説明

移動用カート

【課題】搭乗者に快適な外気を供給することができ、且つ雨や雪などが車内に侵入することを効果的に防止することのできる移動用カートを提供する。
【解決手段】座席16と操舵機構17とを有する搭乗設備4と、搭乗設備4の上方を覆う屋根パネル5と、下板24、及び下板24の上端部分且つ前方に空隙を介して重ねられた重複部位を有し下板24の上方に配設された上板23を備え、下板24の下端から上23板の上端に向かって後方に傾斜した状態で搭乗設備4の前方を覆うフロントパネル6とを具備する移動用カート1とする。上板23と下板24との間に空隙が設けられていることによって、フロントパネル6に当たる風を効果的に車内に導入することができる。また、上板23は下板24の上端部の前方に重ねられる構成であるため、上板23に投下した雨粒が下板24の上端部を超えて、空隙から車内に侵入することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動用カートに関するものであり、特に、レジャー施設等の特定施設内で人や荷物を搬送するために用いられる移動用カートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、公道とは異なる限られた特定施設では、人や荷物の搬送方法のひとつとして、移動用カート(以下、単に「カート」という)が用いられている。ここで、特定施設としては、ゴルフ場やテーマパーク等のレジャー施設、ショッピングモールやアウトレットモール等の大規模商業施設、工場、病院、学校、ホテル、空港、及び港湾が例示できる。また、ここでいうカートとは、これらの特定施設内において、客や職員が移動するため、もしくは荷物を搬送するための車輌であり、公道を走行する乗用車(以下、単に「乗用車」という)とは異なる、簡易な構造を持った車輌を示す。
【0003】
上記背景技術は、一般的になされている事項であり、本願出願人は、出願時において、この背景技術が記載された文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなカートにおいては、屋根によって、搭乗者の上方が覆われており、さらにフロントパネルによって視界の前方も覆われていることが一般的である。このため、閉塞感が強く、風が穏やかで天気が良好な日であっても、搭乗者が快適な外気を体に感じることが困難であった。さらに、気温が高い日にあっては、外気が搭乗者に当たらないことによって、搭乗者が耐え難い暑さを感じることもあり、カートの居住快適性を著しく低下させる要因となっていた。そこで、フロントパネルにスリットや開口部等を設け、移動中にフロントパネルに当たる風を開口部等より車内に取り込み、暑い日におけるカートの居住快適性を向上させることなどが行われていた。
【0005】
しかし、上述した方法においては、移動中に雨が降ってきた場合や、少雨ゆえ移動を決行したいような場合に、フロントパネルの開口部等より車内に雨が侵入することを防ぐことができず、搭乗者や搭乗設備を濡らしてしまうという問題があった。これにより、カートの居住快適性が極めて低下するばかりではなく、座席や操舵機構などの寿命を著しく劣化させるため、好適ではない。
【0006】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、搭乗者に快適な外気を供給することができ、且つ雨や雪などが車内に侵入することを効果的に防止することのできる移動用カートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「座席と操舵機構とを有する搭乗設備と、
該搭乗設備の上方を覆う屋根部材と、
下板、及び該下板の上端部分に空隙を介して正面視にて重ねられた重複部位を有し前記下板の上方に配設された上板を備え、前記下板の下端から前記上板の上端に向かって後方に傾斜した状態で前記搭乗設備の前方を覆うフロントパネルと
を具備することを特徴とする移動用カート」
である。
【0008】
ここで、「操舵機構」とは、移動カートの進行方向を搭乗者が操作するための機構を示し、ステアリングなどが例示できる。
【0009】
