移動経路推定システム及び移動経路推定方法
【課題】測位点間の移動経路を精度良く推定する。
【解決手段】ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報が格納されたプローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納し、基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の位置情報及び種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索し、経路探索部により探索された複数の経路の中から、所要時間と、第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する。
【解決手段】ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報が格納されたプローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納し、基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の位置情報及び種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索し、経路探索部により探索された複数の経路の中から、所要時間と、第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動経路推定システム及び移動経路推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)を利用して生成されるプローブ情報を用いた様々なサービスが検討されている。プローブ情報には、ユーザID、測位時刻、緯度・経度等の情報が含まれる。したがって、ユーザ端末から送信されるプローブ情報により、ユーザの現在位置を把握することができる。例えば、特許文献1には、ユーザの情報端末装置から定期的に送信されるプローブ情報を用いて、ユーザの現在位置に応じた情報を提供するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ユーザ端末から送信されてくるプローブ情報は、ある時刻において測位された緯度・経度を示すものである。そのため、ある期間にわたってプローブ情報を蓄積することにより、ユーザの行動範囲や行動パターンを把握することが可能となる。
【0005】
ところで、各プローブ情報は、ある測位点の情報にしかすぎないため、測位点間も含めてユーザの行動範囲や行動パターンを把握するためには、測位点間の移動経路を推定する必要がある。測位点間の移動経路を推定する手法としては、例えば、測位点間を直線で結ぶことが考えられるが、これにより得られる移動経路は実際の移動経路とは異なることが多い。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、測位点間の移動経路を精度良く推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る移動経路推定システムは、ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報を記憶するプローブ情報記憶部と、プローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納する基準点特定部と、基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の位置情報及び種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索する経路探索部と、経路探索部により探索された複数の経路の中から、所要時間と、第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する移動経路推定部と、を備える。
【0008】
なお、本発明において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測位点間の移動経路を精度良く推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である移動経路推定システムの構成を示す図である。
【図2】移動経路推定システムにおける移動経路推定の概念を示す図である。
【図3】プローブ情報DBの構造の一例を示す図である。
【図4】測位点のマッチングの一例を示す図である。
【図5】マッチング情報DBの構造の一例を示す図である。
【図6】経路探索の一例を示す図である。
【図7】移動経路推定の一例を示す図である。
【図8】移動経路情報DBの構造の一例を示す図である。
【図9】連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路」の場合の一例を示す図である。
【図10】連続する測位点のマッチング結果が「道路→路線」の場合の一例を示す図である。
【図11】連続する測位点のマッチング結果が「路線→路線」の場合の一例を示す図である。
【図12】連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路」の場合の一例を示す図である。
【図13】連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図14】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例を示す図である。
【図15】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例を示す図である。
【図16】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図17】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の別の一例を示す図である。
【図18】連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図19】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例を示す図である。
【図20】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例を示す図である。
【図21】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図22】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図23】最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図24】測位レベルが低い測位点を経路探索処理の対象外とする一例を示す図である。
【図25】測位レベルに応じて中間点の周辺領域の大きさを変更する一例を示す図である。
【図26】移動経路推定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
==システム構成==
まず、システム構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である移動経路推定システムの構成を示す図である。移動経路推定システム10は、プローブ情報に基づいて、測位点間の移動経路を推定するシステムであり、1台または複数台の情報処理装置を用いて構成される。図1に示すように、移動経路推定システム10は、プローブ情報受信部20、マッチング部22、経路探索部24、移動経路推定部26、プローブ情報データベース(DB)40、マッチング情報データベース(DB)42、及び移動経路情報データベース(DB)44を含んで構成される。
【0013】
なお、プローブ情報受信部20、マッチング部22、経路探索部24、及び移動経路推定部26は、例えば、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現することができる。また、プローブ情報DB40、マッチング情報DB42、及び移動経路情報DB44は、例えば、メモリや記憶装置等の記憶領域を用いて実現することができる。
【0014】
図2には、移動経路推定システム10における移動経路推定の概念が示されている。例えば、あるユーザのユーザ端末から送信されてきた複数のプローブ情報があるとする。このプローブ情報により、ユーザの移動経路上にある複数の測位点を知ることができるが、測位点間の移動経路については推定する必要がある。一般的な手法として、例えば、測位点間を直線で補完することにより移動経路を推定することが考えられる。しかしながら、このような手法では、例えば、図2に示すように、移動経路の一部が海上や山中になるなど、精度の低いものとなってしまう。そこで、移動経路推定システム10は、測位点間で各種経路探索を行うことにより、精度の高い移動経路を推定可能としている。以下に、移動経路推定システム10の詳細構成を説明する。
【0015】
図1に戻り、プローブ情報受信部20は、携帯電話や携帯情報端末、カーナビゲーション装置等のユーザ端末から無線ネットワークを介して送信されてくるプローブ情報を受信し、プローブ情報DB40に格納する。プローブ情報は、ユーザ端末におけるGPSを利用した測位によって生成されるものであり、ユーザ端末を識別するためのユーザID、ユーザ端末の現在位置の測位点の緯度や経度等を示す測位情報、測位点の測位時刻、及び測位精度を含んでいる。このようなプローブ情報は、各ユーザ端末から、例えば、5分間隔等で定期的に送信されてくる。なお、ユーザ端末の移動が検出されている間のみ、プローブ情報が送信されてくる場合もある。図3には、プローブ情報DB40の構造の一例が示されている。図3に示すように、プローブ情報DB40には、複数のユーザから送信されてくるプローブ情報が格納されている。
