説明

移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法

【課題】LTE−Aシステムでの下りCoMP送信の際の最適な制御を行うことができる移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法を提供すること。
【解決手段】本発明の無線通信方法は、移動端末装置において、下りCoMPに関わる複数の無線基地局装置から参照信号を含む下りリンク信号をそれぞれ受信し、チャネル品質の測定結果を含むフィードバック情報を複数の無線基地局装置にそれぞれ送信し、無線基地局装置において、下りCoMPに関わる複数の無線基地局装置のチャネル品質測定結果、及び平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置に関するセル情報を含む上りリンク信号を受信し、平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置のうち平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がある場合に、両無線基地局装置に対する送信電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下りリンクのCoMP送信(Coordinated Multiple Point transmission)に関する移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)で規定されるLTE(Long Term Evolution)システム(非特許文献1)では、下りリンクにおいては、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用されている。よって、無線基地局装置でのスケジューリングにより、基本的には、ある周波数及び時間の無線リソースを一つの移動端末装置(UE:User Equipment)に割り当てるため、同一セル内のユーザ間は周波数及び時間領域で直交している。しかしながら、LTEシステムでは、1セル周波数繰り返しをベースとするため、周辺セルからの干渉が大きく、特にセル端に存在するUEにおける干渉レベルは高い。このため、このような周辺セル干渉を補償し一定の受信品質を維持するため、セル間干渉の対策が必要となる。
【0003】
3GPPでは、高速伝送をLTEシステムよりも広いカバレッジで実現するためのLTE−A(LTE−Advanced)システムが検討されている。LTE−A(LTE−Advanced)システムでは、さらなるセル間干渉対策として、協調マルチポイント送受信(CoMP)が採用される。このCoMPにおいて、下りリンクでは、図1に示すように、自セル(セルA)(Serving cell)の無線基地局装置2Aと、周辺セル(セルB)の無線基地局装置2Bとから同時にデータ及び参照信号(RS)が移動端末装置1に送信される。このとき、制御チャネル信号(PDCCH信号)は、サービングセルであるセルAの無線基地局装置2Aのみから送信される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP, TR25.912 (V7.1.0), "Feasibility study for Evolved UTRA and UTRAN", Sept. 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下りCoMPにおいては、2つの無線基地局装置2A,2Bから信号を送信すると、図2に示すように、移動端末装置1で受信した信号の平均受信レベルがそれぞれ異なるので、すなわち、無線基地局装置2A,2Bから送信された信号の平均受信レベルが等しくないので、不等利得ダイバーシチ受信になってしまいダイバーシチ利得が小さくなる。このため下りリンクの複数セル同時送信を適用してもセル端の移動端末装置の受信品質の改善は小さい。
【0006】
また、LTEシステムの無線インターフェースでは、複数の無線基地局装置からの信号を移動端末装置で同時に受信することは規定されていない。また、LTEシステムでは、一つの無線基地局装置に対してのみチャネル品質情報(CQI)などのフィードバック情報をフィードバックすることが規定されている。このようなLTEシステムで移動端末装置がCoMPを適用することを想定すると、例えば、それぞれの無線基地局装置からの参照信号に基づいて測定したCQIをCoMP合成し、合成後のCQIをフィードバックすることになる。このため、下りCoMP送信の場合には、各無線基地局装置との間のチャネル品質情報をそれぞれフィードバックすることができないことになり、CoMP送信時の最適な制御ができないことになる。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、LTE−Aシステムでの下りCoMP送信の際に最適な制御を行うことができる移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の移動端末装置は、下りリンクマルチポイント送信に関わる複数の無線基地局装置から参照信号を含む下りリンク信号をそれぞれ受信する受信手段と、前記参照信号を用いてチャネル品質を測定するチャネル品質測定手段と、前記チャネル品質の測定結果を含むフィードバック情報を前記複数の無線基地局装置にそれぞれ送信する送信手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の無線基地局装置は、下りリンクマルチポイント送信に関わる複数の無線基地局装置のチャネル品質測定結果、及び平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置に関するセル情報を含む上りリンク信号を受信する受信手段と、前記チャネル品質測定結果及び前記セル情報から、平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置のうち平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置があるかどうかを判定する判定手段と、平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がある場合に、両無線基地局装置に対する送信電力を制御する送信電力制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明の無線通