説明

移動案内表示システム、移動案内表示方法及びコンピュータプログラム

【課題】遮蔽空間の空間形状を表示装置に表示された画像上でユーザに正確に把握させることを可能とした移動案内表示システム、移動案内表示方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】車両が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間を走行し、且つ該遮蔽空間が3D走行画面の表示対象となっている場合には、車両が現在走行する遮蔽空間を遮蔽空間内部からの視点で3DCG画像により表示した3D走行画面60、61を液晶ディスプレイ15に表示する。また、3D走行画面60、61では、遮蔽空間の形状を特定する形状特定物(例えば、ライト68、縁石69、区画線75、縁石76)を、遮蔽部材に重畳して表示するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動の案内を行う為の画像を表示する移動案内表示システム、移動案内表示方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。ここで、ナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより自車の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体またはネットワークを通じて取得し、車両の現在位置や現在位置周辺の道路形状等を表示装置に表示することが可能な装置である。また、近年は携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ等においても上記ナビゲーション装置と同様の機能を有するものがある。更に、車両以外にも歩行者や二輪車を対象として上記案内を行うことも可能である。
【0003】
また、近年、上記ナビゲーション装置等では、トンネルや地下通路などの通常の地図画像では表示することが困難な道路を車両が走行する場合において、車両の現在位置や現在位置周辺の道路形状をユーザに分かり易く表示する技術について提案されている。例えば、特開2005−195475号公報には、車両周辺の地図画像を表示する場合に、トンネル等の地下構造物を半透過状態で表示する技術について提案されている。また、特開2005−315851号公報には、一般道路と高架式の高速道路が上下に並設されている道路区間を表示する場合において、車両が下層の一般道路を走っている場合には、上層の高架式の高速度路を半透過状態で表示する技術について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195475号公報(第8頁、図4)
【特許文献2】特開2005−315851号公報(第7−9頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2のように車両が走行する空間を遮蔽する遮蔽部材(特許文献1ではトンネルの天井や側壁が相当し、特許文献2では高架道路が相当する)を半透過状態に表示するのみでは、遮蔽部材によって遮蔽された空間形状、即ち、車両の走行する走行空間の空間形状を、表示装置に表示された地図画像上でユーザに正確に把握させることは困難であった。その結果、ユーザは表示装置に表示された地図画像から車両の正確な現在位置を特定することができず、また、車両の進行方向前方の道路形状についても把握することが難しかった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、移動体が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間に位置する場合に、該遮蔽空間の空間形状を表示装置に表示された画像上でユーザに正確に把握させることが可能となり、ユーザに移動体の正確な現在位置を特定させることができるとともに、移動体の進行方向前方の道路形状についても容易に把握させることを可能とした移動案内表示システム、移動案内表示方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る移動案内表示システム(1)は、移動体(63)が周囲を遮蔽部材(65、66、73)によって遮蔽された遮蔽空間(62)に位置する場合に、前記遮蔽空間の外部の周辺環境を示す周辺画像を、前記遮蔽部材を半透過状態として前記遮蔽空間内部からの視点で表示装置(15)に表示する画像表示手段(13)と、前記遮蔽空間の形状を特定する形状特定物(68、69、75、76)を、前記周辺画像内の前記遮蔽部材に重畳して表示する形状特定物表示手段(13)と、を有することを特徴とする。
尚、「移動体」としては、車両以外に、歩行者や二輪車も含む。
また、「周囲を遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間」とは、遮蔽空間の周囲全部が遮蔽部材によって遮蔽された状態でも良いし、一部のみ(例えば、上方のみ又は側方のみ)が遮蔽部材によって遮蔽された状態でも良い。
また、「画像表示手段」は、以下のように構成しても良い。例えば、「移動体が遮蔽部材によって囲まれた道路空間を移動する場合に、移動体の周辺環境を示す周辺画像を、遮蔽部材を半透過状態として道路空間内からの視点で表示装置に表示する画像表示手段」と構成しても良い。また、「画像表示手段は、道路の周囲に位置する障害物によって移動体の少なくとも視界の一部が遮られた状態にある場合に、移動体の周辺環境を示す周辺画像を、障害物を半透過状態として道路内からの視点で表示装置に表示する画像表示手段」と構成しても良い。
また、「システム」は、単一の装置により構成されても良いし、複数の装置による情報の送受信によって実現されても良い。
【0008】
