説明

移動機構、及び、分注装置

【課題】移動時にはガイドレール間の平行度及び平面度の傾きを吸収しつつ移動し、停止時には安定した状態とする。
【解決手段】可動板78の移動により、調整穴79に挿通された係合ボルト82が可動板78と共に移動し、係合ボルト82が固定された第2スライド部材77も第1ガイドレール75に沿って移動する。このとき、回転ギア86は、係合ボルト82が調整穴79内で水平方向に移動可能な程度に緩く螺合されているので、調整穴79の範囲内で、係合ボルト82と可動板78とは相対移動される。可動板78の停止時には、回転ギア86により締結ナット84が矢印R1方向へ回転され、可動板78と第2スライド部材77とが締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行な2本のガイドレールに沿って被ガイド部材を移動させる移動機構、及び、この移動機構を有する分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、互いに平行な2本のガイドレールに沿って被ガイド部材を移動させる種々の移動機構が提案されている。2本のガイドレールを用いる場合、2本のガイドレール間の平行度が低かったり、ガイドレールの平面度が低かったりすると、被ガイド部材に不要な力が作用するため、スムーズな移動が行われないこともある。そこで、特許文献1に記載の技術では、両方のガイドレールと連結される軸の一方への取り付けを揺動可能にすることにより、ガイドレール間の平行度及び平面度の傾きを吸収している。
【0003】
しかしながら、揺動によるのでは、十分な傾きの吸収は難しい。また、停止時に被ガイド部材が不安定な状態となってしまう。
【特許文献1】特開平5−314622号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、移動時にはガイドレール間の平行度及び平面度の傾きを吸収しつつ移動し、停止時には安定した状態とすることの可能な移動機構、及び、この移動機構を備えた分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の移動機構は、互いに平行に配置された第1ガイドレール及び第2ガイドレールと、前記第1ガイドレールと係合され前記第1ガイドレールに沿って移動可能とされた第1スライド部材と、前記第2ガイドレールと係合され前記第2ガイドレールに沿って移動可能とされた第2スライド部材と、前記第1スライド部材及び第2スライド部材を連結するように配置され、前記第1スライド部材に固定されると共に、前記第2スライド部材へ前記第2スライド部材との間で相対移動可能とされた可動取付構造で取り付けられた可動部材と、前記可動部材と前記第2スライド部材の前記相対移動を阻止可能な規制部材と、を備えている。
【0006】
請求項1に記載の移動機構では、第1ガイドレールと第1スライド部材とが係合され、第2ガイドレールと第2スライド部材とが係合され、可動部材が第1スライド部材及び第2スライド部材と共に移動する。可動部材は、第1スライド部材とは固定されているが、第2スライド部材とは可動取付構造によって相対移動可能とされている。したがって、第1ガイドレールと第2ガイドレールの平行度や平面度に傾きが生じていても、上記相対移動によって前記傾きを吸収することができ、可動部材を1ガイドレール及び第2ガイドレールに沿ってスムーズに移動させることができる。
【0007】
また、可動部材と第2スライド部材の相対移動を阻止可能な阻止部材を備えているので、可動部材の停止時には阻止部材により可動部材を安定的に停止させることができる。
【0008】
本発明の請求項2の移動機構は、前記可動取付構造が、前記第2スライド部材に固定された係合ボルト、及び、前記可動部材に前記係合ボルトよりも大径で構成され前記係合ボルトを水平方向に移動可能に係合させる調整穴、を含んで構成されていること、を特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の可動取付構造では、係合ボルトが調整穴に係合している。調整穴は係合ボルトよりも大径であり、係合ボルトは調整穴内を水平方向に移動可能とされている。したがって、係合ボルトが調整穴内を水平方向に移動することにより、第2スライド部材と可動部材とを相対移動させることができる。
【0010】
本発明の請求項3の移動機構は、前記阻止部材が、前記係合ボルトと螺合され外周に受歯の形成された締結ナット、及び、前記受歯と噛み合って前記締結ナットを締結方向及び締結解除方向へ回転させる回転ギア、を含んで構成されていること、を特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の阻止部材では、締結ナットの受歯と回転ギアとを噛み合わせ、回転ギアを締結ナットが締まる方向に回転させることにより、可動部材と第2スライド部材とを固定することができる。したがって、可動部材の停止時に回転ギアを締結ナットが締まる方向に回転させることにより、可動部材を第2スライド部材へ固定して安定させることができる。また、移動時には回転ギアを締結ナットが緩む締結解除方向に回転させることにより、再度第2スライド部材との相対移動を可能とすることができる。
【0012】
