移動装置
【課題】 1自由度のアクチュエータを用いて、大きなエネルギー損失なしに、羽部にストローク運動と捻り運動とを同時にさせる移動装置を提供する。
【解決手段】 羽部110は第1の中間部材102に接続される。第1の中間部材104は第1のヒンジ部103および第2のヒンジ部105を介して第1の回転部材102および第2の中間部材106に接続され、第2の中間部材106は第3のヒンジ部107を介して第2の回転部材108に接続される。第1の回転部材102は第1の駆動部1001に接続され、第2の回転部材108は第2の駆動部1002に接続される。第1の駆動部1001が第1の回転部材102を往復回転運動させ、第2の駆動部1002が第1の回転部材102とは独立して第2の回転部材108を往復回転運動させ、羽膜部100の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する。
【解決手段】 羽部110は第1の中間部材102に接続される。第1の中間部材104は第1のヒンジ部103および第2のヒンジ部105を介して第1の回転部材102および第2の中間部材106に接続され、第2の中間部材106は第3のヒンジ部107を介して第2の回転部材108に接続される。第1の回転部材102は第1の駆動部1001に接続され、第2の回転部材108は第2の駆動部1002に接続される。第1の駆動部1001が第1の回転部材102を往復回転運動させ、第2の駆動部1002が第1の回転部材102とは独立して第2の回転部材108を往復回転運動させ、羽膜部100の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を自由に羽ばたき飛行することができる移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭内において使用可能な様々なロボットが開発されている。そのロボットの一例として、羽ばたき飛行を利用して移動する羽ばたきロボットの研究が盛んになりつつある。さらに、この羽ばたきロボットの羽ばたき運動をさせる機構についても、様々なものが提案されている。たとえば、羽ばたき機構として、3自由度のアクチュエータ1つを用いた機構、および、1自由度のアクチュエータ2つを用いた機構などが開示されている。
【0003】
羽ばたき運動によって、羽部は、複雑な3次元的軌跡を描くが、3自由度のアクチュエータが1つあれば、それを工学的に実現することができる。しかしながら、3自由度のアクチュエータは、大変精密な加工精度が要求され、未だ製品化されているものは存在しない。
【0004】
一方、羽ばたき運動を、羽軸部の本体に対するストローク運動と、羽膜部の羽軸部が延びる方向の回転中心軸まわりの捻り運動との合成運動であると考えれば、1自由度の往復回転運動をするアクチュエータが2つ用いられれば、羽部に複雑な3次元的軌跡を描かせることができる。この考え方を用いたものとしては、主に、2つのアクチュエータからそれぞれ延びる2本の羽軸の間に羽膜部またはその一部を形成する機構が提案されている。
【特許文献1】特開2002−326599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の1自由度で往復回転運動をする2つのアクチュエータからそれぞれ延びる2本の羽軸部で直接羽膜部を駆動する機構では、羽膜部に捻りを与える運動において、2本の羽軸部の根元同士の距離と2本の羽軸部の先端同士の距離とが時間的に変化してしまうため、2本の羽軸部の間に張られた羽膜部、または、2本の羽軸部自身が簡単に変形し得る必要がある。
【0006】
また、たとえ、羽膜部または羽軸部が変形しても、その変形のために浮上力には寄与しない余分なエネルギーが必要となる。そのため、アクチュエータの消費電力を増大させる必要がある。また、アクチュエータの消費電力を増加させないためには、往復回転運動の振幅を小さくし、浮上力を減少させる必要がある。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、1自由度のアクチュエータを用いて、大きなエネルギー損失なしに、羽部にストローク運動と捻り運動とを同時にさせることが可能な移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面の移動装置は、流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、羽部が接続された駆動機構部とを備えている。また、移動装置は、駆動機構部および羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、駆動機構部ならびに第1および第2の駆動部が搭載された本体とを備えている。
【0009】
駆動機構部は、第1および第2の回転部材、n個(n≧1)の中間部材、およびn+1個のヒンジ部を有している。羽部が、n個の中間部材のうちの少なくともいずれか1の中間部材に接続されている。nが2以上の場合には、n個の中間部材のうちの隣接する中間部材同士が、n+1個のヒンジ部のうちのいずれか1のヒンジ部を介して接続されている。n個の中間部材のうちの第1の回転部材に隣接する中間部材と第1の回転部材とが、互いにn+1個のヒンジ部のうちの1のヒンジ部とは異なる他のヒンジ部を介して接続されている。n個の中間部材のうちの第2の回転部材に隣接する中間部材と第2の回転部材とが、互いにn+1個のヒンジ部のうちの1または他のヒンジ部とは異なるさらに他のヒンジ部を介して接続されている。第1の回転部材は、第1の駆動部に接続され、第2の回転部材は、第2の駆動部に接続されている。第1の駆動部が、第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、第2の駆動部が、第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、第2の回転部材を往復回転運動させることによって、羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する。
【0010】
上記の構成によれば、羽部の変形に起因する大きなエネルギー損失なしに、羽部に往復回転運動(ストローク運動)と捻り運動(前述の捻り角が変化する運動)とを同時にさせることができる。たとえ、n=1の場合であっても、中間部材のみの変形エネルギは羽部の変形エネルギに比較して小さいため、従来の羽部が変形する移動装置に比較して、変形エネルギに起因する駆動エネルギの損失を小さくすることができる。
【0011】
また、羽部が、羽膜部と羽膜部を支持する羽軸部とを有し、第1の回転部材または第2の回転部材に隣接する中間部材に接続されており、羽軸部が、他のヒンジ部またはさらに他のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられていることが望ましい。
【0012】
上記の構造によれば、往復回転運動に伴なう羽軸部の運動面(ストローク面)が、一定のコニング角(駆動部の回転中心軸と前述のヒンジ部が延びる方向の線とがなす角)を頂角とする円錐の側面、または、コニング角が直角の場合は平らな扇型の面となる。つまり、コニング角が一定に保たれる。そのため、羽軸部におけるフラッタリング(運動する流体内での振動)を防止することができる。
【0013】
また、n+1個のヒンジ部のうちの2以上のヒンジ部は、第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動が行なわれているときに、それらの延長線同士が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられていることが好ましい。
【0014】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材ののうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動に伴なってn個の中間部材およびn+1個のヒンジ部に生じる歪みを小さくすることができる。また、n+1個のヒンジ部のうち少なくともいずれか2つは互いに接触することがないため、ヒンジ部同士の摩擦に起因する駆動力のロスを低減することができる。
【0015】
また、交差点が、第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置することが好ましい。
【0016】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材の往復回転運動に伴ってn個の中間部材およびn+1個のヒンジ部に生じる歪みをより一層小さくすることができる。
【0017】
また、本発明の他の局面の移動装置は、流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、羽部が接続された駆動機構部とを備えている。また、移動装置は、駆動機構部および羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、駆動機構部ならびに第1および第2の駆動部が搭載された本体を備えている。
【0018】
駆動機構部は、第1および第2の回転部材、第1および第2の中間部材、ならびに、第1、第2および第3のヒンジ部を有している。羽部は、第1の中間部材に接続されている。第1の中間部材は、第1のヒンジ部を介して第1の回転部材に接続されるとともに、第2のヒンジ部を介して第2の中間部材に接続されている。第2の中間部材は、第3のヒンジ部を介して第2の回転部材に接続されている。第1の回転部材は、第1の駆動部と接続され、第2の回転部材は、第2の駆動部と接続されている。第1の駆動部が、第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、第2の駆動部が、第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、第2の回転部材を往復回転運動させることによって、羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する。
【0019】
上記の構成によれば、少ない数の中間部材で、大きなエネルギー損失なしに、羽部にストローク運動と捻り運動とを同時にさせることができる。
【0020】
また、羽部は、羽膜部と羽膜部を支持する羽軸部とを有し、羽軸部が、第1のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられていることが望ましい。
【0021】
上記の構造によれば、往復回転運動に伴なう羽軸部の運動面(ストローク面)が、一定のコニング角(駆動部の回転軸と前述のヒンジ部の主軸とがなす角)を頂角とする円錐の側面、または、コニング角が直角の場合は平らな扇型の面となる。つまり、コニング角が一定に保たれる。そのため、羽軸部におけるフラッタリング(運動する流体内での振動)を防止することができる。
【0022】
