説明

移動端末装置及び移動端末装置のスリープ制御方法

【課題】消費電力低減を図ることが可能なスリープ制御を行う移動端末装置の提供。
【解決手段】移動端末装置は、第1送受信機で受信された第1周波数帯域の信号である第1信号の受信品質と、前記第2送受信機で受信された第2周波数帯域の信号である第2信号の受信品質とを測定する測定部と、第2信号の受信品質が閾値以下となったときの第1信号の受信品質を用いた指標値を保持する記憶装置と、第2信号の受信品質が閾値以下となったことを契機として第2送受信機をスリープ状態にし、その後に測定された第1信号の受信品質が記憶装置に保持された指標値以上となったときにスリープ状態を解除する制御装置とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末装置及び移動端末装置のスリープ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信においては、従来の携帯電話での音声通話主体の通信に代わり、データ通信用途が拡大している。データ通信用途として、インターネットアクセス、ストリーミング放送、音楽や映像のようなリッチコンテンツ(Rich Contents)の配布が例示され
る。データ通信用途では、大容量データの高速な伝送が要求されることが少なくない。このため、より広帯域な通信の採用が検討されている。広帯域通信の検討において、1つの移動端末装置が複数の周波数帯域を同時使用する、キャリアアグリゲーション(Carrier-Aggregation)と呼ばれる手法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−087869号公報
【特許文献2】特開2007−228483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したキャリアアグリゲーションのサポートに限られず、1つの移動端末装置が複数の周波数帯域を利用可能な移動端末装置が各周波数帯域に係る電波受信環境に応じて複数の周波数帯域の1つを選択利用することが考えられる。
【0005】
この場合、移動端末装置は、例えば、複数の周波数帯域の夫々に対応する複数の送受信機を備え、各周波数帯域のカバレッジエリア(基地局からの電波を受信できる領域)において、基地局からの報知情報を受信し、対応する周波数帯域を利用可能か否かを確認することが想定される。
【0006】
ここで、移動端末装置がサポートする複数の周波数帯域の夫々に対する報知情報を検出する機構を無制限に動作させることは、移動端末装置の消費電力の増大を招来するので回避されるべきである。消費電力の低減を図る手法の一つとして、移動端末装置が有する或る機構に対して、一時的な動作制限や電力供給停止を行うスリープ機能の搭載(省電力モードの実施)がある。
【0007】
本発明の一態様の目的は、消費電力低減を図ることが可能なスリープ制御を行う移動端末装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1の周波数帯域の信号である第1信号を送受信する第1送受信機と、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号である第2信号を送受信する第2送受信機と、
前記第1送受信機で受信された第1信号の受信品質と、前記第2送受信機で受信された第2信号の受信品質とを測定する測定部と、
前記第2信号の受信品質が閾値以下となったときの前記第1信号の受信品質を用いた指標値を保持する記憶装置と、
前記第2信号の受信品質が閾値以下となったことを契機として前記第2送受信機をスリ
ープ状態にし、その後に測定された前記第1信号の受信品質が前記記憶装置に保持された指標値以上となったときに前記スリープ状態を解除する制御装置と
を含む移動端末装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、消費電力低減を図ることが可能なスリープ制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、複数の周波数帯域を同時使用する通信サービスの周波数の割り当てを例示する図である。
【図2】図2は、複数の周波数帯域を同時使用可能な通信サービスのカバーエリアを例示する図である。
【図3】図3は、複数の周波数帯域を同時使用可能な移動局の基本構成を説明するための概略図である。
【図4】図4は、移動局の実施例を説明するための概略図である。
【図5】図5は、第一実施形態のスリープ制御方法を説明するための説明図である。
【図6】図6は、第一実施形態のスリープ制御方法を説明するための説明図である。
【図7】図7は、スリープ制御処理(処理例1)のフローチャートである。
【図8】図8は、スリープ制御処理(処理例2)のフローチャートである。
【図9】図9は、報知情報を利用したスリープ制御方法を説明するための説明図である。
【図10】図10は、サービング基地局から通知される報知情報を例示する図である。
【図11】図11は、第二実施形態の処理例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、第二実施形態の処理例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、第二実施形態の処理例を示すフローチャートである。
【図14】図14は、図11に示したハンドオーバ処理の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0012】
<第一実施形態>
以下、図1から図8の図面を参照して、第一実施形態に係る移動端末装置(以下、「移動局」と表記)について説明する。
【0013】
〔通信サービスエリア〕
第一実施形態における移動局は、複数の周波数帯域を同時に使用することができる。図1は、移動局が同時使用可能な複数の周波数帯域の例示である。移動局は、複数の周波数帯域として、2GHz帯のBand1(第1の周波数帯域)と、Band1より周波数の高い3.5GHz帯のBand2(第2の周波数帯域)とを同時使用することができる。
【0014】
すなわち、移動局は、Band1及びBand2の双方の同時利用(キャリアアグリゲーション)によって、広帯域通信(高速通信)を実施することができる。キャリアアグリゲーションは、所定の通信帯域幅を有する周波数ブロック(Component carrier)を複数
に束ねて利用することで広帯域化を行う技術である。また、移動局は、Band1及びBand2の一方を選択的に使用した通信を実行することもできる。Band2が使用される場合、Band1よりも高速な通信を実行することができる。
【0015】
移動局は、例えばBand1の使用によって、音声通話サービスや静止画像のダウンロードのような低速データ通信サービスを利用することができる。また、移動局は、例えばBand2の使用によって、映像ストリーミングの配信サービスを享受することができる。さらに、移動局は、Band1及び2の同時使用によって、広帯域通信サービスを享受することができる。
【0016】
なお、第一実施形態では、キャリアアグリゲーションをサポートする移動局を例示する。しかし、複数の周波数帯域を同時に使用した広帯域通信を実行できることは、移動局の必須要件ではない。すなわち、移動局は、複数の周波数帯域を使用可能であればよい。したがって、移動局は、複数の周波数帯域を個別に同時利用可能な移動局であっても良い。或いは、移動局は、複数の周波数帯域の一つを選択的に使用可能な移動局であっても良い。
【0017】
また、上記した2GHz帯、3.5GHz帯は例示であり、例えば、広帯域符号多元アクセス(Wideband Code Division Multiple Access:W-CDMA)などで使用されている80
0Hz帯、1.5GHz帯、1.7Hzを適用することもできる。また、複数の周波数帯域の組合せは適宜設定可能である。また、移動局がサポートする周波数帯域の数は2つに限られず、3以上であっても良い。
【0018】
図2は、図1に示したBand1及び2をサポートする基地局BS1及びBS2のカバレッジエリア(サービスエリア)を例示する。基地局BS1は、Band1及び2の双方をサポートしており、移動局がBand1を使用して通信サービスを享受できるカバレッジエリアB1と、移動局がBand2を使用して通信サービスを享受できるカバレッジエリアB2とを有している。周波数帯域の違いによる電波の伝搬特性の相違によって、同じ送信電力を用いても形成されるカバレッジエリアのサイズに差異が生じる。図1の例では、Band2の周波数帯域は、Band1の周波数帯域より相対的に高いため、Band2のカバレッジエリアB2は、Band1のカバレッジエリアB1より小さい。
【0019】
図2に示す例では、Band1及びBand2の各カバレッジエリアB1及びB2は、同一の基地局BS1によって形成される。このためカバレッジエリアB1及びB2は、基地局BS1の位置を中心とした同心円で形成されている(実際のカバレッジエリアは円形とならないが、図2では模式的に円形で示す)。
【0020】
従って、カバレッジエリアB2の全ての領域は、カバレッジエリアB1上にオーバーラップしており、移動局は、カバレッジエリアB2において、Band1及びBand2の双方を使用することができる。基地局BS1は、Band1及び2の夫々に係る報知情報を送信し、報知情報は対応するカバレッジエリアに伝搬される。移動局は、適宜のタイミングで報知情報の検出処理(サーチ処理)を行う。報知情報を検出した移動局は、当該報知情報を用いて、基地局に対する接続手順(アタッチ手順)を実施し、基地局を介した通信を開始することができる。
【0021】
従って、カバレッジエリアB2に在圏する移動局(図2では、移動局MS1を例示)は、基地局BS1から、Band1対応の報知情報と、Band2対応の報知情報とを夫々受信(検出)することができる。移動局MS1は、受信される報知情報を用いて、Band1及びBand2の双方に関して基地局BS1と接続し、Band1及びBand2の少なくとも一方を用いた通信を開始することができる。すなわち、移動局MS1は、Band1又はBand2を用いた通信、或いは、Band1及びBand2を同時利用する通信を選択的に実施することができる。例えば、カバレッジエリアB2に在圏する移動局は、Band1及びBand2を同時使用した広帯域な高速データ通信サービスを享受することができる。