本発明の請求項4の移動機構は、前記係合ボルトが前記調整穴内でガタ寄せされるように前記可動部材及び前記第2スライド部材を相対的に付勢する付勢部材をさらに備えたこと、を特徴とする。
【0013】
上記構成の付勢部材により、係合ボルトが調整穴内でガタ寄せされ、安定した移動を行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の分注装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の移動機構の可動部材に搭載された分注ヘッドを備えたものである。
【0015】
上記分注装置によれば、可動部材を安定した状態にして、分注ヘッドによる試料の供給等を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、移動時にはガイドレール間の平行度及び平面度の傾きを吸収しつつ移動し、停止時には安定した状態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態では、分注装置を備えたバイオセンサーを一例として説明する。バイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0019】
図1及び図2に示すように、バイオセンサー10は、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、冷蔵部46、及び、測定スティックストック部48を備えている。
【0020】
測定部30には測定スティック50がセットされる。測定スティック50上に固定されたタンパクTaへ試料を供給して信号変化を検出することにより、バイオセンサー10での測定が行われる。
【0021】
測定スティック50は、図3及び図4に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0022】
誘電体ブロック52は、長尺とされ、上面に平坦な測定面が形成されている。測定面には、金属膜57が形成され、金属膜57上にリンカー層57Aが形成されている。このリンカー層57A上にタンパクTaが固定される。
【0023】
流路部材54は、6個のベース部材54Aを備えている。ベース部材54Aには、底面側に略S字状の2本の流路溝が形成されている。流路溝の端部の各々は1の円筒部材54Bの中空部と連通されている。ベース部材54Aの底面が誘電体ブロック52の測定面と密着されて、流路溝と測定面との間に液体流路55が構成される。各々の液体流路55において、円筒部材54Bの上端面に液体流路55の出入口53が構成される。
【0024】
保持部材56は、断面コ字状の長尺とされ、流路部材54をコ字の間に挟んで一体成形されている。保持部材56には、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。保持部材56により流路部材54が誘電体ブロック52上に密着されて取り付けられる。
【0025】
図5に示すように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。図5では、測定スティック50の誘電体ブロック52と流路部材54以外の部材は省略されている。光学定盤32には、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される定盤レール部32L、定盤レール部32Lから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、定盤レール部32Lを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。定盤レール部32Lには、Y方向沿って測定スティック50がセットされる。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定スティック50へ向かって光ビームを出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。
【0026】
光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。また、受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。光源34Aは制御部60と接続され、CCD36Bは信号処理部38及び制御部60と接続されている。
【0027】
光源34Aから測定スティック50へ向かって光ビームが出射され、金属膜57と誘電体ブロック52との界面で反射された反射光をCCD36Bで受光し、光電変換された光検出信号が信号処理部38へ出力される。信号処理部38では、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定データが求められる。
【0028】
図1に示すように、分注ヘッド20は、移動機構70により矢印X方向に移動可能とされている。移動機構70は、ボールねじ72、モータ73、第1ガイドレール74、及び、第2ガイドレール75を備えている。ボールねじ72、第1ガイドレール74、及び、第2ガイドレール75は、X方向に配置されている。第1ガイドレール74及び第2ガイドレール75は、同一高さに、互いに平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ70の下側に所定間隔離れて配置されている。
