説明

移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および通信制御方法

【課題】
セルエッジ付近でも全周波数を利用することができるよう、キャリア間干渉を低減させること。
【解決手段】
キャリア間干渉を引き起こす干渉信号が検出されると、移動局14は、通信中の基地局12−1に対しその旨を通知する(S100)。基地局12−1は、移動局14から干渉信号電力が低減した旨を通知されるまで、隣接する基地局12−2,3・・・に対し順次、無線送信の一時停止を要求する(S102,S110)。検出された干渉信号の電力が低減すると、移動局14はその低減量を基地局12−1に通知する(S116)。このとき、基地局12−1は、S116の直前に無線送信の一時停止を要求した基地局12−3が移動局14で検出された干渉信号の発信源である、と推定する。そして、その基地局12−3に対し、S116で通知された低減量だけ、送信電力を低減するよう要求する(S118)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および干渉低減方法に関し、特に、近接する基地局装置からの送信波によりセルエッジ付近で生じやすいキャリア間干渉を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式では、サブキャリア間の直交性が失われるとキャリア間干渉が生じ、OFDM信号の復調が困難となる。このため、OFDMA方式を採用する基地局それぞれが所定の全周波数を用いて通信する移動通信システムでは、全周波数を利用する範囲が隣接基地局間で重ならないようなセル設計を行うことにより、キャリア間干渉の発生を防いでいる(たとえば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Mobile WiMAX- Part I: A Technical Overview and Performance Evaluation [online], WiMAX FORUM, 2006, p27-29. Retrieved from the Internet:<URL:http://www.intel.com/netcomms/technologies/wimax/WiMAX_Overview_v2.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の移動通信システムでは、セルエッジ付近において全周波数を用いた通信を行うことができないため、無線リソースの利用に無駄が生じていた。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、セルエッジ付近でも全周波数を利用することができるよう、キャリア間干渉を低減させることができる移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および干渉低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る移動通信システムは、直交周波数分割多元接続方式により移動局装置と通信を行う複数の基地局装置を含む移動通信システムであって、前記移動局装置は、受信信号に基づいて、前記基地局装置との通信に用いるチャネルに干渉を与える干渉信号を検出する干渉検出手段と、前記干渉検出手段により干渉信号が検出された場合に、干渉信号の検出を前記基地局装置に通知する干渉通知手段と、前記干渉検出手段により検出された干渉信号の電力が低減した場合に、該干渉信号電力の低減量を前記基地局装置に通知する干渉電力低減量通知手段と、を含み、前記基地局装置は、前記干渉通知手段による通知を受けてから前記干渉電力低減量通知手段による通知を受けるまで、近接する基地局装置に対し順次、無線送信の一時停止を要求する送信停止要求手段と、前記干渉電力低減量通知手段による通知を受けた場合に、前記送信停止要求手段がその直前に無線送信の一時停止を要求した基地局装置に対し、各チャネルの送信電力を該通知に係る低減量だけ低減するよう要求する送信電力低減要求手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、移動局装置でキャリア間干渉を引き起こす干渉信号が検出されると、その干渉信号電力が低減するまで、その移動局装置と通信する基地局装置は、近接する基地局装置に対して順次、無線送信の一時停止を要求する。このとき、移動局装置において干渉信号電力の低減が確認されると、その直前に無線送信を一時停止した基地局装置が当該移動局装置で検出された干渉信号の発信源(干渉源)であると推定される。