説明

移動検知システム

【課題】 子機の移動を精度良く検知することができる移動検知システムを提供する。
【解決手段】 親機4と、親機4との間で電波信号を送受信する子機6と、を備える。親機4は、子機6との間で送受信する電波信号の強度レベルの変化に基づいて、子機6の移動を検知するように構成されている。また、親機4と子機6との間で送受信される電波信号を弱める又は遮断するための電波信号遮断手段34が設けられている。子機6が検知エリア16に位置するときには、親機4と子機6との間における電波信号の送受信が可能であり、子機6が検知エリア16に隣接する非検知エリア20に位置するときには、親機4と子機6との間で送受信される電波信号は、電波信号遮断手段34によって弱められ又は遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親機と子機との間で送受信される電波信号を利用して、子機を携帯する使用者等の移動を検知する移動検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、親機と子機との間で送受信される電波信号を利用して、子機を携帯する使用者等の移動を検知する移動検知システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。図6(a)は従来の移動検知システムの構成を示す図であり、図示の移動検知システム100は、親機102と、親機102との間で電波信号を送受信する子機104と、を備えている。親機102は、例えば家屋106内の所定箇所に設置される。子機104は、例えば家屋に住む使用者108によって携帯される。家屋106内には検知エリア110が規定され、この検知エリア110では、親機102と子機104との間で電波信号を送受信することが可能である。また、家屋106外(即ち、屋外)には非検知エリア112が規定され、この非検知エリア112では、親機102と子機104との間で送受信される電波信号の強度は零となり、電波信号の送受信はできない。
【0003】
子機104を携帯する使用者108が家屋106内から屋外に出て行く(即ち、検知エリア110から非検知エリア112に移動する)と、親機102と子機104との間で送受信される電波信号の強度が零まで低下するようになる。親機102は、この電波信号の強度の低下に基づいて、子機104を携帯する使用者108が屋外に出て行ったことを検知する。このように子機104の移動が検知されると、例えば親機102に設けられた報知ブザー114が鳴動され、これにより使用者108が屋外に出て行ったことが家人等に報知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−126920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来の移動検知システム100では、次のような問題がある。図6(b)に示すように、親機102と子機104との間で送受信される電波信号の強度の分布は、検知エリア110における親機102の設置箇所から非検知エリア112側に向けて漸次低下するようになる。検知エリア110と非検知エリア112との境界部(例えば、家屋106の玄関116)では、電波信号の強度が完全に零にならない場合があり、また検知エリア110における電波信号の強度と非検知エリア112における電波信号の強度との差が小さい。そのため、例えば子機104を携帯する使用者108が家屋106の玄関116を通過して屋外に出て行く際に、親機102において電波信号の強度の低下を確実に検知することができないおそれがあり、子機104を携帯した使用者108の移動を精度良く検知することができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、子機の移動を精度良く検知することができる移動検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の移動検知システムでは、親機と、前記親機との間で電波信号を送受信する子機と、を備え、前記子機の移動を検知する移動検知システムであって、
前記親機は、前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの変化に基づいて、前記子機の移動を判定する子機移動判定手段を含み、また前記親機に関連して、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号を弱める又は遮断するための電波信号遮断手段が設けられ、前記子機が第1エリアに位置するときには、前記親機と前記子機との間における電波信号の送受信が可能であり、前記子機が前記第1エリアに隣接する第2エリアに位置するときには、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号は、前記電波信号遮断手段によって弱められ又は遮断され、
前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの低下が第1所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第1エリアから前記第2エリアに移動したと判定し、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの上昇が第2所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第2エリアから前記第1エリアに移動したと判定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の移動検知システムでは、前記第1エリアは、前記親機と前記子機との間における電波信号の送受信が可能な検知エリアであり、前記第2エリアは、前記電波信号遮断手段によって前記親機と前記子機との間における電波信号の送受信が不可能な非検知エリアであり、