信方法は、移動端末装置において、下りリンクマルチポイント送信に関わる複数の無線基地局装置から参照信号を含む下りリンク信号をそれぞれ受信する工程と、前記参照信号を用いてチャネル品質を測定する工程と、前記チャネル品質の測定結果を含むフィードバック情報を前記複数の無線基地局装置にそれぞれ送信する工程と、無線基地局装置において、下りリンクマルチポイント送信に関わる複数の無線基地局装置のチャネル品質測定結果、及び平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置に関するセル情報を含む上りリンク信号を受信する工程と、前記チャネル品質測定結果及び前記セル情報から、平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置のうち平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置があるかどうかを判定する工程と、平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がある場合に、両無線基地局装置に対する送信電力を制御する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の無線基地局装置からの参照信号を用いてチャネル品質を測定し、それぞれのチャネル品質測定結果を含むフィードバック情報を複数の無線基地局装置にそれぞれ送信するので、LTE−Aシステムでの下りCoMP送信の際の最適な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】下りCoMPを説明するための図である。
【図2】下りCoMPの際の平均受信レベルを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る送信電力制御を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置及び移動端末装置を有する無線通信システムを示す図である。
【図5】(a),(b)は、無線通信システムの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る移動端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す移動端末装置におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示す無線基地局装置におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
上述したように、LTEシステムの無線インターフェースでは、複数の無線基地局装置からの信号を移動端末装置で同時に受信することは規定されていない。また、LTEシステムでは、下りリンクで送信された参照信号に対して1つのチャネル品質情報(CQI)などのフィードバック情報をフィードバックすることが規定されている。したがって、このようなLTEシステムで移動端末装置がCoMPを適用すると、参照信号に基づいて測定したCQIをフィードバックする際に、CoMP合成後のCQIしかフィードバックできず、きめ細かい制御ができないことになる。
【0014】
そこで、本発明者らは、CoMP送信を行う際に、複数の無線基地局装置に対して個別にチャネル品質情報をフィードバックする無線インターフェースを提案し、これによりCoMP送信を行う際における最適な制御を可能とした。
【0015】
CoMP送信を行う際に、複数の無線基地局装置に対して個別にチャネル品質情報(フィードバック情報)をフィードバックする方法としては、次の4つの方法が挙げられる。
【0016】
(1)複数の無線基地局装置に対して上り制御チャネル(PUCCH)でチャネル品質情報をサブフレーム毎に時分割で送信する方法。
この場合においては、例えば、図1におけるセルAのCQI、セルBのCQI、及び合成後のCQIを時系列に送信する。もしくは、セルAのCQIとセルBのCQIとを時系列に送信する。このとき、1つの無線基地局装置に対してチャネル品質情報を送信する頻度が少なくなり、時間変動に対する追従性が劣化するが、無線基地局装置間の平均受信レベルを等しくして、ダイバーシチ効果を高くすることが目的であるので、チャネル品質情報を送信する頻度が少なくても問題はないと考えられる。ここで、平均受信レベルとは、一定期間の受信レベルの平均値をいう。
【0017】
(2)複数の無線基地局装置に対して上り共有チャネル(PUSCH)でチャネル品質情報を送信する方法。
この場合においても、1つの無線基地局装置に対してチャネル品質情報を送信する頻度が少なくなり、時間変動に対する追従性が劣化するが、無線基地局装置間の平均受信レベルを等しくして、ダイバーシチ効果を高くすることが目的であるので、チャネル品質情報を送信する頻度が少なくても問題はないと考えられる。
【0018】
(3)複数の無線基地局装置に対するチャネル品質情報をコード多重して送信する方法。
例えば、巡回シフト法により異なる巡回シフトを付与して、各チャネル品質情報を直交化する。この場合において、巡回シフト番号が制御情報として無線基地局装置から通知される。
【0019】
(4)複数の無線基地局装置に対するチャネル品質情報を複数の送信アンテナからMIMO(Multiple Input Multiple Output)送信により送信する方法。
上記のように、移動端末装置から複数の無線基地局装置に個別にチャネル品質情報(フィードバック情報)をフィードバックする。無線基地局装置においては、このようにフィードバックされたチャネル品質情報などを用いて、CoMP送信に関わる無線基地局装置(CoMP候補セルの無線基地局装置)からの信号の移動端末装置における平均受信レベルが等しくなるように、下りリンク送信の送信電力を制御する(方法1)。
【0020】
方法1について図3を用いて説明する。移動端末装置において、各セルの無線基地局装置からの信号の平均受信レベルが図3に示す状態であるとする。このとき、まず、各セルの平均受信レベルに対してしきい値判定を行い、しきい値Δ以内であるセルがあるかどうかを判定する。平均受信レベルがしきい値Δ以内であるセルがある場合には、そのセルがどのセルであるかの情報(セル情報)を無線基地局装置にフィードバックする。ここでは、セル#1、セル#2及びセル#5の平均受信レベルがしきい値Δ以内であるので、セル#1、セル#2及びセル#5の情報が無線基地局装置にフィードバックされる。
【0021】