そして、干渉源であると推定された基地局装置は、移動局装置において検出された干渉信号電力の低減量だけ、その送信電力を低減する。このように、移動局装置においてキャリア間干渉が発生しても、それを引き起こす干渉信号の送信電力が即座に低減されるため、隣接する基地局装置からの送信波(干渉波)が届きやすいセルエッジ付近でも全周波数を用いて通信を行うことができる。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記干渉電力低減量通知手段は、前記干渉検出手段により検出された干渉信号の電力が低減した場合に、該干渉信号電力の低減量および該低減した干渉信号のチャネルを示す干渉チャネル情報を前記基地局装置に通知し、前記送信電力低減要求手段は、干渉電力低減量通知手段による通知を受けた場合に、前記送信停止要求手段がその直前に無線送信の一時停止を要求した基地局装置に対し、該通知に係る干渉チャネル情報により示されるチャネルの送信電力を該通知に係る低減量だけ低減するよう要求する。この態様によれば、キャリア間干渉を引き起こす干渉信号に係るチャネルの送信電力だけを低減させるため、基地局装置における送信電力の低減量を抑えつつ、好適にキャリア間干渉を低減できるようになる。
【0009】
また、本発明に係る移動局装置は、直交周波数分割多元接続方式により基地局装置と通信を行う移動局装置であって、受信信号に基づいて、前記基地局装置との通信に用いるチャネルに干渉を与える干渉信号を検出する干渉検出手段と、前記干渉検出手段により干渉信号が検出された場合に、干渉信号の検出を前記基地局装置に通知する干渉通知手段と、前記干渉検出手段により検出された干渉信号の電力が低減した場合に、該干渉信号電力の低減量を前記基地局装置に通知する干渉電力低減量通知手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る基地局装置は、直交周波数分割多元接続方式により移動局装置と通信を行う基地局装置であって、前記移動局装置により干渉信号の検出を通知されてから該移動局装置により該干渉信号電力の低減量を通知されるまで、近接する基地局装置に対し順次、無線送信の一時停止を要求する送信停止要求手段と、前記移動局装置により前記干渉信号電力の低減量を通知された場合に、前記送信停止要求手段がその直前に無線送信の一時停止を要求した基地局装置に対し、各チャネルの送信電力を前記低減量だけ低減するよう要求する送信電力低減要求手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る通信制御方法は、直交周波数分割多元接続方式により基地局装置と通信を行う移動局装置に対する干渉波を低減する干渉低減方法であって、前記移動局装置が、受信信号に基づいて、前記基地局装置との通信に用いるチャネルに干渉を与える干渉信号を検出する干渉検出ステップと、前記干渉検出ステップで干渉信号が検出された場合に、干渉信号の検出を前記基地局装置に通知する干渉通知ステップと、前記干渉検出ステップで検出された干渉信号の電力が低減した場合に、該干渉信号電力の低減量を前記基地局装置に通知する干渉電力低減量通知ステップと、を含み、前記基地局装置が、前記干渉通知ステップによる通知を受けてから前記干渉電力低減量通知ステップによる通知を受けるまで、近接する基地局装置に対し順次、無線送信の一時停止を要求する送信停止要求ステップと、前記干渉電力低減量通知ステップによる通知を受けた場合に、その直前の前記送信停止要求ステップで無線送信の一時停止を要求された基地局装置に対し、各チャネルの送信電力を該通知に係る低減量だけ低減するよう要求する送信電力低減要求ステップと、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る移動局のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基地局のブロック図である。
【図4】要求状態記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る移動通信システムの処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動通信システム10の全体構成図である。同図に示すように、移動通信システム10は、複数の基地局12(ここでは基地局12−1〜7のみを図示する。)と複数の移動局14(ここでは1つのみ図示する。)を含んで構成されている。移動局14は、たとえば可搬型の携帯電話機、携帯情報端末、またはデータ通信用カードである。
