説明

移動通信システム、無線ネットワーク制御装置、サービス提供GPRSサポートノード、および、移動通信方法

【課題】Iu Flex方式を適用し且つコンバイン位置登録を行う移動通信システムにおける、MSCとRNCとの間の経路である所謂Iu区間に障害が発生している場合にもCSドメインでの通信を確保することができる移動通信システム、無線ネットワーク制御装置、サービス提供GPRSサポートノード、および、移動通信方法を提供する。
【解決手段】RNC122が、何れかのSGSN(#1、#2)131,132に位置登録要求を送信するに先立って、自装置と接続されるMSC(#1、#2)141,142との間のヘルスチェック情報を該当するSGSN(#2)132に通知し、SGSN(#2)132が、上記通知されたヘルスチェック情報に基づいて位置登録要求の送信先とするMSC(#1)を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Iu Flex方式を採り且つコンバイン位置登録を行う移動通信システム、無線ネットワーク制御装置、サービス提供GPRSサポートノード、および、移動通信方法に関し、特に、移動端末装置が在圏するRC(無線ネットワーク制御装置)およびMSC(音声系交換機)間の回線に障害が発生した場合でも、CS(回線交換)ドメインでの通信を行うことを可能にした、移動通信システム、無線ネットワーク制御装置、サービス提供GPRSサポートノード、および、移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムは、3GPP/GSMA等の国際標準化機関によって、通信プロトコルの標準化、ネットワーク設定情報の共有、相互接続試験条件の標準化等が実施されてきた。
移動通信システムにおけるネットワークの方式として規定されたVLR方式では、位置登録を契機に、交換機毎に付帯するVLRに加入者情報をダウンロードし、移動機の位置情報と加入者情報を管理する。
【0003】
このVLR方式では、近年、Iu Flexと呼ばれる分散処理方式が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
Iu Flexは、複数の各RNCが複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれと選択的に接続され得る形でCNと接続されることを可能にした方式である。
【0004】
ここに、RNC(Radio Network Controller) はNodeB(基地局装置)の制御を行う無線ネットワーク制御装置である。また、CN(Core Network)はMSC(Mobile Switching Centre)およびSGSN(Serving GPRS(General Packet Radio Service)Support Node)を含むネットワークである。
この複数のSGSNが共通に管理する複数のRNCの集合や、複数のMSCが共通に管理する複数のRNCの集合をプールエリア(pool-area)と称する。
【0005】
Iu Flexでは、CNにおける何れかのノードが故障した場合でも、当該ノードに関わる特定エリアの全断を回避することができる。また、制御信号の授受や設備の規模の増加を抑制することが可能になるといった利点がある。
図5は、Iu Flex方式を採り、且つ、コンバイン位置登録を行う仕様の、従来の移動通信システムの構成を表す構成図である。
【0006】
コンバイン位置登録(Combined Update)では、移動端末装置からCSドメインに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのSGSNが位置登録要求を
受信し、SGSNがCSドメインに対して位置登録処理を行わせる。
位置登録エリア110は、ここを賄う複数のRAN(Radio Access Network)ノード111、112、113、および、114によって画定されている。
【0007】
これらのRANノード111、112、113、および、114のうちRANノード111および112は一のRNC121の管理下に置かれ、また、RANノード113および114は他のRNC122の管理下に置かれている。
そして、これらRNC121および122に対応する、SGSN(#1)131およびSGSN(#2)132が設けられている。
【0008】
図5の移動通信システムはIu Flex方式をとるものであるため、RNC121および122は、それぞれがSGSN(#1)131およびSGSN(#2)132のうち何れのSGSNとも選択的に接続可能である。
また、図5に例示された状態では、SGSN(#1)131およびSGSN(#2)132のうちSGSN(#2)132(これに付帯するVLR)に当該移動端末装置に関する情報であるプロファイル(図において「PF」と表記)が保持されている。
そして、上述のSGSN(#1)131、および、SGSN(#2)132は、これらに対応して設けたMSC(#1)141およびMSC(#2)142の何れとも選択的に接続可能である。
【0009】
図5に例示された状態では、MSC(#2)142(これに付帯するVLR)に当該移動端末装置に関するプロファイルPFが既に保持されている。
図5において、当該移動端末装置は、移動その他の所定の契機が到来したときに、位置登録エリア110におけるRANノード111、112、113、および、114のうちの何れかのRANノード(ここではRANノード114)を通してRNC122に位置登録要求を送信する。この位置登録要求を受けたRNC122は、本例の場合、プロファイルPFが既に保持されているSGSN(#2)132にその位置登録要求を送信する(矢線A51)。
