説明

移動距離算出装置、移動距離算出システム、移動距離算出プログラム、及び移動距離算出方法

【課題】複数の移動距離算出装置で計測対象の移動距離を計測する移動距離算出システムであって、省エネルギー性に優れ、障害にも耐性のある構成を提供する。
【解決手段】移動距離算出システムを構成するプロッタ装置11a〜11cは、記憶部と、通信部と、制御部と、を備える。記憶部は、移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、開始時刻から計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶する。通信部は、計測情報をプロッタ装置11a〜11c同士で送受信する。制御部は、通信部が受信した計測情報を記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する計測情報を、開始時刻及び計測時刻に基づいて重複する計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、複数の移動距離算出装置で計測対象の移動距離を計測する移動距離算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、互いに接続された複数の舶用機器で構成されるネットワークシステムが知られている。特許文献1及び2は、この種のネットワークシステムを開示する。
【0003】
特許文献1のネットワークシステムには、複数の端末が接続されている。それぞれの端末は、クライアントとして動作する状態とサーバとして動作する状態とを切替可能に構成されている。この構成により、例えばサーバとして動作する端末がダウンした場合でも、クライアントとして動作していた端末がサーバとして動作するように切り替わることで、ネットワークシステムを維持することができる。
【0004】
特許文献2のネットワークシステムには、複数種類のセンサ(レーダアンテナ、GPSアンテナ、魚群探知機等)及び複数の表示器が接続されている。それぞれの表示器は、複数種類のセンサからデータを受信して、当該データに基づく画像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−38503号公報
【特許文献2】特開2002−328159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のネットワークシステムにおいて、複数のプロッタ装置を含む構成が知られている。このネットワークシステムにおいて、例えば船舶の総移動距離を計測する場合、複数あるプロッタのうち例えば1台のプロッタ装置が総移動距離を計測するものとし、そのように設定したプロッタ装置(以下、総距離計測プロッタと呼ぶことがある)を航海中は常に稼動させることで、船舶の総移動距離を計測させることが考えられる。
【0007】
しかし、この構成では、総距離計測プロッタにおいて他の機能が特に必要ない状況になっても、総移動距離の計測のためだけに常に稼動させる必要がある。そのため、省エネルギー性に限界があった。また、総距離計測プロッタの稼動を停止させることが難しいので、機器のメンテナンスを柔軟に行うことが困難になってしまっていた。一方で、総距離計測プロッタが故障した場合、船舶の総移動距離を示す情報がそれだけで失われてしまうことになり、システムの信頼性の点でも改善が望まれていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、複数の移動距離算出装置で計測対象の移動距離を計測する移動距離算出システムであって、省エネルギー性に優れ、障害にも耐性のある構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の移動距離算出装置が提供される。即ち、この移動距離算出装置は、記憶部と、通信部と、制御部と、を備える。前記記憶部は、移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶する。前記通信部は、他の移動距離算出装置と前記計測情報の送受信を行う。前記制御部は、前記通信部が受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する。
【0011】
これにより、特定の移動距離算出装置を常に稼動させることなく総移動距離を算出することができる。従って、稼動させる移動距離算出装置を状況に応じて柔軟に切り換えることが可能となるので、省エネルギー性に優れ、メンテナンスの自由度が高いシステムを実現することができる。また、時間的に重複する計測情報を単純に除外した上で積算が行われるので、総移動距離の計算処理を簡素化できる。更には、複数の移動距離算出装置で計測情報をやり取りする構成であるので、ある装置に不具合が発生した場合においても総移動距離の情報が失われにくくなり、信頼性の高いシステムを提供することができる。
【0012】
前記の移動距離算出装置においては、前記制御部は、一方の前記計測情報が他方の前記計測情報を包含する場合、当該他方の前記計測情報を前記記憶部から削除することが好ましい。
【0013】
これにより、不要な計測情報が記憶部から削除されるので、記憶部の記憶容量を抑えることができる。
【0014】
前記の移動距離算出装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動距離算出装置は、起動時に、他の移動距離算出装置が稼動中か否かを検出する。そして、移動距離算出装置は、他の移動距離算出装置が稼動中であれば、当該他の移動距離算出装置が記憶する前記計測情報の取得を行う。
