説明

移動農機

【課題】ロック機構にアクセス可能に形成したボンネットのシール機構を提供する。
【解決手段】ボンネットは、機体フレーム3に配設された機体側ロック部20に、ボンネット側に配設されたボンネット側ロック部が係脱することにより機体フレーム3にロック/解除されている。機体側ロック部20は、機体フレーム3の前壁部3aの上面3cにベース21が固定されることによって取付けられていると共に、上面3cには、ウェザーストラップを取付けるための前部取付プレート41が立設している。前部取付プレート41は、左右の前部取付プレート41L,41Rからなり、これら左右の取付プレートを、機体側ロック部の前方が開放されるように、離して配設している。作業者は、左右の前部取付プレート41L,41R間の開口部Aを介して、ボンネットが閉じた状態でもロック機構を目視したり、工具を差し込んでアクセスしたりすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの移動農機に係り、詳しくは駆動源を覆うボンネットのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボンネットに覆われた駆動源を、機体前方に搭載したトラクタなどの移動農機が広く知られている。このような移動農機において、ボンネットと機体フレームとの間には、雨水や作業中に飛散した泥土などがエンジンルーム内に入り込まないようにウェザーストラップなどシール部材が配設されている。このウェザーストラップ22,23は、従来、機体フレーム1aに立設した板部材に取付けられており、閉状態において、ボンネット2の周縁がウェザーストラップ22,23に押設されることによって、ボンネット2をシールしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1記載のトラクタは、機体フレーム1aの前端部に配設されたボンネットキャッチ17によって、ボンネット2を機体フレーム1aにロックしたり解除したりしているが、上記ウェザーストラップ22,23を取付ける板部材は、このボンネットキャッチ17の前方側においても立設している(引用文献1の図7参照)。
【0005】
そのため、上記ボンネットキャッチ17の係合を調節する際に、ボンネット2と機体フレーム1aとの間の隙間から、ボンネットキャッチ17を視認しようとしても、この板部材が邪魔になって直接視認することができず、その都度、ボンネットを開閉して調整作業を繰返すことになるという問題があった。
【0006】
また、上記板部材がボンネットキャッチ17の前方側で立設しているため、ボンネット2が閉じた状態においてボンネットキャッチ17にアクセスすることが困難であり、ボンネットキャッチの操作ワイヤーの切断などによって、ロックが解除できなくなった場合には、ボンネット2の一部に孔を明ける必要がある虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、シール部材を取付けるシール取付け部材を、ボンネットのロック機構の前方を開放するように立設させたことにより、上記課題を解決した移動農機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、機体フレーム(3)の前方側に搭載された駆動源(4)と、該駆動源(4)を覆うボンネット(2)と、該ボンネット(2)を前記機体フレーム(3)に固定するロック機構(30)と、を備え、前記ロック機構(30)は、前記機体フレーム(3)の前端部(3F)に設けられた機体側ロック部(20)と、前記ボンネット(2)の前壁部(2a)の内周側に設けられ、前記機体側ロック部(20)と係脱するボンネット側ロック部(10)と、を有する移動農機(1)において、
前記機体側ロック部(20)の前方を開放するように空隙部(A)を有して、前記機体フレーム(3)の前端部(3F)にシール取付け部(41)を立設し、該シール取付け部(41)に前記空隙部(A)を掛け渡すようにしてシール部材(42)を取付けてなる、
ことを特徴とする。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、機体フレームの前端部に立設されたシールの取付け部材を、機体側ロック部の前方を開放するように空隙部を有して形成したことにより、例えば、ロック機構の組立て時に、ボンネットを閉じた状態においても、ボンネットと機体フレームとの隙間から、上記取付け部材の空隙部を介して、ロック機構を直接、視認することができ、ボンネット側のロック部と機体側のロック部との係脱を容易に調節することができる。また、ロック機構の解除が困難になった場合、上記シール取付け部材の空隙部を介して直接、ロック機構にアクセスし、ロックを解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る移動農機の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る移動農機のロック機構を示す背面図。