【0029】
ボールねじ72には、取付部72Aが螺合されている。取付部72Aはボールねじ72と相対回転し、ボールねじ72の回転によりX方向に移動する構成とされている。
【0030】
図6にも示すように、第1ガイドレール74の上側には第1スライド部材76が係合され、第2ガイドレール75の上側には第2スライド部材77が係合されている。第1スライド部材76は第1ガイドレール74に沿って移動可能とされ、第2スライド部材77は第2ガイドレール75に沿って移動可能とされている。第1スライド部材76及び第2スライド部材77の上には、可動板78が配置されている。可動板78は、第1スライド部材76と第2スライド部材77とを連結するように配置されている。可動板78の上に分注ヘッド20が搭載されている。
【0031】
可動板78は、第1ガイドレール74側で、第1スライド部材76及び取付部72Aに固定されている。また、第2ガイドレール75側で、可動取付構造80により第2スライド部材76に取り付けられている。
【0032】
可動取付構造80は、図7(A)及び(B)に示すように、係合ボルト82、及び、可動板78に構成された調整穴79を含んで構成されている。係合ボルト82は、図7(B)に示すように、調整穴79に挿通され、下端が第2スライド部材77に固定され、調整穴79よりも上側の部分に締結ナット84が螺合されている。
【0033】
可動取付構造80の近傍には、可動板78と第2スライド部材77との相対移動を阻止するための、締結ナット84及び回転ギア86が配置されている。
【0034】
締結ナット84は、係合ボルト82に螺合されており、図7(A)に示す矢印R1方向への回転により第2スライド部材77と近づく方向へ進んで締結され、逆側矢印R2方向への回転により第2スライド部材77から離れる方向へ退避して締結が解除される。締結ナット84には、外周に受歯84Aが形成されている。受歯84Aは、回転ギア86と噛み合い回転ギア86から締結ナット84へ回転駆動力が伝達される。回転ギア86は、駆動モータ87と接続され、駆動モータ87によって回転駆動される。
【0035】
調整穴79は、係合ボルト82の外径よりも大径とされている。締結ナット84は、分注ヘッド20のX方向への移動時には、係合ボルト82が調整穴79内で水平方向に移動可能な程度に緩く螺合されている。
【0036】
分注ヘッド20は、図8に示すように、鉛直駆動機構24により鉛直方向(Z方向)に移動可能とされている。鉛直駆動機構24は、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、駆動軸24Bの回転により分注ヘッド20がZ方向に移動する。
【0037】
分注ヘッド20は、12本の分注管20Aを備えている。分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されている。測定時には、分注管20Aにより、測定スティック50へ試料やバッファー液が供給される。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、1の液体流路55の出入り口に1本ずつ対応させて使用される。分注管20Aの先端には、ピペットチップCPが取り付けられている。
【0038】
分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPは、後述するピペットチップストッカー42Pにストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0039】
図2に示すように、試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに各々異なるアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向に積層されて収容されている。試料セット部40Bには、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0040】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0041】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファ供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、バッファー液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファ供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファー液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファ液が供給される。
【0042】
バッファ供給部70Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に冷蔵部46が配置されている。補正用プレート45は、バッファー液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。冷蔵部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。冷蔵部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。
