説明

移動端末通信防止構造

【課題】移動端末の通信を防止したい指定区域において、電波遮蔽性能を自動的に得ることができるとともに、携帯電話等の移動端末の通信を確実に防止できる移動端末通信防止構造を提供することを課題とする。
【解決手段】指定区域Sに配置された通信抑止電波発生装置10と、指定区域Sを囲む電波遮蔽構造体20と、指定区域Sの出入口2に設けられ自動開閉する電波遮蔽カーテン30と、を有しており、電波遮蔽構造体20は、指定区域Sの上部に配置される枠構造体24と、この枠構造体24の内側開口部の少なくとも一部を覆うように設けられた電波遮蔽体25とを備え、電波遮蔽体25はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる筒体25aを並列してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定区域内での移動端末の通信を防止する移動端末通信防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くのお年寄りが振り込め詐欺や還付金詐欺等の被害にあっている。これらの詐欺の被害者は、犯行グループに携帯電話を持って銀行に行くように言われ、銀行等の現金自動預払機(ATM装置)の前で携帯電話によって言葉巧みに誘導されて、指定された口座にお金を振り込んでしまうケースが多い。そこで、詐欺被害を減少させるために、現金自動預払機の前で携帯電話を使用不能にすることが考えられる。
【0003】
携帯電話を使用不能にする方策としては、例えば、特許文献1に示されたような電磁シールド構造があった。この電磁シールド構造は、電磁シールド効果を備えたカーテンで、限定されたエリアを囲んで、電波を遮蔽するようになっていた。
【特許文献1】特開平10−328019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現金自動預払機は、ビル内に設けられた通信用アンテナの近くに設置されることも多く、その場所の電界強度が強いため、設置場所によっては、100dB程度の電波遮蔽性能が要求されることがある。しかしながら、前記の電磁シールド構造は、医療現場やコンサート会場等の比較的電波の弱い場所で用いられるものであるので、前記のような高い電波遮蔽性能は得られないのが現状であり、携帯電話を確実に使用不能にするのは困難であった。また、詐欺犯罪をなくすためには、現金自動預払機を操作しようとする人の動きに対応して、電波遮蔽性能を発揮する必要があるが、前記の電磁シールド構造では、使用する人が意識的にカーテンを閉じる必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく案出されたものであって、現金自動預払機の周囲等の、移動端末の通信を防止したい指定区域において、電波遮蔽性能を自動的に得ることができるとともに、携帯電話等の移動端末の通信を確実に防止できる移動端末通信防止構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、指定区域内での移動端末の通信を防止する移動端末通信防止構造であって、前記指定区域に配置された通信抑止電波発生装置と、前記指定区域を囲む電波遮蔽構造体と、前記指定区域の出入口に設けられ自動開閉する電波遮蔽カーテンと、を有することを特徴とする移動端末通信防止構造である。
【0007】
このような移動端末通信防止構造によれば、通信抑止電波発生装置から放射される抑止電波によって、指定区域内での移動端末の通信を確実に防止することができる。また、電波遮蔽構造体と自動開閉する電波遮蔽カーテンによって、使用者が意識的に電波遮蔽カーテンを閉じなくても、抑止電波が指定区域外へ漏洩するのを自動的に防止することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の上部に配置される枠構造体と、この枠構造体の内側開口部の少なくとも一部を覆うように設けられた電波遮蔽体とを備え、前記電波遮蔽体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる筒体を並列してなることを特徴とする請求項1に記載の移動端末通信防止構造である。
【0009】
本発明における電波遮蔽体は、所定波長より長い波長の電波を伝搬しない導波管としての役目を備えた筒体を並設して構成されている。筒体は、例えば断面正六角形(ハニカム)や断面正方形を呈している。このような移動端末通信防止構造によれば、指定区域の内外で空気の流通を確保しつつ、抑止電波の遮蔽性能を得ることができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記枠構造体が、表面に陽極酸化皮膜が施されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる押出形材を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の移動端末通信防止構造である。
【0011】
このような移動端末通信防止構造によれば、押出形材を適宜な長さで切断して組み合わせるだけで、枠構造体を容易に製造することができる。また、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の押出形材は、寸法精度が高く、また、強度の割に軽量である。さらに、陽極酸化皮膜を施したことで、耐食性が高まる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記電波遮蔽体の上部に、換気用ファンを設けたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の移動端末通信防止構造である。
【0013】
このような移動端末通信防止構造によれば、指定区域内の強制換気を行えるので、良好な空気環境を容易に得ることができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記電波遮蔽体の下部に、LED照明を設けたことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0015】
このような移動端末通信防止構造によれば、指定区域内を容易に明るくすることができる。また、電波遮蔽体を介して、LED照明の配線を容易に行うことができる。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記電波遮蔽カーテンが、金属メッキが施された高分子繊維から形成された導電性布にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0017】
このような移動端末通信防止構造によれば、電波遮蔽カーテンが、電波の遮蔽性と柔軟性を兼ね備えることになるので、指定区域の出入口において、抑止電波を遮蔽できるとともに、開閉を容易に行うことができる。さらに、導電性布は、光透過性も兼ね備えているので、指定区域内の明るさを得ることも可能である。
【0018】
請求項7に係る発明は、前記電波遮蔽カーテンが、ステンレス繊維から形成された導電性布にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0019】
