説明

移動通信システム、携帯端末装置及びそれらに用いる携帯端末位置測位方法並びにそのプログラム

【課題】 OTDOA方式の場合において、測位に必要な見通し無線基地局装置が3地点必要なところ、見通しの悪い場所等の条件によって2地点の情報のみで測位することが可能となる移動通信システムを提供する。
【解決手段】 疑似無線基地局装置(d)の位置(座標Xd,Yd)は、無線基地局装置(1)の位置情報(座標X1,Y1)と、携帯端末装置の位置情報(座標X,Y)と、無線基地局装置(1)と携帯端末装置との間のRTT情報とから、無線基地局装置(1)のY座標と等しい位置で、かつ、X座標が携帯端末装置のX座標を軸として対称の位置としている。携帯端末装置は無線基地局装置(1)、無線基地局装置(2)、疑似無線基地局装置(d)の3地点の座標から、位置情報(座標X,Y)を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信システム、携帯端末装置及びそれらに用いる携帯端末位置測位方法並びにそのプログラムに関し、特に移動通信システムの携帯端末装置の位置測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯端末位置測位方式であるOTDOA(Observed Time Difference Of Arrival)測位においては、図5に示すように、携帯端末装置(UE:User Equipment)にて無線基地局装置(BTS:Base Tarminal Station)(1),(2)、無線基地局装置(2),(3)及び無線基地局装置(1),(3)からの送信タイミング信号の到達時間差をそれぞれ測定している。
【0003】
携帯端末装置はそれらの時間差を2地点間の距離差に換算し、その距離差が一定になる放物線(双曲線)を引き、その放物線の交点を携帯端末装置の位置として求めている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】“Stage 2 Function Specification of UE Positioning in UTRAN 9.OTDOA positioning method”[3GPP(3rd Generation Partnership Project) TS 25.305 V3.4.0(2000−12)]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の携帯端末位置測位方式では、携帯端末位置を測位する場合、無線基地局装置からの送信タイミング信号が最低3つ必要となっているため、2つの無線基地局装置からの送信タイミング信号の受信のみとなる場合には、上記の測位の効果が得られないという問題がある。
【0006】
この場合、例えば、図6の破線に示すように、無線基地局装置(3)が存在しない場所に、携帯端末装置が位置している時には、2つの無線基地局装置からの測位では破線の放物線の情報が得られないため、携帯端末装置は実線の放物線上のどこかに存在するが、その位置を限定することができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、OTDOA方式の場合において、測位に必要な見通し無線基地局装置が3地点必要なところ、見通しの悪い場所等の条件によって2地点の情報のみで測位することができる移動通信システム、携帯端末装置及びそれらに用いる携帯端末位置測位方法並びにそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による移動通信システムは、複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に携帯端末装置の位置測位を行う移動通信システムであって、
前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行う手段を前記携帯端末装置に備えている。
【0009】
本発明による携帯端末装置は、複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に位置測位を行う携帯端末装置であって、
前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行う手段を備えている。
【0010】
本発明による携帯端末位置測位方法は、複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に携帯端末装置の位置測位を行う移動通信システムに用いる携帯端末位置測位方法であって、前記携帯端末装置側に、前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行うステップを備えている。
【0011】
本発明による携帯端末位置測位方法のプログラムは、複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に携帯端末装置の位置測位を行う移動通信システムに用いる携帯端末位置測位方法のプログラムであって、前記携帯端末装置側のコンピュータに、前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行う処理を実行させている。
