説明

移動規制具

【課題】支持脚部を適切に移動規制する。
【解決手段】 移動規制具20は、台部21と、台部21に設けられた第1規制部30と、第1規制部30の上側に設けられた第2規制部40とを備える。第1規制部30は、台部21に形成された筒体部23の上面に、床面19に設置された支持脚部10の水平方向三方を囲み得ると共に該水平方向の残りの一方が該支持脚部10を挿通可能に開口するよう形成される。第2規制部40は、筒体部23の上側に被せて取付けられるロック部材34の上面に設けられ、該ロック部材34の変位により、第1規制部30の開口32を開放する第1状態と該第1規制部30の開口32を塞ぐ第2状態とに切り替え可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コピーなど等の機器等の支持脚部を移動規制する移動規制具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィス家具等の什器や、オフィスで用いられる比較的大型のコピー機等の機器(機器等をいう)は、箱状本体の底面に設けられた支持脚やキャスターによって床面から所定間隔離間した状態で支持されている。機器等は、箱状本体の底面から突出する支持脚の長さを変更することで、箱状本体の水平を調節したり、キャスターを採用することで、適宜の移動を可能にしている。機器等は、外部からの振動や衝突等による衝撃や地震による震動によって、転倒や移動することを防止するために、例えば特許文献1に開示されているような移動規制具(固定具)で支持脚が保持される。
【0003】
特許文献1の移動規制具(固定具)は、支持脚の下端を構成する円盤状の台座が挿入可能な溝状の台座挿入部を有する底板と、この底板の上面に取着され、支持脚の垂直軸が挿入可能な溝状の垂直軸挿入部を有する上板と、底板の底面に貼着され、両面粘着性を有する粘着マットとから構成される。特許文献1の移動規制具(固定具)は、台座挿入部と垂直軸挿入部とを同方向に開口させることにより当該開口から支持脚を挿入可能としている。そして、垂直軸挿入部に支持脚を当接させることで支持脚の台座の上方に上板が重なり、底板の底面の粘着マットを床面に貼着することで支持脚を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−10691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1の移動規制具(固定具)は、底板の台座挿入部と上板の垂直軸挿入部とが支持脚を挿脱するために同じ方向に開口しているので、台座挿入部および垂直軸挿入部の開口方向おいて、支持脚を移動規制することができない。すなわち、1つの移動規制具では、支持軸における水平方向の全ての移動に対応することができない不都合を有している。特許文献1では、移動規制具を複数の支持脚の夫々に取り付ける際に、台座挿入部および垂直軸挿入部の開口方向が向かい合うように隣り合う移動規制具を設置することで、複数の移動規制具の組み合わせによって機器等の水平方向の移動を規制している。しかしながら、支持脚が壁に近接した奥側にある等の条件によっては、移動規制具を取り付けることが難しい場合があり、また機器等を移動する際には、移動規制具を取り外さなければ機器等を動かすことができない。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る移動規制具に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、支持脚部を適切に移動規制できる移動規制具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の移動規制具は、
本体を床面から離した状態で支持する支持脚部を移動規制する移動規制具において、
両面が粘着性を有するマットで床面に貼り付けて設置される台部と、
前記台部に設けられ、前記床面に設置された前記支持脚部の水平方向三方を囲み得ると共に該水平方向の残りの一方が該支持脚部を挿通可能に開口するよう形成された第1規制部と、
前記第1規制部の上側に設けられ、前記第1規制部の開口を開放する第1状態と該第1規制部の開口を塞ぐ第2状態とに切り替え可能な第2規制部とを備え、
