説明

移動物体監視システム

【課題】熱線センサ等の移動物体センサとユーザが携帯するICタグとで監視エリアにおける不審者を検知する監視システムにおいて移動物体センサが人物を検出したときに、単に当該監視エリア内にてICタグ等の携帯装置の存在を検知するだけでは、検出された人物が当該携帯装置を身につけているとまでは判断できない。
【解決手段】リーダ部22及びタグ検出手段42は、無線タグ16が発した無線信号を受信して、無線タグ16の位置を検出する。リンク処理手段44は、センサ部20が検知した人物の位置と無線タグ16の位置とを照合してそれらを対応付ける。確度判定手段46は人物と無線タグ16との対応関係の持続性に基づいて、当該人物が無線タグ16を帯同している確度を判定する。監視装置は確度を所定の閾値と比較することにより人物が無線タグ16を帯同しているか否か判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視エリアにおける移動物体を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内やその周辺領域を監視エリアとし、居住者や従業者等、当該エリアの正当な利用者にICタグ等の携帯装置を帯同させて監視するシステムが提案されている。例えば、監視エリアに移動物体を検出したときに、当該移動物体が携帯装置を帯同しているか否かを携帯装置が発する無線信号に基づいて判定して、当該移動物体が正規利用者であるか否かを識別することができる。
【0003】
下記特許文献1に示される警備システムでは、要求を受信すると識別番号を無線送信する携帯カードを用い、警戒エリアにおいて従業員は当該カードを所持する。警戒エリアにて熱線センサが移動物体を検知すると、警備装置は携帯カードの識別番号の読み取り動作を実施し、登録されている識別番号を取得できない場合には当該移動物体を侵入者と判断して異常警報する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−144160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
監視エリアにて熱線センサ等の移動物体センサが人物を検出したときに、単に当該監視エリア内にてICタグ等の携帯装置の存在を検知するだけでは、検出された人物が当該携帯装置を身につけているとまでは判断できない。つまり、通常、監視エリアは人間一人分の広さより広範囲であり、検出された人物とは別個に携帯装置が存在し得、この場合、当該人物が正規利用者と誤認識され得るので、監視エリア内での人物の識別・監視が精度よくなされない可能性がある。具体的には、監視エリア内に携帯装置が遺失物として存在する場合や、携帯装置を所持しない人物の他に携帯装置を所持した正規利用者もいる場合などである。なお、当該問題の背景には、遠隔のタグリーダからICタグの位置を高精度に把握することが容易ではないことがある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、移動物体がICタグ等の識別無線機を帯同しているか否かの識別・監視がより的確になされる移動物体監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る移動物体監視システムは、移動物体が識別無線機を帯同しているか否かを監視するものであって、監視エリアにおける移動物体の位置情報を検出する物体検出手段と、前記識別無線機が発した無線信号を受信して、当該識別無線機の位置情報を検出する無線機検出手段と、前記移動物体の位置情報と前記識別無線機の位置情報とを照合して前記移動物体に対応する前記識別無線機を求める対応判定手段と、前記移動物体と前記識別無線機との対応関係の持続性に基づいて、当該移動物体が当該識別無線機を帯同している確度を判定する確度判定手段と、前記確度を所定の閾値と比較することにより前記移動物体が前記識別無線機を帯同しているか否か判定する帯同判定手段と、を有する。
【0008】
他の本発明に係る移動物体監視システムにおいては、前記確度判定手段は、前記移動物体と前記識別無線機とが対応関係にある状態の継続時間に基づいて前記持続性を判定し、当該継続時間が長いほど前記確度を高く定める。
【0009】
さらに他の本発明に係る移動物体監視システムにおいては、前記確度判定手段は、前記移動物体と前記識別無線機とが対応関係にある状態での当該移動物体の位置情報の変化に基づいて前記持続性を判定し、当該変化が大きいほど前記確度を高く定める。
【0010】
別の本発明に係る移動物体監視システムにおいては、前記確度判定手段は、さらに、前記対応判定手段での前記移動物体の位置情報と前記識別無線機の位置情報との一致度が高いほど前記確度を高く定める。
【0011】
さらに別の本発明に係る移動物体監視システムにおいては、前記確度判定手段は、さらに、受信した前記無線信号に基づいて算出される前記識別無線機の位置情報の検出精度が高いほど前記確度を高く定める。
【0012】
本発明に係る移動物体監視システムは、さらに、前記移動物体に関して予め定められた特定行動を、前記移動物体の位置情報の履歴に基づいて検出する行動検出手段を有し、前記帯同判定手段が、前記移動物体による前記特定行動が検出された場合に、当該移動物体に関する前記確度が当該特定行動に対して設定された基準確度未満であれば当該移動物体を前記識別無線機を帯同していない不審物体として判定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動物体と識別無線機との位置に基づく対応関係を推定し、さらにその持続性を考慮することで、移動物体が識別無線機を帯同している確度が求められる。当該確度によれば、監視エリア内での識別無線機の単なる有無の検知と比べてより好適な精度で移動物体による帯同を把握することができる。また、当該確度を用いた帯同判定の閾値を監視エリアの状況や判定の目的に応じて設定することで、それら状況・目的に応じた的確な判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態である不審者監視システムを含んで構成される警備システムの概略の構成を示すブロック図である。
【図2】不審者監視システムが設置される監視エリアの模式的な平面図である。
