説明

移動通信システム、ネットワーク装置及び移動通信方法

【課題】
ユーザ回線が利用される通信呼の使用料の少なくとも一部を還元するサービスの提供を可能とする移動通信システム、ネットワーク装置及び移動通信方法を提供する。
【解決手段】
移動通信システム100は、ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する。移動通信システム100は、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するように構成された回線判定部22と、ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するように構成された算出部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する移動通信システム、移動通信システムで用いられるネットワーク装置及び移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CSG(Closed Subscriber Group)セル、ホームセル又はフェムトセルなどと称される特定セルが知られている。なお、特定セルには、アクセス種別を設定することが可能である。アクセス種別は、「Closed」、「Hybrid」又は「Open」である。
【0003】
「Closed」の特定セルは、特定ユーザ(UE;User Equipment)のアクセスのみが許可されるように構成される。「Hybrid」の特定セルは、特定ユーザに対して他のユーザ(非特定ユーザ)よりも高品質の通信が許可されるように構成される。「Open」の特定セルは、一般的なマクロセルと同様に、全てのユーザのアクセスが許可されるように構成される(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TS36.331 v8.6.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特定セルを利用する回線としては、例えば、ユーザが独自に契約した回線(ユーザ回線)が用いられる。
【0006】
しかしながら、上述した技術では、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザについて特定する枠組みがない。従って、ユーザ回線を利用する通信呼の使用料の少なくとも一部を還元するサービスを提供することができない。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ユーザ回線が利用される通信呼の使用料の少なくとも一部を還元するサービスの提供を可能とする移動通信システム、ネットワーク装置及び移動通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の特徴に係る移動通信システムは、ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する。移動通信システムは、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、前記ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するように構成された回線判定部と、前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するように構成された算出部とを備える。
【0009】
第1の特徴において、移動通信システムは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の種別、或いは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の接続方法が還元対象であるか否かを判定するように構成された呼種別判定部をさらに備える。前記算出部は、前記ユーザ回線を利用する通信呼の種別、或いは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の接続方法が還元対象である場合に、前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出する。
【0010】
第1の特徴において、移動通信システムは、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに通知するように構成された通知部をさらに備える。
【0011】
第2の特徴に係るネットワーク装置は、ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する移動通信システムに設けられる。ネットワーク装置は、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、前記ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するように構成された回線判定部と、前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するように構成された算出部とを備える。
【0012】