このような移動端末通信防止構造によれば、請求項6に係る発明と同様に、指定区域の出入口において、抑止電波を遮蔽できるとともに、開閉を容易に行うことができる。
【0020】
請求項8に係る発明は、前記電波遮蔽カーテンが、その下端に錘が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0021】
このような移動端末通信防止構造によれば、電波遮蔽カーテンを確実に垂下させることができるので、出入口を好適に遮蔽することができる。これによって、抑止電波の漏洩を防止することができる。
【0022】
請求項9に係る発明は、前記電波遮蔽カーテンが、前記通信抑止電波発生装置から抑止電波が放射されているときは、その下端が床面から50cm以内の隙間をあけた高さに位置することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0023】
このような移動端末通信防止構造によれば、電波遮蔽カーテンが踏まれて引っ張られるのを防止できるとともに、必要な電波遮蔽性能を得ることができる。
【0024】
請求項10に係る発明は、前記電波遮蔽カーテンの下方の床面上には、ゴム系電波吸収シートからなる電波吸収マットが敷設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0025】
このような移動端末通信防止構造によれば、電波遮蔽性能を高めることができるとともに、使用者の靴が滑るのを防止できる。
【0026】
請求項11に係る発明は、前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の側部に配置される透光性樹脂板を備え、前記透光性樹脂板には、導電性薄膜または導電性メッシュが布設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0027】
このような移動端末通信防止構造によれば、側部から採光を得ることができる。さらに、電波遮蔽構造体の電波遮蔽性を保ちつつ軽量化を図ることができる。
【0028】
請求項12に係る発明は、前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の側部に配置される板材を備え、前記板材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0029】
このような移動端末通信防止構造によれば、電波遮蔽構造体の電波遮蔽性を保ちつつ軽量化を図ることができる。
【0030】
請求項13に係る発明は、前記通信抑止電波発生装置の電波放射部には、金属製ディッシュが設けられており、この金属製ディッシュの凹面側に電波吸収体が布設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0031】
このような移動端末通信防止構造によれば、通信抑止電波発生装置の後方に向かう抑止電波を吸収できるので、抑止電波が不要な部分には電波が放射されない。したがって、指定区域内で利用しようとする移動端末に向かって効率的に抑止電波を放射することができるとともに、抑止電波が不要な部分から電波が漏洩するのを確実に防止できる。
【0032】
請求項14に係る発明は、前記通信抑止電波発生装置には、その電波放射方向が開口した金属製箱が前記通信抑止電波発生装置の電波放射部を覆うように設けられており、この金属製箱の内面に電波吸収体が布設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0033】
このような移動端末通信防止構造によれば、通信抑止電波発生装置の後方や側方に向かう抑止電波を吸収できるので、抑止電波が不要な部分には電波が放射されない。したがって、指定区域内で利用しようとする移動端末に向かって集中して抑止電波を放射することができるとともに、抑止電波が不要な部分から電波が漏洩するのを確実に防止できる。
【0034】
請求項15に係る発明は、前記電波吸収体が、発泡樹脂にカーボン素子を含浸させて構成されていることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の移動端末通信防止構造である。
【0035】
このような移動端末通信防止構造によれば、抑止電波を効率的に吸収できるとともに、発泡樹脂は加工が簡単であるので、金属製ディッシュへの布設施工を容易に行うことができる。
【0036】
請求項16に係る発明は、前記通信抑止電波発生装置が、前記電波遮蔽構造体の前記出入口側に設けられ、前記通信抑止電波発生装置の電波放射部が、前記指定区域の奥手方向に向くように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0037】
このような移動端末通信防止構造によれば、抑止電波は奥手方向に放射されるので、出入口側には放射されない。これによって、出入口側における抑止電波漏洩防止性能が高まる。
【0038】
請求項17に係る発明は、前記電波遮蔽構造体のうち、前記指定区域の上部に配置される前記電波遮蔽構造体の先端部には、前記電波遮蔽カーテンを自動的に巻き取りまたは送り出す自動巻取りロール手段が設けられ、前記自動巻取りロール手段は、前記指定区域内の人の動作に応じて前記電波遮蔽カーテンを自動的に巻き取りまたは送り出して、前記出入口を自動開閉することを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0039】
このような移動端末通信防止構造によれば、指定区域内の人の動作に応じて電波遮蔽カーテンを確実に開閉することで、人の指定区域内への出入り時には出入口を開けて出入りが容易に行えるとともに、抑止電波の放射時には出入口を閉じて抑止電波の漏洩を防止できる。ここで、たとえば、指定区域内に設置された現金自動預払機の使用状況に応じて電波遮蔽カーテンを下方に送り出すように設定すれば、通信抑止電波発生装置から抑止電波を放射して携帯電話等の移動端末での通信を防止しながら、抑止電波の漏洩を防止できる。
【0040】
請求項18に係る発明は、前記電波遮蔽構造体のうち、前記指定区域の上部に配置される前記電波遮蔽構造体の先端部には、前記電波遮蔽カーテンを自動的に移動させる自動カーテンレール手段が設けられ、前記自動カーテンレール手段は、前記指定区域内の人の動作に応じて前記電波遮蔽カーテンを自動的に移動させて、前記出入口を自動開閉することを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造である。
【0041】
このような移動端末通信防止構造によれば、請求項17に係る発明と同様に、指定区域内の人の動作に応じて電波遮蔽カーテンを確実に開閉することで、人の指定区域内への出入り時には出入口を開けて出入りが容易に行えるとともに、抑止電波の放射時には出入口を閉じて抑止電波の漏洩を防止できる。ここで、たとえば、指定区域内に設置された現金自動預払機の使用状況に応じて電波遮蔽カーテンを下方に送り出すように設定すれば、通信抑止電波発生装置から抑止電波を放射して携帯電話等の移動端末での通信を防止しながら、抑止電波の漏洩を防止できる。