前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの低下が前記第1所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記検知エリアから前記非検知エリアに移動したと判定し、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの上昇が前記第2所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記非検知エリアから前記検知エリアに移動したと判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の移動検知システムでは、前記検知エリアは、前記非検知エリアに隣接する第1検知エリアと、前記第1検知エリアを挟んで前記非検知エリアと反対側に位置する第2検知エリアと、を含んでおり、
前記検知エリア内の前記子機の移動によって、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルが第3所定レベルまで上昇すると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第2検知エリアから前記第1検知エリアに移動したと判定し、前記検知エリア内の前記子機の移動によって、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルが前記第3所定レベルよりも低い第4所定レベルまで低下すると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第1検知エリアから前記第2検知エリアに移動したと判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の移動検知システムでは、前記親機は、前記子機との間で電波信号を送受信するための送受信アンテナを有し、前記電波信号遮断手段は、電磁波を吸収する電磁波吸収部材であり、前記電磁波吸収部材は、前記送受信アンテナの周囲の一部を包囲するようにして配設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の移動検知システムでは、前記親機は、前記送受信アンテナを収容するためのアンテナ収容部材を更に有し、前記電磁波吸収部材は、前記送受信アンテナの周囲の一部を包囲するようにして、前記アンテナ収容部材の内面又は外面に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の移動検知システムでは、前記子機は、前記親機からの電波信号の強度レベルを検知する電波強度検知手段と、検知された電波信号の強度レベルに関する電波強度データを前記親機に送信する通信手段と、を含み、前記親機は、前記子機からの電波強度データに基づいて電波信号の強度レベルの変化を演算するレベル変化演算手段を更に含み、
前記レベル変化演算手段により演算された強度レベル低下量が前記第1所定レベルよりも大きいと、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第1エリアから前記第2エリアに移動したと判定し、前記レベル変化演算手段により演算された強度レベル上昇量が前記第2所定レベルよりも大きいと、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第2エリアから前記第1エリアに移動したと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の移動検知システムによれば、親機と子機との間で送受信される電波信号を弱める(又は遮断する)ための電波信号遮断手段が設けられ、子機が第1エリアに位置するときには、親機と子機との間における電波信号の送受信が可能であり、子機が第1エリアに隣接する第2エリアに位置するときには、親機と子機との間で送受信される電波信号は、電波信号遮断手段によって弱められる(又は遮断される)。これにより、子機が第1エリアから第2エリアに(又は第2エリアから第1エリアに)移動すると、電波信号の強度レベルの低下が第1所定レベルよりも大きくなり(又は強度レベルの上昇が第2所定レベルよりも大きくなり)、親機によって電波信号の強度レベルの変化を確実に検知することができる。従って、子機が検知エリアと非検知エリアとの間を移動するのを精度良く検知することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の移動検知システムによれば、第1エリアは、親機と子機との間における電波信号の送受信が可能な検知エリアであり、第2エリアは、電波信号遮断手段によって親機と子機との間における電波信号の送受信が不可能な非検知エリアである。これにより、子機が検知エリアから非検知エリアに(又は非検知エリアから検知エリアに)移動すると、電波信号の強度レベルの低下が第1所定レベルよりも大きくなり(又は強度レベルの上昇が第2所定レベルよりも大きくなり)、親機によって電波信号の強度レベルの変化をより確実に検知することができる。