前記第2規制部の第1状態において前記第1規制部に前記支持脚部を挿脱し、該第2規制部の第2状態において該支持脚部の周りを囲むように配置された第1規制部および第2規制部によって支持脚部を移動規制するよう構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、支持脚部の周りを囲むように配置された第1規制部および第2規制部によって、該支持脚部を移動規制する構成であるので、1つの移動規制具であっても支持脚部における水平方向の全ての移動に対して何れかの規制部によって適切に移動規制することができる。また、第2規制部を第1状態と第2状態とに切り替えるだけで、支持脚部の挿脱および支持脚部の移動規制を行なうことができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、
前記第2規制部は、前記第1規制部の上側に上下方向の軸周りに回転するよう取り付けられ、該第2規制部を第1規制部に対して回転して前記第1状態と第2状態とに切り替えることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、第2規制部を第1規制部に対して回転するだけの簡単なな操作で第1状態と第2状態とに切り替えることができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、
前記支持脚部は、前記本体の底面に設けられ、
前記第2規制部が設けられ、前記第1規制部の上側に被せて取り付けられるロック部材は、前記第1規制部の上面と前記本体の底面との隙間より薄く設定され、
前記ロック部材は、前記隙間を介して前記第1規制部の上側に着脱可能に構成されたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、支持脚部が本体の底面に設けられていても、ロック部材を本体の底面と第1規制部の上面との間の隙間を介して着脱し得るので、移動規制具の設置作業を簡単に行なうことができる。
【0010】
請求項4に係る発明では、
前記第1規制部は、前記台部の上側に該台部と並行するよう延在する第1板部に、一端が閉塞すると共に他端が側方に開口する切り欠き形状で形成され、
前記第2規制部は、前記第1板部の上側に重なるよう設けられた第2板部に、前記第1状態において前記第1規制部に整合する切り欠き形状で形成されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、簡単な形状の第1規制部および第2規制部で支持脚部を適切に移動規制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る移動規制具によれば、支持脚部を適切に移動規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な実施例に係る移動規制具によりキャスターを移動規制した状態を示す斜視図である。
【図2】実施例の移動規制具の構成部材を示す分解斜視図である。
【図3】実施例の移動規制具を、キャスターを収容する状態で示す斜視図である。
【図4】実施例の移動規制具の平面図であって、第2規制部を第2状態として、第1規制部および該第2規制部でキャスターを移動規制した状態を示している。
【図5】(a)は、第1規制部と本体の底面との間にロック部材を挿入する状態を上から見た説明図であり、(b)は、(a)の状態を横から見た説明図である。
【図6】(a)は、底面にキャスターを配設した本体を概略的に示す説明図であり、(b)は、キャスターの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る移動規制具につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。実施例では、移動規制具20により固定される支持脚部として、図6(a)に示すように、支持対象物であるオフィス家具や事務機器(コピー機やファクシミリ機)等の本体18の底面18Aに設けられ、この本体18の底面18Aに設けられて該本体18を床面19から離間させた状態で支持して転動が可能なキャスター10を例示する。
【実施例】
【0014】
