説明

移動無線測位装置

【課題】移動端末の位置を高精度で測位できる移動無線測位装置を安価に実現する。
【解決手段】基準局201の周辺に間隔をおいて複数の中継局202a〜202dを配置し、前記基準局201と複数の中継局202a〜202dとの間を伝送ケーブル101a〜101dを介して接続し、前記基準局201と移動端末203との間で前記複数の中継局202a〜202dを介して双方向通信を行うことによって、前記移動端末203の位置を測位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基準局の周辺に間隔をおいて複数の中継局を配置し、前記基準局と複数の中継局との間を各々異なる複数の伝送ケーブルを介して接続し、前記基準局と移動端末との間で前記複数の中継局を介して双方向通信を行うことによって、前記移動端末の位置を高精度で測位できる移動無線測位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の発信手段を用いて測位を行なうシステムが提案されている。(例えば、特許文献1〜3参照)
【特許文献1】特開2005−083888号
【特許文献2】特開2006−023261号
【特許文献3】特開2007−010639号
【0003】
図6は、特許文献1に記載されている従来の「RTK測位システム及びその測位方法」の実施例である。
図6において、1は、RTK(リアルタイムキネマティック)測位を利用して利用者の測位を行うRTK測位システムである。
このRTK測位システム1は、4基のスードライト2と、固定基準局受信手段3と移動基準局受信手段4とからなる2基の基準局受信手段と、ローバー受信手段5と、利用者処理ユニット6と、データリンク7とにより構成されている。
ここで、スードライト2は、衛星の代わりの信号源として使用され、利用者の3次元測位を行う場合は、少なくとも4基必要であり、2次元測位を行う場合は、少なくとも3基が必要であるとされている。
【0004】
上記のように、従来の「RTK測位システム及びその測位方法」では3次元の測位を行なうために少なくとも4基のスードライト(擬似衛星局)が必要であり、更に、利用者処理ユニット6の他に、固定基準局受信手段3と移動基準局受信手段4とからなる2基の基準局受信手段と、ローバー受信機5と、データリンク7が必要であることから、システムが複雑であり、取り扱いが煩雑であり、高価となる問題点があった。
【0005】
一方、特許文献2に記載されている従来の「アクティブタグ装置」では、発信手段1の指向性アンテナの方向31に対向して受信手段2の指向性アンテナ21aと21bを向け、発信手段1が高周波信号を発信中に指向性アンテナ21aと21bを切替えた時に受信した高周波信号のタイミングあるいは振幅あるいは周波数あるいは位相あるいはこれらの組合わせの変化をリアルタイムで検知し、当該発信手段1が位置する方向を検知し、当該発信手段1と受信手段2の距離を検知するとされているが、当該発信手段1と受信手段2の距離を検知する手段あるいは方法が明確にされておらず、受信手段2の3次元の位置を測位する旨の訴求がなされていない問題点がある。
【0006】
また、特許文献3に記載されている従来の「アクティブタグ装置」では、固定される側の発信手段に複数のアンテナを接続し、当該アンテナから個別のシステム同期信号と同期しあるいは直交する複数の測定用信号を周期的に発信し、移動体が携帯する受信手段において当該システム同期信号を受信して相対距離と方向を検知し、相対距離が短いものの平均値から方向を検知することで高い精度で方向を検知するとされているが、相対距離と方向を高精度で検知するための当該システム同期信号あるいは個別の同期信号の役割が記述されたおらず、単一の同期信号を用いるとされているため十分な測位精度が得られないこと、また、受信手段の3次元の位置を測位する旨の訴求がなされていないことなどの問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、基準局の周辺に間隔をおいて複数の中継局を配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブルを介して接続し、前記複数の中継局を介して基準局と移動端末との間で双方向通信を行うことによって、前記移動端末の位置を高精度で測位できる移動無線測位装置を安価に実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる移動無線測位装置は、基準局の周辺に間隔をおいて複数の中継局を配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブルを介して接続し、各中継局を介して移動端末との間で双方向通信を行い、移動端末もしくは基準局の何れかで各中継局を経由した距離を高精度で測定し、三角法もしくは双曲線航法によって移動端末の位置を高精度で測位するためのものであり、例えば、基準局において移動端末の位置を測位する場合、基準局において、移動端末の位置を測位するために、少なくとも起点信号を含む測位要求信号を生成し、前記測位要求信号を含む高周波信号を前記複数の中継局に向け、各々の伝送ケーブルを経由してバースト信号として間欠的に伝送し、
【0009】
前記複数の中継局において、前記高周波信号を直接あるいは増幅器を用いて増幅し、各々の中継局からアンテナを介して無線信号として移動端末に向けて送信し、前記移動端末で、前記複数の中継局から受信した無線信号から前記複数の中継局に対応して少なくとも起点信号を再生し、前記再生した起点信号と同期発振手段とを高精度で瞬時に同期を確立して保持し、前記同期発振手段の出力信号と同期しあるいは直交したた距離測定信号を生成し、少なくとも前記生成した距離測定信号を含む無線信号を前記複数の中継局に向けて送信し、
【0010】
前記複数の中継局において前記無線信号を各アンテナによって受信して高周波信号とし、前記各伝送ケーブルを介して基準局に向けて伝送し、前記基準局において、前記高周波信号を各中継局に対応して選択し、各選択して高周波信号から少なくとも距離測定信号を再生し、前記再生した距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を前記生成した起点信号を基準として高精度で測定し、前記測定結果から、前記移動端末の位置を三角法もしくは双曲線航法によって高精度で測位を行うものとする。同様に、移動端末において自局の位置を測位する場合には逆の手順で行うものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移動無線測位装置では、前記生成した起点信号を基準として、再生した距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定することによって、前記移動端末の位置を三角法もしくは双曲線航法によって、安価に高精度で測位を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係わる移動無線測位装置100は、図1、図3、図4、および請求項1に本発明の第1の実施の形態を示すように、無線信号を用いて移動端末203の位置を高精度で測位するための移動無線測位装置において、少なくとも1つの基準局201の周辺に、複数の中継局202a〜202dを間隔を置いて配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブル101a〜101dで接続し、前記基準局201が、少なくとも、制御手段11と、送信手段12と、受信手段13と、高周波信号切替手段14とを有し、