【0042】
請求項19に係る発明は、前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の上部に配置される枠構造体と、この枠構造体の内側開口部の少なくとも一部を覆うように布設された金属製メッシュとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の移動端末通信防止構造である。
【0043】
このような移動端末通信防止構造によれば、指定区域の内外で空気の流通を確保しつつ、抑止電波の遮蔽性能を得ることができる。
【0044】
請求項20に係る発明は、前記金属製メッシュの上部に、換気用ファンを設けたことを特徴とする請求項19に記載の移動端末通信防止構造である。
【0045】
このような移動端末通信防止構造によれば、指定区域内の強制換気を行えるので、良好な空気環境を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、移動端末の通信を防止したい指定区域において、電波遮蔽性能を自動的に得ることができるとともに、携帯電話等の移動端末の通信を確実に防止することができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。まず、第一実施形態に係る移動端末通信防止構造1の構成を説明する。なお、本実施形態では、現金自動預払機が設置された指定区域内で携帯電話(移動端末)の通話(通信)を防止する構造を例に挙げて説明するが、本発明をこのような構成に限定する趣旨ではない。
【0048】
図1および図2に示すように、第一実施形態に係る移動端末通信防止構造1は、指定区域Sに配置された通信抑止電波発生装置10と、指定区域Sを囲む電波遮蔽構造体20と、指定区域Sの出入口2に設けられ自動開閉する電波遮蔽カーテン30と、を有して構成されている。
【0049】
指定区域S内には、現金自動預払機3が設置されている。指定区域Sは、現金自動預払機3の設置スペースと、その前面で利用者が現金自動預払機3を操作できるスペースとを含む空間にて構成されている。現金自動預払機3は、指定区域Sの奥手に位置する壁面に接するように配置されている。
【0050】
電波遮蔽構造体20は、現金自動預払機3を正面から見て、指定区域Sの奥手に位置する壁部21と、左右両側に位置する側壁部22と、指定区域Sの上部に位置する天井部23とを備えて構成されている。壁部21は、例えば、一般的な間仕切り壁の表面に、鉄板等の導電性部材を布設することで電波遮蔽性能を備えるように形成されている。なお、導電性部材の材質は鉄に限定されるものではなく、適度な導電性と強度を有していれば、アルミニウムやステンレス等の他の部材であってもよい。
【0051】
電波遮蔽構造体20のうち、指定区域Sの側部に配置される側壁部22(電波遮蔽構造体20)は、導電性薄膜22aが布設された透光性樹脂板22bにて構成されている。導電性薄膜22aは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムすず)等から構成され、透光性を備えている。導電性薄膜22aは、透光性樹脂板22bの表面全体に亘って布設されている。なお、導電性薄膜22aを、一対の透光性樹脂板の内側に挟み込むようにしてもよい。透光性樹脂板22bは、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂や塩化ビニール樹脂等から構成されている。透光性樹脂板22bは、床面5に直接立設されており、奥手方向側面が壁部21に当接し、上端面が天井部23の下面に当接している。なお、本実施形態では、透光性樹脂板22bを直接立設させて、壁体として利用しているが、これに限定されるものではなく、一般的な間仕切り壁の表面に布設するようにしてもよい。また、導電性薄膜22aに代えて導電性メッシュを用いてもよい。導電性メッシュは、例えば、アルミニウム、ステンレスや銅等の導電性金属によって構成されており、透光性を備えている。
【0052】
さらに、側壁部22は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる板材(図示せず)にて構成してもよい。この板材は、床面5に直接立設してもよいし、一般的な間仕切り壁の表面に布設するようにしてもよい。
【0053】
電波遮蔽構造体20のうち、指定区域Sの上部に配置される天井部23(電波遮蔽構造体20)は、その周縁部に位置する枠構造体24と、この枠構造体24の内側開口部の少なくとも一部を覆うように設けられたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる電波遮蔽体25とを備えて構成されている。
【0054】
枠構造体24は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる複数の押出形材24a,24a・・にて構成されている。枠構造体24は、平面視矩形形状を呈しており、4つの押出形材24a,24a・・を、矩形枠状になるように互いに組み合わせて構成されている。押出形材24aは、断面縦長長方形の中空形状に形成されている。押出形材24aは、その表面に陽極酸化皮膜が施されている。隣り合う押出形材24a同士は、摩擦撹拌接合や溶接あるいはボルト止め等の公知の方法によって接合されている。なお、摩擦撹拌接合や溶接で押出形材24a同士が接合される場合は、接合後に陽極酸化皮膜を施すようにする。
【0055】
枠構造体24の先端部(壁部21から離間した側)の内側には、先端の押出形材24aから所定距離離間した位置に、仕切壁24bが設けられている。仕切壁24bは、天井部23の先端側に位置する電波遮蔽カーテン30の収容スペースと、基端側に位置する電波遮蔽体25の設置スペースとを区画して仕切る。仕切壁24bは、枠構造体24と同様に、押出形材24aにて形成されている。仕切壁24bは、枠構造体24の先端の押出形材24aと互いに平行になるように配置されている。仕切壁24bと枠構造体24の基端の押出形材24aとの間には、電波遮蔽体25の設置スペースが形成されている。仕切壁24bと枠構造体24の先端の押出形材24aとの間には、電波遮蔽カーテン30の収容スペースが形成されている。この収容スペースの上部には、金属板26が収容スペースを覆うように設けられており、電波遮蔽カーテン30の収容スペースの上下位置における電波遮蔽性能を確保できるように構成されている。
【0056】
電波遮蔽体25は、所定波長より長い波長の電波を伝搬しない導波管としての役目を備えた筒体25aが並設されて構成されている。すなわち、電波遮蔽体25は、導波管としての筒体25aが複数集合し、束状となって構成されていることとなる。これによって、電波遮蔽体25は、所定波長より長い波長の電波を伝搬しない電波遮蔽性能を備えることとなる。筒体25aは、例えば断面正六角形(ハニカム)を呈しており、電波遮蔽体25が、ハニカム構造体として構成されている。なお、筒体25aの断面形状は正六角形に限らず、四角形や円形等、他の形状であってもよい。筒体25aの開口径、長さは、筒体25a内を伝搬させない電波(通信抑止電波発生装置10から放射される抑止電波)の波長に基づいて設定される。
【0057】