第3の特徴に係る移動通信方法は、ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する移動通信システムに適用される。移動通信方法は、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、前記ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するステップと、前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するステップとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザ回線が利用される通信呼の使用料の少なくとも一部を還元するサービスの提供を可能とする移動通信システム、ネットワーク装置及び移動通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る移動通信システム100を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るネットワーク装置20を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る回線識別子の一例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るUE10を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る移動通信システム100の動作を示すシーケンス図である。
【図6】変更例1に係る移動通信システム100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明の実施形態に係る移動通信システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0016】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
[実施形態の概要]
実施形態に係る移動通信システムは、ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する。移動通信システムは、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するように構成された回線判定部と、ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するように構成された算出部とを備える。
【0018】
実施形態では、回線識別子は、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成されており、回線判定部は、回線識別子を用いて、ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定する。
【0019】
すなわち、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを回線識別子によって識別できるため、ユーザ回線が利用される通信呼の使用料の少なくとも一部を還元するサービスを提供することができる。
【0020】
なお、実施形態において、特定セルは、小規模かつ大規模に配備されるセルであることが好ましい。特定セルは、HNB(Home Node B)、HeNB(Home Evolved Node B)、フェムトBTSなどによって管理されるセルであることが好ましい。
【0021】
[第1実施形態]
(移動通信システムの構成)
以下において、第1実施形態に係る移動通信システムの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る移動通信システム100を示す図である。
【0022】
図1に示すように、移動通信システム100は、通信端末装置10(以下、UE10)と、コアネットワーク50とを含む。また、移動通信システム100は、第1通信システムと第2通信システムとを含む。
【0023】
第1通信システムは、例えば、UMTS(Universal Mobile Telecommunication System)に対応する通信システムである。第1通信システムは、基地局110A(以下、NB110A)と、ホーム基地局110B(以下、HNB110B)と、RNC120Aと、ホーム基地局ゲートウェイ120B(以下、HNB−GW120B)と、SGSN130とを有する。
【0024】
なお、第1通信システムに対応する無線アクセスネットワーク(UTRAN;Universal Terrestrial Radio Access Network)は、NB110A、HNB110B、RNC120A、HNB−GW120Bによって構成される。
【0025】
第2通信システムは、例えば、LTE(Long Term Evolution)に対応する通信システムである。第2通信システムは、例えば、基地局210A(以下、eNB210A)と、ホーム基地局210B(以下、HeNB210B)と、ホーム基地局ゲートウェイ220B(以下、HeNB−GW220B)と、MME230とを有する。
【0026】
なお、第2通信システムに対応する無線アクセスネットワーク(E−UTRAN;Evoled Universal Terrestrial Radio Access Network)は、eNB210A、HeNB210B及びHeNB−GW220Bによって構成される。
【0027】
UE10は、第1通信システム或いは第2通信システムと通信を行うように構成された装置(User Equipment)である。例えば、UE10は、NB110A及びHNB110Bと無線通信を行う機能を有する。或いは、UE10は、eNB210A及びHeNB210Bと無線通信を行う機能を有する。
【0028】
NB110Aは、マクロセル111Aを有しており、マクロセル111Aに存在するUE10と無線通信を行う装置(NodeB)である。
【0029】
例えば、マクロセル111Aは、事業者回線を利用するように構成される。事業者回線は、マクロセル111Aを管理するNB110Aを設置した通信事業者が有する回線、或いは、通信事業者が契約した回線である。
【0030】
HNB110Bは、特定セル111Bを有しており、特定セル111Bに存在するUE10と無線通信を行う装置(Home NodeB)である。
【0031】