キャスター10は、図1、図3および図6(b)に示すように、本体18の底面18Aに支持軸16を介して回転可能に取り付けられる支持体12と、この支持体12に各々独立回転可能に支持される一対の車輪14,14とを備えている。支持体12は、両車輪14,14の略上半分を覆う半円筒形状の傘部12Aと、この傘部12Aの下側に設けられた支持壁部12Bと、傘部12Aの上部に上方へ突出するように設けられ、支持軸16を垂直上方へ突出した状態に保持する円筒状の保持部12Cとを備えている。支持壁部12Bには、両側へ水平に突出した回転支軸17が設けられ、各車輪14,14が該支持壁部12Bを挟んで該回転支軸17に回転自在に配設されている。そしてキャスター10は、図4に示すように、平面視における形状が略矩形となっており、平面視において支持軸16を中心とする最大半径が、支持体12の角部までの距離(以降「最大半径L」という)となっている。
【0015】
実施例の移動規制具20は、図1および図2に示すように、床面19に設置されたキャスター10の水平方向三方を囲む第1規制部30と、この第1規制部30の上側に設けられて、第1状態および第2状態に切り替え可能な第2規制部40とを備えている。実施例の移動規制具20は、第2規制部40の第1状態(図3参照)においては、第1規制部30に対するキャスター10の挿脱を許容し、該第2規制部40の第2状態(図1、図4参照)においては、該キャスター10の周りを囲むように配置された第1規制部30および該第2規制部40によって該キャスター10を移動規制するよう構成されている。なお、第1規制部30は、マット28を介して床面19に設置される台部21に設けられていると共に、第2規制部40は、後述するロック部材34に設けられている。
【0016】
前記台部21は、図1、図2および図4に示すように、外郭形状が略矩形でかつ全体が平坦に形成された設置部22を有し、この設置部22から上方へ突出して、円筒形状に形成された筒体部23が、該台部21に設けられている。設置部22は、矩形状をなす四辺のうちの一辺に、筒体部23に設けた挿通口26に連通する切り欠き部22Aが形成されており、該設置部22は、筒体部23の挿通口26を除く三方を囲むように形成されている。切り欠き部22Aの幅は、挿通口26と同じで、キャスター10の全幅W2(図3参照)より大きく設定されている。そして設置部22は、その下面22Bに配設されたマット28の自己粘着力を利用して床面19に設置されて、第1規制部30が設けられた筒体部23を該床面19に保持するようになっている。
【0017】
筒体部23は、図1〜3に示すように、床面19に設置されたキャスター10の水平方向三方を囲み得ると共に該水平方向の残りの一方が該キャスター10を挿通可能に開口するよう形成され、設置部22から上方へ突出した状態で形成されている。この筒体部23は、設置部22(台部21)から上方へ略垂直に突出した円筒形状に形成された側壁部24と、該側壁部24の上端から水平かつ平坦に形成され、該設置部22と平行に延在する頂壁部(第1板部)25とから構成されている。そして筒体部23は、キャスター10の支持体12および各車輪14,14を内部に収納し得る高さおよび直径に形成されている。筒体部23における側壁部24の内径は、図4に示すように、キャスター10の前述した最大半径Lの2倍以上に設定されている。また、筒体部23の周囲四方における側壁部24が形成されていない残りの一方は、キャスター10を挿通可能な略矩形の前記挿通口26が形成されている。この挿通口26の水平方向における開口幅W1(図2参照)は、キャスター10の全幅W2(図3参照)よりも適宜大きく設定されており、該キャスター10の挿通が許容される。
【0018】
台部21における設置部22の下面22Bには、図1および図2に示すように、該台部21を床面19に貼り付けるマット28が配設されている。このマット28は、例えば熱可塑性エラストマやゴム等からシート状に形成され、ゲル状をなすものが好適に使用される。これによりマット28は、粘弾性を有しており、防振性を備えると共に、衝撃吸収性等も兼ね備えている。またマット28は、粘弾性を有しているのでマット上面28Aおよびマット下面28Bの両面に自己粘着性を有しており、前記台部21を床面19に貼り付けて設置することが可能である。従ってマット28は、台部21の下面22Bに密着するマット上面28Aを該下面22Bに密着させて押し付け、更に床面19に相対するマット下面28Bを該床面19に押し付けることで、床面19と台部21との摩擦力が大きくなるから、台部21を床面19に対して移動不能に設置し得る。またマット28は、マット上面28Aおよびマット下面28Bの両面に粘着剤が塗布され、この粘着剤の粘着力を利用して床面19および台部21に貼り付けるタイプも好適に実施可能である。なおマット28は、台部21のマット下面22Bと同じ輪郭形状に形成されて該マット下面22Bの全体に被着される単一のものを例示しているが、該マット下面22Bとは異なる形状であってもよい。また、配設数は、1つに限らず、複数であってもよい。