また、第1、第2、および第3のヒンジ部のうちの少なくともいずれか2つのヒンジ部は、第1および第2の往復回転運動のうちの少なくともいずれか一方が行なわれているときに、それらの延長線が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられていることが好ましい。
【0023】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動に伴って第1および第2の中間部材および第1、第2、および第3のヒンジ部に生じる歪みを小さくすることができる。また、第1、第2、および第3のヒンジ部のうち少なくともいずれか2つは互いに接触することがないため、ヒンジ部同士の摩擦に起因する駆動力のロスを低減することができる。
【0024】
また、交差点が、第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置することが好ましい。
【0025】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材の往復回転運動に伴って第1および第2の中間部材および第1、第2、および第3のヒンジ部に生じる歪みをより一層小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態の移動装置(羽ばたき装置)を、図を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
実施の形態1および2の羽ばたき装置1の全体の主要な構成については、図1に描かれている。図1に示すように、本体500と、本体500の前後方向に対する左側および右側のそれぞれに設けられた一対の羽部110とを有している。その羽ばたき装置は、羽部110が、その運動により周囲流体に流体力を生じさせる。その流体力は、羽ばたき装置の重力の方向とは逆向きに、羽ばたき装置の重力よりも大きな浮上力を羽ばたき装置に生じさせることが可能である。
【0028】
また、羽ばたき装置は、一方端側が、羽部110に固定された駆動機構部800を有している。駆動機構部800は、他方端側が、本体500内の第1および第2の駆動部1001および1002に接続されており、第1および第2の駆動部1001および1002の駆動力を羽部110に伝達する。なお、左半分に対して鏡面対称である構成要素が右半分について設けられているものとするが、本発明の移動装置においては、左右対称であることは、必須の条件ではない。
【0029】
次に、図1における駆動機構部800(図1中、点線で囲まれた部分)の左羽側を拡大したものを図2に示す。図2では、Z軸によって鉛直方向が示され、Y軸によって前後方向が示され、X軸によって左右方向が示されている。また、図1においては、第1および第2の駆動部1001および1002に共通の回転中心軸をZ軸とする。図2では、図を見易くするため、第1および第2の回転部材102および108のみがそれぞれ独立してZ軸周りに回転するように描かれ、第1および第2の駆動部1001および1002ならびに羽部110は描かれていない。なお、第1および第2の駆動部1001および1002は、それぞれ、何らかの支持部材で本体500に固定されているとともに、本体500に対して相対的に回転することが可能に構成されいるが、図1では、その支持部材等の構造の描写は行なわれていない。
【0030】
ただし、第1の駆動部1001と第1の回転部材102とが接続され、第1の駆動部1001の回転往復運動に伴って、第1の回転部材102が往復回転運動する。また、第2の駆動部1002と第2の回転部材108とが接続され、第2の駆動部1002の往復回転運動に伴って、第2の回転部材108が往復回転運動する。また、第1の駆動部1001と第2の駆動部1002とは、独立して往復回転運動するため、第1の回転部材102と第2の回転部材108とも、互いに独立して、回転往復運動する。それにより、羽部110の先端部109と仮想の所定の基準面(XY平面)とのなす捻り角が変化する。
【0031】
なお、各実施の形態においては、第1の駆動部1001の回転中心軸と第2の駆動部1002の回転中心軸とが一致している駆動機構部800が示されているが、それらの回転中心軸同士が一致していない駆動機構部であっても、各実施の形態の駆動機構部800によって達成される目的と同様の目的を達成することは可能である。
【0032】
図2に示した駆動機構部800は、2つの回転部材、2つの中間部材、および3つのヒンジ部、つまり、第1および第2の回転部材102および108、第1および第2の中間部材104および106、第1、第2、および第3のヒンジ部103、105、および107を有している。
【0033】
第1の回転部材102と第1の中間部材104とは、第1のヒンジ部103を介して接続され、第1の中間部材104と第2の中間部材106とは、第2のヒンジ部105を介して接続され、第2の中間部材106と第2の回転部材108とは、第3のヒンジ部107を介して接続されている。第1の中間部材104は、第1のヒンジ部103が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能であり、かつ、第2のヒンジ部105が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能である。第2の中間部材106は、第2のヒンジ部105が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能であり、かつ、第3のヒンジ部107が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能である。
【0034】
なお、本発明においては、少なくとも2つの回転部材の間に接続される中間部材の個数nはn≧1であればよい。ただし、n=1の時は、第1の回転部材102の回転角θ1および第2の回転部材102の回転角θ2の差(θ1−θ2)が変化すると、中間部材の両端の2つのヒンジ部の先端(原点Оから遠方側の端部)同士の間の距離が変化するため、中間部材または回転部材がある程度以上大きく変形できるものでなければならない。それを避けるためには、中間部材の数、すなわち、nが2個以上(n≧2)であることが望ましい。そこで、本実施の形態においては、n≧2という条件を具備するもののうちで最も製造が容易なn=2という条件を具備する羽ばたき装置について説明がなされる。
【0035】
本実施の形態においては、図1に示す羽部110、すなわち、羽膜部100および羽軸部101のうち少なくともいずれか一方は、第1の中間部材104と固定されているものとする。また、羽膜部100に捻り角αを与えるときにも、羽軸部101が延びる方向の回転中心軸がZ軸と成す角(コニング角)が一定値に保たれるように、羽軸部101が延びる方向の回転中心軸の延長線が、回転部材の一端のヒンジ部(たとえば、第1のヒンジ部103)の回転中心軸と重なっているものとする。なお、捻り角αは、羽部110の先端部109がXZ平面となす角度であるものとする。さらに、説明を容易にするため、第1のヒンジ部103の回転中心軸は、X軸上にあるものとする。つまり、Z軸と第1のヒンジ部103とがなすコニング角が直角であるものとする。
【0036】
一方、回転部材の回転に伴って各中間部材および各ヒンジ部に生じる歪みが小さくなるように、各ヒンジ部の一端(一般にはヒンジ部の回転中心軸の延長線上の所定の点)が原点Оと重なっているものとする。後述する実施の形態では、図5および図8に示されているように、各ヒンジ部および各中間部材は、相互に摩擦が生じず、それぞれの動作がスムーズに行なえるように、原点Оの近傍で切断されたものが描かれているが、図2においては、煩雑さを避けるため、各ヒンジ部および各中間部材は、原点0まで延びているものが描かれている。
【0037】
次に、たとえば、第1および第2の回転部材102および108の回転角がθ1およびθ2であり、X軸が延びる方向が角度0°である場合を考える。この場合、羽部110の羽ばたき運動は、XY平面に平行に、±θだけ、第1および第2の回転部材102および108を往復回転運動させることによって行なわれる。一方、羽軸部101が延びる方向の回転軸周りの捻り角α、すなわち、羽軸部101が延びる方向に羽膜部100を見たときに羽膜部100が羽軸部101周りに回転する角度は、2つの回転角θ1およびθ2の差θ2−θ1≡Δθを変化させることによって制御される。
【0038】
なお、以下の各実施の形態では、第1の駆動部1001の回転に起因した第1の回転部材102の回転によって、羽部110(羽膜部100および羽軸部101)の所定の点は、XY平面に平行な面内の往復回転運動(ストローク運動)を行なう。また、第2の駆動部1002の回転に起因した第2の回転部材108の往復回転運動によって、羽部110(羽膜部100および羽軸部101)の所定の点は、YZ平面に平行な面内の往復回転運動(捻り角αが変化する捻り運動)を行なう。
【0039】
また、2つの回転角θ1およびθ2の差Δθと捻り角αとの関係は、次のように求められる。図2においては、X軸上の第1のヒンジ部103が線分OPによって表わされている。第1のヒンジ部103の長さがbであるとすると、第1のヒンジ部103の先端Pの座標は(b,0,0)である。また、第2のヒンジ部105が線分OQによって表わされる。第2のヒンジ部105の先端Qは、第1のヒンジ部103の先端から距離aだけ離れており、線分OQとXY平面とがなす角度(位置角)は、ωであるものとすると、第2のヒンジ部105の先端Qの座標は(b,a×cosω,b×cosω)である。さらに、第3のヒンジ部107が線分ORによって表わされている。第3のヒンジ部107の先端Rは、XY平面から距離dだけ離れており、かつ、Z軸から距離bだけ離れており、線分ORとXZ平面とがなす角度(位置角)は、λであるものとする。このとき、第3のヒンジ部107の先端Rの座標は(b×cosλ,b×sinλ,d)となる。
【0040】
ここで、θ1=0°であると仮定され、回転角θ2がΔθであるとすると、2つの回転角θ1およびθ2の差は、θ2−θ1=Δθであり、かつ、羽膜部100が羽軸部101が延びる方向の回転中心軸の周りに捻り角αだけ捻られるとすれば、ωがω+αに変化する。このとき、回転前と回転後との比較において、線分PQの距離は変化しないとすると、次の式(1)および(2)が成立する。
【0041】
PR2(回転前)=[b−b×cosλ]2+[a×sinω−bsinλ]2+[a×cosω−d]2
PR2(回転後)=[b−bcos(λ+Δθ)]2 …(1)
+[a×sin(ω+α)−b×sin(λ+Δθ)]2+[a×cos(ω+α)−d]2 …(2)
前述の式(1)の右辺と式(2)の右辺とが等しいことから、次の式(3)が成立する。
【0042】
a×d×cos(ω+α)+a×b×sin(λ+Δθ)×sin(ω+α)
=b2×cosλ−b2×cos(λ+Δθ)+a×b×sinω×sinλ+a×d×cosω
…(3)
この式(3)を解くと、捻り角αが求められる。
【0043】