従って、子機が検知エリアと非検知エリアとの間を移動するのをより精度良く検知することができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の移動検知システムによれば、検知エリア内の子機の移動によって、親機と子機との間で送受信される電波信号の強度レベルが第3所定レベルまで上昇すると、親機の子機移動判定手段は、子機が第2検知エリアから第1検知エリアに移動したと判定する。また、検知エリア内の子機の移動によって、親機と子機との間で送受信される電波信号の強度レベルが第3所定レベルよりも低い第4所定レベルまで低下すると、親機の子機移動判定手段は、子機が第1検知エリアから第2検知エリアに移動したと判定する。このように、子機が第1検知エリアと第2検知エリアとの間を移動する際に、電波信号の強度レベルの検知幅(即ち、第3所定レベルと第4所定レベルとの幅)を持たせることによって、例えば子機が第1検知エリアと第2検知エリアとの境界部に立ち止まっている場合などに、子機の移動検知にチャタリング現象が生じるのを防止することができる。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載の移動検知システムによれば、電波信号遮断手段は電磁波を吸収する電磁波吸収部材であり、電磁波吸収部材は、親機に設けられた送受信アンテナの周囲の一部を包囲するようにして配設されているので、比較的簡単な構成で、親機と子機との間で送受信される電波信号に指向性を持たせることができる。
【0017】
また、本発明の請求項5に記載の移動検知システムによれば、電磁波吸収部材は、送受信アンテナの周囲の一部を包囲するようにして、親機のアンテナ収容部材の内面又は外面に取り付けられているので、電磁波吸収部材を所要の通りに容易にセッティングすることができる。
【0018】
また、本発明の請求項6に記載の移動検知システムによれば、子機においては、親機からの電波信号の強度レベルを検知し、検知された電波信号の強度レベルに関する電波強度データを親機に送信する。親機においては、子機からの電波強度データに基づいて電波信号の強度レベルの変化を演算し、演算された電波信号の強度レベルの変化に基づいて子機の移動を判定する。このように、親機と子機との間で送受信される電波信号を利用して、子機の移動検知を容易に且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による移動検知システムの構成を示す平面図である。
【図2】(a)は、図1中のA−A線による移動検知システムの断面図であり、(b)は、各検知エリア及び各非検知エリアにおける電波強度の分布を示す図である。
【図3】親機の内部構造を示す透過斜視図である。
【図4】移動検知システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】子機の移動検知の流れを示すフローチャートである。
【図6】(a)は、従来の移動検知システムの構成を示す図であり、(b)は、検知エリア及び非検知エリアにおける電波強度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う移動検知システムの一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による移動検知システムの構成を示す平面図であり、図2(a)は、図1中のA−A線による移動検知システムの断面図であり、図2(b)は、各検知エリア及び各非検知エリアにおける電波強度の分布を示す図であり、図3は、親機の内部構造を示す透過斜視図であり、図4は、移動検知システムの機能的構成を示すブロック図であり、図5は、子機の移動検知の流れを示すフローチャートである。
【0021】
図1及び図2(a)を参照して、図示の移動検知システム2は、親機4と、親機4との間で電波信号を送受信する複数(例えば数台〜数十台程度)の子機6と、を備えている。本実施形態の移動検知システム2は、オフィスビル8に勤務する複数の勤務者10の勤怠状況を管理するのに用いられる。なお、本明細書では、「電波信号の送受信」は、電波信号の送信及び/又は受信を意味するものとする。
【0022】
親機4は、オフィスビル8のエントランス12の近傍に設置されている。また、複数の子機6の各々は、オフィスビル8に勤務する勤務者10によって携帯されている。オフィスビル8内のエントランスホール14には、検知エリアとしての第1検知エリア16及び第2検知エリア18(ともに第1エリアを構成する)が規定され、オフィスビル8のエントランス12の外側(即ち、屋外)には、非検知エリアとしての第1非検知エリア20(第2エリアを構成する)が規定されている。第1検知エリア16は第1非検知エリア20に隣接して位置され、第2検知エリア18は、第1検知エリア16を挟んで第1非検知エリア20と反対側に位置されている。第1検知エリア16と第2検知エリア18との間には、移動判定エリア22が規定されている。また、エントランスホール14において第2検知エリア18を挟んで第1検知エリア16と反対側には、第2非検知エリア24が規定されている。
【0023】