【0016】
図1に戻り、マッチング部22(基準点特定部)は、プローブ情報DB40を参照し、各プローブ情報の測位点の最寄りの道路及び路線を、移動経路を推定する際の基準点として特定する。本実施形態では、このように測位点の最寄りの道路及び路線である基準点を特定することを「マッチング」とも称する。図4には、測位点のマッチングの一例が示されている。図4に示すように、マッチング部22は、黒丸で示される各測位点を、測位点から半径Nm以内の最寄りの道路及び路線にマッチングする。ここで、半径Nm以内に道路と路線の両方が存在する場合、測位点は道路と路線の両方にマッチングされることとなる。したがって、マッチング部22によるマッチング結果は、「道路」、「路線」、「道路・路線」の3種類となる。なお、マッチング部22は、例えば、道路ネットワークや路線ネットワークの情報が格納されたネットワーク情報データベース(DB)を参照することにより、測位点のマッチングを行うことができる。このようなネットワーク情報DBは、移動経路推定システム10の内部にあってもよいし外部にあってもよい。また、ネットワーク情報DBは複数のデータベースにより構成されていてもよい。
【0017】
なお、マッチング部22は、例えば、測位点の測位精度を示す測位レベルが所定レベル未満であるプローブ情報については、処理の対象外とすることができる。また、マッチング部22は、例えば、1つ前の測位点との間の移動速度が所定速度未満であるプローブ情報についても、処理の対象外とすることができる。
【0018】
マッチングが完了すると、マッチング部22は、マッチングされた基準点の緯度や経度等を示す位置情報と、基準点の種別を示すマッチング結果(種別情報)と、対応するプローブ情報の測位時刻、ユーザID、及び測位精度とを対応づけたマッチング情報(基準点情報)を生成し、マッチング情報DB42(基準点情報記憶部)に格納する。なお、マッチング情報とプローブ情報との対応関係がわかるようになっていれば、プローブ情報に含まれる情報はマッチング情報に含まれないようにしてもよい。図5には、マッチング情報DB42の構造の一例が示されている。図5に示すように、マッチング情報には地点情報が含まれている。この地点情報は、基準点が経路上の「出発地」、「経由地」、「到着地」の何れであるかを示す情報であり、後述するように、経路探索部24がマッチング情報を用いて経路探索を行う際に用いる情報である。なお、地点情報は、マッチング情報の一項目として含めるのではなく別途記憶されることとしてもよい。また、マッチング結果が「道路・路線」の場合、道路と路線のそれぞれの位置を示す位置情報が設定されるようにすることもできる。
【0019】
図1に戻り、経路探索部24は、マッチング情報DB42を参照し、2つの基準点間の位置情報及びマッチング結果に基づいて、基準点間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索する。図6には、経路探索の一例が示されている。図6の例では、連続する2つの測位点のマッチング結果がいずれも「道路」となっている。この場合、経路探索部24は、マッチングにより特定された基準点間で各種経路探索を実行する。ここで実行される各種経路には、例えば、徒歩の経路、徒歩・電車の経路、自転車の経路、自動車の経路等が含まれる。なお、経路探索部24は、例えば、前述したネットワーク情報DBを参照することにより、各種経路探索を実行することができる。例えば、経路探索部24は、道路ネットワーク情報を参照することにより、基準点間を徒歩や自転車、自動車で移動する際の経路及び所要時間を探索することができる。また、例えば、経路探索部24は、道路ネットワーク情報に加えて路線ネットワーク情報を参照することにより、基準点間を徒歩および電車で移動する際の経路及び所要時間を探索することができる。また、例えば、経路探索部24は、出発地の測位曜日や測位時刻を条件の一部として経路探索を実行することができる。なお、経路探索部24は、測位点のマッチング結果に応じて経路探索の制御を行うが、この詳細については後述する。
【0020】
図1に戻り、移動経路推定部26は、経路探索部24により探索された複数の経路の中から、測位点間の測位時刻の間隔(測位点間の時間)と、各経路の所要時間とに基づいて、測位点間の移動経路を推定する。例えば、移動経路推定部26は、複数の経路の所要時間と、測位点間の時間との差が最も小さい経路を、測位点間の移動経路と推定することができる。また、移動経路推定部26は、基準点間における道路ネットワークの長さを測位点間の時間で割ることによって移動速度を算出し、算出された移動速度に基づいて移動手段を特定することも可能である。図7には、移動経路推定の一例が示されている。図7の例では、基準点間で各種経路探索を行った結果、徒歩・電車の経路の所要時間が測位点間の時間に最も近かったため、該経路が測位点間の移動経路として推定されている。
【0021】
そして、移動経路推定部26は、推定された移動経路を示す移動経路情報を移動経路情報DB44に格納する。図8には、移動経路情報DB44の構造の一例が示されている。図8に示すように、移動経路情報には、例えば、経路そのものの情報である経路情報に加え、ユーザID、経路属性、測位時刻、及び緯度や経度等の位置情報が含まれている。ここで、経路属性とは、経路上における「出発地」または「到着地」を識別するためのものである。なお、プローブ情報またはマッチング情報と、経路情報との対応関係がわかるようになっていれば、プローブ情報またはマッチング情報に含まれる情報は移動経路情報に含まれないようにしてもよい。また、本実施形態では、経路情報をデータベースに格納することとしているが、推定された移動経路を別の処理ですぐに利用する場合等においては、経路情報がデータベースに格納されるのではなく一時的な記憶領域に記憶されることとしてもよい。
【0022】
==経路探索のパターン==
次に、測位点のマッチング結果に応じた経路探索のパターンについて説明する。
(A)「道路→道路」の場合
図9には、連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、測位点に対応する基準点間で各種経路探索を実行する。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。
(B)「道路→路線」の場合
図10には、連続する測位点のマッチング結果が「道路→路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定し、2つの基準点を順に「出発地」、「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。なお、「出発地」や「経由地」、「到着地」の記憶は、マッチング情報における地点情報を用いて行うことができる。以降の例についても同様である。
(C)「路線→路線」の場合
図11には、連続する測位点のマッチング結果が「路線→路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗っていると判定し、基準点を「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。
(D)「路線→道路」の場合
図12には、連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車から降りたと判定し、現在の基準点を「到着地」して記憶する。そして、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定された「出発地」から現在の「到着地」までの間で、徒歩・電車の経路探索を実行する。この探索により複数の経路が得られた場合、移動経路判定部26は、より多くの路線上の経由地を通過している経路を移動経路として推定することができる。
(E)「道路→道路・路線」の場合
図13〜図17には、連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路・路線」の場合の一例が示されている。図13に示すように、2つ目の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合、道路上の経路であるか路線上の経路であるかを判定することができない。そのため、経路探索部24は、2つの基準点を順に「出発地」、「経由地」として記憶し、さらに次の測位点のマッチング結果を考慮して経路探索を行う。
【0023】
図14には、次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、この測位点に対応する基準点を「到着地」と判定し、「出発地」から「到着地」までの間で、各種経路探索を実行する。なお、経路探索部24は、徒歩、自転車、自動車の経路の探索の際には、「到着地」と「出発地」の間にある「経由地」を設定して経路を探索することができる。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。なお、電車の経路として複数の探索結果がある場合は、より多くの「経由地」を経由している経路を採用することができる。
【0024】