【0022】
これに対し、カバレッジエリアB1に在圏する移動局(図2では、移動局MS2を例示)は、基地局BS1からのBand1用の報知情報のみを検出可能である。このため、移動局MS2は、Band1を用いた通信のみを実施することができる。このように、移動局は、カバレッジエリアB2において、享受すべき通信サービスの種別に応じて、カバレッジエリアB1で利用可能な通信よりも高速な通信を実施することができる。
【0023】
基地局BS2は、基地局BS1と同様に、Band1及び2の双方をサポートしており、基地局BS2を中心として同心円状に重ねて形成されたBand1のカバレッジエリアB1´及びBand2のカバレッジエリアB2´とを有している。カバレッジエリアB1´及びB2´は、カバレッジエリアB1及びB2とほぼ同等のサイズを有している。カバレッジエリアB1とカバレッジエリアB1´とは隣接配置されている。
【0024】
カバレッジエリアB1とカバレッジエリアB1´の境界部分(図2では、カバレッジエリアB1とカバレッジエリアB1´の接点部分)において、移動局は、Band1用の報知情報を基地局BS1及びBS2の双方から受信することができる。移動局は、或る周波数帯域(図2の例ではBand1)に関して、隣接基地局(ターゲット基地局:例えば基地局BS2)からの報知情報(電波)の受信レベルが接続中の基地局(サービング基地局:例えば基地局BS1)からの報知情報の受信レベルを上回り、且つ所定の閾値を超えたときに、ハンドオーバを行う。ハンドオーバによって、移動局は、Band1を用いた通信を継続することができる。
【0025】
これに対し、図2の例では、Band2に関するカバレッジエリアB2及びB2´は、相互に離れている。このため、移動局は、カバレッジエリアB2において、他の基地局BS2からBand2用の報知情報を受信できない。逆に、移動局は、カバレッジエリアB2´において、他の基地局BS1からBand2に係る報知情報を受信できない。従って、移動局は、Band2に関する基地局BS1と基地局BS2間でのハンドオーバを実施することができない。従って、移動局は、Band2用のカバレッジエリアB2又はB2´から離れると、Band2を用いた通信を継続できない。Band2を用いた通信の再開は、移動局がBand2用のカバレッジエリアB2又はB2´に進入した場合に行われる。
【0026】
例えば、図2において、移動局がBand2を用いた通信を行いつつ、移動局MS1の位置から移動局MS2の位置に移動した場合には、移動局におけるBand2を用いた通信が切断される。この場合、移動局は、カバレッジエリアB2又はB2´に進入することで、Band2を用いた通信を再開することができる。
【0027】
第一実施形態に係る移動局は、Band1及びBand2の信号を送受信する各機構に対するスリープ機能を有する。スリープ機能は、Band1及びBand2の夫々に関して移動局が使用しない、又は使用できない蓋然性が高い場合に、対応する機構の動作を停止、又は電源供給を中止して、対応する機構の電力消費を抑える機能である。
【0028】
例えば、移動局がBand1を使用可能であるが、Band2を使用できない状況において、Band2に対応する機構に対するスリープ機能が実施され、Band2に対応する機構の動作停止や電源供給中止が行われる。一般に、Band2を使用できない環境下では、移動局は、基地局からのBand2に係る報知情報をサーチする処理(サーチ処理)を周期的に行う。しかし、Band2に係る報知情報を受信できない環境下でのサーチ処理は、電力浪費となる。上記したスリープ機能の実施によれば、Band2用のサーチ処理の実行が停止される。従って、移動局の電力浪費が抑えられる。
【0029】
しかしながら、Band2用のサーチ処理がスリープされることは、移動局がBand2のカバレッジエリアに在圏しても、当該カバレッジエリアで報知されるBand2用の報知情報を受信するためのサーチ処理が実行されないことを意味する。このため、第一実施形態に係る移動局は、Band1用の報知情報の受信品質に基づいて、Band2のスリープを解除するための制御を行う。
【0030】
〔移動局の構成〕
図3は、第一実施形態に係る移動局のハードウェア構成例を示す図である。図3に例示する移動局100は、送受信アンテナ101が接続された送受信機102と、送受信アンテナ103が接続された送受信機104とを備える。また、移動局100は、送受信機102,104が接続された信号処理プロセッサ105と、信号処理プロセッサ105に接続された信号処理用ワークメモリ106及び信号処理プログラムメモリ107を備える。さらに、移動局100は、信号処理プロセッサ105に接続されたアプリケーションプロセッサ108と、アプリケーションプロセッサ108に接続されたアプリケーション用メモリ109及び入出力装置110を備える。
【0031】
送受信アンテナ101及び送受信機102は、Band1に係る信号を送受信するために使用される。送受信アンテナ103及び送受信機104は、Band2に係る信号を送受信するために使用される。このように、図3の例では、周波数帯域Band1,Band2毎に異なる送受信アンテナを有している。このような複数の送受信アンテナの代わりに、複数の周波数帯域をカバーする広帯域の一つの送受信アンテナを適用することができる。尚、送受信機102は第1送受信機の例示であり、像受信機104は第2送受信機の例示である。
【0032】
信号処理プロセッサ105は、移動局100全体の制御を行う中央演算処理装置である。信号処理プロセッサ105は、信号処理プログラムメモリ107に格納された各種のプログラムを信号処理用ワークメモリ106に読み出して実行する。これによって、移動局100としての様々な処理が実行される。信号処理プロセッサ105は、後述するように、プログラムの実行によって、変復調機能、受信品質測定機能、制御機能、復帰判定機能、制御情報抽出機能、復帰品質保持機能、制御情報抽出機能等を実現する。信号処理プロセッサ105は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)のようなプロセッサ、或いはこのようなプロセッサを有するシステムLS
I(Large Scale Integration)を用いて実現可能である。プロセッサ105,メモリ1
06及びメモリ107によって実現される機能は、LSIのような専用のハードウェア回路によって実現することもできる。尚、信号処理プロセッサ105は制御装置の例示である。
【0033】
信号処理用ワークメモリ106は、信号処理プロセッサ105による作業領域が展開される記憶装置である。信号処理用ワークメモリ106は、例えば、RAM(Random Access Memory)のような半導体メモリを適用可能である。信号処理プログラムメモリ107は、各種プログラムや各種データを格納する記憶媒体を備えた記憶装置である。信号処理プログラムメモリ107として、ROM(Read Only Memory)やEPROM(Erasable Programmable ROM),フラッシュROM(フラッシュメモリ)等の半導体メモリ、磁気記録
媒体等の記憶装置を例示することができる。尚、信号処理用ワークメモリ106は記憶装置の例示である。
【0034】
アプリケーションプロセッサ108は、移動局が享受可能な各種の通信サービスに係る送受信データに係る様々な処理を行う演算処理装置である。アプリケーションプロセッサ108は、アプリケーション用メモリ109に格納された各種のプログラムを実行することにより、通信サービスに対応する送受信データの処理を実行する。アプリケーションプ
ロセッサ108は、例えば、CPUやDSPのようなプロセッサ、当該プロセッサを有するシステムLSI、或いはLSIを用いた専用ハードウェアによって実現される。
【0035】
アプリケーション用メモリ109は、プロセッサ108の作業領域として使用されるRAMのような半導体メモリと、プロセッサ108が使用する各種プログラムや各種データを格納する不揮発性の記憶媒体を備えた記憶装置である。不揮発性の記憶媒体は、例えば、ROM,EPROM,フラッシュROM等のなどの半導体メモリ、磁気記録媒体等の記憶装置を例示することができる。
【0036】
入出力装置110は、文字や映像を表示するディスプレイ、音声入出力を行うためのマイクロフォン及びスピーカ,画像(動画)を撮影するカメラ,移動局100のユーザからの様々な情報(アプリケーションに対する命令を含む)を入力するためのキー及びボタン群を備える。
【0037】
移動局は、2以上の周波数帯域を使用した通信が可能な移動端末装置であれば、携帯電話(セルラーフォン)、スマートフォン、無線LAN端末、ブルートゥース端末のような、様々な移動端末装置を適用することができる。移動端末装置は、無線通信機能を有するノート型、或いはタブレット型のパーソナルコンピュータ(PC)や、Personal Digital
Assistant(PDA)を含むことができる。
【0038】
図4は、図3に示した移動局100における信号処理プロセッサ105がプログラムを実行することによって実現される機能ブロックを例示する図である。上述したように、信号処理プロセッサ105は、信号処理プログラムメモリ107に格納された各種プログラムを信号処理用ワークメモリ106に読み出して実行する。このような実行によって、移動局100の信号処理プロセッサ105は、変復調部15,受信品質測定部16,制御部17,復帰品質保持部18,及び復帰判定部19,制御情報抽出部20としての機能を実現する。
【0039】
送受信アンテナ101は、Band1の無線電波(RF信号)を受信し、Band1用の送受信機102へ送る。送受信機102は、図示せぬ、アンプ、フィルタ、ミキサ、A/D(Analog/Digital)、D/A(Digital/Analog)変換器などを備え、アンテナ101の受信信号の周波数変換処理(ダウンコンバート)、増幅処理、波形整形のような受信処理を行い、RF信号をディジタルベースバンド信号へ変換する。ディジタルベースバンド信号は、変復調部15に入力される。
