説明

移動方向特定装置、移動方向特定方法、移動方向特定プログラム及び電子機器

【課題】移動体の移動方向特定に要する時間を短縮する。
【解決手段】移動体2の角速度を検出する角速度検出部4が出力するデジタル検出信号Dx、Dy、Dzに基づいて前記移動体2の移動方向を特定する場合に、所定の計測期間Tkの間、前記角速度検出部4が出力するデジタル検出信号Dx、Dy、Dzを取得し、取得した前記デジタル検出信号Dx、Dy、Dzに基づいて、前記所定の計測期間Tkにおける角度データθx、θy、θzを求め、当該角度データθx、θy、θzに基づいて前記移動体2の移動方向を特定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサの検出信号に基づいて移動体の移動方向を特定する技術に係り、特に、移動方向特定に要する時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャイロセンサ等の角速度センサを移動体に搭載し、当該角速度センサの検出信号に基づいて移動体の移動方向を特定する技術が一般に知られている。この技術は、例えば、携帯機器が傾けられたときに当該携帯機器に表示されているカーソルを傾きの方向に移動する技術や(例えば、特許文献1参照)、携帯機器本体の移動方向に応じて外部機器を操作する技術(例えば、特許文献2参照)といった、携帯機器の移動方向に応じて制御対象物の動作を制御する技術に広く応用されている。
【特許文献1】特開平11−95910号公報
【特許文献2】特開2003−271302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、角速度センサの検出信号に基づく移動方向特定に要する時間が長いと、携帯機器の移動に対する制御対象物の動作の追従性が悪くなる、といった問題がある。例えば、カーソルの移動を制御する技術にあっては、携帯機器の傾動にカーソルの移動が追従せず、また、携帯機器本体の移動にて外部機器を操作する技術にあっては、携帯機器の移動から実際に外部機器が操作されるまでのタイムラグが長くなる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、移動体の移動方向特定に要する時間を短縮可能な移動方向特定装置、移動方向特定方法、移動方向特定プログラム及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定する移動方向特定装置であって、所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得する検出信号取得手段と、前記検出信号取得手段が取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定する方向特定手段とを具備することを特徴とする。
【0005】
また上記目的を達成するために、本発明は、角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定する移動方向特定方法であって、所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得し、取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定することを特徴とする。
【0006】
また上記目的を達成するために、本発明は、角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定するコンピュータを、所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得する検出信号取得手段、及び、前記検出信号取得手段が取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定する方向特定手段として機能させることを特徴とする移動方向特定プログラムを提供する。
【0007】
また上記目的を達成するために、本発明は、角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定し、当該移動方向と予め対応付けられたコマンドに変換する電子機器であって、所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得する検出信号取得手段と、前記検出信号取得手段が取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定する方向特定手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
以上の発明によれば、所定の計測期間における検出信号の取得後に、この所定の計測期間における角度に基づいて移動体の移動方向が特定される。これにより、検出信号の取得が長い時間にわたり継続することが防止され、移動方向特定に要する時間が短縮される。
特に、移動体の移動方向をコマンドに変換する電子機器にあっては、検出信号の取得から移動方向を特定しコマンドに変換するまでの時間が短縮されるため、移動体の移動とその移動がコマンドに変換されるまでのタイムラグを短くし、追従性の優れた電子機器が実現される。
【0009】