第1検知エリア16及び第2検知エリア18においては、親機4と子機6との間における電波信号の送受信が可能であり、その電波信号の強度レベル(以下、「電波強度」ともいう)の分布は、第1検知エリア16における親機4の配設箇所から第2検知エリア18側に向かって漸次低下するように構成されている(図2(b)参照)。例えば、第1検知エリア16における電波信号の強度レベルは「7〜10」であり、その内、親機4の配設箇所(即ち、第1検知エリア16と第1非検知エリア20との境界部)における電波信号の強度レベルは「10」である。移動判定エリア22における電波信号の強度レベルは「5〜7」であり、第2検知エリア24における電波信号の強度レベルは「0.5〜5」である。また、第1非検知エリア20及び第2非検知エリア24においては、後述する電磁波吸収部材34によって親機4と子機6との間における電波信号の送受信は不可能であり、その電波信号の強度レベルは「0〜0.5」である。
【0024】
親機4は、ケーシング26(アンテナ収容部材を構成する)と、ケーシング26に内蔵された送受信アンテナ28及び制御ユニット30と、を有している(図3参照)。ケーシング26は、オフィスビル8のエントランス12の近傍における壁面32に取り付けられている。送受信アンテナ28は、例えばロッドタイプのものから構成され、制御ユニット30の通信手段46(後述する)に電気的に接続されている。ケーシング26の内面には、電磁波(電波信号)を吸収するための電磁波吸収部材34(電波信号遮断手段を構成する)が取り付けられている。この電磁波吸収部材34はシート状に構成され、送受信アンテナ28の周囲の一部(即ち、エントランス12の外側に対応する部位)を包囲するようにして配設されている。子機6が第1非検知エリア20に位置するときには、親機4と子機6との間で送受信される電波信号は電磁波吸収部材34によって吸収され遮断される。なお、電磁波吸収部材34により送受信アンテナ28の周囲を包囲する範囲を変更することによって、親機4と子機6との間で送受信される電波信号の指向性を変更することができる。
【0025】
制御ユニット30は、記憶手段36、マッチング判定手段38、通信許可判定手段40、レベル変化演算手段42、子機移動判定手段44、通信手段46及び子機移動データ送信手段48を含んでいる(図4参照)。記憶手段36は、IDデータ記憶部50及び所定レベルデータ記憶部52を含んでいる。IDデータ記憶部50には、各子機6に割り当てられた複数のIDデータが記憶され、また所定レベルデータ記憶部52には、電波信号の強度レベルに関する第1〜第4所定レベルが記憶されている。第1所定レベル(第2所定レベル)は、後述するように子機6が第1検知エリア16から第1非検知エリア20に(第1非検知エリア20から第1検知エリア16に)移動したと判定する際の判定基準となる、電波信号の強度レベル低下量(又は強度レベル上昇量)である。本実施形態では、第1所定レベル及び第2所定レベルは同一の強度レベル(例えば強度レベル「7」)に設定されている。なお、第1所定レベル及び第2所定レベルを異なる強度レベル(例えば第1所定レベル「7」、第2所定レベル「8」)に設定することも可能である。第3所定レベルは、第1検知エリア16と移動判定エリア22との境界部における電波信号の強度レベル(例えば強度レベル「7」)である。第4所定レベルは、移動判定エリア22と第2検知エリア18との境界部における電波信号の強度レベル(例えば強度レベル「5」)である。
【0026】
マッチング判定手段38は、子機6からのIDデータ信号を受信すると、このIDデータ信号が記憶手段36に記憶されている複数のIDデータのいずれかとマッチングするかを判定する。通信許可判定手段は40、マッチング判定手段38によってIDデータ信号と記憶手段36に記憶されたIDデータとがマッチングしたと判定されると、その子機6に対して通信許可判定を行う。
【0027】
レベル変化演算手段42は、子機6より送信された電波強度データに基づき、電波信号の強度レベルの変化を演算する。子機移動判定手段44は、演算された電波信号の強度レベルの変化に基づいて、子機6の移動を判定する。子機移動判定手段44による子機6の移動検知は、次のようにして行われる。レベル変化演算手段42により演算された強度レベル低下量が第1所定レベルよりも大きいと(例えば、強度レベル低下量が「8」)、子機移動判定手段44は、子機6が第1検知エリア16から第1非検知エリア20に移動したと判定する。レベル変化演算手段42により演算された強度レベル上昇量が第1所定レベルよりも大きいと(例えば、強度レベル上昇量が「9」)、子機移動判定手段44は、子機6が第1非検知エリア20から第1検知エリア16に移動したと判定する。検知エリア16,18内の子機6の移動によって、電波信号の強度レベルが第3所定レベルまで上昇する(例えば、強度レベルが「4」から「7」まで上昇する)と、子機移動判定手段44は、子機6が第2検知エリア18から第1検知エリア16に移動したと判定する。検知エリア16,18内の子機6の移動によって、電波信号の強度レベルが第4所定レベルまで低下する(例えば、電波強度が「8」から「5」まで低下する)と、子機移動判定手段44は、子機6が第1検知エリア16から第2検知エリア18に移動したと判定する。
【0028】
通信手段46は、子機6に対して電波信号を送受信するためのものである。子機移動データ送信手段48は、子機移動判定手段44により検知された子機移動データをネットワーク54を介して管理用コンピュータ56(後述する)に送信する。
【0029】