また、請求項2に係る移動案内表示システム(1)は、請求項1に記載の移動案内表示システムにおいて、前記画像表示手段(13)は、前記移動体(63)がトンネル内の道路に位置する場合に、前記トンネルの外部の周辺環境を示す前記周辺画像を、前記遮蔽部材(65、66、73)である前記トンネルの壁を半透過状態として前記トンネル内の道路からの視点で前記表示装置(15)に表示し、前記形状特定物表示手段(13)は、前記トンネルの内壁の道路幅方向における断面形状を特定する前記形状特定物(68、69、75、76)を、前記周辺画像内の前記トンネルの壁に重畳して表示することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る移動案内表示システム(1)は、請求項1又は請求項2に記載の移動案内表示システムにおいて、前記形状特定物表示手段(13)は、前記形状特定物として照明器具(68)を表示することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る移動案内表示システム(1)は、請求項3に記載の移動案内表示システムにおいて、前記形状特定物表示手段(13)は、前記遮蔽部材の内側形状に沿う形状を有する前記照明器具(68)を表示することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る移動案内表示システム(1)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動案内表示システムにおいて、前記形状特定物表示手段(13)は、前記形状特定物(68、75)を前記移動体(63)の移動方向に沿って所定間隔で表示することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る移動案内表示システム(1)は、請求項5に記載の移動案内表示システムにおいて、前記移動体(63)の移動速度を取得する移動体速度取得手段(13)を有し、前記形状特定物表示手段(13)は、前記移動体の移動速度が所定速度以上の場合に、前記移動体の移動速度が所定速度未満の場合よりも前記形状特定物(68、75)の配置間隔を短く表示することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る移動案内表示システム(1)は、請求項6に記載の移動案内表示システムにおいて、前記移動体(63)の位置する道路に設定された指定最高速度を取得する指定最高速度取得手段(13)を有し、前記所定速度は、前記指定最高速度取得手段により取得された前記指定最高速度であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る移動案内表示システム(1)は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の移動案内表示システムにおいて、前記形状特定物表示手段(13)は、前記形状特定物として縁石(69、76)を表示することを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る移動案内表示システム(1)は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の移動案内表示システムにおいて、前記画像表示手段(13)は、前記遮蔽部材(65、66、73)を重複して表示する場合に、前記視点に対して遠方側に位置する前記遮蔽部材程、透過率を低く表示することを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に係る移動案内表示システム(1)は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の移動案内表示システムにおいて、施設に関する施設情報を取得する施設情報取得手段(13)と、前記施設情報取得手段により取得した前記施設情報に基づいて、前記周辺画像による表示対象領域内に位置する施設の外観形状を特定する施設外観画像(70、77)を、該施設の位置座標に対応する表示位置に対して表示する施設表示手段(13)と、を有し、前記施設表示手段は、特定の施設以外の施設を示す前記施設外観画像を非表示又は前記特定の施設を示す前記施設外観画像よりも透過率を高く表示することを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に係る移動案内表示方法(1)は、移動体(63)が周囲を遮蔽部材(65、66、73)によって遮蔽された遮蔽空間(62)に位置する場合に、前記遮蔽空間の外部の周辺環境を示す周辺画像を、前記遮蔽部材を半透過状態として前記遮蔽空間内部からの視点で表示装置(15)に表示する画像表示ステップと、前記遮蔽空間の形状を特定する形状特定物(68、69、75、76)を、前記周辺画像内の前記遮蔽部材に重畳して表示する形状特定物表示ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
更に、請求項12に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、移動体(63)が周囲を遮蔽部材(65、66、73)によって遮蔽された遮蔽空間(62)に位置する場合に、前記遮蔽空間の外部の周辺環境を示す周辺画像を、前記遮蔽部材を半透過状態として前記遮蔽空間内部からの視点で表示装置(15)に表示する画像表示機能と、前記遮蔽空間の形状を特定する形状特定物(68、69、75、76)を、前記周辺画像内の前記遮蔽部材に重畳して表示する形状特定物表示機能と、をプロセッサ(41)に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
前記構成を有する請求項1に記載の移動案内表示システムによれば、移動体が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間に位置する場合に、該遮蔽空間の空間形状を表示装置に表示された画像上でユーザに正確に把握させることが可能となる。その結果、ユーザに移動体の正確な現在位置を特定させることができるとともに、ユーザが遮蔽部材に遮られて視認することができない遮蔽空間の外部の周辺環境(道路形状や周辺の地物など)についても容易に把握させることが可能となる。
【0020】
また、請求項2に記載の移動案内表示システムによれば、移動体がトンネル内に位置する場合に、該トンネルの断面形状を含む空間形状を表示装置に表示された画像上でユーザに正確に把握させることが可能となる。その結果、ユーザに移動体の正確な現在位置を特定させることができるとともに、ユーザがトンネルの壁に遮られて視認することができないトンネルの外部の周辺環境(道路形状や周辺の地物など)についても容易に把握させることが可能となる。
【0021】
また、請求項3に記載の移動案内表示システムによれば、形状特定物として照明器具を表示するので、遮蔽空間の内、特に移動体の周囲の天井や側壁等の壁面の形状をユーザに容易に把握させることが可能となるとともに、照明器具は現実世界にも多く存在するため、ユーザに違和感を与えない周辺画像を表示することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の移動案内表示システムによれば、形状特定物として遮蔽部材の内側形状に沿う形状を有する照明器具を表示するので、遮蔽空間を形成する遮蔽部材の形状をユーザに容易に把握させることが可能となる。従って、遮蔽部材が複雑な形状を有する場合であっても、遮蔽空間の正確な形状を、違和感を与えることなくユーザに把握させることが可能となる。