図15には、次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定し、この測位点に対応する基準点を「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。
【0025】
図16には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例が示されている。この場合、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定であるため、この測位点に対応する基準点は「経由地」として記憶され、測位点が「道路」または「路線」のいずれかのみにマッチングするまで測位点のマッチングが繰り返される。
【0026】
図17には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の別の一例が示されている。この場合も、図16の場合と同様に、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定である。ただし、図16の場合と異なり、経路探索部24は、マッチング結果が不定である2つの測位点に対応する基準点間で各種経路探索を実行する。このとき、経路探索部24は、路線ネットワーク上での距離を電車の平均速度で割ることにより、電車の経路における所要時間を推測することができる。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。
(F)「路線→道路・路線」の場合
図18〜図22には、連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路・路線」の場合の一例が示されている。図18に示すように、2つ目の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合、道路上の経路であるか路線上の経路であるかを判定することができない。そのため、経路探索部24は、さらに次の測位点のマッチング結果を考慮して経路探索を行う。
【0027】
図19には、次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車から降りたと判定し、現在の基準点を「到着地」して記憶する。そして、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定された「出発地」から現在の「到着地」までの間で、徒歩・電車の経路探索を実行する。この探索により複数の経路が得られた場合、移動経路判定部26は、より多くの路線上の経由地を通過している経路を移動経路として推定することができる。
【0028】
図20には、次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗っていると判定し、基準点を「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。
【0029】
図21には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例が示されている。この場合、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定であるため、この測位点に対応する基準点は「経由地」として記憶され、測位点が「道路」または「路線」のいずれかのみにマッチングするまで測位点のマッチングが繰り返される。
【0030】
図22には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の別の一例が示されている。この場合も、図21の場合と同様に、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定である。ただし、図21の場合と異なり、経路探索部24は、マッチング結果が不定である2つの測位点に対応する基準点間で各種経路探索を実行する。このとき、経路探索部24は、路線ネットワーク上での距離を電車の平均速度で割ることにより、電車の経路における所要時間を推測することができる。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。
(G)最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合
図23には、あるユーザにおいて、例えば1日の最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例が示されている。この場合、最初の測位点が路線上である可能性は低いと考えられるため、経路探索部24は、この測位点に対応する基準点が「道路」であるとみなし、次の測位点のマッチング結果を考慮して上記の他の例と同様に経路探索を行う。なお、この場合、マッチング部22がマッチング情報を生成する際に、マッチング結果を「道路・路線」ではなく「道路」とすることとしてもよい。
(H)測位レベルを考慮した例
図24、図25には、測位点の測位レベルを考慮する場合の一例が示されている。図24には、測位レベルが「1」〜「3」の複数の測位点が示されている。ここで、測位レベルは、測位精度を表すものであり、本実施形態においては値が大きいほど精度が高いことを意味している。この場合、経路探索部24は、例えば、測位レベルが「1」または「2」である測位点を経路探索処理の対象外とすることができる。すなわち、経路探索部24は、測位レベルが「3」の測位点に対応する基準点間において経路探索を実行する。なお、マッチング部22は、測位レベルが「1」または「2」である測位点に対するマッチングは行わないようにすることができる。
【0031】
図24に示すように測位レベルが低い測位点を除外して経路探索を行った結果、複数の経路が得られた場合、移動経路推定部26は、測位レベルが低い測位点を用いて経路の選択を行う。図25にはその一例が示されている。例えば、移動経路推定部26は、移動経路上の中間点となる測位レベルが「1」または「2」である測位点について、その測位レベルに応じた大きさの周辺領域を設定する。図25の例では、測位レベルが「1」の測位点の周辺領域は、測位レベルが「2」の測位点の周辺領域よりも大きくなっている。移動経路推定部26は、経路探索部24によって探索された複数の経路について、測位レベルが「1」または「2」の測位点の周辺領域の通過数が最も多い経路を、移動経路と推定することができる。なお、移動経路上の中間点としては、測位点そのものではなく、測位点を道路または路線にマッピングして得られる基準点であってもよい。
【0032】
==処理説明==
次に、移動経路推定システム10における移動経路推定処理の流れについて説明する。図26は、移動経路推定システム10における移動経路推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
まず、マッチング部22は、プローブ情報DB40を参照し、あるユーザにおける次に処理対象とする測位点のプローブ情報を取得する(S2601)。なお、マッチング部22は、最初にプローブ情報を取得する際には、連続する2つの測位点のプローブ情報を取得する。
【0034】
マッチング部22は、取得した測位点の測位レベルがM(例えば「3」)以上であるか判定する(S2602)。ここで、測位レベルがM未満であれば(S2602:N)、測位精度が低いと判定され、経路探索処理の対象外とされる。したがって、マッチング部22は、さらに次の測位点のプローブ情報を取得する(S2601)。
【0035】
測位レベルがM以上であれば(S2602:Y)、マッチング部22は、2つの測位点間の移動速度がNkm/h以上であるか判定する(S2603)。ここで、移動速度がNkm/h未満であれば(S2603:N)、マッチング部22は、2点間での移動が無いとみなして次の測位点のプローブ情報を取得する(S2601)。
【0036】
続いて、マッチング部22は、路線の途中からの経路探索を実行不可かどうか判定する(S2604)。なお、路線の途中からの経路探索が可能かどうかは、移動経路推定システム10において予め定められていることとしてもよいし、路線ネットワークの情報が格納されたネットワーク情報DBを参照することによって判定可能であることとしてもよい。ここで、路線の途中からの経路探索を実行可能であれば(S2604:N)、経路探索部24が2点間で各種経路探索を実行する(S2605)。そして、移動経路推定部26は、測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路として選択する(S2606)。
【0037】
路線の途中からの経路探索が実行不可の場合(S2604:Y)、まず、マッチング部22が測位点を道路及び路線にマッチングし、マッチング情報をマッチング情報DB42に格納する(S2607)。そして、経路探索部24は、マッチング情報DB42を参照し、マッチング結果に応じた経路探索処理を実行する。
【0038】
マッチング結果が「道路→道路」の場合、経路探索部24は、2つの基準点間で各種ルート探索を実行する(S2608)。そして、移動経路推定部26は、測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路と推定する(S2609)。
【0039】
マッチング結果が「道路→路線」または「道路・路線→路線」の場合、経路探索部24は、「出発地」、「経由地」を記憶する(S2610)。その後、次の点のマッチング処理へと進む(S2611)。
【0040】
マッチング結果が「路線→路線」の場合、経路探索部24は、「経由地」を記憶する(S2612)。その後、次の点のマッチング処理へと進む(S2613)。