上記構成の移動用カートでは、搭乗設備の前方を覆うフロントパネルは、空隙を介して重ねられた重複部位を有する構成であるため、移動中にカートのフロントパネルが受ける風は、空隙を通って車内に導入される。さらに、フロントパネルは、下板の下端から上板の下端に向かって後方に傾斜している状態のため、フロントパネルが受ける風は、この傾斜によって、下板の下端から上板の上端へと斜め後方に案内される。従って、前述の風は上板と下板との重複部位に設けられた空隙へと円滑に案内され、さらに、車内の前方から斜め後方へと勢い良く吹き抜け、車内の通気性を良くし、居住快適性を向上させる。
【0010】
また、上板は、下板の上端部分に空隙を介して正面視にて重ねられる構成である。よって、雨中を走行する場合において、車体の前方からフロントパネルへと降りかかる雨粒は、重複部位の上板が所謂傘のように働くことで、下板の上端部分より車内へと侵入し難くなる。なお、上板と下板とが、さらに平面視においても重ねられた場合には、上板に投下し、重力によって下板へと案内された雨粒であっても、重複部位の上板によって車内へと侵入することが阻害され、そのまま下板の下端部へと流れ落ちていくため好適である。
【0011】
従って、上記の構成によれば、搭乗者に快適な外気を効果的に供給することができると共に、雨や雪などが車内に侵入することを防止することができるため、居住快適性に優れた移動用カートが提供できる。さらに、雨を車内に侵入させないことにより、座席や操舵機構などの搭乗設備の劣化を防止することもでき、経済性に優れた移動用カートを提供できる。
【0012】
上述した手段において、
「前記上板と前記下板とは、開閉が可能であることを特徴とする移動用カート」
としてもよい。
【0013】
ところで、冬期で特に気温が低いような場合は、車内に外気を取り入れると、逆に居住快適性を低下させることが考えられる。また、突然雨が強く降ってきた場合などは、大量の水滴がフロントパネルに当たり、フロントパネルに設けられている空隙を通って車内に導入される風と一緒に、この水滴が車内へと侵入してしまうことも考えられる。
【0014】
そこで、上記構成の移動用カートでは、上板と下板とを開閉が可能な構成とする。従って、車内に外気を取り入れる必要のない場合においては、上板と下板との重複部位を空隙を介さずに重ねあわせる構成とすることができる為、車内に風または水分(雨または雪等)が侵入することを確実に防止することができる。
【0015】
上述した手段において、
「前記重複部位は、前記操舵機構の頂上部より下側の位置に形成されていることを特徴とする移動用カート」
としてもよい。
【0016】
上板と下板とが重なっている重複部位においては、重複していない部分のフロントパネルと比べて光の屈折率が変化するため、搭乗者の視界に違和感を生じさせ、運転の邪魔になることが想定される。そこで、上記構成の移動用カートでは、上板と下板との重複部位を、操舵機構の頂上部より下側の位置に形成する構成とする。ここで、搭乗者の頭部すなわち視点は、不可避的に操舵機構の上方に存在するため、上記構成を適用することにより、搭乗者の視界の外に重複部位を配置でき、搭乗者に対して良好な視界を確保することができる。
【0017】
さらに、搭乗者の頭部より下側に重複部位を設ける構成のため、空隙を通って車内に案内された風は、搭乗者の顔面付近を通って車内の後部へと吹き抜ける。これにより、搭乗者は、より明確に外気を感じることができ、より効果的に車内の居住快適性を向上させることができる。
【0018】
上記課題を解決するために本発明の採った別の主要な手段は、
「座席と操舵機構とを有する搭乗設備と、
該搭乗設備の上方を覆う屋根部材と、
前記搭乗設備の前方に位置し、下端側から上端側に向かって後方に傾斜した状態で配設される前方傾斜部材と、
該前方傾斜部材の上端部分に、正面視にて前方で重ねられた重複部位を有し、前記前方傾斜部材と前記屋根部材との間に配設され、前記前方傾斜部材に対して開閉が可能であるパネル部材と
を具備することを特徴とする移動用カート」
である。
【0019】
ここで、「前方傾斜部材」とは、搭乗設備の前方に位置し、下端側から上端側に向かって後方に傾斜している部材であればいかなるものでもあっても良い。例えば、フロントパネルの下部を構成する部材であっても良いし、外装部品(所謂フロントカウル)であっても良いし、オプションで後付けされる装飾部品であっても良い。
【0020】