【0023】
また、請求項5に記載の移動案内表示システムによれば、形状特定物を移動体の移動方向に沿って所定間隔で表示するので、遮蔽空間の空間形状が複雑な形状を有する場合であっても、形状特定物によって移動体の移動方向に沿った遮蔽空間の正確な形状をユーザに把握させることが可能となる。
【0024】
また、請求項6に記載の移動案内表示システムによれば、移動体の移動速度が所定速度以上の場合に、移動体の移動速度が所定速度未満の場合よりも形状特定物の配置間隔を短く表示するので、移動体が所定速度以上で走行した場合に、形状特定物が画面上から消失する単位時間当たりの数を上昇させることができる。従って、ユーザに移動体が高速で移動していることを強調して認識させることが可能となり、移動体が所定速度以上の速度で移動しないように抑制することが可能となる。
【0025】
また、請求項7に記載の移動案内表示システムによれば、移動体の移動速度が道路に設定された指定最高速度以上の場合に、移動体の移動速度が指定最高速度未満の場合よりも形状特定物の配置間隔を短く表示するので、特に移動体が道路に設定された指定最高速度以上の速度で移動しないように抑制することが可能となる。
【0026】
また、請求項8に記載の移動案内表示システムによれば、形状特定物として縁石を表示するので、遮蔽空間の内、特に移動体の移動する路面の形状をユーザに容易に把握させることが可能となるとともに、縁石は現実世界にも多く存在するため、ユーザに違和感を与えない周辺画像を表示することができる。
【0027】
また、請求項9に記載の移動案内表示システムによれば、遮蔽部材を重複して表示する場合に、視点に対して遠方側に位置する遮蔽部材程、透過率を低く表示するので、遮蔽空間が複雑な形状を有する場合であっても、遮蔽部材の位置関係を分かり易く表示することが可能となり、遮蔽空間の形状を特定し易く表示することが可能となる。
【0028】
また、請求項10に記載の移動案内表示システムによれば、表示対象領域内に位置する施設の外観形状を特定する施設外観画像を、該施設の位置座標に対応する表示位置に対して表示するので、遮蔽空間内部からの視点で表示された周辺画像であっても、遮蔽部材により遮蔽された移動体の周辺エリアにどのような施設が位置するのかをユーザに把握させることが可能となる。また、特定の施設以外の施設を示す施設外観画像を非表示又は特定の施設を示す施設外観画像よりも透過率を高く表示するので、多数の施設が存在する場合であってもユーザにとって重要な施設を視認し易く表示することが可能となり、ユーザに移動体の正確な位置を把握させ易くすることが可能となる。
【0029】
また、請求項11に記載の移動案内表示方法によれば、移動体が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間に位置する場合に、該遮蔽空間の空間形状を表示装置に表示された画像上でユーザに正確に把握させることが可能となる。その結果、ユーザに移動体の正確な現在位置を特定させることができるとともに、ユーザが遮蔽部材に遮られて視認することができない遮蔽空間の外部の周辺環境(道路形状や周辺の地物など)についても容易に把握させることが可能となる。
【0030】
更に、請求項12に記載のコンピュータプログラムによれば、移動体が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間に位置する場合に、該遮蔽空間の空間形状を表示装置に表示された画像上でユーザに正確に把握させることが可能となる。その結果、ユーザに移動体の正確な現在位置を特定させることができるとともに、ユーザが遮蔽部材に遮られて視認することができない遮蔽空間の外部の周辺環境(道路形状や周辺の地物など)についても容易に把握させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】液晶ディスプレイに表示される走行案内画面を示した図である。
【図3】液晶ディスプレイに表示される3D走行画面を示した図である。
【図4】液晶ディスプレイに表示される3D走行画面を示した図である。
【図5】遮蔽空間内に位置する車両について示した図である。
【図6】3D走行画面に表示される形状特定物を拡大して示した図である。
【図7】本実施形態に係る画像表示制御処理プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る移動案内表示システムをナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0033】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して車両周辺の地図画像や後述の3D走行画面等を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、プローブセンタやVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。
【0034】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0035】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部12をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。
【0036】
ここで、地図情報DB31は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ32、ノード点に関するノードデータ、施設に関する施設データ33、地図を表示するための地図表示データ、3D走行画面を描画する為に用いる3D描画データ34、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。ここで、3D走行画面とは、後述するように車両が遮蔽部材によって遮蔽された走行空間(例えば、トンネル内、高架下の道路等)を走行する場合に液晶ディスプレイ15に表示される画面であり、車両の周辺環境を示す周辺画像を、遮蔽部材を半透過状態として走行空間内部からの視点で3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)画像により表示した画面である。尚、3D走行画面の詳細については後述する。
【0037】