【0041】
マッチング結果が「路線→道路」または「道路・路線→道路」の場合、経路探索部24は、「道路」にマッチングされた測位点に対応する基準点を「到着地」と判定し、「出発地」と「到着地」の間で各種ルート探索を実行する(S2614)。そして、移動経路推定部26は、「出発地」及び「到着地」に対応する測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路と推定する(S2615)。
【0042】
マッチング結果が「道路→道路・路線」または「路線→道路・路線」の場合、次の点のマッチング処理へと進む(S2616)。
【0043】
マッチング結果が「道路・路線→道路・路線」の場合、次の点のマッチング処理へと進む(S2617)。もしくは、経路探索部24が、2つの基準点間で各種ルート探索を実行し(S2618)、移動経路推定部26が、測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路と推定する(S2619)。
【0044】
一連の経路上における最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合、経路探索部24は、最初の測位点が「道路」であるとみなして他の場合と同様の経路探索処理を実行する(S2620)。
【0045】
上述した処理が、あるユーザのある期間におけるプローブ情報を対象として行われることにより、該期間における該ユーザの移動経路を推定することが可能となる。なお、移動経路の推定処理は、プローブ情報の受信に応じてリアルタイムに行われることとしてもよいし、蓄積された所定期間分のプローブ情報を用いてバッチ的に行われることとしてもよい。
【0046】
==適用例==
次に、推定された移動経路の利用例について説明する。例えば、移動経路がリアルタイムに推定されている場合、情報提供サーバは、その移動経路の交通手段に応じた各種情報をユーザに提供することが可能となる。具体例としては、例えば、移動経路が自動車の経路であれば、近辺の渋滞情報を提供したり、ガソリンスタンド等の施設情報を提供したりすることができる。また、例えば、移動経路に電車の経路が含まれる場合であれば、電車の遅延情報や乗換案内情報等を提供することができる。
【0047】
また、例えば、ある一定期間におけるユーザの移動経路を蓄積することにより、ユーザの行動範囲における各領域の属性を判定することができる。例えば、情報分析サーバは、測位点や移動経路をメッシュ領域や行政区画のポリゴン等の分割領域にマッピングし、各分割領域におけるユーザの滞在時間や滞在回数(日数)等を集計することができる。そして、情報分析サーバは、集計された滞在時間や滞在回数等の情報に基づいて、各分割領域の属性を判定することができる。具体例としては、滞在時間も滞在回数も多い分割領域は、例えば自宅や勤務地であると判定することができる。また、滞在時間は少ないが滞在回数が多い分割領域は、例えば通勤路であると判定することができる。
【0048】
以上、本実施形態の移動経路推定システム10について説明した。本実施形態によれば、測位点間を単に直線で結んで移動経路が推定されるのではなく、測位点を道路及び路線にマッピングしたうえで複数の経路が探索され、探索された経路の中から最も確からしい経路が測位点間の移動経路として推定される。これにより、測位点間の移動経路を精度良く推定することが可能となっている。
【0049】
また、本実施形態では、例えば、電車の経路だけではなく、徒歩の経路や自転車の経路、自動車の経路、徒歩と電車を組み合わせた経路など、複数の移動手段を考慮した複数の経路が探索される。したがって、測位点間の移動経路の推定精度を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、マッチング結果が「道路」以外の経由地を考慮したうえで、移動経路の推定が行われる。これによっても、測位点間の移動経路の推定精度を高めることが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、測位レベルが所定レベル未満の測位点を経路探索処理の対象外とすることができる。さらに、本実施形態では、測位レベルが所定レベル未満の測位点である中間点の周辺領域の大きさを測位レベルに応じて調整し、測位レベルが所定レベル以上の測位点間で探索された経路が中間点の周辺領域を通過する数に基づいて、測位点間の移動経路を推定することができる。このように、測位レベルを考慮することにより、移動経路の推定精度をさらに高めることも可能である。
【0052】
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10 移動経路推定システム
20 プローブ情報受信部
22 マッチング部
24 経路探索部
26 移動経路推定部
40 プローブ情報データベース
42 マッチング情報データベース
44 移動経路情報データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動経路推定システム及び移動経路推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)を利用して生成されるプローブ情報を用いた様々なサービスが検討されている。プローブ情報には、ユーザID、測位時刻、緯度・経度等の情報が含まれる。したがって、ユーザ端末から送信されるプローブ情報により、ユーザの現在位置を把握することができる。例えば、特許文献1には、ユーザの情報端末装置から定期的に送信されるプローブ情報を用いて、ユーザの現在位置に応じた情報を提供するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ユーザ端末から送信されてくるプローブ情報は、ある時刻において測位された緯度・経度を示すものである。そのため、ある期間にわたってプローブ情報を蓄積することにより、ユーザの行動範囲や行動パターンを把握することが可能となる。
【0005】
ところで、各プローブ情報は、ある測位点の情報にしかすぎないため、測位点間も含めてユーザの行動範囲や行動パターンを把握するためには、測位点間の移動経路を推定する必要がある。測位点間の移動経路を推定する手法としては、例えば、測位点間を直線で結ぶことが考えられるが、これにより得られる移動経路は実際の移動経路とは異なることが多い。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、測位点間の移動経路を精度良く推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る移動経路推定システムは、ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報を記憶するプローブ情報記憶部と、プローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納する基準点特定部と、基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の位置情報及び種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索する経路探索部と、経路探索部により探索された複数の経路の中から、所要時間と、第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する移動経路推定部と、を備える。
【0008】
なお、本発明において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測位点間の移動経路を精度良く推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である移動経路推定システムの構成を示す図である。
【図2】移動経路推定システムにおける移動経路推定の概念を示す図である。
【図3】プローブ情報DBの構造の一例を示す図である。
【図4】測位点のマッチングの一例を示す図である。
【図5】マッチング情報DBの構造の一例を示す図である。
【図6】経路探索の一例を示す図である。
【図7】移動経路推定の一例を示す図である。
【図8】移動経路情報DBの構造の一例を示す図である。
【図9】連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路」の場合の一例を示す図である。
【図10】連続する測位点のマッチング結果が「道路→路線」の場合の一例を示す図である。
【図11】連続する測位点のマッチング結果が「路線→路線」の場合の一例を示す図である。
【図12】連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路」の場合の一例を示す図である。
【図13】連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図14】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例を示す図である。
【図15】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例を示す図である。
【図16】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図17】「道路→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の別の一例を示す図である。