【0012】
すなわち、本発明の移動通信システムは、位置情報サービスに関し、特にLCS(LoCation Services:ロケーションサービス)方式の一つであるOTDOA(Observed Time Difference OF Arrival)測位について、携帯端末装置が受信する電波情報として3地点の異なる基地局からのパスが必要なところ、2地点からの電波情報のみを受信することができ、残りの1地点の電波情報が入手困難な場所においても、擬似的な基地局位置情報及び無線基地局装置(BTS:Base Tarminal Station)と携帯端末装置(UE:User Equipment)との間の電波のRTT(Round Trip Time:伝搬遅延時間)情報を使用することで、携帯端末位置を特定することを特徴としている。
【0013】
より具体的に説明すると、本発明の移動通信システムとしては、例えばIMT2000(International Mobile Telecommunications−2000)の3GPP(3rd Generation Partnership Project)における移動通信システムの無線基地局装置と携帯端末装置とについて述べる。
【0014】
携帯端末装置の位置を測位する方式であるOTDOA方式においては、測位に必要な3地点からの電波情報が2地点に制限される環境における携帯端末位置を検出することを目的としている。
【0015】
携帯端末装置の位置測位方式であるOTDOA測位においては、携帯端末装置にて無線基地局装置から送信される送信タイミング信号の到達時間を測定し、例えば図5の3つの無線基地局装置(1)〜(3)からの到達時間をT1,T2,T3として、それぞれの時間差T1−T2,T1−T3を計算し、その時間差を2地点間の距離差に換算して、その距離差が一定になる放物線(双曲線)を引くと、その放物線の交点が携帯端末装置の位置として求めることが可能である。尚、各無線基地局装置間の送信タイミングは、同一時刻に送信されるように補正されている値を使用することを前提とする。
【0016】
以上が、一般に、OTDOA測位といわれるLCS方式であるが、このLCS方式の場合、3つの無線基地局装置からの送信タイミング信号が必要となるため、例えば、図6に示すように、海岸線付近に携帯端末装置が位置する場合には、2つの無線基地局装置からの送信タイミング信号の受信のみとなる場合がある。本発明の移動通信システムでは、このような2つの送信タイミングの受信のみとなった場合に、疑似無線基地局装置(d)を3つ目の無線基地局装置情報として擬似的に設けることで、携帯端末装置の位置測位の計算上の値として使うことが可能である。
【0017】
本発明の移動通信システムでは、疑似無線基地局装置(d)の位置(座標Xd,Yd)を、無線基地局装置(1)の位置情報(座標X1,Y1)と、携帯端末装置の位置情報(座標X,Y)と、無線基地局装置(1)と携帯端末装置との間のRTT情報とから、無線基地局装置(1)のY座標と等しい位置で、かつ、X座標は携帯端末装置のX座標を軸として対称の位置とし、無線基地局装置(1),無線基地局装置(2),疑似無線基地局装置(d)の3地点の座標から、携帯端末装置の位置情報(座標X,Y)を算出する。
【0018】
本発明の移動通信システムでは、上述した疑似無線基地局装置(d)の座標とRTT情報とを使用して、OTDOA測位の計算を行うことで、2つの無線基地局装置からの情報のみで、携帯端末装置の位置を求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下に述べるような構成及び動作とすることで、OTDOA方式の場合において、測位に必要な見通し無線基地局装置が3地点必要なところ、見通しの悪い場所等の条件によって2地点の情報のみで測位することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態による移動通信システムにおける位置情報サービスを示す図である。図1において、本発明の実施の形態による移動通信システムは、IMT2000(International Mobile Telecommunications−2000)の3GPP(3rd Generation Partnership Project)における移動通信システムであり、以下の説明では無線基地局装置(BTS:Base Tarminal Station)と携帯端末装置(UE:User Equipment)とについて述べる。
【0021】
携帯端末装置の位置を測位する方式であるOTDOA(Observed Time Difference OF Arrival)方式について測位に必要な3地点からの電波情報が2地点に制限される環境における携帯端末位置を検出することを目的としている。
【0022】
