説明

移動規制具

【課題】支持脚部を適切に移動規制する。
【解決手段】移動規制具20は、台部22と、台部22に設けられた一対の第1規制部30,30と、各第1規制部30,30の間に着脱可能に架け渡された一対の第2規制部40,40とを備え、支持脚部10の周りを囲むように一対の第1規制部30,30および一対の第2規制部40,40を配置することで該支持脚部10の移動を規制する。台部22は、2つの台部分体24,24から構成され、各台部分体24はマット26により床面に貼り付けて設置される。各第2規制部40,40は、その一方の端部が連結部42により連結され、他方の端部間には支持脚部10の通過が可能な挿通孔46が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コピー機などの機器等の支持脚部を移動規制する移動規制具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィス家具等の什器や、オフィスで用いられる比較的大型のコピー機等の機器(機器等をいう)は、箱状本体の底面に設けられた支持脚やキャスターによって床面から所定間隔離間した状態で支持されている。機器等は、箱状本体の底面から突出する支持脚の長さを変更することで、箱状本体の水平を調節したり、キャスターを採用することで、適宜の移動を可能にしている。機器等は、外部からの振動や衝突等による衝撃や地震による震動によって、転倒や移動することを防止するために、例えば特許文献1に開示されているような移動規制具(固定具)で支持脚が保持される。
【0003】
特許文献1の移動規制具(固定具)は、支持脚の下端を構成する円盤状の台座が挿入可能な溝状の台座挿入部を有する底板と、この底板の上面に取着され、支持脚の垂直軸が挿入可能な溝状の垂直軸挿入部を有する上板と、底板の底面に貼着され、両面粘着性を有する粘着マットとから構成される。特許文献1の移動規制具は、台座挿入部と垂直軸挿入部とを同方向に開口させることにより当該開口から支持脚を挿入可能としている。そして、垂直軸挿入部に支持脚を当接させることで支持脚の台座の上方に上板が重なり、底板の底面の粘着マットを床面に貼着することで支持脚を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−10691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1の移動規制具(固定具)は、底板の台座挿入部と上板の垂直軸挿入部とが支持脚を挿脱するために同じ方向に開口しているので、台座挿入部および垂直軸挿入部の開口方向おいて、支持脚を移動規制することができない。すなわち、1つの移動規制具では、支持軸における水平方向の全ての移動に対応することができない不都合を有している。特許文献1では、移動規制具を複数の支持脚の夫々に取り付ける際に、台座挿入部および垂直軸挿入部の開口方向が向かい合うように隣り合う移動規制具を設置することで、複数の移動規制具の組み合わせによって機器等の水平方向の移動を規制している。しかしながら、支持脚が壁に近接した奥側にある等の条件によっては、移動規制具を取り付けることが難しい場合があり、また機器等を移動する際には、移動規制具を取り外さなければ機器等を動かすことができない。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る移動規制具に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、支持脚部を適切に移動規制できる移動規制具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の移動規制具は、
本体を床面から離した状態で支持する支持脚部を移動規制する移動規制具において、
両面が粘着性を有するマットで床面に貼り付けて設置される台部と、
前記台部に設けられ、床面に置かれた前記支持脚部を挟んで対向配置される一対の第1規制部と、
前記一対の第1規制部の間に着脱可能に架け渡されて、前記支持脚部を挟んで対向配置される一対の第2規制部とを備え、
前記支持脚部の周りを囲むように配置された一対の第1規制部および一対の第2規制部によって、該支持脚部を移動規制するよう構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、支持脚部の周りを囲むように配置された一対の第1規制部および一対の第2規制部によって、該支持脚部を移動規制する構成であるので、1つの移動規制具であっても支持脚部における水平方向の全ての移動に対して何れかの規制部によって適切に移動規制することができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、
前記台部は、2つの台部分体から構成され、