また、親機4には、ネットワーク54(インターネット網)を介して管理用コンピュータ56が通信接続されている(図4参照)。管理用コンピュータ56は、子機移動データ受信手段58及び子機移動データ解析手段60を含んでいる。子機移動データ受信手段58は、親機4からの子機移動データをネットワーク54を介して受信する。子機移動データ解析手段60は、受信した子機移動データを解析する。また、管理用コンピュータ56にはモニタ62が設けられ、このモニタ62には、子機移動データ解析手段60により解析された子機6の移動状況が例えばマップ上に表示される。なお、この管理用コンピュータ56は、例えばオフィスビル8に勤務する勤務者10を管理する管理者(図示せず)によって操作される。
【0030】
子機6は、ケーシング64と、ケーシング64に内蔵された送受信アンテナ66及び制御ユニット68と、を有している。ケーシング64は、例えば取付金具(図示せず)を介して勤務者10の衣服や装身具等に着脱自在に取り付けられる。送受信アンテナ66は、例えばチップタイプのものから構成され、制御ユニット68の通信手段74(後述する)に電気的に接続されている。
【0031】
制御ユニット68は、記憶手段70、電波強度検知手段72及び通信手段74を含んでいる。記憶手段70には、子機6に割り当てられた固有のIDデータが記憶されている。電波強度検知手段72は、親機4より送信された電波信号(通信許可信号)の強度を検知する。通信手段74は、親機4に対して電波信号を送受信するためのものである。
【0032】
次に、図5をも参照して、上述した移動検知システム2による子機6の移動検知の流れについて説明する。本実施形態では、子機6を携帯する勤務者10がオフィスビル8のエントランスホール14を歩いて移動し、エントランス12を出入りする場合について説明する。子機6の通信手段74は、所定の周期で(例えば5秒毎に)、記憶手段70に記憶されたIDデータをIDデータ信号(電波信号)として親機4に送信する(ステップS1)。親機4のマッチング判定手段38は、子機6からのIDデータ信号を受信すると、このIDデータ信号が記憶手段36に記憶されている複数のIDデータのいずれかとマッチングするかを判定する(ステップS2)。通信許可判定手段40は、マッチング判定手段38によってIDデータ信号と記憶手段36に記憶されたIDデータとがマッチングしたと判定されると、ステップS3からステップS4に進み、その子機6に対して通信許可判定を行う。なお、ステップS2において、マッチング判定手段38によってIDデータ信号が記憶手段36に記憶されたIDデータとマッチングしないと判定されると、ステップS3からステップS5に進み、その子機6に対して通信不許可判定を行う。
【0033】
通信許可判定手段40により通信許可判定が行われると、親機4の通信手段46は、通信許可信号(電波信号)を子機6に送信する(ステップS6)。子機6の電波強度検知手段72は、親機4からの通信許可信号を受信すると、この通信許可信号の電波強度を検知する(ステップS7)。子機6の通信手段74は、検知した電波強度及びIDデータをそれぞれ電波強度データ信号及びIDデータ信号(ともに電波信号)として親機4に送信する(ステップS8)。親機4のレベル変化演算手段42は、受信した電波強度データに基づき、電波信号の強度レベルの変化を演算する(ステップS9)。親機4の子機移動判定手段44は、演算された強度レベルの変化に基づいて、子機6の移動を判定する(ステップS10)。
【0034】
親機4の子機移動データ送信手段48は、子機移動判定手段44により判定された子機移動データをネットワーク54を介して管理用コンピュータ56に送信する(ステップS11)。管理用コンピュータ56の子機移動データ解析手段60は、受信した子機移動データを所要の通りに解析する(ステップS12)。モニタ62には、解析された子機6の移動状況(即ち、どの子機6がどのように移動したか)が例えばマップ上に表示される(ステップS13)。管理者は、このモニタ62を見ることによって、どの勤務者10がエントランスホール14を移動し、エントランス12を出入りしたかについて確認することができる。
【0035】
上述したステップS10において、演算された強度レベル低下量が第1所定レベルよりも大きいと(例えば、強度レベル低下量「8」)、子機移動判定手段44は、子機6が第1検知エリア16から第1非検知エリア20に移動したと(即ち、子機6を携帯する勤務者10がエントランスホール14からエントランス12を通過して屋外に出て行ったと)判定する。また、演算された強度レベル上昇量が第2所定レベルよりも大きいと(例えば、強度レベル上昇量「9」)、子機移動判定手段44は、子機6が第1非検知エリア20から第1検知エリア16に移動したと(即ち、子機6を携帯する勤務者10が屋外からエントランス12を通過してエントランスホール14に入ってきたと)判定する。
【0036】
更に、上述したステップS10において、電波信号の強度レベルが第3所定レベルまで上昇する(例えば、強度レベルが「4」から「7」まで上昇する)と、子機移動判定手段44は、子機6が第2検知エリア18から第1検知エリア16に移動したと(即ち、エントランスホール14をエントランス12に向かって移動したと)判定する。電波信号の強度レベルが第4所定レベルまで低下する(例えば、強度レベルが「8」から「5」まで低下する)と、子機移動判定手段44は、子機6が第1検知エリア16から第2検知エリア18に移動したと(即ち、エントランスホール14をエントランス12とは反対側に向かって移動したと)判定する。
【0037】
例えば、電波信号の強度レベルが「4」から「7」(第3所定レベル)まで上昇し、その後、「7」から「9」まで上昇し、更に「9」から「0」まで第1所定レベルよりも大きい低下幅で低下した場合には、子機移動判定手段44は、子機6が第2検知エリア18から第1検知エリア16を通過して第1非検知エリア20に移動したと(即ち、エントランスホール14をエントランス12に向かって移動した後に、エントランス12を通過して屋外に出て行ったと)判定する。