ここで、リンクデータ32としては、例えば、該リンクを識別するリンクID、該リンクの端部に位置するノードを特定する端部ノード情報、該リンクを構成する道路の道路種別、リンクを構成する道路に設定された指定最高速度等が記憶される。また、リンクデータ32には、各リンクが周囲を遮蔽部材によって遮蔽された走行空間(以下、遮蔽空間という)を構成するリンクであるか否かを特定する情報についても記憶される。ここで、遮蔽空間が遮蔽部材によって遮蔽される範囲は、走行空間の周囲全部であっても良いし、一部のみ(例えば、上方のみ又は側方のみ)であっても良い。尚、遮蔽部材としては、例えば防音壁、高架道路、樹木、天井、側壁等が有る。また、周囲を遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間としては、例えばトンネル(山岳トンネル、都市トンネル、水路トンネルを含む)、防音壁が設置された高速道路、高架道路の下層に並設された一般道路等がある。
【0038】
また、施設データ33としては、ナビゲーション装置1において出発地、目的地、案内対象となる施設に関する情報が記憶される。また、施設データ33として記憶される情報としては、各施設の名称、位置座標、ジャンル等を含む。そして、後述するように液晶ディスプレイ15に表示された地図画像上において、施設データ33として記憶された施設の位置座標に該当する箇所には、該施設の地点情報としてPOIアイコンが表示される(図2参照)。尚、POIアイコンは、駐車場、ガソリンスタンド、レストラン、コンビニエンスストア等の施設の種類を示すマークである。一方、後述するように液晶ディスプレイ15に3D走行画面を表示する場合には、施設データ33として記憶された施設の位置座標に該当する箇所には、該施設の外観形状を特定する3Dの施設外観画像が表示される(図3、図4参照)。
【0039】
また、3D描画データ34としては、後述の3D走行画面(図3、図4参照)を描画する際に用いられる各種情報が記憶される。具体的には、モデリング、シーンレイアウト設定、レンダリング等の3DCGを作成する為の各処理の実行に必要な情報や、作成された3DCGモデルに貼り付ける為のテクスチャ画像等が記憶される。また、3D描画データ34は、描画対象となる遮蔽空間の形状や外観によって異なる情報が必要となる。従って、全国にある多数の遮蔽空間の内、特に3D走行画面による表示対象となる一部の遮蔽空間毎に、3D走行画面の表示に必要な上記情報が記憶される。尚、3D走行画面による表示対象となる遮蔽空間としては、例えば交通量の多い遮蔽空間や走行距離の長い遮蔽空間等が該当する。
【0040】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の画像表示制御処理プログラム(図7参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU13は、処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、案内経路設定手段は、出発地(例えば車両の現在位置)から目的地へと至る案内経路を設定する。移動体位置取得手段は、車両(移動体)の位置を取得する。画像表示手段は、車両が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間を走行する場合に、遮蔽空間の外部の周辺環境を示す周辺画像を、遮蔽部材を半透過状態として遮蔽空間内部からの視点で表示装置に表示する。また、形状特定物表示手段は、遮蔽空間の形状を特定する形状特定物(例えば、照明器具や縁石)を、周辺画像内の遮蔽部材に重畳して表示する。移動体速度取得手段は、車両の走行速度を取得し、指定最高速度取得手段は、車両の位置する道路に設定された指定最高速度を取得する。施設情報取得手段は、施設に関する施設情報を取得し、施設表示手段は、取得した施設情報に基づいて、周辺画像による表示対象領域内に位置する施設の外観形状を特定する施設外観画像を、該施設の位置座標に対応する表示位置に対して表示する。
【0041】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。また、本実施形態では、特にナビゲーション装置1に設定されたモードを“通常モード”と“3D走行モード”の間で切り替える際にも用いられる。尚、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、車両が3D走行画面の表示対象の遮蔽空間を走行している場合であって、且つ“3D走行モード”に設定されている場合のみ、後述のように液晶ディスプレイ15に3D走行画面を表示するように構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0042】
また、液晶ディスプレイ15には、道路網を含む地図画像、3D走行画面、POIアイコン、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。ここで、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、車両が3D走行画面の表示対象の遮蔽空間以外を走行する場合や、3D走行画面の表示対象の遮蔽空間を走行する場合であっても“通常モード”に設定されている場合には、現在位置周辺の地図画像を示す通常の走行案内画面が液晶ディスプレイ15に表示される。一方で、車両が3D走行画面の表示対象の遮蔽空間を走行する場合には、車両の周辺環境を示す周辺画像を、遮蔽部材を半透過状態として遮蔽空間内部からの視点で3DCG画像により表示した3D走行画面が液晶ディスプレイ15に表示される。尚、走行案内画面及び3D走行画面の詳細については後述する。
【0043】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。また、施設検索を行った場合に検索された施設に関する情報を出力する際にも用いられる。
【0044】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB31の更新等が行われる。尚、DVDドライブ17の代わりにHDDやメモリーカードリーダを備える構成としても良い。
【0045】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0046】
次に、図2〜図4を用いて液晶ディスプレイ15に表示される走行案内画面及び3D走行画面についてそれぞれ説明する。図2は車両の走行中において液晶ディスプレイ15に表示される通常の走行案内画面の一例を示した図である。図3及び図4は車両の走行中において液晶ディスプレイ15に表示される3D走行画面の一例を示した図である。
【0047】