以上の結果から、本実施の形態の駆動機構部800において、第1、第2および第3のヒンジ部103、105、および107のそれぞれを配置する適切な位置を求めることができる。その際の設計基準の一つとして、たとえば、(捻り角α)/(2つの回転角の差Δθ)がより大きい場合を検討する。この場合、2つの回転角θ1およびθ2の差Δθが小さく、かつ、大きな捻り角αが得られる羽ばたき装置の設計が可能となる。
【0044】
一般に、b/aおよびa/dが大きい程、(捻り角α)/(2つの回転角θ1およびθ2の差Δθ)も大きくなるが、あまり大きな(捻り角α)/(2つの回転角θ1およびθ2の差Δθ)が採用されると、羽ばたき装置のサイズが制約されたり、第1および第2の駆動部1001および1002に大きなトルクが要求されたりする。そのため、本実施の形態においては、b/a=3、かつ、a/d=2とする。また、位置角λを90°に近づけると、駆動機構部800の幅(Y軸方向の長さ)が大きくなるため、λ=0°とする。これらのパラメータから、差Δθが+10°および−10°のそれぞれの場合の捻り角αと位置角ωとの関係が図3のグラフに示されている。図3のグラフから、位置角ω=±45〜135°の範囲であれば、捻り角αの角度の範囲Δαは、約90°という大きな値(α/Δθ≒4.5)になる。後述の実施の形態1においては、位置角ω=90°の場合の実際の駆動機構部800が説明される。
【0045】
また、たとえば、距離d=0である場合の捻り角αと位置角ωとの関係が図4のグラフに示されている。このとき、位置角λを0°近傍の値にすると、第1の中間部材104と第2の中間部材106とが接近し過ぎるため、一例として、λ=45°が用いられている。この場合、位置角ω=−15〜+40°であるか、または、位置角ω=+140〜−165°であれば、捻り角αの角度の範囲Δαは、約60°という大きな値(α/Δθ≒3)になる。後述する実施の形態2においては、位置角ω=180°の場合の実際の駆動機構部800が説明される。
【0046】
(実施の形態1)
まず、図5〜図7を用いて、本発明の本実施の形態1の駆動機構部1を説明する。なお、本実施の形態の羽ばたき装置の全体構成は、図1に示されている羽ばたき装置の全体構成と同一である。つまり、図5に示す駆動機構部800に付されている参照符号と図2に示す駆動機構部800に付されている参照符号とが同一の部位同士は、互いに同一の構造および機能を有している。したがって、以下、図5に示す駆動機構部800の構造および動作の説明においては、主に、前述の図2に示す駆動機構部800の構造および動作と異なる構造の部分の説明がなされる。
【0047】
本実施の形態においては、図5に示すように、羽軸部101は、第1の中間部材104に接続されている。羽軸部101は、第1の中間部材104を含む平面内に存在する板状部材によって構成されている。また、羽膜部100は、その一辺が羽軸部101に固定されている。羽軸部101を含む平面と羽部110を含む平面とは角度τをなして交差している。
【0048】
また、角度τに関しては、羽ばたき飛行中に羽膜部100が撓んでも、羽膜部100と羽軸部101との接合部においては、羽膜部100の接平面と羽軸部101の接平面とがなす角は一定であるものとする。また、角度τは90°であることが望ましいが、本発明の移動装置においては、角度τが90°以外の角度である移動装置であっても、角度τが90°である移動装置と同様の目的を達成することができる。
【0049】
回転部材と中間部材とは、それらを接続するヒンジ部が延びる方向の回転中心軸周りに回転可能である。また、ヒンジ部が延びる方向の延長線の全て(図5中の点線)は、原点Оで交わる。原点Оは、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動の共通の回転中心軸であるZ軸上に位置している。このため、第1の回転部材102の回転角θ1と、第2の回転部材108の回転角θ2との差Δθ=θ2−θ1が一定の範囲内であれば、第1および第2の中間部材104および106が滑らかに動作する。これにより、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動が、第1の中間部材104および羽軸部101を介して、羽膜部100に伝達され、羽膜部100は、YZ平面に平行な捻り角αの往復回転運動を伴いながら、XY平面と平行な回転角Δθの往復回転運動する。
【0050】
また、回転角θ1=θ2=0°の状態では、第1および第2の回転部材102および108は、同一平面(図5ではXZ平面)内に位置している。この状態では、第2のヒンジ部105は、XY平面内でX軸と所定の角度をなしており、第1および第2の中間部材104および106は、第2のヒンジ部105と第1および第2の回転部材102および108との間に位置している。また、図5に示す構造は、図2に示す構造と同様に、Z軸から第1および第2の回転部材102および108のそれぞれの先端までの距離がbであり、第1の回転部材102の先端と第2の回転部材108の先端との間の距離がdであり、第2のヒンジ部105の先端とX軸の距離がaである。
【0051】
本実施の形態の移動装置においても、図5に示す構造は、理解の容易のために、第1のヒンジ部103が延びる方向の回転中心軸がZ軸となす角(コニング角)が90°(直角)であり、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動に伴なう羽軸部101の運動面(ストローク面)が、XY平面上に平行な面であって扇型の面となるものとするが、コニング角は直角以外の角度であってもよい。その場合は、羽軸部101は、ストローク面がZ軸を中心軸とした円錐の側面の一部となるように、往復回転運動する。このように、本実施の形態の羽ばたき装置によれば、コニング角が一定に保たれるため、羽軸部101におけるフラッタリング(運動する流体内での振動)を防止することができる。
【0052】
また、第1の回転部材102が停止した状態(θ1=0)で、第2の回転部材108を、一定のトルクで回転させた場合(θ2−θ1の場合)に、第2の回転部材108の回転角θ2=Δθと羽部110に生じる捻り角αとの関係が、どのように変化するかについて、構造解析が行なわれた。その結果が、図6および図7に示されている。この構造解析においては、第1の回転部材102に与えるトルクを±5gf・cmとし、駆動機構部800のサイズに関しては、a=5mm、b=15mm、およびd=2.5mmであり、また、ヒンジ部の位置角に関しては、λ=0°、および、ω=90°である。材料に関しては、回転部材および中間部材には、0.1mm厚のアルミニウム(ヤング率70GPa、比重2.7g)の板が用いられるが、ヤング率がより大きく、より比重が小さいものとして、CFRP(カーボン繊維強化プラスチック:Carbon Fiber Reinforced Plastic:ヤング率が120GPa、比重が1.6g)などが用いられてもよい。また、ヒンジ部には、5μm厚のPET(ポリエチレン・テレフタレート:ヤング率が3.9GPa、比重が1.2g)が用いられている。
【0053】
図6は、第1の回転部材102に−5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角θ2=Δθ−=−3.9°であり、羽部110の捻り角α−=−21.7°である。また、図7は、第1の回転部材102に+5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ+=+8.1°であり、羽部110の捻り角α+=+35.8°である。合計でΔθ=Δθ+−Δθ−=12.0°であり、α=α+−α−=57.5°である。このことから、第1回転部材102の回転角θ1と第2回転部材108の回転角θ2との差Δθが小さな値でも、羽膜部100は大きな捻り角αで捻られることが分かる(α/Δθ=4.8)。
【0054】
(実施の形態2)
次に、図8〜図10を用いて、本発明の本実施の形態2の駆動機構部800を説明する。
【0055】
図8に示すように、駆動機構部800は、実施の形態1の駆動機構部800とほぼ同様である。つまり、図8に示す駆動機構部800に付されている参照符号と図5に示す駆動機構部800に付されている参照符号とが同一の部位同士は、互いに同一の構造および機能を有している。本実施の形態の駆動機構部800が実施の形態1の駆動機構部800と異なる点は、Z軸方向に関して、駆動機構部800の上下の位置関係が逆になっていること、羽軸部101が羽部110の前縁部を構成していること、および、第1の中間部材104が延長された面上に羽膜部100および羽軸部101が位置するように、第1の中間部材104と羽部110および羽軸部101とが接続されていることである。なお、本実施の形態においては、第1の中間部材104は、羽膜部100および羽軸部101が延長された部材によって構成されている。
【0056】
次に、第1の回転部材102を停止した状態(θ1=0)で、第2の回転部材108に一定のトルクを加えて第2の回転部材108が回転角θ2=Δθだけ回転する場合、羽膜部100にどのような捻り角αが生じるかについて構造解析した結果を、図9および図10に示す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第1の回転部材102に与えるトルクは、±5gf・cmであり、駆動機構部800のサイズに関しては、a=5mm、b=15mm、およびd=0mmであり、また、ヒンジ部の位置角に関しては、λ=45°かつω=180°である。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、回転部材および中間部材には、0.1mm厚のアルミニウム(ヤング率70GPa、比重2.7g)の板が用いられ、また、ヒンジ部には、5μm厚のPET(ポリエチレン・テレフタレート:ヤング率3.9GPa、比重1.2g)が用いられている。なお、本実施の形態の移動装置において、アルミニウム板の代わりにCFRP板などが用いられてもよいことも、実施の形態1の移動装置と同様ある。
【0057】
図9は、−5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ−=−11.4°であり、羽膜部100の捻り角α−=−40.0°である。また、図10は、第2の回転部材108に+5gf・cmのトルクを加えた時の場合の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ+=+14.8°であり、羽膜部100の捻り角α+=+44.6°である。合計でΔθ=Δθ+−Δθ−=26.2°であり、α=α+−α−=84.6°である。この図9および図10から、実施の形態1と同様に、本実施の形態の駆動機構部800によれば、第1回転部材102の回転角θ1と第2回転部材108の回転角θ2との差Δθが小さな値であっても、羽部110には大きな捻り角αが生じる(α/Δθ=3.2)ことが分かる。
【0058】
本実施の形態の駆動機構部800によれば、実施の形態1の駆動機構部800に比較して、α/Δθは小さいが、同じトルクで、より大きな回転角θ1およびθ2の差Δθが得られる。そのため、同じ捻り角αを得るために必要な第1および第2の駆動部1001および1002のトルクは、実施の形態2の駆動機構部800の方が実施の形態1の駆動機構部800より小さくてもよい、と考えられる。
