説明

移動端末、システム及び方法

【課題】自律航法機能を有する移動端末における進行方向の推定誤差の蓄積を解消するため、地図情報を利用することにより進行方向を補正する。
【解決手段】目的地までのルート上に移動端末の現在位置をマップマッチングする地図アプリケーション部と、当該移動端末の動きを検知し、歩数及び進行方向を示すセンサ情報の測定部と、当該移動端末の現在位置を決定する位置算出部と、ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断することによって直進歩行状態にあると推定した場合、前記ルート上の前記直進歩行状態にある直進部分の方位により前記ユーザの進行方向を補正する進行方向補正部と、前記補正された進行方向と、前記直進歩行状態の開始時点及び開始地点とに基づき、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算し、該再計算された現在位置により当該移動端末の現在位置を補正する現在位置補正部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律航法機能を有する移動端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動端末における基地局測位の高精度化や、WLAN(Wireless Local Area Network)測位などの新たな測位技術の出現により、インドア環境における位置情報サービスの発展が期待されている。
【0003】
新たなインドア測位技術の1つとして、加速度センサや地磁気センサなどの各種センサ情報を利用した自律航法技術が注目されている。しかしながら、センサのみによる測位は誤差が蓄積していくという問題があり、精度向上のためにはセンサ以外の情報を利用して定期的に位置補正を行うことが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−41143号公報
【特許文献2】特開2000−97722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の移動端末向けの自律航法では、加速度センサや地磁気センサ、ジャイロセンサなどを利用して初期位置からの移動量を推定して位置座標を算出することによって、移動端末を測位していた。
【0006】
しかしながら、曲がり角を曲がる際の回転角度の推定に誤差が生じた場合、この誤差はそのまま進行方向の誤差につながる。これを解消すべく適宜マップマッチングを行ったとしても、現在位置が一旦はルート上などの適切な位置に移るが、一般に移動端末自身が認識している自らの進行方向は誤差を含んだまま変更されない。このため、さらにユーザが歩行すると、移動端末は再び誤った現在位置を認識し、さらなるマップマッチングが行われることになる。この結果、移動経路が鋸状に記録され、歩行距離と実際の移動量とが乖離することになり、歩行距離の誤差拡大につながるという問題があった。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明の課題は、自律航法機能を有する移動端末における進行方向の推定誤差の蓄積を解消するため、地図情報を利用することにより進行方向を補正する移動端末、システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、自律航法機能を有する移動端末であって、地図情報における当該移動端末のユーザの出発地から目的地までのルート上に当該移動端末の現在位置をマップマッチングする地図アプリケーション部と、当該移動端末の動きを検知し、前記ユーザの歩数及び進行方向を示すセンサ情報を提供する測定部と、前記センサ情報の前記ユーザの歩数及び進行方向に基づき、当該移動端末の現在位置を決定する位置算出部と、前記センサ情報の前記ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断することによって前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定し、前記ユーザが直進歩行状態にあると推定した場合、前記ルート上の前記直進歩行状態にある直進部分の方位により前記ユーザの進行方向を補正する進行方向補正部と、前記補正された進行方向と、前記直進歩行状態の開始時点及び開始地点とに基づき、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算し、該再計算された現在位置により当該移動端末の現在位置を補正する現在位置補正部とを有する移動端末に関する。
【0009】