【0015】
図1に示すように、各基地局12は、通信カバーエリアを示すセル16の端(セルエッジ)がその隣接セルの端と重なり合うように配置されている。たとえば、基地局12−1のセル16−1は、その隣接基地局12−2〜7のセル16−2〜7とそれぞれ重複するエリアを有している。そして、各基地局12は、TDD(Time Division Duplex:時分割複信)方式により自セル内に位置する移動局14と無線信号の送受信を行い、またOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式およびTDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)方式により多重通信を行う。
【0016】
基地局12と移動局14との間の無線伝送路は、それぞれ時分割多重による複数のタイムスロット(たとえば4スロット)を含む受信フレームと送信フレームとから構成されている。また、タイムスロットごとに、直交分割多重による複数のサブキャリア(たとえば16のサブキャリア)から構成される複数のサブチャネル(たとえば28サブチャネル)が規定されている。そして各通信に使用されるチャネルは、チャネルを識別するチャネル番号、またはタイムスロットを識別するスロット番号とサブチャネル周波数を識別するサブチャネル番号との組み合わせ、により特定されるようになっている。
【0017】
移動通信システム10では、移動局14でキャリア間干渉を引き起こす干渉信号が検出されると、その干渉信号電力が低減するまで、その移動局14と通信する基地局12が隣接する基地局12に対して順次、無線送信の一時停止を要求する。ここで、移動局14において干渉信号電力の低減が確認されると、その直前に無線送信を一時停止した基地局12が移動局14で検出された干渉信号の発信源(干渉源)であると推定される。そして、干渉源であると推定された基地局12は、移動局14における干渉信号電力の低減量だけ、その送信電力を低減する。こうして、移動通信システム10では、移動局14においてキャリア間干渉が発生しても、それを引き起こす干渉信号の送信電力が即座に低減されるため、隣接基地局からの送信波(干渉波)が届きやすいセルエッジ付近においても、上記チャネル構成における全周波数を用いて通信を行うことができるようになっている。
【0018】
以下では、上記処理を実現するための構成および機能について、図2〜4に基づきより詳細に説明する。
【0019】
図2は、移動局14のブロック図である。同図に示すように、移動局14は、アンテナ20、無線部22、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部24、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部26、ベースバンド信号処理部28、制御部38を含んで構成されている。
【0020】
アンテナ20は、無線部22から供給される無線信号を放射するとともに、移動局14または隣接基地局12から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号を無線部22に出力するものである。なお、送信および受信は、時分割で切り替えられる。
【0021】
無線部22は、アンテナ20で受信される無線信号をベースバンド信号にダウンコンバートする。そして、ベースバンド信号に対して、シンボル同期、ガードインターバル(Guard Interval)の除去、ディジタル信号への変換などを行い、得られたディジタル信号をFFT部26に出力する。
【0022】
また、無線部22は、IFFT部24から入力されるディジタル信号に対して、アナログ信号への変換、ガードインターバルの付加などを行って、ベースバンド信号を取得し、得られたベースバンド信号を無線部22に供給する。
【0023】
IFFT部24は、ベースバンド信号処理部28(マッピング部30)から入力される複素シンボル列を逆高速フーリエ変換(IFFT)によりディジタル信号に変換し、変換されたディジタル信号を無線部22に出力する。
【0024】
FFT部26は、無線部22から入力されたディジタル信号を高速フーリエ変換(FFT)により各サブキャリアの位相と振幅を表す複素シンボル列に変換し、変換された複素シンボル列をベースバンド信号処理部28(デマッピング部32)に出力する。
【0025】