【0059】
ただし、ヒンジ部において中間部材と回転部材とがなす角度が180°を超えると、回転部材と中間部材との位置関係が可逆的ではなくなるため、その角度の最大値は180°より小さくなるような設計が行なわれる必要がある。
【0060】
前述の回転部材および中間部材の材料としては、アルミニウムまたはCFRPが用いられているが、これらの材料に限定されるものではない。ただし、回転部材および中間部材の材料としては、密度が小さく、かつ剛性が高いことが望ましいため、ステンレスなどの鋼鉄類、マグネシウム複合材料、または樹脂等が用いられることが好ましい。また、前述の材料が組合わせられた材料が用いられてもよい。
【0061】
また、ヒンジ部の材料としては、PET(ポリエチレン・テレフタレート)が例示されているが、折り曲げの繰り返しに対して強い靭性に優れた材料が用いられること望ましいため、シリコンゴムまたはポリイミド樹脂などの高分子材料が好ましい。
【0062】
さらに、回転部材および中間部材とヒンジ部とを接合させるために用いる接合材または接合方法(たとえば、圧着など)などは、互いの相性が良い組み合わせを用いることが望ましい。これら接合材および接合方法の選択は、本発明の本旨ではないため、特に記載しない。
【0063】
次に、前述の実施の形態に用いられる羽部110の具体例を、図11〜図19を用いて説明する。なお、図11〜図19においては、同一の役割を果たす部位には同一の符号が付されている。
【0064】
図11に示すように、羽部110は、第1の中間部材104に接続される羽基部1101を有する羽板部1100からなっている。つまり、羽軸部101は、羽板部1100の前端部によって構成されている。したがって、図11に示す羽板部は1100は、前述の羽膜部100よりも高い剛性を有するものである。
【0065】
また、図12に示すように、羽部110は、羽膜部100が、第1の中間部材104に接続される羽基部1101、および羽枠部1102によって囲まれている。この場合、羽枠部102の前側が羽軸部101に相当する。
【0066】
また、図13に示すように、羽部110は、羽基部1101、羽軸部101、羽枠部1102、および羽膜部100からなっている。羽膜部100は、比較的剛性が高い羽基部1101、羽軸部101、および羽枠部1102によって囲まれている。
【0067】
また、図14に示すように、図13に示す構造にさらに羽軸部101と羽枠部1102とを接続する支柱部1105が付加された構造の羽であってもよい。これにれば、所定の変形モードに対する羽の剛性が高められる。
【0068】
また、図15に示すように、図14に示す構造に、さらに、羽軸部101にコルゲーション構造が付加されてもよい。これによれば、コルゲーションは、羽の長手方向を含む面内の回転変形に対して強く抵抗し、羽の長手方向を回転中心軸として回転変形し易い、羽ばたき装置の羽に適した構造が得られる。
【0069】
なお、図15に示す羽軸部101のコルゲーションの構造は、図16〜図19に示すいずれの構造であってもよい。
【0070】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、空間を自由に羽ばたき飛行することができる移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施の形態の羽ばたき装置の全体を示す図である。
【図2】図1に示す羽ばたき装置の駆動機構部を示す拡大図である。
【図3】図2に示す駆動機構部の第2のヒンジ部の位置角ωと羽膜部の捻り角αとの関係を示すグラフである。
【図4】図2に示す駆動機構部の第2のヒンジ部の位置角ωと羽膜部の捻り角αとの関係を示す他のグラフである。
【図5】実施の形態1の駆動機構部を示す図である。
【図6】図5に示す駆動機構部の第1の回転部材に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図7】図5に示す駆動機構部の第1の回転部材に図6に示す駆動機構部の第1の回転部材に与えたトルクの方向とは逆方向に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図8】実施の形態2の駆動機構部を示す図である。
【図9】図8に示す駆動機構部の第1の回転部材に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図10】図8に示す駆動機構部の第1の回転部材に図9に示す駆動機構部の第1の回転部材に与えたトルクの方向とは逆方向に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図11】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第1の例である。
【図12】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第2の例である。
【図13】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第3の例である。
【図14】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第4の例である。
【図15】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第5の例である。
【図16】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第6の例である。
【図17】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第7の例である。
【図18】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第8の例である。
【図19】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第9の例である。
【符号の説明】
【0073】
100 羽膜部、101 羽軸部、102 第1の回転部材、103 第1のヒンジ部、104 第1の中間部材、105 第2のヒンジ部、106 第2の中間部材、107 第3のヒンジ部、108 第2の回転部材、109 先端部、110 羽部、500 本体、800 駆動機構部、1001 第1の駆動部、1002 第2の駆動部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を自由に羽ばたき飛行することができる移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭内において使用可能な様々なロボットが開発されている。そのロボットの一例として、羽ばたき飛行を利用して移動する羽ばたきロボットの研究が盛んになりつつある。さらに、この羽ばたきロボットの羽ばたき運動をさせる機構についても、様々なものが提案されている。たとえば、羽ばたき機構として、3自由度のアクチュエータ1つを用いた機構、および、1自由度のアクチュエータ2つを用いた機構などが開示されている。
【0003】
羽ばたき運動によって、羽部は、複雑な3次元的軌跡を描くが、3自由度のアクチュエータが1つあれば、それを工学的に実現することができる。しかしながら、3自由度のアクチュエータは、大変精密な加工精度が要求され、未だ製品化されているものは存在しない。
【0004】
一方、羽ばたき運動を、羽軸部の本体に対するストローク運動と、羽膜部の羽軸部が延びる方向の回転中心軸まわりの捻り運動との合成運動であると考えれば、1自由度の往復回転運動をするアクチュエータが2つ用いられれば、羽部に複雑な3次元的軌跡を描かせることができる。この考え方を用いたものとしては、主に、2つのアクチュエータからそれぞれ延びる2本の羽軸の間に羽膜部またはその一部を形成する機構が提案されている。
【特許文献1】特開2002−326599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の1自由度で往復回転運動をする2つのアクチュエータからそれぞれ延びる2本の羽軸部で直接羽膜部を駆動する機構では、羽膜部に捻りを与える運動において、2本の羽軸部の根元同士の距離と2本の羽軸部の先端同士の距離とが時間的に変化してしまうため、2本の羽軸部の間に張られた羽膜部、または、2本の羽軸部自身が簡単に変形し得る必要がある。
【0006】
また、たとえ、羽膜部または羽軸部が変形しても、その変形のために浮上力には寄与しない余分なエネルギーが必要となる。そのため、アクチュエータの消費電力を増大させる必要がある。また、アクチュエータの消費電力を増加させないためには、往復回転運動の振幅を小さくし、浮上力を減少させる必要がある。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、1自由度のアクチュエータを用いて、大きなエネルギー損失なしに、羽部にストローク運動と捻り運動とを同時にさせることが可能な移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面の移動装置は、流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、羽部が接続された駆動機構部とを備えている。また、移動装置は、駆動機構部および羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、駆動機構部ならびに第1および第2の駆動部が搭載された本体とを備えている。
【0009】
駆動機構部は、第1および第2の回転部材、n個(n≧1)の中間部材、およびn+1個のヒンジ部を有している。羽部が、n個の中間部材のうちの少なくともいずれか1の中間部材に接続されている。nが2以上の場合には、n個の中間部材のうちの隣接する中間部材同士が、n+1個のヒンジ部のうちのいずれか1のヒンジ部を介して接続されている。n個の中間部材のうちの第1の回転部材に隣接する中間部材と第1の回転部材とが、互いにn+1個のヒンジ部のうちの1のヒンジ部とは異なる他のヒンジ部を介して接続されている。n個の中間部材のうちの第2の回転部材に隣接する中間部材と第2の回転部材とが、互いにn+1個のヒンジ部のうちの1または他のヒンジ部とは異なるさらに他のヒンジ部を介して接続されている。第1の回転部材は、第1の駆動部に接続され、第2の回転部材は、第2の駆動部に接続されている。第1の駆動部が、第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、第2の駆動部が、第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、第2の回転部材を往復回転運動させることによって、羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する。