【図3】不審者監視システムを構成する検知装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図4】リンク処理部における処理を説明する概略のフロー図である。
【図5】リンク処理部におけるリンク維持判定処理の一例の概略のフロー図である。
【図6】リンクレベルの判定処理の一例を示す概略のフロー図である。
【図7】リンクレベルの判定処理の他の例を示す概略のフロー図である。
【図8】不審者監視システムを構成する監視装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図9】入場イベントの検出時の判定処理の概略のフロー図である。
【図10】滞留イベント及び外周移動イベントの検出時の判定処理の概略のフロー図である。
【図11】入館イベントの検出時の判定処理の概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る移動物体監視システムの実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る移動物体監視システムである不審者監視システム2を含んで構成される警備システムの概略の構成を示すブロック図である。当該警備システムは、不審者監視システム2、通信網4及び警備センタ6を含んで構成される。
【0016】
不審者監視システム2は監視対象の物件に設置される。例えば、不審者監視システム2は監視対象の建物の外周の敷地内を監視する。より具体的には、例えば、戸建て家屋を監視対象とし、当該家屋の庭・アプローチを監視エリアとする。また、不審者監視システム2は屋内監視に用いることもでき、例えば、マンション、オフィスビル、ホテルなどのエントランスホールやロビーを監視エリアとすることができる。
【0017】
不審者監視システム2は、監視エリアに監視対象物件の居住者や従業員等といった正規利用者(以下、ユーザ)が存在し得る状態にて、当該監視エリアにおける移動物体(人物)を監視する。すなわち、夜間などユーザが監視エリアに存在しない状態にて警備開始の設定をしたり、ユーザが存在し得る状態では警備解除の操作をしたりする警備システムとは異なり、不審者監視システム2は警備解除などの操作を基本的には必要とせず、日中などユーザが存在し得る状態においても監視を行うことができるものである。不審者監視システム2は監視エリア内のユーザを含む人物を監視し、敷地内へ侵入した不審者や建物内に侵入した不審者を検出すると、異常通報信号と共に監視エリアの画像を警備センタ6へ送る。異常通報を受けた警備センタ6では、送られた画像に基づいて監視員が状況を把握し警備員を派遣する等の適切な対処をとることができる。
【0018】
不審者監視システム2は監視装置10、検知装置12及び操作表示器14を含んで構成され、監視装置10は検知装置12及び操作表示器14と無線/有線を介して相互に通信可能に接続され、また、通信網4を介して警備センタ6と接続される。
【0019】
検知装置12は、監視対象の物件に1台又は複数台設置される。監視装置10は検知装置12からの検知結果を統合判定して異常判定を行い、その結果に基づいて警備センタ6への通報などの処理を行う。詳細は後述するが、監視対象物件のユーザには、ユーザであるか識別可能とする識別無線機として例えば予め無線タグ16が付与され、ユーザは監視エリアではこれを携行する。不審者監視システム2は監視エリア内の移動物体の位置を検出すると共に、無線タグが発する無線信号を受信してその識別情報及び位置を取得する。
【0020】
図2は不審者監視システム2が設置される監視エリアの模式的な平面図である。建物300の外周の敷地内が監視エリアとして設定される。敷地内と敷地外との境界には生け垣やフェンスなどの壁302が設けられ、その一部に敷地出入口304が設けられる。検知装置12は例えば建物300の外壁に設置され、後述するセンサ部20から監視エリアへレーザパルス306が照射され移動物体である人物308の検出が行われる。また、リーダ部22から無線タグ16へ質問信号が発せられ、無線タグ16からの応答信号によりリーダ部22は無線タグ16を検知し、またその位置を取得する。
【0021】
不審者監視システム2は、移動物体の位置と無線タグの位置とを照合して移動物体に対応する無線タグを求める対応付け処理(リンク処理)を行うと共に、照合結果に応じた確度(リンクレベル)を求める。リンクレベルは、移動物体が無線タグを帯同している確からさを示す指標である。すなわち、リンクレベルが高ければ、無線タグに対応付けられた人物が当該無線タグを携帯(所持)している蓋然性が高いことを表しており、逆に低ければ、対応付けはされているが疑わしい(蓋然性が高いとは言えない)ことを表す。また無線タグを対応付けられない移動物体には、リンクが存在しないことを示す最低のリンクレベルが付与される。
【0022】
不審者監視システム2はこのリンクレベルを用いて、各移動物体が無線タグを所持したユーザか否か認証し、例えば、リンクレベルが基準レベル未満である移動物体を不審物体として判定する等の処理を行う。当該判定において、移動物体の位置又は動きに応じて異なる基準レベルを設定することができる。例えば、庭を客人や配達員が通らないエリアとすると、それらの者が使用することが想定されるアプローチよりも庭を高い基準レベルに設定することができる。また、不審者監視システム2は移動物体ごとにその位置の履歴を記録して移動物体を追跡し、動きを考慮に入れた各種の判定対象イベントの発生を監視するように構成される。位置や動きに基づいて設定された判定対象イベントが検出された場合、当該イベントの主体である移動物体のリンクレベルが当該イベントの内容に対応して設定された基準レベルと比較され、上述のように侵入異常の判定などがなされる。
【0023】
続いて、図3を参照して検知装置12の構成を説明する。検知装置12は、センサ部20、リーダ部22、カメラ24、検知処理部26、記憶部28、報知部30及びLAN通信部32を含んで構成される。
【0024】