各台部分体には、前記第1規制部が上面における端縁の所要領域に亘って立ち上がるよう形成され、
前記2つの台部分体は、前記第1規制部が形成された端縁を向かい合わせて、前記支持脚部を挟んで前記マットで床面に夫々貼り付けられることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、台部を2つの台部分体で構成することで、各台部分体を支持脚部に対して設置し易い。
【0009】
請求項3に係る発明では、
対向配置された前記一対の第2規制部と、該一対の第2規制部の一端部間を連結する連結部と、該第2規制部の他端部に夫々設けられて、他方の第2規制部に向けて突出形成された係止部と、向かい合う一対の係止部の間に設けられて前記支持脚部を挿通可能な挿通口とを有する規制部材を備え、
前記規制部材は、前記連結部および一対の係止部を前記第1規制部を挟んで前記支持脚部と反対側に位置させて、該第1規制部に設けられた溝に前記第2規制部を嵌め合わせて取り付けられることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、第1規制部と連結部または係止部とが引っ掛かって、一対の規制部の互いに離間する方向への変位を規制することができる。一方、溝に嵌め合わされた一対の第2規制部は、溝に引っ掛かって互いに離間する方向への変位が規制される。すなわち、何れの規制部に支持脚部が当たっても該支持脚部を適切に移動規制することができる。
【0010】
請求項4に係る発明では、
前記支持脚部は、前記本体の底面に設けられ、
前記規制部材は、前記第1規制部の上端と前記本体の底面との隙間より薄く設定され、
前記規制部材は、前記隙間を介して前記挿通口から前記支持脚部を通すと共に、前記第2規制部を、前記第1規制部に上方に開口するよう形成された前記溝に対して着脱するよう構成したことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、支持脚部が本体の底面に設けられていても、規制部材を該本体の底面と第1規制部の上端との間の隙間を介して着脱し得るので、移動規制具の設置作業を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る移動規制具によれば、支持脚部を適切に移動規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な実施例に係る移動規制具によりキャスターを移動規制した状態を示す斜視図である。
【図2】実施例の移動規制具の構成部材を示す分解斜視図である。
【図3】(a)は、台部分体に設けられた第1規制部を、キャスターを挟む両側に設置する状態を上から見た説明図であり、(b)は、(a)の状態を横から見た説明図である。
【図4】(a)は、規制部材を本体の底面と各第1規制部の上端との間の隙間へ挿入して、各第2規制部を各第1規制部に設けた連結溝に嵌合させる状態を上から見た説明図であり、(b)は、(a)の状態を横から見た説明図である。
【図5】(a)は、底面にキャスターを配設した本体を概略的に示す説明図であり、(b)は、キャスターの斜視図である。
【図6】変更例に係る移動規制具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る移動規制具につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。実施例では、移動規制具20により移動規制される支持脚部として、図5(a)に示すように、支持対象物であるオフィス家具や事務機器(コピー機やファクシミリ機)等の本体18の底面18Aに設けられ、この本体18の底面18Aに設けられて該本体18を床面19から離間させた状態で支持して転動が可能なキャスター10を例示する。なお実施例では、後述する一対の第1規制部30,30がキャスター10を挟んで向き合う方向を「第1方向」、この第1方向と水平に直交する方向を「第2方向」と指称する。
【実施例】
【0014】
キャスター10は、図1、図3および図5(b)に示すように、本体18の底面18Aに支持軸16を介して回転可能に取り付けられる支持体12と、この支持体12に各々独立回転可能に支持される一対の車輪14,14とを備えている。支持体12は、両車輪14,14の略上半分を覆う半円筒形状の傘部12Aと、この傘部12Aの下側に設けられた支持壁部12Bと、傘部12Aの上部に上方へ突出するように設けられ、支持軸18を垂直上方へ突出した状態に保持する円筒状の保持部12Cとを備えている。支持壁部12Bには、両側へ水平に突出した回転支軸17が設けられ、各車輪14,14が該支持壁部12Bを挟んで該回転支軸17に回転自在に配設されている。そしてキャスター10は、図3(a)に示すように、平面視における形状が略矩形となっており、平面視において最大幅が、支持体12の対角に位置する角部を直線で結ぶ距離(以降「対角長L」という)となっている。