上記の構成によれば、パネル部材と前方傾斜部材とが重複していることにより、雨粒は車内へと侵入し難い。一方、前方傾斜部材は後方へと傾斜しているため、この傾斜に案内されて、風は効果的に車内へと導入される。従って、雨粒を侵入させ難く且つ風は車内へと効果的に導入できる。また、雨量の多い日や気温の低い日には、パネル部材を閉じることもできるため、より汎用性の高い移動用カートを提供できる。
【発明の効果】
【0021】
上述した通り、本発明に係る移動用カートによれば、搭乗者に快適な外気を供給することができ、且つ雨や雪などが車内に侵入することを効果的に防止することのできる移動用カートが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る移動用カート(以下、カートと称す)の実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。なお、本例では、カートとして、ゴルフ場で使用されるものを例示する。より詳細には、4人乗りで、少雨でも使用可能なように屋根を備え、ゴルフバッグを搭載するスペースとして荷台を備えるものを示すが、本発明に係るカートとは、このようなタイプに限定されるものではなく、他の種々の特定施設で使用される他のタイプのカートとして採用することが可能である。
【0023】
まず、本発明のカート1の構成について、図1に基づき説明をする。カート1は、主に、骨組みを構成する車体フレーム2と、車体フレーム2に取り付けられ、外観を構成する外装部品3と、車体フレーム2に取り付けられ、人が搭乗するための座席16及び操舵機構17を有する搭乗設備4と、搭乗設備4の上方を覆う屋根パネル5と、搭乗設備4の前方を覆うフロントパネル6とから構成される。なお、屋根パネル5が、本発明の屋根部材に該当する。
【0024】
より具体的には、車体フレーム2は、鋼材を枠状に溶接した溶接構造となっており、表面に錆止め剤や塗料が塗布されている。外装部品3は、フロントカウル8、運転席カウル9、リアカウル10、及びサイドカウル11等の種々の部材によって構成されている。また、リアカウル10の後部側には、荷台フレーム12、荷台屋根シート13、及び荷台側部シート14等から構成される荷台部材15が備えられており、搭乗者が荷物を搭載するための荷台を構成している。搭乗設備4は主に、座席16、操舵機構17、及び各種内装パーツから構成されている。搭乗設備4の前方を覆うフロントパネル6は、主に上板23と下板24とから構成されており、材質や色などは特に限定されるものではないが、例えば、搭乗者の視界を妨げない色(例えば無色透明)であると、より好ましい。なお、上板23が、本発明のパネル部材に該当する。
【0025】
より詳細なフロントパネル6の構成について、図2に基づき説明をする。図2は、フロントパネル6を側面から見た場合における断面模式図である。なお、図2乃至図4の中央部及び下部の波状部は、省略を示している。
【0026】
上板23は、上端部付近が、車体フレーム2に対して、ヒンジ25により回動可能に支持されている。ここで、ヒンジ25は、上板23を車体フレーム2に対して回動可能に支持すると共に、上板23の上端部と車体フレーム2とを干渉させないための距離を確保するスペーサーの役割を果たす部材であり、この構成に限定されるものではない。すなわち、T字金具など他の適宜の部材であっても良い。また、ヒンジ25を取り付ける位置は、上板23の頂上部であっても良いが、本実施形態のように、頂上部より多少下部寄りにすると、以下の効果があるため、より好ましい。すなわち、ヒンジ25を上板23に取り付ける際に、上板23の端部が割れてしまったり、若しくはヒンジ25の上部に位置する回動ピンなどのリンク機構と屋根パネル5とを干渉させず、屋根パネル5とフロントパネル6とを近接させて機密性の高い構造にて構成できる。
【0027】
上板23の下端部付近は、下板24の前方且つ上端部分に空隙Aを介して重ねられている。上板23と下板24とは、ステー32とボルト33とを用いることで互いに固定されている。すなわち、ステー32及びボルト33が、本発明の、「上板23と下板24とは、開閉が可能である」構成を実現するものである。ステー31は、金属や樹脂など適宜の材質で構成される板状の支持部材であり、長尺方向両端部の一端を、固定ネジ34によって、下板24の上端部付近に固定されている。そして、ステー32には、ボルト33をはめ込むことが可能な穴35が、数箇所に穿設されている。さらに、下板24の上端部には、返し部材31が備えられ、空隙Aより導入される風に混じって雨水が車内へと侵入することを防止する構成となっている。なお、本実施形態では、返し部材31として、断面が略L字のゴム部材を適用する構成としたが、雨水を遮断する形状であれば、いかなるものであっても良い。ただし、本実施形態のように、弾性力を有するゴムなどの材質を適用すると、上板23と下板24との間の空隙Aを閉じ合わせた際の緩衝材として機能するため、より好適である。