ベースバンド信号処理部28は、マッピング部30、デマッピング部32、干渉検出部34を含んで構成され、送受信メッセージと、ベースバンド信号における各サブキャリアの位相および振幅を表す複素シンボル列と、を相互に変換するものである。
【0026】
マッピング部30は、変調方式に応じて、制御部38から入力される送信メッセージ(バイナリデータ)を対応する複素シンボル列に変換し、変換された複素シンボル列をIFFT部24に出力する。
【0027】
デマッピング部32は、変調方式に応じて、FFT部26から入力される複素シンボル列を対応する受信メッセージ(バイナリデータ)に変換し、変換された受信メッセージを干渉検出部34および制御部38に出力する。
【0028】
干渉検出部34は、相関演算部36を含み、デマッピング部32から入力される受信メッセージに基づいて、基地局12との通信に用いるチャネルに干渉を与える干渉信号を検出するものである。具体的には、相関演算部36により演算される、デマッピング部32から入力される受信メッセージ(バイナリデータ)と干渉検出部34に記憶される既知の参照信号(バイナリデータ)との相関値に基づいて、受信信号に含まれる干渉信号成分を検出(抽出)する。こうして干渉信号が検出されると、干渉検出部34はその干渉信号のチャネルおよび電力(干渉レベル)を制御部38に通知する。
【0029】
制御部38は、CPUやメモリなどから構成され、移動局14の各部を制御するものである。また、ベースバンド信号処理部28との間で授受される送受信メッセージに係る処理を行う。特に、干渉情報通知部40を含み、干渉検出部34で検出された干渉信号に係る情報を基地局12に通知する。これらの機能は、メモリに記憶される各種制御プログラムをCPUが実行することにより実現される。
【0030】
干渉情報通知部40は、干渉検出部34で干渉信号が検出された場合に、すなわち、干渉検出部34から通知される干渉信号電力が所定値以上であった場合に、干渉信号の検出有無を示す送信メッセージ内の所定部分を書き換えることにより、通信中の基地局12に干渉信号が検出された旨を通知するものである。また、該旨を通知後に干渉検出部34から通知される干渉信号電力が低減すると、干渉情報通知部40は、当該干渉信号電力の低減量および当該低減した干渉信号のチャネルを示す干渉チャネル情報(干渉信号に係るチャネル番号、干渉信号に係るスロット番号およびサブチャネル番号の組み合わせ)を送信メッセージ内の所定部分に格納することにより、当該干渉信号電力の低減量および干渉チャネル情報を通信中の基地局12に通知する。
【0031】
図3は、基地局12のブロック図である。同図に示すように、基地局12は、アンテナ50、無線部52、IFFT部54、FFT部56、ベースバンド信号処理部58、通信I/F部64、制御部66、要求状態記憶部72を含んで構成されている。なお、同図におけるアンテナ50、無線部52、IFFT部54、FFT部56は、図2における移動局14のアンテナ20、無線部22、IFFT部24、FFT部26と、それぞれ同様の構成および機能を有するため、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0032】
ベースバンド信号処理部58は、マッピング部60、デマッピング部62を含んで構成され、送受信メッセージと、ベースバンド信号における各サブキャリアの位相および振幅を表す複素シンボル列と、を相互に変換するものである。
【0033】
マッピング部60は、変調方式に応じて、通信I/F部64から入力される送信メッセージ(バイナリデータ)およびベースバンド信号処理部58に記憶される既知の参照信号(バイナリデータ)を対応する複素シンボル列に変換し、変換された複素シンボル列をIFFT部54に出力する。
【0034】
デマッピング部62は、変調方式に応じて、FFT部56から入力される複素シンボル列を対応する受信メッセージ(バイナリデータ)に変換し、変換された受信メッセージを通信I/F部64および制御部66に出力する。また、後述する送信制御部70の指示に従って、サブチャネルごとの送信電力を制御する。
【0035】
通信I/F部64は、通信回線(有線回線または無線回線)を介して図示しない上位装置から送信される送信メッセージをマッピング部60に出力するとともに、隣接基地局12から送信される送信停止要求メッセージおよび送信電力低減要求メッセージ(後述)を制御部66に出力する。また、デマッピング部62から入力される受信メッセージを上位装置に出力するとともに、制御部66の指示に従って送信停止要求メッセージおよび送信電力低減要求メッセージを指定された隣接基地局12に送信する。
【0036】