例えば、特定セル111Bは、ユーザ回線を利用するように構成される。ユーザ回線は、特定セル111Bを管理するHNB110Bを設置したユーザが独自に契約した回線である。ユーザ回線は、事業者が提供する無線制御装置(RNC120A)とHNB110Bとの間の回線、事業者が提供するゲートウェイ装置(HNB−GW120B)とHNB110Bとの間の回線、事業者が提供するコアネットワーク装置(SGSN130)とHNB110Bとの間の回線、或いは、これらの回線の一部である。ユーザ回線は、例えば、ADSL回線や光回線などである。
【0032】
RNC120Aは、NB110Aに接続されており、マクロセル111Aに存在するUE10と無線接続(RRC Connection)を設定する装置(Radio Network Controller)である。
【0033】
HNB−GW120Bは、HNB110Bに接続されており、特定セル111Bに存在するUE10と無線接続(RRC Connection)を設定する装置(Home NodeB Gateway)である。
【0034】
SGSN130は、パケット交換ドメインにおいてパケット交換を行う装置(Serving GPRS Support Node)である。SGSN130は、コアネットワーク50に設けられる。図1では省略しているが、回線交換ドメインにおいて回線交換を行う装置(MSC;Mobile Switching Center)がコアネットワーク50に設けられていてもよい。
【0035】
eNB210Aは、マクロセル211Aを有しており、マクロセル211Aに存在するUE10と無線通信を行う装置(evolved NodeB)である。
【0036】
例えば、マクロセル211Aは、事業者回線を利用するように構成される。事業者回線は、マクロセル211Aを管理するeNB210Aを設置した通信事業者が有する回線、或いは、通信事業者が契約した回線である。
【0037】
HeNB210Bは、特定セル211Bを有しており、特定セル211Bに存在するUE10と無線通信を行う装置(Home evolved NodeB)である。
【0038】
例えば、特定セル211Bは、ユーザ回線を利用するように構成される。ユーザ回線は、特定セル211Bを管理するHeNB210Bを設置したユーザが独自に契約した回線である。ユーザ回線は、事業者が提供する無線制御装置(RNC120A)とHeNB210Bとの間の回線、事業者が提供するゲートウェイ装置(HeNB−GW220B)とHeNB210Bとの間の回線、事業者が提供するコアネットワーク装置(MME230)とHeNB210Bとの間の回線、或いは、これらの回線の一部である。ユーザ回線は、例えば、ADSL回線や光回線などである。
【0039】
HeNB−GW220Bは、HeNB210Bに接続されており、HeNB210Bを管理する装置(Home evolved NodeB Gateway)である。
【0040】
MME230は、HeNB−GW220Bを介してHeNB210Bと接続されており、HeNB210Bと無線接続を設定しているUE10の移動性を管理する装置(Mobility Management Entity)である。
【0041】
なお、マクロセル及び特定セルは、UE10と無線通信を行う機能として理解すべきである。但し、マクロセル及び特定セルは、セルのサービスエリアを示す用語としても用いられる。また、マクロセル及び特定セルなどのセルは、セルで用いられる周波数、拡散コード又はタイムスロットなどによって識別される。
【0042】
特定セルは、フェムトセル、CSG(Closed Subscriber Group)セル、ホームセルなどと称されることもある。また、特定セルは、特定セルにアクセス可能なUE10を規定するアクセス種別が設定可能に構成されている。アクセス種別は、「Closed」、「Hybrid」又は「Open」である。
【0043】
「Closed」の特定セルは、特定セルによって管理される特定のUE10のアクセスのみが許可されるように構成される。
【0044】
「Hybrid」の特定セルは、例えば、特定セルによって管理される特定のUE10に対して高品質の通信が許可されるように構成されており、特定セルによって管理されていない他のUE10に対してベストエフォート品質の通信が許可されるように構成される。
【0045】
「Open」の特定セルは、マクロセルと同様に、全てのUE10のアクセスが許可されるように構成される。なお、「Open」のセルでは、特定セルによって管理されている否かによって、UE10間の通信品質の差異が区別されない。
【0046】
なお、アクセス種別は、アクセスクラス毎にUE10のアクセスを禁止する「ACCESS CLASS BARRED」、セル毎にUE10のアクセスを禁止する「CELL BARRED」であってもよい。
【0047】
(ネットワーク装置の構成)
以下において、第1実施形態に係るネットワーク装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係るネットワーク装置20を示す図である。図2に示すように、ネットワーク装置20は、通信部21と、回線判定部22と、呼種別判定部23と、算出部24とを有する。
【0048】
なお、ネットワーク装置20は、特定セルを管理する装置(例えば、HNB110B、HeNB210B)であってもよい。或いは、ネットワーク装置20は、特定セルを管理する装置の上位に設けられた装置(例えば、RNC120A、HNB−GW120B、SGSN130、HeNB−GW220B、MME230)であってもよい。或いは、ネットワーク装置20は、コアネットワーク50に設けられた他の装置(例えば、課金サーバ)であってもよい。
【0049】
通信部21は、UE10と通信を行う。或いは、通信部21は、他のネットワーク装置と通信を行う。
【0050】
例えば、通信部21は、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに対して、後述する算出部24によって算出される還元料を通知する。
【0051】
回線判定部22は、UE10が行う通信で設定される通信呼がユーザ回線を利用するか否かを判定する。通信呼は、例えば、音声呼、パケット呼、発信呼、着信呼などである。