携帯端末位置測位方式であるOTDOA測位においては、携帯端末装置にて無線基地局装置から送信される送信タイミング信号の到達時間を測定し、例えば図5の3つの無線基地局装置(1)〜(3)からの到達時間をT1,T2,T3として、それぞれの時間差T1−T2,T1−T3を計算し、その時間差を2地点間の距離差に換算し、その距離差が一定になる放物線(双曲線)を引くと、その放物線の交点が携帯端末装置の位置として求めることができる。尚、各無線基地局装置間の送信タイミングは、同一時刻に送信されるように補正されている値を使用することを前提とする(上記の非特許文献1参照)。
【0023】
以上が、一般に、OTDOA測位といわれるLCS(LoCation Services:ロケーションサービス)方式であるが、このLCS方式の場合、3つの無線基地局装置からの送信タイミング信号が必要となるため、例えば、図6に示すように、海岸線付近に携帯端末装置が位置する場合には、2つの無線基地局装置からの送信タイミング信号の受信のみとなる場合がある。
【0024】
本発明の実施の形態では、このような2つの送信タイミングの受信のみとなった場合に、図1に示す疑似無線基地局装置(d)を3つ目の無線基地局装置情報として擬似的に設けることで、携帯端末装置の位置測位の計算上の値として使うことができる。
【0025】
本発明の実施の形態では、図1に示すように、疑似無線基地局装置(d)の位置(座標Xd,Yd)を、無線基地局装置(1)の位置情報(座標X1,Y1)と、携帯端末装置の位置情報(座標X,Y)と、無線基地局装置(1)と携帯端末装置との間のRTT(Round Trip Time:伝搬遅延時間)情報とから、無線基地局装置(1)のY座標と等しい位置で、かつ、X座標が携帯端末装置のX座標を軸として対称の位置としている。携帯端末装置は無線基地局装置(1)、無線基地局装置(2)、疑似無線基地局装置(d)の3地点の座標から位置情報(座標X,Y)を算出する。
【0026】
本発明の実施の形態では、上記の疑似無線基地局装置(d)の座標とRTT情報とを使用してOTDOA測位の計算を行うことで、2つの無線基地局装置からの情報のみで、携帯端末装置の位置を求めることができる。
【実施例1】
【0027】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図2は本発明の一実施例による携帯端末装置の構成を示すブロック図である。図2において、携帯端末装置1は送信タイミング信号受信部11と、受信時刻タイムスタンプ部12と、RTT算出部13と、送信タイミング信号到達時間差算出部14と、無線基地局装置間距離差算出部15と、無線携帯端末座標算出部16と、上記の各部を実現するためのプログラムを格納する記録媒体17とから構成されている。
【0028】
送信タイミング信号受信部11は測位開始をトリガに、無線基地局装置(1)及び無線基地局装置(2)各々固有の送信タイミング信号を受信し、受信時刻タイムスタンプ部12はそれら送信タイミング信号の受信時刻をタイムスタンプする。RTT算出部13は無線基地局装置(1)からの送信タイミング信号のタイムスタンプと、その送信タイミング信号の受信時刻のタイムスタンプT1とからRTTを算出する。
【0029】
送信タイミング信号到達時間差算出部14は送信タイミング信号各々の受信時刻のタイムスタンプT1,T2から無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)との間の送信タイミング信号到達時間差T(1)−T(2)と、疑似無線基地局装置(d)と無線基地局装置(1)との間の送信タイミング信号到達時間差T(1)−T(d)とを求める。
【0030】
無線基地局装置間距離差算出部15は無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)との間の送信タイミング信号到達時間差T(1)−T(2)から無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)との間の距離差D(1)−D(2)を求め、疑似無線基地局装置(d)と無線基地局装置(1)との間の送信タイミング信号到達時間差T(1)−T(d)から無線基地局装置(1)と疑似無線基地局装置(d)との距離差を求める。
【0031】
無線携帯端末座標算出部16は上記の無線基地局装置間距離差算出部15の処理で求めた2点間の距離差同士の連立方程式から交点を求め、携帯端末装置1の座標を求める。
【0032】
尚、上述した携帯端末装置1の構成は位置測位に関する構成のみを記載しており、音声やデータの送受信、各種処理を行う機能については公知であるので、それらの機能の図示及び説明を省略する。
【0033】
本発明の一実施例による移動通信システムは、上記の図1に示す本発明の実施の形態による移動通信システムと同様の構成となっており、無線基地局装置(1)と、無線基地局装置(2)と、携帯端末装置と、実存しない第三の無線基地局装置の位置情報としての疑似無線基地局装置(d)とから構成されている。
【0034】
本実施例では、疑似無線基地局装置(d)の位置を、無線基地局装置(1)のY座標と等しい位置で、かつ、X座標が携帯端末装置のX座標を軸として対称の位置としている。