本発明の他の態様は、自律航法機能を有する移動端末と、前記移動端末と通信接続されるサーバとを有するシステムであって、前記サーバは、地図情報における前記移動端末のユーザの出発地から目的地までのルート上に前記移動端末の現在位置をマップマッチングし、前記マップマッチングした前記ルート上の位置を前記移動端末に通知し、前記移動端末は、当該移動端末の動きを検知し、前記ユーザの歩数及び進行方向を示すセンサ情報を提供する測定部と、前記センサ情報の前記ユーザの歩数及び進行方向に基づき、当該移動端末の現在位置を決定する位置算出部と、前記センサ情報の前記ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断することによって前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定し、前記ユーザが直進歩行状態にあると推定した場合、前記サーバから通知された前記ルート上の前記直進歩行状態にある直進部分の方位により前記ユーザの進行方向を補正する進行方向補正部と、前記補正された進行方向と、前記直進歩行状態の開始時点及び開始地点とに基づき、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算し、該再計算された現在位置により当該移動端末の現在位置を補正する現在位置補正部とを有するシステムに関する。
【0010】
本発明のさらなる他の態様は、自律航法機能を有する移動端末で使用される方法であって、地図情報における当該移動端末のユーザの出発地から目的地までのルート上に当該移動端末の現在位置をマップマッチングするステップと、当該移動端末の動きを検知し、前記ユーザの歩数及び進行方向を示すセンサ情報を提供するステップと、前記センサ情報の前記ユーザの歩数及び進行方向に基づき、当該移動端末の現在位置を決定するステップと、前記センサ情報の前記ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断することによって前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定し、前記ユーザが直進歩行状態にあると推定した場合、前記ルート上の前記直進歩行状態にある直進部分の方位により前記ユーザの進行方向を補正するステップと、前記補正された進行方向と、前記直進歩行状態の開始時点及び開始地点とに基づき、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算し、該再計算された現在位置により当該移動端末の現在位置を補正するステップとを有する方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、自律航法機能を有する移動端末における進行方向の推定誤差の蓄積を解消するため、地図情報を利用することにより進行方向を補正する移動端末、システム及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施例による移動端末の一例となる機能構成を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施例による移動端末における一例となる自律航法処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の一実施例による進行方向補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の各実施例を説明する。
【0014】
本発明の各実施例による移動端末は、センサ情報により直進歩行状態を推定し、マップ上の設定ルートの方位によってセンサ情報から推定される進行方向を補正すると共に、方位補正を行った場合には、直進歩行の開始点に遡り、直進歩行開始点からの移動量を再計算し、現在位置の補正をする。
【0015】
まず、図1を参照して、本発明の一実施例による移動端末の構成を説明する。
【0016】
本実施例による移動端末は、典型的には、携帯電話端末やスマートフォンなどの携帯情報端末であり、端末内に搭載されたアプリケーションを利用して、又はネットワーク(図示しない)を介し通信可能な外部の装置からの情報を利用して移動端末の位置を取得可能な携帯情報端末である。移動端末は、典型的には、補助記憶装置、メモリ装置、CPU、通信装置、表示装置、入力装置、測定装置などの各種ハードウェアリソースの1以上から構成される。補助記憶装置は、ハードディスクやフラッシュメモリなどから構成され、後述される各種処理を実現するプログラムやデータを格納する。メモリ装置は、RAM(Random Access Memory)などから構成され、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置からプログラムを読み出して格納する。CPUは、情報を処理するプロセッサとして機能し、メモリ装置に格納されたプログラムに従って後述される各種機能を実現する。通信装置は、ネットワークを介しサーバなどの他の装置と有線及び/又は無線接続するための各種通信回路から構成される。本実施例による通信装置はさらに、GPS(Global Positioning System)機能を実現するための受信回路を有する。表示装置は、ディスプレイなどから構成され、ネットワークを介し受信したコンテンツやプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置は、典型的には、操作ボタン、キーボード、マウス等で構成され、移動端末のユーザが様々な操作命令を入力するのに用いられる。測定装置は、自律航法機能を実現するための移動端末の動きを測定するための加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサなどの各種センサから構成される。なお、本発明による移動端末は、上述したハードウェア構成に限定されるものでなく、後述する各種機能を実現可能な回路等の他の何れか適切なハードウェア構成を有してもよい。