【0043】
測定スティックストック部48には、測定スティック収容プレート48Pがセットされている。測定スティック収容プレート48Pには、測定スティック50が複数本収納されている。測定スティック50は、測定スティック搬送機構49により測定部30に搬送されセットされる。
【0044】
次に、分注ヘッド20での分注動作について説明する。
【0045】
ピペットチップCPで試料を吸引して、測定スティック50へ供給する際には、まず、分注ヘッド20をX方向に移動させて試料セット部40Bの上部へ配置する。この移動の際には、モータ73を駆動させてボールねじ72を回転させる。ボールねじ72の回転により、取付部72AがX方向に沿って移動し、これにより取付部72Aに固定された可動板78及び可動板78に固定された第1スライド部材76も取付部72Aと共に第1ガイドレール74に沿って移動する。
【0046】
一方、第2ガイドレール75側は、可動板78の移動により、調整穴79に挿通された係合ボルト82が可動板78と共に移動し、係合ボルト82が固定された第2スライド部材77も第1ガイドレール75に沿って移動する。このとき、回転ギア86は、係合ボルト82が調整穴79内で水平方向に移動可能な程度に緩く螺合されているので、調整穴79の範囲内で、係合ボルト82と可動板78とは相対移動される。これにより、第1ガイドレール74と第2ガイドレール75との平行度が低かったり、部材の平面度が低かったりして、第1ガイドレール74と第2ガイドレール75との距離に誤差が生じていても、その誤差が吸収され、スムーズに可動板78を移動させることができる。
【0047】
分注ヘッド20が所定の位置に配置された後、モータ73を停止して分注ヘッド20を停止させる。そして、駆動モータ87を駆動させて、締結ナット84が矢印R1方向へ回転するように回転ギア86を回転させる。これにより、回転ギア86と噛み合った締結ナット84が矢印R1方向へ回転し、可動板78と第2スライド部材77とが締結される。これにより、可動板78の第2ガイドレール75側が第2スライド部材77に固定され、可動板78が安定して保持される。
【0048】
この状態で、鉛直駆動機構24により分注ノズル20Aを下降させて試料プレート40Pの試料にピペットチップCPの先端部を浸して試料を吸引する。試料の吸引後は、分注ノズル20Aを上昇させる。
【0049】
次に、駆動モータ87を逆方向に駆動させて、締結ナット84が矢印R2方向へ回転するように回転ギア86を回転させる。これにより、回転ギア86と噛み合った締結ナット84が矢印R2方向へ回転し、可動板78と第2スライド部材77との締結が解除される。これにより、係合ボルト82は、再び調整穴79内を移動可能とされ、この状態でボールねじ72を回転させて可動板78を測定部30の上部に配置する。
【0050】
分注ヘッド20が測定部30の上部に配置された後、前述と同様にして可動板78を第2スライド部材77に固定する。そして、分注ノズル20Aを下降させて測定スティック50の出入口53へピペットチップCPの先端部を挿入し、試料を供給する。
【0051】
本実施形態によれば、第1ガイドレール74と第2ガイドレール75との距離に誤差が生じていても、その誤差が調整穴79により吸収されるので、スムーズに可動板78を移動させることができる。また、分注ノズル20Aでの試料等の吸引、吐出の際には、可動板78は第2スライド部材77に固定されているので、可動板78が安定して保持され、ピペットチップCPを正確な位置に差し込むことができる。
【0052】
なお、本実施形態では、締結ナット84で締結されていない状態のときには、係合ボルト82が調整穴79内で自由に移動可能な構成としたが、可動板78と第2スライド部材77とを相対的に付勢して、係合ボルト82をガタ寄せしてもよい。この場合には、図9に示すように、一端が可動板78に係合され、他端が第2スライド部材77に係合されたコイルばね71を可動板78に構成した凹部78Aに配置することにより、コイルばね71によりにガタ寄せを行うことができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0054】
本実施形態では、回転ギア86及び駆動モータ87以外の構成については、第1実施形態と同一である。
【0055】
図10(A)及び図10(B)に示すように、本実施形態では、回転ギア86及び駆動モータ87に代えて、クラッチギア88及び電磁クラッチ89を備えている。可動板78は第2ガイドレール75側の角部に切欠きが構成され、第2スライド部材77の一部が上面に露出されている。クラッチギア88は、この露出部77Aに締結ナット84の受歯84Aと噛み合わされて配置されている。クラッチギア88は、電磁クラッチ89によりON/OFFされる。電磁クラッチ89がOFFされているときには、クラッチギア88は固定され、受歯84Aと噛み合って締結ナット84の回転を阻止する。電磁クラッチ89がONされているときには、クラッチギア88はフリーに回転可能な状態とされ、締結ナット84も回転可能とされている。
【0056】