【0015】
これにより、移動距離算出装置は、自装置の稼動停止中の移動距離を稼動開始時に取得することができるので、正確な総移動距離を素早いタイミングで把握することができる。
【0016】
前記の移動距離算出装置においては、前記通信部は、前記記憶部の内容が更新されたときに、当該更新内容を他の移動距離算出装置へ送信することが好ましい。
【0017】
これにより、例えばGNSSセンサからの信号をある移動距離算出装置のみが上手く取得できない場合であっても、他の移動距離算出装置が計測した最新の移動距離を取得することができる。
【0018】
前記の移動距離算出装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記記憶部は、前記計測対象の総移動距離を記憶している。前記制御部は、算出した総移動距離を用いて、前記記憶部が記憶する総移動距離を更新する。
【0019】
これにより、最新の総移動距離を記憶部に記憶することができる。従って、記憶部が記憶する総移動距離を表示部等に表示することで、最新の総移動距離をユーザに知らせることができる。
【0020】
前記の移動距離算出装置においては、船舶に搭載され、当該船舶の移動距離を算出することが好ましい。
【0021】
これにより、船舶に搭載される移動距離算出装置において、省エネルギー性に優れたシステムを実現することができる。
【0022】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の移動距離算出システムが提供される。即ち、この移動距離算出システムは、複数の移動距離算出装置を備える。それぞれの前記移動距離算出装置は、記憶部と、通信部と、制御部と、を備える。前記記憶部は、移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶する。前記通信部は、前記計測情報を前記移動距離算出装置同士で送受信する。前記制御部は、前記通信部が受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する。
【0023】
これにより、複数の機器で個別に移動距離を計測する場合であっても、全ての機器を常に稼動させることなく総移動距離を算出可能な移動距離算出システムを構築することができる。従って、省エネルギー性に優れ、メンテナンスの自由度が高い移動距離算出システムを実現することができる。
【0024】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の移動距離算出プログラムが提供される。即ち、この移動距離算出プログラムは、移動距離算出装置が備えるコンピュータに、記憶手順と、通信手順と、制御手順と、を実行させる。前記記憶手順では、移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶部に記憶する。前記通信手順では、他の移動距離算出装置と前記計測情報の送受信を行う。前記制御手順では、前記通信手順で受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する。
【0025】
これにより、複数の機器で個別に移動距離を計測する場合であっても、全ての機器を常に稼動させることなく総移動距離を算出することができる。従って、省エネルギー性に優れ、メンテナンスの自由度が高いシステムを実現することができる。
【0026】
本発明の第4の観点によれば、以下の移動距離算出方法が提供される。即ち、この移動距離算出方法は、記憶工程と、通信工程と、制御工程と、を含む。前記記憶工程では、移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶部に記憶する。前記通信工程では、他の装置と前記計測情報の送受信を行う。前記制御工程では、前記通信工程で受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する。
【0027】
これにより、複数の機器で個別に移動距離を計測する場合であっても、全ての機器を常に稼動させることなく総移動距離を算出することができる。従って、省エネルギー性に優れ、メンテナンスの自由度が高いシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】移動距離算出システムの全体的な構成を示すブロック図。
【図2】各プロッタ装置の稼動状況及び記憶部に記憶される情報を示す図。
【図3】各プロッタ装置の稼動状況及び送受信される情報を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態を説明する。初めに、図1を参照して、移動距離算出システム1の構成について説明する。図1は、移動距離算出システム1の全体的な構成を示すブロック図である。
【0030】
移動距離算出システム1は、船舶に搭載され、当該船舶の移動距離を計測するためのシステムである。図1に示すように、移動距離算出システム1は、GPSアンテナ12と、プロッタ装置(移動距離算出装置)11a〜11cと、を備える。
【0031】
プロッタ装置11a〜11c及びGPSアンテナ12は、計測した情報等を、舶用ネットワーク10を介して互いに送受信することができる。舶用ネットワーク10の規格としては、例えばLAN(Local Area Network)やCAN(Controller Area Network)を採用することができる。
【0032】