【0010】
SGSN(#2)132は、更に、MSC(#1)141およびMSC(#2)142のうち、プロファイルPFが既に保持されているMSC(#2)142に位置登録要求を送信する(矢線A52)。
図5を参照して説明する状況は、RNC122とMSC(#2)142との間の経路である所謂Iu区間に障害が発生している場合を想定している。ここに、Iu区間における障害とは、この区間に該当するスイッチやルータまたはポートに関するハードウェア上の作動不良等により正規の通信が不能になった状態等である。
【0011】
この想定の下では、RANノード114からRNC122を経て(矢線A53)、更に、上述のように障害が発生しているIu区間を経て(矢線A54)、MSC(#2)142に到る経路でのCSドメインでの通信を行うことができず、また、位置登録処理において、この経路を回避することもなされない。この場合、CSドメインでの発信はRNCが別のMSCへ信号を送信する態様をとる。しかし、プロファイルがないため呼処理が不能となり、コンバイン位置登録が行われる。ここで再度区間故障が発生しているRNC、MSCの組を選択してしまうため、復旧が行われないという問題が発生する。
【0012】
次に、図6を参照して図5の移動通信システムの動作について更に詳細に説明する。
図6は、図5の移動通信システムにおけるコンバイン位置登録の動作を表すシーケンスチャートである。
当該移動端末装置からRNC122に「Initial Direct Transfer」と表記の初期設定を行う信号を送る(ステップS601)。
ステップS601での上記信号を受けたRNC122では、「Initial UE Message」信号、即ちRNCとMSC/SGSNの間の初期設定を要求する信号を、サービス提供GPRSサポートノードであるSGSN(#2)132に供給する(ステップS602)。
次いで、当該移動端末装置は、既述のコンバイン位置登録を行うべく、SGSN(#2)132へのPSドメインの位置登録信号である「Routing Area Update Request」を送信する(ステップS603)。
【0013】
ステップS603での位置登録信号を受けて、SGSN(#2)132は、プロファイルPFが既に保持されているMSC(#2)142にその位置登録要求を送信するべきところ、既述のように、RNC122とMSC(#2)142との間の経路である所謂Iu区間には障害が発生している。ところが、従来の移動通信システムでは、SGSN(#2)132が保持しているプロファイルで上記障害が発生している経路に当たるMSC(#2)142に送信を行う必要がないと判断してしまう。従って、MSC(#2)142において位置登録要求が実行されることはない。
【0014】
そして、SGSN(#2)132は「Routing Area Update Accept」なる信号を当該移動端末装置に返して位置登録を終了してしまう(ステップS604)。
このように、従来の移動通信システムでは、Iu Flex方式を採りながらも、RNC122とMSC(#2)142との間のIu区間には障害が発生している場合には、SGSN(#2)132からMSC(#2)142へは、この障害を迂回した位置登録処理は実行されず、CSドメインでの通信は行えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】3GPP標準仕様 TS 23.236 「Intra-domain connection of Radio Access Network (RAN) nodes to multiple Core Network (CN) nodes」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上に説明したとおり、従来のIu Flex方式を適用し且つコンバイン位置登録(Combined Update)を行う移動通信システムでは、MSCとRNCとの間の経路である所謂Iu区間に障害が発生している場合にはCSドメインでの通信は不能になってしまう。
また、従来のヘルスチェックでは該当する個々のノードに加え、隣接するノード、および、隣接する区間について故障診断と障害発生時の対処が実行されるに留まり、上述のようなIu区間での障害の検知やその障害への対処手段を持たなかった。即ち、SGSNでは、SGSN自体 (個々のノード)、MSCとRNC(隣接するノード)、SGSN〜RNC間およびSGSN〜MSC間(隣接する区間)のヘルスチェックを行っている。尚、MSC〜RNC間は隣接していないが、後述する本発明においては確認対象としている。
【0017】
本発明は上述のような状況に鑑みてなされたものであり、Iu Flex方式を適用し且つコンバイン位置登録(Combined Update)を行う移動通信システムにおける、MSCとRNCとの間の経路である所謂Iu区間に障害が発生している場合にもCSドメインでの通信を確保することができる通信移動通信システム、無線ネットワーク制御装置、サービス提供GPRSサポートノード、および、移動通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、以下に列挙するような技術を提案する。
(1)複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムであって、
前記無線ネットワーク制御装置は、何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知し、