【0028】
下板24はネジ部材29など適宜の部材によって、車体フレーム2やフロントカウル8などに対して固定されている。なお、空隙Aを構成している部位、すなわち上板23及び下板24が重複している部位は、操舵機構17の頂上部より下側であり、そして、フロントパネル6は、下板24の下端から上板23の上端に向かって、全体として後方に傾斜した状態で搭乗設備4の上方を覆っている。
【0029】
続いて、本実施形態におけるカート1の使用方法について説明する。まず、フロントパネル6に空隙Aを形成し、外気を車内に導入させる方法について説明する。上板23を、ヒンジ25を支点に回動させ、下端部を下板24の上端部に対して開放させ、任意の空隙Aを形成させる。
【0030】
そして、下板24の側面側(図2矢印Bの方向を正面とする)からボルト33をはめ込み、図略のナットと螺合させることによって空隙Aを設けることができるものである。この構成によれば、上板23と下板24との開度を調節するために、幾種類ものスペーサー28を用意する必要も無く、比較的簡単な構成を用いて開度を調節することができる。
【0031】
なお、悪天候時や気温が特に低いような場合には、図2に示す穴35のうち、もっとも下板24に近い位置にある穴35に対してボルト33を嵌合させることで、上板23と下板24とを接触させ(すなわち空隙Aを設けないよう構成させ)ることも可能である。これにより、フロントパネル6に当たる風もしくは雨水が、車内に侵入することを確実に防止できる。
【0032】
以上のように、上記のカート1によれば、フロントパネル6を構成する上板23及び下板24は、空隙Aを介して重ねられた重複部位を有する構成であるため、この空隙Aを介して外気を車内へと導入することが容易となり、カート1の居住快適性を著しく向上させる。また、フロントパネル6は、下端から上端に向かって、全体として後方に傾斜した状態で搭乗設備4の前方を覆う構成である。従って、移動中にフロントパネル6に当たる風は、この傾斜に沿って下板24の下端から上板23の上端に向かって流れ、効果的に空隙Aへと案内される。さらに、傾斜していることによって、空隙Aより車内へと導入された風は、車内の前方から後方へと効率的に吹き抜け、前部座席20に着席する搭乗者だけではなく、後部座席21に着席する搭乗者にも快適な外気を供給することが可能となる。
【0033】
また、上板23の下端部分は、下板24の上端部分の前方に重ねられる構成である。これにより、比較的雨足が強い日の走行であっても、上板23の下端部付近が下板24の上端部に対して傘のように働くことから、空隙Aに侵入する雨水を効果的に遮断することができる。従って、搭乗者や車内設備(外装部品3や各種内装パーツ等)を雨水に晒す恐れがないため、より快適な乗り心地を追求できると共に車内設備の劣化を低減することも可能となる。
【0034】
さらに、上記構成によれば、天候の変化や搭乗者の体調などに合わせて、上板23と下板24との重複部位を空隙Aを介さずに重ね合わせて固定し、車内に侵入する寒気や水分を確実に遮断することも可能となっている。従って、カート1の居住快適性をより一層向上させ、且つカート1の汎用性を高めることができる。
【0035】
また、上記構成において、上板23と下板24との重複部位は、操舵機構17の頂上部より下側の位置に形成され、搭乗者の視界を阻害しない構成となっている。従って、搭乗者に対して良好な視界を提供し、より快適で安全なカート1を提供できる。さらに、前述の重複部位は搭乗者の頭部より下側であるため、空隙Aより導入された外気は、搭乗者の顔面付近を通過して車内の後部側へと勢い良く吹き抜ける。これにより、搭乗者の体感温度を効果的に涼しく低下させることができ、より快適である。
【0036】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0037】