無線基地局装置においては、しきい値Δ(第1しきい値)以内であるセルがある場合に、移動端末装置がセル端にいると判定する。この判定まではハンドオーバーの手順と同じである。次いで、無線基地局装置は、平均受信レベル差がしきい値Δ(第2しきい値)以内であるかどうかを判定する。平均受信レベル差がしきい値Δ以内である場合には、両者の平均受信レベルが等しくなるように送信電力を制御する(平均受信レベルを合わせるジョイント送信(Joint Transmission))。ここでは、セル#1の平均受信レベル(セル#1の無線基地局装置からの信号の平均受信レベル)とセル#5の平均受信レベルとの間の差分(斜線部)がしきい値Δ以内であるので、両者の平均受信レベルが等しくなるように、セル#1の無線基地局装置からの送信信号の送信電力及び/又はセル#5の無線基地局装置からの送信信号の送信電力を制御する。
【0022】
送信電力の制御としては、各セルの総送信電力を一定とした上で、平均受信レベルが相対的に低いセルに対する送信電力を上げるとともに平均受信レベルが相対的に高いセルに対する送信電力を下げて両者の平均受信レベルを等しくする。あるいは、平均受信レベルが相対的に低いセルに対する送信電力を上げる、あるいは、平均受信レベルが相対的に高いセルに対する送信電力を下げて、両者の平均受信レベルを等しくする。図3に示す場合においては、各セル#1〜#6における総送信電力を一定とした状態で、セル#1に対する送信電力を下げるとともにセル#5に対する送信電力とを上げる。あるいは、セル#5に対する送信電力を上げる、あるいは、セル#1に対する送信電力を下げて、両者の平均受信レベルを等しくする。
【0023】
送信電力の制御として、各セルの総送信電力を一定とした上で、各移動端末装置に対する送信電力を補正して、両者の平均受信レベルを等しくしても良い。すなわち、CoMPが適用される移動端末装置に対する送信電力を上げるために、他の移動端末装置に対する送信電力を借りる。この場合においては、スケジューリングの際にOFDMシンボルの他のRB(リソースブロック)の送信電力を借りる。この場合においては、セル内のすべての移動端末装置に対する送信電力を調整することで補正しても良く、セル端に存在する移動端末装置以外の移動端末装置に対する送信電力を下げることにより補正しても良い。
【0024】
CoMP候補セルの無線基地局装置間の平均受信レベル差が大きい場合には、相対的に平均受信レベルの低い無線基地局装置への送信を停止(OFF)し、最も平均受信レベルの高い無線基地局装置からの送信のみとする(Water filling)(方法2)。なお、この平均受信レベルについては、平均受信レベルと第1しきい値とを比較する平均受信レベルより短い区間での平均受信レベル(瞬時受信レベル)も含むものとする。
【0025】
方法2について図3を用いて説明する。移動端末装置において、各セルの無線基地局装置からの信号の平均受信レベルが図3に示す状態であるとする。このとき、まず、各セルの平均受信レベルに対してしきい値判定を行い、しきい値Δ以内であるセルがあるかどうかを判定する。平均受信レベルがしきい値Δ以内であるセルがある場合には、そのセルがどのセルであるかの情報(セル情報)を無線基地局装置にフィードバックする。ここでは、セル#1、セル#2及びセル#5の平均受信レベルがしきい値Δ以内であるので、セル#1、セル#2及びセル#5の情報が無線基地局装置にフィードバックされる。
【0026】
無線基地局装置においては、しきい値Δ(第1しきい値)以内であるセルがある場合に、移動端末装置がセル端にいると判定する。この判定まではハンドオーバーの手順と同じである。次いで、無線基地局装置は、平均受信レベル差がしきい値Δ(第2しきい値)以内であるかどうかを判定する。平均受信レベル差がしきい値Δ以内である場合には、平均受信レベルを合わせない状態でのジョイント送信を行い、平均受信レベル差がしきい値Δを超える場合には、平均受信レベルが相対的に低いセルの無線基地局装置からの送信をOFFし、平均受信レベルが最も高いセルの無線基地局装置からのみ送信を行う(DCS:Dynamic Cell Selection)。図3においては、平均受信レベル差がしきい値Δ以内(セル#1、セル#5)の場合には、平均受信レベルを合わせない状態でのジョイント送信を行い、平均受信レベル差がしきい値Δを超える(セル#1、セル#2)の場合には、セル#1の無線基地局装置からの送信のみを行う。
【0027】
また、方法1と方法2とをしきい値判定により切り替えるようにしても良い(モード切り替え)(方法3)。
【0028】
方法3について図3を用いて説明する。移動端末装置において、各セルの無線基地局装置からの信号の平均受信レベルが図3に示す状態であるとする。このとき、まず、各セルの平均受信レベルに対してしきい値判定を行い、しきい値Δ以内であるセルがあるかどうかを判定する。平均受信レベルがしきい値Δ以内であるセルがある場合には、そのセルがどのセルであるかの情報(セル情報)を無線基地局装置にフィードバックする。ここでは、セル#1、セル#2及びセル#5の平均受信レベルがしきい値Δ以内であるので、セル#1、セル#2及びセル#5の情報が無線基地局装置にフィードバックされる。
【0029】
無線基地局装置においては、しきい値Δ(第1しきい値)以内であるセルがある場合に、移動端末装置がセル端にいると判定する。この判定まではハンドオーバーの手順と同じである。次いで、無線基地局装置は、平均受信レベル差がしきい値Δ(第2しきい値)以内であるかどうかを判定する。平均受信レベル差がしきい値Δ以内である場合には、両者の平均受信レベルが等しくなるように送信電力を制御する(平均受信レベルを合わせるジョイント送信)。平均受信レベル差がしきい値Δを超える場合には、平均受信レベルが相対的に低いセルの無線基地局装置からの送信をOFFし、平均受信レベルが最も高いセルの無線基地局装置からのみ送信を行う(DCS)。図3においては、平均受信レベル差がしきい値Δ以内(セル#1、セル#5)の場合には、両者の平均受信レベルが等しくなるように送信電力を制御し、平均受信レベル差がしきい値Δを超える(セル#1、セル#2)の場合には、セル#1の無線基地局装置からの送信のみを行う。この方法3における送信電力の制御は方法1と同じである。
【0030】
図4は、本発明の実施の形態に係る移動端末装置及び無線基地局装置を有する無線通信システムを示す図である。
【0031】