GPSアンテナ12は、GPS衛星(GNSS衛星)からの測位信号を受信し、当該測位信号に基づいて、自船の位置(詳細にはGPSアンテナ12の位置)を求める。GPSアンテナ12は、求めた自船の位置を、舶用ネットワーク10を介して、プロッタ装置11a〜11cへ出力する。
【0033】
プロッタ装置11a〜11cは、図1に示すように、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、表示部24と、をそれぞれ備える。
【0034】
制御部21は、GPSアンテナ12から受信した自船の位置の時間変化に基づいて当該自船の移動距離を計測する。制御部21は、自船の位置、航跡、及び移動距離等を海図と重ね合わせて表示部24に表示することができる。また、制御部21は、プロッタ装置が稼動停止中における自船の移動距離等を他のプロッタ装置から取得して、総移動距離を算出することができる(詳細は後述)。
【0035】
記憶部22は、海図情報に加え、自船の移動距離の計測結果(計測情報)、及び当該計測情報に基づいて制御部21が算出した総移動距離を記憶している。
【0036】
通信部23は、他の舶用機器とデータの送受信が可能である。具体的には、通信部23は、GPSアンテナ12から位置情報を受信する処理や他のプロッタ装置から自船の計測情報を送受信する処理等を行う。
【0037】
表示部24は、液晶ディスプレイ等であり、制御部21が作成した画像を表示する。
【0038】
次に、プロッタ装置11a〜11cを用いて自船の総移動距離を求める方法について説明する。
【0039】
前述のように、複数のプロッタ装置を備えるシステムにおいて自船の総移動距離を計測する場合、従来は、所定のプロッタ装置(総距離計測プロッタ)を常に稼動させる必要があり、この総距離計測プロッタを航海中に交替させることができなかった。これに対して本実施形態の移動距離算出システム1は、航海時においてプロッタ装置11a〜11cのうち少なくとも何れか1つが稼動した状態を維持できれば、プロッタ装置の稼動/停止の状態が航海中に切り替わったとしても総移動距離を計測することができる。
【0040】
以下、稼動するプロッタ装置が交替するときに各プロッタ装置で行われる処理について図2及び図3を参照して説明する。図2及び図3は、プロッタ装置11a〜11cの稼動状況等を示す図である。
【0041】
図2及び図3において、横軸は時間であり、図2には時刻t1から時刻t5までの状況を示しており、図3には時刻t6以降の状況を示している。また、各プロッタ装置の右側に描かれている矢印は、当該プロッタ装置がその時間帯において稼動したことを示している。図2を参照すれば、例えばプロッタ装置11aは時刻t1から時刻t2まで稼動しており、その後は稼動していないことがわかる。
【0042】
また、図2においては、それぞれの時間区間における船舶の移動距離が時刻の上方に示されている。なお、図2に示す時刻t2から時刻t2’の間は停泊中であり、船舶は移動していない。
【0043】
各プロッタ装置は、稼動を開始すると、(計測の開始時刻、現在時刻(計測時刻)、開始時刻から現在時刻までに移動した距離)で構成される計測情報を作成し、それぞれ自装置の記憶部22に記憶し、当該計測情報を更新する処理を繰り返す。そのため、稼動停止後において各プロッタ装置の記憶部22には、(計測の開始時刻、計測の終了時刻(計測時刻)、開始時刻から終了時刻までに移動した距離)で構成される計測情報が記憶されていることになる。
【0044】
図2に示すように、時刻t1から時刻t2までの間は、プロッタ装置11aのみが稼動している。このとき、プロッタ装置11aは、上述の計測情報を作成して更新していく。
【0045】
時刻t2になってプロッタ装置11aの稼動が停止したとき、プロッタ装置11aの記憶部22には、(t1,t2,L1)という計測情報が記憶されている。この計測情報は、時刻t1から時刻t2まで計測を行った結果、船舶の移動距離がL1であったことを示している。以下、この計測情報を計測情報D1と称する。
【0046】
時刻t2から時刻t2’になるまでは、船舶は停泊中であり、全てのプロッタ装置が稼動していない。
【0047】
時刻t2’になると、プロッタ装置11bが起動する。プロッタ装置11bは、起動時(起動直後も含むものとする)において、他のプロッタ装置が稼動中か否かを検出する処理を行う。時刻t2’の時点では他のプロッタ装置は稼動していないため、プロッタ装置11bは、特に処理を行わない。そして、プロッタ装置11bは、上述の計測情報を作成して更新していく。
【0048】
時刻t3になると、プロッタ装置11cが起動する。プロッタ装置11cは上記と同様に、起動時において他のプロッタ装置が稼動中か否かを検出する処理を行う。そして、プロッタ装置11bが稼動していることを検出すると、プロッタ装置11bから計測情報を取得する。ここでプロッタ装置11cが取得する計測情報は、時刻t3の時点におけるプロッタ装置11bの記憶部22の内容に基づくので、(t2’,t3,L21)ということになる。
【0049】
プロッタ装置11cは、プロッタ装置11bから取得した計測情報を考慮して計測情報を作成する。具体的には、プロッタ装置11cは、自装置が行った計測結果と、プロッタ装置11bがt2’からt3までに行った計測結果と、を1つにまとめた形で計測情報を再作成し、当該計測情報を記憶部22に記憶する。このマージ処理の後、プロッタ装置11cが稼動中において作成する計測情報は、(t2’,tx,Lx)ということになる。なお、txは、「t3<tx<t5」を満たす時刻であり、Lxはt2’からtxまでの間に自船が移動した距離である。
【0050】
