそれぞれ設けられて、移動手すり16の裏面を撮影する小型カメラ等の撮影部42と、ランプまたは発光ダイオード等の画像確認用の照明部44とを含む。なお、図2では、点検ユニット32内の撮影部42及び照明部44を透視して示している。
【0023】
また、撮影部42は、内側板13の上部に点検ユニット32が取り付けられ、駆動装置24により移動手すり16(図3)が移動している状態で、移動手すり16の裏面を連続的、または間欠的に撮影することを可能とする。また、外部コンピュータ36は、撮影部42で取得されたデータを取り込んで記録する、ハードディスクドライブ装置や大容量メモリ等の記録部46を有する。記録部46は、撮影部42に接続され、撮影部42で取得された撮影データが送信された場合に、撮影データを記録する。
【0024】
また、制御装置34には、駆動装置24と撮影部42と照明部44とが接続され、駆動装置24の駆動と撮影部42の撮影動作と照明部44の点灯状態とを制御する。例えば、制御装置34は、駆動装置24に駆動の開始を指示する指令信号を出力し、駆動装置24が駆動したこと、すなわち、移動手すり16の移動開始に伴って撮影を開始するように、撮影部42を制御する。また、撮影部42は、撮影した画像に基づいて、撮影データを取得し、取得した撮影データを外部コンピュータ36の記録部46に送信可能としている。
【0025】
また、外部コンピュータ36に制御装置34が接続されている。制御装置34は、上記の駆動装置24に駆動の開始を指示する指令信号を出力し、駆動装置24が駆動したこと、すなわち、移動手すり16の移動開始に伴って撮影部42で取得された撮影データが上記の記録部46に送信されるよう、撮影部42を制御する。
【0026】
次に、点検ユニット32の具体的構造について詳しく説明する。図3は、点検ユニット32の撮影部42により移動手すり16を撮影する様子を示す概略断面図である。図4は、点検ユニットを取り付ける以前において、レール支持部材である内側板13の上部にガイドレール14を取り付けている様子を示す図であり、一部を断面にして示す概略透視斜視図である。図5は、レール支持部材である内側板13にレール要素と交換して点検ユニット32を取り付けている様子を示す図であり、一部を断面にして示す概略透視斜視図である。図6は、図5において、点検ユニット32を上方から下方に見た図である。
【0027】
図3に示すように、点検ユニット32は、樹脂または金属等により、天板部を有する箱状に形成されたケース40と、ケース40内にそれぞれ設けられた撮影部42及び照明部44とを含む。図6に示すように、ケース40は、ケース40の上部を構成する天板部48の中央部に、厚さ方向に貫通する開口部50が設けられている。すなわち、ケース40の上面に開口部50が設けられている。また、図5、図6に示すように、ケース40の底部を構成する底板部に、ボルト38を貫通させるための孔部52が形成されている。図5に示すように、孔部52を貫通したボルト38が内側板13の上面に形成されたネジ孔54に結合されることにより、ケース40が内側板13に固定可能とされている。すなわち、点検ユニット32は、ボルト38とネジ孔54とにより構成されるボルト締結手段により内側板13に着脱可能に取り付けられる。内側板13のネジ孔54を形成する部分は金属により構成することができる。
【0028】
また、図3の撮影部42は、静止画撮影機能を有するものでも、動画撮影機能を有するものでも、あるいはその両方の機能を有するものでもよい。撮影部42は、ケース40内の底板部上の長さ方向片側(図3の左側)に寄った部分に、斜め上方向に、すなわちケース40の長さ方向他側(図3の右側)の上側に、撮影部42を向けるように取り付けられている。また、照明部44は、ケース40内の底板部上で、ケース40の長さ方向に対し撮影部42よりも他側(図3の左側)にずれた部分に固定され、照明部44の点灯によりケース40の上方を照射するようにしている。なお、図3、図6の例では、ケース40内に複数の照明部44が一列に並んで設けられているが、このような例に限定するものではなく、照明部44の数及び配置関係は、種々の数(例えば1)及び関係を採用できる。
【0029】
このような点検ユニット32を含む移動手すり用点検装置を用いて、移動手すり16の裏面を点検する場合、先ず、図2に示すように、欄干12上側に配置されている往路側の移動手すり16(図3,4)の一部を、ガイドレール14から取り外した状態で、ボルト38(図4、図5)により内側板13に結合されていた1のレール要素28を内側板13から取り外す。その後、図3に示すように、1のレール要素28の代わりに点検ユニット32を配置して、点検ユニット32を内側板13の上部にボルト38を用いたボルト結合により着脱可能に固定する。すなわち、図4に示すように、エスカレータの使用状態では、複数のレール要素28,30により構成されるガイドレール14は、上部の左右両側に突出する鍔部20を有し、各鍔部20に移動手すり16の耳部である、左右両側の係合部56が係合されている。点検時には、エスカレータの駆動を停止させた状態で、作業者が上側の移動手すり16の少なくとも一部をガイドレール14から図示しない冶具を用いて取り外し、その取り外した状態でボルト38の取り外しにより、1のレール要素28を内側板13から取り外す。