該当する前記サービス提供GPRSサポートノードは、該通知されたヘルスチェック情報に基づいて前記位置登録要求の送信先とする移動体サービス交換センタを選択することを特徴とする移動通信システム。
【0019】
上記(1)の移動通信システムでは、移動端末装置から送信された位置登録要求を無線ネットワーク制御装置を通してサービス提供GPRSサポートノードで選択された移動体サービス交換センタに送信するに際して、予め無線ネットワーク制御装置から通知された無線ネットワーク制御装置と移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェック情報に基づいて該位置登録要求の送信先とする移動体サービス交換センタが選択される。
【0020】
(2)複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムに適用される前記無線ネットワーク制御装置であって、
自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報を保持するヘルスチェック情報保持部と、
何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、前記ヘルスチェック情報保持部に保持された該当するヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知するヘルスチェック情報通知部と、
を備えていることを特徴とする無線ネットワーク制御装置。
【0021】
上記(2)の無線ネットワーク制御装置では、そのヘルスチェック情報保持部で、自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報を保持する。
また、そのヘルスチェック情報通知部で、何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、前記ヘルスチェック情報保持部に保持された該当するヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知する。
【0022】
これにより、移動端末装置から送信された位置登録要求を無線ネットワーク制御装置を通してサービス提供GPRSサポートノードで選択された移動体サービス交換センタに送信するに際して、前記サービス提供GPRSサポートノードにおいて、通知されたヘルスチェック情報に基づいて該位置登録要求の送信先とする移動体サービス交換センタが選択される。
【0023】
(3)複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムに適用される前記サービス提供GPRSサポートノードであって、
該当する前記無線ネットワーク制御装置から、その無線ネットワーク制御装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報の通知を受けるヘルスチェック情報受信部と、
前記ヘルスチェック情報受信部で受けたヘルスチェック情報に基づいて当該位置登録要求の送信先とする前記移動体サービス交換センタを選択する位置登録要求送信先選択部と、
を備えていることを特徴とするサービス提供GPRSサポートノード。
【0024】
上記(3)のサービス提供GPRSサポートノードでは、そのヘルスチェック情報受信部で、該当する前記無線ネットワーク制御装置から、その無線ネットワーク制御装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報の通知を受ける。
また、その位置登録要求送信先選択部で、前記ヘルスチェック情報受信部で受けたヘルスチェック情報に基づいて当該位置登録要求の送信先とする前記移動体サービス交換センタを選択する。
これにより、当該位置登録要求の送信先とする前記移動体サービス交換センタを選択するに際し、前記ヘルスチェック情報が反映される。
【0025】
(4)複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムにおける移動通信方法であって、
前記無線ネットワーク制御装置が、何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知するヘルスチェック情報通知ステップと、
該当する前記サービス提供GPRSサポートノードが、前記ヘルスチェック情報通知ステップで通知されたヘルスチェック情報に基づいて前記位置登録要求の送信先とする移動体サービス交換センタを選択する位置登録要求送信先選択ステップと、
を含んでいることを特徴とする移動通信方法。
【0026】
上記(4)の移動通信方法では、そのヘルスチェック情報通知ステップで、前記無線ネットワーク制御装置が、何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知する。
また、その位置登録要求送信先選択ステップで、該当する前記サービス提供GPRSサポートノードが、前記ヘルスチェック情報通知ステップで通知されたヘルスチェック情報に基づいて前記位置登録要求の送信先とする移動体サービス交換センタを選択する。
これにより、当該位置登録要求の送信先とする前記移動体サービス交換センタを選択するに際し、前記ヘルスチェック情報が反映される。
【発明の効果】
【0027】
Iu Flex方式を適用し且つコンバイン位置登録(Combined Update)を行う移動通信システムにおける、MSCとRNCとの間の経路である所謂Iu区間に障害が発生している場合にもCSドメインでの通信を確保することができる通信移動通信システム、無線ネットワーク制御装置、サービス提供GPRSサポートノード、および、移動通信方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一つの実施の形態としての移動通信システムの構成を表す構成図である。