【図18】連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図19】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例を示す図である。
【図20】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例を示す図である。
【図21】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図22】「路線→道路・路線」の次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図23】最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例を示す図である。
【図24】測位レベルが低い測位点を経路探索処理の対象外とする一例を示す図である。
【図25】測位レベルに応じて中間点の周辺領域の大きさを変更する一例を示す図である。
【図26】移動経路推定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
==システム構成==
まず、システム構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である移動経路推定システムの構成を示す図である。移動経路推定システム10は、プローブ情報に基づいて、測位点間の移動経路を推定するシステムであり、1台または複数台の情報処理装置を用いて構成される。図1に示すように、移動経路推定システム10は、プローブ情報受信部20、マッチング部22、経路探索部24、移動経路推定部26、プローブ情報データベース(DB)40、マッチング情報データベース(DB)42、及び移動経路情報データベース(DB)44を含んで構成される。
【0013】
なお、プローブ情報受信部20、マッチング部22、経路探索部24、及び移動経路推定部26は、例えば、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現することができる。また、プローブ情報DB40、マッチング情報DB42、及び移動経路情報DB44は、例えば、メモリや記憶装置等の記憶領域を用いて実現することができる。
【0014】
図2には、移動経路推定システム10における移動経路推定の概念が示されている。例えば、あるユーザのユーザ端末から送信されてきた複数のプローブ情報があるとする。このプローブ情報により、ユーザの移動経路上にある複数の測位点を知ることができるが、測位点間の移動経路については推定する必要がある。一般的な手法として、例えば、測位点間を直線で補完することにより移動経路を推定することが考えられる。しかしながら、このような手法では、例えば、図2に示すように、移動経路の一部が海上や山中になるなど、精度の低いものとなってしまう。そこで、移動経路推定システム10は、測位点間で各種経路探索を行うことにより、精度の高い移動経路を推定可能としている。以下に、移動経路推定システム10の詳細構成を説明する。
【0015】
図1に戻り、プローブ情報受信部20は、携帯電話や携帯情報端末、カーナビゲーション装置等のユーザ端末から無線ネットワークを介して送信されてくるプローブ情報を受信し、プローブ情報DB40に格納する。プローブ情報は、ユーザ端末におけるGPSを利用した測位によって生成されるものであり、ユーザ端末を識別するためのユーザID、ユーザ端末の現在位置の測位点の緯度や経度等を示す測位情報、測位点の測位時刻、及び測位精度を含んでいる。このようなプローブ情報は、各ユーザ端末から、例えば、5分間隔等で定期的に送信されてくる。なお、ユーザ端末の移動が検出されている間のみ、プローブ情報が送信されてくる場合もある。図3には、プローブ情報DB40の構造の一例が示されている。図3に示すように、プローブ情報DB40には、複数のユーザから送信されてくるプローブ情報が格納されている。
【0016】
図1に戻り、マッチング部22(基準点特定部)は、プローブ情報DB40を参照し、各プローブ情報の測位点の最寄りの道路及び路線を、移動経路を推定する際の基準点として特定する。本実施形態では、このように測位点の最寄りの道路及び路線である基準点を特定することを「マッチング」とも称する。図4には、測位点のマッチングの一例が示されている。図4に示すように、マッチング部22は、黒丸で示される各測位点を、測位点から半径Nm以内の最寄りの道路及び路線にマッチングする。ここで、半径Nm以内に道路と路線の両方が存在する場合、測位点は道路と路線の両方にマッチングされることとなる。したがって、マッチング部22によるマッチング結果は、「道路」、「路線」、「道路・路線」の3種類となる。なお、マッチング部22は、例えば、道路ネットワークや路線ネットワークの情報が格納されたネットワーク情報データベース(DB)を参照することにより、測位点のマッチングを行うことができる。このようなネットワーク情報DBは、移動経路推定システム10の内部にあってもよいし外部にあってもよい。また、ネットワーク情報DBは複数のデータベースにより構成されていてもよい。
【0017】
なお、マッチング部22は、例えば、測位点の測位精度を示す測位レベルが所定レベル未満であるプローブ情報については、処理の対象外とすることができる。また、マッチング部22は、例えば、1つ前の測位点との間の移動速度が所定速度未満であるプローブ情報についても、処理の対象外とすることができる。
【0018】
マッチングが完了すると、マッチング部22は、マッチングされた基準点の緯度や経度等を示す位置情報と、基準点の種別を示すマッチング結果(種別情報)と、対応するプローブ情報の測位時刻、ユーザID、及び測位精度とを対応づけたマッチング情報(基準点情報)を生成し、マッチング情報DB42(基準点情報記憶部)に格納する。なお、マッチング情報とプローブ情報との対応関係がわかるようになっていれば、プローブ情報に含まれる情報はマッチング情報に含まれないようにしてもよい。図5には、マッチング情報DB42の構造の一例が示されている。図5に示すように、マッチング情報には地点情報が含まれている。この地点情報は、基準点が経路上の「出発地」、「経由地」、「到着地」の何れであるかを示す情報であり、後述するように、経路探索部24がマッチング情報を用いて経路探索を行う際に用いる情報である。なお、地点情報は、マッチング情報の一項目として含めるのではなく別途記憶されることとしてもよい。また、マッチング結果が「道路・路線」の場合、道路と路線のそれぞれの位置を示す位置情報が設定されるようにすることもできる。
【0019】
図1に戻り、経路探索部24は、マッチング情報DB42を参照し、2つの基準点間の位置情報及びマッチング結果に基づいて、基準点間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索する。図6には、経路探索の一例が示されている。図6の例では、連続する2つの測位点のマッチング結果がいずれも「道路」となっている。この場合、経路探索部24は、マッチングにより特定された基準点間で各種経路探索を実行する。ここで実行される各種経路には、例えば、徒歩の経路、徒歩・電車の経路、自転車の経路、自動車の経路等が含まれる。なお、経路探索部24は、例えば、前述したネットワーク情報DBを参照することにより、各種経路探索を実行することができる。例えば、経路探索部24は、道路ネットワーク情報を参照することにより、基準点間を徒歩や自転車、自動車で移動する際の経路及び所要時間を探索することができる。また、例えば、経路探索部24は、道路ネットワーク情報に加えて路線ネットワーク情報を参照することにより、基準点間を徒歩および電車で移動する際の経路及び所要時間を探索することができる。また、例えば、経路探索部24は、出発地の測位曜日や測位時刻を条件の一部として経路探索を実行することができる。なお、経路探索部24は、測位点のマッチング結果に応じて経路探索の制御を行うが、この詳細については後述する。
【0020】
図1に戻り、移動経路推定部26は、経路探索部24により探索された複数の経路の中から、測位点間の測位時刻の間隔(測位点間の時間)と、各経路の所要時間とに基づいて、測位点間の移動経路を推定する。例えば、移動経路推定部26は、複数の経路の所要時間と、測位点間の時間との差が最も小さい経路を、測位点間の移動経路と推定することができる。また、移動経路推定部26は、基準点間における道路ネットワークの長さを測位点間の時間で割ることによって移動速度を算出し、算出された移動速度に基づいて移動手段を特定することも可能である。図7には、移動経路推定の一例が示されている。図7の例では、基準点間で各種経路探索を行った結果、徒歩・電車の経路の所要時間が測位点間の時間に最も近かったため、該経路が測位点間の移動経路として推定されている。
【0021】
そして、移動経路推定部26は、推定された移動経路を示す移動経路情報を移動経路情報DB44に格納する。図8には、移動経路情報DB44の構造の一例が示されている。図8に示すように、移動経路情報には、例えば、経路そのものの情報である経路情報に加え、ユーザID、経路属性、測位時刻、及び緯度や経度等の位置情報が含まれている。ここで、経路属性とは、経路上における「出発地」または「到着地」を識別するためのものである。なお、プローブ情報またはマッチング情報と、経路情報との対応関係がわかるようになっていれば、プローブ情報またはマッチング情報に含まれる情報は移動経路情報に含まれないようにしてもよい。また、本実施形態では、経路情報をデータベースに格納することとしているが、推定された移動経路を別の処理ですぐに利用する場合等においては、経路情報がデータベースに格納されるのではなく一時的な記憶領域に記憶されることとしてもよい。