時刻t4になると、プロッタ装置11bの稼動が停止する。この時点で、プロッタ装置11bの記憶部22には(t2,t4,L2)という計測情報が記憶されている。以下、この計測情報を計測情報D2と称する。
【0051】
時刻t5になると、プロッタ装置11cの稼動が停止する。この時点で、プロッタ装置11cの記憶部22には(t2,t5,L3)という計測情報が記憶されている。以下、この計測情報を計測情報D3と称する。
【0052】
次に、プロッタ装置11a、プロッタ装置11b、プロッタ装置11cの順に起動したときにやり取りされる情報について、図3を参照して説明する。なお、時刻t5以降、船は停泊しているものとする。
【0053】
時刻t6の時点でプロッタ装置11aが起動する。プロッタ装置11aは、起動後に他のプロッタ装置が稼動中か否かを検出する処理を行う。しかし、他のプロッタ装置は稼動していないため、特に処理を行わない。
【0054】
次に、時刻t7の時点でプロッタ装置11bが起動する。プロッタ装置11bは、起動後に他のプロッタ装置が稼動中か否かを検出する処理を行う。そして、プロッタ装置11aが稼動していることを検出すると、プロッタ装置11aと計測情報の交換を行う。即ち、プロッタ装置11bは、プロッタ装置11aから計測情報D1を受信するとともに、プロッタ装置11aへ計測情報D2を送信する。これにより、プロッタ装置11a,11bは、相手が作成した計測情報を取得することができる。
【0055】
次に、時刻t8の時点でプロッタ装置11cが起動する。プロッタ装置11cは、起動後に他のプロッタ装置が稼動中か否かを検出する処理を行う。そして、プロッタ装置11a,11bが稼動していることを検出すると、プロッタ装置11a,11bと計測情報の交換を行う。即ち、プロッタ装置11cは、プロッタ装置11a,11bへ計測情報D3を送信するとともに、プロッタ装置11b(又はプロッタ装置11a)から計測情報D1及び計測情報D2を受信する。これにより、各プロッタ装置は、他のプロッタ装置が作成した計測情報を取得することができる。
【0056】
次に、取得した計測情報D1〜D3に基づいて、総移動距離を算出する方法について説明する。なお、この総移動距離の計算は、3台のプロッタ装置11a〜11cの何れにおいても行うことができる。
【0057】
プロッタ装置の制御部21は、初めに、計測情報の計測開始時刻及び計測終了時刻に基づいて、取得した計測情報の重複関係をチェックする。これにより、制御部21は、計測情報D2の対象となっている時間区間(t2’からt4まで)が、計測情報D3の時間区間(t2’からt5まで)に包含されることを検出する。従って、制御部21は、重複する計測情報である計測情報D2を除外しつつ、計測情報D1及びD3の移動距離を積算する。以上により、自船の総移動距離を(L1とL3の和として)得ることができる。また、制御部21は、算出した総移動距離を用いて、記憶部22が記憶する総移動距離を更新する処理を行う。
【0058】
なお、制御部21は、計測情報の包含関係を検出した場合、包含される側の情報を削除して、記憶部22の記憶容量を圧迫しないように配慮している。具体的に言えば、本実施形態では計測情報D2が計測情報D3に含まれていて、総移動距離の算出のために必要でないことが時刻t8の時点でわかるため、当該計測情報D2が記憶部22から削除されることになる。この結果、記憶容量の小さい記憶部22を使用することができ、プロッタ装置11a〜11cの低コスト化を実現できる。
【0059】
また、各プロッタ装置は、他のプロッタ装置が移動距離を上手く計測できないことを検出したときに、自身の計測情報を当該他のプロッタ装置へ送信する構成であっても良い。この場合、記憶部22が更新される毎に他のプロッタ装置へ計測情報を送信することにより、当該他のプロッタ装置に最新の移動距離を把握させることができる。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態のプロッタ装置11a〜11cは、記憶部22と、通信部23と、制御部21と、を備える。記憶部22は、移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、開始時刻から計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶する。通信部23は、計測情報をプロッタ装置11a〜11c同士で送受信する。制御部21は、通信部23が受信した計測情報を記憶部22に記憶し、当該記憶部22が記憶する計測情報を、開始時刻及び計測時刻に基づいて重複する計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する。
【0061】
これにより、特定のプロッタ装置を常に稼動させることなく総移動距離を算出することができる。従って、稼動させるプロッタ装置11a〜11cを状況に応じて柔軟に切り換えることが可能となるので、省エネルギー性に優れ、メンテナンスの自由度が高いシステムを実現することができる。また、時間的に重複する計測情報を単純に除外した上で積算が行われるので、総移動距離の計算処理を簡素化できる。更には、複数のプロッタ装置11a〜11cで計測情報をやり取りする構成であるので、あるプロッタ装置に不具合が発生した場合においても総移動距離の情報が失われにくくなり、信頼性の高いシステムを提供することができる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0063】
移動距離算出システム1を構成するプロッタ装置は、2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。