上記の例では、フロントカウル8と下板24とは別体である構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、フロントカウル8と下板24とを一体的に形成しても良い。また、下板24に換えて、車体フレーム2の一部やフロントカウル8、または任意の装飾パーツなどを、下端側から上端側へと後方に傾斜した状態で搭乗設備4の前方へと取付ける構成としてもよい。この場合においては、車体フレーム2等が、本発明の前方傾斜部材に該当する。
【0038】
上記の例では、上板23は、下板24に対して開閉可能であるものを例示したが、上板23と下板24との間に空隙Aを設けた開放状態で固定され、閉じ合わせることができない構成としてもよい。この構成によれば、ヒンジ25のような開閉動作を実現させるための種々の部品を使用する必要が無いため、比較的壊れにくい丈夫なフロントパネル6を実現することができる。
【0039】
また、上記構成において、下板24は不透明な黒色などの塗料で塗装され、上板24の色とのコントラストが顕著である構成としてもよい。これにより、空隙Aを設けるために不可避的に発生した、上板23と下板24との重複部位によるフロントパネル6の不連続部位が、あたかも意匠性を考慮したデザインの一環であるかのような連続感を見る者に与え、不連続部位によって生じる恐れのある見た目の違和感を緩和する効果がある。また、搭乗者の足元や、前部座席20の前側に載置した荷物などを、カート1を外から見る者に対して隠蔽する効果もあり、使用している状態においてもすっきりとしたより意匠性の高いカート1として見せる効果もある。
【0040】
上記の例では、下板24は不透明な黒色などの塗装が施される構成としたが、企業や商品などの公告を貼着、塗装、描画など適宜行う構成としても良い。また、下板24の全面を塗装する構成としたが、一部のみを塗装する構成としても良いし、塗装を施さない構成としても良く、使用者や設計者の任意によって適宜選択可能である。
【0041】
また、上記の例では、上板23と下板24とを開閉する構成として、上板23が回動し、車体フレーム2に固定された下板24に対して空隙Aを形成する構成としたが、下板24を回動し、車体フレーム2に固定された上板23に対して空隙Aを形成する構成としてもよい。さらに、上板23及び下板24の双方を回動させて空隙Aを形成する構成としても良い。
【0042】
また、上記の例では、ヒンジ25は車体フレーム2に対して取り付けられる構成としたが、上板23を回動させることができる位置であればどのような場所であっても良く、ルーフフレーム14や屋根パネル5に対して取り付けても良い。
【0043】
また、別の変形例として、図3に示すように、長尺な穴36を有するステー37と、つまみネジ38とを組み合わせる構成も例示できる。ステー37は、一端部を固定ネジ39によって上板23に固定されている。つまみネジ38は、ボルトの頭部に比較的大径のつまみ部が備えられているものであり、工具等を使わずに緊締することができるものである。すなわち、上板23と下板24との開度を調整する場合は、つまみネジ38を緩め、穴36内をスライドさせ、任意の位置にてつまみを締めて位置を固定し、空隙Aの開度を調節する。なお、つまみネジ38は、作業者が工具を使用せずに手で螺合できるものであるが、この構成に特定されるものではなく、ドライバーなどの工具を用いて締め具合を調整するものであってもよい。ただし、本例の構成によれば、工具を用いることなく調整ができるため作業者にとって便利であるため、好ましい。さらに、固定ネジ39は、下板24に対して螺合されるものであってもよいし、ネジを使用せずに接着剤や溶接等によって固定されるものであっても良い。
【0044】
また、図4に示すように、上板63、保持部材60、及び支持機構70を用いた構成も例示できる。図2に示す上板23においては、比較的薄手のパネル状部材の左右端部側(図2矢印B側を正面視とする)がL型に夫々折り曲がっているものを例示したが、本例においては、前述のような加工が施されてない(すなわち左右端部側が曲がっていない)パネル状部材から構成される上板63を適用可能である。上板63の上端部は、支持機構70によって車体フレーム2支持されている。支持機構70は、上板63の上端部をスライド可能な状態で支持できるものであれば、どのようなものであっても良いが、例えば一点鎖線円内に示す構成が例示できる。すなわち、上板63の上端部に、弾性体71を取り付け、この弾性体71の取り付けられた部位を、公知のボールプランジャBを用いて挟み込み、支持する構成である。