センサ部20は監視エリアにおける人物の位置情報を検出する機能を有する。本実施形態ではセンサ部20はレーザ測距センサであり、レーザ光により監視エリアを走査してレーザ光を反射した物体の位置を検出する。例えば、センサ部20は波長890nm程度の近赤外光のレーザ光源を備え、光源からのレーザパルスを等速に回転駆動される走査鏡で反射してその出射方向を変え、監視エリアの全域に順次照射する。また、センサ部20は物体にて反射されたレーザパルスを受光して、当該物体までの測距データを生成する。レーザ光の走査はセンサ部20を中心として監視エリアを臨む角度範囲(例えば水平方向に180゜)に対して所定周期(例えば200ミリ秒)で繰り返される。測距は走査角度範囲内にて所定の角度ステップ(例えば0.25゜)ごとに飛行時間法(TOF法:Time of Flight)を用いて行われ、具体的にはレーザパルスの出射から受光までに要する時間を計測し、当該時間と光速度とからレーザを反射した物体までの距離が算定される。測距データは走査角(方位)と距離とで表され、検知装置12を視点とした物体の位置が当該測距データで与えられる。
【0025】
センサ部20は上述したレーザ測距センサには限定されず、例えば、マイクロ波やミリ波等の電波を使用するレーダセンサや、超音波を送受信する超音波センサ(ソナーセンサ)等でも同様に構成可能である。また、画像センサを用いて、背景差分やフレーム間差分により人物を抽出し、画像上の水平方向座標から人物の方位を求め、また監視エリアを斜め上方から撮影した画像における垂直方向座標から逆透視変換により人物までの距離を推定することで測距データを生成することもできる。
【0026】
リーダ部22はユーザに付与される無線タグ16が発した無線信号を受信して、無線タグ16の位置情報を検出する。無線タグ16は固有の識別情報(タグID)を記憶し、リーダ部22からの質問信号を受信すると、タグIDを含む応答信号を無線信号として送出する。本実施形態では無線タグ16は自身にバッテリを備えたアクティブ型のRFID(Radio Frequency IDentification)タグを用いて構成され、不審者監視システム2の比較的広い監視エリアにてリーダ部22との通信を可能とする。無線タグ16は例えば、900MHz帯等のUHFの帯域又は2.45GHz帯等のマイクロ波の帯域の周波数のものを用いることができる。なお、リーダからの電波を整流して電源とするパッシブ型のRFIDタグであっても数メートルの通信が可能なものがあり、監視エリアが比較的狭い場合にはパッシブタグを用いることも可能である。
【0027】
リーダ部22は監視エリアに質問信号を送出する。そして、リーダ部22はこれに反応して無線タグ16が発した応答信号を受信し、応答信号に含まれるタグIDを抽出する。
【0028】
また、リーダ部22は受信した応答信号に基づいて無線タグ16の位置情報を検出するための構成を有する。例えば、検知装置12は無線タグ16の位置情報として、リーダ部22から見た無線タグ16が存在する方位を検出する。そのための構成の一例として、リーダ部22はそれぞれ比較的狭いビーム幅(例えば10゜)の指向性を有し互いにビーム方向をずらして配置された複数のアンテナを備え、それら複数のアンテナを切り替えて質問信号の送出及び応答信号の受信を行う。当該送受信が全方位(360゜)にて順次行われるようにリーダ部22は指向性を切り替え、所定周期(例えば200ミリ秒)ごとに全方向に対する無線タグ16の読み取りを完了する。リーダ部22は全方位に順次設定される指向角ごとに無線タグ16の応答信号の受信強度を取得し、タグIDごとに全方位での受信強度をまとめ、1周期分の受信データとして検知処理部26へ出力する。
【0029】
上述の例ではビーム方向をビーム幅に応じたステップで変化させるものである。つまりビーム幅が10゜程度であれば、ビーム間の多少のオーバーラップを設けつつ指向角はおよそ10゜刻みで設定される。しかし、ビーム方向の変化ステップはビーム幅より小さく設定することができ、これにより無線タグ16の存在する方位をビーム幅より小さい角度で求めることができる。
【0030】
なお、後述するリンク処理のために、測距データによる位置とタグデータによる位置(方位)との関係を予め定義しておく必要がある。好適には、センサ部20及びリーダ部22それぞれの視軸が実質的に一致するように、検知装置12内にてセンサ部20及びリーダ部22を互いに近づけて配置する。これによりセンサ部20の走査角とリーダ部22の指向角、すなわち測距データにおける角度(方位)と受信データの角度(方位)とを共通の座標系で表現できる。
【0031】
リーダ部22に設けるアンテナは指向性の向きを変えられる他の構成とすることができる。例えば、或る方向に強い指向性を有する単一のアンテナを回転させて指向角を変更する構成や、フェーズドアレイアンテナのように電子的制御により指向角を変える構成なども可能である。また、送信アンテナと受信アンテナとを設け、一方だけに鋭い指向性を持たせ、他方は例えば無指向性のような広い指向特性を持たせてもよい。
【0032】
リーダ部22は無線タグ16の位置情報として上述の例では方位を求めるが、監視エリア内での位置を求める構成とすることもできる。例えば、リーダ部22は質問信号の送出から応答信号の受信までの時間差に基づいて無線タグ16までの距離を求め、方位と当該距離とで二次元座標上の位置を決定することができる。なお、複数個所に配置した検知装置12それぞれのリーダ部22で得られる受信データを用いて、三角測量の原理で二次元座標上の位置を決定する構成も可能である。この場合は無線タグ16の位置を検出する処理を監視装置10にて行うように検知装置12と監視装置10との処理分担を設計するのが好適である。
【0033】
カメラ24は監視エリアを撮影して画像を取得する。例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等を用いて監視エリアの画像信号を生成する。カメラ24により撮影される画像は不審者監視システム2から異常通報信号と共に警備センタ6へ送られ、警備センタ6の監視員が状況の把握に用いる。また、ユーザが操作表示器14にて当該画像により監視エリアを確認することもできる。
【0034】
記憶部28は、検知処理部26にて実行される各種プログラムやそれに必要なデータを格納される。特に、記憶部28は、ユーザに付与されている無線タグ16のタグIDの情報(登録タグデータ)や、人物がいない状態でセンサ部20により取得された測距データ(基準測距データ)を記憶する。
【0035】
検知処理部26は、マイクロプロセッサ等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて、センサ部20が取得した測距データ、及びリーダ部22が検出したタグデータや無線タグ16の位置についての処理を行う。具体的には検知処理部26は移動物体検出手段40、タグ検出手段42、リンク処理手段44及び確度判定手段46として機能する。