【0022】
==経路探索のパターン==
次に、測位点のマッチング結果に応じた経路探索のパターンについて説明する。
(A)「道路→道路」の場合
図9には、連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、測位点に対応する基準点間で各種経路探索を実行する。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。
(B)「道路→路線」の場合
図10には、連続する測位点のマッチング結果が「道路→路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定し、2つの基準点を順に「出発地」、「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。なお、「出発地」や「経由地」、「到着地」の記憶は、マッチング情報における地点情報を用いて行うことができる。以降の例についても同様である。
(C)「路線→路線」の場合
図11には、連続する測位点のマッチング結果が「路線→路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗っていると判定し、基準点を「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。
(D)「路線→道路」の場合
図12には、連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車から降りたと判定し、現在の基準点を「到着地」して記憶する。そして、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定された「出発地」から現在の「到着地」までの間で、徒歩・電車の経路探索を実行する。この探索により複数の経路が得られた場合、移動経路判定部26は、より多くの路線上の経由地を通過している経路を移動経路として推定することができる。
(E)「道路→道路・路線」の場合
図13〜図17には、連続する測位点のマッチング結果が「道路→道路・路線」の場合の一例が示されている。図13に示すように、2つ目の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合、道路上の経路であるか路線上の経路であるかを判定することができない。そのため、経路探索部24は、2つの基準点を順に「出発地」、「経由地」として記憶し、さらに次の測位点のマッチング結果を考慮して経路探索を行う。
【0023】
図14には、次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、この測位点に対応する基準点を「到着地」と判定し、「出発地」から「到着地」までの間で、各種経路探索を実行する。なお、経路探索部24は、徒歩、自転車、自動車の経路の探索の際には、「到着地」と「出発地」の間にある「経由地」を設定して経路を探索することができる。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。なお、電車の経路として複数の探索結果がある場合は、より多くの「経由地」を経由している経路を採用することができる。
【0024】
図15には、次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定し、この測位点に対応する基準点を「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。
【0025】
図16には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例が示されている。この場合、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定であるため、この測位点に対応する基準点は「経由地」として記憶され、測位点が「道路」または「路線」のいずれかのみにマッチングするまで測位点のマッチングが繰り返される。
【0026】
図17には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の別の一例が示されている。この場合も、図16の場合と同様に、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定である。ただし、図16の場合と異なり、経路探索部24は、マッチング結果が不定である2つの測位点に対応する基準点間で各種経路探索を実行する。このとき、経路探索部24は、路線ネットワーク上での距離を電車の平均速度で割ることにより、電車の経路における所要時間を推測することができる。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。
(F)「路線→道路・路線」の場合
図18〜図22には、連続する測位点のマッチング結果が「路線→道路・路線」の場合の一例が示されている。図18に示すように、2つ目の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合、道路上の経路であるか路線上の経路であるかを判定することができない。そのため、経路探索部24は、さらに次の測位点のマッチング結果を考慮して経路探索を行う。
【0027】
図19には、次の測位点のマッチング結果が「道路」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車から降りたと判定し、現在の基準点を「到着地」して記憶する。そして、経路探索部24は、ユーザが電車に乗ったと判定された「出発地」から現在の「到着地」までの間で、徒歩・電車の経路探索を実行する。この探索により複数の経路が得られた場合、移動経路判定部26は、より多くの路線上の経由地を通過している経路を移動経路として推定することができる。
【0028】
図20には、次の測位点のマッチング結果が「路線」の場合の一例が示されている。この場合、経路探索部24は、ユーザが電車に乗っていると判定し、基準点を「経由地」として記憶する。そして、経路探索部24は、この段階では経路探索を行わず、次にユーザが電車から降りたと判定された時点で経路探索を実行する。
【0029】
図21には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例が示されている。この場合、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定であるため、この測位点に対応する基準点は「経由地」として記憶され、測位点が「道路」または「路線」のいずれかのみにマッチングするまで測位点のマッチングが繰り返される。
【0030】
図22には、次の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の別の一例が示されている。この場合も、図21の場合と同様に、ユーザの移動経路が道路上であるのか路線上であるのか不定である。ただし、図21の場合と異なり、経路探索部24は、マッチング結果が不定である2つの測位点に対応する基準点間で各種経路探索を実行する。このとき、経路探索部24は、路線ネットワーク上での距離を電車の平均速度で割ることにより、電車の経路における所要時間を推測することができる。移動経路判定部26は、探索された複数の経路のうち、所要時間が測位点間の時間に最も近い経路を移動経路と推定する。
(G)最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合
図23には、あるユーザにおいて、例えば1日の最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合の一例が示されている。この場合、最初の測位点が路線上である可能性は低いと考えられるため、経路探索部24は、この測位点に対応する基準点が「道路」であるとみなし、次の測位点のマッチング結果を考慮して上記の他の例と同様に経路探索を行う。なお、この場合、マッチング部22がマッチング情報を生成する際に、マッチング結果を「道路・路線」ではなく「道路」とすることとしてもよい。
(H)測位レベルを考慮した例
図24、図25には、測位点の測位レベルを考慮する場合の一例が示されている。図24には、測位レベルが「1」〜「3」の複数の測位点が示されている。ここで、測位レベルは、測位精度を表すものであり、本実施形態においては値が大きいほど精度が高いことを意味している。この場合、経路探索部24は、例えば、測位レベルが「1」または「2」である測位点を経路探索処理の対象外とすることができる。すなわち、経路探索部24は、測位レベルが「3」の測位点に対応する基準点間において経路探索を実行する。なお、マッチング部22は、測位レベルが「1」または「2」である測位点に対するマッチングは行わないようにすることができる。
【0031】
図24に示すように測位レベルが低い測位点を除外して経路探索を行った結果、複数の経路が得られた場合、移動経路推定部26は、測位レベルが低い測位点を用いて経路の選択を行う。図25にはその一例が示されている。例えば、移動経路推定部26は、移動経路上の中間点となる測位レベルが「1」または「2」である測位点について、その測位レベルに応じた大きさの周辺領域を設定する。図25の例では、測位レベルが「1」の測位点の周辺領域は、測位レベルが「2」の測位点の周辺領域よりも大きくなっている。移動経路推定部26は、経路探索部24によって探索された複数の経路について、測位レベルが「1」または「2」の測位点の周辺領域の通過数が最も多い経路を、移動経路と推定することができる。なお、移動経路上の中間点としては、測位点そのものではなく、測位点を道路または路線にマッピングして得られる基準点であってもよい。