【0015】
実施例の移動規制具20は、図1および図2に示すように、床面19に置かれたキャスター10を挟んで対向配置される一対の第1規制部30,30と、これら一対の第1規制部30,30の間に着脱可能に架け渡され、該キャスター10を挟んで対向配置される一対の第2規制部40,40とを備えている。そして、実施例の移動規制具20は、一対の第1規制部30,30および一対の第2規制部40,40が、キャスター10の周りを囲むように配置されることにより、該キャスター10を移動規制するよう構成されている。なお、各第1規制部30,30は、床面19に設置される台部22に設けられていると共に、各第2規制部40,40は、後述する規制部材50を構成している。
【0016】
前記台部22は、図1〜図3に示すように、キャスター10を挟んで配設される2つの台部分体24,24から形成されている。各台部分体24,24は、第2方向に長い長方形の平板状に形成され、第2方向における長さWは、キャスター10の前述した対角長Lより大きく設定されている(図3(a))。各台部分体24,24は、その上面における第2方向に沿う一方の端縁24Bに、上方へ立ち上がる第1規制部30が形成されている。そして各台部分体24,24は、図3(a)および図3(b)に示すように、第1規制部30が形成された端縁24Bをキャスター10側に向けた姿勢で該キャスター10に隣接してセットして、キャスター10を挟んで向かい合った平行状態で床面19に夫々設置されるようになっている。
【0017】
各台部分体24,24の下面24Aには、図1および図2に示すように、該台部分体24を床面19に設置するマット26が配設されている。このマット26は、例えばゲル状熱可塑性エラストマ、ゲル状ウレタンエラストマまたはゲル状ゴム等の粘弾性体をシート状に形成したもので、厚み方向の両面(台部分体24の下面24Aに接触する面および床面19に接触する面)に粘着性を有している。またマット26は、前記粘弾性体が有する性質に基づき、弾力性、柔軟性、衝撃吸収性や、防振性を兼ね備えている。従ってマット26は、対象の台部分体24の下面24Aに相対するマット上面26Aを該下面24Aに密着させて押し付けることで、該台部分体24に対して自己粘着力により容易に剥離しない強さで装着されている。またマット26は、床面19に相対するマット下面26Bを該床面19に押し付けることで、該床面19に対して自己粘着力により容易に剥離しない強さで装着され、対象の台部分体24を該床面19に対して移動不能に設置し得る。なおマット26は、台部分体24の下面24Aと同じ輪郭形状に形成されて該下面24Aの全体に被着される単一のものを例示しているが、該下面24Aと異なる形状であってもよい。また、マット24の配設数は、1つに限らず、複数であってもよい。
【0018】
前記一対の第1規制部30,30は、台部分体24の第2方向の長さWと同じ長さの板状に形成されて、第2方向における長さがキャスター10の前述した対向長Lより長くなっている。また、各第1規制部30,30は、該台部分体24の上面から一定の高さで垂直に立ち上がるように形成され、図3(b)に示すように、マット26を介して台部分体24を床面19に設置した状態における該床面19からの突出高さH1が、該床面19から本体18の底面18Aまでの高さ間隔Hより小さく設定されている。そして、第1規制部30の上端32と本体18の底面18Aとの間には、高さH2の隙間Sが形成されている。なお、第1規制部30の突出高さH1は、キャスター10の移動規制を図ることを考慮すると、該キャスター10の車輪14の直径の1/2以上に設定するのが望ましく、実施例では2/3程度に設定されている(図3(b)参照)。
【0019】
一対の第1規制部30,30は、図3(a)および図3(b)に示すように、キャスター10の対角長L以上に設定した間隔L1で、該キャスター10を挟んで平行に配設されるようになっている。従って、キャスター10が、支持軸16を中心として正面、真横および斜めの何れの姿勢であっても、所望の方向から各第1規制部30,30を配設することが可能である。
【0020】
各第1規制部30,30には、図2および図3(a)に示すように、上端32から所要深さに凹んで、該第1規制部30の上端32および両縦面に開口する2つの連結溝(溝)34,34が、第2方向に離間して設けられている。各第1規制部30,30に設けられた両連結溝34,34は、図4(a)に示すように、台部分体24,24をキャスター10を挟んで規定位置にセットした際に、第1方向において各々整合する位置に形成されており、一対の第2規制部40,40の各々が上方から嵌合するように構成されている。また、各第1規制部30に設けた両連結溝34,34の第2方向における間隔L2(図2、図4(a)参照)は、キャスター10の対角長L以上に設定されている。また、各第1規制部30に設けた両連結溝34,34の上端32からの深さD1は、第2規制部40の高さDと同じに設定されている(図2参照)。