【0036】
移動物体検出手段40はセンサ部20と共に、監視エリアにおける移動物体の位置を検出する物体検出手段を構成する。移動物体検出手段40はセンサ部20から入力される測距データにおいて、所定以上の距離変化が生じた走査角のまとまり(距離変化群)を移動物体に対応するものとして抽出する。そして、距離変化群における距離及び走査角の分布から把握される移動物体の大きさが人を示す程度である場合に、当該移動物体を人物と判定し、当該人物を検出した方位及び距離を人物の位置とする。人物の位置(方位、距離)は例えば、距離変化群の中心の方位及び距離とする。
【0037】
複数の距離変化群が抽出された場合は、それぞれについて人物判定及び位置の検出を行う。検出した人物にはそれぞれ人物IDを付与する。移動物体検出手段40は前回の走査で検出した人物と今回の走査で検出した人物との大きさの類似度や位置関係を判定する等により、それら人物が同一であるかを判定する。例えば、位置関係に関しては、人物の移動距離と経過時間とから導かれる移動速度の妥当性を同一人物か否かの判定材料とすることができる。
【0038】
なお、人物の方位・距離は距離変化群の走査角・距離の分布範囲や、平均値など他の代表値で表してもよい。
【0039】
タグ検出手段42はリーダ部22と共に、監視エリアにおける無線タグ16の存在及びその位置を検出する無線機検出手段を構成する。タグ検出手段42は、リーダ部22からタグIDごとに当該タグIDが検出された方位及び受信強度をまとめた受信データを入力される。タグ検出手段42は記憶部28の登録タグデータを参照し、検知されたタグIDが登録されたものである場合、当該タグIDごとに受信強度が最も大きい方位を対応する無線タグ16の検出方位とする。
【0040】
なお、無線タグ16の方位は指向角の分布範囲や、平均値、中央値など他の代表値で表してもよい。
【0041】
リンク処理手段44は、移動物体検出手段40により検出された人物の位置情報と、タグ検出手段42により検出された無線タグ16の位置情報とを照合して移動物体に対応する無線タグ16を求める対応判定手段として機能する。本実施形態では、リンク処理手段44は無線タグ16が検知されている場合、人物の位置を特定する情報に含まれる方位(人物の方位)と無線タグ16の方位とを比較し、その一致性が認められれば、人物と無線タグ16とを対応付ける(リンク成立)。一方、一致性が認められない場合や、無線タグ16が検知されていない場合は対応付けしない(リンク失敗)。
【0042】
図4はリンク処理手段44における処理を説明する概略のフロー図である。移動物体検出手段40は人物の位置を特定し(S50)、当該人物が追跡中の人物でない、つまり今回のセンサ部20の走査で新たに検出された人物である場合には(S52にて「No」の場合)、当該人物に人物IDを付与し(S54)リンク設定を試みる(S58〜S68)。一方、追跡中の人物である、つまり人物IDを既に付与されている人物である場合には(S52にて「Yes」の場合)、リンク処理手段44が当該人物IDについてリンクが存在するか否か、つまり無線タグ16と対応付けされているか否かを判定する(S56)。追跡中であるがリンクが存在しない場合は(S56にて「No」の場合)リンク設定を試みる(S58〜S68)。
【0043】
リンクが存在しない場合(S52及びS56にて「No」の場合)は、リンク処理手段44はタグ検出手段42により無線タグ16が検出されており(S58にて「Yes」の場合)、かつ当該無線タグ16のタグIDに対してリンクが設定されていない場合(S60にて「Yes」の場合)、人物の方位と無線タグ16の方位との相違量(方位ズレ量)を算出する(S62)。そして、方位ズレ量が所定の閾値Th1以内であれば(S64にて「Yes」の場合)、リンク処理の対象としている人物に付与されている人物IDに当該無線タグ16のタグIDを対応付け、これにより新たなリンクが設定される(S66)。
【0044】
一方、監視エリアに無線タグ16が検知されていない場合(S58にて「No」の場合)や無線タグ16は検知されているが未リンクのものはない場合(S60にて「No」の場合)、また方位ズレ量が閾値Th1を超えている場合は(S64にて「No」の場合)リンクを設定することができないか、設定することが不適切である場合である。よって、これらの場合はリンク失敗の場合として、リンク処理手段44は処理対象の人物に対してリンクを設定しない(S68)。
【0045】
リンク処理手段44は処理対象の人物に前回の処理にてリンクが設定されている場合(S56にて「Yes」の場合)、リンク維持判定処理S70を行う。リンク維持判定処理S70は、無線タグ16の検出誤差が比較的大きいことに配慮した処理であり、一旦リンクを設定した人物と無線タグ16に対しては以降のリンク処理において一致判定の基準を緩和してリンク切れが頻繁に発生する事態を回避する。
【0046】
図5はリンク維持判定処理S70の一例の概略のフロー図であり、リンク処理手段44はリンクが存在する場合には、リンクが存在しない場合の処理S58〜S68に代えて、リンク維持判定処理S70を実行する。具体的には、リンク処理手段44はリンク維持の判定対象の無線タグ16のタグIDがタグ検出手段42により検出されており(S80及びS82にて「Yes」の場合)、リンク維持の判定対象の人物及び無線タグ16についての方位ズレ量を算出する(S84)。そして、方位ズレ量がTh2>Th1に設定される閾値Th2以内であれば(S86にて「Yes」の場合)、リンク維持の判定対象の人物と無線タグ16との間にリンクが成立すると判定し、両者の対応付けを維持する(S88)。一方、監視エリアに無線タグ16が検知されていない場合(S80にて「No」の場合)や無線タグ16は検知されているがリンク維持判定の対象のタグIDは検知されていない場合(S82にて「No」の場合)、また方位ズレ量が閾値Th2を超えている場合は(S86にて「No」の場合)はリンク失敗とすべき状態であり、維持するかの判定対象としている対応付けを解除する(S90)。例えば閾値Th1は5゜とし、Th2は8゜に設定することができる。
【0047】
なお、人物又は無線タグ16の検出方位を上述したように範囲で表す場合には、互いの角度範囲が重複するか否か、或いは重複しないのであれば最も近い端同士がどれだけ離れているかによって方位ズレ量についての判定処理S64,S86を行う。