【0013】
前記制御手段11が少なくとも間欠送信のタイミング信号を生成し、前記タイミング信号に同期して少なくとも起点信号を含む測位要求信号を生成し、前記送信手段12が前記生成された測位要求信号を含む高周波信号を送信し、前記高周波信号切替手段14が、前記生成された高周波信号を、各伝送ケーブルを介して、前記複数の中継局202a〜202dに向けて順次に切替えて伝送し、前記複数の中継局が、前記無測位要求信号を含む高周波信号を、各アンテナ(記載せず)を介して無線信号として前記移動端末203に向けて送信し、
【0014】

前記移動端末203が、少なくとも、アンテナ35と、高周波信号切替手段34と、受信手段33と、送信手段32と、制御手段31とを有し、前記高周波信号切替手段34が、アンテナ35を前記受信手段33に接続して待受け、前記受信手段が、前記アンテナ35で受信した高周波信号を直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、前記制御手段31が、前記高周波信号もしくは中間周波信号から少なくとも測位要求信号に含まれる起点信号を再生し、前記再生された起点信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出されたタイミングで前記再生された起点信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、あるいは遅延ロックループを構成して前記再生された起点信号と高精度で同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された起点信号に同期をしあるいは直交する距離測定信号を生成し、
【0015】

前記送信手段32が前記生成された距離測定信号を含む高周波信号を時分割同時送受信のタイミングで生成し、前記高周波信号切替手段34が、前記送信手段を時分割のタイミングでアンテナに接続し、前記距離測定信号を含む高周波信号を無線信号としてアンテナ35を介して前記複数の中継手段に向けて送信し、前記複数の中継局202a〜202dが、前記無線信号を各アンテナで受信して距離測定信号を含む高周波信号とし、直接もしくは低雑音増幅器を用いて増幅し、前記各伝送ケーブルを介して基準局に向けて伝送し、
【0016】

前記基準局201において、前記高周波信号切替手段14が前記複数の中継局202a〜202dの内から各伝送ケーブル101a〜101dを介して伝送される高周波信号を周期的に切替えながら選択し、前記受信手段13が前記選択された高周波信号を直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、前記制御手段11が、前記高周波信号もしくは中間周波信号から前記複数の中継局に対応して少なくとも距離測定信号を再生し、前記複数の中継局に対応して距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を前記生成した起点信号を基準として測定し、前記複数の中継局に対応した複数組の測定結果から、前記移動端末203の位置を三角法もしくは双曲線航法によって高精度で測位を行う。
【0017】
また、図1、図3、図4、および請求項2に本発明の第2の実施の形態を示すように、無線信号を用いて移動端末203の位置を高精度で測位するための移動無線測位装置において、少なくとも1つの基準局201の周辺に、複数の中継局202a〜202dを間隔を置いて配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブル101a〜101dで接続し、前記移動端末203が、少なくとも、アンテナ35と、制御手段31と、送信手段32と、受信手段33と、高周波信号切替手段34とを有し、
【0018】
前記制御手段31が、少なくとも間欠送信のタイミング信号を生成し、前記タイミング信号に同期して少なくとも起点信号を含む測位要求信号を生成し、前記送信手段32が、前記生成された測位要求信号を含む高周波信号を生成し、アンテナ35を介して無線信号として前記複数の中継局202a〜202dに向けてバースト信号として間欠的に送信し、
【0019】
前記複数の中継局202a〜202dが、前記無線信号を各アンテナ(記載せず)で受信して測位要求信号を含む高周波信号とし、直接もしくは低雑音増幅器を用いて増幅し、前記各伝送ケーブルを介して基準局201に向けて伝送し、前記基準局が、少なくとも、高周波信号切替手段14と、受信手段13と、送信手段12と、制御手段11とを有し、前記高周波信号切替手段14が前記複数の中継局の内から各伝送ケーブル101a〜101dを介して伝送される高周波信号を周期的に切替えながら選択し、前記受信手段13が前記選択された高周波信号を直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、
【0020】
前記制御手段11が、前記高周波信号もしくは中間周波信号から少なくとも測位要求信号に含まれる起点信号を再生し、前記再生された起点信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出されたタイミングで前記再生された起点信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、あるいは遅延ロックループを構成して前記再生された起点信号と高精度で同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された起点信号に同期をしあるいは直交する距離測定信号を生成し、前記送信手段12が前記生成された距離測定信号を含む高周波信号を時分割同時送受信のタイミングで生成し、前記高周波信号切替手段14が、前記距離測定信号を含む高周波信号を周期的に切替えながら、各伝送ケーブル101a〜101dを介して、前記複数の中継局202a〜202dに向けて順次に伝送し、
【0021】
前記複数の中継局が、前記各伝送ケーブルを介して伝送された前記高周波信号を、アンテナを介して無線信号として前記移動端末に向けて送信し、前記移動端末203において、前記受信手段33が、前記複数の中継局から送信される無線信号をアンテナ35で受信して高周波信号とし、直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、前記制御手段31が、前記中間周波信号から前記複数の中継局に対応して少なくとも距離測定信号を再生し、前記複数の中継局に対応して距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を前記生成した起点信号を基準として測定し、前記複数の中継局に対応した複数組の測定結果から、前記移動端末の位置を三角法もしくは双曲線航法によって高精度で測位を行う。
【0022】
また、図4、および請求項3に示すように、前記制御手段11、31が、少なくとも、信号再生手段44、50と、同期検出手段49と、同期発振手段46とを有し、前記信号再生手段が前記高周波信号もしくは中間周波信号から起点信号もしくは距離測定信号を再生し、前記同期検出手段が、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の、立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記同期発振手段が、前記検出されたタイミングで、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された起点信号の周波数もしくはチップレートの整数倍の周波数もしくはチップレートで同期信号を生成する。