【0019】
頂壁部25は、図2、図4および図5(a)に示すように、挿通口26に臨む部分が直線状に切り欠かれて、平面視で略D字形に形成されている。そして頂壁部25には、該頂壁部25の中心から切り欠かれた部分に亘り径方向へ直線に延在する第1規制部30が設けられている。この第1規制部30は、頂壁部25の中心に位置する一端33が閉塞すると共に、他端が挿通口26の上部に開放する開口32を有する切り欠き形状に形成されている。そして第1規制部30は、キャスター10における支持体12の保持部12Cの直径より僅かに幅広に形成され、該保持部12Cが挿通した状態で径方向へ移動可能となっている。従って、キャスター10が挿通口26側から第1規制部30内へ移動する際に、支持軸16が該第1規制部30を介して頂壁部25から上方へ延出した状態で移動するようになる(図3参照)。すなわち第1規制部30は、キャスター10の支持体12における保持部12Cの水平方向三方を囲み得ると共に、該水平方向の残りの一方が該保持部12Cを挿通可能に開口するよう構成されている。
【0020】
なお、図5(b)に示すように、マット28を介して床面19に設置した第1規制部30の該床面19からの突出高さH1は、該床面19から本体18の底面18Aまでの高さ間隔Hより小さく設定されている。すなわち、第1規制部30の頂壁部25と本体18の底面18Aとの間には、高さH2の隙間Sが形成されるようになっている。
【0021】
図1〜図4に示すように、筒体部23の上側には、第1規制部30の上側に被せてロック部材34が着脱可能に設けられている。このロック部材34は、円形でかつ平坦状に形成された円板部(第2板部)35と、この円板部35の外周縁から下方へ延出する外周壁部36とを備えた円形の逆トレー形状に形成されている。外周壁部36の内径は、筒体部23における側壁部24の外径と略同じ寸法に設定されている。従ってロック部材34は、筒体部23の上側に被せて装着することで、頂壁部25の上側に円板部35が重なるように設けられると共に、該外周壁部36と該側壁部24とが摺接することで該筒体部23に対して、上下方向の軸周り、すなわち該筒体部23の上下方向に延在する中心軸の軸周りに回転可能となっている。またロック部材34には、図2および図3に示すように、外周壁部36に、筒体部23に設けた前述の挿通口26と略同じ幅の切り欠き部37が形成されている。
【0022】
ロック部材34の円板部35には、該円板部35の中心から該円板部35の外周縁に亘って直線に延在する第2規制部40が設けられている。この第2規制部40は、円板部35の中心に位置する一端43が閉塞すると共に、他端が切り欠き部37の上部に開放する開口42を有する切り欠き形状に形成されている。そして第2規制部40は、キャスター10における支持体12の保持部12Cの直径より僅かに幅広に形成され、該保持部12Cが挿通した状態で径方向へ移動可能となっている。また第2規制部40は、図3に示すように、筒体部23の上側に取り付けたロック部材34を、該筒体部23の中心軸周りに回転させて、挿通口26に切り欠き部37が整合した状態において、第1規制部30の上側に整合する関係で形成されている。すなわち第2規制部40は、キャスター10の支持体12における保持部12Cまたは支持軸16の水平方向三方を囲み得ると共に、該水平方向の残りの一方が該保持部12Cを挿通可能に開口するよう構成されている。
【0023】
ロック部材34は、図5(a)に示すように、円板部35の上面から外周壁部36の下端までの厚さ寸法H3が、筒体部23の頂壁部25と本体18の底面18Aとの形成される隙間Sの高さH2より小さくように形成され、該隙間Sより薄く設定されている。従ってロック部材34は、前記支持軸16を第2規制部40に挿通させながら、隙間Sを介して第1規制部30の上側に対して着脱可能に構成されている。
【0024】