制御部66は、CPUやメモリなどから構成され、基地局12の各部を制御するものである。また、デマッピング部62から出力される受信メッセージに基づいて、通信中の移動局14から干渉信号が検出された旨の通知があったか否か、その移動局14において検出された干渉信号電力が低減した旨の通知があったか否かなどを判断したり、受信メッセージの所定部分から干渉信号電力の低減量や干渉チャネル情報などを抽出したりする。
【0037】
さらに、制御部66は、送信制御要求部68および送信制御部70を含み、通信中の移動局14において干渉信号が検出された場合に隣接基地局12に対して無線送信の一時停止や送信電力の低減などを要求するとともに、隣接基地局12からの要求に従って無線送信の一時停止や送信電力の低減などを行う。これらの機能は、メモリに記憶される各種制御プログラムをCPUが実行することにより実現される。
【0038】
送信制御要求部68は、通信中の移動局14により干渉信号が検出された旨の通知を受けてから検出された干渉信号が低減した旨の通知を受けるまでの間、隣接基地局12に対し順次、無線送信の一時停止を要求する。具体的には、後述する要求状態記憶部72に記憶される要求状態が「未要求」である隣接基地局12に対し、整理番号の小さいものから順に所定の間隔で(たとえば1フレームごとに)無線送信の一時停止を要求するよう、各隣接基地局12宛ての送信停止要求メッセージを作成し、通信I/F部64に出力する。
【0039】
また、送信制御要求部68は、移動局14により干渉信号電力が低減した旨(干渉信号電力の低減量および干渉チャネル情報を含む)の通知を受けると、その直前に無線送信の一時停止を要求した隣接基地局12に対し、該通知された干渉チャネル情報が示すチャネルの送信電力を該通知された低減量だけ低減するよう要求する。具体的には、後述する要求状態記憶部72に記憶される要求状態が「要求済」である隣接基地局12のうち整理番号が最も大きい基地局12宛てに、上記干渉信号電力の低減量および干渉チャネル情報を含む送信電力低減要求メッセージを作成し、通信I/F部64に出力する。
【0040】
図4は、要求状態記憶部72に記憶される情報の一例を示す図である。同図に示すように、要求状態記憶部72には、隣接基地局12を識別する基地局IDごとに、その基地局12に対して送信したメッセージに係る要求状態および要求内容が記憶されている。ここで、同図における要求状態「要求済」、「要求中」、「未要求」は、それぞれ「送信停止要求メッセージに対する応答を受け取った状態」、「送信停止要求メッセージを送信したがその応答を受け取っていない状態」、「送信停止要求メッセージを送信していない状態」を示している。なお、要求状態記憶部72における要求状態および要求内容は、送信制御要求部68が隣接基地局12に対して上記要求を行った時、要求を行った隣接基地局12からの応答を受けた時などに、制御部66により更新される。また、同図に示す要求内容は、後の動作解析やより高度な要求動作に用いられるものであり、必須の情報ではない。
【0041】
送信制御部70は、隣接基地局12からの要求に従って、無線送信の一時停止や送信電力の低減などを行うものである。すなわち、送信制御部70は、隣接基地局12から送信停止要求メッセージを受信すると、一時的に(たとえば1フレームだけ)全サブチャネルの無線送信を停止するよう無線部52に指示するとともに、無線送信を一時停止した旨の応答を送信停止要求メッセージの送信元に返信する。
【0042】
また、送信制御部70は、隣接基地局12から送信電力低減要求メッセージを受信すると、該メッセージに含まれる干渉チャネル情報が示すチャネルの送信電力を該メッセージに含まれる低減量だけ低減するよう、ベースバンド信号処理部58(マッピング部60)に指示する。
【0043】
なお、送信制御部70は、上記干渉チャネル情報が示すチャネルで継続中の通信に必要なCNR(Carrier to Noise Ratio:搬送波対雑音電力比)を下限とし、送信電力をそれ以下には下げないようにしてもよい。また、上記送信制御要求部68において、干渉信号電力の低減量のみを含む送信電力低減要求メッセージを作成するようにしてもよいが、この場合、送信制御部70は、全サブチャネルの送信電力が該メッセージに含まれる低減量だけ低減するよう、無線部52に指示する。
【0044】
次に、移動通信システム10における基地局12および移動局14の動作を図5に基づいて説明する。
【0045】
図5は、移動通信システム10の処理を示すシーケンス図である。ここでは、基地局12−1と通信中の移動局14が、基地局12−1のセル16−1と基地局12−3のセル16−3が重複するエリアに位置しており(図1参照)、基地局12−3からの送信波により移動局14においてキャリア間干渉が生じている場合を例に挙げて説明する。