ここで、上記発明において、前記方向特定手段は、前記角度の絶対値と、前記移動体が移動したときの前記角度の閾値とを比較し、前記角度の絶対値が前記閾値を超えた場合に、前記閾値を超えた角度の正負に基づいて前記移動体の移動方向を特定する構成としても良い。
この構成によれば、角度の絶対値と閾値との比較に基づいて移動体の移動の有無が特定され、さらに、移動体が移動して角度の絶対値が閾値を超えた場合には、閾値を超えたときの角度の正負に基づいて移動体の移動方向が特定される。これにより、移動体の移動に伴う角度変化が閾値に至らない程度であれば、移動体の移動とみなされないため、例えば振動により移動体が微動したときなど、意図せぬ移動体の動きを移動として処理される事が防止可能となる。
【0010】
また、上記発明において、前記所定の計測期間は、前記移動体が出力する検出信号のサンプリング間隔に応じて変更される構成としても良い。
この構成によれば、移動体が出力する検出信号のサンプリング間隔に応じて所定の計測期間が変更されるため、サンプリング間隔が短い場合には所定の計測期間が短くなり、移動体の移動方向が、より迅速に特定される。
【0011】
上記発明に係る電子機器において、前記移動体の移動方向を間欠的に特定し、前記移動方向をキー入力コマンドに変換する構成としても良い。
この構成によれば、移動体の移動と、その移動によりキー入力が行われるまでのタイムラグを短くし、追従性の優れたキー入力を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る移動方向特定システム1の構成を示す図である。この図に示すように、移動方向特定システム1は、移動体2と、移動方向特定装置3とを有し、この移動方向特定装置3が移動体2の移動方向を特定する。
詳述すると、移動体2は、当該移動体2の動きとして3次元回転角速度を検出する角速度検出部4と、この角速度検出部4の検出信号を移動方向特定装置3に出力する検出信号出力インターフェース5とを有している。
【0013】
角速度検出部4は、3次元直交座標系におけるX軸周りの回転角速度に応じた電圧値のアナログ信号を出力するX軸ジャイロセンサ6と、Y軸周りの回転角速度に応じた電圧値のアナログ信号を出力するY軸ジャイロセンサ7と、Z軸周りの回転角速度に応じた電圧値のアナログ信号を出力するZ軸ジャイロセンサ8と、ジャイロセンサ6〜8ごとに設けられて各ジャイロセンサ6〜8が出力するアナログ信号をA/D変換してデジタル信号に変換するA/Dコンバータ9とを有し、各A/Dコンバータ9から所定のサンプリング間隔Rs(図2参照)で順次出力されたX軸、Y軸及びZ軸周りの角速度を示すデジタル信号の各々が検出信号出力インターフェース5を介して移動方向特定装置3にデジタル検出信号Dx、Dy、Dzとして入力される。
【0014】
移動方向特定装置3は、プログラムの実行及び各種演算を行うマイクロコンピュータ10と、上記デジタル検出信号Dx、Dy、Dzの入力インターフェースである検出信号入力インターフェース11と、各種プログラムやデータを格納するROM12と、マイクロコンピュータ10のワークエリアとして機能するRAM13と、クロック信号を出力するクロック回路14とを有し、それぞれがバス15に接続されている。なお、当該移動体2と移動方向特定装置3とが一体に構成されても良いことは勿論である。
【0015】
上記移動方向特定装置3のROM12には、移動方向特定プログラム20が格納されている。この移動方向特定プログラム20は、検出信号取得機能、角速度変換機能、角度変換機能、最大角度特定機能、及び、移動方向特的機能をマイクロコンピュータ10に実現させるものであり、この移動方向特定プログラム20をマイクロコンピュータ10が実行することで、デジタル検出信号Dx、Dy、Dzに基づいて移動体2の移動方向が特定される。
【0016】
詳述すると、検出信号取得機能は、所定のサンプリング間隔Rsで移動体2から順次出力されているデジタル検出信号Dx、Dy、Dzを、図2に示す所定の計測期間Tkの間だけ順次取り込みRAM13に一時的に格納する機能を実現するものである。サンプリング間隔RsがN/Tkである場合には、計測期間Tkの間に、X軸、Y軸及びZ軸の各々についてN個のデジタル検出信号Dx、Dy、Dzが取り込まれる。
【0017】
角速度変換機能は、RAM13に格納されたデジタル検出信号Dx、Dy、Dzの各々をX軸、Y軸及びZ軸ごとの角速度データωx、ωy、ωzに各々変換してRAM13に格納する機能を実現するものである。これらの角速度データωx、ωy、ωzは、一定時間における角度変化量を示すデータであれば良く、単位時間あたりの角度変化量を正確に求める必要はない。この角速度変換機能により、X軸、Y軸及びZ軸ごとにN個の角速度データωx、ωy、ωzが生成される。
【0018】
角度変換機能は、X軸、Y軸及びZ軸ごとにN個の角速度データωx、ωy、ωzに基づいて、計測期間Tk内での角度変化の軌跡を示すN個の角度データθx、θy、θzに変換してRAM13に格納する機能を実現するものである。具体的には、X軸についての角度データθxを例にすると、n(n:1≦n≦Nの整数)番目の角度データθxnは、(n−1)番目の角度データθx(n−1)にn番目の角速度データωxnを加算して算出される(ただし、n=1の場合、すなわち、1番目の角度データθx1は、1番目の角速度データωx1とする)。これらの角度データθx、θy、θzにより、図2に示すように、計測期間Tkにおける角度の変化が示されることとなる。