【図2】図1の移動通信システムの動作を表すシーケンスチャートである。
【図3】図1の移動通信システムにおける無線ネットワーク制御装置を例示する機能ブロック図である。
【図4】図1の移動通信システムにおけるサービス提供GPRSサポートノードを例示する機能ブロック図である。
【図5】Iu Flex方式による従来の移動通信システムの構成を表す構成図である。
【図6】図5の移動通信システムの動作を表すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳述することにより、本発明を明らかにする。
(移動通信システム)
図1は、本発明の一つの実施の形態としての移動通信システムの構成を表す構成図である。
図1の移動通信システム10は、Iu Flex方式を採る。この移動通信システム10では、移動端末装置からCSドメインに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのSGSNが受信し、SGSNがCSドメインに対して位置登録処理を行う、所謂コンバイン位置登録(Combined Update)を行う。
【0030】
位置登録エリア110は、ここを賄う複数のRAN(Radio Access Network)ノード111、112、113、および、114によって画定されている。これらのRANノード111、112、113、および、114は、例えば、移動端末装置とコアネットワークとを結ぶNodeBである。
これらのRANノード111、112、113、および、114のうちRANノード111および112は一のRNC121の管理下に置かれ、また、RANノード113および114は他のRNC122の管理下に置かれている。
そして、これらRNC121および122に対応する、SGSN(#1)131およびSGSN(#2)132が設けられている。
【0031】
図1の移動通信システムはIu Flex方式をとるものであるため、RNC121および122は、それぞれがSGSN(#1)131およびSGSN(#2)132のうち何れのSGSNとも選択的に接続可能である。
また、図1に例示された状態では、SGSN(#1)131およびSGSN(#2)132のうちSGSN(#2)132(これに付帯するVLR)に当該移動端末装置に関するプロファイル(図において「PF」と表記)が保持されている。
そして、上述のSGSN(#1)131、および、SGSN(#2)132は、これらに対応して設けたMSC(#1)141およびMSC(#2)142の何れとも選択的に接続可能である。
【0032】
図1に例示された状態では、MSC(#2)142(これに付帯するVLR)に当該移動端末装置に関するプロファイルPFが既に保持されている。
図1において、当該移動端末装置は、移動その他の所定の契機が到来したときに、位置登録エリア110におけるRANノード111、112、113、および、114のうちの何れかのRANノード(ここではRANノード114)を通してRNC122に位置登録要求を送信する。この位置登録要求を受けたRNC122は、本例の場合、プロファイルPFが既に保持されているSGSN(#2)132にその位置登録要求を送信する。
【0033】
SGSN(#2)132は、更に、MSC(#1)141およびMSC(#2)142のうち、プロファイルPFが既に保持されているMSC(#2)142に必要に応じて位置登録要求を送信する。この場合、移動端末が移動等を行わない状態で、周期的に行う位置登録についてはSGSNによるMSCへの信号送信は行われない。
しかしながら、図1を参照して説明する状況では、RNC122とMSC(#2)142との間の経路である所謂Iu区間に障害が発生している場合を想定している。尚、既述のとおり、Iu区間における障害とは、この区間に該当するスイッチやルータまたはポートに関するハードウェア上の作動不良等により正規の通信が不能になった状態等である。
【0034】
従って、図5および図6を参照して説明した従来の移動通信システムでは、正常であるMSC(#1)141を利用して位置登録を行うことができないため、CSドメインでの通信が行えない状態に陥ってしまう。
これに対し、図1における本発明の実施の形態では、RNC122が自ノードとMSC(#2)142との通信に障害が発生している旨のCプレーン(コントロールプレーン)でのヘルスチェック信号をSGSN(#2)132に予め供給している(矢線A12)。
【0035】
SGSN(#2)132はこのヘルスチェック信号に依拠して、上記の障害に関係していないMSC(#1)141に対して位置登録要求を送信する。MSC(#1)141は、上述の位置登録要求に応じて位置登録処理を実行する。上述のように、RANノード114→SGSN(#2)132→MSC(#1)141の経路(矢線A11)で位置登録処理が実行され、RNC122とMSC(#2)142との間のIu区間における障害発生時においても、CSドメインでの通信を行うことが可能になる。
【0036】
次に、図2を参照して図1の移動通信システムの動作について更に詳細に説明する。
図2は、図1の移動通信システムの動作を表すシーケンスチャートである。
この実施の形態では、RNC122からSGSN(#2)132に、RNC122とMSC(#2)142との間では、両者間の経路に関し障害が発生している旨のCプレーンでのヘルスチェック信号である「Health Check」を、予め送信しておく(ステップS201)。