電波遮蔽体25の周囲には、枠構造体24および仕切壁24bとの隙間を塞ぐ金属板26が設けられている。金属板26は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されている。金属板26は、並列された筒体25aを隙間なく囲むように配置されており、その内周面は、並列された筒体25aの外周面に沿った形状に形成されている。金属板26の外周面は、枠構造体24の基端部と両側部の押出形材24aの内側面と、仕切壁24bを構成する押出形材24aの内側面(基端側面)に沿った形状に形成されている。枠構造体24および仕切壁24bと金属板26との接合、電波遮蔽体25と金属板26との接合は、溶接や接着等の公知の技術によって行われている。
【0058】
枠構造体24の先端部の幅方向両端には、天井部23の荷重を支持するための吊り金具29が固定されている。吊り金具29は、例えばアルミニウム製のパイプ材にて構成されている。吊り金具29は、斜め方向に延在して配置されており、下端が、枠構造体24に連結され、上端が、天井部23が固定された壁面に連結されている。なお、天井部23の重量が軽い場合には、吊り金具29を省略できる場合もある。
【0059】
電波遮蔽体25の上部には、換気用ファン27が設けられている。図1乃至図3に示すように、換気用ファン27は、公知の形状の羽根を有するファン本体27aと、このファン本体27aを収容する枠27bとを備えている。枠27bは、正面視略正方形を呈しており、その四隅部分が、L字状ブラケット27c(図3参照)等を介して、筒体25aの内周面に固定されている。ファン本体27aは、筒体25aの上部に位置するように配置されている。これによって、換気用ファン27は、筒体25aの開口部を介して、指定区域S内の空気の換気流通を行うようになっている。換気用ファン27は、二箇所に設けられており、現金自動預払機3の上方と、現金自動預払機3の利用者の上方にそれぞれ配置されている。換気用ファン27は、出入口2の開閉に応じてスイッチが作動するように構成されている。具体的には、出入口2が開いているときは、換気用ファン27は停止しており、出入口2が閉じて中に人がいるときは、換気用ファン27が作動する。なお、換気用ファン27のオン・オフは、前記の構成に限られるものではない。例えば、指定区域S内に温度センサーを設け、その検知温度に応じて、換気用ファン27を作動させてもよいし、タイマーによって定期的に換気用ファン27を作動させてもよい。
【0060】
図2に示すように、電波遮蔽体25の下部には、LED(Light Emitting Diode)照明28が設けられている。LED照明28は、指定区域S内を照らすための照明である。LED照明28は、下方に対向する傘28aに一体的に取り付けられており、筒体25aの内部に配置されている。傘28aの凹面には、反射材が布設または塗布されており、光を下方に反射させることで照明効率を高めている。LED照明28は、蛍光灯と異なり、点滅時におけるノイズがほとんど発生しないので、指定区域S内での、通信抑止電波発生装置10等の他の電子機器への影響を最小限に抑えることができる。なお、LED照明28の設置位置や個数、配置等は適宜設定することができ、図2に示す構成に限定されるものではない。
【0061】
図1および図2に示すように、天井部23の下部には、通信抑止電波発生装置10が設けられている。通信抑止電波発生装置10は、移動端末の通信の混乱または電波障害を引き起こすべく、抑止電波を発生させる装置である。抑止電波とは、正規の電波通信に対して、それとは異なる同じ周波数または周波数帯の電波である。通信抑止電波発生装置10は、この抑止電波を移動端末に向けて放射することによって、移動端末の通信を妨害する。通信抑止電波発生装置10は、抑止電波を発生させる本体部10aと、抑止電波を放射する電波放射部10bとを備えて構成されている(図2および図4参照)。電波放射部10bは、本体部10aの一端に設けられた単数本または複数本のアンテナにて構成されている。電波放射部10bのアンテナの本数は、指定区域Sの広さおよび取付位置に応じて決定される。
【0062】
本実施形態では、通信抑止電波発生装置10は、天井部23の先端部の出入口2側に取り付けられており、電波放射部10bが、電波遮蔽カーテン30とは反対側の指定区域Sの奥手方向(現金自動預払機3の前で立つ利用者の頭部付近の位置、すなわち、携帯電話が利用されると想定される位置)に向くように配置されている(図2参照)。また、通信抑止電波発生装置10は、電波遮蔽カーテン30が出入口2を閉塞しているときにしか、抑止電波を放射しないように設定されている。
【0063】
通信抑止電波発生装置10の電波放射部10bには、金属製ディッシュ11が設けられている。金属製ディッシュ11は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金にて形成されている。金属製ディッシュ11は、図4に示すように、電波放射部10bのアンテナの基端部に設けられている。金属製ディッシュ11は、アンテナを電波放射方向後方から囲むとともに、その凹面11aが電波放射方向に対向するように配置されている。凹面11aの表面には、電波吸収体11bが布設されている。電波吸収体11bは、ウレタン等の発泡樹脂にカーボン素子を含浸させて構成されている。
【0064】
なお、金属製ディッシュ11に代えて、電波放射方向が開口した金属製箱(図示せず)を、通信抑止電波発生装置10の電波放射部10bを覆うように設けてもよい。金属性箱は、直方体形状を呈しており、電波放射部10bのアンテナの略全体を覆うように構成されている。金属性箱は、電波放射方向(アンテナの延出方向)の前方のみが開口している。また、金属製箱の内面には、電波吸収体が布設されている。このような構成にすれば、電波放射部10bから放射される抑止電波の指向性が高くなり、移動端末に対して集中的に抑止電波を放射することができる。
【0065】
図1および図2に示すように、電波遮蔽カーテン30は、金属メッキが施された高分子繊維から形成された導電性布にて構成されている。導電性布は、ポリエステルやアクリル等の有機繊維の表面に極めて薄い金属メッキを施して金属皮膜が形成された繊維にて構成されており、高い導電性とフレキシブル性を備えている。金属メッキは、銅、ニッケルあるいは銅とニッケルの合金を用いて形成されている。金属メッキは、例えば、無電解ニッケルメッキが採用されている。無電解ニッケルメッキは、有機繊維をメッキ液に含浸することで、メッキ液に含まれる還元剤の酸化によって放出される電子により被メッキ物(有機繊維)に金属ニッケル皮膜を析出させている。さらに、金属メッキした上に、アクリル樹脂コーティングが施されており、金属アレルギー対策が施されている。導電性布は、例えば、ダイワボウノイ株式会社のMETAX(登録商標)を用いるのが好ましい。
【0066】
電波遮蔽カーテン30は、前記構成の導電性布から構成されることに限定されるものではない。例えば、ステンレス繊維から形成された導電性布にて構成するようにしてもよい。この導電性布は、ステンレス繊維を湿式抄紙法によりシート化して、焼結することで形成されており、例えば、株式会社巴川製紙所製のステンレス鋼繊維シート(特開平11−220282号公報参照)を用いるのが好ましい。これによって100%ステンレス繊維で形成され、軽量であって柔軟性、耐熱性、耐食性および導電性を備えた電波遮蔽カーテン30が形成される。前記導電性布の製造方法は、一例であって、ステンレス繊維の寸法や密度は適宜変更可能であって、ステンレス繊維の表面に異種の金属を被覆することも可能である。