【0048】
また、上述した無線タグ16の二次元座標を求める構成では、方位の一致性に代えて二次元座標の一致性に基づいてリンク処理を行う。すなわち、方位及び距離で与えられる人物の位置と無線タグ16の二次元座標で表される位置との距離をズレ量として判定処理S64,S86を行う。
【0049】
リンク処理手段44は上述のリンク処理を監視エリアにて検出された人物ごとに行う。
【0050】
確度判定手段46は人物が無線タグ16を帯同している確度であるリンクレベルを判定する確度判定手段として機能する。確度判定手段46は、リンク処理手段44での人物と無線タグ16との対応付け結果を踏まえてリンクレベルを定める。リンクレベルは多段階に設定される。
【0051】
図6はリンクレベルの判定処理の一例を示す概略のフロー図である。この例では、確度判定手段46は人物と無線タグ16との対応関係、つまりリンク成立の持続性に基づいてリンクレベルを判定する。リンク成立の持続性は例えばその継続時間が長いほど高いと言える。また、リンク成立状態の安定性もその持続性の一つの現れである。例えば、人物の動きに追随してリンク成立状態が維持される追随性を安定性の指標とすることができ、人物の動きが大きいほど、それに追随する無線タグ16とのリンクは安定であり高いリンクレベルを設定することができる。
【0052】
図6の例ではリンクレベルは高い順に“2”,“1”及び“0”の3段階に定義され、レベル“0”はリンクが存在しないことを意味する。具体的には、確度判定手段46はリンクが成立していない場合には(S100にて「No」の場合)、リンクレベルを“0”に設定する(S102)。リンクが成立しており(S100にて「Yes」の場合)、さらに当該状態が所定時間以上継続し(S104にて「Yes」の場合)、かつ追随性が高い、具体的には始めにリンク成立した時点からの人物の方位の変化量の累積が所定値以上である場合(S106にて「Yes」の場合)、最も高いリンクレベル“2”を設定する(S108)。一方、継続時間が閾値以上であるという条件と追随性が高いという条件とのいずれかが満たされない場合は(S104又はS106にて「No」の場合)中間のリンクレベル“1”を設定する(S110)。なお、継続時間の計測は任意の単位で行うことができ、例えば、リンク処理の回数で計ることもできる。
【0053】
ここでは、リンク成立が持続するほどリンクレベルを高く設定する例として、リンクレベルが3段階の簡単な例を示したが、例えば、継続時間の判定閾値を2以上設定して、継続時間が長いほど高いリンクレベルを設定したり、同様に、方位の追随性が高いほどリンクレベルを高く設定したりすることができる。図6の例ではリンク成立状態(S100にて「Yes」の場合)におけるリンクレベル“2”の判定条件として、継続時間の条件(S104)と追随性の条件(S106)との2つを満足することを課しているが、これら2つの条件のいずれか一方のみでレベル“2”とするか“1”とするかを判定してもよい。また、条件S104,S106の一方のみ満たす場合のリンクレベルを両方満たす場合のレベルと両方とも満たさない場合のレベルとの中間レベルとしてもよい。また、人物の二次元座標を検出する構成では、追随性の判定は、方位変化量に代えて位置変化量(移動距離)を用いて行うことができる。
【0054】
図7はリンクレベルの判定処理の他の例を示す概略のフロー図である。この例では、確度判定手段46は無線タグ16の検出精度に応じて異なるリンクレベルを設定する。具体的には、検出精度が高い場合は低い場合より高いリンクレベルを設定することができる。無線タグ16の検出精度は、受信データにおける受信強度のピーク値の大きさや、受信強度の方位分布などに基づいて定めることができる。概念的には、ピークの位置や形状が明確であれば検出精度は高いと推定される。例えば、ピークが低い、すなわち無線タグ16からの応答信号が微弱であるほど、ピークとノイズとの区別が難しくなり、またピーク位置がノイズの影響を受けやすくなるため、求まる無線タグ16の位置の検出精度は低く推定される。また、或る1つの無線タグ16に対応した受信データにピークは複数現れ得る。例えば、無線タグ16から送出された応答信号が他の物体に反射してリーダ部22に到達する場合や、リーダ部22のアンテナの指向性にメインローブに加えサイドローブが存在する場合などである。例えば、複数のピークにおける最大ピーク値と第2ピーク値との差が小さい場合は、最大ピークが真のピークである蓋然性が低くなり、検出精度は低く推定される。
【0055】
無線タグ16の検出精度は、検出方位の時間的な変化における整合性に基づいて定めることもできる。概念的には,検出方位の時間変化が人の一般的な動き方から大きく逸脱している場合は検出精度が低いと推定される。
【0056】
図7の例ではリンクレベルは高い順に“3”,“2”,“1”及び“0”の4段階に定義される。確度判定手段46はリンクが成立していない場合には(S120にて「No」の場合)、リンクレベルを“0”に設定する(S122)。リンクが成立しており(S120にて「Yes」の場合)、さらに当該状態が所定時間以上継続し(S124にて「Yes」の場合)、かつ始めにリンク成立した時点からの人物の方位の変化量の累積が所定値以上である場合(S126にて「Yes」の場合)、最も高いリンクレベル“3”を設定する(S128)。一方、継続時間が閾値以上であるという条件と追随性が高いという条件とのいずれかが満たされない場合(S124又はS126にて「No」の場合)、確度判定手段46はタグの検出精度が所定の閾値より高いか否か判定し(S130)、当該閾値以上であれば(S130にて「Yes」の場合)中程度のリンクレベル“2”を設定し(S132)、当該閾値未満であれば(S130にて「No」の場合)低いリンクレベル“1”を設定する(S134)。
【0057】
なお、リンク成立の持続性が高いという判定結果は実績に基づくものであり、この場合は検出精度が低くても、無線タグ16の検出方位は信頼できると言える。そこで図7に示す例では、タグの検出精度よりもリンク成立の持続性を優先させてリンクレベルを決定している。すなわち、持続性の有無を判定し(S124,S126)、当該持続性が存在する場合には持続時のリンクレベルとして高レベル“3”を設定する(S128)。一方、当該持続性が存在しない場合には検出精度を判定し(S130)、その判定結果に基づき、持続時のリンクレベル“3”以下の範囲におけるリンクレベルの系列を補完する中レベル“2”及び低レベル“1”を設定する(S132,S134)。