【0035】
図3は本発明の一実施例による携帯端末装置1の位置測位方法の処理を示すタイムチャートである。これら図1〜図3を参照して本発明の一実施例による携帯端末装置1の位置測位方法について説明する。尚、図3における携帯端末装置1の処理は携帯端末装置1のCPU(中央処理装置)(図示せず)が記録媒体17のプログラムを実行することで実現される。
【0036】
無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)とはそれぞれ固有の送信タイミング信号に送信時刻をタイムスタンプして送信する(送信タイミング信号+タイムスタンプ)(図3のa2,a3)。
【0037】
携帯端末装置1は測位開始をトリガに(図3のa1)、送信タイミング信号受信部11にて各無線基地局装置固有の送信タイミング信号を受信し、受信時刻タイムスタンプ部12にて受信時刻をタイムスタンプする(T1,T2)(図3のa4,a5)。
【0038】
また、携帯端末装置1はRTT算出部13にて無線基地局装置(1)の送信タイミング信号のタイムスタンプと受信時刻タイムスタンプ部12による送信タイミング信号の受信時刻のタイムスタンプT1とからRTTを算出する(図3のa6)。
【0039】
次に、携帯端末装置1は送信タイミング信号到達時間差算出部14にて受信時刻のタイムスタンプT1,T2から無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)との間の送信タイミング信号到達時間差T(1)−(2)を求め、無線基地局装置間距離差算出部15にて無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)との間の距離差D(1)−(2)を求める[下記の計算例の式(A)参照](図3のa7)。
【0040】
上記と同様に、携帯端末装置1は送信タイミング信号到達時間差算出部14にて受信時刻のタイムスタンプT1,Tdから無線基地局装置(1)と疑似無線基地局装置(d)との間の送信タイミング信号到達時間差T(1)−(d)を求め、無線基地局装置(1)と疑似無線基地局装置(d)との距離差D(1)−(d)を求める[下記の計算例の式(B)参照](図3のa7)。
【0041】
携帯端末装置1は無線携帯端末座標算出部16にて、上述した処理によって求めた2点間の距離差同士の連立方程式から交点を求め、携帯端末装置1の座標を求める(図3のa8)。
【0042】
以下、計算例を基に本発明の一実施例による携帯端末装置1の位置測位の動作について説明する。
【0043】
携帯端末装置1では無線基地局装置(1)及び無線基地局装置(2)からの送信タイミング信号を、それぞれ識別できる機能をもっている。RTTは無線基地局装置(1)が送信タイミング信号を送信した時刻(送信タイミング信号の送信時刻のタイムスタンプ)と、携帯端末装置1が受信した時刻(送信タイミング信号の受信時刻のタイムスタンプ)との差から求める。また、到達時間差は無線基地局装置(1)及び無線基地局装置(2)からの送信タイミング信号の到達時間の差から求める。以下、計算例について述べる。
【0044】
無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)との間の到達時間差をT(1)−(2)とし、無線基地局装置(1)と疑似無線基地局装置(d)との間の到達時間差をT(1)−(d)とすると、これによって、無線基地局装置(1)と無線基地局装置(2)との距離差は、
D(1)−(2)=(T(1)−(2))×C
となる。ここで、Cは光速である。また、無線基地局装置(1)と疑似無線基地局装置(d)との距離差は、
D(1)−(d)=(T(1)−(d))×C
となる。
【0045】
ここで、無線基地局装置(1)、無線基地局装置(2)、疑似無線基地局装置(d)各々の座標が、
無線基地局装置(1):(X(1),Y(1))
無線基地局装置(2):(X(2),Y(2))
無線基地局装置(d):(X(d),Y(d))
というように与えられるとすると、この時に算出したい携帯端末装置1の座標(X,Y)は、
【数1】

・・・(A)
【数2】

・・・(B)
という連立方程式を解くことで得ることができる。
【0046】
また、疑似無線基地局装置(d)の座標(X(d),Y(d))を、
Y(d)=Y(1) ・・・<条件1>
携帯端末装置1と無線基地局装置(1)との伝搬遅延時間(RTT1)=携帯端末装置1と疑似無線基地局装置(d)との伝搬遅延時間(RTTd)とした時の、
T(1)−(d)=0 ・・・<条件2>
r=RTT1×C(携帯端末装置と無線基地局装置1との伝搬遅延時間×光速)とした時の携帯端末装置の座標(X,Y)から、
【数3】

・・・<条件3>
という条件1〜3に基づいて求める。これら条件1〜3を上記の(A)式及び(B)式の連立方程式に代入すると、携帯端末装置の座標(X,Y)を求めることができる。
【0047】
このように、本実施例では、携帯端末装置1の測位に必要な3地点の無線基地局装置からの情報のうち、1地点の無線基地局装置情報について疑似的な基地局位置情報を使うことによって、二つの異なる無線基地局装置からの送信タイミングだけで携帯端末装置1の位置を測位することができる。