【0067】
電波遮蔽カーテン30は、ロールカーテン状に形成されており、自動巻取りロール手段31に巻回されている。電波遮蔽カーテン30の下端には、錘32が取り付けられている。錘32は、電波遮蔽カーテン30を確実に垂下させるとともに、自動巻取りロール手段31への巻回時に電波遮蔽カーテン30の弛みが発生しないようにするために設けられている。錘32は、棒状に形成されており、出入口2の幅方向全長に亘って配置されている。錘32は、ゴム系樹脂にて構成されており、電波遮蔽構造体20の側壁部22に干渉しても、側壁部22に傷が付かないようになっている。これによって、電波遮蔽カーテン30を側壁部25に近接されることができる。なお、錘32は、ゴム系電波吸収材にて構成するのがさらに好ましい。
【0068】
図1に示すように、自動巻取りロール手段31は、電波遮蔽カーテン30を巻き取るロール部31aと、このロール部31aを回転させる駆動部31bとを備えている。電波遮蔽カーテン30およびロール部31aは、出入口2の幅方向全長に亘って配置されている。自動巻取りロール手段31は、指定区域Sの上部に配置される電波遮蔽構造体20である天井部23の先端部に設けられている。具体的には、枠構造体24の先端の押出形材24aと仕切壁24bとの間の収容スペース内に固定されている。これによって、自動巻取りロール手段31の前方には、押出形材24aが位置することとなる。したがって、この押出形材24aが目隠しの役目を果たし、自動巻取りロール手段31が露出されることはなく、美観を向上させることができる。
【0069】
駆動部31bは、現金自動預払機3または人感知センサー(図示せず)等の指定区域S内の人の動作を感知できる機器に電気的に接続されている。そして、駆動部31bは、指定区域S内の人の動作に応じて電波遮蔽カーテン30を自動的に巻き取りまたは送り出して、出入口2を自動開閉するように構成されている。指定区域S内に人がいない場合は、電波遮蔽カーテン30は、ロール部31aに巻き取られており、出入口2が開いた状態となっている。
【0070】
駆動部31bが現金自動預払機3に接続されている場合は、利用者が現金自動預払機3の操作を開始したのを検知して、現金自動預払機3から駆動部31bへと、電波遮蔽カーテン30を送り出させる方向に駆動部31bを駆動させる指令信号が送信される。そして、現金自動預払機3の操作が終了するとこれを検知して、現金自動預払機3から駆動部31bへと、電波遮蔽カーテン30を巻き取らせる方向に駆動部31bを駆動させる指令信号が送信される。
【0071】
一方、駆動部31bが人感知センサーに接続されている場合は、利用者が指定区域S内に入ったのを検知して、電波遮蔽カーテン30を送り出させる方向に駆動部31bを駆動させる指令信号が、駆動部31bへと送信される。そして、利用者が現金自動預払機3の前から出入口2側に移動するとこれを検知して、電波遮蔽カーテン30を巻き取らせる方向に駆動部31bを駆動させる指令信号が、駆動部31bへと送信される。
【0072】
駆動部31bは、電波遮蔽カーテン30の下端が床面との間に50cm以内の隙間をあけた高さに位置するように、ロール部31aから電波遮蔽カーテン30を送り出すように設定されている。ところで通信抑止電波発生装置10は、電波遮蔽カーテン30が出入口2を閉じているときにしか、抑止電波を放射しないように設定されている。したがって、少なくとも通信抑止電波発生装置10から抑止電波が放射されているときは、常に電波遮蔽カーテン30の下端が床面との間に50cm以内の隙間をあけた高さに位置することとなる。
【0073】
図1および図2に示すように、電波遮蔽カーテン30の下方の床面5上には、電波吸収マット51が敷設されている。電波吸収マット51は、ゴム系電波吸収シートからなる。ゴム系電波吸収シートは、例えば、ブチルゴム、天然ゴムやEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)ゴム等のゴム系材料にフェライト等の金属磁性体を混入して、所定の厚さに形成されている。なお、電波吸収マット51が設けられている場合は、電波吸収マット51の表面が床面となり、この電波吸収マット51の表面と電波遮蔽カーテン30の下端との隙間が50cm以内になるように電波遮蔽カーテン30が送り出される。電波吸収マット51は、電波遮蔽カーテン30の下方の位置を跨ぐように、指定区域Sの内外に亘って敷設されている。これによって、抑止電波が、電波吸収マット51の表面と電波遮蔽カーテン30の下端と隙間から外側に直進したとしても、電波吸収マット51で確実に吸収することができ、抑止電波が外部へ向かって反射することはない。
【0074】
次に、本実施形態に係る移動端末通信防止構造1の作用を説明する。
【0075】
以上のような構成の移動端末通信防止構造1によれば、通信抑止電波発生装置10から放射される抑止電波によって、指定区域S内での移動端末の通信を防止することができる。特に、本実施形態では、通信抑止電波発生装置10の電波放射部10bが、現金自動預払機3の前で立つ利用者の頭部付近の位置に向くように配置されているので、利用しようとする携帯電話の位置に向かって集中して抑止電波を放射することができる。これによって、移動端末の通信を確実且つ強制的に防止できる。
【0076】
ところで、一般に抑止電波を使用することは法律(電波法)で規制されており、抑止電波が指定区域S外に漏洩するのを防止する必要がある。そこで、本発明では、電波遮蔽構造体20と電波遮蔽カーテン30で指定区域Sを覆うことによって、抑止電波が指定区域S外へ漏洩するのを防止することができる。特に、電波遮蔽カーテン30は、指定区域S内の人の動作に応じて自動開閉するので、使用者が意識的に電波遮蔽カーテン30を閉じなくても、抑止電波が指定区域S外へ漏洩するのを自動的に防止することができる。
【0077】
具体的には、現金自動預払機3の操作開始の検知、または利用者の指定区域S内への進入の検知によって、自動巻取りロール手段31が駆動され、電波遮蔽カーテン30が出入口2を閉鎖するようになっており、さらに、通信抑止電波発生装置10は電波遮蔽カーテン30が出入口2を閉鎖した状態のみに抑止電波を放射できないように構成されている。したがって、出入口2が開放された状態で抑止電波が放射されることはないので、抑止電波の漏洩を防止できる。
【0078】
要するに、本発明は、通信抑止電波発生装置10から放射される抑止電波によって移動端末の通信を防止しつつ、電波遮蔽構造体20と電波遮蔽カーテン30で抑止電波の漏洩を防止するものである。本実施形態では、現金自動預払機3を利用しながらの携帯電話の通話を防止できるので、現金自動預払機3の前で携帯電話によって誘導されての振り込みを防止できる。したがって、振り込め詐欺や還付金詐欺等の被害を未然に防止することが可能である。
【0079】