【図3】本発明の実施形態に係る移動農機のロック機構を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態に係る移動農機のロック機構を示す側面図。
【図5】本発明の実施形態に係る移動農機のシール取付け部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面に沿って説明をする。図1に示すように、本発明に係る移動農機としてトラクタ1は、左右のクローラ走行装置5に支持された機体フレーム3を有しており、該機体フレーム3の前方には、ボンネット2に覆われたエンジン(駆動源)4が搭載されている。このボンネット2は、エンジン4の前方側を覆う前壁部2aと、エンジン4の左右側面を覆う側壁部2bと、エンジン4の上面を覆う上壁部2cと、が滑らかに連続して形成されており、側壁部2bの後端部を中心として上下に開閉自在となっている。
【0013】
また、エンジン4の後方側には、作業者が乗り込んで操向操作を行うキャビン6が設けられていると共に、このキャビン6の後方側には、ロータリ耕運機などを取付ける三点リンク機構(不図示)が設けられており、これにより、トラクタ1は、圃場を走行しつつ耕運作業ができるように構成されている。
【0014】
ついで、ボンネット2のロック機構30について説明をする。ボンネット2を機体フレーム3に固定するロック機構30は、図2乃至図4に示すように、機体フレーム3の前端部3Fに設けられた機体側ロック部20(図5も併せて参照)と、ボンネット2の前壁部2aの内周側に設けられたボンネット側ロック部10と、を備えて構成されている。
【0015】
上記ボンネット側ロック部10は、ボンネット2にボルト17に取付けられる固定プレート11、該固定プレート11に回転自在に取付けられる可動フック12、可動フック12に固設されると共に固定プレート11に形成された長孔11aに嵌挿される規制ピン12a、可動フック12を一方側に付勢するスプリング13、可動フック12をスプリング13の付勢力に抗して回動させるオープンワイヤ15などから構成されており、可動フック12の先端に形成された鉤形状のフックが、詳しくは後述する機体側ロック部20のピン22と係脱するラッチとなっている。
【0016】
一方、機体側ロック部20は、機体フレーム3の前壁部3aの上面3c(機体フレームの前端部3F)に配設されており、L字状に屈曲したベース21と、該ベース21から機体前方側に延設されるピン22と、から構成されている。このベース21は、機体フレーム3の上面3cにボルト23によって固設される取付面21bと、該取付面21bから上方に立上がる立上がり面21aと、を有しており、取付面21bには、ボルト23を嵌挿するための長孔21cが穿設されている。
【0017】
そして、上記ロック機構30は、ボンネット2が閉じられると、ボンネット側ロック部10の可動フック12が機体側ロック部20のピン22と係合してボンネット2を機体フレーム3に対してロックし、ボンネット2の側壁部2bに設けられたレバー14によってオープンワイヤ15を操作して、ボンネット2のロックを解除する構成となっている。
【0018】
また、上記固定プレート11の両端部には、ナットによってその上下方向位置を調節可能なストッパ16が取付けられており、このストッパ16を機体フレーム3の上面3cと当接することによって、ボンネット2と機体フレーム3との間の隙間Sを調整できるように構成されている。
【0019】
ついで、ボンネット2のシール機構44について説明をする。図4及び図5に示すように、機体フレーム3の前壁部3aの上面3c、側壁部3bの上面3dには、それぞれ、ウェザーストラップ(シール部材)42を取付けるための取付プレート(シール取付け部)41,43L,43Rが立設している。ウェザーストラップ42は、上記取付プレート41,43L,43Rに差し込まれる取付部42bと、円筒形に形成された当接部42aと、からなるゴム製のシールから構成されており、ボンネット2が閉じた状態において、該ボンネット2の下縁部分が当接部42aに対して押圧するように接触することによって、ボンネット2と機体フレーム3との間をシールしている。
【0020】
上記取付プレート41,43L,43Rの内、前壁部3aの上面3cに配設される前部取付プレート41は、同じく前壁部3aの上面3cに配設されている機体側ロック部20の前方が開放するように立設しており、この前部取付プレート41の開口部(空隙部)Aがロック機構30への接続口となっている。より詳しくは、前部取付プレート41は、上面3cの中央部に位置する機体側ロック部20を境にして左右の取付プレート41L,41Rから構成されており、これら左右の取付プレート41L,41Rは、機体中央部から機体外側に向かうにつれて機体後方側に向かって斜めに立設している。
【0021】