【0023】
また、請求項4に示すように、前記距離測定信号が、搬送波信号、副搬送波信号、変調信号、スペクトル拡散符号、もしくはこれらの組合せである。
また、請求項5に示すように、前記基準局201から送信される高周波信号に少なくとも報知信号が含まれ、前記報知信号に、少なくとも、基準局の位置に関する情報、各中継局の位置に関する情報、各伝送ケーブルの長さに関する情報、あるいはこれらの組み合わせが含まれている。
【0024】
また、請求項6に示すように、前記基準局201もしくは移動端末203が前記移動端末203の位置を測位する際に、前記制御手段11、31が、前記再生された距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出されたタイミングで前記再生された距離測定信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された距離測定信号に同期をしあるいは直交する同期信号を生成し、前記生成する同期信号の周波数を、前記制御手段に要求される測位レンジに合わせて設定し、あるいは前記制御手段が周波数の異なる複数の同期信号を生成し、前記複数の同期信号の中から、前記制御手段に要求される測位レンジに合わせて、最適なものを選択することによって、高い測位精度を実現する。
【0025】
また、請求項7に示すように、前記制御手段11、31が、測位レンジを長い尺度のものから順次短い尺度のものに変化させ、あるいは切替えて設定することによって、最適の測位レンジを用いて前記移動端末203の位置を高精度で測位する。
また、請求項8に示すように、前記制御手段11、31の信号生成手段45、47もしくは信号再生手段44、50において、前記起点信号もしくは距離測定信号が、無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号である場合には、直接群遅延歪みおよび遅延誤差の少ない帯域通過フイルタを通し、あるいは無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号を変調した変調信号である場合には、遅延誤差の少ないアナログ復調器もしくは高い周波数のサンプリング信号を用いた遅延誤差の少ないデジタル復調器によって復調した後に、前記帯域通過フイルタを通して再生する。
【0026】
また、請求項9に示すように、前記制御手段11、31が、少なくとも、基準発振器41と、位相同期発振器48と、同期検出手段49と、同期発振手段46とを含み、前記同期発振手段46が、前記基準発振器41の発振周波数を位相同期発振器48によって高い周波数に変換して駆動される、セットあるいはリセット付きのカウンタあるいは数値制御発振器によって構成され、前記同期検出手段49が、少なくとも128MHz以上の周波数のサンプリング信号を用いて、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出したタイミングで前記同期発振手段46をセットしあるいはリセットすることによって、前記同期発振手段46が、前記起点信号もしくは距離測定信号と短時間で瞬時に同期を確立し、かつ前記起点信号もしくは距離測定信号が停止しあるいは消滅した後も、比較的に長時間同期を保持できる。
【0027】
また、請求項10に示すように、前記制御手段11、31の位相測定手段43が、前記再生した起点信号もしくは距離測定信号あるいは生成した同期信号の周波数の、4の整数倍のサンプリング周波数で、かつ4ビット以上のアナログデジタル変換器を用いてデジタル信号に変換し、Sinのルックアップテーブルとして0、1、0、−1、もしくは1、1、−1、−1、あるいはこれらの繰り返しであり、Cosのルックアップテーブルとして1、0、−1、0もしくは1、−1、−1、1、あるいはこれらの繰り返しであり、前記変換したデジタル信号とルックアップテーブルとの積和演算を行う。
【0028】
また、請求項11に示すように、前記受信手段13、33が、伝搬経路の品質を検知する品質検知手段を有し、前記品質検知手段が、前記受信手段において受信した無線信号もしくは高周波信号の電力あるいは信号対雑音比を測定した結果から回線品質を分析し、あるいは前記制御手段11、31で距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定した結果を分析し、あるいはこれらの両方の分析を行い、前記測位の結果を補正し、補完し、フイルタリングし、あるいはこれらの組み合わせを行う。
【0029】
また、請求項12に示すように、前記携帯端末203、複数の中継局202a〜202d、もしくはこれらの両方が、複数のアンテナを設けて周期的に切替え、前記複数のアンテナに対応して測定した距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定した結果の内、比較的に小さく測定しあるいは算出したものを選択し、平均し、荷重平均し、あるいはこれらの組み合わせを行うことによって、前記測位結果を補正し、補完し、フイルタリングし、あるいはこれらの組み合わせを行う。
また、請求項13に示すように、前記無線信号の周波数が、GPSに割当てられた周波数、その近傍の周波数、法令によって定められた周波数、もしくはこれらの組み合わせである。
【0030】
(実施の形態1)
図1、図3、および図4は、本発明の第1の実施の形態による移動無線測位装置の構成図である。図1、図3、図4において、201は基準局、202a〜202dは複数の中継局、21a〜21dは接続端子、101a〜101dは伝送ケーブル、203は携帯端末、102a〜102dは無線信号の伝搬経路、11、31は制御手段、12、32は送信手段、13、33は受信手段、14、34は高周波信号切替手段、35は移動端末203のアンテナ、41は基準発振器、42は位置測位手段、43は位相測定手段、44は距離測定信号再生手段、45は起点信号生成手段、46は同期発振器、47は距離測定信号生成手段、48は位相同期発振器、49は同期検出手段、50は起点信号再生手段、51、52は接続端子である。
【0031】
無線信号を用いた移動無線測位装置において、少なくとも1つの基準局201の周辺に、複数の中継局202a〜202dを間隔を置いて配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブル101a〜101dを介して接続し、前記複数の中継局202a〜202dを介して前記基準局201と双方向通信を行う移動端末203とから構成され、前記基準局201が、少なくとも、制御手段11と、送信手段12と、受信手段13と、高周波信号切替手段14と、接続端子21a〜21dとを有し、前記制御手段11の起点信号生成手段45が起点信号を含む測位要求信号を生成し、前記送信手段32が、前記起点信号を含む測位要求信号とは別に生成したシステム同期信号と識別信号とを更に含む高周波信号を、バースト信号としてかつ間欠的に送信し、前記高周波信号切替手段14が、前記接続端子21a〜21dと伝送ケーブル101a〜101dとを介し前記複数の中継局202a〜202dに向けて順次切替えて伝送し、
【0032】