また、本発明によれば、通信抑止電波発生装置10から放射される抑止電波で移動端末の通信を防止しているが、この抑止電波は、移動端末の通信用電波よりも電界強度が弱い。そのため、本発明のように抑止電波の漏洩を防止する場合の電波遮蔽性能の方が、指定区域を単に電波遮蔽構造体で区画することで移動端末の通信を防止する場合の電波遮蔽性能よりも低くて済む。したがって、電波遮蔽構造体20および電波遮蔽カーテン30を比較的簡単な構造とすることができ、施工の簡略化および費用の低減が図れる。
【0080】
また、通信抑止電波発生装置10は、天井部23の先端部の出入口2側に、電波放射部10bが指定区域Sの奥手方向に向くように配置されているので、抑止電波は、電波遮蔽カーテン30が移動する出入口2近傍に向かって放射されない。したがって、移動端末通信防止構造1全体としての電波漏洩防止効果が高くなる。
【0081】
さらに、通信抑止電波発生装置10の電波放射部10bに金属製ディッシュ11を設け、その凹面11a側に電波吸収体11bを布設したことによって、通信抑止電波発生装置10の後方に向かう抑止電波を吸収できるので、抑止電波が不要な部分には電波が放射されない。したがって、指定区域S内で利用しようとする移動端末に向かって効率的に抑止電波を放射することができるとともに、抑止電波が不要な部分(出入口2側)から電波が漏洩するのを確実に防止することができる。電波吸収体11bは、発泡樹脂にカーボン素子を含浸させて構成されているので、抑止電波を効率的に吸収できるとともに、発泡樹脂は切断や変形加工が簡単であるので、金属製ディッシュ11への布設施工を容易に行うことができる。
【0082】
さらに、本実施形態によれば、電波遮蔽カーテン30が、金属メッキが施された高分子繊維から形成された導電性布(または、ステンレス繊維から形成された導電性布)にて構成されていることによって、電波遮蔽カーテン30は、電波の遮蔽性と柔軟性を兼ね備える。したがって、電波遮蔽カーテン30は、指定区域Sの出入口2において、抑止電波を遮蔽できるとともに、開閉を容易に行うことができる。また、一般的な自動巻取りロール手段31で開閉を行うことができる。さらに、導電性布は、光透過性も兼ね備えているので、指定区域S内の明るさを得ることも可能である。
【0083】
電波遮蔽カーテン30の下端には、錘32が取り付けられているので、電波遮蔽カーテン30を確実に垂下させることができる。これによって、出入口2を好適に遮蔽することができる。さらに、ゴム系電波吸収体からなる錘32を用いれば、電波遮蔽性能がさらに向上する。また、電波遮蔽カーテン30の下方に、電波吸収マット51を敷設しているので、電波遮蔽性能をより一層高めることができるとともに、使用者の靴の滑りを防止できる。特に、電波吸収マット51は、電波遮蔽カーテン30の下方の位置を跨ぐように、指定区域Sの内外に亘って敷設されているので、抑止電波が、電波吸収マット51の表面と電波遮蔽カーテン30の下端と隙間から外側に直進したとしても、電波吸収マット51で確実に吸収することができ、抑止電波が外部へ向かって反射することはない。
【0084】
電波遮蔽カーテン30の下端と、床面(電波吸収マット51の表面)との間には、50cm以内の隙間が形成されているので、電波遮蔽カーテン30が踏まれて引っ張られるのを防止できるとともに、必要な電波遮蔽性能を得ることができる。
【0085】
一方、電波遮蔽構造体20のうち、天井部23は、周縁部に位置する枠構造体24と、この枠構造体24の内側開口部の少なくとも一部を覆うように設けられたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる筒体25aを並列してなる電波遮蔽体25とを備えて構成されているので、指定区域Sの内外で空気の流通を確保しつつ、抑止電波の遮蔽性能を確保することができる。さらには、採光も得ることができる。
【0086】
そして、枠構造体24は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる押出形材24aを組み合わせて構成されているので、押出形材24aを適宜な長さで切断して組み合わせるだけで、枠構造体24を容易に製造することができる。また、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の押出形材24aは、寸法精度が高く、また、強度の割に軽量であるので、天井部23全体の軽量化が図れる。
【0087】
また、筒体25aを並列させてなる電波遮蔽体25の上部に、換気用ファン27を設けたことによって、指定区域S内の強制換気を行える。したがって、指定区域S内の良好な空気環境を容易に得ることができる。
【0088】
さらに、電波遮蔽体25の下部に、LED照明28を設けたことによって、指定区域S内を容易に明るくすることができる。また、LED照明28は、電波遮蔽体25の筒体25aの内部に収容できるので、美観が向上する。また、筒体25aを介して、LED照明28の配線を容易に行うことができる。
【0089】
電波遮蔽構造体20のうち、側壁部22は、導電性薄膜または導電性メッシュが布設された透光性樹脂板を備えて構成されているので、側部から採光を得ることができる。さらに、電波遮蔽構造体20の電波遮蔽性を保ちつつ軽量化を図ることができる。
【0090】
電波遮蔽構造体20のうち、側壁部22をアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる板材を備えて構成するようにした場合であっても、電波遮蔽構造体20の電波遮蔽性を保ちつつ軽量化を図ることができる。
【0091】
本実施形態の移動端末通信防止構造1は、図5に示すように、複数並べて構成してもよい。この場合、隣り合う指定区域S,S間の側壁部22は、一つの電波遮蔽構造体20で兼用される。天井部23の先端の枠構造体24には、指定区域S内の現金自動預払機3の使用状況を表示する案内板52が設けられている。このようにすれば、利用者が各指定区域Sの使用状況を把握することができ、利用者の立場に立った親切な現金自動預払機3を提供できる。
【0092】
また、電波遮蔽カーテン30の正面には、詐欺犯罪への注意を喚起する注意書き53が貼り付けられている。このようにすれば、振り込め詐欺や還付金詐欺等の被害発生率をより一層低下させることができる。
【0093】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図6および図7に示すように、第二実施形態に係る移動端末通信防止構造1’は、電波遮蔽構造体20のうち、指定区域Sの上部に配置される天井部23’の枠構造体24の内側開口部の少なくとも一部を覆うものが、金属製メッシュ55である。
【0094】
金属製メッシュ55は、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル等の導電性の高い金属にて構成されている。金属製メッシュ55の目の粗さは、通信抑止電波発生装置10から放射される抑止電波の波長に基づいて設定され、#90〜#200(単位長さ(1インチ)当りの目の数)の範囲で適宜選択される。
【0095】