図2に示すように、液晶ディスプレイ15に表示される走行案内画面50には、車両の現在位置周辺の地図画像51と、地図上にマッチングされた車両の現在位置を示す自車位置マーク52と、地図の表示エリアの中央位置を特定する中央カーソル53と、ナビゲーション装置1に設定されている案内経路(案内経路が設定されている場合にのみ表示される)54と、施設(駐車場、ガソリンスタンド、レストラン、コンビニエンスストア等)の位置やジャンルを示すPOIアイコン55とが表示される。また、走行案内画面50が表示されている場合に、車両の現在位置が変位すると、それに伴って地図画像51の表示対象領域が変化し、走行案内画面50に表示された地図画像51がスクロール表示する。そして、ユーザは走行案内画面50を参照することによって、車両の現在位置や現在の車両周辺の施設情報や道路形状(案内経路が設定されている場合には案内経路を含む)等を把握することが可能となる。
【0048】
また、図3及び図4に示すように、液晶ディスプレイ15に表示される3D走行画面60、61は、車両が現在走行する遮蔽空間を遮蔽空間内部からの視点で3DCG画像により表示する。尚、3D走行画面60、61の視点は車両の運転者の位置又は車両の中心とし、視線方向は車両の進行方向前方とすることが望ましい。例えば、図5に示すように遮蔽空間62内に車両63が位置する場合には、地点Pを視点とし、X方向を視線方向とした3D走行画面を表示することが望ましい。そして、車両の現在位置や方位が変更すると、それに伴って液晶ディスプレイ15に表示される3D走行画面60、61も変化する。具体的には、所定間隔(例えば0.2sec)毎に車両の現在位置と方位を検出し、検出された車両の現在位置と方位に基づいて3D走行画面60、61のフレームの描画をする。
【0049】
ここで、図3は車両が遮蔽空間として建造物の地下を通過する都市トンネルを走行する場合に表示される3D走行画面60を示す。図3に示す3D走行画面60では、遮蔽空間は都市トンネルの壁(天井65と側壁66と路面67)によって囲まれた空間となる。そして、遮蔽空間を遮蔽する遮蔽部材である天井65及び側壁66については、半透過状態で表示される(但し、後述するライト68や縁石69は除く)。また、遮蔽部材である天井65及び側壁66を重複して表示する場合には、視点に対して遠方側に位置する遮蔽部材程、透過率を低く表示する。具体的には、図3に示すように、3D走行画面60において遮蔽部材である側壁66が3重に重複して表示される場合には、視点に対して最も手前側に位置する側壁66が最も透過率が高く表示され、視点に対して最も遠方側に位置する側壁66が最も透過率が低く表示される。それによって、遮蔽空間が複雑な形状を有する場合であっても、遮蔽空間の形状をユーザに特定し易く表示することが可能となる。
【0050】
また、図3に示す3D走行画面60では、遮蔽空間である都市トンネルの形状の特定を補助する目的で形状特定物をトンネルの壁に表示する。具体的に、図3に示す例では、形状特定物としてライト68と縁石69が天井65等に重畳して表示される。ここで、図6は、図3に示す3D走行画面60の内、照明器具(ライト68)及び縁石69を拡大して示した図である。図3及び図6に示すように、ライト68は、天井65と側壁66との境界において、天井65と側壁66に亘って表示される。更に、ライト68は、天井65と側壁66の内側形状に沿うL字型形状を有する。また、ライト68は、道路の長さ方向(即ち車両の走行方向)に沿って所定間隔で表示される。一方、図3及び図6に示すように、縁石69は、側壁66と路面67との境界に沿って該境界上に表示される。そして、表示された各形状特定物は、都市トンネルの内壁の道路幅方向における断面形状(図3に示す例では長方形状)を特定する。
それにより、ユーザは3D走行画面60に表示されたライト68を視認することによって、天井65と側壁66との境界を明確に認識することが可能となる。一方、ユーザは表示された縁石69を視認することによって、側壁66と路面67との境界(即ち、路面67の形状)を明確に認識することが可能となる。その結果、都市トンネルが複雑な形状を有する場合であっても、ライト68や縁石69によって都市トンネルの断面形状を含む空間形状を容易に特定することができる。また、車両の進行方向前方の道路形状等についても容易に特定することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、道路の長さ方向(即ち車両の走行方向)に沿って所定間隔で表示されるライト68については、車両の走行速度が所定速度(例えば、車両の走行する道路に設定された指定最高速度)以上の場合に、車両の走行速度が所定速度未満の場合よりも、配置間隔を短く表示する(例えば、配置間隔を1/2とする)ように構成する。このような構成とすることにより、車両が所定速度以上で走行すると、ライト68が画面上から消失する単位時間当たりの数が上昇する。従って、ユーザに車両が高速で走行していることを強調して認識させることが可能となり、車両が所定速度以上の速度で走行しないように抑制することが可能となる。
【0052】
また、図3に示す3D走行画面60には、遮蔽領域の外部であって、表示対象領域内に位置する施設について、施設の外観形状を特定する3DCGの施設外観画像70が表示される。そして、ユーザは半透過状態となった天井65や側壁66を介して、地上にある施設外観画像70を視認することが可能である。尚、施設外観画像70は、地図情報DB31に記憶された施設データ33に基づいて、施設の位置座標に対応する表示位置に表示される。従って、ユーザは3D走行画面60を視認することによって、遮蔽部材により遮蔽された車両の周辺エリアにどのような施設が位置するのかを把握することが可能となる。また、施設外観画像70は、全ての施設について表示するのではなく、特定の施設以外の施設を示す施設外観画像については、非表示又は特定の施設を示す施設外観画像よりも透過率を高く表示することが望ましい。ここで、特定の施設としては、例えば知名度の高い施設(名所、駅、空港等)、走行の際に目印になる施設(特徴的な形状を有する建造物(タワーや特定の高層ビル等))、ユーザのよく利用する施設等とすることが望ましい。
【0053】
一方、図4は車両が遮蔽空間として海や川の地下を通過する水路トンネルを走行する場合に表示される3D走行画面61を示す。図4に示す3D走行画面61では、遮蔽空間は水路トンネルの壁(天井及び側壁が一体となった断面U字状の湾曲壁73と路面74)によって囲まれた空間となる。そして、遮蔽空間を遮蔽する遮蔽部材である湾曲壁73については、半透過状態で表示される(但し、後述する区画線75や縁石76は除く)。また、遮蔽部材である湾曲壁73を重複して表示する場合には、図3に示す3D走行画面60と同様に、視点に対して遠方側に位置する遮蔽部材程、透過率を低く表示する。