【0010】
上記の構成によれば、羽部の変形に起因する大きなエネルギー損失なしに、羽部に往復回転運動(ストローク運動)と捻り運動(前述の捻り角が変化する運動)とを同時にさせることができる。たとえ、n=1の場合であっても、中間部材のみの変形エネルギは羽部の変形エネルギに比較して小さいため、従来の羽部が変形する移動装置に比較して、変形エネルギに起因する駆動エネルギの損失を小さくすることができる。
【0011】
また、羽部が、羽膜部と羽膜部を支持する羽軸部とを有し、第1の回転部材または第2の回転部材に隣接する中間部材に接続されており、羽軸部が、他のヒンジ部またはさらに他のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられていることが望ましい。
【0012】
上記の構造によれば、往復回転運動に伴なう羽軸部の運動面(ストローク面)が、一定のコニング角(駆動部の回転中心軸と前述のヒンジ部が延びる方向の線とがなす角)を頂角とする円錐の側面、または、コニング角が直角の場合は平らな扇型の面となる。つまり、コニング角が一定に保たれる。そのため、羽軸部におけるフラッタリング(運動する流体内での振動)を防止することができる。
【0013】
また、n+1個のヒンジ部のうちの2以上のヒンジ部は、第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動が行なわれているときに、それらの延長線同士が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられていることが好ましい。
【0014】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材ののうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動に伴なってn個の中間部材およびn+1個のヒンジ部に生じる歪みを小さくすることができる。また、n+1個のヒンジ部のうち少なくともいずれか2つは互いに接触することがないため、ヒンジ部同士の摩擦に起因する駆動力のロスを低減することができる。
【0015】
また、交差点が、第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置することが好ましい。
【0016】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材の往復回転運動に伴ってn個の中間部材およびn+1個のヒンジ部に生じる歪みをより一層小さくすることができる。
【0017】
また、本発明の他の局面の移動装置は、流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、羽部が接続された駆動機構部とを備えている。また、移動装置は、駆動機構部および羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、駆動機構部ならびに第1および第2の駆動部が搭載された本体を備えている。
【0018】
駆動機構部は、第1および第2の回転部材、第1および第2の中間部材、ならびに、第1、第2および第3のヒンジ部を有している。羽部は、第1の中間部材に接続されている。第1の中間部材は、第1のヒンジ部を介して第1の回転部材に接続されるとともに、第2のヒンジ部を介して第2の中間部材に接続されている。第2の中間部材は、第3のヒンジ部を介して第2の回転部材に接続されている。第1の回転部材は、第1の駆動部と接続され、第2の回転部材は、第2の駆動部と接続されている。第1の駆動部が、第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、第2の駆動部が、第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、第2の回転部材を往復回転運動させることによって、羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する。
【0019】
上記の構成によれば、少ない数の中間部材で、大きなエネルギー損失なしに、羽部にストローク運動と捻り運動とを同時にさせることができる。
【0020】
また、羽部は、羽膜部と羽膜部を支持する羽軸部とを有し、羽軸部が、第1のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられていることが望ましい。
【0021】
上記の構造によれば、往復回転運動に伴なう羽軸部の運動面(ストローク面)が、一定のコニング角(駆動部の回転軸と前述のヒンジ部の主軸とがなす角)を頂角とする円錐の側面、または、コニング角が直角の場合は平らな扇型の面となる。つまり、コニング角が一定に保たれる。そのため、羽軸部におけるフラッタリング(運動する流体内での振動)を防止することができる。
【0022】
また、第1、第2、および第3のヒンジ部のうちの少なくともいずれか2つのヒンジ部は、第1および第2の往復回転運動のうちの少なくともいずれか一方が行なわれているときに、それらの延長線が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられていることが好ましい。
【0023】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動に伴って第1および第2の中間部材および第1、第2、および第3のヒンジ部に生じる歪みを小さくすることができる。また、第1、第2、および第3のヒンジ部のうち少なくともいずれか2つは互いに接触することがないため、ヒンジ部同士の摩擦に起因する駆動力のロスを低減することができる。
【0024】
また、交差点が、第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置することが好ましい。
【0025】
上記の構造によれば、第1および第2の回転部材の往復回転運動に伴って第1および第2の中間部材および第1、第2、および第3のヒンジ部に生じる歪みをより一層小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態の移動装置(羽ばたき装置)を、図を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
実施の形態1および2の羽ばたき装置1の全体の主要な構成については、図1に描かれている。図1に示すように、本体500と、本体500の前後方向に対する左側および右側のそれぞれに設けられた一対の羽部110とを有している。その羽ばたき装置は、羽部110が、その運動により周囲流体に流体力を生じさせる。その流体力は、羽ばたき装置の重力の方向とは逆向きに、羽ばたき装置の重力よりも大きな浮上力を羽ばたき装置に生じさせることが可能である。
【0028】
また、羽ばたき装置は、一方端側が、羽部110に固定された駆動機構部800を有している。駆動機構部800は、他方端側が、本体500内の第1および第2の駆動部1001および1002に接続されており、第1および第2の駆動部1001および1002の駆動力を羽部110に伝達する。なお、左半分に対して鏡面対称である構成要素が右半分について設けられているものとするが、本発明の移動装置においては、左右対称であることは、必須の条件ではない。
【0029】
次に、図1における駆動機構部800(図1中、点線で囲まれた部分)の左羽側を拡大したものを図2に示す。図2では、Z軸によって鉛直方向が示され、Y軸によって前後方向が示され、X軸によって左右方向が示されている。また、図1においては、第1および第2の駆動部1001および1002に共通の回転中心軸をZ軸とする。図2では、図を見易くするため、第1および第2の回転部材102および108のみがそれぞれ独立してZ軸周りに回転するように描かれ、第1および第2の駆動部1001および1002ならびに羽部110は描かれていない。なお、第1および第2の駆動部1001および1002は、それぞれ、何らかの支持部材で本体500に固定されているとともに、本体500に対して相対的に回転することが可能に構成されいるが、図1では、その支持部材等の構造の描写は行なわれていない。
【0030】
ただし、第1の駆動部1001と第1の回転部材102とが接続され、第1の駆動部1001の回転往復運動に伴って、第1の回転部材102が往復回転運動する。また、第2の駆動部1002と第2の回転部材108とが接続され、第2の駆動部1002の往復回転運動に伴って、第2の回転部材108が往復回転運動する。また、第1の駆動部1001と第2の駆動部1002とは、独立して往復回転運動するため、第1の回転部材102と第2の回転部材108とも、互いに独立して、回転往復運動する。それにより、羽部110の先端部109と仮想の所定の基準面(XY平面)とのなす捻り角が変化する。
【0031】
なお、各実施の形態においては、第1の駆動部1001の回転中心軸と第2の駆動部1002の回転中心軸とが一致している駆動機構部800が示されているが、それらの回転中心軸同士が一致していない駆動機構部であっても、各実施の形態の駆動機構部800によって達成される目的と同様の目的を達成することは可能である。
【0032】
図2に示した駆動機構部800は、2つの回転部材、2つの中間部材、および3つのヒンジ部、つまり、第1および第2の回転部材102および108、第1および第2の中間部材104および106、第1、第2、および第3のヒンジ部103、105、および107を有している。
【0033】
第1の回転部材102と第1の中間部材104とは、第1のヒンジ部103を介して接続され、第1の中間部材104と第2の中間部材106とは、第2のヒンジ部105を介して接続され、第2の中間部材106と第2の回転部材108とは、第3のヒンジ部107を介して接続されている。第1の中間部材104は、第1のヒンジ部103が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能であり、かつ、第2のヒンジ部105が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能である。第2の中間部材106は、第2のヒンジ部105が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能であり、かつ、第3のヒンジ部107が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能である。
【0034】
なお、本発明においては、少なくとも2つの回転部材の間に接続される中間部材の個数nはn≧1であればよい。ただし、n=1の時は、第1の回転部材102の回転角θ1および第2の回転部材102の回転角θ2の差(θ1−θ2)が変化すると、中間部材の両端の2つのヒンジ部の先端(原点Оから遠方側の端部)同士の間の距離が変化するため、中間部材または回転部材がある程度以上大きく変形できるものでなければならない。それを避けるためには、中間部材の数、すなわち、nが2個以上(n≧2)であることが望ましい。そこで、本実施の形態においては、n≧2という条件を具備するもののうちで最も製造が容易なn=2という条件を具備する羽ばたき装置について説明がなされる。