無線通信システムは、例えばE−UTRA(Evolved UTRA and UTRAN)が適用されるシステムである。無線通信システムは、無線基地局装置(eNB:eNodeB)2(2,2・・・2、lはl>0の整数)と、無線基地局装置2と通信する複数の移動端末装置(UE)1(1,1,1,・・・1、nはn>0の整数)とを備える。無線基地局装置2は、上位局、例えばアクセスゲートウェイ装置3と接続され、アクセスゲートウェイ装置3は、コアネットワーク4と接続される。移動端末装置1はセル5(5,5)において無線基地局装置2とE−UTRAにより通信を行っている。本実施の形態では、2個のセルについて示しているが、本発明は3個以上のセルについても同様に適用することができる。なお、各移動端末装置(1,1,1,・・・1)は、同一の構成、機能、状態を有するので、以下では特段の断りがない限り移動端末装置1として説明を進める。
【0032】
無線通信システムでは、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDM(直交周波数分割多元接続)が適用され、上りリンクについてはSC−FDMA(シングルキャリア−周波数分割多元接続)が適用される。OFDMは、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各サブキャリアにデータをマッピングして通信を行うマルチキャリア伝送方式である。SC−FDMAは、周波数帯域を端末毎に分割し、複数の移動端末装置が互いに異なる周波数帯域を用いることで、移動端末装置間の干渉を低減するシングルキャリア伝送方式である。
【0033】
ここで、E−UTRAにおける通信チャネルについて説明する。
下りリンクについては、各移動端末装置1で共有される物理下りリンク共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)と、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)とが用いられる。物理下りリンク制御チャネルは下りL1/L2制御チャネルとも呼ばれる。上記物理下りリンク共有チャネルにより、ユーザデータ、すなわち、通常のデータ信号が伝送される。また、物理下りリンク制御チャネルにより、下りスケジューリング情報(DL Scheduling Information)、送達確認情報(ACK/NACK)、上りスケジューリンググラント(UL Scheduling Grant)、TPCコマンド(Transmission Power Control Command)などが伝送される。下りスケジューリング情報には、例えば、物理下りリンク共有チャネルを用いて通信を行うユーザのIDや、そのユーザデータのトランスポートフォーマットの情報、すなわち、データサイズ、変調方式、再送制御(HARQ:Hybrid ARQ)に関する情報や、下りリンクのリソースブロックの割り当て情報などが含まれる。
【0034】
また、上りスケジューリンググラントには、例えば、物理上りリンク共有チャネルを用いて通信を行うユーザのIDや、そのユーザデータのトランスポートフォーマットの情報、すなわち、データサイズ、変調方式に関する情報や、上りリンクのリソースブロックの割り当て情報、上りリンクの共有チャネルの送信電力に関する情報などが含まれる。ここで、上りリンクのリソースブロックとは、周波数リソースに相当し、リソースユニットとも呼ばれる。
【0035】
また、送達確認情報(ACK/NACK)とは、上りリンクの共有チャネルに関する送達確認情報のことである。送達確認情報の内容は、送信信号が適切に受信されたことを示す肯定応答(ACK:Acknowledgement)又はそれが適切に受信されなかったことを示す否定応答(NACK:Negative Acknowledgement)の何れかで表現される。
【0036】
上りリンクについては、各移動端末装置1で共有して使用される物理上りリンク共有チャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared Channel)と、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)とが用いられる。上記物理上りリンク共有チャネルにより、ユーザデータ、すなわち、通常のデータ信号が伝送される。また、物理上りリンク制御チャネルにより、下りリンクにおける共有物理チャネルのスケジューリング処理や適応変復調及び符号化処理(AMC:Adaptive Modulation and Coding scheme)に用いるための下りリンクのチャネル品質情報(CQI:Channel Quality Indicator)、及び物理下りリンク共有チャネルの送達確認情報が伝送される。
【0037】
物理上りリンク制御チャネルでは、CQIや送達確認情報に加えて、上りリンクの共有チャネルのリソース割り当てを要求するスケジューリング要求(Scheduling Request)や、パーシステントスケジューリング(Persistent Scheduling)におけるリリース要求(Release Request)などが送信されてもよい。ここで、上りリンクの共有チャネルのリソース割り当てとは、あるサブフレームの物理下りリンク制御チャネルを用いて、後続のサブフレームにおいて上りリンクの共有チャネルを用いて通信を行ってよいことを無線基地局装置が移動端末装置に通知することを意味する。
【0038】
無線基地局装置2の構成については、図5(a)に示すように、無線基地局装置(eNB)とこの無線基地局装置eNBと光張出し構成(光ファイバ)で接続された複数の遠隔無線装置(RRE:Remote Radio Equipment)とを含む構成でも良く、図5(b)に示す無線基地局装置(eNB)でも良い。図5(a)に示す構成においては、遠隔無線装置RRE1,RRE2を無線基地局装置eNBで集中的に制御するので、無線基地局装置eNBで上述したセル情報やチャネル品質情報を用いて送信電力制御を行う。一方、図5(b)に示す構成においては、セル1の無線基地局装置eNBとセル2の無線基地局装置eNBとの間のX2インターフェースで必要に応じてセル情報やチャネル品質情報をいずれかの無線基地局装置に送信して、その無線基地局装置で送信電力制御を行う。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態に係る移動端末装置の概略構成を示すブロック図である。
図6に示す移動端末装置1は、アンテナ11と、アンプ部12と、送受信部13と、ベースバンド信号処理部14と、呼処理部15と、アプリケーション部16とから主に構成されている。
【0040】