【0054】
また、図4に示す3D走行画面61では、遮蔽空間である水路トンネルの形状を特定する為の形状特定物として、区画線75と縁石76がトンネルの壁に重畳して表示される。ここで、図4に示すように、区画線75は、湾曲壁73の内側形状に沿うU字型形状を有し、道路の長さ方向(即ち車両の走行方向)に対して垂直方向に湾曲壁73に対して表示される。また、区画線75は、道路の長さ方向(即ち車両の走行方向)に沿って所定間隔で表示される。一方、図4に示すように、縁石76は、湾曲壁73と路面74との境界に沿って該境界上に表示される。そして、表示された各形状特定物は、水路トンネルの内壁の道路幅方向における断面形状(図4に示す例では半円形状)を特定する。
それにより、ユーザは表示された区画線75を視認することによって、湾曲壁73の形状を明確に認識することが可能となる。一方、ユーザは表示された縁石76を視認することによって、湾曲壁73と路面74との境界(即ち、路面74の形状)を明確に認識することが可能となる。その結果、都市トンネルが複雑な形状を有する場合であっても、区画線75や縁石76によって水路トンネルの断面形状を含む空間形状を容易に特定することができる。また、車両の進行方向前方の道路形状等についても容易に特定することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、区画線75についてはライト68と同様に、車両の走行速度が所定速度(例えば、車両の位置する道路に設定された指定最高速度)以上の場合に、車両の走行速度が所定速度未満の場合よりも、配置間隔を短く表示する(例えば、配置間隔を1/2とする)ように構成する。このような構成とすることにより、車両が所定速度以上で走行すると、区画線75が画面上から消失する単位時間当たりの数が上昇する。従って、ユーザに車両が高速で走行していることを強調して認識させることが可能となり、車両が所定速度以上の速度で走行しないように抑制することが可能となる。
【0056】
また、図4に示す3D走行画面61においても、表示対象領域内に位置する施設について、施設の外観形状を特定する3DCGの施設外観画像77が表示される。尚、施設外観画像77の詳細については、既に説明した図3に示す3D走行画面60に表示される施設外観画像70と同様であるので、説明は省略する。
【0057】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する画像表示制御処理プログラムについて図7に基づき説明する。図7は本実施形態に係る画像表示制御処理プログラムのフローチャートである。ここで、画像表示制御処理プログラムは、車両のACCがオンされた後に所定間隔(例えば0.2sec毎)で繰り返し実行され、液晶ディスプレイ15に対して走行案内画面50(図2)や3D走行画面60(図3、図4)を表示するプログラムである。尚、以下の図7にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0058】
先ず、画像表示制御処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41は、車両の現在位置及び方位を現在位置検出部11の検出結果に基づいて取得する。尚、車両の位置を地図画像上に特定するマップマッチング処理についても行う。
【0059】
次に、S2においてCPU41は、前記S1で取得した車両の現在位置と地図情報DB31とに基づいて、車両が周囲を遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間を走行し、且つ該遮蔽空間が3D走行画面(図3、図4)の表示対象となっているか否か、即ち、該遮蔽空間の3D走行画面を描画するのに必要な3D描画データ34が地図情報DB31に記憶されているか否か判定する。尚、遮蔽空間が遮蔽部材によって遮蔽される範囲は、走行空間の周囲全部であっても良いし、一部のみ(例えば、上方のみ又は側方のみ)であっても良い。尚、具体的に遮蔽空間としては、例えばトンネル(山岳トンネル、都市トンネル、水路トンネルを含む)、防音壁が設置された高速道路、高架道路の下層に並設された一般道路等がある。
【0060】
そして、車両が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間を走行し、且つ該遮蔽空間が3D走行画面の表示対象となっていると判定された場合(S2:YES)には、S4へと移行する。それに対して、車両が3D走行画面の表示対象となっている遮蔽空間を走行していないと判定された場合(S2:NO)には、S3へと移行する。
【0061】
S3においてCPU41は、液晶ディスプレイ15に対して通常の走行案内画面50(図2)を表示する。尚、走行案内画面50には、前記したように車両の現在位置周辺の地図画像51に加えて、地図画像51に重畳して車両の現在位置を示す自車位置マーク52やPOIアイコン55等の地点情報についても表示される。
【0062】
一方、S4においてCPU41は、ナビゲーション装置1において“3D走行モード”が設定されているか否か判定する。ここで、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、操作部14の操作に基づいて、ナビゲーション装置1に設定されたモードを“通常モード”と“3D走行モード”の間で切り替えることが可能である。
【0063】
そして、ナビゲーション装置1において“3D走行モード”が設定されていると判定された場合(S4:YES)には、S5へと移行する。それに対して、ナビゲーション装置1において“通常モード”が設定されていると判定された場合(S4:NO)にはS3へと移行し、液晶ディスプレイ15に対して通常の走行案内画面50(図2)を表示する。
【0064】
一方、S5においてCPU41は、車速センサ22の検出結果に基づいて、前回実行されたプログラムで3D走行画面の描画処理(S7)を行った時点からの車両の移動量を算出する。尚、前回実行されたプログラムで3D走行画面の描画処理を行わずに、通常の走行案内画面が表示(S3)されていた場合には、前記S5で算出される車両の移動量は0となる。
【0065】
次に、S6においてCPU41は、車両が現在走行する遮蔽空間の3D走行画面を表示するのに必要な3D描画データ34を、地図情報DB31から取得する。
【0066】