前記複数の中継局202a〜202dが、前記基準局201から伝送される高周波信号を直接あるいは増幅器によって増幅し、アンテナ(記載せず)を介して無線信号として送信し、前記移動端末203が、少なくとも、アンテナ35と、高周波信号切替手段34と、受信手段33と、送信手段32と、制御手段31とを有し、更に、前記制御手段31が起点信号再生手段50と同期検出手段49と同期発振手段46と距離測定信号生成手段47とを有し、アンテナ35が受信した高周波信号を前記高周波信号切替手段34が前記受信手段33に接続し、前記受信手段33が直接あるいは中間周波信号に変換して増幅し、前記起点信号再生手段45が前記高周波信号に含まれる起点信号を再生し、
【0033】
前記同期検出手段49が前記再生した起点信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記同期発振手段46が前記検出されたタイミングで起点信号と瞬時に同期を確立して同期を保持し、あるいは前記起点信号再生手段45と、同期検出手段49と、同期発振手段46とが遅延ロックループを構成し、前記再生された起点信号と高精度で同期を確立して同期を保持し、前記距離測定信号生成手段47が前記同期発振手段46あるいは遅延ロックループの出力信号と同期しあるいは直交する距離測定信号を生成し、前記送信手段32が前記生成された距離測定信号とは別に生成した少なくともシステム同期信号と識別信号とを含む高周波信号を時分割同時送受信のタイミグで生成し、前記高周波信号切替手段34が前記生成された高周波信号をアンテナ35に接続して、無線信号として前記複数の中継局に向けて送信し、前記複数の中継手段が前記無線信号を各アンテナ(記載せず)で受信し、高周波信号として前記伝送ケーブル101a〜101dを介して前記基準局201に向けて伝送し、
【0034】
前記基準局201が、前記高周波信号を、高周波信号切替手段14によって、前記複数の中継局202a〜202dに対応して受信手段13に順次切替えて接続し、前記受信手段13によって直接あるいは中間周波信号に変換して増幅し、前記制御手段11の距離測定信号再生手段44によって距離測定信号を再生し、前記同期発振器46の出力信号を基準とし、前記複数の中継局202a〜202dに対応して、前記再生した距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を前記位相測定手段43によって測定し、前記測定された複数の中継局202a〜202dに対応した複数組の測定結果から、前記位置測位手段42よって、移動端末203の位置を、三角法もしくは双曲線航法によって高精度で測位することができる。
【0035】
なお、前記制御手段11もしくは31において、前記距離測定信号再生手段44が、前記中間周波信号から前記複数の中継局202a〜202dに対応して、距離測定信号を再生し、前記同期検出手段46が、前記再生された距離測定信号の、立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記同期発振手段46が、前記検出されたタイミングで、前記再生された距離測定信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された距離測定信号の周波数もしくはチップレートの整数倍の周波数もしくはチップレートで同期信号を生成し、
【0036】
あるいは前記距離測定信号再生手段50と、同期検出手段49と、同期発振手段46とが遅延ロックループを構成し、前記再生された距離測定信号と高精度で同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された距離測定信号の周波数もしくはチップレートの整数倍の周波数もしくはチップレートで同期信号を生成し、前記制御手段11もしくは31の位相測定手段43において、前記起点信号生成手段45によって生成された起点信号を基準として、前記距離測定信号と同期した同期信号の位相を測定することによって、前記距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を整数倍に拡大して測定することが可能となり、前記基準局201と複数の中継局202a〜202dとの間の距離が比較的に短い場合でも高精度の測位が実現できる。
【0037】
また、前記制御手段11もしくは31の位相同期発振器48は、基準発振器41から出力されるクロック信号に同期して周波数を逓倍し、同期発振手段46、同期検出手段49、信号再生手段44、50、もしくはこれらの組み合わせに逓倍されたクロック信号を供給し、同期検出手段49の同期検出精度と、同期発振手段46の同期確立精度とを向上させるために用いられる。
また、前記起点信号もしくは距離測定信号が、搬送波信号、副搬送波信号、変調信号、スペクトル拡散符号、もしくはこれらの組合せである。
また、前記基準局201から送信される高周波信号に少なくとも報知信号が含まれ、前記報知信号に、少なくとも、基準局の位置に関する情報、各中継局の位置に関する情報、各伝送ケーブルの長さに関する情報、あるいはこれらの組み合わせが含まれている。
【0038】
また、前記基準局201もしくは移動端末203が前記移動端末203の位置を測位する際に、前記同期発振手段46が生成する同期信号の周波数を、前記制御手段11もしくは31の位相測定手段43に要求される測位レンジに合わせて設定し、あるいは前記同期発振手段46が異なる周波数の複数の同期信号を生成し、前記複数の同期信号の中から、前記位相測定手段43に要求される測位レンジに合わせて最適なものを選択することによって、高い測位精度を実現できる。
また、前記位相測定手段43の測位レンジを長い尺度のものから順次短い尺度のものに変化させ、あるいは切替えて設定することによって、最適の測位レンジを用いて前記移動体203の位置を高精度で測位することができる。
【0039】
また、前記信号生成手段45、47、もしくは信号再生手段44、50において、前記起点信号もしくは距離測定信号が、無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号である場合には、直接群遅延歪みおよび遅延誤差の少ない帯域通過フイルタを通し、あるいは無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号を変調した変調信号である場合には、遅延誤差の少ないアナログ復調器、あるいは前記位相同期発振器48から供給される高い周波数のクロック信号を用いた遅延誤差の少ないデジタル復調器によって復調した後に前記帯域通過フイルタを通して再生する。
【0040】
また、前記同期発振手段46が、基準発振器41の発振周波数を位相同期発振器48によって高い周波数に変換して駆動される、セットあるいはリセット付きのカウンタ、あるいは数値制御発振器によって構成され、前記同期検出手段49が、少なくとも128MHz以上の周波数のサンプリング信号を用いて、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出したタイミングでセットあるいはリセット付きのカウンタあるいは数値制御発振器をセットしもしくはリセットすることによって、前記同期発振手段46が前記起点信号もしくは距離測定信号と瞬時に同期を確立し、かつ前記起点信号もしくは距離測定信号が停止しあるいは消滅した後も、比較的に長時間、同期を保持できる。
【0041】
また、前記位相測定手段43が、前記再生した距離測定信号あるいは生成した同期信号の周波数の、4の整数倍のサンプリング周波数で、かつ4ビット以上のアナログデジタル変換器を用いてデジタル信号に変換し、Sinのルックアップテーブルとして0、1、0、−1、もしくは1、1、−1、−1、あるいはこれらの繰り返しであり、Cosのルックアップテーブルとして1、0、−1、0もしくは1、−1、−1、1、あるいはこれらの繰り返しであり、前記変換したデジタル信号とルックアップテーブルとの積和演算を行うことで、安価な回路でしかも高速であり、リアルタイムの積和演算が可能となる。