【0017】
図1は、本発明の一実施例による移動端末の一例となる機能構成を示す。図1において、移動端末100は、ユーザインタフェース部120と、地図アプリケーション部140と、自律航法測定部160と、自律航法演算部180とを有する。
【0018】
ユーザインタフェース部120は、入力装置を介しユーザが出発地と目的地を入力すると、入力された出発地と目的地とに関する位置情報を地図アプリケーション部140に提供する。典型的には、出発地は現在位置であり、GPS機能を用いて取得した移動端末100の現在位置に関する位置情報が地図アプリケーション部140に提供されてもよい。また、目的地は、ユーザにより入力された目的地の住所などであってもよいし、あるいは地図アプリケーション部140により表示された地図情報上の指定された地点、他のアプリケーションを介し指定された建物、施設、店舗などであってもよく、これら指定された位置から導出された位置情報が地図アプリケーション部140に提供されてもよい。
【0019】
地図アプリケーション部140は、ユーザインタフェース部120から出発地と目的地とに関する位置情報を受信すると、指定された出発地から目的地までのルートを設定すると共に、自律航法演算部180により算出された移動端末100の現在位置がルート上から乖離した場合、何れか適切なマップマッチング技術を用いて移動端末100の現在位置をルート上に補正する。
【0020】
図1に示されるように、地図アプリケーション部140は、地図表示部142とマップマッチング部144とを有する。
【0021】
地図表示部142は、ユーザインタフェース部120から提供された出発地と目的地との位置情報に基づき、出発地から目的地までのルートを設定し、設定したルートをマップマッチング部144に提供する。このルートの設定は、地図アプリケーション部140に格納されている地図情報を参照して、何れか適当なナビゲーションアルゴリズムを利用して出発地から目的地までのルートを決定することにより行われてもよい。典型的には、出発地から目的地までの最短ルートが選択されるが、これに限定されるものでなく、何れか適当な方法によりルートを設定するようにしてもよい。出発地から目的地までのルートが設定されると、地図表示部142は、設定されたルートをユーザに表示するための表示用地図データを生成する。なお、出発地から目的地まで複数のルートの候補が存在する場合、これら複数のルートの1つを表示用のルートとして設定して当該ルートに関する表示用地図データを生成してユーザインタフェース部120に提供すると共に、他のルートについては、表示用地図データは生成しないが候補ルートとしてマップマッチング部144に提供するようにしてもよい。
【0022】
マップマッチング部144は、何れか適切なマップマッチング技術を利用して、センサ情報に基づき自律航法演算部180により算出された移動端末100の現在位置を補正する。すなわち、マップマッチング部144は、地図表示部142から設定されたルートを受信すると、地図アプリケーション部140に格納されている地図情報を参照して、設定されたルートを確認する。その後、マップマッチング部144は、センサ情報に基づき自律航法演算部180により算出された移動端末100の現在位置を定期的に受信し、受信した現在位置が設定ルートから乖離しているか判定する。受信した現在位置が設定ルートから乖離している場合、マップマッチング部144は、何れか適切なマップマッチング技術を利用して、移動端末100の現在位置を設定されたルート上にマップすることによって現在位置を補正する。その後、マップマッチング部144は、補正された現在位置を自律航法演算部180に提供する。
【0023】
本実施例では、地図アプリケーション部140は移動端末100内に設けられたが、本発明はこれに限定されるものでない。他の実施例では、地図アプリケーション部140は、移動端末100が通信可能な外部のサーバに設けられてもよい。すなわち、ユーザインタフェース部120がユーザから入力された出発地と目的地とに関する位置情報をサーバに送信すると、サーバは上述した処理を実行して、移動端末100の設定ルートを決定し、移動端末100から定期的に送信される移動端末100により算出された現在位置を補正すると、補正後の現在位置を移動端末100に返すようにしてもよい。
【0024】
自律航法測定部160は、移動端末100の動きに関する各種データを測定し、測定したデータをセンサ情報として自律航法演算部180に提供する。図1に示されるように、自律航法測定部160は、歩数測定部162と、進行方向測定部164とを有する。
【0025】