このような構成の移動端末装置1において、下りリンク信号については、アンテナ11で受信された無線周波数信号がアンプ部12で、AGC(Auto Gain Control)の下で受信電力が一定電力に補正されるように増幅される。増幅された無線周波数信号は、送受信部13においてベースバンド信号へ周波数変換される。このベースバンド信号は、ベースバンド信号処理部14で所定の処理(誤り訂正、復号など)がなされた後、呼処理部15及びアプリケーション部16に送られる。呼処理部15は、無線基地局装置2との通信の管理などを行い、アプリケーション部16は、物理レイヤやMACレイヤより上位のレイヤに関する処理などを行う。本発明の移動端末装置1においては、少なくとも下りCoMPに関わる複数の無線基地局装置から参照信号を含む下りリンク信号をそれぞれ受信する。
【0041】
上りリンク信号については、アプリケーション部16からベースバンド信号処理部14に入力される。ベースバンド信号処理部14では、再送制御の処理、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化などがなされて送受信部13に転送される。送受信部13では、ベースバンド信号処理部14から出力されたベースバンド信号を無線周波数信号へ周波数変換する。周波数変換された信号は、その後、アンプ部12で増幅されてアンテナ11から送信される。本発明の移動端末装置1においては、チャネル品質の測定結果を含むフィードバック情報を複数の無線基地局装置にそれぞれ送信する。
【0042】
図7は、図6に示す移動端末装置におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。
ベースバンド信号処理部14は、レイヤ1処理部141と、MAC(Medium Access Control)処理部142と、RLC(Radio Link Control)処理部143と、受信レベル測定部144と、CQI生成部145と、しきい値判定部146とから主に構成されている。
【0043】
レイヤ1処理部141は、主に物理レイヤに関する処理を行う。レイヤ1処理部141は、例えば、下りリンクで受信した信号に対して、CP除去、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)、周波数デマッピング、逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)、データ復調などの処理を行う。また、レイヤ1処理部141は、上りリンクで送信する信号に対して、データ変調、離散フーリエ変換(DFT)、周波数マッピング、逆高速フーリエ変換(IFFT)、CP付加などの処理を行う。
【0044】
MAC処理部142は、下りリンクで受信した信号に対するMACレイヤでの再送制御(HARQ)、下りスケジューリング情報の解析(PDSCHの伝送フォーマットの特定、PDSCHのリソースブロックの特定)などを行う。また、MAC処理部142は、上りリンクで送信する信号に対するMAC再送制御、上りスケジューリング情報の解析(PUSCHの伝送フォーマットの特定、PUSCHのリソースブロックの特定)などの処理を行う。
【0045】
RLC処理部143は、下りリンクで受信したパケット/上りリンクで送信するパケットに対して、パケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御などを行う。
【0046】
受信レベル測定部144は、各周辺セルの無線基地局装置からの下りリンク信号の受信レベルを測定する。測定された受信レベルは、しきい値判定部146で所定のしきい値範囲内にあるかどうかのしきい値判定される。
【0047】
CQI生成部145は、下りリンク信号に含まれる参照信号(CSI−RS)(あるいはDM−RS)を用いてフィードバック情報であるチャネル品質情報(CQI)(測定結果)を生成する。すなわち、CQI生成部145は、少なくとも下りCoMPに関わる無線基地局装置からの下りリンク信号に含まれるCSI−RSを用いてそれぞれのCQIを生成する。
【0048】
本発明においては、移動端末装置で複数の無線基地局装置からCSI−RSを受信するので、CSI−RSを直交化させておくことが考えられる。しかしながら、CSI−RSをセル間で直交させると、CoMPを適用しない移動端末装置がセル干渉を受けないチャネル品質を測定しまう。したがって、CoMP受信しない移動端末装置に対しては、実際に他セル干渉を受けているにも関わらず他セル干渉を受けないチャネル品質でスケジューリングなどの制御が行われてしまう。
【0049】
実際には、CoMPを適用しない移動端末装置が大半であるので、CSI−RSは基本的にはセル間で非直交にしておくことが望ましい。CSI−RSをセル間で非直交とした場合には、CoMPを適用する移動端末装置においては、他セル干渉を受けたチャネル品質を測定してしまうので、このチャネル品質を、他セル干渉を受けないチャネル品質に推定あるいは補正する必要がある。したがって、CQI生成部145は、受信したCSI−RSを用いてCQIを生成し、そのCQIを補正する。
【0050】
CQIの補正方法としては、次の4つが挙げられる。
1)MCS(Modulation and Coding Scheme)選択のためのチャネル品質を、端末固有(UE-specific)の参照信号を用いて求める(方法1)。このような参照信号としては、復調用参照信号(DM−RS)を用いることができる。ただし、この方法は、あるユーザに連続的に割り当てられた場合しか測定できないので、MCS選択のためのチャネル品質をDM−RSを用いて測定するモードと、MCS選択のためのチャネル品質をCSI−RSを用いて測定するモードとでモード切り替えを行う。いずれかのモードを示すモード情報は、無線基地局装置から通知される。したがって、CQI生成部145は、モード情報により、DM−RS又はCSI−RSを用いてMCS選択のためのチャネル品質を測定し、CQIを生成する。
【0051】
2)MCS選択のためのチャネル品質を、CSI−RSを用いて測定し、CoMP対象となる相手のセルの受信電力を測定して干渉電力から引くことにより、測定値(測定結果)を補正する(方法2)。このように、方法2では、CoMP対象となる相手のセルからの干渉がある状態でCQIを測定し、干渉なしのCQIを求めるための補正を行う。
【0052】
3)MCS選択のためのチャネル品質を、CoMP対象となる相手のセルからの干渉なしで測定する。この場合には、例えば、直交化したCSI−RSを用いてMCS選択のためのチャネル品質を測定する(方法3)。
【0053】