【0040】
変復調部15は、ディジタルベースバンド信号の変調・復調処理、符号化・復号化処理、伝搬路推定処理等を行う。ディジタルベースバンド信号には、ユーザデータ(音声,イメージ,ビデオ,テキストなど),制御情報が含まれる。変復調部15は、送受信機102にて受信処理が施された信号に対する復調処理などを行い、受信データを得る。変復調部15は、受信データをアプリケーションプロセッサ108へ送る。
【0041】
逆に、アプリケーションプロセッサ108から供給されるBand1用の送信データは、変復調部15にて所定の変調方式で変調され、ディジタルベースバンド信号が生成される。ディジタルベースバンド信号は、送受信機102における送信処理によってBand1(2GHz帯)の無線信号(RF信号)にアップコンバートされて送受信アンテナ101から送信される。
【0042】
送受信アンテナ103は、Band2(3.5GHz帯)の無線電波(RF信号)を受信し、Band2用の送受信機104へ送る。送受信機104は、送受信機102と同様の構成を有し、送受信アンテナ103で受信された信号のダウンコンバートを含む受信処
理を行う。変復調部15は、送受信機103の受信処理によって得られたディジタルベースバンド信号に対する復調処理などを行い、受信データを得る。変復調部15は、受信データをアプリケーションプロセッサ108へ送る。逆に、アプリケーションプロセッサ108から供給されるBand2用の送信データは、変復調部15にて所定の変調方式で変調されたディジタルベースバンド信号に変換され、ディジタルベースバンド信号は送受信機104における送信処理により、Band2(3.5GHz帯)の無線信号(RF信号)にアップコンバートされて送受信アンテナ103から送信される。
【0043】
受信品質測定部16は、送受信機102及び送受信機104から出力される信号を用いて、Band1及びBand2の夫々に対する信号の受信品質測定(周波数帯域毎の受信品質測定)を行う。受信品質測定部16で測定される受信品質として、RSSI(Received Signal Strength Indicator),搬送波電力対干渉雑音電力比(Carrier to Interference and Noise Ratio:CINR)を例示することができる。また、受信品質は、先に例
示した指標値の他、信号対雑音電力比(Signal to Noise Ratio:SNR)、信号対干渉
雑音電力比(Signal to Interference Ratio:SIR)、伝搬損失、誤り率(ビットエラーレート,ブロックエラーレート)を適用することも可能である。受信品質測定部16は、上述した複数の受信品質の指標値の少なくとも一つに対する受信品質を、Band1及びBand2について測定する。Band1及びBand2の受信品質の測定結果(受信品質情報)は、制御部17及び復帰判定部19に入力される。尚、受信品質測定部16は測定部の例示である。
【0044】
制御部17は、上位レイヤからの指示や、受信される制御情報を元に、送受信機102、104の動作を制御する。動作制御は、スリープ制御(省電力モード制御)を含む。例えば、制御部17は、受信品質測定部16から提供されるBand1及びBand2の夫々に対応する受信品質情報に基づいて各送受信機102及び104のスリープ制御を行う。すなわち、制御部17は、受信品質情報に基づき、各送受信機102及び104が、動作状態(アクティブ状態、アクティブモード)とスリープ状態(省電力モード)とを含む状態間遷移を行うための制御信号を各送受信機102及び104に供給する。
【0045】
動作状態は、送受信機102、104が上述した受信処理及び送信処理を実行する状態である。これに対し、スリープ状態は、“完全スリープ状態”と呼ぶ第1スリープ状態と、“間欠受信スリープ状態”と呼ぶ第2スリープ状態とを含む。
【0046】
完全スリープ状態(第1スリープ状態)は、送受信機102、104における受信処理及び送信処理が禁止された状態、又は、強制的な(信号入力の有無に拘らない)待機状態(アイドル状態)の維持状態である。また、完全スリープ状態は、送受信機102、104の一部又は全部に対する電源供給が一時的に停止されることによる、送受信機102、104の動作停止状態を含むこともできる。完全スリープ状態への遷移によって、送受信機102,104が動作を停止するため、送受信機102、104の電力消費が抑えられる。よって、移動局100の消費電力の低下が図られる。
【0047】
制御部17は、例えば、送受信機102、104の夫々に対し、受信処理及び送信処理のディスエーブル信号を制御信号として供給することによって、各送受信機102、104を完全スリープ状態にすることができる。一方、制御部17は、送受信機102、104の夫々に対し、受信処理及び送信処理のイネーブル信号を制御信号として供給することによって、各送受信機102、104の完全スリープ状態を解除する(動作状態へ復帰させる)ことができる。
【0048】
或いは、制御部17は、図示しない移動局10内の電源と各送受信機102、104との間に設けられた電源供給スイッチ(図示せず)をオフすることによって、各送受信機1
02、104を動作状態から完全スリープ状態に遷移させることができる。逆に、電源供給スイッチをオンにすることによって、各送受信機102、104を完全スリープ状態から動作状態に遷移させることができる。電源供給スイッチは、例えば、半導体スイッチを適用でき、半導体スイッチは、適宜の位置に配置できる。例えば、半導体スイッチは、送受信機102、104が備えることができる。
【0049】
一方、間欠受信スリープ状態(第2スリープ状態)は、各送受信機102、104が周期的な受信処理(サーチ処理)のみを実行する状態である。間欠受信スリープ状態では、所定の受信品質測定タイミング(図示しないタイマーで管理される)において、送受信機における測定対象の信号の受信処理停止機能が一時的に解除され、信号の受信処理が行われ、受信された信号の受信品質が測定される。受信品質が予め保持された閾値以上である場合に、間欠受信スリープ状態が解除され、動作状態に復帰する。制御部17は、送受信機102,104への制御信号の供給によって、各送受信機102,104を間欠受信スリープ状態にすることができる。
【0050】
第一実施形態に係る移動局100では、Band2に係る受信品質が予め定められた最低受信品質以下となったときに、制御部17は、Band2用の送受信機104が動作状態からスリープ状態へ遷移するための制御信号(スリープ信号)を生成し送受信機104又は送受信機104用の電源スイッチに供給することができる。このとき、制御部17は、Band2に係る受信品質が最低受信品質以下になったときのBand1に係る受信品質情報(受信品質値)を復帰品質保持部18に格納する。
【0051】
復帰品質保持部18に格納されるBand1の受信品質情報(受信品質値)は、送受信機104をスリープ状態から動作状態へ復帰させる指標(例えば閾値)として使用される。以下、復帰品質保持部18に保持される、Band2に係るスリープ解除の指標となるBand1の受信品質値を「復帰品質(値)」と表記する。なお、復帰品質保持部18は、例えば、信号処理用ワークメモリ106(図3)が有する記憶領域に作成される。
【0052】
復帰判定部19は、受信品質測定部16にて生成されたBand1の受信品質情報を受け取り、受け取った受信品質と復帰品質保持部18に保持された復帰品質とを比較する。受信品質が復帰品質未満であれば、復帰判定部19は特に処理を行わない。これに対し、例えば、受信品質が復帰品質以上となったときには、復帰判定部19は、制御部17に対して、受信品質が復帰品質以上になったことを通知する。復帰判定部19から通知を受け取った制御部17は、送受信機104のスリープ状態を解除する(動作状態に復帰させる)制御信号(スリープ解除信号)を送受信機104に与える。
【0053】
制御情報抽出部20は、変復調部15にて得られた制御情報を抽出して制御部17に与える。制御情報は、報知情報やハンドオーバ通知を含む。
【0054】
〔スリープ制御〕
次に、第一実施形態における移動局100による、送受信機104のスリープ制御方法について詳細に説明する。図5は、図1に示した基地局BS1及びBS2のカバレッジエリアB1,B2,B1´,B2´と、各カバレッジエリアに対する移動局100の受信品質との関係を示す。移動局100は、受信品質測定部16で計測される受信品質に基づいて、対応する送受信機のスリープ/スリープ復帰を制御する。以下、図5を用いて、移動局100のBand2に係るスリープ制御例(制御例1)について説明する。
【0055】
図5において、カバレッジエリアB1及びB2、並びにカバレッジエリアB1´及びB2´の夫々は、図1と同様に、基地局BS1、BS2の位置を中心とする同じサイズの同心円で形成されている。図5の下側のグラフは、移動局100が、カバレッジエリアB1
及びB2の中心とカバレッジエリアB1´及びB2´の中心とを結ぶ直線L(図5において破線で示す)上を移動したときの受信品質を示している。
【0056】
基地局BS1及び基地局BS2によって形成されるBand1のカバレッジエリアB1とカバレッジエリアB1´とは隣接する。カバレッジエリアB1,B1´間の隣接点はP3である。従って、移動局100は、基地局BS1と隣接する基地局BS2との間において、通信帯域Band1を使用した通信サービスを継続利用することができる。図5において、基地局BS1,境界点P1,隣接点P3,境界点P2,基地局BS2は直線L上に配置される。境界点P1は、基地局BS1に形成されたエリアB1とエリアB2との境界であり、境界点P2は、基地局BS2に形成されたエリアB1とエリアB2との境界点である。
【0057】
図5に例示するグラフは、直線L上を移動する移動局100の受信品質特性を例示する。図5のグラフの縦軸は、移動局100で測定される受信品質であり、横軸は、直線L上の移動局(MS)100の位置を示す。