【0021】
前記一対の第2規制部40,40は、図1および図4に示すように、規制部材50の一部として構成されている。各第2規制部40,40は、第1方向へ延在して、各第1規制部30,30に設けた連結溝34,34に第1方向の両端部が嵌合することで、両第1規制部30,30に架け渡された状態で保持されるようになっている。各第2規制部40,40は、その第1方向における長さTが、該第1方向において対向する各第1規制部30,30のキャスター10と反対側の縦壁面間の距離T1と同じ長さに設定されている。また各第2規制部40,40は、前述したように、各々の第1規制部30,30に設けた各連結溝34,34の第2方向での間隔L2が、キャスター10の対角長L以上に離れて設けられているため、各連結溝34,34に支持させることで該キャスター10を挟んで対向するようになる。なお、両連結溝34,34の深さD1と第2規制部40の高さDとが同じに設定されているから、該第2規制部40,40を各第1規制部30,30に架け渡した状態で配設した際には、第1規制部30の上端と第2規制部40の上端とが同じ高さとなり、該第2規制部40によるキャスター10の移動規制が可能である。
【0022】
第2方向に離間して対向配置される一対の第2規制部40,40は、図2および図4に示すように、第1方向における一端部(実施例では図2において左端部)が、規制部材50における第2方向に延在する連結部42で連結されている。この連結部42は、両第2規制部40,40を、各第2規制部40,40が各第1規制部30,30に設けられた各連結溝34,34に嵌合する間隔L2と同じ間隔で連結している。これにより各第2規制部40,40は、連結部42により互いに平行な姿勢で保持されている。
【0023】
また規制部材50は、図2および図4に示すように、一対の第2規制部40,40において、第1方向における他端部(実施例では図2において右端部)の各々に、他方の第2規制部40に向けて突出形成された係止部44,44を備えている。各係止部44は、第1規制部30のキャスター10と反対側の縦壁面に沿って突出している。従って、一対の第2規制部40,40を一対の第1規制部30,30に嵌合させて規制部材50を該第1規制部30,30に取り付けた際には、連結部42および各係止部44,44が各第1規制部30,30を挟んでキャスター10と反対側に位置するようになっており、これら連結部42および各係止部44,44により各第1規制部30,30が互いに離間する方向へ移動するのを規制するようになっている。
【0024】
そして規制部材50には、図2および図4(a)に示すように、互いに向かい合う一対の係止部44,44の間に、キャスター10が挿通可能な幅に設定された挿通口46が設けられている。また、規制部材50を構成する各第2規制部40,40、連結部42および各係止部44,44は、第1規制部30の上端32と本体18の底面18Aとの隙間Sの高さH2より薄く設定されている。従って規制部材50は、図4(a)および図4(b)に示すように、係止部44,44が形成された側から隙間Sへ挿入して、連結部42および係止部44,44を、一対の第1規制部30,30を挟んでキャスター10と反対側に位置させたもとで、該第1規制部30,30に設けられた各連結溝34,34に第2規制部40,40を嵌め合わせることが可能となっている。
【0025】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る移動規制具の作用について説明する。
【0026】
床面19の所定位置に対して本体18の位置決めが完了したら、先ず図3(a)および図3(b)に示すように、台部22における一方の台部分体24を、第1規制部30がキャスター10に隣接した状態で該キャスター10の側方に位置決めして、マット26の自己粘着力を利用して床面19に設置する。また、台部22における他方の台部分体24を、第1規制部30がキャスター10に隣接した状態で該キャスター10を挟んで一方の台部分体24と反対側の側方に位置決めして、マット26の自己粘着力を利用して床面19に設置する。これにより、一対の第1規制部30,30が、キャスター10を挟んで第1方向で平行に対向した状態で床面19に設置される。なお、両第1規制部30,30の第1方向の間隔L1がキャスター10の対角長Lより大きくなるように各台部分体24,24を床面19に設置するので、キャスター10が支持軸16を中心とした如何なる姿勢で停止していても、一対の第1規制部30,30を適切に配設することが可能である。
【0027】