係合ボルト82は締結ナット84を貫通して上部に突出され、この突出部分にコイルばね90が巻掛けられている。コイルばね90の一端は、第2スライド部材77の露出部77Aに立設された引掛軸77Bに引掛けられ、コイルばね90の他端は、締結ナット84の上部に立設された引掛軸84Bに引掛けられている。コイルばね90により、締結ナット84は締結方向(矢印R1方向)へ付勢され、締結ナット84を介して可動板78と第2スライド部材77とが相対的に付勢されている。これにより、係合ボルト82は、調整穴79内でガタ寄せされる。
【0057】
本実施形態では、可動板78がX方向に移動する際には、電磁クラッチ89はOFFとされている。したがって、係合ボルト82は締結ナット84を介してコイルばね90により調整穴79内でガタ寄せされつつ移動して、第1ガイドレール74と第2ガイドレール75との距離の誤差を吸収する。
【0058】
一方、可動板78を停止して分注動作を行う際には、電磁クラッチ89をONにする。これにより、クラッチギア88が固定され、締結ナット84も固定される。そして、係合ボルト82は、コイルばね90でガタ寄せされた位置に保持される。本実施形態によれば、係合ボルト82がコイルばね90によりガタ寄せされた位置に、可動板78を安定的に保持することができる。
【0059】
なお、上記第1、第2本実施形態では、分注機能を備えたバイオセンサーを一例として説明したが、本発明の移動機構は、ガイドレールに沿って移動の行われる他の装置に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態のバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図2】第1実施形態のバイオセンサーの内部の上面図である。
【図3】第1実施形態の測定スティックの斜視図である。
【図4】第1実施形態の測定スティックの分解斜視図である。
【図5】第1実施形態のバイオセンサーの測定部付近の概略図である。
【図6】第1実施形態のバイオセンサーの移動機構の一部を示す斜視図である。
【図7】第1実施形態のバイオセンサーの移動機構の可動取付構造付近を示す(A)は概略上面図であり(B)は概略側断面である。
【図8】第1実施形態のバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図9】第1実施形態のバイオセンサーの移動機構の可動取付構造付近の変形例を示す概略側断面である。
【図10】第2実施施形態のバイオセンサーの移動機構の可動取付構造付近を示す(A)は概略上面図であり(B)は概略側断面である。
【符号の説明】
【0061】
10 バイオセンサー
20 分注ヘッド
70 移動機構
72A 取付部
73 モータ
74 第1ガイドレール
75 第2ガイドレール
76 第1スライド部材
77 第2スライド部材
77B 引掛軸
77A 露出部
78A 凹部
78 可動板
79 調整穴
80 可動取付構造
82 係合ボルト
84B 引掛軸
84A 受歯
84 締結ナット
86 回転ギア
87 駆動モータ
88 クラッチギア
89 電磁クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された第1ガイドレール及び第2ガイドレールと、
前記第1ガイドレールと係合され前記第1ガイドレールに沿って移動可能とされた第1スライド部材と、
前記第2ガイドレールと係合され前記第2ガイドレールに沿って移動可能とされた第2スライド部材と、
前記第1スライド部材及び第2スライド部材を連結するように配置され、前記第1スライド部材に固定されると共に、前記第2スライド部材へ前記第2スライド部材との間で相対移動可能とされた可動取付構造で取り付けられた可動部材と、
前記可動部材と前記第2スライド部材の前記相対移動を阻止可能な阻止部材と、
を備えた移動機構。
【請求項2】
前記可動取付構造は、前記第2スライド部材に固定された係合ボルト、及び、前記可動部材に前記係合ボルトよりも大径で構成され前記係合ボルトを水平方向に移動可能に係合させる調整穴、を含んで構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の移動機構。
【請求項3】
前記阻止部材は、前記係合ボルトと螺合され外周に受歯の形成された締結ナット、及び、前記受歯と噛み合って前記締結ナットを締結方向及び締結解除方向へ回転させる回転ギア、を含んで構成されていること、を特徴とする請求項2に記載の移動機構。
【請求項4】
前記係合ボルトが前記調整穴内でガタ寄せされるように前記可動部材及び前記第2スライド部材を相対的に付勢する付勢部材をさらに備えたこと、を特徴とする請求項2または請求項3に記載の移動機構。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の移動機構の可動部材に搭載された分注ヘッドを備えた分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−82838(P2008−82838A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262265(P2006−262265)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】