金属製メッシュ55は、上下方向に所定の間隔をあけて複数積層されている。最上部を除く下方の金属製メッシュ55は、仕切壁24bと枠構造体24の基端の押出形材24aとの間に設けられている。この金属製メッシュ55の周縁部は、基端部および両側部の枠構造体24と、仕切壁24bの内周面に溶接等の公知の接合手段によって接合されている。最上部の金属製メッシュ55は、天井部23’の基端の押出形材24aから先端の押出形材24aの内側面まで延出している。この最上部の金属製メッシュ55の周縁部は、枠構造体24の四辺の内周面に溶接等の公知の接合手段によって接合されている。つまり、仕切壁24bと枠構造体24の先端の押出形材24aとの間に位置する電波遮蔽カーテン30の収容スペースの上部には、金属製メッシュ55の一部が設置スペースを覆うように設けられている。これによって、電波遮蔽カーテン30の収容スペースの上下位置における電波遮蔽性能を確保できる。
【0096】
また、第二実施形態では、通信抑止電波発生装置10は、天井部23の下部で真下を向くように設けられている。通信抑止電波発生装置10は、現金自動預払機3の前で立つ利用者の略真上の位置に配置されている。すなわち、通信抑止電波発生装置10は、携帯電話が利用されると想定される位置に真上から下方へ向くように配置されている(図7参照)。
【0097】
なお、第二実施形態に係る移動端末通信防止構造1’のその他の構成は、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0098】
このような構成の電波遮蔽構造体20を備えた移動端末通信防止構造1’によれば、第一実施形態と同様の作用効果を得られるほかに、第一実施形態と比較して天井部23’が大幅に軽量化される。これによって、天井部23’の荷重を支持する吊り金具を省略することができる。また、第一実施形態よりも多くの採光を得ることができる。
【0099】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図8に示すように、第三実施形態に係る移動端末通信防止構造1”は、電波遮蔽カーテン30”を自動的に移動させる手段として、自動カーテンレール手段35が設けられている。本実施形態における電波遮蔽カーテン30”は、カーテンレールのランナーに係止されて、ランナーの移動によって開閉する一般的な吊下げカーテンの形状となっている。電波遮蔽カーテン30”の下端部と、床面(電波吸収マット51の表面)との間には、50cm以内の隙間が形成されている。また、電波遮蔽カーテン30”の下端部には、折返し部が形成され、その内部に錘(図示せず)が収容されている。
【0100】
自動カーテンレール手段35は、レール部35aと、レール部35aに沿って移動するランナー(図示せず)を移動させる駆動部35bとを備えている。ランナーの駆動方式は、チェーン式、リニアモータ式等の種々の方式の中から適宜選択されている。レール部35aは、天井部23”の先端の押出形材24aの外側面に、その長手方向(水平方向)に沿って取り付けられている。レール部35aは、押出形材24aの高さ方向中間部に取り付けられており、電波遮蔽カーテン30”の上端部での電波遮蔽性能を確保している。駆動部35bは、天井部23”の先端の押出形材24aの外側面の長手方向一端部にレール部35aと一体的に取り付けられている。なお、本実施形態では、電波遮蔽カーテン30”は、先端の押出形材24aの長手方向一端から他端に開閉させる片開き形式であるが、電波遮蔽カーテンを押出形材24aの長手方向両端にそれぞれ設け、中心に向かって開閉させる両開き形式であってもよい。
【0101】
本実施形態では、天井部23”の枠構造体24の内側には仕切壁は設けられておらず、電波遮蔽体25は、枠構造体24の基端の押出形材24aと先端の押出形材24aとの間の、天井部23”の全体に亘って設けられている。
【0102】
なお、第三実施形態に係る移動端末通信防止構造1”のその他の構成は、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0103】
このような構成の移動端末通信防止構造1”によれば、第一実施形態と同様の作用効果を得られるほかに、第一実施形態の自動巻取りロール手段と比較して、自動カーテンレール手段35は、軽量で構造が簡略化される。
【0104】
なお、本実施形態では、自動カーテンレール手段35が先端の押出形材24aの外側面に設けられているが、これに限定されるものではない。図9に示すように、天井部23の枠構造体24の内側に設けられた仕切壁24bの側面に、自動カーテンレール手段35を設けるようにしてもよい。
【0105】
この場合、枠構造体24の先端の押出形材24aと仕切壁24bとの離間距離は、自動カーテンレール手段35が取り付け可能な距離となっていればよい。仕切壁24bと枠構造体24の基端の押出形材24aとの間には、第一実施形態と同様に、電波遮蔽体25の設置スペースが形成されている。仕切壁24bと枠構造体24の先端の押出形材24aとの間には、自動カーテンレール手段35の収容スペースが形成されている。
【0106】
このような構成によれば、先端の押出形材24aが、自動カーテンレール手段35の前方に位置することになり、目隠しの役目を果たす。これによって、自動カーテンレール手段35が露出されることはなく、美観を向上させることができる。また、電波遮蔽構造体20の側壁部22が、電波遮蔽カーテン30”との接触位置よりも前方に張り出すこととなる。したがって、電波遮蔽カーテン30”と側壁部22との間の電波遮蔽性能を高めることができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、第一実施形態では、天井部23の略全体に亘って筒体25aが設けられているが、筒体25aを換気用ファン27の取付け部分に限定して、その他の部分を金属板26で覆うようにしてもよい。また、第二実施形態における金属製メッシュ55を、換気用ファン27の取付け部分に限定して設けるようにしてもよい。
【0108】
さらに、前記の各実施形態では、電波遮蔽カーテン30(30”)の設置位置は、天井部23(23’,23”)の先端であるが、これに限定されるものではなく、側面であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に係る移動端末通信防止構造の第一の実施形態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る移動端末通信防止構造の第一の実施形態を示した断面図である。
【図3】換気用ファンと天井部との取り合いを示した断面図である。
【図4】通信抑止電波発生装置を示した断面図である。
【図5】本発明に係る移動端末通信防止構造の第一の実施形態を並設した状態を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る移動端末通信防止構造の第二の実施形態を示した斜視図である。
【図7】本発明に係る移動端末通信防止構造の第二の実施形態を示した断面図である。
【図8】本発明に係る移動端末通信防止構造の第三の実施形態を示した斜視図であって、(a)は、出入口が閉じた状態を示した図、(b)は、出入口が開閉途中の状態を示した図である。
【図9】本発明に係る移動端末通信防止構造の第三の実施形態の変形例を示した斜視図であって、(a)は、出入口が閉じた状態を示した図、(b)は、出入口が開閉途中の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0110】