【0046】
この場合、移動局14では、受信信号と既知の参照信号とに基づいて干渉信号が検出される。ただしこの時点では、検出された干渉信号がどの隣接基地局12から送信された信号であるかが不明であるため、移動局14は、干渉信号が検出された旨だけを基地局12−1に通知する(S100)。
【0047】
移動局14から干渉信号が検出された旨の通知を受けると、基地局12−1は、要求状態記憶部72に記憶される要求状態が「未要求」である隣接基地局12−2〜7に対し、整理番号の小さいものから順に無線送信の一時停止を要求する。ここでは、まず基地局12−2に無線送信の一時停止を要求する(S102)。そして、基地局12−2から無線送信を一時停止した旨の応答を受けると(S104)、基地局12−1は、所定時間(たとえば1フレーム)だけ、移動局14による干渉信号電力が低減した旨の通知を待機する(S106)。
【0048】
所定時間経過しても移動局14からの通知がない場合、すなわちタイムアウトした場合(S108)、基地局12−2に対する処理と同様の処理を基地局12−3に対して行う。すなわち、基地局12−1は、基地局12−3に対して無線送信の一時停止を要求する(S110)。その後、基地局12−3から無線送信を一時停止した旨の応答を受けると(S112)、基地局12−1は、所定時間だけ、移動局14による干渉信号電力が低減した旨の通知を待機する(S114)。
【0049】
ここでは、基地局12−3からの送信波が移動局14におけるキャリア間干渉を引き起こす場合を例示しているため、基地局12−3が無線送信を一時停止すると、それまで移動局14で検出されていた干渉信号の電力が低減する(ここではチャネルCH3における干渉信号電力がN[dB]だけ低減したものとする)。ここで、移動局14は、干渉信号電力が低減した旨(干渉信号電力の低減量N[dB]および該干渉信号に係るチャネル番号CH3を含む)を基地局12−1に通知する(S116)。
【0050】
タイムアウト前に移動局14から干渉信号電力が低減した旨の通知を受けると、基地局12−1は、直前に無線送信の一時停止を要求した基地局12−3による無線送信の停止と移動局14における干渉信号電力の低減とが相関する、すなわち基地局12−3が移動局14において検出された干渉信号の発信源である、と推定する。そして、基地局12−1は、その基地局12−3に対し、S116で通知されたチャネル番号CH3の送信電力をS116で通知された低減量N[dB]だけ低減するよう要求する(S118)。
【0051】
こうして、キャリア間干渉を引き起こした干渉信号の送信電力だけが低減されるため、干渉源である基地局12−3における送信電力の低減量を最小化しつつ、セルエッジ付近に位置する移動局14で発生したキャリア間干渉を好適に低減することができる。
【0052】
なお、移動通信システム10では、S116において「干渉信号電力全体」ではなく「干渉信号電力の低減量」を基地局12−1に通知するようにしているため、たとえキャリア間干渉を引き起こす干渉信号の発信源が基地局12−3以外に存在したとすると、すなわち、移動局14で検出された干渉信号の電力が2以上の干渉信号の合計電力であったとしても、上記シーケンスが2回以上繰り返し実行されることにより該2以上の干渉信号はそれぞれ低減されることになる。
【0053】
以上説明した移動通信システム10によれば、移動局14においてキャリア間干渉が発生しても、それを引き起こす干渉信号の送信電力が即座に低減されるため、隣接基地局12からの送信波が届きやすいセルエッジ付近でも、全周波数を用いて通信を行うことができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0055】
たとえば、上記実施形態では、基地局12が、その隣接基地局12に対して無線送信の一時停止や送信電力の低減を要求する構成、およびその隣接基地局12からの要求に従って無線送信の一時停止や送信電力の低減を行う構成、の両構成を有する例を示したが、基地局12は、そのいずれか一方の構成のみを有するようにしてもよい。
【0056】
また、干渉信号が検出された旨の通知を受けた基地局12は、その隣接基地局12だけでなく、通信中の移動局14に対して干渉を与え得る範囲内に位置する近接基地局12に対して、無線送信の一時停止および送信電力の低減を要求してもよい(近接する範囲≧隣接する範囲)。
【符号の説明】
【0057】