最大角度特定機能は、X軸、Y軸及びZ軸ごとに、上記計測期間Tkにおける角度データθx、θy、θzの絶対値が最大となる最大角度θxmax、θymax、θzmaxを特定する機能を実現するものである。
移動方向特定機能は、最大角度θxmax、θymax、θzmaxの絶対値と閾値θthとの大小及び最大角度θxmax、θymax、θzmaxの正負に基づいて、X軸、Y軸及びZ軸ごとに正負どちらの方向に移動しているかを特定する機能を実現するものである。
【0019】
X軸についての最大角度θxmaxを例にしてより詳細に説明すると、計測期間Tkにおいて移動体2がX軸方向に移動した場合、図2の期間(A)及び期間(C)に示すように、計測期間Tk内での角度変化が大きくなり、これとは逆に、計測期間Tkにおける移動体2のX軸方向の移動が小さい、或いは、移動が無い場合には、図2の期間(B)に示すように、計測期間Tk内での角度変化が小さい。
このように、計測期間Tkにおける最大角度θmaxは、移動体2の移動の大きさに応じて絶対値が大きくなる。したがって、移動体2が移動したとみなせる程度の角度の大きさを閾値θthとして設定し、この閾値θthと、計測期間Tkにおける最大角度θmaxの絶対値とを比較して、当該最大角度θxmaxの絶対値が閾値θthを超えたか否かを判断することで、移動体2がX軸方向に移動したか否か(より詳細には、移動体2の移動にX軸方向成分が含まれているか否か)が特定される。また、移動体2がX軸方向の正方向に移動すると角度θが増加し、また、負方向に移動すると角度θが減少するため、移動体2がX軸の正方向及び負方向のどちらに移動したかは、最大角度θxmaxの正負によって特定される。なお、X軸についての移動を説明したが、Y軸及びZ軸についても同様である。
【0020】
以上の構成の下、移動方向特定装置3は、計測期間Tkでのデジタル検出信号Dx、Dy、Dzの取り込みと、これらのデジタル検出信号Dx、Dy、Dzに基づくX軸、Y軸及びZ軸ごとの移動方向特定とを順次繰り返して、移動体2の移動方向を順次出力する。以下では、デジタル検出信号Dx、Dy、Dzの取り込みから移動方向が特定されるまでの動作について図3を参照して詳述する。
【0021】
図3は、移動方向特定処理のフローチャートである。
この図に示すように、マイクロコンピュータ10は、計測期間Tkの開始タイミングts(図2参照)が到来するまで待機し(ステップS1:NO)、開始タイミングtsが到来すると(ステップS1:YES)、検出信号入力インターフェース11を介して移動体2からデジタル検出信号Dx、Dy、Dzを取り込み、RAM13に格納する(ステップS2)。そして、マイクロコンピュータ10は、計測期間Tkの終了タイミングte(図2参照)が到来したか否かを判断し(ステップS3)、終了タイミングte以前である場合は(ステップS3:NO)、デジタル検出信号Dx、Dy、Dzの取り込みを継続すべく処理手順をステップS2に戻し、また、終了タイミングteが到来した場合には(ステップS3:YES)、デジタル検出信号Dx、Dy、Dzの取り込みを終了する。
これにより、移動体2から所定のサンプリング間隔Rsで常時出力されているデジタル検出信号Dx、Dy、Dzが、計測期間Tkの間だけ取り込まれてRAM13に順次格納される。なお、以下では、計測期間Tk内にN個のデジタル検出信号Dx、Dy、Dzが取り込まれているものとして説明する。
【0022】
計測期間Tkが終了すると、この計測期間Tk内で取り込んだデジタル検出信号Dx、Dy、Dzに基づいて移動体2の移動方向を判別すべく、マイクロコンピュータ10は、次の処理を実行する。すなわち、マイクロコンピュータ10は、RAM13に格納されているデジタル検出信号Dx、Dy、DzのそれぞれをX軸、Y軸及びZ軸ごとにN個の角速度データωx、ωy、ωzに変換し(ステップS4)、これらの角速度データωx、ωy、ωzを、計測期間Tk内での角度変化の軌跡を示す上述したN個の角度データθx、θy、θzに変換する(ステップS6)。
【0023】
次いで、マイクロコンピュータ10は、X軸、Y軸及びZ軸ごとに、上記計測期間Tkにおける角度データθx、θy、θzの絶対値が最大となる最大角度θxmax、θymax、θzmaxを特定し(ステップS6)、上記最大角度θxmax、θymax、θzmaxの絶対値が閾値θthを超えている軸について、最大角度の正負に基づいて、移動方向を特定する(ステップS7)。そして、マイクロコンピュータ10は、処理手順をステップS1に戻して、次の計測期間Tkの開始タイミングtsが到来するまで待機する。
【0024】
以上の処理により、計測期間Tkが到来するごとに、この計測期間Tkの間だけデジタル検出信号Dx、Dy、Dzが順次取り込まれ、これらのデジタル検出信号Dx、Dy、Dzに基づいて、当該計測期間TkにおけるX軸、Y軸及びZ軸ごとの角度変化を示す角度データθx、θy、θzを算出し、それらの最大角度θxmax、θymax、θzmaxに基づいて、X軸、Y軸及びZ軸ごとに移動方向が特定される。
【0025】
したがって、本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、一般に、角速度の検出信号に基づいて移動方向を特定する際には、角度変化の変曲点、具体的には、角度変化が単調増加から単調減少、または、単調減少から単調増加に変わる点を検出して、移動体の移動方向を特定しており、移動体の移動方向の切り替わりが長くなると、その分だけ、移動方向特定に時間を要してしまう。