4)CoMP対象となる相手のセルからの干渉の有無を無線基地局装置で判断し、その判断結果に応じてチャネル品質測定結果を補正する。したがって、無線基地局装置において、CoMP対象となる相手のセルからの干渉があると判断した場合には、チャネル品質測定結果を補正し、CoMP対象となる相手のセルからの干渉がないと判断した場合には、移動端末装置からのチャネル品質測定結果を用いてMCS選択を行う。
【0054】
移動端末装置においてチャネル品質の測定結果を補正する場合には、各セルの受信電力比の情報を用いる。CQI生成部145は、各セルの受信電力比の情報を用いて、チャネル品質の測定結果を補正する。なお、この受信電力比の情報は、移動端末装置から無線基地局装置にフィードバックされる。
【0055】
しきい値判定部146は、各セルの平均受信レベルに対してしきい値判定を行い、しきい値Δ以内であるセルがあるかどうかを判定する。平均受信レベルがしきい値Δ以内であるセルがある場合には、そのセルの情報(セル情報)を無線基地局装置にフィードバックする。
【0056】
図8は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置の概略構成を示すブロック図である。
図8に示す無線基地局装置2は、アンテナ21と、アンプ部22と、送受信部23と、ベースバンド信号処理部24と、呼処理部25と、伝送路インターフェース26とから主に構成されている。
【0057】
このような構成の無線基地局装置2において、上りリンク信号については、アンテナ21で受信された無線周波数信号がアンプ部22で、AGCの下で受信電力が一定電力に補正されるように増幅される。増幅された無線周波数信号は、送受信部23においてベースバンド信号へ周波数変換される。このベースバンド信号は、ベースバンド信号処理部24で所定の処理(誤り訂正、復号など)がなされた後、伝送路インターフェース25を介して図示しないアクセスゲートウェイ装置に転送される。アクセスゲートウェイ装置は、コアネットワークに接続されており、各移動端末装置を管理している。また、上りリンクに関しては、上りリンクのベースバンド信号に基づいて、無線基地局装置2で受信された無線周波数信号の受信SINR及び干渉レベルが測定される。
【0058】
呼処理部25は、上位装置の無線制御局との間で呼処理制御信号を送受信し、無線基地局装置2の状態管理やリソース割り当てをする。なお、上記レイヤ1処理部241とMAC処理部242における処理は、呼処理部25において設定されている、無線基地局装置2と移動端末装置1との間の通信状態に基づいてなされる。
【0059】
下りリンク信号については、上位装置から伝送路インターフェース26を介してベースバンド信号処理部24に入力される。ベースバンド信号処理部24では、再送制御の処理、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化などがなされて送受信部23に転送される。送受信部23では、ベースバンド信号処理部24から出力されたベースバンド信号を無線周波数信号へ周波数変換する。周波数変換された信号は、その後、アンプ部22で増幅されてアンテナ21から送信される。
【0060】
図9は、図8に示す無線基地局装置におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。
ベースバンド信号処理部24は、レイヤ1処理部241と、MAC処理部242と、RLC処理部243と、送信電力制御部244と、モード切り替え部245と、しきい値判定部246と、CQI補正部247とから主に構成されている。
【0061】
レイヤ1処理部241は、主に物理レイヤに関する処理を行う。レイヤ1処理部241は、例えば、上りリンクで受信した信号に対して、CP除去、高速フーリエ変換(FFT)、周波数デマッピング、逆フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)、データ復調などの処理を行う。また、レイヤ1処理部241は、下りリンクで送信する信号に対して、データ変調、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform))、周波数マッピング、逆高速フーリエ変換(IFFT)、CP付加などの処理を行う。
【0062】
MAC処理部242は、上りリンクで受信した信号に対するMACレイヤでの再送制御、上りリンク/下りリンクに対するスケジューリング、PUSCH/PDSCHの伝送フォーマットの選択、PUSCH/PDSCHのリソースブロックの選択などの処理を行う。
【0063】
RLC処理部243は、上りリンクで受信したパケット/下りリンクで送信するパケットに対して、パケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御などを行う。
【0064】
送信電力制御部244は、しきい値判定部246の判定結果に基づいて、移動端末装置に対する送信電力を制御する。送信電力制御部244は、フィードバックされたチャネル品質情報(CQI)を用いて、CoMP送信に関わる無線基地局装置(CoMP候補セルの無線基地局装置)からの信号の移動端末装置における平均受信レベルが等しくなるように、下りリンク送信の送信電力を制御する(方法1)。また、送信電力制御部244は、CoMP候補セルの無線基地局装置間の平均受信レベル差が大きい場合には、相対的に平均受信レベルの低い無線基地局装置への送信を停止(OFF)し、最も平均受信レベルの高い無線基地局装置からの送信のみとする制御を行う(方法2)。また、送信電力制御部244は、しきい値判定の結果により、方法1と方法2とを切り替えて送信電力制御を行う(方法3)。
【0065】
モード切り替え部245は、後述するしきい値判定部246の判定結果に基づいて、送信態様のモードの切り替えを行う。すなわち、モード切り替え部245は、しきい値判定部246の判定結果に基づいて、CoMP対象セルからの送信電力を制御するか、移動端末装置において平均受信レベルが最も高いセルからの送信のみにするかのモード切り替えを行う。
【0066】
しきい値判定部246は、セル情報として移動端末装置から送られた、平均受信レベルがしきい値Δ以内であるセル間の平均受信レベル差がしきい値Δ(第2しきい値)以内であるかどうかを判定する。しきい値判定部246は、この判定結果を送信電力制御部244、モード切り替え部245に出力する。
【0067】