10移動通信システム、12基地局、14移動局、16セル(カバーエリア)、20,50アンテナ、22,52無線部、24,54IFFT部、26,56FFT部、28,58ベースバンド信号処理部、30,60マッピング部、32,62デマッピング部、34干渉検出部、36相関演算部、38,66制御部、40干渉情報通知部、64通信I/F部、68送信制御要求部、70送信制御部、72要求状態記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交周波数分割多元接続方式により移動局装置と通信を行う複数の基地局装置を含む移動通信システムであって、
前記移動局装置は、
受信信号に基づいて、前記基地局装置との通信に用いるチャネルに干渉を与える干渉信号を検出する干渉検出手段と、
前記干渉検出手段により干渉信号が検出された場合に、干渉信号の検出を前記基地局装置に通知する干渉通知手段と、
前記干渉検出手段により検出された干渉信号の電力が低減した場合に、該干渉信号電力の低減量を前記基地局装置に通知する干渉電力低減量通知手段と、
を含み、
前記基地局装置は、
前記干渉通知手段による通知を受けてから前記干渉電力低減量通知手段による通知を受けるまで、近接する基地局装置に対し順次、無線送信の一時停止を要求する送信停止要求手段と、
前記干渉電力低減量通知手段による通知を受けた場合に、前記送信停止要求手段がその直前に無線送信の一時停止を要求した基地局装置に対し、各チャネルの送信電力を該通知に係る低減量だけ低減するよう要求する送信電力低減要求手段と、
を含むことを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
直交周波数分割多元接続方式により基地局装置と通信を行う移動局装置であって、
受信信号に基づいて、前記基地局装置との通信に用いるチャネルに干渉を与える干渉信号を検出する干渉検出手段と、
前記干渉検出手段により干渉信号が検出された場合に、干渉信号の検出を前記基地局装置に通知する干渉通知手段と、前記干渉検出手段により検出された干渉信号の電力が低減した場合に、該干渉信号電力の低減量を前記基地局装置に通知する干渉電力低減量通知手段と、
を含むことを特徴とする移動局装置。
【請求項3】
直交周波数分割多元接続方式により移動局装置と通信を行う基地局装置であって、
前記移動局装置により干渉信号の検出を通知されてから該移動局装置により該干渉信号電力の低減量を通知されるまで、近接する基地局装置に対し順次、無線送信の一時停止を要求する送信停止要求手段と、
前記移動局装置により前記干渉信号電力の低減量を通知された場合に、前記送信停止要求手段がその直前に無線送信の一時停止を要求した基地局装置に対し、各チャネルの送信電力を前記低減量だけ低減するよう要求する送信電力低減要求手段と、
を含むことを特徴とする基地局装置。
【請求項4】
直交周波数分割多元接続方式により基地局装置と通信を行う移動局装置に対する干渉波を低減する通信制御方法であって、
前記移動局装置が、
受信信号に基づいて、前記基地局装置との通信に用いるチャネルに干渉を与える干渉信号を検出する干渉検出ステップと、
前記干渉検出ステップで干渉信号が検出された場合に、干渉信号の検出を前記基地局装置に通知する干渉通知ステップと、
前記干渉検出ステップで検出された干渉信号の電力が低減した場合に、該干渉信号電力の低減量を前記基地局装置に通知する干渉電力低減量通知ステップと、
を含み、
前記基地局装置が、
前記干渉通知ステップによる通知を受けてから前記干渉電力低減量通知ステップによる通知を受けるまで、近接する基地局装置に対し順次、無線送信の一時停止を要求する送信停止要求ステップと、
前記干渉電力低減量通知ステップによる通知を受けた場合に、その直前の前記送信停止要求ステップで無線送信の一時停止を要求された基地局装置に対し、各チャネルの送信電力を該通知に係る低減量だけ低減するよう要求する送信電力低減要求ステップと、
を含むことを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102479(P2013−102479A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282293(P2012−282293)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2011−173444(P2011−173444)の分割
【原出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】