床面19に対し各台部分体24,24を設置して、キャスター10に対する一対の第1規制部30,30の配設が完了したら、図4(a)に示すように、本体18の底面18Aと各第1規制部30の上端32との間に対して規制部材50を挿入させる。この際に、規制部材50は、係止部44,44の側から挿入させ、両係止部44,44間に形成された挿通口46を介して、各第2規制部40,40の間にキャスター10を挿入させる。これにより、各第2係止部40,40を、各第1規制部30,30に設けた連結溝34,34の上方に位置させると共に、連結部42および両係止部44,44を、各第1規制部30,30を挟んでキャスター10と反対側に位置させることができる。
【0028】
前述のように規制部材50を位置決めしたら、図4(b)に示すように、該規制部材50を下方へ移動させて、各第2規制部40,40を、対応の連結溝34,34に対して上方から嵌め合わせる。これにより、一対の第2規制部40,40は、第1方向に沿う向きで各第1規制部30,30に架け渡され、第2方向においてキャスター10を挟んで対向するようになる。
【0029】
また、各第1規制部30,30に取り付けられている規制部材50を上方へ移動すると、各連結溝34,34に嵌合していた各第2規制部40,40が該連結溝34,34から上方へ外れるようになる。従って連結部材50は、キャスター10の移動規制のために実施されている途中の適時に、第1規制部30から簡単に取り外すことが可能である。
【0030】
なお、一対の第1規制部30,30が前述した間隔L1で対向するように台部22の各台部分体24,24を床面19に設置するので、両台部分体24,24の間にはキャスター10が走行可能な空間が形成される。従って、本体18を床面19に設置する前に、該床面19におけるキャスター10が位置するようになる部分の両側に台部22の各台部分体24,24を予め設置して、本体18を床面19に設置させる際にキャスター10を両第1規制部30,30の間に位置決めすることも可能である。
【0031】
実施例の移動規制具20では、キャスター10の周りを囲むように配置された一対の第1規制部30,30および一対の第2規制部40,40によって、該キャスター10を移動規制する構成であるので、1つの移動規制具20であってもキャスター10における水平方向の全ての移動に対して何れかの規制部によって適切に移動規制することができる。
【0032】
一方の第1規制部30と規制部材50の連結部42とが引っ掛かると共に他方の第1規制部30と各係止部44,44とが引っ掛かるので、一対の第1規制部30,30が互いに離間する方向へ変位することが規制される。また、各連結溝34,34に嵌め合わされた一対の第2規制部40,40により、両第2規制部40,40が互いに離間する方向へ変位することが規制される。すなわち、第1規制部30,30および第2規制部40,40の何れにキャスター10が内側から当たっても、該キャスター10を適切に移動規制することができる。
【0033】
そして、実施例の移動規制具20では、台部22を2つの台部分体24,24で構成してあるので、キャスター10を挟んだ両側に各台部分体24,24を設置し易く、キャスター10を挟んだ両側への第1規制部30,30の設置作業の簡易化を図り得る。また、一対の第2規制部40,40を設けた規制部材50を、本体18の底面18Aと第1規制部30の上端との間の隙間を介して着脱し得るので、キャスター10を挟んだ両側への第2規制部40,40の設置作業の簡易化も図り得る。なお、第2規制部40,40が設けられた規制部材50を第1規制部30,30から取り外すだけで、キャスター10の第2方向への移動が許容され、本体18を移動させることができる。
【0034】
また、実施例の移動規制具20によれば、一対の第1規制部30,30が設けられた台部22の床面19への設置作業や、一対の第2規制部40,40が設けられた規制部材50の該第1規制部30,30への設置作業に際して工具が不要であるから、専門知識や専門技術を要することなく移動規制具20の設置作業を行なうことができる。そして、移動規制の対象となるキャスター10の形状やサイズが異なっていても、該キャスター10の移動規制を適切に行なうことができる。更に、一対の第1規制部30,30が設けられた台部22や、一対の第2規制部40,40が設けられた規制部材50を、インジェクション成形による合成樹脂製の成形部材で構成することも可能であり、軽量化やコストダウンも図り得る。
【0035】
〔変更例〕
本願の移動規制具は、実施例に例示した形態に限定されず、様々に変更が可能である。