【0042】
また、前記携帯端末203、複数の中継局202a〜202d、基準局201、もしくはこれらの組合せの受信手段が、無線信号の伝搬経路の品質を検知する品質検知手段を有し、前記品質検知手段が、前記受信手段において受信した無線信号の電力あるいは信号対雑音比を測定した結果から回線品質を分析し、前記位置特定の結果をフイルタリングし、補正し、あるいは補完する。
また、前記携帯端末、中継局、もしくはこれらの両方に複数のアンテナを設けて周期的に切替え、前記複数のアンテナに対応して測定した距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定した結果の内、比較的に小さく測定しあるいは算出したものを選択し、平均し、荷重平均し、あるいはこれらの組み合わせを行うことによって、前記測位結果を補正し、補完し、フイルタリングし、あるいはこれらの組み合わせを行うことで測位精度を改善することができる。
【0043】
また、前記移動端末が、複数の基準局に接続された複数組の中継局から発信される無線信号を受信する場合に、受信した無線信号の電力あるいは信号対雑音比を測定した結果から、特定の基準局を選定して位置の特定を行い、もしくは複数の基準局を用いた位置特定の結果を荷重平均することで、位置特定精度を改善することができる。
また、前記携帯端末203もしくは基準局201において、無線信号を間欠発信する間隔を、内部に設けた自励発振器を用いて制御することによって、複数の携帯端末あるいは複数の基準局から無線信号を非同期で発信し、あるいは前記携帯端末の移動速度に応じて間欠発信の間隔を制御することで、無線信号を効率的に活用できる。
また、複数組の前記基準局201と複数の中継局202a〜202dとが、アドホックネットワークを構成し、前記位置特定に必要な情報を交換することができる。また、ノードを設けて外部の通信回線にリンクすることも可能となる。
【0044】
図5は本発明の第1の実施の形態によるタイミングチャートであり、61は基準局201の起点信号生成手段45で生成された起点信号、61aは伝送ケーブル101aを経由して中継局202aから無線信号として送信され移動端末203において再生される起点信号、62aは移動端末203において起点信号61aと同期を確立し同期を保持した距離測定信号、63aは移動端末203から送信される距離測定信号、64aは移動端末203から中継局202aを介し伝送ケーブル101aを経由して基準局201において再生される距離測定信号、65aは基準局201において前記距離測定信号と同期した同期信号、
【0045】
61bは伝送ケーブル101bを経由して中継局202bから無線信号として送信され移動端末203において再生される起点信号、62bは移動端末203において起点信号61bと同期を確立し同期を保持した距離測定信号、63bは移動端末203から送信される距離測定信号、64bは移動端末203から中継局202bを介し伝送ケーブル101bを経由して基準局201において再生される距離測定信号、65bは基準局201において前記距離測定信号と同期した同期信号、67は時分割同時送受信の間隔、67aは第1のタイムスロット、67bは第2のタイムスロット、68aは中継局202aを経由した距離測定信号の伝搬時間もしくは伝搬位相、68bは中継局202bを経由した距離測定信号の伝搬時間もしくは伝搬位相である。
【0046】
なお、前記同期信号61d、62dは起点信号もしくは距離測定信号61c、62cの周波数もしくはチップレートの整数倍に設定できるので、前記同期信号の周波数もしくはチップレートを高くとると、前記位相差103は大きくなるので、測位レンジを短くしたのと等価となり、前記位相差103は拡大されるので、更に測位精度が高くなることが分かる。例えば、同期信号の周波数が1MHzの場合、基準局201と移動端末との間の距離が150mの時360°位相が変化するのに対して、同期信号の周波数が8MHzの場合、18.8m毎に360°位相が変化するので、位相差の測定精度が±0.5°の場合、前者では測位精度が±21cmであるのに対して、後者では±2.6cmとなるので誤差が10分の1に改善できることが分かる。特に、同期信号61d、62dは、起点信号もしくは距離測定信号61c、62cが停止した後も、同期が比較的に長時間高安定に保持されるので、同期信号61dと62dとの間の位相差が比較的に長い時間をかけて測定可能となる。
【0047】
また、前記基準局201から送信される起点信号61をASin(2πf1t)とすると、前記第起点信号61が伝送ケーブル101aを伝送し、前記中継局202aを経由して移動端末203に到達し、移動端末203において前記起点信号と同期した距離測定信号を生成し、移動端末203から無線伝搬路102aを伝搬し、中継局202aを経由し伝送ケーブル101aを伝送して基準局203までの距離をLa(m)とすると、基準局201における距離測定信号64aの位相は、BSin{2πf1t+(La)(2πf1)/C)}に変化し、従って、同期信号61dの位相φaは、φa=CSin{2πf1t+(La)(2πf1)/C)}となり、距離をLa(m)が算出できる。ここで、Cは光の速度とする。同様に、中継局202b〜202dを経由する距離Lb(m)〜Ld(m)が算出できるので、三角法もしくは双曲線航法により、前記移動端末203の位置を高精度で測位することができる。
【0048】
また、図中に示すシステム同期信号は複数ビットのユニークワードであり、±100ナノ秒程度の精度で前記基準局201と移動端末203との間の制御タイミングを合わせることができるが、この程度の精度で前記位相差を検出すると、距離の測定誤差が数十mと大きくなる問題点がある。そこで、起点信号を新たに設けて基準局201から複数の中継局を経由して送信し、移動端末203において前記起点信号と同期を確立した距離測定信号を生成して折返し、基準局201において前記起点信号を基準として距離測定信号の伝搬時間もしくは伝搬位相を測定することで、高精度の位置の測位を実現する。
【0049】
また、MACレイヤは、少なくとも、符号長、識別番号、相手先番号、報知信号、誤り訂正符号、もしくはこれらの組合せから構成され、前記システム同期信号とセットになって生成され、前記MACレイヤの継続時間を0.5ms〜1ms程度とし、前記起点信号もしくは距離測定信号の継続時間を各々1ms程度とすると、4タイムスロットの合計で4.5ms〜5ms程度の継続時間となる。前記継続時間の間、基準局の基準発振器の周波数安定度と移動端末の基準発振器の周波数安定度に差がある場合でも、第1の起点信号もしくは距離測定信号〜第4の起点信号もしくは距離測定信号の間の相対的な位相関係は均一に保たれることになり、高精度の測位が可能となる効果がある。
また、前記システム同期信号とMACレイヤとを前記第2のタイムスロット〜第4のタイムスロットの起点信号もしくは距離測定信号の先頭に付加することもできる。
【0050】
(実施の形態2)