【0058】
図5のグラフで図示される直線R11,R12は、移動局100が基地局BS1から受信するBand1及びBand2の各信号の受信品質の推移を示す。一方、直線R21,R22は、移動局100が基地局BS2から受信するBand1及びBand2の各信号の受信品質を示す。移動局100と基地局BS1またはBS2との距離による実際の受信品質の推移は直線的ではなく、距離のべき乗で減少するいくつかの関数を組み合わせたものとなるが、本発明の制御方法に影響しないため、ここでは模式的に直線で表す。
【0059】
移動局100がカバレッジエリアB1及びB2(B1´及びB2´)の中心に位置するとき、移動局100の受信品質測定部16で計測されるBand1及びBand2の夫々の受信品質は、夫々最高の値を示す。各受信品質は、基地局BS1及びBS2の一方から他方へ移動するにつれて、基地局BS1、BS2と移動局100との離間距離が増加するとともに減少する。但し、Band1とBand2の伝搬特性の相違により、Band1の受信品質が低下する傾きは、Band2の受信品質が低下する傾きよりも緩やかである。
【0060】
図5の直線R11,R12に着目すると、移動局100がカバレッジエリアB2内(図5のエリア1)において基地局BS1の位置から離れるにつれて、各受信品質は低下する。そして、境界点P1に達したとき、移動局100で測定されるBand2の受信品質は、移動局100に対して予め規定された最低受信品質(基地局との接続状態を維持できる最低受信品質)“a”となる。
【0061】
移動局100は、最低受信品質aを下回る場合には、Band2を使用した通信を実施できなくなる。このため、移動局100の制御部17は、電力消費を抑えるべく、Band2用の送受信機104をスリープ状態(完全スリープ状態)にする。このとき、制御部17は、Band2の受信品質が最低受信品質aとなったとき(送受信機104をスリープ状態にしたとき)のBand1における受信品質“b”を復帰品質保持部18に格納する。
【0062】
移動局100が境界点P1を超えて境界点P2まで移動するとき(図5のエリア2)、移動局100は、基地局BS1及びBS2の少なくとも一方からBand1の信号のみを受信可能な状態となる。したがって、受信品質測定部16は、Band1の受信品質の測定のみを行う。なお、境界点P3を超えて基地局BS2からの受信品質が基地局BS1の受信品質を上回った適宜のタイミング(例えば、BS1からの受信品質が最低受信品質aとなったとき)で、基地局BS1から基地局BS2へのハンドオーバが実施される。
【0063】
境界点P3を超えた移動局100におけるBand1の受信品質(直線R21で図示)は、移動局100が基地局BS2へ近づくことによって向上する。さらに、移動局100が境界点P2を超えてカバレッジエリアB2´(図5のエリア3)に進入した場合には、移動局100で測定されるであろうBand2の受信品質は、最低受信品質aを上回る。
【0064】
しかしながら、カバレッジエリアB2からの離脱を契機にスリープ状態となった送受信機104は、基地局BS2からの信号(電波)の受信処理を行わない。すなわち、Band2の受信品質を測定できないため、Band2の受信品質を元にスリープ状態を解除することはできない。
【0065】
そこで、移動局100の復帰判定部19は、図5のエリア2(P1−P2間)において、Band1の受信品質を監視し、復帰品質bとの比較を随時行う。そして、復帰判定部19は、移動局100が境界点P2に達することでBand1の受信品質が復帰品質(受信品質b)に達したときに、その旨を制御部17に通知する。通知を受けた制御部17は、送受信機104のスリープ状態を解除する。スリープ状態の解除によって動作状態となった送受信機104は、Band2のサーチ処理を行う。このとき、Band2の受信品質は、移動局がカバレッジエリアB2´に在圏していることから、最低受信品質a以上となる。従って、移動局100は、基地局BS2からの報知情報を用いたアタッチ手順を開始し、Band2を用いた通信サービスを享受可能となる。
【0066】
上述したBand2に係るスリープ制御によれば、Band2に係るスリープ開始時点(Band2の受信品質が最低受信品質aのとき)におけるBand1の受信品質bが復帰品質として保持される。復帰品質は、スリープ解除の指標として使用され、Band1の受信品質が復帰品質bに達したときにBand2に係るスリープが解除され、動作状態に復帰する。
【0067】
これによって、Band2の信号が受信できない領域(エリア2)において、移動局100が周期的なBand2のサーチ処理を実行する(間欠受信スリープ状態での動作を行う)ことを回避することができる。サーチ処理の実行が回避されることで、サーチ処理に要求される電力消費を抑えることができる。よって、移動局100の省電力化を図ることができる。
【0068】
なお、移動局100では、カバレッジエリアB2´において、Band1及びBand2の双方を使用可能となるので、双方を使用した広帯域通信サービスを利用することができる。
【0069】
図5に示した例(制御例1)では、基地局BS1が形成するカバレッジエリアB1及びB2と、基地局BS2が形成するカバレッジエリアB1´及びB2´は同様のサイズを有することを前提に説明を行った。しかしながら、例えば、基地局BS1,BS2が設置される立地環境等の相違により、基地局BS1と基地局BS2との間で移動局100がBand1を用いた通信を継続実施可能であっても、基地局間のハンドオーバを契機としてBand1の電波伝搬特性が大きく変化する場合がある。
【0070】
図6は、基地局間で電波伝搬特性が変化する(カバレッジエリアのサイズが相違する)場合のスリープ制御を説明する。図6は、隣接する基地局間で提供するサービスエリアが相違する場合の受信品質(制御例2)を説明するための図である。
【0071】
図6に示す例において、基地局BS2は、Band1のカバレッジエリアB21とBand2のカバレッジエリアB22とを有し、カバレッジエリアB21及びB22は、基地
局BS2の位置を中心とした同心円で形成されている。カバレッジエリアB21及びB22のサイズは、基地局BS1のカバレッジエリアB1及びB2のサイズより大きい。基地局BS2によって形成されるカバレッジエリアB21及びB22の境界点はP4である。カバレッジエリアB21は、カバレッジエリアB1と隣接点P3で繋がっている。図5と同様に、基地局BS1,境界点P1,隣接点P3,境界点P4及び基地局BS2を結ぶ直線L上を移動局100が移動する場合を想定する。
【0072】
上述したように、カバレッジエリアB21はカバレッジエリアB1より大きく、カバレッジエリアB22はカバレッジエリアB2より大きく、カバレッジエリアB21,B22内の直線L上を移動する移動局100で測定される、Band1及びBand2の各受信品質の変化を示す直線R21a及びR22aの傾きは、伝搬特性の差によりカバレッジエリアB1,B2で測定される受信品質の直線R11,R12の傾きより緩やかであるとする。
【0073】
ここで、図5に示した例と同様に、基地局BS1のカバレッジエリアにおいて、Band2の受信品質が最低受信品質aとなるときのBand1の受信品質bを復帰品質として保持する一方で、送受信機104をスリープ状態にする場合を想定する。
【0074】
直線L上を基地局BS1から基地局BS2へ向かって移動する移動局100におけるBand2の受信品質は、図6に示すように、境界点P4に達した時点で最低受信品質aとなる。これに対し、境界点P4に達した時点でのBand1の受信品質は、直線R21aの傾きが直線R11よりも緩やかなために、復帰品質bより低い受信品質b´となる。したがって、Band1の受信品質が復帰品質bとなるのは、移動局100が境界点P4を超えて或る程度進んだ地点となる。すなわち、スリープ解除(動作状態への復帰)の時点が遅れる。
【0075】
上記の様な遅れを回避し得る、図6における移動局100のBand2に係るスリープ制御例(制御例2)を説明する。図6に示す境界点P1では、移動局100の受信品質測定部16において、Band2の最低受信品質aが測定される一方で、Band1の受信品質bが測定される。
【0076】
移動局100の制御部17は、Band2の最低受信品質aの検出を契機に、Band1の受信品質“b”から、基地局BS1とBS2との間の伝搬特性差マージンmを減じた受信品質b´を復帰品質として復帰品質保持部18に格納する。伝搬特性差マージンmは、実験等によって予め求めておくことができる。制御部17は、受信品質bを取得した場合に、予め用意されているマージンmを用いて復帰品質b´を求め、復帰品質b´を復帰品質保持部18に格納する。マージンmは、サービング基地局から受信される制御情報、例えば報知情報に含めることができる。制御情報抽出部20は、変復調部15で得られた報知情報中のマージンmを抽出して、制御部17に渡す。制御部17は、マージンmを保持し、復帰品質の算出に用いることができる。
【0077】
移動局100は、境界点P1からP4への移動において、境界点P3を超えた適宜のタイミングで、サービング基地局BS1からターゲット基地局BS2へのハンドオーバを行う。
【0078】
制御例2では、制御例1と同様に、Band1の最低受信品質aが検出された時点で、送受信機104が直ちにスリープ状態(完全スリープ状態)にされる制御を実施することができる。但し、制御例2では、Band1の受信品質が復帰品質“b´”以上である間、送受信機104が完全スリープ状態ではなく、間欠受信スリープ状態に遷移する制御を実施するのが好ましい。理由は以下の通りである。
【0079】
制御例2では、移動局100がカバレッジエリアB2から退出することによって、受信品質bより低い復帰品質b´が復帰品質保持部18に保持される。このような状態において、制御例1と同様に、送受信機104が完全スリープ状態になると、完全スリープ状態は、復帰品質b´で解除される状態となる。しかしながら、カバレッジエリアB2外に出た移動局100が、カバレッジエリアB2´へ向かわず、再びカバレッジエリアB2へ向かって移動することが起こり得る。この場合、カバレッジエリアB2の境界点P1に到達したことを表すBand1の受信品質が受信品質bとなる前に、復帰品質b´に達し、完全スリープが解除されてしまう。