【0058】
なお、図7の例においても、図6の例について述べたと同様の改変を行うことができる。
【0059】
また、図7の処理において継続時間の判定(S124)と追随性の判定(S126)とのいずれか一方を省略してもよい。また、それら判定(S124,S126)の両方を省略して、タグの検出精度のみでリンク成立状態における複数レベルを設定してもよい。一方、継続時間の判定(S124)や追随性の判定(S126)で持続性が存在していると判定された場合に、さらにタグの検出精度の判定を行い、検出精度が閾値未満の場合にレベル“3”とし、閾値以上の場合はレベル“4”を設定してもよい。
【0060】
例えば、リーダ部22が上述した送受信の時間差等に基づいてタグを高精度に検出できる構成である場合などは、確度判定手段46におけるタグ検出精度の判定閾値も上げることができる。この場合、タグ検出精度が高いとの判定は持続性が存在するとの判定よりも重視することが可能であり、図7の例とは逆に持続性よりもタグの検出精度を優先させるリンクレベルの設定が可能である。例えば、リンクレベルを0〜4の5段階に設定する構成において、タグ検出精度が高い場合に、さらにリンク成立の持続性が存在すればレベル“4”、持続性が存在しなければレベル“3”とし、タグ検出精度が低い場合に、リンク成立の持続性が存在すればレベル“2”、持続性が存在しなければレベル“1”とし、リンク失敗をレベル“0”とする。
【0061】
また、持続性の判定やタグ検出精度の判定に加えて、或いは代えて、方位ズレ量の判定を行い、リンクレベルを設定する構成としてもよい。当該構成では方位ズレ量が小さいほどリンクレベルを高める設定とする。
【0062】
検知装置12は本実施形態ではLAN(Local Area Network)で監視装置10と接続される構成としており、検知装置12に設けられるLAN通信部32は監視装置10との通信インターフェースである。
【0063】
また、報知部30は後述する異常検知時の警報を出力するスピーカ等である。LAN通信部32を介して検知処理部26が警備センタ6や監視装置10から指示を受けて報知部30を動作させる。
【0064】
操作表示器14は検知装置12のカメラ24により撮影された監視画像を表示するモニタを備える。例えば、不審者監視システム2のユーザは操作表示器14にて随時、監視エリアを画像により確認することができる。また、操作表示器14には監視装置10、検知装置12に対する各種操作を行うためのボタン、スイッチ、テンキーなどの入力手段、及び音声ガイドや異常検知時の警報を出力するスピーカ等を設けることができる。
【0065】
次に、図8を参照して監視装置10の構成を説明する。監視装置10は、監視処理部150、記憶部152、LAN通信部154及び通報部156を含んで構成される。
【0066】
LAN通信部154は検知装置12との通信インターフェースである。一方、通報部156は通信網4を介した警備センタ6との通信インターフェースである。
【0067】
記憶部152は、監視装置10にて実行される各種プログラムやそれに必要なデータを格納される。特に、記憶部152は、監視エリアに関するマップ情報160や、検知装置12が検出した人物ごとの行動(移動軌跡など)を管理する追跡情報162を記憶する。また、各検知装置12による測距データにて当該検知装置12を中心とした極座標系(方位及び距離)で表される位置を例えば監視エリアに共通の二次元座標系で表されるマップ上の座標に変換するための情報が格納される。
【0068】
マップ情報160は、監視エリア全体の領域を表す情報、監視エリア内に監視上の属性に応じて設定される各部分エリアの配置を表す情報、監視エリアの境界のうち監視対象物件の建物に接する部分及び建物出入口(以下、建物入口と呼ぶ)の位置を示す情報、及び監視エリアの境界のうち敷地外に接する部分及び敷地外から監視エリアへの入口(以下、敷地入口と呼ぶ)の位置を示す情報を含む。監視エリアに設定される部分エリアとして例えば、客人や配達員等のユーザ以外の人物が存在することが予定される入場エリアと、基本的にユーザ以外の人物の存在が予定されない常監視エリアとを設定することができる。具体的には入場エリアは敷地入口から建物入口までの経路(アプローチ)を含み、さらにその近傍領域を含み得る。
【0069】
監視処理部150は、マイクロプロセッサ等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて、追跡処理手段164、行動検出手段166及び判定処理手段168として機能する。
【0070】
追跡処理手段164は移動物体検出手段40にて生成される人検知データを検知装置12から順次入力される。当該人検知データに存在する人物IDについて記憶部152に追跡情報162が記録されていなければ、当該人物IDについての追跡情報162を新規作成する。一方、人検知データに存在する人物IDについて既に追跡情報162が記録されている場合は、当該追跡情報162を更新する。
【0071】
追跡処理手段164は人検知データにおける人物の位置(方位、距離)を上記マップ上の座標に変換する。当該座標は人物ID、検出時刻、リンク情報(リンクレベル及びタグID)等の他の情報と共に追跡情報162として記録される。
【0072】
行動検出手段166は追跡情報162に基づいて各種の判定対象行動(イベント)を検出する。本実施形態では判定対象行動として、入場イベント、退場イベント、滞留イベント、外周移動イベント、入館イベント、及び退館イベントが定義される。これら各イベントについては後述する。
【0073】
判定処理手段168は判定対象行動を検出した場合に、当該行動の種別に応じた判定処理を実行する。特に、人物が不審者か否かの異常判定を必要とする特定行動を検出したときは、当該人物のリンクレベルを参照してその人物が無線タグ16を帯同しているか、すなわちユーザか否かを識別し、侵入異常の判定を行う。特定行動の種別によって人物が不審者だった場合の危険度は異なるため、求められるセキュリティレベルも異なる。よって、それぞれの判定に必要とされるリンクレベルが基準レベル(基準確度)として設定される。なお、本発明における帯同判定手段はこの判定処理手段168により実現される。
【0074】