CQI補正部247は、無線基地局装置においてCoMP対象となる相手のセルからの干渉の有無を判断する場合には、その判断結果に応じて、移動端末装置からフィードバックされたCQI(チャネル品質測定結果)を補正する。したがって、CQI補正部247は、CoMP対象となる相手のセルからの干渉があると判断した場合には、CQIを補正する。この場合において、CQIの補正は、移動端末装置からフィードバックされた、各セルの受信電力比の情報を用いて行われる。一方、CoMP対象となる相手のセルからの干渉がないと判断した場合には、移動端末装置からフィードバックされたCQIを用いてMCS選択を行う。
【0068】
次に、上記構成を有する移動端末装置と無線基地局装置との間の無線通信方法について説明する。ここでは、無線基地局装置が、図5(a)に示すような無線基地局装置eNBとこの無線基地局装置eNBと光張り出しされた複数の遠隔無線装置RREとを含む構成である場合について説明する。
【0069】
移動端末装置は、複数の無線基地局装置(下りCoMP送信に関わる複数の遠隔無線装置)から参照信号を含む下りリンク信号を受信する。移動端末装置においては、CQI生成部145で参照信号を用いてCQIを生成する。CQIの生成においては、端末固有の参照信号(例えば、DM−RS)を用いてCQIを生成しても良く、非直交のCSI−RSを用いてCQIを生成し、その後このCQIを補正しても良く、直交化したCSI−RSを用いてCQIを生成しても良い。なお、DM−RSを用いてCQIを生成する場合には、DM−RSでCQIを測定するモード情報にしたがう。
【0070】
次いで、移動端末装置は、CQIを含むフィードバック情報を複数の遠隔無線装置にそれぞれ送信する。この場合においては、複数の遠隔無線装置に対してPUCCHでCQIをサブフレーム毎に時分割で送信しても良く、複数の遠隔無線装置に対してPUSCHでCQIを送信しても良く、複数の遠隔無線装置に対するCQIをコード多重して送信しても良く、複数の遠隔無線装置に対するCQIを複数の送信アンテナからMIMO送信により送信しても良い。
【0071】
無線基地局装置においては、上りリンク信号を受信する。この上りリンク信号は、下りCoMP送信に関わる複数の遠隔無線装置のCQI、及び平均受信レベルが第1しきい値(Δ)範囲内にある遠隔無線装置に関するセル情報を含む。無線基地局装置においては、CQIとセル情報とから平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある遠隔無線装置のうち平均受信レベル差が第2しきい値(Δ)範囲内にある遠隔無線装置があるかどうかを判定し、平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある遠隔無線装置がある場合に、CQI及びセル情報を用いて、両無線基地局装置に対する送信電力を制御する。
【0072】
なお、本送信電力制御の際に用いられるCQIは、無線基地局装置でCoMP対象となる相手のセルからの干渉があると判断した場合に補正したCQIであっても良い。この場CQIの補正においては、移動端末装置からフィードバックされた各セルの受信電力比の情報を用いる。
【0073】
送信電力制御については、平均受信レベル差がしきい値Δ以内である場合には、両者の平均受信レベルが等しくなるように送信電力を制御する(方法1)。あるいは、平均受信レベル差がしきい値Δ以内である場合に、平均受信レベルを合わせないジョイント送信を行い、平均受信レベル差がしきい値Δを超える場合には、平均受信レベルが相対的に低いセルの無線基地局装置からの送信をOFFし、平均受信レベルが最も高いセルの無線基地局装置からのみ送信を行う(DCS)(方法2)。あるいは、平均受信レベル差がしきい値Δ以内である場合に、両者の平均受信レベルが等しくなるように送信電力を制御(平均受信レベルを合わせるジョイント送信)し、平均受信レベル差がしきい値Δを超える場合には、平均受信レベルが相対的に低いセルの無線基地局装置からの送信をOFFし、平均受信レベルが最も高いセルの無線基地局装置からのみ送信を行う(DCS)(方法3)。なお、方法3の場合には、方法1と方法2の切り替えとなるので、モード情報(方法1のモードと方法2のモード)に基づいて送信電力制御を行う。
【0074】
このように、本発明によれば、複数の無線基地局装置からの参照信号を用いてチャネル品質を測定し、それぞれのチャネル品質測定結果を含むフィードバック情報を複数の無線基地局装置にそれぞれ送信するので、LTE−Aシステムでの下りCoMP送信の際の最適な制御を行うことができる。
【0075】
上記においては、無線基地局装置が、図5(a)に示すような無線基地局装置eNBとこの無線基地局装置eNBと光張り出しされた複数の遠隔無線装置RREとを含む構成である場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、図5(b)に示す無線基地局装置(eNB)の構成であっても良い。この場合においては、本送信電力制御やCQI補正に必要となる情報をX2インターフェースで伝送することとなる。
【0076】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、セル数は一例であり、これに限定されるものではない。また、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、上記説明における処理部の数、処理手順については適宜変更して実施することが可能である。また、図に示される要素の各々は機能を示しており、各機能ブロックがハードウエアで実現されても良く、ソフトウエアで実現されてもよい。その他、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、LTE−Aシステムの移動端末装置、無線基地局装置及び送信電力制御方法に有用である。
【符号の説明】
【0078】
移動端末装置
無線基地局装置
3 アクセスゲートウェイ
4 コアネットワーク
セル
11,21 アンテナ
12,22 アンプ部
13,23 送受信部
14,24 ベースバンド信号処理部
15,25 呼処理部
16 アプリケーション部
26 伝送路インターフェース
141,241 レイヤ1処理部
142,242 MAC処理部
143,243 RLC処理部
144 受信レベル測定部
145 CQI生成部
146,246 しきい値判定部
244 送信電力制御部
245 モード切り替え部