【0052】
具体的には、第1に、回線判定部22は、UE10が特定セルと通信を行う場合に、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を取得する。ここで、特定セルを管理する無線基地局の識別子と無線基地局を設置したユーザとの対応関係を回線判定部22が有している場合には、回線識別子は、特定セルを管理する無線基地局の識別子であってもよい。
【0053】
なお、回線識別子は、マクロセルを管理する無線基地局を識別するように構成されていてもよく、マクロセルを管理する無線基地局を設置した通信事業者を識別するように構成されていてもよい。
【0054】
例えば、ネットワーク装置20が無線制御装置(HNB−GW120B、RNC120A、HeNB210Bなど)である場合には、回線判定部22は、無線リンクの設定応答(Radio Link Response)の中から、回線識別子を抽出する。
【0055】
なお、回線識別子は、例えば、図3に示す構成を有する。図3に示すように、回線識別子は、“Access Charge Bit”、“回線Type”、“ユーザ回線率”、“CSG ID”によって構成される。
【0056】
“Access Charge Bit”は、無線基地局がユーザ回線を用いているか、無線基地局が事業者回線を用いているかを示す情報要素である。“Access Charge Bit”の長さは、例えば、1bitである。
【0057】
“回線Type”は、無線基地局がユーザ回線を用いる場合に、ユーザ回線の種別を示す情報要素である。“回線Type”は、ADSL回線、光回線といった種別を示す。“回線Type”の長さは、例えば、3bitである。
【0058】
“ユーザ回線率”は、無線基地局がユーザ回線を用いる場合に、回線全体或いは事業者回線に対してユーザ回線が占める割合を示す情報要素である。“ユーザ回線率”の長さは、例えば、7bitである。
【0059】
“CSG ID”は、無線基地局がユーザ回線を用いる場合に、特定セルを管理する無線基地局を識別する情報要素である。すなわち、“CSG ID”は、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別する情報要素である。“CSG ID”の長さは、例えば、27bitである。
【0060】
なお、ネットワーク装置20は、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザと“CSG ID”とを対応付ける情報を管理していることが好ましい。或いは、ネットワーク装置20は、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザと“CSG ID”とを対応付ける情報を他の装置から取得してもよい。
【0061】
第2に、回線判定部22は、回線識別子に基づいて、ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定する。すなわち、回線判定部22は、ユーザ回線を通信呼が利用することが回線識別子によって識別される場合に、ユーザ回線を通信呼が利用すると判定する。
【0062】
なお、回線識別子がマクロセルを管理する無線基地局を設置した通信事業者を識別するように構成されている場合には、回線判定部22は、回線識別子に基づいて、事業者回線を通信呼が利用するか否かを判定してもよい。すなわち、回線判定部22は、事業者回線を通信呼が利用することが回線識別子によって識別される場合に、ユーザ回線を通信呼が利用すると判定する。
【0063】
呼種別判定部23は、UE10が行う通信で設定される通信呼の種別を判定する。具体的には、呼種別判定部23は、ユーザ回線を利用する通信呼の種別、或いは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の接続方法が還元対象であるか否かを判定する。還元対象種別は、音声呼、パケット呼などのうち、いずれか1つ以上の通信呼であってもよい。また、還元対象種別は、発信、着信、緊急呼、通常呼、HSPA等の個別チャネル接続、HSPA等の共通チャネル接続などのように、通信呼の接続方法であってもよい。還元対象は、通信事業者などが任意に決定してもよい。
【0064】
算出部24は、通信呼がユーザ回線を利用する場合に、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出する。或いは、算出部24は、ユーザ回線を利用する通信呼の種別、或いは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の接続方法が還元対象である場合に、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出する。すなわち、算出部24は、ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出する。
【0065】
算出部24によって算出される還元料は、使用量と還元料との比率(還元率)によって表されてもよい。或いは、算出部24によって算出される還元料は、ユーザに還元する金額の絶対額であってもよい。
【0066】
具体的には、回線識別子がユーザ回線のみを識別するように構成されている場合に、算出部24は、ユーザ回線が占有される時間に基づいて、ユーザに還元する還元料を算出する。或いは、算出部24は、ユーザ回線を利用する通信量(パケット量)に基づいて、ユーザに還元する還元料を算出する。
【0067】
或いは、回線識別子がユーザ回線及び事業者回線の双方を識別するように構成されている場合には、算出部24は、ユーザ回線が占有される時間と事業者回線が占有されている時間との比率に基づいて、ユーザに還元する還元料を算出する。或いは、算出部24は、ユーザ回線を利用する通信量(パケット量)と事業者回線を利用する通信量(パケット量)との比率に基づいて、ユーザに還元する還元料を算出する。