特定行動には、建物への侵入異常を検出するための入館行為と、敷地内(監視エリア)での不審行為を検出するための入場行為、滞留行為及び外周移動行為とがある。入館行為は他の特定行動に比べてセキュリティレベルが高い。ここで、入館行為の基準リンクレベルをLvh、他の特定行動の基準リンクレベルをLvmとし、また、リンク成立状態で設定されるリンクレベルの下限をLvlと表すと、Lvh>Lvm>Lvlである。例えば、図7の例ではLvh=3、Lvm=2、Lvl=1に設定される。
【0075】
また、判定処理手段168は特定行動の検出時点でのリンクレベルが基準に満たなければ一律に異常とするのではなく、当該時点では基準に若干満たなくてもそれまでの追跡中に十分な大きさのリンクレベルが得られていれば当該特定行動を許容する。これにより、人物や無線タグ16の検出誤差を吸収して安定した判定が実現され得る。
【0076】
以下、各イベントの検出条件、及び検出時の判定処理の内容について説明する。
【0077】
[入場イベント]
新たに検出された人物(新規人物ID)について、出現位置が敷地外との境界である場合を当該イベントとして検出する。
【0078】
図9は入場イベントの検出時の判定処理の概略のフロー図である。検出された人物に設定されているリンクレベルが、上述した入館行為以外の特定行動のついての基準リンクレベルLvm以上であれば(S200にて「Yes」の場合)、当該人物の入場行為を許容する(S202)。
【0079】
当該人物のリンクレベルがLvm未満である場合は、敷地入口からの入場か否か、つまり出現位置が敷地入口の位置に当たるかを判定する(S204)。敷地入口からの入場である場合は(S204にて「Yes」の場合)、客人や配達員等の訪問者である可能性があるため、当該人物IDに対して一時許可設定し、一定時間だけ入場エリア内への進入を許可する(S206)。この場合、判定処理手段168は当該人物について滞留タイマを起動し、当該一定時間を計時開始する。一方、敷地入口以外からの入場である場合は(S204にて「No」の場合)、不審者による侵入と判断して外周侵入異常を確定する(S208)。なお、追跡処理手段164は判定処理手段168による判定後も追跡処理を継続する。
【0080】
ちなみに、入場イベントの検出時には追跡情報162は新規作成された段階なので、上述した追跡中のリンクレベルを考慮した判定処理はなされない。
【0081】
[退場イベント]
追跡中の人物が監視エリアから消失し、その直前位置が敷地外との境界である場合を当該イベントとして検出する。
【0082】
当該イベントの発生時には追跡処理手段164は追跡を終了する。当該人物IDに関する162は削除することが可能であるが、本実施形態では、追跡中に異常判定された人物については少なくとも異常復旧時までその追跡情報162を保持する。
【0083】
[滞留イベント]
一時許可設定した追跡中の人物が一定時間を超えて入場エリアに存在している場合を当該イベントとして検出する。
【0084】
図10は滞留イベントの検出時及び後述の外周移動イベントの検出時の判定処理の概略のフロー図である。判定処理手段168は当該イベント検出時の当該人物のリンクレベルがLvl以上であり(S220にて「Yes」の場合)、かつ追跡中にリンクレベルがLvm以上となる状態が存在した場合は(S222にて「Yes」の場合)入場許可設定をする(S224)。一方、当該イベント検出時にリンクレベルがLvl未満である場合(S220にて「No」の場合)や、現時点及び過去のいずれにおいてもリンクレベルが基準レベルLvmを満たしたことがない場合は(S222にて「No」の場合)、外周侵入異常を確定する(S226)。
【0085】
すなわち、一時許可設定した人物については一定時間を超えて滞留している場合は、ピッキングや潜伏等の不正目的を有する者である可能性があるため、基本的に不審者として認識し外周侵入異常とする(S226)。一方、イベント検出時点にて基準レベルLvmを満たしていなくても、過去に満たしていたことがある場合は、検知装置12の検出誤差でリンクレベルがLvm未満となっている可能性がある。そこで検知装置12の検出誤差による誤報を防ぐため、現時点で必要なリンクレベルについての基準レベルをLvlに緩和し、現時点で当該緩和基準レベルLvlを満たし、かつ現時点又は過去に滞留についての本来の基準レベルLvmを満たしていれば入場許可設定とし滞留を許容する(S224)。但し、過去にLvm以上のタイミングがあっても現時点でリンクレベルが緩和基準レベルLvl未満である場合までは許容しない(S220にて「No」の場合)。
【0086】
なお、上述の判定ではリンクレベルの履歴を参照したが、当該履歴を参照することなく滞留イベントの検出時点で基準レベルLvmを満たすか否かによって判定してもよい。
【0087】
[外周移動イベント]
追跡中の人物が入場エリアから常監視エリアへ移動した場合を当該イベントとして検出する。
【0088】
一時許可設定した人物については、空き巣や潜伏等の不正目的を有する者も含まれ得るので、常監視エリアへの移動は基本的に不審者として認識し外周侵入異常とする(S226)。一方、イベント検出時点又は過去に基準レベルLvmであった場合は、検知装置12の検出誤差による誤報を防ぐため、入場許可設定とし常監視エリアへの移動を許容する(S224)。但し、過去にLvm以上のタイミングがあっても現時点でのリンクレベルが基準レベルLvl未満である場合までは許容しない(S220にて「No」の場合)。
【0089】
なお、外周移動イベントについても、リンクレベルの履歴を参照することなく当該イベントの検出時点で基準レベルLvmを満たすか否かによって判定してもよい。
【0090】
[入館イベント]
追跡中の人物が監視エリアから消失し、その直前位置が建物エリアとの境界である場合を当該イベントとして検出する。
【0091】
図11は入館イベントの検出時の判定処理の概略のフロー図である。判定処理手段168は当該イベント検出時の当該人物のリンクレベルが入場許可設定の基準レベルLvm以上であり(S240にて「Yes」の場合)、かつ追跡中にリンクレベルが入館行為の基準レベルLvh以上となる状態が存在した場合は(S242にて「Yes」の場合)入館許可設定をする(S244)。一方、当該イベント検出時にリンクレベルが緩和基準レベルLvm未満である場合(S240にて「No」の場合)や、現時点及び過去のいずれにおいてもリンクレベルが基準レベルLvhを満たしたことがない場合は(S242にて「No」の場合)、建物侵入異常を確定する(S246)。