これに対して、本実施形態によれば、デジタル検出信号Dx、Dy、Dzを取り込む所定の計測期間Tkごとに移動方向が特定されるため、上記変曲点を検出するまでデジタル検出信号Dx、Dy、Dzを取り込み続ける必要がなく、移動方向特定に要する時間が短縮される。
【0026】
また、計測期間Tkの期間長を変更することで、単位時間あたりの移動方向の特定回数を適宜調整可能となる。なお、この計測期間Tkは、時間ではなく、デジタル検出信号Dx、Dy、Dzのサンプリング数Nによって規定しても良いことは勿論である。すなわち、移動方向特定処理においては、計測期間Tkの開始タイミングtsからデジタル検出信号Dx、Dy、Dzを所定のサンプリング数Nだけ取り込んだときが当該計測期間Tkの終了タイミングteとなる。
【0027】
また、上述した実施形態において、デジタル検出信号Dx、Dy、Dzのサンプリング間隔Rsに応じて計測期間Tkを変更しても良い。具体的には、サンプリング間隔Rsが短い場合には、移動体2の移動に関する単位時間あたりの検出回数が多くなり、短い期間で移動を判断するに十分なサンプリング数Nのデジタル検出信号Dx、Dy、Dzが得られる。したがって、このサンプリング間隔Rsが短い場合には計測期間Tkを短い時間に変更することで、移動方向特定に要する時間をより短縮することが可能となる。
【0028】
また、上述した実施形態において、移動体2が各ジャイロセンサ6〜8の検出信号をデジタル信号に変換して移動方向特定装置3に入力する構成としたが、これに限らず、移動方向特定装置3がアナログ信号の検出信号を所定のサンプリング間隔Rsでデジタル信号に変換する構成としても良い。
【0029】
次いで、本発明の応用例として、電子機器の一態様たるコンピュータに移動方向特定装置3を組み込み、当該コンピュータへのカーソルキー入力を移動体2の操作により行うようにしたコンピュータ入力システムについて説明する。
図4は、本応用例に係るコンピュータ入力システム100の構成を示す図である。この図に示すように、コンピュータ入力システム100は、コンピュータシステム110と、当該コンピュータシステム110にカーソルキー入力するための上述した移動体2とを備えている。この移動体2には、例えば携帯電話機やPDA等のユーザが把持して動かすことのできる電子機器であれば任意の機器を用いることが可能である。
【0030】
コンピュータシステム110は、コンピュータ111と、表示モニタ装置112とを有し、移動体2から無線通信又は有線通信を介してデジタル検出信号Dx、Dy、Dzがコンピュータ111に入力される。
コンピュータ111のソフトウェア環境について詳細には、各種アプリケーションプログラムの実行環境たるオペレーティングシステム(以下、「OS」と言う)200を有し、このOS200には、移動体2からOS200への入力を可能にするためのデバイスドライバ210が組み込まれている。このデバイスドライバ210には、上述した実施形態の移動方向特定プログラム20と、コマンド変換プログラム21とが含まれている。
【0031】
移動方向特定プログラム20は、OS200が移動体2からの1文字分のカーソルキー入力を要求する入力要求イベント240の発生に伴ってコンピュータ111によって実行され、そのときの移動体2の移動方向が特定される。このとき上記入力要求イベント240の発生タイミングが上記計測期間Tkの開始タイミングtsとなり、また、1回の入力要求イベント240に対しては、1文字分のカーソルキー入力だけを取得すべく、図3に示した移動方向特定処理が1ループだけ行われて、1期間の計測期間Tkにおける移動体2の移動方向が特定される。
【0032】
コマンド変換プログラム21は、移動方向特定プログラム20の実行によって特定された移動体2の移動方向を、カーソルキー入力コマンドに変換してOS200に通知するものであり、例えば、X軸正方向の移動を右方向のカーソルキー入力コマンド「→」、X軸負方向の移動を左方向のカーソルキー入力コマンド「←」、Y軸正方向の移動を上方向のカーソルキー入力コマンド「↑」、Y軸負方向の移動を下方向のカーソルキー入力コマンド「↓」に変換し、変換した1文字分のカーソルキー入力コマンドをOS200に対して上記入力要求イベントの応答250として通知する。このとき、X軸及びY軸のいずれの方向にも移動体2が移動していないと特定された場合には、その旨を示す値(例えば「Null」)を応答250として通知する。
【0033】
以上の構成の下、表示モニタ装置112にカーソルキー入力画面が表示されている等して、OS200がカーソルキー入力の入力要求イベント240を発生するごとに、移動方向特定プログラム20がコンピュータ111によって実行されて移動体2の移動方向が特定され、また、特定された移動方向がコマンド変換プログラム21の実行によりカーソルキー入力コマンドに変換されて応答250としてOS200に通知される。これにより、ユーザが移動体2を移動させることで、その移動に応じてカーソルキー入力コマンドがコンピュータシステム110に順次入力されることとなる。
【0034】
このとき、所定の計測期間Tk後に移動方向が特定されることで移動方向特定に要する時間が短縮されているため、入力要求イベント240の発生から応答250までのタイムラグが短くなり、移動体2の移動によるカーソルキー入力の追従性が高められる。