このように構成することで、上板63は矢印Xの方向にスライド移動することが可能となり、且つボールプランジャBによって弾性体71が押され、ボールの形に沿って弾性変形することで、上板63とボールプランジャBとの間に隙間ができ難く、水などが侵入い辛い。保持部材60は、例えばゴムのような弾性のある素材を用いて構成されるとより好ましく、下板24の上端部付近に備えられ、上板63の下端部を挿入できるよう構成されている。より具体的には、上板63と接触する面に、上板23の下端部の形状に合せた凹部61a、61bなどが形成されており、上板63を矢印Yの方向にスライドさせ、凹部61a、61bのいずれかに上板23の下端部を嵌合させることで、上板63と下板24との開度を調節可能とする構成である。なお、図4では61a及び62bの2つの凹部があるものを例示したが、要するに上板63と下板24との開度を調節できるものであれば如何なるものであっても良く、2つ以上の凹部を備えるものであっても良い。
【0045】
ところで、上板23と下板24との重複部位より車内へと導入された風の大部分が、搭乗設備4の上方へと吹き抜けてしまい、搭乗者が快適な外気を十分に感じ得ない場合も考えられる。このような場合には、図4に示すように、フロントパネル6に対して、導風部材53を取り付け、搭乗者の上半身へと効果的に風を集めるように構成しても良い。導風部材53の構成としては、例えば図4に示すように、上板23に断面略L字型の部材を取り付けることで構成しても良いし、下板24に対してフィンや堰状部材など、適宜の導風部材53を取り付ける構成としても良い。また、導風部材53に調整機構を追加したり、または導風部材53の一部を可動部材で構成することにより、使用者が風を取り入れる向きや量などを適宜調整可能な構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の移動用カートを示す斜視図である。
【図2】フロントパネルを側面から見た場合における説明図である。
【図3】フロントパネルの開放手段における他の例を示した説明図である。
【図4】フロントパネルの開放手段における別の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 カート(移動用カート)
2 車体フレーム
4 搭乗設備
5 屋根パネル(屋根部材)
6 フロントパネル
16 座席
17 操舵機構
23 上板
24 下板
37 ステー
A 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席と操舵機構とを有する搭乗設備と、
該搭乗設備の上方を覆う屋根部材と、
下板、及び該下板の上端部分に空隙を介して正面視にて重ねられた重複部位を有し前記下板の上方に配設された上板を備え、前記下板の下端から前記上板の上端に向かって後方に傾斜した状態で前記搭乗設備の前方を覆うフロントパネルと
を具備することを特徴とする移動用カート。
【請求項2】
前記上板と前記下板とは、開閉が可能であること
を特徴とする請求項1に記載の移動用カート。
【請求項3】
前記重複部位は、前記操舵機構の頂上部より下側の位置に形成されていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動用カート。
【請求項4】
座席と操舵機構とを有する搭乗設備と、
該搭乗設備の上方を覆う屋根部材と、
前記搭乗設備の前方に位置し、下端側から上端側に向かって後方に傾斜した状態で配設される前方傾斜部材と、
該前方傾斜部材の上端部分に、正面視にて前方で重ねられた重複部位を有し、前記前方傾斜部材と前記屋根部材との間に配設され、前記前方傾斜部材に対して開閉が可能であるパネル部材と
を具備することを特徴とする移動用カート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−199225(P2006−199225A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15400(P2005−15400)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(500316630)株式会社ゼロスポーツ (4)
【Fターム(参考)】