【0080】
送受信機104は、完全スリープの解除を契機に、サーチ処理を行う。しかし、Band2の受信品質が最低受信品質aに達していないので、Band2の報知情報を正常に受信することができず、基地局BS1と正常なBand2のアタッチ手順を実施できない。このような問題に鑑み、制御例2では、受信品質がb´以上の間は、送受信機104が間欠受信スリープ状態となり、受信品質がb´未満になると、完全スリープ状態に遷移する。次に、この状態からBand1の受信品質がb´以上になると、送受信機104が再び間欠受信スリープ状態に遷移する。
【0081】
従って、境界点P1と境界点P4との間(図6のエリア2)に位置する移動局100が、カバレッジエリアB2とカバレッジエリアB22の何れに向かって移動した場合でも、Band1の受信品質が復帰品質b´以上である場合は間欠受信スリープ状態となる。そして、移動局100は、間欠受信スリープ状態でのサーチ処理を通じてBand2の報知情報を正常に受信し、送受信機104が動作状態へ復帰することが可能となる。
【0082】
なお、上述した制御例2の説明では、移動局100が基地局BS1から基地局BS2へ向かって移動するケースについて説明した。このケースとは逆のケース、すなわち、移動局100が基地局BS2(カバレッジエリアB22)から基地局BS1(カバレッジエリアB2)へ向かって移動する場合では、Band2の最低受信品質aに対応するBand1の受信品質はb´となる。この場合、マージンmを用いた復帰品質の操作は実行されず、受信品質b´がそのまま復帰品質b´として保持される。
【0083】
〔スリープ制御の処理例〕
《処理例1》
図7は、移動局100によるスリープ制御の処理例1を示すフローチャートである。図7に例示する処理は、図5及び図6を用いて説明した制御例1及び2に対応するスリープ制御例である。以下の図7の説明における動作及び処理は、特に断りがない限り、移動局100の信号処理プロセッサ105の動作及び処理である。
【0084】
図7のフローチャートの開始時点では、移動局100における送受信機102及び104は動作状態であり、移動局100は、基地局BS1のカバレッジエリアB2(図5、図6)に在圏していると仮定する。
【0085】
信号処理プロセッサ105は、受信品質測定部16としての機能によって、周波数帯域毎の受信品質測定を行う。すなわち、信号処理プロセッサ105は、送受信機102で受信された基地局BS1からのBand1の信号に対する受信品質を測定し(S101)、送受信機104で受信された基地局BS1からのBand2の信号の受信品質測定を行う(S102)。
【0086】
信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、Band2の受信品質が、予め決められた最低受信品質以下か否かを判断する(S103)。最低受信品質は
、例えば、図5及び図6に例示された最低受信品質“a”を例示することができる。
【0087】
信号処理プロセッサ105(制御部17)は、Band2の受信品質の値が最低受信品質の値を超える場合には(S103,No)、処理をステップS101に戻す。なお、ステップS101とS102の順序は逆であっても、並列に実行されても良い。
【0088】
ステップS101〜S103のループ処理は、移動局100がカバレッジエリアB2に在圏している間、繰り返し実行される。これに対し、移動局100がカバレッジエリアB2外に退出する場合、ステップS103において、Band2の受信品質が最低受信品質以下であると判定される(S103,Yes)。
【0089】
この場合、信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、伝搬路差マージンの考慮が必要か否かの判断を行う(S104)。伝搬路差マージンは、例えば、図6に示した伝搬特性差マージンmを例示できる。
【0090】
伝搬路差マージンは、例えば、サービング基地局(例えば、基地局BS1)の報知情報中に含まれる。信号処理プロセッサ105は、制御情報抽出部20としての機能によって、変復調部15で得られた報知情報から伝搬路差マージンを抽出し、伝搬路差マージンを例えば信号処理用ワークメモリ106に保持する。そして、信号処理プロセッサ105は、ステップS104の処理において、伝搬路差マージンが保持されていれば、伝搬路差マージンの考慮が必要と判定し、伝搬路差マージンが保持されていなければ、伝搬路差マージンの考慮が不要と判定することができる。
【0091】
伝搬路差マージンが考慮されない場合(S104,No)には、移動局10の信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、Band2の受信品質が最低受信品質a以下と判定されたときのBand1の受信品質(受信品質情報)を、信号処理用ワークメモリ106における復帰品質保持部18としての記憶領域に保存する(S105)。保存される受信品質情報(復帰品質)は、図5及び図6における受信品質“b”を例示できる。
【0092】
信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、Band2用の送受信機104をスリープ状態にする(S106)。続いて、信号処理プロセッサ105は、受信品質測定部16としての機能によって、Band1の受信品質測定を継続し(S107)、復帰判定部19としての機能によって、Band1の受信品質と復帰品質“b”との比較を行う(S108)。
【0093】
測定された受信品質が、復帰品質b未満の場合(S108,No)には、処理がステップS107に戻され、ステップS107及びS108のループ処理が繰り返される。例えば、図5に例示するサービスエリアにおいて、移動局100の位置が、境界点P1と境界点P2との間に位置する場合に、当該ループ処理が実行される。
【0094】
一方、測定された受信品質が、復帰品質b情報以上の場合(S108,Yes)には、信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、Band2用の送受信機104のスリープ状態を解除し、動作状態に復帰させる(S109)。これによって、送受信機104は、Band2のサーチ処理の実行を通じて、Band2の信号に係る送受信処理を再開する。ステップS108のYESの判定は、例えば、図5におけるカバレッジエリアB2´への移動局の進入時に行われる。
【0095】
以上のような、ステップS101〜S103,S105〜S109の処理が、図5を用いて説明した制御例1に相当する。一方、ステップS101〜S103,後述するステッ
プS110〜S120の処理が、図6を用いて説明した制御例2に相当する。
【0096】
ステップS104にてYESの判定が行われた場合、信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、伝搬路差マージンを考慮した復帰品質を保存する(S110)。例えば、移動局100が図6に示したカバレッジエリアB2を出た場合を想定すると、Band2の最低受信品質aに対応するBand1の受信品質bから伝搬路差マージンmを減じた復帰品質b´が信号処理プロセッサ105(制御部17)によって算出され、信号処理用ワークメモリ106(復帰品質保持部18)に保存される。もっとも、移動局100がカバレッジエリアB22から退出する場合には、伝搬路差マージンを用いた復帰品質の操作は実行されず、最低受信品質aに対応する受信品質b´がそのまま復帰品質b´として保存される。
【0097】
信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、Band2用の送受信機104を間欠受信スリープ状態にする(S111)。間欠受信スリープ状態では、送受信機104は、Band2の受信品質タイミングになると(S112,Yes)、Band2の信号のサーチ処理を実施する(S113)。
【0098】
信号処理プロセッサ105は、受信品質測定部16としての機能によって、Band2の受信品質を測定する(S114)。受信品質が予め保持されている閾値以上であれば(S115,Yes)、信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能により、間欠受信スリープ状態を解除して、送受信機104を動作状態に復帰させる(スリープ処理終了)。
【0099】
これに対し、Band2の受信品質が閾値未満であれば(S115,No)、送受信機104は、間欠受信スリープ状態を維持し、信号処理プロセッサ105が有するタイマを用いた計時により次の受信品質タイミングを待つ(S116)。その後、処理がステップS117に進む。
【0100】
ステップS112において、信号処理プロセッサ105は、Band2の受信品質測定タイミングでないと判断した場合(S112,No)には、ステップS117に移行する。
【0101】
ステップS117では、信号処理プロセッサ105は、受信品質測定部16としての機能によって、Band1の受信品質測定を行う。続いて、信号処理プロセッサ105は、復帰判定部19としての機能によって、ステップS117で測定した受信品質がステップS110で保持した復帰品質b´以下か否かを判定する(S118)。
【0102】
Band1の受信品質が復帰品質b´を上回る場合(S118,No)には、処理がステップS112に戻され、間欠受信スリープ状態が継続される。これに対し、Band1の受信品質が復帰品質b´以下の場合(S118,Yes)には、信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、送受信機104を完全スリープ状態にする。
【0103】
そして、信号処理プロセッサ105は、Band1の受信品質を測定し(S119)、受信品質が復帰品質b´以上か否かを判定する(S120)。このようにして、Band1の受信品質が復帰品質b´以下である間、送受信機104の完全スリープ状態が維持される(S119,S120のループ)。一方、Band1の受信品質が復帰品質b´以上となれば(S120,Yes)、処理がステップS112に戻されて、間欠受信スリープ状態に遷移する。その後、送受信機104は、間欠受信スリープ状態を経て、最終的に動作状態に復帰する。