【0068】
ここで、通信呼の使用料は、一般的に、UE10の加入者から通信事業者によって回収される。特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザがUE10の加入者である場合には、算出部24によって算出された還元料は、UE10の加入者に還元される。なお、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザがUE10の加入者と異なっていてもよい。
【0069】
(通信端末装置の構成)
以下において、第1実施形態に係る通信端末装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態に係るUE10を示す図である。図4に示すように、UE10は、通信部11と、表示部12とを有する。なお、UE10の加入者が、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザと同じであるケースについて例示する。すなわち、還元料がUE10の加入者に還元されるケースについて例示する。
【0070】
通信部11は、NB110A及びHNB110Bと無線通信を行う。また、通信部11は、eNB210A、HeNB210Bと無線通信を行う。また、通信部11は、ネットワーク装置20と通信を行う。
【0071】
表示部12は、各種情報を表示する。例えば、表示部12は、還元料を表示する。ここで、表示部12は、一定期間における還元料の履歴を表示してもよく、一定期間における還元料の累積額を表示してもよい。
【0072】
なお、還元料は、ネットワーク装置20からUE10に対して通知されることが好ましい。例えば、還元料は、通信呼の終了時にUE10に通知されてもよく、UE10の要求に応じて通知されてもよい。
【0073】
(移動通信システムの動作)
以下において、第1実施形態に係る移動通信システムの動作について、図面を参照しながら説明する。図5は、第1実施形態に係る移動通信システム100の動作を示すシーケンス図である。
【0074】
ここでは、UE10が、HNB110B(特定セル111B)と通信を開始して、NB110A(マクロセル111A)及びHNB110B(特定セル111B)との間のソフトハンドオーバ状態を経て、NB110A(マクロセル111A)と通信を行うケースについて例示する。
【0075】
図5に示すように、ステップ10において、UE10は、HNB−GW120Bに対して、UE10とHNB−GW120Bとの間の無線接続要求(RRC Connection Request)を送信する。
【0076】
ステップ11において、HNB−GW120Bは、HNB110B(特定セル111B)に対して、UE10とHNB110B(特定セル111B)との間の無線リンクの設定要求(Radio Link Setup Request)を送信する。
【0077】
ステップ12において、HNB110B(特定セル111B)は、HNB−GW120Bに対して、UE10とHNB110B(特定セル111B)との間の無線リンクの設定応答(Radio Link Setup Response)を送信する。
【0078】
ここで、HNB110B(特定セル111B)は、特定セル111Bを管理するHNB110B(或いは、HNB110Bを設置したユーザ)を識別するように構成された回線識別子を設定応答に含める。
【0079】
ステップ13において、HNB−GW120Bは、ステップ12で受信する設定応答の中から、回線識別子を抽出する。或いは、HNB−GW120Bは、回線識別子に基づいて、HNB110Bを設置したユーザを特定する。
【0080】
ステップ14において、HNB−GW120Bは、UE10に対して、UE10とHNB−GW120Bとの間の無線接続の設定指示(RRC Connection Setup)を送信する。
【0081】
ステップ15において、UE10は、HNB−GW120Bに対して、UE10とHNB−GW120Bとの間の無線接続の設定完了(RRC Connection Setup Complete)を送信する。
【0082】
ステップ16において、HNB−GW120Bは、SGSN130に対して、ステップ13で抽出された回線識別子を報告する。或いは、HNB−GW120Bは、SGSN130に対して、ステップ13で特定されたユーザを報告する。
【0083】
ステップ17において、HNB−GW120Bは、RNC120Aを介してNB110A(マクロセル111A)に対して、UE10とNB110A(マクロセル111A)との間の無線リンクの設定要求(Radio Link Setup Request)を送信する。
【0084】
ステップ18において、NB110A(マクロセル111A)は、RNC120Aを介してHNB−GW120Bに対して、UE10とNB110A(マクロセル111A)との間の無線リンクの設定応答(Radio Link Setup Response)を送信する。
【0085】
ここで、NB110A(マクロセル111A)は、マクロセル111Aを管理するNB110A(或いは、NB110Aを設置した通信事業者)を識別するように構成された回線識別子を設定応答に含める。
【0086】
ステップ19において、HNB−GW120Bは、UE10に対して、NB110A(マクロセル111A)及びHNB110B(特定セル111B)との間のソフトハンドオーバの開始を示すコマンド(HANDOVER COMMAND)を送信する。
【0087】
ステップ20において、HNB−GW120Bは、ステップ18で受信する設定応答の中から、回線識別子を抽出する。或いは、HNB−GW120Bは、回線識別子に基づいて、NB110Aを設置した通信事業者を特定する。
【0088】
ステップ21において、UE10は、HNB−GW120Bに対して、NB110A(マクロセル111A)及びHNB110B(特定セル111B)との間のソフトハンドオーバの完了を示すコマンド(HANDOVER COMPLETE)を送信する。