【0038】
また、例えば電波信号の強度レベルが「0」から「10」まで第2所定レベルよりも大きい上昇幅で上昇し、その後、「10」から「8」まで低下し、更に「8」から「5」(第4所定レベル)まで低下した場合には、子機移動判定手段44は、子機6が第1非検知エリア20から第1検知エリア16を通過して第2検知エリア18に移動したと(即ち、屋外からエントランス12を通過してエントランスホール14に入り、エントランスホール14をエントランス12とは反対側に移動したと)判定する。
【0039】
更に、例えば電波強度が「4」から「7」(第3所定レベル)まで上昇し、その後、「9」まで上昇した後に「7」まで低下し、更に「7」から「5」(第4所定レベル)まで低下した場合には、子機移動判定手段44は、子機6が第2検知エリア18から第1検知エリア16に移動した後に、第2検知エリア18に引き返したと(即ち、エントランスホール14をエントランス12に向かって移動した後に、エントランス12とは反対側に引き返したと)判定する。
【0040】
以上、本発明に従う移動検知システムの一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0041】
上記実施形態では、オフィスビル8に勤務する複数の勤務者10の勤怠状況を管理するのに移動検知システム2を適用する場合について説明したが、この他にも種々の用途に適用することができる。例えば、一般家屋や介護施設等において徘徊者の外出を監視する場合や、屋外で農業従事者の勤怠状況を管理する場合等に適用することができる。あるいは、子機6を犬や猫等のペットの首輪等に取り付けて、ペットが一般家屋から出て行くのを監視する場合にも適用することができる。
【0042】
また、上記実施形態では、子機移動データを親機4からネットワーク54を介して管理用コンピュータ56に送信し、子機6の移動状況をモニタ62に表示させるように構成したが、このような構成に代えて、例えば次のような構成にすることができる。報知ブザー(又は報知ランプ)を例えば介護施設等の所定箇所に設置し、子機6が第1検知エリア16から第1非検知エリア20に移動したこと(例えば、徘徊者が介護施設等から外に出て行ったこと)が検知されると、親機4からの子機移動検知信号を受けて報知ブザーが鳴動(又は報知ランプが点滅)されるように構成する。
【0043】
また、上記実施形態では、親機4のケーシング26の内面にシート状の電磁波吸収部材34を取り付けるように構成したが、ケーシング26の外面に取り付けるように構成してもよく、あるいはケーシング26とこれが取り付けられる壁面32との間にシート状の電磁波吸収部材34を介在させるように構成してもよい。あるいは、電磁波吸収塗料(電波信号遮断手段を構成する)をケーシング26の内面(又は外面)に塗布するように構成してもよく、電磁波吸収剤(電波信号遮断手段を構成する)をケーシング26の材料に混入させるように構成してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、親機4のケーシング26をアンテナ収容部材として構成したが、このような構成に代えて、例えば親機4のケーシング26の内部に送受信アンテナ28を収容するためのアンテナ収容ボックスを配設し、このアンテナ収容ボックスをアンテナ収容部材として構成するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、子機6の電波強度検知手段72は、親機4からの通信許可信号を受信すると、この通信許可信号の電波強度を検知するように構成したが、このような構成に代えて、例えば次のように構成してもよい。即ち、親機4が電波強度検知手段を含むように構成し、子機6が親機4からの通信許可信号を受信すると、子機6の通信手段74は、電波強度を検知する際の基準となる基準レベル信号(電波信号)を親機4に送信し、親機4の電波強度検知手段は、この基準レベル信号の電波強度を検知するように構成する。
【0046】
また、上記実施形態では、第1エリアを検知エリア、第2エリアを非検知エリアとしたが、子機6が第2エリアに位置するときには、親機4と子機6との間で送受信される電波信号が電磁波吸収部材34によって弱められるように構成し、第2エリアにおいても親機4と子機6との間で電波信号が低い強度レベルで送受信されるように構成してもよい。このように構成した場合には、第2エリアにおける電波強度は、例えば「1〜2」となる。
【符号の説明】
【0047】
2,100 移動検知システム
4,102 親機
6,104 子機
16 第1検知エリア
18 第2検知エリア
20 第1非検知エリア
24 第2非検知エリア
26 ケーシング
28 送受信アンテナ
34 電磁波吸収部材
42 レベル変化演算手段
44 子機移動判定手段
72 電波強度検知手段
74 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と、前記親機との間で電波信号を送受信する子機と、を備え、前記子機の移動を検知する移動検知システムであって、