【0104】
《処理例2》
図8に、移動局100におけるスリープ制御処理の処理例2を示すフローチャートである。処理例2は、図7に示した処理例1で実施されるような間欠受信スリープ状態への遷移が省略される点において、処理例1と異なる。但し、処理例2は、処理例1と共通点を含むので、主として相違点のみについて説明する。
【0105】
図8に例示するフローチャートにおいて、ステップS201〜S203の処理は、図7に例示したフローチャートのステップS101〜S103の処理と同じであるため、説明は省略する。
【0106】
ステップS204,S205では、処理例1(図7)と異なり、信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、Band2の最低受信品質aに対応するBand1の受信品質と、この受信品質に伝搬路差マージンmの考慮を加えた修正受信品質とが、復帰品質保持部18に格納される。
【0107】
例えば、移動局100が基地局BS1のカバレッジエリアB2から離れることで、Band2の受信品質が最低受信品質a以下となった場合には、Band2の最低受信品質aに対応するBand1の受信品質bの値と、受信品質bから伝搬路差マージンmを差し引いた受信品質b´の値とが、それぞれ、第1復帰品質b,第2復帰品質b´として復帰品質保持部18に保持される。
【0108】
その後、信号処理プロセッサ105における制御部17の機能によって、送受信機104が完全スリープ状態にされる(S206)。その後、Band1の受信品質測定が、信号処理プロセッサ105の受信品質測定部16としての機能により実施される(S207)。
【0109】
ステップS208では、Band1の受信品質が第2復帰品質b´未満か否かの判定処理が、信号処理プロセッサ105における復帰判定部19としての機能によって実行される。このとき、Band1の受信品質が第2復帰品質b´以上であれば(S208,No)、Band1の受信品質が第1復帰品質b以上か否かの判定処理が、信号処理プロセッサ105における復帰判定部19としての機能によって実行される(S209)。
【0110】
Band1の受信品質が第1復帰品質b未満であれば(S209,No)、処理がステップS207に戻される。これに対し、Band1の受信品質が第2復帰品質b以上であれば(S209,Yes)、信号処理プロセッサ105は、制御部17としての機能によって、送受信機104の完全スリープ状態から動作状態に復帰させる(ステップS212)。これによって、Band2の信号の受信が再開され、図8のスリープ処理が終了する。
【0111】
ところで、ステップS208で、Band1の受信品質が第2復帰品質b´未満である場合には(S208,Yes)、ステップS210で、Band1の受信品質が測定される。さらに、測定されたBand1の受信品質が第2復帰品質b´以上か否かの判定処理が、信号プロセッサ105における復帰判定部19としての機能によって実行される(S211)。
【0112】
このとき、Band1の受信品質が第2復帰品質b´未満であれば(S211,No)、処理がステップS210に戻され、ステップS211でYesの判定が行われるまで、ステップS210及びS211のループ処理が実行される。が判定される。Band1の受信品質が第2復帰品質b´以上となれば、処理がステップS212へ進み、送受信機104の完全スリープ状態が解除されて、動作状態に遷移する。
【0113】
処理例2における、ステップS208でのNoの判定は、例えば、図6に示すカバレッジエリアB2から退出した移動局100が、再びカバレッジエリアB2へ向かって移動しているとの想定において行われる。このため、ステップS209における、Band1の受信品質が復帰品質に到達したかの判定は、カバレッジエリアB2に対応する第1復帰品質bを用いて行われる。
【0114】
これに対し、ステップS208でのYesの判定は、カバレッジエリアB2から離れた移動局100が、カバレッジエリアB22へ向かって移動しているとの想定下で行われる。従って、ステップS211における、Band1の受信品質が復帰品質に達したかの判定は、カバレッジエリアB22に対応する第2復帰品質b´を用いて行われる。
【0115】
このような処理例2によっても、一旦カバレッジエリアB2を離れた移動局100が、カバレッジエリアB2に戻る場合とカバレッジエリアB22へ移動する場合との双方において、適正な完全スリープ状態の解除を行うことができる。
【0116】
〔第一実施形態の作用効果〕
第一実施携帯における移動局100の制御例1によれば、Band1及びBand2の双方を使用可能な状態からBand1のみを使用可能になった時点で、Band1の受信品質を復帰品質として保持する一方で、Band2用の送受信機104を完全スリープ状態とする。その後、Band1の受信品質が復帰品質以上となることを契機として、完全スリープ状態を解除する。これによって、間欠受信スリープ状態時における、一時的な受信処理が周期的に実施されることが回避される。従って、一時的な受信処理のための電力消費が抑えられ、移動局100の消費電力の低減を図ることができる。
【0117】
また、移動局100の制御例2(処理例1)によれば、基地局のカバレッジエリア間で電波の伝搬特性差(伝搬路差)がある場合において、伝搬特性(伝搬路)マージンにより操作されたBand1の受信品質(マージンが考慮された受信品質)が復帰品質として保持される。
【0118】
また、Band1の受信品質が復帰品質以下である間、送信機104が完全スリープ状態となり、復帰品質を上回る間、送受信機104が間欠受信スリープ状態となる。よって、Band2のカバレッジエリアを離れた移動局が、元のカバレッジエリアに戻る場合と移動予定の他のBand2のカバレッジエリアへ移動する場合との双方において、適正にスリープ状態から動作状態への復帰を果たすことができる。さらに、移動局100の制御例2(処理例2)によれば、送受信機104の間欠受信スリープ状態が省略されるので、処理例1に比べて消費電力を抑えることができる。
【0119】
〔変形例〕
第一実施形態の移動局100において、制御例1に従ったスリープ制御が実施され、復帰品質bが保存され且つ送受信機104が完全スリープ状態にされた状態において、Band1の受信品質が最低受信品質を下回り、Band1の受信品質を測定できなくなることが起こり得る(例えば、移動局100がカバレッジエリアB1及びB1´外に移動した場合)。この場合には、移動局100の信号処理プロセッサ105は、Band1の通信を再開できるように、Band1のサーチ処理を周期的に行う送受信機102の制御を行う。一方、信号処理プロセッサ105は、Band1の受信品質が復帰品質になることを待たずに、Band2の完全スリープ状態を間欠受信スリープ状態に切り替える。
【0120】
これによって、Band2のスリープ状態中にBand1のカバレッジエリア外へ移動局100が移動し、その後、Band1の受信が再開されない状態で、Band2のカバ
レッジエリアに移動局100が進入したときに、Band1の受信品質を測定できないためにBand2のスリープ状態が解除できなくなるのを防止することができる。
【0121】
<第二実施形態>
次に、図9から図13の図面を参照して、第二実施形態に係る移動局を説明する。第二実施形態の構成は、第一実施形態との共通部分を含むので、主として相違点について説明する。第二実施形態に係る移動局100は、第一実施形態にて説明した構成(図3、図4)と同様の構成を有する。このため、構成の詳細な説明は省略する。
【0122】
〔カバレッジエリア〕
図9は、第二実施形態の説明のために想定される、Band1及びBand2のカバレッジエリアの分布状況を示す。図9には、Band1及びBand2の少なくとも一方のカバレッジエリア(セル)を形成する基地局BS3〜BS6が図示されている。
【0123】
基地局BS3は、第一実施形態における基地局BS1,BS2と同様に、Band1及びBand2の双方のカバレッジエリアを形成する。具体的には、基地局BS3の位置を中心として、Band1のカバレッジエリアB11とBand2のカバレッジエリアB12とが同心円で形成されている。カバレッジエリアB11及びB12は、Band1用の基地局とBand2用の基地局とが共用サービスされているエリア<1>である。
【0124】
基地局BS4は、基地局BS3のカバレッジエリアB11に隣接するBand1用のカバレッジエリアB31を形成している。カバレッジエリアB31は、Band2用の基地局が共用サービスされておらず、且つ周辺にも存在しないエリア<2>である。
【0125】
基地局BS5は、基地局BS3のカバレッジエリアB11に隣接するBand1用のカバレッジエリアB41を形成している。基地局BS6は、カバレッジエリアB41内にBand2用のカバレッジエリアB52を局所的に形成している。カバレッジエリアB41は、Band1用の基地局と共用サービスされていないBand2用の基地局が周辺に存在するエリア<3>である。
【0126】
各基地局BS3〜BS6には、固有の基地局識別子(基地局ID)が付与されている。図9に示す例では、基地局BS3には、基地局ID“1”(Band1用)及び基地局ID“2”(Band2用)が付与されている。基地局BS4〜BS6には、基地局ID“3”,“4”,“5”が夫々付与されている。図9に示す移動局100は、第一実施形態にて説明した移動局100である。
【0127】
図10は、移動局100が基地局から受信する報知情報の一部を示す。報知情報は、基地局が移動局へ向けて送信する信号であり、移動局が位置登録を行うための情報を含む。図10には、報知情報に含まれる情報である、サービング基地局の周辺基地局情報を示す。周辺基地局情報は、1以上のレコードからなる。1レコードは、周辺基地局の基地局IDと、周辺基地局と共同設置されている共同設置基地局の基地局ID(Co-located BS-ID)と、1以上のチャネルID(周波数帯域情報)とを要素として含む。