歩数測定部162は、移動端末100を携帯するユーザの歩行をモニタし、ユーザが歩いた歩数を測定する。歩数測定部162は、典型的には、加速度センサにより実現可能であるが、これに限定されることなく他の何れか適切なユーザの歩数又は歩行距離を測定可能な装置により実現されてもよい。
【0026】
進行方向測定部164は、移動端末100を携帯するユーザの歩行をモニタし、ユーザが歩く進行方向を検知する。進行方向測定部164は、典型的には、地磁気センサやジャイロセンサにより実現可能であるが、これに限定されることなく他の何れか適切なユーザの進行方向を測定可能な装置により実現されてもよい。
【0027】
このようにして、自律航法測定部160は、歩数測定部162により測定されたユーザの歩数と進行方向測定部164により測定されたユーザの進行方向とをセンサ情報として自律航法演算部180に提供する。このセンサ情報は、自律航法演算部180などからの要求に応答して、ユーザが歩行を開始することに応答して、又は定期的など何れか適切なタイミングで自律航法演算部180に提供されるようにしてもよい。
【0028】
自律航法演算部180は、自律航法測定部160により測定された移動端末100のユーザの歩数及び進行方向などのセンサ情報を取得すると、このセンサ情報に基づき移動端末100の現在位置を算出し、算出した現在位置を地図アプリケーション部140に提供する。上述したように、算出した現在位置が設定ルートから乖離している場合、地図アプリケーション部140は、受信した自律航法演算部180により算出された現在位置を補正し、補正された現在位置を自律航法演算部180に返す。この補正された現在位置を受信すると、自律航法演算部180は、算出された現在位置を補正する。さらに、自律航法演算部180は、自律航法測定部160から提供される測定されたユーザの進行方向に基づき直進歩行状態を推定し、ユーザが直進歩行していると推定すると、マップマッチングにより補正された2地点の位置から導出される方位に基づき、自律航法演算部180に現在設定されている進行方向を補正する。このように進行方向を補正する場合、自律航法演算部180はさらに、直進歩行状態の開始地点に遡って補正後の進行方位と自律航法測定部160により提供された歩数とを用いて、現在位置を再計算する。
【0029】
図1に示されるように、自律航法演算部180は、位置算出部182と、進行方向補正部184と、現在位置補正部186とを有する。
【0030】
位置算出部182は、自律航法測定部160から提供されたセンサ情報に基づき自律航法中の移動端末100の移動量を算出し、現在設定されている基準地点にこの算出した移動量を加えることによって現在位置を決定し、決定した現在位置の緯度及び経度などの位置情報を地図アプリケーション部140に提供する。具体的には、位置算出部182は、センサ情報における測定されたユーザの歩数と進行方向とに基づき、測定された歩数に設定されているユーザの歩幅(典型的には、入力されたユーザの身長から1mを差し引いた値)を掛け合わせることによって歩行距離を導出し、導出した歩行距離と測定された進行方向とに基づき基準地点からの移動量を算出する。位置算出部182は、初期的にはこの基準地点として設定されたルートの出発点の緯度及び経度を設定し、ユーザの歩数から推定される歩行距離と進行方向の推移とに基づき基準地点からの移動距離及び移動方向を求める。位置算出部182は、現在位置補正部186により移動端末100の現在位置が補正される毎に補正後の位置を新たな基準地点として再設定し、再設定された基準地点からの移動量を算出する。さらに、位置算出部182は、進行方向補正部184から補正された進行方位を受信すると、受信した進行方位により現在設定されている進行方位を再設定し、以降の位置算出に利用する。
【0031】
進行方向補正部184は、自律航法測定部160から提供された移動端末100の進行方向をモニタし、進行方向がほぼ変化しない状態が続くと、ユーザが直進歩行状態にあると推定する。この直進歩行状態を検知すると、進行方向補正部184は、ユーザが設定されたルート上の直進部分を歩行していると判断し、地図アプリケーション部140の地図情報の当該直進部分の方位によって現在設定されている進行方位を補正する。進行方位を補正すると、進行方位補正部184は、補正された進行方位と直進歩行状態の開始地点及び開始時点とを位置算出部182と現在位置補正部186とに通知する。
【0032】
現在位置補正部186は、地図アプリケーション部140により現在位置の補正が行われる毎に、また進行方位補正部184により進行方位の補正が行われる毎に、移動端末100の現在位置を補正する。すなわち、地図アプリケーション部140により現在位置が補正され、マップマッチング後の位置が通知されると、現在位置補正部186は、位置算出部182により算出された移動端末100の現在位置を通知されたマップマッチング後の位置に補正する。また、進行方位補正部184により進行方位が補正され、補正後の進行方位と直進歩行状態の開始地点及び開始時点とが通知されると、現在位置補正部186は、補正後の進行方位と直進歩行状態の開始時点からの歩数とに基づき、直進歩行状態の開始地点からの移動端末100の移動量を再計算し、現在位置を補正する。現在位置の補正後、現在位置補正部186は、補正された現在位置を位置算出部182に通知する。通知された補正後の現在位置は、以降の移動端末100の現在位置の算出のための基準地点として使用される。