【0035】
本実施の形態においては、図1に示す羽部110、すなわち、羽膜部100および羽軸部101のうち少なくともいずれか一方は、第1の中間部材104と固定されているものとする。また、羽膜部100に捻り角αを与えるときにも、羽軸部101が延びる方向の回転中心軸がZ軸と成す角(コニング角)が一定値に保たれるように、羽軸部101が延びる方向の回転中心軸の延長線が、回転部材の一端のヒンジ部(たとえば、第1のヒンジ部103)の回転中心軸と重なっているものとする。なお、捻り角αは、羽部110の先端部109がXZ平面となす角度であるものとする。さらに、説明を容易にするため、第1のヒンジ部103の回転中心軸は、X軸上にあるものとする。つまり、Z軸と第1のヒンジ部103とがなすコニング角が直角であるものとする。
【0036】
一方、回転部材の回転に伴って各中間部材および各ヒンジ部に生じる歪みが小さくなるように、各ヒンジ部の一端(一般にはヒンジ部の回転中心軸の延長線上の所定の点)が原点Оと重なっているものとする。後述する実施の形態では、図5および図8に示されているように、各ヒンジ部および各中間部材は、相互に摩擦が生じず、それぞれの動作がスムーズに行なえるように、原点Оの近傍で切断されたものが描かれているが、図2においては、煩雑さを避けるため、各ヒンジ部および各中間部材は、原点0まで延びているものが描かれている。
【0037】
次に、たとえば、第1および第2の回転部材102および108の回転角がθ1およびθ2であり、X軸が延びる方向が角度0°である場合を考える。この場合、羽部110の羽ばたき運動は、XY平面に平行に、±θだけ、第1および第2の回転部材102および108を往復回転運動させることによって行なわれる。一方、羽軸部101が延びる方向の回転軸周りの捻り角α、すなわち、羽軸部101が延びる方向に羽膜部100を見たときに羽膜部100が羽軸部101周りに回転する角度は、2つの回転角θ1およびθ2の差θ2−θ1≡Δθを変化させることによって制御される。
【0038】
なお、以下の各実施の形態では、第1の駆動部1001の回転に起因した第1の回転部材102の回転によって、羽部110(羽膜部100および羽軸部101)の所定の点は、XY平面に平行な面内の往復回転運動(ストローク運動)を行なう。また、第2の駆動部1002の回転に起因した第2の回転部材108の往復回転運動によって、羽部110(羽膜部100および羽軸部101)の所定の点は、YZ平面に平行な面内の往復回転運動(捻り角αが変化する捻り運動)を行なう。
【0039】
また、2つの回転角θ1およびθ2の差Δθと捻り角αとの関係は、次のように求められる。図2においては、X軸上の第1のヒンジ部103が線分OPによって表わされている。第1のヒンジ部103の長さがbであるとすると、第1のヒンジ部103の先端Pの座標は(b,0,0)である。また、第2のヒンジ部105が線分OQによって表わされる。第2のヒンジ部105の先端Qは、第1のヒンジ部103の先端から距離aだけ離れており、線分OQとXY平面とがなす角度(位置角)は、ωであるものとすると、第2のヒンジ部105の先端Qの座標は(b,a×cosω,b×cosω)である。さらに、第3のヒンジ部107が線分ORによって表わされている。第3のヒンジ部107の先端Rは、XY平面から距離dだけ離れており、かつ、Z軸から距離bだけ離れており、線分ORとXZ平面とがなす角度(位置角)は、λであるものとする。このとき、第3のヒンジ部107の先端Rの座標は(b×cosλ,b×sinλ,d)となる。
【0040】
ここで、θ1=0°であると仮定され、回転角θ2がΔθであるとすると、2つの回転角θ1およびθ2の差は、θ2−θ1=Δθであり、かつ、羽膜部100が羽軸部101が延びる方向の回転中心軸の周りに捻り角αだけ捻られるとすれば、ωがω+αに変化する。このとき、回転前と回転後との比較において、線分PQの距離は変化しないとすると、次の式(1)および(2)が成立する。
【0041】
PR2(回転前)=[b−b×cosλ]2+[a×sinω−bsinλ]2+[a×cosω−d]2
PR2(回転後)=[b−bcos(λ+Δθ)]2 …(1)
+[a×sin(ω+α)−b×sin(λ+Δθ)]2+[a×cos(ω+α)−d]2 …(2)
前述の式(1)の右辺と式(2)の右辺とが等しいことから、次の式(3)が成立する。
【0042】
a×d×cos(ω+α)+a×b×sin(λ+Δθ)×sin(ω+α)
=b2×cosλ−b2×cos(λ+Δθ)+a×b×sinω×sinλ+a×d×cosω
…(3)
この式(3)を解くと、捻り角αが求められる。
【0043】
以上の結果から、本実施の形態の駆動機構部800において、第1、第2および第3のヒンジ部103、105、および107のそれぞれを配置する適切な位置を求めることができる。その際の設計基準の一つとして、たとえば、(捻り角α)/(2つの回転角の差Δθ)がより大きい場合を検討する。この場合、2つの回転角θ1およびθ2の差Δθが小さく、かつ、大きな捻り角αが得られる羽ばたき装置の設計が可能となる。
【0044】
一般に、b/aおよびa/dが大きい程、(捻り角α)/(2つの回転角θ1およびθ2の差Δθ)も大きくなるが、あまり大きな(捻り角α)/(2つの回転角θ1およびθ2の差Δθ)が採用されると、羽ばたき装置のサイズが制約されたり、第1および第2の駆動部1001および1002に大きなトルクが要求されたりする。そのため、本実施の形態においては、b/a=3、かつ、a/d=2とする。また、位置角λを90°に近づけると、駆動機構部800の幅(Y軸方向の長さ)が大きくなるため、λ=0°とする。これらのパラメータから、差Δθが+10°および−10°のそれぞれの場合の捻り角αと位置角ωとの関係が図3のグラフに示されている。図3のグラフから、位置角ω=±45〜135°の範囲であれば、捻り角αの角度の範囲Δαは、約90°という大きな値(α/Δθ≒4.5)になる。後述の実施の形態1においては、位置角ω=90°の場合の実際の駆動機構部800が説明される。
【0045】
また、たとえば、距離d=0である場合の捻り角αと位置角ωとの関係が図4のグラフに示されている。このとき、位置角λを0°近傍の値にすると、第1の中間部材104と第2の中間部材106とが接近し過ぎるため、一例として、λ=45°が用いられている。この場合、位置角ω=−15〜+40°であるか、または、位置角ω=+140〜−165°であれば、捻り角αの角度の範囲Δαは、約60°という大きな値(α/Δθ≒3)になる。後述する実施の形態2においては、位置角ω=180°の場合の実際の駆動機構部800が説明される。
【0046】
(実施の形態1)
まず、図5〜図7を用いて、本発明の本実施の形態1の駆動機構部1を説明する。なお、本実施の形態の羽ばたき装置の全体構成は、図1に示されている羽ばたき装置の全体構成と同一である。つまり、図5に示す駆動機構部800に付されている参照符号と図2に示す駆動機構部800に付されている参照符号とが同一の部位同士は、互いに同一の構造および機能を有している。したがって、以下、図5に示す駆動機構部800の構造および動作の説明においては、主に、前述の図2に示す駆動機構部800の構造および動作と異なる構造の部分の説明がなされる。
【0047】
本実施の形態においては、図5に示すように、羽軸部101は、第1の中間部材104に接続されている。羽軸部101は、第1の中間部材104を含む平面内に存在する板状部材によって構成されている。また、羽膜部100は、その一辺が羽軸部101に固定されている。羽軸部101を含む平面と羽部110を含む平面とは角度τをなして交差している。
【0048】
また、角度τに関しては、羽ばたき飛行中に羽膜部100が撓んでも、羽膜部100と羽軸部101との接合部においては、羽膜部100の接平面と羽軸部101の接平面とがなす角は一定であるものとする。また、角度τは90°であることが望ましいが、本発明の移動装置においては、角度τが90°以外の角度である移動装置であっても、角度τが90°である移動装置と同様の目的を達成することができる。
【0049】
回転部材と中間部材とは、それらを接続するヒンジ部が延びる方向の回転中心軸周りに回転可能である。また、ヒンジ部が延びる方向の延長線の全て(図5中の点線)は、原点Оで交わる。原点Оは、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動の共通の回転中心軸であるZ軸上に位置している。このため、第1の回転部材102の回転角θ1と、第2の回転部材108の回転角θ2との差Δθ=θ2−θ1が一定の範囲内であれば、第1および第2の中間部材104および106が滑らかに動作する。これにより、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動が、第1の中間部材104および羽軸部101を介して、羽膜部100に伝達され、羽膜部100は、YZ平面に平行な捻り角αの往復回転運動を伴いながら、XY平面と平行な回転角Δθの往復回転運動する。
【0050】
また、回転角θ1=θ2=0°の状態では、第1および第2の回転部材102および108は、同一平面(図5ではXZ平面)内に位置している。この状態では、第2のヒンジ部105は、XY平面内でX軸と所定の角度をなしており、第1および第2の中間部材104および106は、第2のヒンジ部105と第1および第2の回転部材102および108との間に位置している。また、図5に示す構造は、図2に示す構造と同様に、Z軸から第1および第2の回転部材102および108のそれぞれの先端までの距離がbであり、第1の回転部材102の先端と第2の回転部材108の先端との間の距離がdであり、第2のヒンジ部105の先端とX軸の距離がaである。
【0051】
本実施の形態の移動装置においても、図5に示す構造は、理解の容易のために、第1のヒンジ部103が延びる方向の回転中心軸がZ軸となす角(コニング角)が90°(直角)であり、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動に伴なう羽軸部101の運動面(ストローク面)が、XY平面上に平行な面であって扇型の面となるものとするが、コニング角は直角以外の角度であってもよい。その場合は、羽軸部101は、ストローク面がZ軸を中心軸とした円錐の側面の一部となるように、往復回転運動する。このように、本実施の形態の羽ばたき装置によれば、コニング角が一定に保たれるため、羽軸部101におけるフラッタリング(運動する流体内での振動)を防止することができる。
【0052】