前記親機は、前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの変化に基づいて、前記子機の移動を判定する子機移動判定手段を含み、また前記親機に関連して、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号を弱める又は遮断するための電波信号遮断手段が設けられ、前記子機が第1エリアに位置するときには、前記親機と前記子機との間における電波信号の送受信が可能であり、前記子機が前記第1エリアに隣接する第2エリアに位置するときには、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号は、前記電波信号遮断手段によって弱められ又は遮断され、
前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの低下が第1所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第1エリアから前記第2エリアに移動したと判定し、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの上昇が第2所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第2エリアから前記第1エリアに移動したと判定することを特徴とする移動検知システム。
【請求項2】
前記第1エリアは、前記親機と前記子機との間における電波信号の送受信が可能な検知エリアであり、前記第2エリアは、前記電波信号遮断手段によって前記親機と前記子機との間における電波信号の送受信が不可能な非検知エリアであり、
前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの低下が前記第1所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記検知エリアから前記非検知エリアに移動したと判定し、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルの上昇が前記第2所定レベルよりも大きくなると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記非検知エリアから前記検知エリアに移動したと判定することを特徴とする請求項1に記載の移動検知システム。
【請求項3】
前記検知エリアは、前記非検知エリアに隣接する第1検知エリアと、前記第1検知エリアを挟んで前記非検知エリアと反対側に位置する第2検知エリアと、を含んでおり、
前記検知エリア内の前記子機の移動によって、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルが第3所定レベルまで上昇すると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第2検知エリアから前記第1検知エリアに移動したと判定し、前記検知エリア内の前記子機の移動によって、前記親機と前記子機との間で送受信される電波信号の強度レベルが前記第3所定レベルよりも低い第4所定レベルまで低下すると、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第1検知エリアから前記第2検知エリアに移動したと判定することを特徴とする請求項2に記載の移動検知システム。
【請求項4】
前記親機は、前記子機との間で電波信号を送受信するための送受信アンテナを有し、前記電波信号遮断手段は、電磁波を吸収する電磁波吸収部材であり、前記電磁波吸収部材は、前記送受信アンテナの周囲の一部を包囲するようにして配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移動検知システム。
【請求項5】
前記親機は、前記送受信アンテナを収容するためのアンテナ収容部材を更に有し、前記電磁波吸収部材は、前記送受信アンテナの周囲の一部を包囲するようにして、前記アンテナ収容部材の内面又は外面に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の移動検知システム。
【請求項6】
前記子機は、前記親機からの電波信号の強度レベルを検知する電波強度検知手段と、検知された電波信号の強度レベルに関する電波強度データを前記親機に送信する通信手段と、を含み、前記親機は、前記子機からの電波強度データに基づいて電波信号の強度レベルの変化を演算するレベル変化演算手段を更に含み、
前記レベル変化演算手段により演算された強度レベル低下量が前記第1所定レベルよりも大きいと、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第1エリアから前記第2エリアに移動したと判定し、前記レベル変化演算手段により演算された強度レベル上昇量が前記第2所定レベルよりも大きいと、前記親機の前記子機移動判定手段は、前記子機が前記第2エリアから前記第1エリアに移動したと判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の移動検知システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−7598(P2013−7598A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139159(P2011−139159)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(504017681)日本ロジックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】