【0037】
上記ステップS201以降の時点で、当該移動端末装置からRNC122に向け「Initial Direct Transfer」なる初期設定を行う信号が送られると(ステップS202)、これを受けたRNC122では、「Initial UE Message」信号、即ちRNCとMSC/SGSNの間の初期設定を要求する信号を、サービス提供GPRSサポートノードであるSGSN(#2)132に供給する(ステップS203)。
【0038】
次いで、当該移動端末装置からSGSN(#2)132に対し「Routing Area Update Request」なる位置登録更新を要求する信号が送信される(ステップS204)。
SGSN(#2)132は、保持しているプロファイルPFより選択したMSCが、ステップS201で受けたヘルスチェック信号によって、障害が発生しているIu区間に係るMSC(#2)142であることを識別し、ステップS203のRNCとMSC(#2)142間の初期設定の要求を拒否する(ステップS205)。
【0039】
次いで、SGSN(#2)132は、移動端末装置とSGSNとの間のプロトコルとしての「Routing Area Update Reject」なる初期設定の要求を拒否する旨の通知を移動端末装置に返す(ステップS206)。
ステップS205の通知を受けた移動端末装置は、Attach手順を実行する。即ち、当該移動端末装置からRNC122に向け「Initial Direct Transfer 」なる初期設定を行う信号を再度送る(ステップS207)。
【0040】
ステップS206で「Initial Direct Transfer」を受けたRNC122では、「Initial UE Message」と表記のRNCとMSC/SGSNの間の初期設定を行う信号を、サービス提供GPRSサポートノードであるSGSN(#2)132に供給する(ステップS208)。
次いで、移動端末装置からSGSN(#2)132に対して、接続要求信号「Attach Request」が発せられる(ステップS209)。
【0041】
ステップS208で「Initial UE Message」を受けたSGSN(#2)132は、上述のIu区間の障害に係るMSC(#2)142を避けて別のMSCを(#1)141を選択し(ステップS210)、このMSC(#1)141に「Combined Location Update Request」なるコンバイン位置登録要求信号を送る(ステップS211)。
ステップS209の処理により、MSC(#1)141において位置登録が実行され、CSドメインでの通信が可能になる。
【0042】
図3は、図1の移動通信システムにおける無線ネットワーク制御装置(RNC)を例示する機能ブロック図である。
図3のRNCは、図1におけるRNC121および122の構成を表す機能ブロック図であるが、図3ではRNCに改めて符合300を割当てている。
図3において、RNC300は、SGSN(#1)および(#2)とそれぞれ接続するためのSGSN(#1)インターフェース部301およびSGSN(#2)インターフェース部302、MSC(#1)および(#2)とそれぞれ接続するためのMSC(#1)インターフェース部303およびMSC(#2)インターフェース部304、移動端末装置とのインターフェース部であるUEインターフェース部305、および、記憶部306が、バス307を通してシステムコントローラ308と結ばれ、このシステムコントローラ308によって管理される。
【0043】
システムコントローラ308は、RNCとして所定の種々の機能を、自己の記憶、演算、制御の各機能によって関連するデバイスを制御することにより全うする。
記憶部306にはヘルスチェック情報保持部309が設けられ、このヘルスチェック情報保持部309が、自装置(RNC300)とMSC(#1)インターフェース部303、MSC(#2)インターフェース部304で接続されるMSCとの間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報を保持する。
【0044】
また、システムコントローラ308の該当する機能部とSGSN(#1)インターフェース部301およびSGSN(#2)インターフェース部302とによってヘルスチェック情報通知部310が構成されている。
このヘルスチェック情報通知部310は、何れかのサービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、MSC(#1)、MSC(#2)に対し、ヘルスチェック情報保持部309に保持された該当するヘルスチェック情報を、該当するSGSN(131,132)に通知する。
【0045】
図4は、図1の移動通信システムにおけるサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)を例示する機能ブロック図である。
図4のSGSNは、図1におけるSGSN131および132の構成を表す機能ブロック図であるが、図4ではSGSNに改めて符合400を割当てている。
図4において、SGSN400は、RNC(#1)および(#2)とそれぞれ接続するためのRNC(#1)インターフェース部401およびRNC(#2)インターフェース部402、MSC(#1)および(#2)とそれぞれ接続するためのMSC(#1)インターフェース部403およびMSC(#2)インターフェース部404、図1には示されていないGGSN(#1)および(#2)とのインターフェース部であるGGSN(#1)インターフェース部405およびGGSN(#2)インターフェース部406、および、記憶部407が、バス408を通してシステムコントローラ409と結ばれ、このシステムコントローラ409によって管理される。