【0128】
例えば、基地局BS4及び基地局BS5で報知されるBand1用の報知情報中の周辺基地局情報は、基地局ID=1(基地局BS3のBand1部分)に係るレコード(第1レコード)と、基地局ID=2(基地局BS3のBand2部分)に係るレコード(第2レコード)とを含む。
【0129】
第1レコードは、基地局ID=1,共同設置基地局ID=2,基地局ID=1の基地局で使用される1以上のチャネルのチャネルID(Band1用のチャネルID)とを要素
として含む。第2レコードは、基地局ID=2,共同設置基地局ID=1,基地局ID=2の基地局で使用される1以上のチャネルのチャネルID(Band2用のチャネルID)とを要素として含む。このような周辺基地局情報を得た移動局100の信号プロセッサ105は、Band1の基地局ID=1に共同設置されたBand2用の基地局ID=2が存在することを認識することができる。
【0130】
或いは、基地局BS3で報知されるBand1用の報知情報中の周辺基地局情報は、基地局BS4に係る第1レコード(基地局ID=3,共同設置基地局ID=なし(non),基地局ID=3の使用チャネルID(Band1用))と、基地局BS5に係る第2レコード(基地局ID=4,共同設置基地局ID=なし,基地局ID=4の使用チャネルID(Band1用))と、基地局BS6に係る第3レコード(基地局ID=5,共同設置基地局ID=なし,基地局ID=5の使用チャネルID(Band2用))とを含む。このような周辺基地局情報を得た移動局100の信号プロセッサ105は、Band1と共同設置されたBand2用の基地局は存在しないが、独立形式で設置されたBand2用の基地局が存在することを認識することができる。また、周辺基地局情報は、特定の基地局同士を関連づけた情報を含むことができる。例えば、基地局BS5と基地局BS6とを関連づけた情報を含むことができる。周辺基地局情報は、制御情報抽出部20(図4)によって取得され、制御部17に提供される。
【0131】
なお、1つのレコードに基地局IDと共同設置基地局IDとの双方が格納される場合には、当該レコードに格納されるチャネルIDとして、基地局IDに対応するチャネルIDと共同設置基地局IDに対応するチャネルIDとの双方が格納されるようにしても良い。この場合、基地局BS3に係るレコードは、1つに集約可能である。
【0132】
〔第二実施形態の処理例〕
図11,図12,図13は、第二実施形態における移動局100におけるスリープ制御例を示すフローチャートである。図14は、図11に示したハンドオーバ処理(ステップS303)の例を示すフローチャートである。以下のフローチャートの説明における、信号処理プロセッサ105の処理は、図4に示したような、変復調部15,受信品質測定部16,制御部17,復帰品質保持部18,復帰判定部19,及び制御情報抽出部20の何れかとしての機能を用いて実現される。
【0133】
図11のステップS301では、移動局100は、サービング基地局から報知情報を受信する。このとき、変復調部15で得られた報知情報中の周辺基地局情報(図10)は、制御情報抽出部20により抽出され、制御部17に渡される。周辺基地局情報は、信号処理用ワークメモリ106中の所定の記憶領域にて保持される。
【0134】
ステップS302では、信号処理プロセッサ105は、Band1の受信品質の測定を行い(S302)、続いてハンドオーバ処理を行う(S303)。ハンドオーバ処理では、図14に示すような、ステップS401〜S410に係る処理が実行される。
【0135】
図14において、移動局100の信号処理プロセッサ105は、ハンドオーバ処理の開始前に測定されたBand1の受信品質が最低受信品質以下か否かを判定する(S401)。Band1の受信品質が最低受信品質以下である場合(S401,Yes)には、信号処理プロセッサ105は、信号処理用ワークメモリ106に予め用意されているスリープ制御用のフラグFL3,FL4,FL5のうちの、フラグFL3の値を“1”とするフラグ処理を行い(S402)、ハンドオーバ処理を終了する。
【0136】
一方、Band1の受信品質が最低受信品質を超える場合(S401,No)には、信号処理プロセッサ105は、フラグFL3の値を“0”とするフラグ処理を行い(S40
3)、ステップS404に進む。なお、フラグFL3の値は、移動局100がBand1を使用可能な位置にいるか否かを示し、FL3=1は、Band1を使用できないことを意味し、FL3=0は、Band1を使用できることを意味する。
【0137】
ステップS404では、信号処理プロセッサ105は、Band1のハンドオーバ条件が成立しているかを判定する。ハンドオーバ条件が成立していない場合(S404,No)には、ハンドオーバ処理を終了する。これに対し、Band1のハンドオーバ条件が成立している場合(S404,Yes)には、ステップS405に進む。
【0138】
ステップS405では、信号処理プロセッサ105は、ハンドオーバ先の基地局(ターゲット基地局)がBand2のサービスを行っているかを判定する。このとき、信号処理プロセッサ105は、信号処理用ワークメモリ106に保持されている周辺基地局情報を参照することによって、ターゲット基地局がBand2をカバー又はサポートしているか否かを判定することができる。
【0139】
ターゲット基地局がBand2をカバー又はサポートしていない場合には(S405,No)、信号処理プロセッサ105は、フラグFL4の値を“1”とするフラグ処理を行い(S406)、ステップS408に移行する。一方、ターゲット基地局がBand2をカバー又はサポートしている場合(S405,Yes)には、信号処理プロセッサ105は、フラグFL4の値を“0”とするフラグ処理を行い(S406)、ステップS408に進む。
【0140】
フラグFL4の値は、ハンドオーバ先(ターゲット基地局)がBand2をサポートしているか否かを示し、FL4=1は、Band2のサポートがないことを意味し、FL4=0は、Band2のサポートがあることを意味する。
【0141】
ステップS408では、周辺基地局情報にターゲット基地局とは別の、Band2をサービス(サポート)する基地局が存在するかを判定する。このとき、周辺機局情報にBand2をサポートする基地局情報が含まれている場合(S408,Yes)には、フラグFL5の値を“1”とするフラグ処理を行い(S409)、ハンドオーバ処理を終了する。これに対し、周辺基地局情報にBand2をサポートする基地局情報が含まれていない場合(S408,No)には、フラグFL5の値を“0”とするフラグ処理を行い(S410)、ハンドオーバ処理を終了する。
【0142】
フラグFL5の値は、Band2をサポートしないハンドオーバ先(ターゲット基地局)の周辺にBand2をサポートする基地局があるか否かを示し、FL5=1は、Band2をサポートする基地局があることを意味し、FL5=0は、Band2をサポートする基地局がないことを意味する。
【0143】
図14に示すハンドオーバ処理では、処理がステップS405へ進む場合には、ハンドオーバが実施され、そうでなければハンドオーバは実施されない。ハンドオーバ処理が終了すると、移動局100の信号処理プロセッサ105は、Band2の受信品質の測定を行い(S304)、受信品質が最低受信品質a以下か否かを判定する(S305)。
【0144】
Band2の受信品質が最低受信品質aを超えている場合(S305,No)には、処理をステップS301に戻す。これは、現在の移動局100の位置が、Band2を使用可能な位置であることを意味する。これに対し、Band2の受信品質が最低受信品質a以下の場合(S305,Yes)には、そのときのBand1の受信品質bに伝搬路差マージンmを考慮した復帰品質を生成して保存(S306)し、Band2用の送受信機104をスリープ状態(間欠受信スリープ状態)にする(S307)。
【0145】
その後、Band2の受信品質測定タイミングが到来すると(S308)、信号処理プロセッサ105は、フラグFL3,FL4及びFL5がFL3=0,FL4=1且つFL5=0というフラグ条件(フラグ条件1)が成立するか否かを判定する(S309)。フラグ条件1は、Band1が使用可能であるが、ターゲット基地局がBand2をサポートしておらず、且つターゲット基地局周辺にBand2をサポートする基地局が存在しないという条件である。
【0146】
フラグ条件1が満たされる場合には、処理がステップS315に進む。これに対し、フラグ条件1が満たされない場合には、処理がステップS310に進む。ステップS310に移行した移動局100の信号処理プロセッサ105は、間欠受信スリープ制御を実行する。
【0147】
すなわち、信号処理プロセッサ105は、Band2用の送受信機104による受信処理を一時的に再開(S310)し、Band2の受信品質を測定する(S311)。信号処理プロセッサ105は、Band2の受信品質が、所定の閾値以上であるかを判定する(S312)。
【0148】
受信品質が閾値以上である場合(S312,Yes)には、Band2用の送受信機104の間欠受信スリープ状態を解除し、動作状態に復帰させる(S313:スリープ終了)。これに対し、受信品質が閾値未満である場合(S312,No)には、間欠受信スリープ状態が維持される(S314)。
【0149】
ステップS315では、信号処理プロセッサ105は、Band1の受信品質を測定し、再びハンドオーバ処理(図14)を実行する(S316)。ハンドオーバ処理が終了すると、信号処理プロセッサ105は、ハンドオーバ処理によってFL3=0且つFL5=0のフラグ条件(フラグ条件2)が成立しているか否かを判定する(S317)。当該フラグ条件2は、Band1を使用可能であるが、Band2をサポートする基地局が周辺に存在しない位置に移動局100が存在するという条件である。
【0150】
ステップS317においてフラグ条件が成立していなければ(S317,No)、処理がステップS308に戻され、間欠受信スリープ制御が実施される。これに対し、フラグ条件が成立している場合(S317,Yes)には、処理がステップS318に進む。
【0151】