【0033】
次に、図2を参照して、本発明の一実施例による移動端末の一例となる動作を説明する。図2は、本発明の一実施例による移動端末における一例となる自律航法処理を示すフローチャートである。
【0034】
図2に示されるように、ステップS201において、ユーザが移動端末100の入力装置などを介しユーザインタフェース部120に目的地を設定する。上述したように、ユーザは、目的地の住所などを入力することによって目的地を設定してもよい。また、ユーザは、地図アプリケーション部140により移動端末100の表示装置上に表示された地図情報上の地点を指定することによって目的地を設定してもよい。また、ユーザは、他のアプリケーションを介し表示された建物、施設、店舗などを指定することによって目的地を設定してもよい。
【0035】
ステップS203において、ユーザが移動端末100の入力装置などを介しユーザインタフェース部120に出発地を設定する。典型的には、出発地は、デフォルトとして現在位置に設定される。他方、ユーザが現在位置以外の出発地を移動端末100の入力装置などを介し設定することも可能である。例えば、ユーザは、出発地の住所などを入力することによって出発地を設定してもよい。また、ユーザは、地図アプリケーション部140により移動端末100の表示装置上に表示された地図情報上の地点を指定することによって出発地を設定してもよい。また、ユーザは、他のアプリケーションを介し表示された建物、施設、店舗などを指定することによって出発地を設定してもよい。このようにして出発地と目的地とが設定されると、地図アプリケーション部140は、設定された出発地と目的地とに対して何れか適切なナビゲーション方法を利用してルートを決定することができる。
【0036】
ステップS205において、自律航法演算部180は、自律航法測定部160により測定されたセンサ情報を取得する。
【0037】
ステップS207において、自律航法演算部180は、取得したセンサ情報に基づき移動端末100の現在位置を算出し、算出した現在位置を地図アプリケーション部140に提供する。地図アプリケーション部140は、何れか適切なマップマッチング方法を利用して、受信した現在位置が設定されたルート上にマップマッチングされるべきか判断する。例えば、地図アプリケーション部140は、受信した現在位置が設定されたルートから所定の距離以上乖離しているか判断し、所定の距離以上乖離している場合、受信した現在位置から最短となる設定ルート上の地点に移動端末100の現在位置をマップマッチングするようにしてもよい。現在位置の補正後、地図アプリケーション部140は、補正後の現在位置を自律航法演算部180に通知する。地図アプリケーション部140から補正後の現在位置を受信すると、自律航法演算部180は、この補正後の現在位置を新たに設定し、以降の位置算出等に利用する。
【0038】
ステップS209において、自律航法演算部180は、ユーザの直進歩行状態を検知し、移動端末100の現在設定されている進行方向を補正すると共に、補正後の進行方向と直進歩行状態の開始時点からの歩数に基づき現在位置を併せて補正する。ステップS209の具体的な処理は、図3を参照して以降において詳述される。
【0039】
ステップS211において、自律航法演算部180は、算出した移動端末100の現在位置に基づき、ユーザが目的地に到達したか判定する。ユーザが目的地に到達したと判断した場合(S211:Y)、当該自律航法処理は終了する。他方、ユーザがまだ目的地に到達していない場合(S211:N)、当該フローはステップS205に戻り、自律航法処理を継続する。
【0040】
次に、図3を参照して、本発明の一実施例によるステップS209の自律航法演算部180における進行方向補正処理をより詳細に説明する。図3は、本発明の一実施例による進行方向補正処理を示すフローチャートである。
【0041】
図3に示されるように、ステップS301において、進行方向補正部184は、自律航法測定部160からユーザの測定された進行方向を定期的に取得し、所定の期間内に取得した進行方向の測定値の標準偏差を算出する。進行方向補正部184は、算出した標準偏差が所定の角度x度以下であるか判定し、算出した標準偏差がx度以下である場合(S301:Y)、ユーザが一定の方位に歩行していると判断し、当該フローはステップS303に移行する。他方、算出した標準偏差がx度未満である場合(S301:N)、ユーザは一定の方位には歩行していないと判断し、当該フローはステップS311に移行する。所定期間内に取得された進行方向の測定値がほぼ一定の値を維持する場合、算出される標準偏差はほぼ0になるであろう。従って、xの値は、ユーザが一定の方位に歩行していることを判定するためには、0に近い値に設定される。
【0042】