【0030】
その後、図5に示すように、1のレール要素28(図4)の取り付けに使用していたネジ孔54を用いて点検ユニット32を、内側板13の上部にボルト結合する。そして移動手すり16の全部を再度、ガイドレール14に係合させる。この状態で点検ユニット32部分には移動手すり16が係合されないが、両側のガイドレール14部分に移動手すり16が係合されるので、点検時の移動手すり16の駆動に問題は生じない。
【0031】
また、この状態で、図3に示すように、撮影部42がケース40に対し斜め上方に向けられている。このため、撮影部42は、ケース40内に、開口部50を通じて、移動手すり16の移動方向(図3のα方向)に対し傾斜する方向に撮影可能に取り付けられている。
【0032】
次いで、制御装置34(図1)により移動手すり16が駆動されることにより移動手すり16の移動が開始されるとともに、撮影部42による移動手すり16の裏面の撮影が開始される。撮影は、連続的、すなわち動画撮影で、または間欠的な静止画撮影等で行われる。また、撮影部42で取得された撮影データが連続して、または一定時間ごと、または移動手すり16の駆動停止時に外部コンピュータ36の記録部46に送信され、記録部46で記録される。移動手すり16が1周回移動する等の所定のタイミングで、制御装置34は移動手すり16の駆動を停止させ、撮影を終了する。
【0033】
このような移動手すり用点検装置によれば、内側板13に、ガイドレール14を構成するレール要素28と交換するように点検ユニット32を取り付けた状態で、移動手すり16を移動させながら移動手すり16の裏面を撮影する。このため、従来のように移動手すり16の一部をガイドレール14から取り外して裏面のキャンバス面22(図10参照)を点検し、再度移動手すり16を取り付けた後、移動させ、再度点検する作業を多くの回数繰り返す場合と異なり、移動手すり16の裏面に設けられたキャンバス面22の全周をより精度よく、かつ、短時間でかつ容易に点検できる。作業者は、1度、移動手すり16をガイドレール14から取り外してレール要素28と点検ユニット32とを交換して移動手すり16を移動させればよく、点検のために移動手すり16の取り外し及び移動を多く繰り返す必要がない。また、レール要素28の取り付け用のネジ孔54を利用して内側板13に点検ユニット32を固定するので、点検ユニット32及びレール要素28の交換作業を容易に行える。
【0034】
また、撮影部42に接続され、撮影部42の撮影動作を制御する制御装置34は、移動手すり16の移動開始に伴って撮影を開始するように撮影部42を制御するので、撮影部42の操作と移動手すり16の駆動とを作業者が別に行う必要がない。
【0035】
ただし、本実施の形態とは別の実施形態として、制御部である制御装置34または、外部コンピュータ36の制御部により、作業者、すなわち操作者の操作に応じて撮影部42の撮影を開始するように制御することもできる。この場合、エスカレータの駆動開始で自動に撮影は開始されないが、エスカレータを制御装置34で駆動させた後、作業者が撮影を開始させることができる。この場合、制御部で撮影部42による撮影の終了を指示することもできる。
【0036】
また、記録部46は、撮影部42に接続され、撮影部42で取得された撮影データが送信された場合に、撮影データを記録するので、作業者は、外部コンピュータ36で記録部46に記録された撮影データを読み出し、外部コンピュータ36のディスプレイに表示や再生させることで、点検時のキャンバス面22の画像を確認して、損傷や目詰まり、劣化等の異常の有無を確認できる。また、記録部46で記録された画像をスロー再生や、ポーズ(一時停止)機能を使用しながら再生することで、キャンバス面22の部分的摩耗、損傷、つなぎの部分の異常の有無の確認を、より容易にかつ短時間で行える。また、記録部46の機能を制御装置34に持たせる、すなわち制御装置34に記録部46を内蔵させ、点検ごとの画像を記録することで、エスカレータでのキャンバス面22の時間的変化の記録の収集を容易に行えるようにすることもできる。
【0037】
また、ケース40内に照明部44を設けているので、移動手すり16の移動時の移動手すり16の裏側の暗い空間での撮影でも照明部44の照射により撮影画像を良好にできる。また、撮影部42は、ケース40内に、開口部50を通じて、移動手すり16の移動方向に対し傾斜する方向に撮影可能に取り付けられているので、撮影部42を移動手すり16に対し直交する方向に向ける場合と異なり、移動手すり16のキャンバス面22の広い範囲を撮影しやすくなり、点検作業時間のさらなる短縮を図れる。なお、撮影画像をより良好にするために、撮影部42を移動手すり16に対し直交する方向に向けて、キャンバス面22を撮影することもできる。