図1、図3、図4は本発明の第2の実施の形態による移動無線測位装置の構成図である。図1、図3、図4において、201は基準局、202a〜202dは複数の中継局、21a〜21dは接続端子、101a〜101dは伝送ケーブル、203は携帯端末、100、102a〜102dは無線信号の伝搬経路、11、31は制御手段、12、32は送信手段、13、33は受信手段、14、34は高周波信号切替手段、35は移動端末203のアンテナ、41は基準発振器、42は距離算出手段、43は位相測定手段、44は距離測定信号再生手段、45は起点信号生成手段、46は同期発振器、47は距離測定信号生成手段、48は位相同期発振器、49は同期検出手段、50は起点信号再生手段、51、52は接続端子である。
【0051】
無線信号を用いた移動無線測位装置において、少なくとも1つの基準局201の周辺に、複数の中継局202a〜202dを間隔を置いて配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブル101a〜101dを介して接続し、前記複数の中継局202a〜202dを介して前記基準局201と双方向通信を行う移動端末203とから構成され、前記移動端末203が、少なくとも、制御手段31と、送信手段32と、受信手段33と、高周波信号切替手段34と、アンテナ35とを有し、前記制御手段31の起点信号生成手段45が起点信号を含む測位要求信号を生成し、前記送信手段32が、前記起点信号を含む測位要求信号とは別に生成したシステム同期信号と識別信号とを更に含む無線信号を、バースト信号としてかつ間欠的に、前記高周波信号切替手段34とアンテナ35とを介し前記複数の中継局202a〜202dに向けて送信し、
【0052】
前記複数の中継局202a〜202dが、前記移動端末203から送信された無線信号を受信して直接あるいは低雑音増幅器によって増幅し、前記伝送ケーブル101a〜101dを介して高周波信号として伝送し、前記基準局201が、少なくとも、高周波信号切替手段14と、受信手段13と、送信手段12と、制御手段11とを有し、更に、前記制御手段11が起点信号再生手段50と同期検出手段49と同期発振手段46と距離測定信号生成手段47とを有し、前記高周波信号切替手段14が前記伝送された高周波信号を前記複数の中継局に対応して順次かつ周期的に切替えて前記受信手段13に接続し、前記受信手段13が直接あるいは中間周波信号に変換して増幅し、前記起点信号再生手段45が前記高周波信号に含まれる起点信号を再生し、
【0053】
前記同期検出手段49が前記再生した起点信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記同期発振手段46が前記検出されたタイミングで起点信号と瞬時に同期を確立して同期を保持し、あるいは前記起点信号再生手段45と、同期検出手段49と、同期発振手段46とが遅延ロックループを構成し、前記再生された起点信号と高精度で同期を確立して同期を保持し、前記距離測定信号生成手段47が前記同期発振手段46あるいは遅延ロックループの出力信号と同期しあるいは直交する距離測定信号を生成し、前記送信手段12が前記生成された距離測定信号とは別に生成した少なくともシステム同期信号と識別信号とを含む高周波信号を時分割同時送受信のタイミングで生成し、前記高周波信号切替手段14が前記生成された高周波信号を順次かつ周期的に切替えて前記伝送ケーブル101a〜101dを介して前記複数の中継局に向けて伝送し、前記複数の中継手段が各アンテナ(記載せず)を介して無線信号として前記移動端末203に向けて送信し、
【0054】
前記移動端末203が、前記無線信号をアンテナ35を介して受信し、高周波信号切替手段34によって受信手段33に接続し、受信手段33によって直接あるいは中間周波信号に変換して増幅し、制御手段31の距離測定信号再生手段44によって距離測定信号を再生し、前記再生した距離測定信号の位相を前記同期発振器46の出力信号を基準とし前記複数の中継局202a〜202dに対応して位相測定手段43によって伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定し、前記位置測位手段42よって測定された複数の中継局202a〜202dに対応した複数組の測定結果から、自局の位置を三角法もしくは双曲線航法によって高精度で測位することができる。
【0055】
図2は、本発明の第1の形態および第2の形態によるによる移動無線測位装置の測位原理の説明図である。図2において、300は地面あるいは移動端末203のアンテナの高さ、202a、202bは中継局、211aは前記中継局202aと202bとの中間点の真下の位置、211bは前記中継局202bの真下の位置、211cは前記中間点の真下の位置211aから距離212c(例えば5.5m)の位置、212aは各中継局の間隔(例えば1m)、212bは各中継局の高さ(例えば5m)とする。移動端末203が地点211aにある場合には各中継局202a、202bが受信する無線信号に含まれる距離測定信号の位相は同相であるが、地点211b、211cにある場合には中継局202aから受信する無線信号に含まれる距離測定信号の方が、中継局202bから受信する無線信号に含まれる距離測定信号より遅れていることになる。
【0056】
前記移動端末203の同期発振手段が生成する同期信号の周波数を8MHzとすると測位レンジを18.8mとなるので、4局の中継局から各4回の測位結果の移動平均値をとった場合の位相測定精度として±0.5°程度が実現できることから、測位誤差ΔLは、ΔL=±0.5°×(18.8m/360°)≒±2.6cm程度となる。一方、(1)中継局202aから地点211bまでの距離は5.1mであり、中継局202bから地点211bまでの距離5mであるので、両者の距離差は0.1mとなり、位相差ΔΦは、ΔΦ=360°×(0.1m/10m)≒3.6°となり、(2)中継局202aから地点211cまでの距離は約7.81m、中継局202bから地点211cまでの距離は約7.07mであるから、両者の距離差は0.74mとなり、位相差ΔΦは、ΔΦ=360°×(0.74m/10m)=26.64°となり、何れも±2.6cm程度の誤差で測位が可能となる。
【0057】
以上の説明では、単一の周波数の距離測定信号あるいはこれに同期した同期信号を用いる場合について説明したが、位相変化ΔΦを、0<ΔΦ<2πに制限する必要がある。距離測定信号の周波数については、法規上の制約から、周波数の上限が抑えられており、自由に周波数を選択できないことから、同期信号信号として、周波数が異なる複数の同期信号を用いることで、複数の測位レンジで位置を測位できることになり、測位したい位置に最適の測位レンジを合わせることで、精密な位置の検知が可能となるメリットが得られる。
また、前記制御手段によって生成する周波数が異なる複数の起点信号もしくは距離測定信号を、周波数分割多重方式、あるいはOFDM方式で同時送信することができる。
【0058】
また、前記無線信号として、超音波信号、高周波信号、もしくは光信号を用いることができる。なお、超音波信号もしくは光信号の場合には、アンテナの代わりに、送受波器を用いる。
また、無線信号として、時分割同時送受話(TDD)方式の代わりに、周波数分割同時送受話(FDD)方式を用いても同様な効果が得られる。
また、前記無線信号の周波数として、GPSに割当てられた周波数、その近傍の周波数、法令に定められた周波数、基準局および各中継局で異なる拡散符号、もしくはこれらの組み合わせによる周波数を割当てることが出来れば、GPSをシームレス化できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、金属反射物が散在する工場内もしくは倉庫内などで、高精度の位置測位装置が安価に実現できるほか、移動端末としてRFタグに置き換えて物流管理にも応用できる。