ステップS303において、進行方向補正部184は、方位変化がないことを示すフラグAを1だけインクリメントする。本実施例では、一定期間ユーザが方位変更していない状態を直進歩行状態と規定するため、当該フラグはこの一定期間までの時間をカウントするためのカウンタとして用いられる。
【0043】
ステップS305において、進行方向補正部184は、インクリメントされたフラグAが所定の閾値yに等しいか判定する。このyの値は、ユーザが一定期間方位変更せず歩行したか判断するためのものであり、何れか適切な値に設定される。フラグAが閾値yに到達していない場合、進行方向補正部184は、ユーザが一定の方位に歩行しているものの、まだ直進歩行状態にあると判定できるほどの期間は直進していないと判断し、当該フローはステップS313に移行し、進行補正をせずにステップS211に移行する。他方、フラグAが閾値yに到達した場合、進行方向補正部184は、ユーザが直進歩行状態に入ったと推定し、当該フローはステップS307に移行する。
【0044】
ステップS307において、進行方向補正部184は、ユーザが直進歩行状態に入ったため、設定されたルート上の直進部分にいると推定する。進行方向補正部184は、地図アプリケーション部140の地図情報の当該直進部分の方位によって、現在設定されている進行方位を補正する。具体的には、進行方向補正部184は、地図アプリケーション部140によって当該直線部分上に以前にマップマッチングされた2つの地点を抽出し、これら2つの地点の位置から当該直線部分の方位を算出する。そして、進行方向補正部184は、この算出した方位によって、自律航法演算部180に現在設定されている進行方向を補正し、補正後の進行方向と直進歩行状態の開始地点及び開始時点とを現在位置補正部186に通知する。なお、この直進歩行開始時点は、フラグAのインクリメントの開始時点に相当し、直進歩行開始地点は、フラグAのインクリメントの開始時点での移動端末100の位置に相当する。この直進歩行開始地点は、進行方向補正部184がインクリメント開始時点に位置算出部182から移動端末100の位置を取得することによって保持されてもよいし、進行方向の補正後にインクリメント開始時点を位置算出部182に通知して、位置算出部182に保持されている対応する移動端末100の位置を取得するようにしてもよい。
【0045】
ステップS309において、現在位置補正部186は、進行方向補正部184から受信した補正後の進行方向と直進歩行開始地点とに基づき、直進歩行開始地点に遡って現在位置を補正する。すなわち、現在位置補正部186は、補正後の進行方向と直進歩行開始時点から現時点までの歩数とによって直進歩行開始時点から現時点までの移動量を算出し、この移動量を直進歩行開始地点の位置に加えることによって現在位置を補正する。現在位置の補正後、現在位置補正部186は補正後の現在位置を位置算出部182に通知し、位置算出部182は補正後の現在位置を以降の位置算出のための基準地点として利用する。
【0046】
ステップS311において、進行方向補正部184はフラグAをリセットし、ステップS313において当該進行方向補正処理を終了する。
【0047】
なお、上述した実施例では、ユーザの進行方向が一定期間変化しない場合に直進歩行状態にあると推定した。しなしかながら、本発明はこれに限定されるものでない。他の実施例では、ユーザが立ち止まって歩行していない結果として、進行方向も一定期間変化していない状況も考えられるため、進行方向の変化に加えて歩数の変化も考慮するようにしてもよい。すなわち、ユーザが一定期間以上又は一定距離以上歩行したこと、すなわち、歩行状態にあることを確認し、この歩行状態において進行方向が一定期間変化していないことを判断するようにしてもよい。
【0048】
また、上述した実施例では、ユーザがほぼ直進歩行していることを判断するため、進行方向の測定値の標準偏差を用いたが、本発明はこれに限定されるものでなく、所定期間におけるユーザの進行方向の傾向を表す何れか適切な指標が利用されてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 移動端末
120 ユーザインタフェース部
140 地図アプリケーション部
160 自律航法測定部
180 自律航法演算部
182 位置算出部
184 進行方向補正部
186 現在位置補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律航法機能を有する移動端末であって、
地図情報における当該移動端末のユーザの出発地から目的地までのルート上に当該移動端末の現在位置をマップマッチングする地図アプリケーション部と、
当該移動端末の動きを検知し、前記ユーザの歩数及び進行方向を示すセンサ情報を提供する測定部と、
前記センサ情報の前記ユーザの歩数及び進行方向に基づき、当該移動端末の現在位置を決定する位置算出部と、
前記センサ情報の前記ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断することによって前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定し、前記ユーザが直進歩行状態にあると推定した場合、前記ルート上の前記直進歩行状態にある直進部分の方位により前記ユーザの進行方向を補正する進行方向補正部と、