【0032】
==処理説明==
次に、移動経路推定システム10における移動経路推定処理の流れについて説明する。図26は、移動経路推定システム10における移動経路推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
まず、マッチング部22は、プローブ情報DB40を参照し、あるユーザにおける次に処理対象とする測位点のプローブ情報を取得する(S2601)。なお、マッチング部22は、最初にプローブ情報を取得する際には、連続する2つの測位点のプローブ情報を取得する。
【0034】
マッチング部22は、取得した測位点の測位レベルがM(例えば「3」)以上であるか判定する(S2602)。ここで、測位レベルがM未満であれば(S2602:N)、測位精度が低いと判定され、経路探索処理の対象外とされる。したがって、マッチング部22は、さらに次の測位点のプローブ情報を取得する(S2601)。
【0035】
測位レベルがM以上であれば(S2602:Y)、マッチング部22は、2つの測位点間の移動速度がNkm/h以上であるか判定する(S2603)。ここで、移動速度がNkm/h未満であれば(S2603:N)、マッチング部22は、2点間での移動が無いとみなして次の測位点のプローブ情報を取得する(S2601)。
【0036】
続いて、マッチング部22は、路線の途中からの経路探索を実行不可かどうか判定する(S2604)。なお、路線の途中からの経路探索が可能かどうかは、移動経路推定システム10において予め定められていることとしてもよいし、路線ネットワークの情報が格納されたネットワーク情報DBを参照することによって判定可能であることとしてもよい。ここで、路線の途中からの経路探索を実行可能であれば(S2604:N)、経路探索部24が2点間で各種経路探索を実行する(S2605)。そして、移動経路推定部26は、測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路として選択する(S2606)。
【0037】
路線の途中からの経路探索が実行不可の場合(S2604:Y)、まず、マッチング部22が測位点を道路及び路線にマッチングし、マッチング情報をマッチング情報DB42に格納する(S2607)。そして、経路探索部24は、マッチング情報DB42を参照し、マッチング結果に応じた経路探索処理を実行する。
【0038】
マッチング結果が「道路→道路」の場合、経路探索部24は、2つの基準点間で各種ルート探索を実行する(S2608)。そして、移動経路推定部26は、測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路と推定する(S2609)。
【0039】
マッチング結果が「道路→路線」または「道路・路線→路線」の場合、経路探索部24は、「出発地」、「経由地」を記憶する(S2610)。その後、次の点のマッチング処理へと進む(S2611)。
【0040】
マッチング結果が「路線→路線」の場合、経路探索部24は、「経由地」を記憶する(S2612)。その後、次の点のマッチング処理へと進む(S2613)。
【0041】
マッチング結果が「路線→道路」または「道路・路線→道路」の場合、経路探索部24は、「道路」にマッチングされた測位点に対応する基準点を「到着地」と判定し、「出発地」と「到着地」の間で各種ルート探索を実行する(S2614)。そして、移動経路推定部26は、「出発地」及び「到着地」に対応する測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路と推定する(S2615)。
【0042】
マッチング結果が「道路→道路・路線」または「路線→道路・路線」の場合、次の点のマッチング処理へと進む(S2616)。
【0043】
マッチング結果が「道路・路線→道路・路線」の場合、次の点のマッチング処理へと進む(S2617)。もしくは、経路探索部24が、2つの基準点間で各種ルート探索を実行し(S2618)、移動経路推定部26が、測位点間の時間と最も近い所要時間の経路を測位点間の移動経路と推定する(S2619)。
【0044】
一連の経路上における最初の測位点のマッチング結果が「道路・路線」の場合、経路探索部24は、最初の測位点が「道路」であるとみなして他の場合と同様の経路探索処理を実行する(S2620)。
【0045】
上述した処理が、あるユーザのある期間におけるプローブ情報を対象として行われることにより、該期間における該ユーザの移動経路を推定することが可能となる。なお、移動経路の推定処理は、プローブ情報の受信に応じてリアルタイムに行われることとしてもよいし、蓄積された所定期間分のプローブ情報を用いてバッチ的に行われることとしてもよい。
【0046】
==適用例==
次に、推定された移動経路の利用例について説明する。例えば、移動経路がリアルタイムに推定されている場合、情報提供サーバは、その移動経路の交通手段に応じた各種情報をユーザに提供することが可能となる。具体例としては、例えば、移動経路が自動車の経路であれば、近辺の渋滞情報を提供したり、ガソリンスタンド等の施設情報を提供したりすることができる。また、例えば、移動経路に電車の経路が含まれる場合であれば、電車の遅延情報や乗換案内情報等を提供することができる。
【0047】
また、例えば、ある一定期間におけるユーザの移動経路を蓄積することにより、ユーザの行動範囲における各領域の属性を判定することができる。例えば、情報分析サーバは、測位点や移動経路をメッシュ領域や行政区画のポリゴン等の分割領域にマッピングし、各分割領域におけるユーザの滞在時間や滞在回数(日数)等を集計することができる。そして、情報分析サーバは、集計された滞在時間や滞在回数等の情報に基づいて、各分割領域の属性を判定することができる。具体例としては、滞在時間も滞在回数も多い分割領域は、例えば自宅や勤務地であると判定することができる。また、滞在時間は少ないが滞在回数が多い分割領域は、例えば通勤路であると判定することができる。
【0048】
以上、本実施形態の移動経路推定システム10について説明した。本実施形態によれば、測位点間を単に直線で結んで移動経路が推定されるのではなく、測位点を道路及び路線にマッピングしたうえで複数の経路が探索され、探索された経路の中から最も確からしい経路が測位点間の移動経路として推定される。これにより、測位点間の移動経路を精度良く推定することが可能となっている。
【0049】
また、本実施形態では、例えば、電車の経路だけではなく、徒歩の経路や自転車の経路、自動車の経路、徒歩と電車を組み合わせた経路など、複数の移動手段を考慮した複数の経路が探索される。したがって、測位点間の移動経路の推定精度を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、マッチング結果が「道路」以外の経由地を考慮したうえで、移動経路の推定が行われる。これによっても、測位点間の移動経路の推定精度を高めることが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、測位レベルが所定レベル未満の測位点を経路探索処理の対象外とすることができる。さらに、本実施形態では、測位レベルが所定レベル未満の測位点である中間点の周辺領域の大きさを測位レベルに応じて調整し、測位レベルが所定レベル以上の測位点間で探索された経路が中間点の周辺領域を通過する数に基づいて、測位点間の移動経路を推定することができる。このように、測位レベルを考慮することにより、移動経路の推定精度をさらに高めることも可能である。
【0052】
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10 移動経路推定システム
20 プローブ情報受信部
22 マッチング部
24 経路探索部
26 移動経路推定部
40 プローブ情報データベース
42 マッチング情報データベース
44 移動経路情報データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報を記憶するプローブ情報記憶部と、
前記プローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納する基準点特定部と、
前記基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の前記位置情報及び前記種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索する経路探索部と、
前記経路探索部により探索された複数の経路の中から、前記所要時間と、前記第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する移動経路推定部と、
を備える移動経路推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、前記複数の経路のうち、前記所要時間が前記第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔と最も近い経路を前記移動経路として推定する、