247 CQI補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下りリンクマルチポイント送信に関わる複数の無線基地局装置から参照信号を含む下りリンク信号をそれぞれ受信する受信手段と、前記参照信号を用いてチャネル品質を測定するチャネル品質測定手段と、前記チャネル品質の測定結果を含むフィードバック情報を前記複数の無線基地局装置にそれぞれ送信する送信手段と、を具備することを特徴とする移動端末装置。
【請求項2】
前記フィードバック情報を時分割で前記複数の無線基地局装置に送信することを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
【請求項3】
前記フィードバック情報をコード多重して前記複数の無線基地局装置に送信することを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
【請求項4】
前記フィードバック情報を複数の送信アンテナから前記複数の無線基地局装置にMIMO送信することを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
【請求項5】
前記チャネル品質の測定結果が端末固有の参照信号を用いて求められることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動端末装置。
【請求項6】
前記チャネル品質の測定結果がチャネル品質測定用参照信号を用いて求められ、その測定結果を補正して得られることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動端末装置。
【請求項7】
前記チャネル品質の測定結果が直交化されたチャネル品質測定用参照信号を用いて求められることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動端末装置。
【請求項8】
各無線基地局装置からの受信電力の比の情報を用いて前記測定結果を補正することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の移動端末装置。
【請求項9】
下りリンクマルチポイント送信に関わる複数の無線基地局装置のチャネル品質測定結果、及び平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置に関するセル情報を含む上りリンク信号を受信する受信手段と、前記チャネル品質測定結果及び前記セル情報から、平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置のうち平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置があるかどうかを判定する判定手段と、平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がある場合に、両無線基地局装置に対する送信電力を制御する送信電力制御手段と、を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項10】
前記送信電力制御手段は、平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がある場合に、両無線基地局装置からの平均受信レベルが略等しくなるように前記無線基地局装置の送信電力を制御することを特徴とする請求項9記載の無線基地局装置。
【請求項11】
平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がない場合に、最も平均受信レベルが高い無線基地局装置からのみ送信を行うことを特徴とする請求項10記載の無線基地局装置。
【請求項12】
前記送信電力制御手段は、すべての移動端末装置に対する送信電力を調整することにより前記両無線基地局装置の送信電力を補正することを特徴とする請求項10又は請求項11記載の無線基地局装置。
【請求項13】
前記送信電力制御手段は、セル端の移動端末装置以外の移動端末装置の送信電力を下げることにより両無線基地局装置の送信電力を補正することを特徴とする請求項10又は請求項11記載の無線基地局装置。
【請求項14】
移動端末装置からフィードバックされた、各無線基地局装置からの受信電力の比の情報を用いて前記チャネル品質測定結果を補正するチャネル品質測定結果補正手段を具備することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれかに記載の無線基地局装置。
【請求項15】
前記複数の無線基地局装置は、無線基地局装置とこの無線基地局装置と光張り出し構成で接続された複数の遠隔無線装置とで構成されていることを特徴とする請求項9から請求項14のいずれかに記載の無線基地局装置。
【請求項16】
移動端末装置において、下りリンクマルチポイント受信に関わる複数の無線基地局装置から参照信号を含む下りリンク信号をそれぞれ受信する工程と、前記参照信号を用いてチャネル品質を測定する工程と、前記チャネル品質の測定結果を含むフィードバック情報を前記複数の無線基地局装置にそれぞれ送信する工程と、無線基地局装置において、下りリンクマルチポイント送信に関わる複数の無線基地局装置のチャネル品質測定結果、及び平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置に関するセル情報を含む上りリンク信号を受信する工程と、前記チャネル品質測定結果及び前記セル情報から、平均受信レベルが第1しきい値範囲内にある無線基地局装置のうち平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置があるかどうかを判定する工程と、平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がある場合に、両無線基地局装置に対する送信電力を制御する工程と、を具備することを特徴とする無線通信方法。
【請求項17】
平均受信レベル差が第2しきい値範囲内にある無線基地局装置がある場合に、両無線基地局装置からの平均受信レベルが等しくなるように前記無線基地局装置の送信電力を制御する工程を具備することを特徴とする請求項16記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−142516(P2011−142516A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2240(P2010−2240)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】