また、第1の回転部材102が停止した状態(θ1=0)で、第2の回転部材108を、一定のトルクで回転させた場合(θ2−θ1の場合)に、第2の回転部材108の回転角θ2=Δθと羽部110に生じる捻り角αとの関係が、どのように変化するかについて、構造解析が行なわれた。その結果が、図6および図7に示されている。この構造解析においては、第1の回転部材102に与えるトルクを±5gf・cmとし、駆動機構部800のサイズに関しては、a=5mm、b=15mm、およびd=2.5mmであり、また、ヒンジ部の位置角に関しては、λ=0°、および、ω=90°である。材料に関しては、回転部材および中間部材には、0.1mm厚のアルミニウム(ヤング率70GPa、比重2.7g)の板が用いられるが、ヤング率がより大きく、より比重が小さいものとして、CFRP(カーボン繊維強化プラスチック:Carbon Fiber Reinforced Plastic:ヤング率が120GPa、比重が1.6g)などが用いられてもよい。また、ヒンジ部には、5μm厚のPET(ポリエチレン・テレフタレート:ヤング率が3.9GPa、比重が1.2g)が用いられている。
【0053】
図6は、第1の回転部材102に−5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角θ2=Δθ−=−3.9°であり、羽部110の捻り角α−=−21.7°である。また、図7は、第1の回転部材102に+5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ+=+8.1°であり、羽部110の捻り角α+=+35.8°である。合計でΔθ=Δθ+−Δθ−=12.0°であり、α=α+−α−=57.5°である。このことから、第1回転部材102の回転角θ1と第2回転部材108の回転角θ2との差Δθが小さな値でも、羽膜部100は大きな捻り角αで捻られることが分かる(α/Δθ=4.8)。
【0054】
(実施の形態2)
次に、図8〜図10を用いて、本発明の本実施の形態2の駆動機構部800を説明する。
【0055】
図8に示すように、駆動機構部800は、実施の形態1の駆動機構部800とほぼ同様である。つまり、図8に示す駆動機構部800に付されている参照符号と図5に示す駆動機構部800に付されている参照符号とが同一の部位同士は、互いに同一の構造および機能を有している。本実施の形態の駆動機構部800が実施の形態1の駆動機構部800と異なる点は、Z軸方向に関して、駆動機構部800の上下の位置関係が逆になっていること、羽軸部101が羽部110の前縁部を構成していること、および、第1の中間部材104が延長された面上に羽膜部100および羽軸部101が位置するように、第1の中間部材104と羽部110および羽軸部101とが接続されていることである。なお、本実施の形態においては、第1の中間部材104は、羽膜部100および羽軸部101が延長された部材によって構成されている。
【0056】
次に、第1の回転部材102を停止した状態(θ1=0)で、第2の回転部材108に一定のトルクを加えて第2の回転部材108が回転角θ2=Δθだけ回転する場合、羽膜部100にどのような捻り角αが生じるかについて構造解析した結果を、図9および図10に示す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第1の回転部材102に与えるトルクは、±5gf・cmであり、駆動機構部800のサイズに関しては、a=5mm、b=15mm、およびd=0mmであり、また、ヒンジ部の位置角に関しては、λ=45°かつω=180°である。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、回転部材および中間部材には、0.1mm厚のアルミニウム(ヤング率70GPa、比重2.7g)の板が用いられ、また、ヒンジ部には、5μm厚のPET(ポリエチレン・テレフタレート:ヤング率3.9GPa、比重1.2g)が用いられている。なお、本実施の形態の移動装置において、アルミニウム板の代わりにCFRP板などが用いられてもよいことも、実施の形態1の移動装置と同様ある。
【0057】
図9は、−5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ−=−11.4°であり、羽膜部100の捻り角α−=−40.0°である。また、図10は、第2の回転部材108に+5gf・cmのトルクを加えた時の場合の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ+=+14.8°であり、羽膜部100の捻り角α+=+44.6°である。合計でΔθ=Δθ+−Δθ−=26.2°であり、α=α+−α−=84.6°である。この図9および図10から、実施の形態1と同様に、本実施の形態の駆動機構部800によれば、第1回転部材102の回転角θ1と第2回転部材108の回転角θ2との差Δθが小さな値であっても、羽部110には大きな捻り角αが生じる(α/Δθ=3.2)ことが分かる。
【0058】
本実施の形態の駆動機構部800によれば、実施の形態1の駆動機構部800に比較して、α/Δθは小さいが、同じトルクで、より大きな回転角θ1およびθ2の差Δθが得られる。そのため、同じ捻り角αを得るために必要な第1および第2の駆動部1001および1002のトルクは、実施の形態2の駆動機構部800の方が実施の形態1の駆動機構部800より小さくてもよい、と考えられる。
【0059】
ただし、ヒンジ部において中間部材と回転部材とがなす角度が180°を超えると、回転部材と中間部材との位置関係が可逆的ではなくなるため、その角度の最大値は180°より小さくなるような設計が行なわれる必要がある。
【0060】
前述の回転部材および中間部材の材料としては、アルミニウムまたはCFRPが用いられているが、これらの材料に限定されるものではない。ただし、回転部材および中間部材の材料としては、密度が小さく、かつ剛性が高いことが望ましいため、ステンレスなどの鋼鉄類、マグネシウム複合材料、または樹脂等が用いられることが好ましい。また、前述の材料が組合わせられた材料が用いられてもよい。
【0061】
また、ヒンジ部の材料としては、PET(ポリエチレン・テレフタレート)が例示されているが、折り曲げの繰り返しに対して強い靭性に優れた材料が用いられること望ましいため、シリコンゴムまたはポリイミド樹脂などの高分子材料が好ましい。
【0062】
さらに、回転部材および中間部材とヒンジ部とを接合させるために用いる接合材または接合方法(たとえば、圧着など)などは、互いの相性が良い組み合わせを用いることが望ましい。これら接合材および接合方法の選択は、本発明の本旨ではないため、特に記載しない。
【0063】
次に、前述の実施の形態に用いられる羽部110の具体例を、図11〜図19を用いて説明する。なお、図11〜図19においては、同一の役割を果たす部位には同一の符号が付されている。
【0064】
図11に示すように、羽部110は、第1の中間部材104に接続される羽基部1101を有する羽板部1100からなっている。つまり、羽軸部101は、羽板部1100の前端部によって構成されている。したがって、図11に示す羽板部は1100は、前述の羽膜部100よりも高い剛性を有するものである。
【0065】
また、図12に示すように、羽部110は、羽膜部100が、第1の中間部材104に接続される羽基部1101、および羽枠部1102によって囲まれている。この場合、羽枠部102の前側が羽軸部101に相当する。
【0066】
また、図13に示すように、羽部110は、羽基部1101、羽軸部101、羽枠部1102、および羽膜部100からなっている。羽膜部100は、比較的剛性が高い羽基部1101、羽軸部101、および羽枠部1102によって囲まれている。
【0067】
また、図14に示すように、図13に示す構造にさらに羽軸部101と羽枠部1102とを接続する支柱部1105が付加された構造の羽であってもよい。これにれば、所定の変形モードに対する羽の剛性が高められる。
【0068】
また、図15に示すように、図14に示す構造に、さらに、羽軸部101にコルゲーション構造が付加されてもよい。これによれば、コルゲーションは、羽の長手方向を含む面内の回転変形に対して強く抵抗し、羽の長手方向を回転中心軸として回転変形し易い、羽ばたき装置の羽に適した構造が得られる。
【0069】
なお、図15に示す羽軸部101のコルゲーションの構造は、図16〜図19に示すいずれの構造であってもよい。
【0070】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、空間を自由に羽ばたき飛行することができる移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施の形態の羽ばたき装置の全体を示す図である。
【図2】図1に示す羽ばたき装置の駆動機構部を示す拡大図である。
【図3】図2に示す駆動機構部の第2のヒンジ部の位置角ωと羽膜部の捻り角αとの関係を示すグラフである。
【図4】図2に示す駆動機構部の第2のヒンジ部の位置角ωと羽膜部の捻り角αとの関係を示す他のグラフである。
【図5】実施の形態1の駆動機構部を示す図である。
【図6】図5に示す駆動機構部の第1の回転部材に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図7】図5に示す駆動機構部の第1の回転部材に図6に示す駆動機構部の第1の回転部材に与えたトルクの方向とは逆方向に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図8】実施の形態2の駆動機構部を示す図である。
【図9】図8に示す駆動機構部の第1の回転部材に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図10】図8に示す駆動機構部の第1の回転部材に図9に示す駆動機構部の第1の回転部材に与えたトルクの方向とは逆方向に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図11】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第1の例である。
【図12】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第2の例である。
【図13】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第3の例である。
【図14】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第4の例である。
【図15】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第5の例である。
【図16】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第6の例である。
【図17】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第7の例である。
【図18】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第8の例である。
【図19】本実施の形態の移動装置の羽部の構造を示す第9の例である。
【符号の説明】
【0073】