移動経路推定システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、複数の移動手段を考慮して複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、種別が道路である前記第1及び第2の基準点の間において複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部が、前記第1及び第2の基準点の間にある、種別が道路以外の第3の基準点を考慮して前記複数の経路を探索し、もしくは、前記移動経路推定部が、前記第3の基準点を考慮して前記複数の経路の中から前記移動経路を推定する、
移動経路推定システム。
【請求項6】
請求項5に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、複数の前記第3の基準点の経由数を考慮して前記複数の経路の中から前記移動経路を推定する、
移動経路推定システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、前記第3の基準点の種別が路線である場合、少なくとも一部に路線上の移動を含む複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、少なくとも一方の基準点の種別が道路及び路線である前記第1及び第2の基準点の間において、前記複数の経路の一つとして路線上の移動を含む経路を探索し、該経路の所要時間を路線上の距離と路線用に設定された移動速度とに基づいて算出する、
移動経路推定システム。
【請求項9】
請求項1〜4の何れか一項に記載の移動経路推定システムであって、
前記プローブ情報には、前記測位点の測位精度が含まれ、
前記経路探索部は、前記測位精度が所定レベル以上である測位点に対応する前記第1及び第2の基準点の間において複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項10】
請求項9に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、前記第1及び第2の基準点の間にある、前記測位精度が前記所定レベル未満の各測位点から所定範囲にある周辺領域の経由数を考慮して前記複数の経路の中から前記移動経路として推定する、
移動経路推定システム。
【請求項11】
請求項10に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、測位点の測位レベルが低くなるにつれて該測位点の周辺領域を大きくして、各経路が該測位点の周辺領域を経由しているかどうかを判定する、
移動経路推定システム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、さらに、前記第1の基準点に対応する測位点の測位時刻に基づいて、前記複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項13】
ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報が格納されたプローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、
該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納し、
前記基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の前記位置情報及び前記種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索し、
前記経路探索部により探索された複数の経路の中から、前記所要時間と、前記第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する、
移動経路推定方法。
【請求項1】
ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報を記憶するプローブ情報記憶部と、
前記プローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納する基準点特定部と、
前記基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の前記位置情報及び前記種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索する経路探索部と、
前記経路探索部により探索された複数の経路の中から、前記所要時間と、前記第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する移動経路推定部と、
を備える移動経路推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、前記複数の経路のうち、前記所要時間が前記第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔と最も近い経路を前記移動経路として推定する、
移動経路推定システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、複数の移動手段を考慮して複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、種別が道路である前記第1及び第2の基準点の間において複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部が、前記第1及び第2の基準点の間にある、種別が道路以外の第3の基準点を考慮して前記複数の経路を探索し、もしくは、前記移動経路推定部が、前記第3の基準点を考慮して前記複数の経路の中から前記移動経路を推定する、
移動経路推定システム。
【請求項6】
請求項5に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、複数の前記第3の基準点の経由数を考慮して前記複数の経路の中から前記移動経路を推定する、
移動経路推定システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、前記第3の基準点の種別が路線である場合、少なくとも一部に路線上の移動を含む複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、少なくとも一方の基準点の種別が道路及び路線である前記第1及び第2の基準点の間において、前記複数の経路の一つとして路線上の移動を含む経路を探索し、該経路の所要時間を路線上の距離と路線用に設定された移動速度とに基づいて算出する、
移動経路推定システム。
【請求項9】
請求項1〜4の何れか一項に記載の移動経路推定システムであって、
前記プローブ情報には、前記測位点の測位精度が含まれ、
前記経路探索部は、前記測位精度が所定レベル以上である測位点に対応する前記第1及び第2の基準点の間において複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項10】
請求項9に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、前記第1及び第2の基準点の間にある、前記測位精度が前記所定レベル未満の各測位点から所定範囲にある周辺領域の経由数を考慮して前記複数の経路の中から前記移動経路として推定する、
移動経路推定システム。
【請求項11】
請求項10に記載の移動経路推定システムであって、
前記移動経路推定部は、測位点の測位レベルが低くなるにつれて該測位点の周辺領域を大きくして、各経路が該測位点の周辺領域を経由しているかどうかを判定する、
移動経路推定システム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の移動経路推定システムであって、
前記経路探索部は、さらに、前記第1の基準点に対応する測位点の測位時刻に基づいて、前記複数の経路を探索する、
移動経路推定システム。
【請求項13】
ユーザ端末における現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻とを含む、複数のプローブ情報が格納されたプローブ情報記憶部を参照し、各プローブ情報の測位点から所定範囲内にある道路及び/又は路線を基準点として特定し、
該基準点の位置を示す位置情報と、道路及び/又は路線の種別を示す種別情報と、該測位点の測位時刻とを対応づけた基準点情報を基準点情報記憶部に格納し、
前記基準点情報記憶部を参照し、第1及び第2の基準点の前記位置情報及び前記種別情報に基づいて、該第1及び第2の基準点の間における複数の経路及び該経路の所要時間を探索し、
前記経路探索部により探索された複数の経路の中から、前記所要時間と、前記第1及び第2の基準点に対応する第1及び第2の測位点間の測位時刻の間隔とに基づいて、該第1及び第2の測位点間の移動経路を推定する、
移動経路推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図26】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図26】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−212320(P2012−212320A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77650(P2011−77650)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】
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