このような実施例の移動規制具20は、筒体部23の上側に被せて取り付けたロック部材34が、筒体部23の側壁部24に該ロック部材34の外周壁部36が係合することで、水平方向へ移動することなく筒体部23の上側に取り付けられる。そして、ロック部材34を筒体部23の中心軸周りに回転させることで、第2規制部40が、第1規制部30に整合して該第1規制部30の開口32を開放する第1状態(図3)と、該第2規制部40が該第1規制部30と整合しなくなって該第1規制部30の開口32を塞ぐ第2状態(図1、図4)とに変位するように構成されている。なお実施例では、第2規制部40の第2状態は、ロック部材34を180度変位させた位置とされ、第2規制部40の開口42と第1規制部30の開口32とが反対向きとなっている。すなわち、第2規制部40の第1状態では、第1規制部30の周囲四方における一方が開放されて、該第1規制部30に対するキャスター10の保持部12Cの挿脱を許容し、筒体部23に対する該キャスター10の挿脱が可能である。また、第2規制部40の第2状態では、第1規制部30および該第2規制部40によりキャスター10の保持部12Cの周りを囲むようになると共に、ロック部材34が筒体部23に保持されるから、キャスター10の保持部12Cの移動を規制して筒体部23に対する該キャスター10の挿脱を不能とする。
【0025】
なお、第2規制部40が設けられたロック部材34を第1規制部30の上側から取り外した場合でも、第1規制部30の開口32が開放されるので、該第1規制部30に対するキャスター10の保持部12Cの挿脱が可能である。
【0026】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る移動規制具20の作用について説明する。
【0027】
実施例の移動規制具20は、台部21における筒体部23の上側にロック部材34を被せて取り付けると共に、該ロック部材34を筒体部23の中心軸周りに回転させて第2規制部40を第1状態とする。これにより、第2規制部40と第1規制部30とが、上下で整合して同じ向きとなるので、該第1規制部30の開口32が開放した状態とする。
【0028】
そして、第2規制部40を第1状態としたもとで、台部21をキャスター10の周囲にセットする。すなわち、筒体部23に設けた挿通口26をキャスター10の支持体12に整合させると共に、第1規制部30の開口32および第2規制部40の開口42を該キャスター10の保持部12Cまたは支持軸16に整合させたもとで、キャスター10を筒体部23の内部へ挿入して、該筒体部23を該キャスター10に被せるようにする。キャスター10が筒体部23の内部に収容されると共に、第1規制部30の一端33に保持部12Cが位置したら、台部21の設置向きを適宜調整した後、台部21をマット28の自己粘着力を利用して床面19に装着する。なお、筒体部23の側壁部24の内径がキャスター10の最大半径Lの2倍以上に設定されているので、キャスター10に対する台部21の向きを自由に調整し得る。
【0029】
床面19の所定位置に対して前記本体18の位置決めが完了したら、図4に示すように、筒体部23の上側に取り付けたロック部材34を、筒体部23の上下方向に延在する中心軸周りに180度回転させて、第2規制部40を第2状態とする。これにより、第1規制部30および該第2規制部40によりキャスター10の保持部12Cの周りを囲むようになるから、キャスター10の保持部12Cの移動が規制され、該キャスター10が筒体部23内に移動不能に保持される。
【0030】
なお、ロック部材34が、隙間Sの高さH2より薄く形成されているので、図5(a)および図5(b)に示すように、第1規制部30が設けられた台部21だけを先ずキャスター10に装着し、次いで第2規制部40が設けられたロック部材34を、該台部21に設けた筒体部23の上側に取り付けるようにすることも可能である。すなわち、先ずキャスター10の周囲に台部21をセットし、台部21をマット28の自己粘着力を利用して床面19に装着してキャスター10に対する第1規制部30の位置決めが完了したら、本体18の底面18Aと筒体部23の頂壁部25との隙間Sに対し、ロック部材34を挿入させる。この際に、第2規制部40の開口42をキャスター10の支持軸16に整合させることで、ロック部材34が筒体部23の上方へ挿入される。隙間Sへ挿入されたロック部材34は、下方へ移動させることで筒体部23の上側に取り付けられる。そして、第2規制部40が第2状態となるようにロック部材34を筒体部23の中心軸周りに回転させることで、第1規制部30および該第2規制部40によりキャスター10の保持部12Cの周りを囲むようになるから、キャスター10の保持部12Cの移動が規制され、該キャスター10が筒体部23内に移動不能に保持される。