なお、本発明の移動無線測位技術は基盤技術であり、上記以外に多分野での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態による移動無線測位装置の構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態と第2の実施の形態による移動無線測位装置の測位原理の説明図
【図3】本発明の第1の実施の形態と第2の実施の形態による基準局および移動端末の構成図
【図4】本発明の第1の実施の形態と第2の実施の形態による制御手段の構成図
【図5】本発明の第1の実施の形態によるタイミングチャート
【図6】従来の実施例を示す構成図
【符号の説明】
【0061】
1 RTK測位システム
2 複数のスードライト
3 固定基準局受信手段
4 移動基準局受信手段
5 ローバー受信手段
6 利用者処理ユニット
7 データリンク
101a〜101d 基準局と中継局の間の伝送ケーブル
102a〜102d 中継局と移動端末との間の無線信号の伝搬経路
201 基準局
202a〜202d 複数の中継局
203 移動端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を用いて移動端末の位置を高精度で測位するための移動無線測位装置において、
少なくとも1つの基準局の周辺に、複数の中継局を間隔を置いて配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブルで接続し、
前記基準局が少なくとも、制御手段と、送信手段と、受信手段と、高周波信号切替手段とを有し、
前記制御手段が、少なくとも間欠送信のタイミング信号を生成し、前記タイミング信号に同期して少なくとも起点信号を含む測位要求信号を生成し、
前記送信手段が前記生成された測位要求信号を含む高周波信号を送信し、
前記高周波信号切替手段が、前記送信された高周波信号を、各伝送ケーブルを介して、前記複数の中継局に向けて順次に切替えて伝送し、
前記複数の中継局が、前記測位要求信号を含む高周波信号を、各アンテナを介し無線信号として前記移動端末に向けて送信し、
前記移動端末が、少なくとも、アンテナと、高周波信号切替手段と、受信手段と、送信手段と、制御手段とを有し、
前記高周波信号切替手段が前記アンテナを受信手段に接続して待受け、
前記受信手段が前記アンテナで受信した高周波信号を直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、
前記制御手段が、前記高周波信号もしくは中間周波信号から少なくとも測位要求信号に含まれる起点信号を再生し、前記再生された起点信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出されたタイミングで前記再生された起点信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、あるいは遅延ロックループを構成して前記再生された起点信号と高精度で同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された起点信号に同期をしあるいは直交する距離測定信号を生成し、
前記送信手段が前記生成された距離測定信号を含む高周波信号を時分割同時送受信のタイミングで生成し、
前記高周波信号切替手段が、前記送信手段を時分割のタイミングでアンテナに接続し、前記距離測定信号を含む高周波信号を無線信号としてアンテナを介して前記複数の中継手段に向けて送信し、
前記複数の中継局が、前記無線信号を各アンテナで受信して距離測定信号を含む高周波信号とし、直接もしくは低雑音増幅器を用いて増幅し、前記各伝送ケーブルを介して基準局に向けて伝送し、
前記基準局において、
前記高周波信号切替手段が前記複数の中継局の内から各伝送ケーブルを介して伝送される高周波信号を周期的に切替えながら選択し、
前記受信手段が前記選択された高周波信号を直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、
前記制御手段が、前記高周波信号もしくは中間周波信号から前記複数の中継局に対応して少なくとも距離測定信号を再生し、前記複数の中継局に対応して距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を前記生成した起点信号を基準として測定し、前記複数の中継局に対応した複数組の測定結果から、前記移動端末の位置を三角法もしくは双曲線航法によって高精度で測位を行う
ことを特徴とする移動無線測位装置。
【請求項2】
無線信号を用いて移動端末の位置を高精度で測位するための移動無線測位装置において、
少なくとも1つの基準局の周辺に、複数の中継局を間隔を置いて配置し、前記基準局と各中継局との間を伝送ケーブルで接続し、
前記移動端末が、少なくとも、アンテナと、制御手段と、送信手段と、受信手段と、高周波信号切替手段とを有し、
前記制御手段が、少なくとも間欠送信のタイミング信号を生成し、前記タイミング信号に同期して少なくとも起点信号を含む測位要求信号を生成し、
前記送信手段が、前記生成された測位要求信号を含む高周波信号を生成し、前記アンテナを介して無線信号として前記複数の中継局に向けて間欠的に送信し、
前記複数の中継局が、前記無線信号を各アンテナで受信して測位要求信号を含む高周波信号とし、直接もしくは低雑音増幅器を用いて増幅し、前記各伝送ケーブルを介して基準局に向けて伝送し、
前記基準局が、少なくとも、高周波信号切替手段と、受信手段と、送信手段と、制御手段とを有し、
前記高周波信号切替手段が、前記複数の中継局の内から各伝送ケーブルを介して伝送される高周波信号を周期的に切替えながら選択し、
前記受信手段が、前記選択された高周波信号を直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、
前記制御手段が、前記高周波信号もしくは中間周波信号から少なくとも測位要求信号に含まれる起点信号を再生し、前記再生された起点信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出されたタイミングで前記再生された起点信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、あるいは遅延ロックループを構成して前記再生された起点信号と高精度で同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された起点信号に同期をしあるいは直交する距離測定信号を生成し、
前記送信手段が前記生成された距離測定信号を含む高周波信号を時分割同時送受信のタイミングで生成し、
前記高周波信号切替手段が、前記距離測定信号を含む高周波信号を周期的に切替えながら、各伝送ケーブルを介して、複数の中継局に向けて順次に伝送し、
前記複数の中継局が、前記各伝送ケーブルを介して伝送された高周波信号を、アンテナを介して無線信号として前記移動端末に向けて送信し、
前記移動端末において、
前記受信手段が、前記複数の中継局から送信される無線信号をアンテナで受信して高周波信号とし、直接もしくは中間周波信号に変換して増幅し、
前記制御手段が、前記中間周波信号から前記複数の中継局に対応して少なくとも距離測定信号を再生し、前記複数の中継局に対応して距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を前記生成した起点信号を基準として測定し、前記複数の中継局に対応した複数組の測定結果から、前記移動端末の位置を三角法もしくは双曲線航法によって高精度で測位を行う