【0089】
ステップ22において、HNB−GW120Bは、SGSN130に対して、ステップ20で抽出された回線識別子を報告する。或いは、HNB−GW120Bは、SGSN130に対して、ステップ20で特定された通信事業者を報告する。
【0090】
ステップ23において、HNB−GW120Bは、HNB110B(特定セル111B)に対して、無線リンクの削除要求(Radio Link Deletion Request)を送信する。
【0091】
ステップ24において、HNB110B(特定セル111B)は、HNB−GW120Bに対して、無線リンクの削除応答(Radio Link Deletion Response)を送信する。
【0092】
なお、接続手順は、ハンドオーバ手順であってもよく、再接続手順や共通チャネル遷移手順などのセル更新(CELL UPDATE)手順であってもよい。また、接続手順は、HNB110Bにおける発信、着信、CSFB(Circuit Switching Fallback)などのInter−RAT手順であってもよい。
【0093】
(作用及び効果)
実施形態では、回線識別子は、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成されており、回線判定部22は、回線識別子を用いて、ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定する。
【0094】
すなわち、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを回線識別子によって識別できるため、ユーザ回線が利用される通信呼の使用料の少なくとも一部を還元するサービスを提供することができる。
【0095】
実施形態では、呼種別判定部23は、ユーザ回線を利用する通信呼の種別、或いは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の接続方法が還元対象であるか否かを判定する。すなわち、通信事業者等が還元対象を設定することができるため、使用料の還元サービスとして、多様なサービスを提供することができる。
【0096】
このように、使用料の還元サービスを提供することによって、特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに対して、特定セルによって管理されていない他のUE10に対して特定セルを利用させるインセンティブを与えることができる。すなわち、「Hybrid」や「Open」がアクセス種別として設定された特定セルの増加を見込むことができる。これによって、特定セルの利用促進を図ることができる。
【0097】
[変更例1]
以下において、第1実施形態の変更例1について、図面を参照しながら説明する。以下においては、第1実施形態との相違点について主として説明する。
【0098】
具体的には、第1実施形態では、HNB110Bの上位ノードは、HNB−GW120Bである。一方で、変更例1では、図6に示すように、HNB110Bの上位ノードは、RNC120Aである。
【0099】
変更例1では、RNC120Aは、HNB−GW120Bに代わって、HNB110Bを管理する。すなわち、RNC120Aは、RNC120Aの配下に属する装置に対して、HNB−GW120Bと同様の機能を提供する。
【0100】
また、第1実施形態では、HeNB210Bの上位ノードは、HeNB−GW220Bである。一方で、変更例1では、図6に示すように、HeNB210Bの上位ノードは、MME230である。
【0101】
変更例1では、HeNB210Bは、HeNB−GW220Bに代わって、HeNB210Bの配下に属する装置に対して、HeNB−GW220Bと同様の機能を提供する。
【0102】
なお、HNB−GW120Bのみが省略されてもよく、HeNB−GW220Bのみが省略されてもよい。
【0103】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0104】
上述した図5に示すシーケンスでは、第1通信システムにおいて、UE10が利用するセルが変更されるケースについて例示した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、第2通信システムにおいて、UE10が利用するセルが変更されるケースについて、実施形態が適用されてもよい。或いは、第1通信システムと第2通信システムとの間において、UE10が利用するセルが変更されるケースについて、実施形態が適用されてもよい。
【0105】
上述した実施形態において、ネットワーク装置20に設けられた構成(通信部21、回線判定部22、呼種別判定部23、算出部24)が一つの装置に設けられるケースについて例示した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。すなわち、通信部21、回線判定部22、呼種別判定部23、算出部24は、それぞれ、別々な装置に設けられていてもよい。
【0106】
例えば、回線判定部22又は呼種別判定部23は、NB110A、HNB110B、eNB210A又はHeNB210Bなどに設けられてもよい。回線判定部22又は呼種別判定部23は、RNC120A、HNB−GW120B、eNB210A、HeNB210B又はHeNB−GW220Bなどに設けられていてもよい。回線判定部22又は呼種別判定部23は、SGSN130又はMME230に設けられていてもよい。算出部24は、SGSN130又はMME230に設けられていてもよく、コアネットワーク50に設けられたサーバ(例えば、課金サーバ)に設けられていてもよい。
【0107】
或いは、算出部24は、RNC120A、HNB−GW120B、eNB210A、HeNB210B又はHeNB−GW220Bに設けられていてもよい。このようなケースにおいて、SGSN130又はMME230などの交換機に回線判定部22及び呼種別判定部23が設けられている場合には、交換機から算出部24を有する装置に対して、SPID(Subscriber Profile Identity)等の情報要素によって、通信呼が還元対象呼である旨が通知される。