【0092】
セキュリティレベルが高い入館行為については、確実に無線タグ16を所持しているとみなせる人物以外には許容しないことを原則とし、既に述べたように他の特定行為より高い基準レベルLvhを設定している。しかし、検知装置12の検出誤差による誤報を防ぐため、現時点で必要なリンクレベルについての基準レベルを入場許可設定の基準レベルLvmに緩和し、現時点で当該緩和基準レベルLvmを満たし、かつ現時点又は過去に入館についての本来の基準レベルLvhを満たしていれば入館を許容する(S244)。但し、過去にLvh以上のタイミングがあっても現時点でリンクレベルが緩和基準レベルLvm未満である、つまり入場が許可されないレベルの者までは入館を許容しない(S240にて「No」の場合)。
【0093】
なお、上述の判定ではリンクレベルの履歴を参照したが、当該履歴を参照することなく入館イベントの検出時点で基準レベルLvhを満たすか否かによって判定してもよい。
【0094】
上述の実施形態では、無線タグ16はリーダ部22からの質問信号を受けて応答信号を発するものとしたが、無線タグ16は一定周期或いは振動検知時に自発的に発信するものとしてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では検知装置12が人物検知、タグ検知、リンク処理及びリンクレベル判定を担い、監視装置10が人物追跡、イベント検出及びイベント判定を担う構成としたが、それら処理分担は上記実施形態に示すものに限定されない。
【0096】
以上、実施形態により説明した本発明では、監視エリアにて検出した人物と無線タグ16との位置を照合して当該人物と無線タグ16とを対応付けする。これにより、監視エリア内のどの人物がどの無線タグ16を所持しているかが的確に把握される。さらに、本発明では不審者判定を単に人物と無線タグ16との間の対応付けの有無で行うのではなく、人物が無線タグ16を所持している確からしさを考慮して行う。一般にRFIDタグの位置検出は壁や植栽など無線電波を反射する物体の有無など周辺環境の影響を受けて、ばらつきが大きくなるが、本発明では確からしさを表すリンクレベルを考慮することで、より好適な判定が可能となる。
【0097】
また、人物が異常判定とすべき特定行動をとった場合に、リンクレベルを用いて不審者か否かを判定する。その際、特定行動の種別に応じて判定基準のリンクレベルを設定することで、特定行動ごとに要求されるセキュリティレベルに応じた不審者判定が可能となる。
【符号の説明】
【0098】
2 不審者監視システム、4 通信網、6 警備センタ、10 監視装置、12 検知装置、14 操作表示器、16 無線タグ、20 センサ部、22 リーダ部、24 カメラ、26 検知処理部、28,152 記憶部、30 報知部、32,154 LAN通信部、40 移動物体検出手段、42 タグ検出手段、44 リンク処理手段、46 確度判定手段、150 監視処理部、156 通報部、160 マップ情報、162 追跡情報、164 追跡処理手段、166 行動検出手段、168 判定処理手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体が識別無線機を帯同しているか否かを監視する移動物体監視システムであって、
監視エリアにおける移動物体の位置情報を検出する物体検出手段と、
前記識別無線機が発した無線信号を受信して、当該識別無線機の位置情報を検出する無線機検出手段と、
前記移動物体の位置情報と前記識別無線機の位置情報とを照合して前記移動物体に対応する前記識別無線機を求める対応判定手段と、
前記移動物体と前記識別無線機との対応関係の持続性に基づいて、当該移動物体が当該識別無線機を帯同している確度を判定する確度判定手段と、
前記確度を所定の閾値と比較することにより前記移動物体が前記識別無線機を帯同しているか否か判定する帯同判定手段と、
を有することを特徴とする移動物体監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動物体監視システムにおいて、
前記確度判定手段は、前記移動物体と前記識別無線機とが対応関係にある状態の継続時間に基づいて前記持続性を判定し、当該継続時間が長いほど前記確度を高く定めること、を特徴とする移動物体監視システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動物体監視システムにおいて、
前記確度判定手段は、前記移動物体と前記識別無線機とが対応関係にある状態での当該移動物体の位置情報の変化に基づいて前記持続性を判定し、当該変化が大きいほど前記確度を高く定めること、を特徴とする移動物体監視システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の移動物体監視システムにおいて、
前記確度判定手段は、さらに、前記対応判定手段での前記移動物体の位置情報と前記識別無線機の位置情報との一致度が高いほど前記確度を高く定めること、を特徴とする移動物体監視システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の移動物体監視システムにおいて、
前記確度判定手段は、さらに、受信した前記無線信号に基づいて算出される前記識別無線機の位置情報の検出精度が高いほど前記確度を高く定めること、を特徴とする移動物体監視システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の移動物体監視システムにおいて、さらに、
前記移動物体に関して予め定められた特定行動を、前記移動物体の位置情報の履歴に基づいて検出する行動検出手段を有し、
前記帯同判定手段は、前記移動物体による前記特定行動が検出された場合に、当該移動物体に関する前記確度が当該特定行動に対して設定された基準確度未満であれば当該移動物体を前記識別無線機を帯同していない不審物体として判定すること、を特徴とする移動物体監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−58167(P2013−58167A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197516(P2011−197516)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】