ことを特徴とする移動無線測位装置。
【請求項3】
前記制御手段が、少なくとも、信号再生手段と、同期検出手段と、同期発振手段とを有し、
前記信号再生手段が、前記高周波信号もしくは中間周波信号から起点信号もしくは距離測定信号を再生し、
前記同期検出手段が、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の、立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、
前記同期発振手段が、前記検出されたタイミングで、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号と、高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された起点信号もしくは距離測定信号の、周波数もしくはチップレートの整数倍の周波数もしくはチップレートで、同期信号を生成することを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項4】
前記距離測定信号が、搬送波信号、副搬送波信号、変調信号、スペクトル拡散符号、もしくはこれらの組合せであることを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項5】
前記基準局から送信される高周波信号に少なくとも報知信号が含まれ、前記報知信号に、少なくとも、基準局の位置に関する情報、各中継局の位置に関する情報、各伝送ケーブルの長さに関する情報、あるいはこれらの組み合わせが含まれていることを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項6】
前記基準局もしくは移動端末が前記移動端末の位置を測位する際に、前記制御手段が、前記再生された距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出されたタイミングで前記再生された距離測定信号と高精度で瞬時に同期を確立して同期を保持し、かつ前記同期を保持された距離測定信号に同期をしあるいは直交する同期信号を生成し、前記生成する同期信号の周波数を、要求される測位レンジに合わせて設定し、あるいは周波数の異なる複数の同期信号を生成し、前記複数の同期信号の中から、要求される測位レンジに合わせて、最適なものを選択することによって、高い測位精度を実現することを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項7】
前記制御手段が、測位レンジを長い尺度のものから順次短い尺度のものに変化させあるいはその逆に変化させ、あるいは切替えて設定することによって、最適の測位レンジを用いて前記移動端末の位置を高精度で測位することを特徴とする請求項第6項に記載の移動無線測位装置。
【請求項8】
前記制御手段の信号生成手段もしくは信号再生手段において、前記起点信号もしくは距離測定信号が、無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号である場合には、直接群遅延歪みおよび遅延誤差の少ない帯域通過フイルタを通し、あるいは無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号を変調した変調信号である場合には、遅延誤差の少ないアナログ復調器もしくは高い周波数のサンプリング信号を用いた遅延誤差の少ないデジタル復調器によって復調した後に、前記帯域通過フイルタを通して再生することを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項9】
前記制御手段が、少なくとも、基準発振器と、位相同期発振器と、同期検出手段と、同期発振手段とを含み、前記同期発振手段が、前記基準発振器の発振周波数を位相同期発振器によって高い周波数に変換して駆動される、セットあるいはリセット付きのカウンタあるいは数値制御発振器によって構成され、前記同期検出手段が、少なくとも128MHz以上の周波数のサンプリング信号を用いて、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記検出したタイミングで前記同期発振手段をセットしあるいはリセットすることによって、前記同期発振手段が、前記起点信号もしくは距離測定信号と短時間で瞬時に同期を確立し、かつ前記起点信号もしくは距離測定信号が停止しあるいは消滅した後も、比較的に長時間同期を保持できることを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項10】
前記制御手段の位相測定手段が、前記再生した起点信号もしくは距離測定信号、あるいは生成した同期信号の周波数の、4の整数倍のサンプリング周波数で、かつ4ビット以上のアナログデジタル変換器を用いてデジタル信号に変換し、Sinのルックアップテーブルとして0、1、0、−1、もしくは1、1、−1、−1、あるいはこれらの繰り返しであり、Cosのルックアップテーブルとして1、0、−1、0もしくは1、−1、−1、1、あるいはこれらの繰り返しであり、前記変換したデジタル信号とルックアップテーブルとの積和演算を行うことを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項11】
前記受信手段が伝搬経路の品質を検知する品質検知手段を有し、前記品質検知手段が、前記受信手段において、受信した無線信号もしくは高周波信号の電力あるいは信号対雑音比を測定した結果から回線品質を分析し、あるいは前記制御手段で、距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定した結果を分析し、あるいはこれらの両方の分析を行い、前記測位の結果を補正し、補完し、あるいはフイルタリングし、あるいはこれらの組み合わせを行うことを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項12】
前記携帯端末、中継局、もしくはこれらの両方が、複数のアンテナを設けて周期的に切替え、前記複数のアンテナに対応して測定した距離測定信号の伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定した結果の内、比較的に小さく測定しあるいは算出したものを選択し、平均し、荷重平均し、あるいはこれらの組み合わせを行うことによって、前記測位結果を補正し、補完し、フイルタリングし、あるいはこれらの組み合わせを行うことを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。
【請求項13】
前記無線信号の周波数が、GPSに割当てられた周波数、その近傍の周波数、法令によって定められた周波数、もしくはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に該当する移動無線測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242179(P2011−242179A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112715(P2010−112715)
【出願日】平成22年5月15日(2010.5.15)
【出願人】(395007299)有限会社アール・シー・エス (51)
【Fターム(参考)】