【実施例2】
【0048】
図5は本発明の他の実施例による移動通信システムにおける位置情報サービスを示す図である。この図5を参照して本発明の他の実施例による移動通信システムにおける位置情報サービスについて説明する。本発明の他の実施例による移動通信システムの基本構成は図1に示す本発明の実施の形態による移動通信システムと同様である。
【0049】
本実施例では、図1に示す疑似無線基地局装置(d)の座標情報の条件について、Y座標を携帯端末装置のY座標を軸として対称の位置としている。また、本発明の他の実施例による携帯端末装置の位置測位に関する構成は上記の図2に示す本発明の一実施例による携帯端末装置1と同様である。
【0050】
本実施例では、疑似無線基地局装置(d)の座標(X(d),Y(d))を、
X(d)=X(2) ・・・<条件1b>
携帯端末装置1と無線基地局装置(2)との伝搬遅延時間(RTT2)=携帯端末装置1と疑似無線基地局装置(d)との伝搬遅延時間(RTTd)とした時の、
T(2)−(d)=0 ・・・<条件2b>
r=RTT1×C(携帯端末装置1と無線基地局装置(1)との伝搬遅延時間×光速)とした時の携帯端末装置1の座標(X,Y)から、
【数4】

・・・<条件3b>
という条件に基づいて求める。
【0051】
条件1b、条件2b、条件3bを、
【数5】

・・・(C)
【数6】

・・・(D)
という連立方程式に代入すると、携帯端末装置1の座標(X,Y)を求めることができる。
【0052】
本実施例では、Y座標を軸とした疑似無線基地局装置計算も可能となり、上記の本発明の一実施例との組み合わせで使用することで、携帯端末装置1の位置情報の誤差が小さくなるという選択が増えるといった、新たな効果を奏する。これは2つの放物線の交点の角度が鋭角な程、誤差が小さいためである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態による移動通信システムにおける位置情報サービスを示す図である。
【図2】本発明の一実施例による携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例による携帯端末装置1の位置測位方法の処理を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の他の実施例による移動通信システムにおける位置情報サービスを示す図である。
【図5】従来の移動通信システムにおける位置情報サービスを示す図である。
【図6】従来の移動通信システムにおける位置情報サービスを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 携帯端末装置
11 送信タイミング信号受信部
12 受信時刻タイムスタンプ部
13 RTT算出部
14 送信タイミング信号到達時間差算出部
15 無線基地局装置間距離差算出部
16 無線携帯端末座標算出部
17 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に携帯端末装置の位置測位を行う移動通信システムであって、
前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行う手段を前記携帯端末装置に有することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記位置測位を行う手段は、特定の無線基地局装置から前記携帯端末装置への伝搬遅延時間と前記疑似無線基地局装置の位置情報とを利用して前記位置測位を行うことを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記複数の無線基地局装置各々がそれぞれ固有の送信タイミング信号に送信時刻をタイムスタンプして送信し、
前記携帯端末装置が測位開始をトリガに前記無線基地局装置各々からの送信タイミング信号の受信時刻をタイムスタンプし、
前記伝搬遅延時間を前記送信時刻のタイムスタンプと前記受信時刻のタイムスタンプとから算出することを特徴とする請求項2記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記疑似無線基地局装置の位置情報は、前記特定の無線基地局装置のY座標と等しい位置で、かつ、X座標が前記携帯端末装置のX座標を軸として対称の位置となるようにしたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記疑似無線基地局装置の位置情報は、前記電波情報が入手可能な無線基地局装置のうちの前記特定の無線基地局装置以外の無線基地局装置のX座標と等しい位置で、かつ、Y座標が前記携帯端末装置のY座標を軸として対称の位置となるようにしたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか記載の移動通信システム。
【請求項6】