【0064】
計測情報の計測時刻は、現在時刻又は計測終了時の時刻に限られない。例えば、所定時間毎に計測情報を更新する構成の場合、計測情報の更新時から次に更新されるまでの間は、初めの更新時における時刻が計測時刻となる。
【0065】
本実施形態では、プロッタ装置が移動距離を算出する構成であるが、移動距離の算出を主として行う装置に本発明を適用することもできる。
【0066】
上記実施形態では、GNSSの一例としてGPSを用いた実施例を説明したが、他のGNSSを用いる構成であっても良いことは勿論である。
【0067】
他の移動距離算出装置から計測情報を取得するタイミングは、起動時に限られず適宜のタイミングで行う構成であっても良い。
【0068】
総移動距離の算出を各プロッタ装置で行う構成に代えて、所定のプロッタ装置が総移動距離を計算し、他のプロッタ装置に送信する構成でも良い。
【0069】
移動距離の計測対象は船舶に限られず、例えば航空機や自動車等であっても良い。また、移動距離の算出方法もGNSSを利用する構成に限られない。例えば、自動車に本発明を適用する場合、車軸の回転数に比例して発生させたパルス信号を用いる等、適宜の方法で移動距離を算出することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 移動距離算出システム
10 舶用ネットワーク
12 GPSアンテナ
11a〜11c プロッタ装置(移動距離算出装置)
21 制御部
22 記憶部
23 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶する記憶部と、
他の移動距離算出装置と前記計測情報の送受信を行う通信部と、
前記通信部が受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する制御部と、
を備えることを特徴とする移動距離算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動距離算出装置であって、
前記制御部は、一方の前記計測情報が他方の前記計測情報を包含する場合、当該他方の前記計測情報を前記記憶部から削除することを特徴とする移動距離算出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の移動距離算出装置であって、
起動時に、他の移動距離算出装置が稼動中か否かを検出し、
他の移動距離算出装置が稼動中であれば、当該他の移動距離算出装置が記憶する前記計測情報の取得を行うことを特徴とする移動距離算出装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の移動距離算出装置であって、
前記通信部は、前記記憶部の内容が更新されたときに、当該更新内容を他の移動距離算出装置へ送信することを特徴とする移動距離算出装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の移動距離算出装置であって、
前記記憶部は、前記計測対象の総移動距離を記憶しており、
前記制御部は、算出した総移動距離を用いて、前記記憶部が記憶する総移動距離を更新することを特徴とする移動距離算出装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の移動距離算出装置であって、
船舶に搭載され、当該船舶の移動距離を算出することを特徴とする移動距離算出装置。
【請求項7】
複数の移動距離算出装置を備える移動距離算出システムであって、
それぞれの前記移動距離算出装置は、
移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶する記憶部と、
前記計測情報を前記移動距離算出装置同士で送受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する制御部と、
を備えることを特徴とする移動距離算出システム。
【請求項8】
移動距離算出装置が備えるコンピュータに、
移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶部に記憶する記憶手順と、
他の移動距離算出装置と前記計測情報の送受信を行う通信手順と、
前記通信手順で受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する制御手順と、
を実行させる移動距離算出プログラム。
【請求項9】
移動距離の計測の開始時刻と、計測中の所定の時刻又は計測終了時の時刻である計測時刻と、前記開始時刻から前記計測時刻までの間に計測対象が移動した距離と、を含む情報である計測情報を記憶部に記憶する記憶工程と、
他の装置と前記計測情報の送受信を行う通信工程と、
前記通信工程で受信した前記計測情報を前記記憶部に記憶し、当該記憶部が記憶する前記計測情報を、前記開始時刻及び前記計測時刻に基づいて重複する前記計測情報を除外しつつ移動距離を積算することで、計測対象の総移動距離を算出する制御工程と、
を含むことを特徴とする移動距離算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−79817(P2013−79817A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218625(P2011−218625)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】