【0108】
各装置間の通信では、RANAP(Radio Access Network Application Part)、NBAP(Node B Application Part)、RNSAP(Radio Network Subsystem Application Part)、HNBAP(Home Node B Application Part)などの制御信号が用いられる。
【0109】
なお、上述したUE10の動作は、ハードウェアによって実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実施されてもよいし、両者の組み合わせによって実施されてもよい。
【0110】
ソフトウェアモジュールは、RAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリや、ROM(Read Only Memory)や、EPROM(Erasable Programmable ROM)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)や、レジスタや、ハードディスクや、リムーバブルディスクや、CD-ROMといった任意形式の記憶媒体内に設けられていてもよい。
【0111】
かかる記憶媒体は、プロセッサが当該記憶媒体に情報を読み書きできるように、当該プロセッサに接続されている。また、かかる記憶媒体は、プロセッサに集積されていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ASIC内に設けられていてもよい。かかるASICは、UE10内に設けられていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ディスクリートコンポーネントとしてUE10内に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0112】
10…通信端末装置、11…通信部、12…表示部、20…ネットワーク装置、21…通信部、22…回線判定部、23…呼種別判定部、24…算出部、50…コアネットワーク、100…移動通信システム、110A…NB、110B…HNB、111A…マクロセル、111B…特定セル、120A…RNC、120B…HNB−GW、130…SGSN、210A…eNB、210B…HeNB、211A…マクロセル、211B…特定セル、220B…HeNB−GW、230…MME

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する移動通信システムであって、
前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、前記ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するように構成された回線判定部と、
前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するように構成された算出部とを備えることを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記ユーザ回線を利用する通信呼の種別、或いは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の接続方法が還元対象であるか否かを判定するように構成された呼種別判定部をさらに備え、
前記算出部は、前記ユーザ回線を利用する通信呼の種別、或いは、前記ユーザ回線を利用する通信呼の接続方法が還元対象である場合に、前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出することを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに通知するように構成された通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項4】
ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する移動通信システムに設けられるネットワーク装置であって、
前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、前記ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するように構成された回線判定部と、
前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するように構成された算出部とを備えることを特徴とするネットワーク装置。
【請求項5】
ユーザ回線を利用するように構成された特定セルを有する移動通信システムに適用される移動通信方法であって、
前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザを識別するように構成された回線識別子を用いて、前記ユーザ回線を通信呼が利用するか否かを判定するステップと、
前記ユーザ回線を利用する通信呼の使用料のうち、前記特定セルを管理する無線基地局を設置したユーザに還元する還元料を算出するステップとを備えることを特徴とする移動通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−130390(P2011−130390A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289779(P2009−289779)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】