(1)台部22は、図6に示すように、キャスター10の挿入側および該キャスター10が位置する部分を取り除いた形態の単一部材としてもよい。この場合では、床面19に台部22を設置するに際して、一対の嵌第1規制部30,30の第1方向の間隔L1が一義的に決定されるので、該台部22の設置作業を簡易かつ短時間で行なうことができると共に、第1規制部30,30を正確に配設し得る。なお、マット26の形状は、台部22の下面の形状に合わせるのが望ましい。
(2)第2規制部40は、図6に示すように、各第1規制部30に内側から当接する固定片54を設けるようにしてもよい。各第2規制部40にこのような固定片54を設けることにより、キャスター10を挟んで第1方向に離間して対向する各第1規制部30,30が該キャスター10側へ移動するのが規制され、両第1規制部30,30を所定の間隔L1に保持することが可能である。
(3)一対の第2規制部40,40は、各々を別体に構成して、一対の第1規制部30,30に対して個別に架け渡して装着するよう構成してもよい。
(4)一対の第2規制部40,40を別体に構成する場合には、一対の第1規制部30,30に対する各第2規制部40,40の装着形態は、実施例のように上方から嵌め合わせる形態に限らず、該一対の第1規制部30,30に貫通口を形成して、第1方向から所謂串差し状に貫通する形態としてもよい。この形態では、第1規制部30,30に形成した貫通口は係止部44が挿通可能な形状とし、第2規制部40を水平軸周りに回転させることで該係止部44が第1規制部30に係止するように構成することが可能である。
(5)一対の第1規制部30,30の第2方向における長さは、各台部分体24より長くしてもよいし、短くしてもよい。
(6)移動規制具20による固定対象としての支持脚部は、実施例で例示したキャスター10に限らず、棒状の脚部やボルト等の様々な形態のものが対象とされる。
(7)移動規制具20による固定対象としての支持脚部は、本体18の底面18Aに配設されて該本体18の真下に設けられたものに限らず、本体18の底面18Aから側方へ外れた部位、すなわち本体18から側方へ突出して上方が開放している部位に設けられたものであってもよい。このような支持脚部であっても、前記係止部44,44間に形成された挿通口46を介して各第2規制部40,40の間にキャスター10を挿入させ、各第2係止部40,40を、各第1規制部30,30に設けた連結溝34,34に対して上方から着脱することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 キャスター(支持脚部),18 本体,18A 底面,19 床面,22 台部
24 台部分体,24B 端縁,26 マット,30 第1規制部,32 上端
34 連結溝(溝),40 第2規制部,42 連結部,44 係止部,46 挿通口
50 規制部材,S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を床面から離した状態で支持する支持脚部を移動規制する移動規制具において、
両面が粘着性を有するマットで床面に貼り付けて設置される台部と、
前記台部に設けられ、床面に置かれた前記支持脚部を挟んで対向配置される一対の第1規制部と、
前記一対の第1規制部の間に着脱可能に架け渡されて、前記支持脚部を挟んで対向配置される一対の第2規制部とを備え、
前記支持脚部の周りを囲むように配置された一対の第1規制部および一対の第2規制部によって、該支持脚部を移動規制するよう構成した
ことを特徴とする移動規制具。
【請求項2】
前記台部は、2つの台部分体から構成され、
各台部分体には、前記第1規制部が上面における端縁の所要領域に亘って立ち上がるよう形成され、
前記2つの台部分体は、前記第1規制部が形成された端縁を向かい合わせて、前記支持脚部を挟んで前記マットで床面に夫々貼り付けられる請求項1記載の移動規制具。
【請求項3】
対向配置された前記一対の第2規制部と、該一対の第2規制部の一端部間を連結する連結部と、該第2規制部の他端部に夫々設けられて、他方の第2規制部に向けて突出形成された係止部と、向かい合う一対の係止部の間に設けられて前記支持脚部を挿通可能な挿通口とを有する規制部材を備え、
前記規制部材は、前記連結部および一対の係止部を前記第1規制部を挟んで前記支持脚部と反対側に位置させて、該第1規制部に設けられた溝に前記第2規制部を嵌め合わせて取り付けられる請求項1または2記載の移動規制具。
【請求項4】
前記支持脚部は、前記本体の底面に設けられ、
前記規制部材は、前記第1規制部の上端と前記本体の底面との隙間より薄く設定され、
前記規制部材は、前記隙間を介して前記挿通口から前記支持脚部を通すと共に、前記第2規制部を、前記第1規制部に上方に開口するよう形成された前記溝に対して着脱するよう構成した請求項3記載の移動規制具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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