100 羽膜部、101 羽軸部、102 第1の回転部材、103 第1のヒンジ部、104 第1の中間部材、105 第2のヒンジ部、106 第2の中間部材、107 第3のヒンジ部、108 第2の回転部材、109 先端部、110 羽部、500 本体、800 駆動機構部、1001 第1の駆動部、1002 第2の駆動部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、
前記羽部が接続された駆動機構部と、
前記駆動機構部および前記羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、
前記駆動機構部ならびに前記第1および第2の駆動部が搭載された本体とを備えた移動装置であって、
前記駆動機構部は、第1および第2の回転部材、n個(n≧1)の中間部材、およびn+1個のヒンジ部を有し、
前記羽部が、前記n個の中間部材のうちの少なくともいずれか1の中間部材に接続され、
前記nが2以上の場合には、前記n個の中間部材のうちの隣接する中間部材同士が、前記n+1個のヒンジ部のうちのいずれか1のヒンジ部を介して接続され、
前記n個の中間部材のうちの前記第1の回転部材に隣接する中間部材と前記第1の回転部材とが、互いに前記n+1個のヒンジ部のうちの前記1のヒンジ部とは異なる他のヒンジ部を介して接続され、
前記n個の中間部材のうちの前記第2の回転部材に隣接する中間部材と前記第2の回転部材とが、互いに前記n+1個のヒンジ部のうちの前記1または他のヒンジ部とは異なるさらに他のヒンジ部を介して接続され、
前記第1の回転部材は、第1の駆動部に接続され、
前記第2の回転部材は、前記第2の駆動部に接続され、
前記第1の駆動部が、前記第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、前記第2の駆動部が、前記第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、前記第2の回転部材を往復回転運動させることによって、前記羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する、移動装置。
【請求項2】
前記羽部は、羽膜部と前記羽膜部を支持する羽軸部とを有し、前記第1の回転部材または前記第2の回転部材に隣接する中間部材に接続されており、
前記羽軸部が、前記他のヒンジ部または前記さらに他のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられた、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記n+1個のヒンジ部のうちの2以上のヒンジ部は、第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動が行なわれているときに、それらの延長線同士が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられた、請求項1に記載の移動装置。
【請求項4】
前記交差点が、前記第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置する、請求項3に記載の移動装置。
【請求項5】
流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、
前記羽部が接続された駆動機構部と、
前記駆動機構部および前記羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、
前記駆動機構部ならびに前記第1および第2の駆動部が搭載された本体を備えた移動装置であって、
前記駆動機構部は、第1および第2の回転部材、第1および第2の中間部材、ならびに、第1、第2および第3のヒンジ部を有し、
前記羽部は、前記第1の中間部材に接続され、
前記第1の中間部材は、前記第1のヒンジ部を介して前記第1の回転部材に接続されるとともに、前記第2のヒンジ部を介して前記第2の中間部材に接続され、
前記第2の中間部材は、第3のヒンジ部を介して前記第2の回転部材に接続され、
前記第1の回転部材は、前記第1の駆動部に接続され、
前記第2の回転部材は、前記第2の駆動部に接続され、
前記第1の駆動部が、前記第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、前記第2の駆動部が、前記第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、前記第2の回転部材を往復回転運動させることによって、前記羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する、移動装置。
【請求項6】
前記羽部は、羽膜部と前記羽膜部を支持する羽軸部とを有し、
前記羽軸部が、前記第1のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられた、請求項5に記載の移動装置。
【請求項7】
前記第1、第2、および第3のヒンジ部のうちの少なくともいずれか2つのヒンジ部は、前記第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動が行なわれているときに、それらの延長線が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられた、請求項5に記載の移動装置。
【請求項8】
前記交差点が、前記第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置する、請求項7に記載の移動装置。
【請求項1】
流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、
前記羽部が接続された駆動機構部と、
前記駆動機構部および前記羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、
前記駆動機構部ならびに前記第1および第2の駆動部が搭載された本体とを備えた移動装置であって、
前記駆動機構部は、第1および第2の回転部材、n個(n≧1)の中間部材、およびn+1個のヒンジ部を有し、
前記羽部が、前記n個の中間部材のうちの少なくともいずれか1の中間部材に接続され、
前記nが2以上の場合には、前記n個の中間部材のうちの隣接する中間部材同士が、前記n+1個のヒンジ部のうちのいずれか1のヒンジ部を介して接続され、
前記n個の中間部材のうちの前記第1の回転部材に隣接する中間部材と前記第1の回転部材とが、互いに前記n+1個のヒンジ部のうちの前記1のヒンジ部とは異なる他のヒンジ部を介して接続され、
前記n個の中間部材のうちの前記第2の回転部材に隣接する中間部材と前記第2の回転部材とが、互いに前記n+1個のヒンジ部のうちの前記1または他のヒンジ部とは異なるさらに他のヒンジ部を介して接続され、
前記第1の回転部材は、第1の駆動部に接続され、
前記第2の回転部材は、前記第2の駆動部に接続され、
前記第1の駆動部が、前記第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、前記第2の駆動部が、前記第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、前記第2の回転部材を往復回転運動させることによって、前記羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する、移動装置。
【請求項2】
前記羽部は、羽膜部と前記羽膜部を支持する羽軸部とを有し、前記第1の回転部材または前記第2の回転部材に隣接する中間部材に接続されており、
前記羽軸部が、前記他のヒンジ部または前記さらに他のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられた、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記n+1個のヒンジ部のうちの2以上のヒンジ部は、第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動が行なわれているときに、それらの延長線同士が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられた、請求項1に記載の移動装置。
【請求項4】
前記交差点が、前記第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置する、請求項3に記載の移動装置。
【請求項5】
流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、
前記羽部が接続された駆動機構部と、
前記駆動機構部および前記羽部を所定の方向に往復回転運動させる第1および第2の駆動部と、
前記駆動機構部ならびに前記第1および第2の駆動部が搭載された本体を備えた移動装置であって、
前記駆動機構部は、第1および第2の回転部材、第1および第2の中間部材、ならびに、第1、第2および第3のヒンジ部を有し、
前記羽部は、前記第1の中間部材に接続され、
前記第1の中間部材は、前記第1のヒンジ部を介して前記第1の回転部材に接続されるとともに、前記第2のヒンジ部を介して前記第2の中間部材に接続され、
前記第2の中間部材は、第3のヒンジ部を介して前記第2の回転部材に接続され、
前記第1の回転部材は、前記第1の駆動部に接続され、
前記第2の回転部材は、前記第2の駆動部に接続され、
前記第1の駆動部が、前記第1の回転部材を往復回転運動させるとともに、前記第2の駆動部が、前記第1の回転部材の往復回転運動とは独立して、前記第2の回転部材を往復回転運動させることによって、前記羽部の先端部と仮想の所定の基準面とのなす捻り角が変化する、移動装置。
【請求項6】
前記羽部は、羽膜部と前記羽膜部を支持する羽軸部とを有し、
前記羽軸部が、前記第1のヒンジ部が延びる方向の線に沿って延びるように設けられた、請求項5に記載の移動装置。
【請求項7】
前記第1、第2、および第3のヒンジ部のうちの少なくともいずれか2つのヒンジ部は、前記第1および第2の回転部材のうちの少なくともいずれか一方の往復回転運動が行なわれているときに、それらの延長線が互いに交差点を有する状態を維持するように設けられた、請求項5に記載の移動装置。
【請求項8】
前記交差点が、前記第1および第2の駆動部のうちの少なくともいずれか一方の回転中心軸上に位置する、請求項7に記載の移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−69482(P2006−69482A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258569(P2004−258569)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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