続いて、S7においてCPU41は、前記S5で取得した車両の移動量と前記S6で取得した3D描画データ34とに基づいて、3D走行画面のフレームの描画を行う。ここで、3D走行画面は既に図3及び図4を用いて示したように、車両が現在走行する遮蔽空間を遮蔽空間内部からの視点で3DCG画像により表示した画面である。尚、前記S7では、モデリング、シーンレイアウト設定、レンダリング等の3DCGを作成する為の各処理が実行される。更に、作成された3DCGモデルにテクスチャ画像を貼り付ける処理についても実行される。これらの3DCGに係る処理については公知であるので、詳細は省略する。
【0067】
また、前記S7においてCPU41は、前述したように車両の走行速度が所定速度(例えば、車両の走行する道路に設定された指定最高速度)以上の場合には、車両の走行速度が所定速度未満の場合よりも、特定の形状特定物(例えば、ライト68(図3参照)や区画線75(図4参照))の配置間隔が短くなるように描画する(例えば、配置間隔を1/2とする)。
【0068】
その後、S8においてCPU41は、前記S7で描画されたフレームを液晶ディスプレイ15に表示する。その結果、車両の現在位置や方位に対応した3D走行画面が液晶ディスプレイ15に表示されることとなる(図3、図4参照)。
【0069】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による移動案内表示方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、車両が遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間を走行し、且つ該遮蔽空間が3D走行画面の表示対象となっている場合には、車両が現在走行する遮蔽空間を遮蔽空間内部からの視点で3DCG画像により表示した3D走行画面60、61を液晶ディスプレイ15に表示する。また、3D走行画面60、61では、遮蔽空間の形状を特定する形状特定物(例えば、ライト68、縁石69、区画線75、縁石76)を、遮蔽部材に重畳して表示するので、車両が遮蔽空間に位置する場合に、該遮蔽空間の空間形状を液晶ディスプレイ15に表示された画像上でユーザに正確に把握させることが可能となる。その結果、ユーザに車両の正確な現在位置を特定させることができるとともに、ユーザが遮蔽部材に遮られて視認することができない遮蔽空間の外部の周辺環境(道路形状や周辺の地物など)についても容易に把握させることが可能となる。
また、車両が遮蔽空間として特にトンネル内に位置する場合に3D走行画面60、61を液晶ディスプレイ15に表示することとすれば、該トンネルの断面形状を含む空間形状を液晶ディスプレイ15に表示された画像上でユーザに正確に把握させることが可能となる。その結果、ユーザに車両の正確な現在位置を特定させることができるとともに、ユーザがトンネルの壁に遮られて視認することができないトンネルの外部の周辺環境(道路形状や周辺の地物など)についても容易に把握させることが可能となる。
また、形状特定物であるライト68や区画線75を車両の走行方向に沿って所定間隔で表示するので、遮蔽空間の空間形状が複雑な形状を有する場合であっても、形状特定物によって車両の走行方向に沿った遮蔽空間の正確な形状をユーザに把握させることが可能となる。
また、車両の速度が所定速度以上の場合に、車両の速度が所定速度未満の場合よりも形状特定物であるライト68や区画線75の配置間隔を短く表示するので、車両が所定速度以上で走行した場合に、形状特定物が画面上から消失する単位時間当たりの数を上昇させることができる。従って、ユーザに車両が高速で移動していることを強調して認識させることが可能となり、車両が所定速度以上の速度で移動しないように抑制することが可能となる。また、所定速度を道路に設定された指定最高速度とすれば、特に車両が道路に設定された指定最高速度以上の速度で移動しないように抑制することが可能となる。
また、形状特定物として縁石69、76を表示するので、遮蔽空間の内、特に車両の走行する路面の形状をユーザに容易に把握させることが可能となるとともに、縁石は現実世界にも多く存在するため、ユーザに違和感を与えない周辺画像を表示することができる。
また、形状特定物としてライト68を表示するので、遮蔽空間の内、特に車両の周囲の天井や側壁等の壁面の形状をユーザに容易に把握させることが可能となるとともに、照明器具は現実世界にも多く存在するため、ユーザに違和感を与えない周辺画像を表示することができる。
また、形状特定物の内、ライト68や区画線75は、遮蔽部材の内側形状に沿う形状で表示するので、遮蔽空間を形成する遮蔽部材の形状をユーザに容易に把握させることが可能となる。従って、遮蔽部材が複雑な形状を有する場合であっても、遮蔽空間の正確な形状を、違和感を与えることなくユーザに把握させることが可能となる。
また、遮蔽部材を重複して表示する場合に、視点に対して遠方側に位置する遮蔽部材程、透過率を低く表示するので、遮蔽空間が複雑な形状を有する場合であっても、遮蔽部材の位置関係を分かり易く表示することが可能となり、遮蔽空間の形状を特定し易く表示することが可能となる。
また、3D走行画面60、61では、表示対象領域内に位置する施設の外観形状を特定する施設外観画像70、77を、該施設の位置座標に対応する表示位置に対して表示するので、遮蔽空間内部からの視点で表示された周辺画像であっても、遮蔽部材により遮蔽された車両の周辺エリアにどのような施設が位置するのかをユーザに把握させることが可能となる。また、特定の施設以外の施設を示す施設外観画像70、77を非表示又は特定の施設を示す施設外観画像70、77よりも透過率を高く表示するので、多数の施設が存在する場合であってもユーザにとって重要な施設を視認し易く表示することが可能となり、ユーザに車両の正確な位置を把握させ易くすることが可能となる。
【0070】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、遮蔽部材としてトンネルを形成する天井、側壁を例に挙げて説明したが、他に防音壁、高架道路、樹木等であっても良い。また、周囲を遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間としては、トンネルを例に挙げて説明したが、防音壁が設置された高速道路、高架道路の下層に並設された一般道路等であっても良い。尚、遮蔽空間が遮蔽部材によって遮蔽される範囲は限定されず、例えば一方向(車両進行方向に対して右方向)のみが遮蔽されていても良い。
【0071】
また、本実施形態では、遮蔽空間の特定を補助する為に表示する形状特定物として、ライト68、区画線75、縁石69、76を例に挙げて説明したが、他の物であっても良い。例えば、窓、白線等の路面標示、街灯、橋脚、中央分離帯等であっても良い。また、本実施形態では、ライト68をL字型形状としているが、丸型形状や長方形形状にしても良い。