前記位置測位にOTDOA(Observed Time Difference OF Arrival)方式を用いることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載の移動通信システム。
【請求項7】
複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に位置測位を行う携帯端末装置であって、
前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行う手段を有することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項8】
前記位置測位を行う手段は、特定の無線基地局装置から前記携帯端末装置への伝搬遅延時間と前記疑似無線基地局装置の位置情報とを利用して前記位置測位を行うことを特徴とする請求項7記載の携帯端末装置。
【請求項9】
前記複数の無線基地局装置各々がそれぞれ固有の送信タイミング信号に送信時刻をタイムスタンプして送信し、
自端末が測位開始をトリガに前記無線基地局装置各々からの送信タイミング信号の受信時刻をタイムスタンプし、前記伝搬遅延時間を前記送信時刻のタイムスタンプと前記受信時刻のタイムスタンプとから算出することを特徴とする請求項8記載の携帯端末装置。
【請求項10】
前記疑似無線基地局装置の位置情報は、前記特定の無線基地局装置のY座標と等しい位置で、かつ、X座標が自端末のX座標を軸として対称の位置となるようにしたことを特徴とする請求項8または請求項9記載の携帯端末装置。
【請求項11】
前記疑似無線基地局装置の位置情報は、前記電波情報が入手可能な無線基地局装置のうちの前記特定の無線基地局装置以外の無線基地局装置のX座標と等しい位置で、かつ、Y座標が自端末のY座標を軸として対称の位置となるようにしたことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか記載の携帯端末装置。
【請求項12】
前記位置測位にOTDOA(Observed Time Difference OF Arrival)方式を用いることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか記載の携帯端末装置。
【請求項13】
複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に携帯端末装置の位置測位を行う移動通信システムに用いる携帯端末位置測位方法であって、前記携帯端末装置側に、前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行うステップを有することを特徴とする携帯端末位置測位方法。
【請求項14】
前記位置測位を行うステップは、特定の無線基地局装置から前記携帯端末装置への伝搬遅延時間と前記疑似無線基地局装置の位置情報とを利用して前記位置測位を行うことを特徴とする請求項13記載の携帯端末位置測位方法。
【請求項15】
前記複数の無線基地局装置各々がそれぞれ固有の送信タイミング信号に送信時刻をタイムスタンプして送信し、
前記携帯端末装置が測位開始をトリガに前記無線基地局装置各々からの送信タイミング信号の受信時刻をタイムスタンプし、
前記伝搬遅延時間を前記送信時刻のタイムスタンプと前記受信時刻のタイムスタンプとから算出することを特徴とする請求項14記載の携帯端末位置測位方法。
【請求項16】
前記疑似無線基地局装置の位置情報は、前記特定の無線基地局装置のY座標と等しい位置で、かつ、X座標が前記携帯端末装置のX座標を軸として対称の位置となるようにしたことを特徴とする請求項14または請求項15記載の携帯端末位置測位方法。
【請求項17】
前記疑似無線基地局装置の位置情報は、前記電波情報が入手可能な無線基地局装置のうちの前記特定の無線基地局装置以外の無線基地局装置のX座標と等しい位置で、かつ、Y座標が前記携帯端末装置のY座標を軸として対称の位置となるようにしたことを特徴とする請求項14から請求項16のいずれか記載の携帯端末位置測位方法。
【請求項18】
前記位置測位にOTDOA(Observed Time Difference OF Arrival)方式を用いることを特徴とする請求項13から請求項17のいずれか記載の携帯端末位置測位方法。
【請求項19】
複数の無線基地局装置からの電波情報による位置情報を基に携帯端末装置の位置測位を行う移動通信システムに用いる携帯端末位置測位方法のプログラムであって、前記携帯端末装置側のコンピュータに、前記電波情報が入手可能な無線基地局装置の位置情報を基に設定した疑似無線基地局装置の位置情報を利用して前記位置測位を行う処理を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−71389(P2006−71389A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253687(P2004−253687)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】