ステップS318では、信号処理プロセッサ105は、Band1の受信品質が復帰品質b´以下か否かを判定する。このとき、受信品質が復帰品質b´を超える場合(S318,No)には、処理がステップS308に戻され、間欠受信スリープ制御が継続される。これに対し、受信品質が復帰品質b´を超える場合(S318,Yes)には、送受信機104が完全スリープ状態にされ、処理がステップS319に進む。
【0152】
ステップS319及びS320では、信号処理プロセッサ105は、ステップS302(S315)及びS303(S316)と同様の、Band1の受信品質測定及びハンドオーバ処理を実行する。
【0153】
ハンドオーバ処理(S320)が終了すると、信号処理プロセッサ105は、ハンドオーバ処理によってフラグFL3〜FL5の値の変化を確認する。すなわち、FL3=1又はFL5=1のフラグ条件(フラグ条件3)が成立するか否かを判定する(ステップS321)。当該フラグ条件3は、Band1を使用できない、又は、Band2をサポートする独立基地局が周辺に存在する位置に移動局100が存在するという条件である。
【0154】
フラグ条件3が成立する場合(S321,Yes)には、処理がステップS308へ戻され、Band2の完全スリープ状態が間欠受信スリープ状態に切り替えられる。これに対し、フラグ条件3が成立しない場合(S321,No)には、処理がステップS322に進む。
【0155】
ステップS322では、FL4=0というフラグ条件(フラグ条件4)が成立しているか否かを信号処理プロセッサ105は判定する。フラグ条件4は、Band1に係るターゲット基地局がBand2をサポートしているという条件である。フラグ条件4が満たされない場合(S322,No)には、処理がステップS319に戻される。これに対し、フラグ条件4が満たされる場合には、処理がステップS323へ進む。
【0156】
ステップS323では、ステップS318と同様の処理、すなわち、Band1の受信品質が復帰品質b´以上か否かの判定処理が行われる。このとき、受信品質が復帰品質b´以上であれば(S323,Yes)、処理がステップS309に戻され、間欠受信スリープ処理が行われる。これに対し、受信品質が復帰品質b´以上でなければ(S323,No)、処理がステップS319に戻される。
【0157】
〔第二実施形態の作用効果〕
第二実施形態に示した処理例(図11〜図14)では、第一実施形態における制御例2の処理例1に則した送受信機104のスリープ制御が実施される。従って、第二実施形態は第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる。さらに、フラグFL3〜FL5を用いたスリープ制御が実施される。
【0158】
すなわち、フラグ条件1の成立判定(S309)において、フラグ条件1が成立する場合、移動局100は、Band1を使用できる状態であるが、Band2をサポートする基地局が周辺に存在しないことを意味する。この場合、移動局100がBand2の受信品質測定を行わないようにして、電力消費を抑制する。
【0159】
また、フラグ条件2の成立判定(S317)において、フラグ条件2が成立しない状態は、移動局100の現在位置において、Band1が使用できない、或いはBand2をサポートする独立した基地局(BS6のような基地局)が周辺に存在することを意味する。この場合、ステップS308へ処理を戻し、Band2に対する間欠受信スリープ制御(一時的なBand2の受信処理の周期的な実施)が行われるようにして、送受信機104を適正に動作状態へ復帰可能としている。
【0160】
また、フラグ条件3の成立判定(S321)において、フラグ条件3が成立することは、移動局100の現在位置でBand1が使用できない、或いはBand2をサポートする独立した基地局(BS6のような基地局)が周辺に存在することを意味する。このため、完全スリープの代わりに間欠受信スリープ制御が実施されるように、処理をステップS308へ戻している。
【0161】
また、フラグ条件4の成立判定(S322)において、フラグ条件4が成立する、すなわちBand1とBand2のサービスを共に行う基地局のエリアである条件で、さらにBand1の受信品質が復帰品質b´に達することを条件(S323)に、完全スリープ状態から間欠受信スリープ状態へ切り替わるようにしている。
【0162】
第二実施形態では、Band2の通信不可領域でBand2用の送受信機104をスリープ状態にした移動局100が、Band1の通信においてハンドオーバを実施し、隣接基地局(ターゲット基地局)との通信に切り替える場合には、ターゲット基地局が、元の基地局(サービング基地局)と同様に、Band2のカバレッジエリアを有しているか否
かを周辺基地局情報より認識することができる。
【0163】
このとき、ターゲット基地局がBand2をサポートしていない場合には、当該ターゲット基地局のカバレッジエリアでは、復帰判定部19による復帰品質を用いた復帰判定を行わない。これによって、Band2の通信を再開できない領域で送受信機104が動作状態に復帰し、電力を浪費することを回避することができる。
【0164】
また、周辺基地局情報がBand2のみをサポートする基地局が周辺に存在することを示す場合には、ハンドオーバによって、そのような基地局と通信を開始する可能性があるため、間欠受信スリープ状態へ送受信機104を遷移させる。これによって、Band2の通信の再開を早めることができる。以上説明した実施形態の構成は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0165】
15 変復調部
16 受信品質測定部
17 制御部
18 復帰品質保持部
19 復帰判定部
20 制御情報抽出部
100 移動局
101 送受信アンテナ
102 送受信アンテナ
103 送受信機
104 送受信機
105 信号処理プロセッサ
106 信号処理用ワークメモリ
107 信号処理プログラムメモリ
108 アプリケーションプロセッサ
109 アプリケーション用メモリ
110 入出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域の信号である第1信号を送受信する第1送受信機と、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号である第2信号を送受信する第2送受信機と、
前記第1送受信機で受信された第1信号の受信品質と、前記第2送受信機で受信された第2信号の受信品質とを測定する測定部と、
前記第2信号の受信品質が閾値以下となったときの前記第1信号の受信品質を用いた指標値を保持する記憶装置と、
前記第2信号の受信品質が閾値以下となったことを契機として前記第2送受信機をスリープ状態にし、その後に測定された前記第1信号の受信品質が前記記憶装置に保持された指標値以上となったときに前記スリープ状態を解除する制御装置と
を含む移動端末装置。
【請求項2】
前記記憶装置は、前記指標値として、前記第2信号の受信品質が所定閾値以下となったときの前記第1信号の受信品質の値である第1指標値と、前記第2信号の受信品質が所定閾値以下となったときの前記第1信号の受信品質の値が第1信号の地理的な伝搬特性の変動に基づく調整値で調整された値である第2指標値との少なくとも一方を保持する
請求項1に記載の移動端末装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1信号の受信品質が、前記第1指標値と前記第2指標値との間にある場合には、前記第2送受信機の動作が間欠的な第2信号の受信処理を除いて停止される第1スリープ状態とし、前記第1信号の受信品質が前記指標値を下回る間は、前記第2送受信機の前記間欠的な第2信号の受信処理も停止される第2スリープ状態とする
請求項2に記載の移動端末装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2送受信機がスリープ状態にされた状態で、前記第1信号の受信品質が第2閾値以下となったときに、前記第2送受信機の動作が間欠的な第2信号の受信処理を除いて停止される状態にする
請求項1に記載の移動端末装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2送受信機のスリープ状態において、前記第1の周波数帯域に係るハンドオーバ元の基地局から受信された周辺基地局情報が前記第1の周波数帯域に係るハンドオーバ先の基地局が前記第2信号を送信しないことを示す場合には、ハンドオーバ実行後に前記第1信号の受信品質が前記指標値以上となることを条件とする前記スリープ状態の解除を回避する
請求項1に記載の移動端末装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2送受信機のスリープ状態において、前記第1の周波数帯域に係るハンドオーバ元の基地局から受信される周辺基地局情報が前記第2信号を送信する基地局の存在を示す場合には、ハンドオーバ実行後に前記第2送受信機の動作が間欠的な第2信号の受信処理を除いて停止される状態にする
請求項1に記載の移動端末装置。
【請求項7】
第1送受信機で受信された第1の周波数帯域の信号である第1信号の受信品質と、第2送受信機で受信された第1の周波数帯域の信号である第2信号の受信品質とを測定し、
前記第2信号の受信品質が閾値以下となったときの前記第1信号の受信品質を用いた指標値を保持し、
前記第2信号の受信品質が閾値以下となったことを契機として前記第2送受信機をスリープ状態にし、その後に測定された前記第1信号の受信品質が前記記憶装置に保持された
指標値以上となったときに前記スリープ状態を解除する
ことを含む移動端末装置のスリープ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−48370(P2013−48370A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186234(P2011−186234)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】