【0072】
また、本実施形態では、車両が道路に設定された指定最高速度以上の速度となった場合に、形状特定物の配置間隔を短くすることとしているが、指定最高速度の所定割合(例えば80%)以上の速度となった場合に、形状特定物の配置間隔を短くするように構成しても良い。
【0073】
また、本発明はナビゲーション装置以外に、ディスプレイ等の表示手段を有する装置に対して適用することが可能である。例えば、携帯電話機やPDA等の携帯端末、パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレイヤ等(以下、携帯端末等という)に適用することも可能である。また、サーバと携帯端末等から構成されるシステムに対しても適用することが可能となる。その場合には、上述した画像表示制御処理プログラム(図7の各ステップは、サーバと携帯端末等のいずれが実施する構成としても良い。また、本発明を携帯端末等に適用する場合には、車両以外の移動体、例えば、携帯端末等のユーザや2輪車等に対する走行案内を行う場合もある。
【符号の説明】
【0074】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
15 液晶ディスプレイ
34 3D描画データ
41 CPU
42 RAM
43 ROM
60、61 3D走行画面
62 遮蔽空間
63 車両
65 天井
66 側壁
67 路面
68 ライト
69 縁石
73 湾曲壁
74 路面
75 区画線
76 縁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が周囲を遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間に位置する場合に、前記遮蔽空間の外部の周辺環境を示す周辺画像を、前記遮蔽部材を半透過状態として前記遮蔽空間内部からの視点で表示装置に表示する画像表示手段と、
前記遮蔽空間の形状を特定する形状特定物を、前記周辺画像内の前記遮蔽部材に重畳して表示する形状特定物表示手段と、を有することを特徴とする移動案内表示システム。
【請求項2】
前記画像表示手段は、前記移動体がトンネル内の道路に位置する場合に、前記トンネルの外部の周辺環境を示す前記周辺画像を、前記遮蔽部材である前記トンネルの壁を半透過状態として前記トンネル内の道路からの視点で前記表示装置に表示し、
前記形状特定物表示手段は、前記トンネルの内壁の道路幅方向における断面形状を特定する前記形状特定物を、前記周辺画像内の前記トンネルの壁に重畳して表示することを特徴とする請求項1に記載の移動案内表示システム。
【請求項3】
前記形状特定物表示手段は、前記形状特定物として照明器具を表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動案内表示システム。
【請求項4】
前記形状特定物表示手段は、前記遮蔽部材の内側形状に沿う形状を有する前記照明器具を表示することを特徴とする請求項3に記載の移動案内表示システム。
【請求項5】
前記形状特定物表示手段は、前記形状特定物を前記移動体の移動方向に沿って所定間隔で表示することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動案内表示システム。
【請求項6】
前記移動体の移動速度を取得する移動体速度取得手段を有し、
前記形状特定物表示手段は、前記移動体の移動速度が所定速度以上の場合に、前記移動体の移動速度が所定速度未満の場合よりも前記形状特定物の配置間隔を短く表示することを特徴とする請求項5に記載の移動案内表示システム。
【請求項7】
前記移動体の位置する道路に設定された指定最高速度を取得する指定最高速度取得手段を有し、
前記所定速度は、前記指定最高速度取得手段により取得された前記指定最高速度であることを特徴とする請求項6に記載の移動案内表示システム。
【請求項8】
前記形状特定物表示手段は、前記形状特定物として縁石を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の移動案内表示システム。
【請求項9】
前記画像表示手段は、前記遮蔽部材を重複して表示する場合に、前記視点に対して遠方側に位置する前記遮蔽部材程、透過率を低く表示することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の移動案内表示システム。
【請求項10】
施設に関する施設情報を取得する施設情報取得手段と、
前記施設情報取得手段により取得した前記施設情報に基づいて、前記周辺画像による表示対象領域内に位置する施設の外観形状を特定する施設外観画像を、該施設の位置座標に対応する表示位置に対して表示する施設表示手段と、を有し、
前記施設表示手段は、特定の施設以外の施設を示す前記施設外観画像を非表示又は前記特定の施設を示す前記施設外観画像よりも透過率を高く表示することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の移動案内表示システム。
【請求項11】
移動体が周囲を遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間に位置する場合に、前記遮蔽空間の外部の周辺環境を示す周辺画像を、前記遮蔽部材を半透過状態として前記遮蔽空間内部からの視点で表示装置に表示する画像表示ステップと、
前記遮蔽空間の形状を特定する形状特定物を、前記周辺画像内の前記遮蔽部材に重畳して表示する形状特定物表示ステップと、を有することを特徴とする移動案内表示方法。
【請求項12】
コンピュータに搭載され、
移動体が周囲を遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽空間に位置する場合に、前記遮蔽空間の外部の周辺環境を示す周辺画像を、前記遮蔽部材を半透過状態として前記遮蔽空間内部からの視点で表示装置に表示する画像表示機能と、
前記遮蔽空間の形状を特定する形状特定物を、前記周辺画像内の前記遮蔽部材に重畳して表示する形状特定物表示機能と、
をプロセッサに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−215395(P2012−215395A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79082(P2011−79082)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】