そして、これら左右の取付プレート41L,41Rは、その中央側端部の間の長さLが、ベース21の機体幅方向長さLよりも長く形成されており(L>L、図2及び図5参照)、これら左右の取付プレート41L,41Rの間によって、上記開口部Aが形成されている。なお、これら左右の取付プレート41L,41Rは、少なくとも、その中央部41L,41Rにおいては、機体幅方向(左右方向)に平行に延びており、これら平行に延びた中央部41L,41Rは、機体側ロック部20の前端部よりも機体前方側に位置している。
【0022】
また、これら左右の取付プレート41L,41Rには、上記開口部Aを掛け渡す形で一本のウェザーストラップ42が取付られ、左右の取付プレート41L,41Rを合わせてひとつの取付プレートとして使用される。
【0023】
ついで、本発明の実施形態に係るトラクタ1の作用について説明をする。作業者は、ロック機構30の組立てに際して、まず、ボンネット側ロック部10をボンネット2の前壁部2aの内周面に取付けると共に、ベース21を機体フレーム3の上面3cにボルト23によって仮止めする。そして、このベース21を仮止めした状態で、ボンネット2を閉め、ボンネット2及び機体フレーム3間の隙間S及び前部取付プレート41の開口部Aを介して、ボンネット側ロック部10の可動フック12と、機体側ロック部20のピン22との係合部を目視し、これらボンネット側ロック部10と機体側ロック部20との係合具合を確かめる。
【0024】
この時、ロック機構30の係合を調整する必要がある場合には、仮止めしてあるベース21を、ボルト23が嵌挿されている長孔21cの範囲内で移動させて調整し、ベース21の位置が決まるとボンネット2を開けてボルト23を本締めする。そして、このロック機構30の調整が終わると、取付プレート41,43L,43Rにウェザーストラップ42を取付け、ボンネット2の組付けを終了する。
【0025】
ところで、上記ロック機構30のロックを解除するオープンワイヤ15が腐食などによって切れ、レバー14を操作してもロックを解除できない場合には、作業者は、ボンネット2及び機体フレーム3間の隙間Sから棒状の工具を差し込む。そして、この棒状の工具により、前部取付プレート41の開口部Aに掛け渡されたウェザーストラップ42の下方側を押し退けると共に、該開口部Aを介してロック機構30にアクセスし、可動フック12とピン22の係合を工具によって強制的に解除する。
【0026】
このように、ロック機構30の前方側で立設するウェザーストラップ42の前部取付プレート41を、ロック機構30の前方側を避けるようにして立設させたことによって、ボンネット2を閉じた状態においても、前部取付プレート41の開口部Aを介してロック機構30にアクセスができるようになり、ロック機構の調節の際に係合部を直接目視しながら容易に調整作業を行うことができる。
【0027】
また、オープンワイヤ15が腐食などによって切れてしまった際にも、上記前部取付プレート41の開口部Aから工具を挿入することができ、ボンネット2に孔などを明けなくとも、ロック機構30のロックを解除することができる。
【0028】
なお、本実施形態において、前部取付プレート41を2つに分割して形成すると共に、これら左右の前部取付プレート41L,41Rを所定距離、離して配設することによって、ロック機構30の前方側に空隙部を形成したが、必ずしも前部取付プレート41を分割して形成する必要はなく、前部取付プレートのロック機構30(機体側ロック部20)の前方部分に孔や切欠きを形成して開口部としても良い。
【0029】
また、本実施形態では、トラクタについて説明をしたが、本発明は、田植え機などどのような移動農機に対しても当然に適用しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 移動農機(トラクタ)
2 ボンネット
2a 前壁部
3 機体フレーム
3F 前端部
4 駆動源(エンジン)
10 ボンネット側ロック部
20 機体側ロック部
30 ロック機構
41 シール取付け部(前部取付プレート)
42 シール部材(ウェザーストラップ)
A 空隙部(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームの前方側に搭載された駆動源と、該駆動源を覆うボンネットと、該ボンネットを前記機体フレームに固定するロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記機体フレームの前端部に設けられた機体側ロック部と、前記ボンネットの前壁部の内周側に設けられ、前記機体側ロック部と係脱するボンネット側ロック部と、を有する移動農機において、
前記機体側ロック部の前方を開放するように空隙部を有して、前記機体フレームの前端部にシール取付け部を立設し、該シール取付け部に前記空隙部を掛け渡すようにしてシール部材を取付けてなる、
ことを特徴とする移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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