前記補正された進行方向と、前記直進歩行状態の開始時点及び開始地点とに基づき、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算し、該再計算された現在位置により当該移動端末の現在位置を補正する現在位置補正部と、
を有する移動端末。
【請求項2】
前記地図アプリケーション部は、前記位置算出部により算出された当該移動端末の現在位置が前記ルートから所定の距離だけ乖離した場合、当該移動端末の現在位置を前記ルート上にマップマッチングする、請求項1記載の移動端末。
【請求項3】
前記進行方向補正部は、前記ユーザが直進歩行状態にあると推定した場合、前記ルート上の前記直進部分に以前にマップマッチングされた2つの地点の間の方位を算出し、該算出した方位により前記ユーザの進行方向を補正する、請求項2記載の移動端末。
【請求項4】
前記進行方向補正部は、前記ユーザの進行方向の前記所定の期間における測定値の標準偏差が所定の閾値以下であるか判断することによって、前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定する、請求項1記載の移動端末。
【請求項5】
前記進行方向補正部は、前記センサ情報の前記ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断すると共に、前記センサ情報の前記ユーザの歩数に基づき前記ユーザが前記所定の期間に所定の距離以上歩行したか判断することによって、前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定する、請求項1記載の移動端末。
【請求項6】
前記現在位置補正部は、前記開始時点から現時点までの前記ユーザの歩数と前記補正された進行方向とに基づき、前記開始時点から現時点までの当該移動端末の移動量を算出し、該算出した移動量を前記開始地点に加えることによって、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算する、請求項1記載の移動端末。
【請求項7】
自律航法機能を有する移動端末と、
前記移動端末と通信接続されるサーバと、
を有するシステムであって、
前記サーバは、地図情報における前記移動端末のユーザの出発地から目的地までのルート上に前記移動端末の現在位置をマップマッチングし、前記マップマッチングした前記ルート上の位置を前記移動端末に通知し、
前記移動端末は、
当該移動端末の動きを検知し、前記ユーザの歩数及び進行方向を示すセンサ情報を提供する測定部と、
前記センサ情報の前記ユーザの歩数及び進行方向に基づき、当該移動端末の現在位置を決定する位置算出部と、
前記センサ情報の前記ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断することによって前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定し、前記ユーザが直進歩行状態にあると推定した場合、前記サーバから通知された前記ルート上の前記直進歩行状態にある直進部分の方位により前記ユーザの進行方向を補正する進行方向補正部と、
前記補正された進行方向と、前記直進歩行状態の開始時点及び開始地点とに基づき、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算し、該再計算された現在位置により当該移動端末の現在位置を補正する現在位置補正部と、
を有するシステム。
【請求項8】
自律航法機能を有する移動端末で使用される方法であって、
地図情報における当該移動端末のユーザの出発地から目的地までのルート上に当該移動端末の現在位置をマップマッチングするステップと、
当該移動端末の動きを検知し、前記ユーザの歩数及び進行方向を示すセンサ情報を提供するステップと、
前記センサ情報の前記ユーザの歩数及び進行方向に基づき、当該移動端末の現在位置を決定するステップと、
前記センサ情報の前記ユーザの進行方向の変化量が所定の期間に所定の範囲内にあるか判断することによって前記ユーザが直進歩行状態にあるか推定し、前記ユーザが直進歩行状態にあると推定した場合、前記ルート上の前記直進歩行状態にある直進部分の方位により前記ユーザの進行方向を補正するステップと、
前記補正された進行方向と、前記直進歩行状態の開始時点及び開始地点とに基づき、当該移動端末の現在位置を前記開始地点から再計算し、該再計算された現在位置により当該移動端末の現在位置を補正するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117976(P2012−117976A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269610(P2010−269610)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】