なお、本応用例において、OS200をプラットフォームとして実行される各種アプリケーションプログラムがカーソルキー入力の入力要求イベント240を発生させ、OS200を介してデバイスドライバ210から応答250を受け取っても良い。
また、本応用例において、複数文字分のカーソルキー入力コマンドの入力パターンと、英数字とを予め対応付けておき(例えば入力パターン「↑」「↓」=「A」等)、複数文字分のカーソルキー入力コマンドが入力されるごとに、その入力パターンに応じた英数字に変換して英数字入力を可能にすることもできる。
【0035】
また、上述した実施形態及び応用例は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。例えば、本発明は、移動体たる携帯機器のカーソルの移動方向制御や、携帯機器を用いた外部機器の操作入力にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る移動方向特定システムの構成を示す図。
【図2】計測期間と当該計測期間における角度変化を説明するための図。
【図3】移動方向特定処理のフローチャート。
【図4】本発明の応用例に係るコンピュータ入力システムの構成を示す図。
【符号の説明】
【0037】
1…移動方向特定システム、2…移動体、3…移動方向特定装置、4…角速度検出部、θx、θy、θz…角度データ、ωx、ωy、ωz…角速度データ、θmax…最大角度、10…マイクロコンピュータ、20…移動方向特定プログラム、21…コマンド変換プログラム、100…コンピュータ入力システム、110…コンピュータシステム、Dx、Dy、Dz…デジタル検出信号、Tk…計測期間、θth…閾値、N…サンプリング数、Rs…サンプリング間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定する移動方向特定装置であって、
所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得する検出信号取得手段と、
前記検出信号取得手段が取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定する方向特定手段と
を具備することを特徴とする移動方向特定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動方向特定装置において、
前記方向特定手段は、
前記角度の絶対値と、前記移動体が移動したときの前記角度の閾値とを比較し、前記角度の絶対値が前記閾値を超えた場合に、前記閾値を超えた角度の正負に基づいて前記移動体の移動方向を特定する
ことを特徴とする移動方向特定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の移動方向特定装置において、
前記所定の計測期間は、前記移動体が出力する検出信号のサンプリング間隔に応じて変更される
ことを特徴とする移動方向特定装置。
【請求項4】
角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定する移動方向特定方法であって、
所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得し、取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定する
ことを特徴とする移動方向特定方法。
【請求項5】
角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定するコンピュータを、
所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得する検出信号取得手段、及び、
前記検出信号取得手段が取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定する方向特定手段
として機能させることを特徴とする移動方向特定プログラム。
【請求項6】
角速度を検出する角速度検出手段を有する移動体から出力される前記角速度検出手段の検出信号に基づいて前記移動体の移動方向を特定し、当該移動方向と予め対応付けられたコマンドに変換する電子機器であって、
所定の計測期間の間、前記移動体が出力する検出信号を取得する検出信号取得手段と、
前記検出信号取得手段が取得した前記検出信号に基づいて、前記所定の計測期間における、前記角速度検出手段が検出した角速度から求められる角度を求め、当該角度に基づいて前記移動体の移動方向を特定する方向特定手段と
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器において、
前記移動体の移動方向を間欠的に特定し、前記移動方向をキー入力コマンドに変換することを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−122173(P2008−122173A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304821(P2006−304821)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】