【0031】
なお、ロック部材34は、本体18の底面18Aと筒体部23の頂壁部25との隙間Sに対して挿入した後、第2規制部40が第2状態となるように回転させてから筒体部23の上側に取り付けるようにしてもよい。すなわち、ロック部材34を、第2規制部40の開口42をキャスター10の支持軸16に整合させた状態で隙間Sに対して挿入し、該ロック部材34を支持軸16の上下方向に延在する中心軸周りに回転させた後に、該ロック部材34を筒体部23の上側に取り付ける。このような順序でロック部材34を筒体部23の上側に取り付けても、第1規制部30および該第2規制部40によりキャスター10の保持部12Cの周りを囲むようになるから、キャスター10の保持部12Cの移動が規制され、該キャスター10が筒体部23内に移動不能に保持される。
【0032】
また、ロック部材34が隙間Sの高さH2より薄く形成されているので、ロック部材34は、筒体部34から隙間Sへ上昇させると共に水平に移動させれば、該筒体部23から取り外すことが可能である。このようにロック部材34を筒体部23から取り外すと、第1規制部30の開口32が開放されるので、台部21をキャスター10から取り外したり、該台部21の筒体部23から該キャスター10を外側へ移動させることが可能となる。
【0033】
実施例の移動規制具20では、キャスター10の保持部12Cの周りを囲むように配置された第1規制部30および第2規制部40によって、該キャスター10を移動規制する構成であるので、1つの当該移動規制具20によりキャスター10における水平方向の全ての移動を適切に規制することができる。また、ロック部材34を、筒体部23に対して該筒体部23の中心軸周りに回転させて、第2規制部40を第1状態と第2状態とに切り替えるだけの簡単な操作により、キャスター10の挿脱および該キャスター10の移動規制を行なうことができる。
【0034】
しかも、筒体部23の頂壁部25に設けた第1規制部30およびロック部材34の円板部35に設けた第2規制部40は、一端が閉塞すると共に他端が側方に開口する簡単な切り欠き形状に構成されているから、加工が容易で製造コストが嵩まない。
【0035】
また、実施例の移動規制具20は、ロック部材34を、本体18の底面18Aと第1規制部30が設けられた筒体部23の頂壁部25との間の隙間Sを介して着脱し得るので、床面19に対する設置作業を簡単に行なうことができる。しかも、第2規制部40が設けられたロック部材34を取り外すだけで、キャスター10の第2方向への移動が許容され、本体18を移動させることができる。
【0036】
また、実施例の移動規制具20によれば、第1規制部30が設けられた台部21の床面19への設置作業や、第2規制部40が設けられたロック部材34の筒体部23への設置作業に際して工具が不要であるから、専門知識や専門技術を要することなく移動規制具20の設置作業を行なうことができる。そして、移動規制の対象となるキャスター10の形状やサイズが異なっていても、該キャスター10の移動規制を適切に行なうことができる。更に、第1規制部30が設けられた台部21や、第2規制部40が設けられたロック部材34を、インジェクション成形による合成樹脂製の成形部材で構成することも可能であり、軽量化やコストダウンも図り得る。
【0037】
〔変更例〕
本願の移動規制具は、実施例に例示した形態に限定されず、様々に変更が可能である。
(1)第2規制部40の第2状態は、第1規制部30に対して180度に回転した位置に限定されず、該第2規制部40が第1規制部30の開口32を閉じた状態とすればよく、例えば90度に回転した位置や、90度以下または90度以上に回転した位置であってもよい。
(2)第2規制部40は、上下方向の軸周りに回転するものに限らず、直線的または曲線的にスライド移動することで、第1規制部30の開口を開放した第1状態および塞ぐ第2状態に変位するものであってもよい。