1 移動端末通信防止構造
10 通信抑止電波発生装置
10b 電波放射部
11 金属製ディッシュ
11a 凹面
11b 電波吸収体
20 電波遮蔽構造体
22a 導電性薄膜
22b 透光性樹脂板
24 枠構造体
24a 押出形材
25 電波遮蔽体
25a 筒体
27 換気用ファン
28 LED照明
30 電波遮蔽カーテン
31 自動巻取りロール手段
32 錘
35 自動カーテンレール手段
51 電波吸収マット
55 金属製メッシュ
S 指定区域
1’ 移動端末通信防止構造
1” 移動端末通信防止構造
30” 電波遮蔽カーテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定区域内での移動端末の通信を防止する移動端末通信防止構造であって、
前記指定区域に配置された通信抑止電波発生装置と、
前記指定区域を囲む電波遮蔽構造体と、
前記指定区域の出入口に設けられ自動開閉する電波遮蔽カーテンと、を有する
ことを特徴とする移動端末通信防止構造。
【請求項2】
前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の上部に配置される枠構造体と、この枠構造体の内側開口部の少なくとも一部を覆うように設けられた電波遮蔽体とを備え、
前記電波遮蔽体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる筒体を並列してなる
ことを特徴とする請求項1に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項3】
前記枠構造体は、表面に陽極酸化皮膜が施されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる押出形材を組み合わせて構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項4】
前記電波遮蔽体の上部に、換気用ファンを設けた
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項5】
前記電波遮蔽体の下部に、LED照明を設けた
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項6】
前記電波遮蔽カーテンは、金属メッキが施された高分子繊維から形成された導電性布にて構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項7】
前記電波遮蔽カーテンは、ステンレス繊維から形成された導電性布にて構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項8】
前記電波遮蔽カーテンは、その下端に錘が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項9】
前記電波遮蔽カーテンは、前記通信抑止電波発生装置から抑止電波が放射されているときは、その下端が床面との間に50cm以内の隙間をあけた高さに位置する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項10】
前記電波遮蔽カーテンの下方の床面上には、ゴム系電波吸収シートからなる電波吸収マットが敷設されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項11】
前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の側部に配置される透光性樹脂板を備え、
前記透光性樹脂板には、導電性薄膜または導電性メッシュが布設されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項12】
前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の側部に配置される板材を備え、
前記板材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項13】
前記通信抑止電波発生装置の電波放射部には、金属製ディッシュが設けられており、
この金属製ディッシュの凹面側に電波吸収体が布設されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項14】
前記通信抑止電波発生装置には、その電波放射方向が開口した金属製箱が前記通信抑止電波発生装置の電波放射部を覆うように設けられており、
この金属製箱の内面に電波吸収体が布設されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項15】
前記電波吸収体は、発泡樹脂にカーボン素子を含浸させて構成されている
ことを特徴とする請求項13または請求項14に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項16】
前記通信抑止電波発生装置は、前記電波遮蔽構造体の前記出入口側に設けられ、前記通信抑止電波発生装置の電波放射部が、前記指定区域の奥手方向に向くように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項17】
前記電波遮蔽構造体のうち、前記指定区域の上部に配置される前記電波遮蔽構造体の先端部には、前記電波遮蔽カーテンを自動的に巻き取りまたは送り出す自動巻取りロール手段が設けられ、
前記自動巻取りロール手段は、前記指定区域内の人の動作に応じて前記電波遮蔽カーテンを自動的に巻き取りまたは送り出して、前記出入口を自動開閉する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項18】
前記電波遮蔽構造体のうち、前記指定区域の上部に配置される前記電波遮蔽構造体の先端部には、前記電波遮蔽カーテンを自動的に移動させる自動カーテンレール手段が設けられ、
前記自動カーテンレール手段は、前記指定区域内の人の動作に応じて前記電波遮蔽カーテンを自動的に移動させて、前記出入口を自動開閉する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項19】
前記電波遮蔽構造体は、前記指定区域の上部に配置される枠構造体と、この枠構造体の内側開口部の少なくとも一部を覆うように布設された金属製メッシュとを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の移動端末通信防止構造。
【請求項20】
前記金属製メッシュの上部に、換気用ファンを設けた
ことを特徴とする請求項19に記載の移動端末通信防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−116748(P2010−116748A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291823(P2008−291823)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】