【0038】
なお、ケース40の上面に開口部50を設けているが、この開口部50を透明樹脂や透明なアクリル板で塞ぐようにする等により、ケース40の上面に透明部を設けることもできる。この場合には、ケース40内への異物の侵入を防止しやすくなる。
【0039】
図7は、別構造のレール支持部材に点検ユニット32を取り付けている様子を示す、図5に対応する図である。図7の構造では、板部により構成されるフレーム58がレール支持部材に対応し、フレーム58の上部は、上部に天板部60を有する構造としている。この構成の場合、ガイドレール14の複数のレール要素は、ボルト38と内側のナット62とにより構成されるボルト締結手段により、フレーム58に固定されている。このため、移動手すり16の点検時には、このボルト締結手段を用いて、フレーム58に点検ユニット32のケース40を、着脱可能に取り付けている。その他の構成及び作用は、上記の図1〜6に示した実施形態と同様である。なお、ナット62は、フレーム58の天板部60の下面に溶接等により固定しておくこともできる。
【符号の説明】
【0040】
10 トラス、11 踏段、12 欄干、13 内側板、14 ガイドレール、16 移動手すり、18 デッキボード、20 鍔部、22 キャンバス面、24 駆動装置、26,28,30 レール要素、32 点検ユニット、34 制御装置、36 外部コンピュータ、38 ボルト、40 ケース、42 撮影部、44 照明部、46 記録部、48 天板部、50 開口部、52 孔部、54 ネジ孔、56 係合部、58 フレーム、60 天板部、62 ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段の両側に立設された一対のレール支持部材と、一対のレール支持部材の上部にそれぞれ固定されたガイドレールと、各ガイドレールに摺動可能に係合されるように、踏段の移動方向に移動可能に取り付けられた移動手すりと、各移動手すりを踏段の移動方向に沿って移動するように駆動する駆動部とを備えるエスカレータの移動手すり装置において、少なくとも1の移動手すりの裏面を点検するための移動手すり用点検装置であって、
少なくとも1のガイドレールの一部を構成するレール要素と交換されて、レール支持部材に着脱可能に取り付けられた点検ユニットを備え、
点検ユニットは、移動手すりの裏面を撮影する撮影部を含み、
撮影部は、レール支持部材に点検ユニットが取り付けられ、駆動部が移動手すりを移動させている状態で、移動手すりの裏面を連続的、または間欠的に撮影することを特徴とする移動手すり用点検装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動手すり用点検装置において、
撮影部に接続され、撮影部の撮影動作を制御する制御部を備え、
制御部は、移動手すりの移動開始に伴って撮影を開始するように撮影部を制御することを特徴とする移動手すり用点検装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動手すり用点検装置において、
撮影部に接続され、撮影部の撮影動作を制御する制御部を備え、
制御部は、操作者の操作に応じて撮影を開始するように撮影部を制御することを特徴とする移動手すり用点検装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の移動手すり用点検装置において、
撮影部に接続され、撮影部で取得された撮影データが送信された場合に、撮影データを記録する記録部を備えることを特徴とする移動手すり用点検装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の移動手すり用点検装置において、
点検ユニットは、ボルト締結手段によりレール支持部材に着脱可能に取り付けられるケースを含み、
ケースは、ケース上面に設けられた開口部または透明部を含み、
撮影部は、ケース内に取り付けられていることを特徴とする移動手すり用点検装置。
【請求項6】
請求項5に記載の移動手すり用点検装置において、
ケース内に設けられた照明部を含むことを特徴とする移動手すり用点検装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の移動手すり用点検装置において、
撮影部は、ケース内に、開口部または透明部を通じて、移動手すりの移動方向に対し傾斜する方向に撮影可能に取り付けられていることを特徴とする移動手すり用点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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