(3)筒体部23の頂壁部25を該筒体部23の上端より下方に設けることを前提とし、ロック部材34の外周壁部36の外径を該筒体部23の側壁部24の内径より小径に形成して該外周壁部36が該側壁部24の内側に摺接するよう構成することで、該ロック部材34が筒体部23の上部内側に取り付けられるようにしてもよい。
(4)ロック部材34は、第2規制部40を第1状態および第2状態に変位させることが可能であれば、台部21から取り外しが不能な形状であってもよい。
(5)第1規制部30は、直線状に延在する切り欠き形状に限らず、曲線状に延在する切り欠き形状や、所要の角度で屈曲して延在する切り欠き形状等であってもよい。
(6)第1規制部30は、筒体部23の側壁部24に設けると共に、第2規制部40は、ロック部材34の外周壁部36に、該第1規制部30と整合可能な位置に設けてもよい。
(7)マット28は、粘弾性を有するゲル状の材料から形成されたものに限るものではなく、マット上面28Aおよびマット下面28Bの両面に粘着剤を備えたものであれば様々な材質のものが実施可能である。
(8)移動規制具20による固定対象としての支持脚部は、実施例で例示したキャスター10に限らず、棒状の脚部やボルト等の様々な形態のものが対象とされる。
(9)移動規制具20による固定対象としての支持脚部は、本体18の底面18Aに配設されて該本体18の真下に設けられたものに限らず、本体18の底面18Aから側方へ外れた部位、すなわち本体18から側方へ突出して上方が開放している部位に設けられたものであってもよい。このような支持脚部であっても、前記第2規制部40の開口42をキャスター10の支持軸16に整合させることで、ロック部材34を筒体部23に対して上方から着脱することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 キャスター(支持脚部),18 本体,18A 底面,19 床面,22 台部
25 頂壁部(第1板部),28 マット,30 第1規制部,32 開口,34 ロック部材
35 円板部(第2板部),40 第2規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を床面から離した状態で支持する支持脚部を移動規制する移動規制具において、
両面が粘着性を有するマットで床面に貼り付けて設置される台部と、
前記台部に設けられ、前記床面に設置された前記支持脚部の水平方向三方を囲み得ると共に該水平方向の残りの一方が該支持脚部を挿通可能に開口するよう形成された第1規制部と、
前記第1規制部の上側に設けられ、前記第1規制部の開口を開放する第1状態と該第1規制部の開口を塞ぐ第2状態とに切り替え可能な第2規制部とを備え、
前記第2規制部の第1状態において前記第1規制部に前記支持脚部を挿脱し、該第2規制部の第2状態において該支持脚部の周りを囲むように配置された第1規制部および第2規制部によって支持脚部を移動規制するよう構成した
ことを特徴とする移動規制具。
【請求項2】
前記第2規制部は、前記第1規制部の上側に上下方向の軸周りに回転するよう取り付けられ、該第2規制部を第1規制部に対して回転して前記第1状態と第2状態とに切り替える請求項1記載の移動規制具。
【請求項3】
前記支持脚部は、前記本体の底面に設けられ、
前記第2規制部が設けられ、前記第1規制部の上側に被せて取り付けられるロック部材は、前記第1規制部の上面と前記本体の底面との隙間より薄く設定され、
前記ロック部材は、前記隙間を介して前記第1規制部の上側に着脱可能に構成された請求項1または2記載の移動規制具。
【請求項4】
前記第1規制部は、前記台部の上側に該台部と並行するよう延在する第1板部に、一端が閉塞すると共に他端が側方に開口する切り欠き形状で形成され、
前記第2規制部は、前記第1板部の上側に重なるよう設けられた第2板部に、前記第1状態において前記第1規制部に整合する切り欠き形状で形成される請求項1〜3の何れか一項に記載の移動規制具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78494(P2013−78494A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220537(P2011−220537)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】