【0046】
システムコントローラ409は、SGSNとして所定の種々の機能を、自己の記憶、演算、制御の機能によって関連するデバイスを制御することにより全うする。
また、システムコントローラ409の該当する機能部とRNC(#1)インターフェース部401およびRNC(#2)インターフェース部402によって、ヘルスチェック情報受信部410(一点鎖線にて図示)が構成されている。このヘルスチェック情報受信部410は、該当するRNC(121、122)から、そのRNCと接続されるMSC(141、142)との間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報の通知を受ける。
【0047】
更に、システムコントローラ409の該当する機能部とMSC(#1)インターフェース部403およびMSC(#2)インターフェース部404によって、
位置登録要求送信先選択部411が構成されている。この位置登録要求送信先選択部411は、ヘルスチェック情報受信部410で受信したヘルスチェック情報に基づいて当該位置登録要求の送信先とするMSC(141、142)を選択する。そして、選択したMSC(141、142)に向けて当該位置登録要求をMSC(#1)インターフェース部403、MSC(#2)インターフェース部404から送出する。
【0048】
記憶部407にはヘルスチェック情報保持部412が設けられ、ここで、ヘルスチェック情報受信部410で受信したヘルスチェック情報をシステムコントローラ409の管理下で所要の期間保持する。
また、記憶部407にはプロファイル情報PFを保持するPF情報持部413が設けられ、ここで、プロファイル情報PFをシステムコントローラ409の管理下で所要の期間保持する。
【符号の説明】
【0049】
10…………………………………………移動通信システム
110………………………………………位置登録エリア
111、112、113、114………RANノード
121、122……………………………RNC
131、132……………………………SGSN
141、142……………………………MSC
300………………………………………RNC
309………………………………………ヘルスチェック情報保持部
310………………………………………ヘルスチェック情報通知部
400………………………………………SGSN
410………………………………………ヘルスチェック情報受信部
411………………………………………位置登録要求送信先選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムであって、
前記無線ネットワーク制御装置は、何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知し、
該当する前記サービス提供GPRSサポートノードは、該通知されたヘルスチェック情報に基づいて前記位置登録要求の送信先とする移動体サービス交換センタを選択することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムに適用される前記無線ネットワーク制御装置であって、
自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報を保持するヘルスチェック情報保持部と、
何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、前記ヘルスチェック情報保持部に保持された該当するヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知するヘルスチェック情報通知部と、
を備えていることを特徴とする無線ネットワーク制御装置。
【請求項3】
複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムに適用される前記サービス提供GPRSサポートノードであって、
該当する前記無線ネットワーク制御装置から、その無線ネットワーク制御装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェックに関する項目を含むヘルスチェック情報の通知を受けるヘルスチェック情報受信部と、
前記ヘルスチェック情報受信部で受けたヘルスチェック情報に基づいて当該位置登録要求の送信先とする前記移動体サービス交換センタを選択する位置登録要求送信先選択部と、
を備えていることを特徴とするサービス提供GPRSサポートノード。
【請求項4】
複数の各無線ネットワーク制御装置(RNC)と、複数のサービス提供GPRSサポートノード(SGSN)、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)、または、移動体サービス交換センタ(MSC)のそれぞれとが選択的に接続され得るIu Flex方式を採り、且つ、移動端末装置からCSドメインの移動体サービス交換センタに対して位置登録を行う場合に、PSドメインのサービス提供GPRSサポートノードが位置登録要求を受信し、サービス提供GPRSサポートノードがCSドメインに対して位置登録処理を実行させるコンバイン位置登録を行う移動通信システムにおける移動通信方法であって、
前記無線ネットワーク制御装置が、何れかの前記サービス提供GPRSサポートノードに位置登録要求を送信するに先立って、自装置と接続される前記移動体サービス交換センタとの間のヘルスチェック情報を該当する前記サービス提供GPRSサポートノードに通知するヘルスチェック情報通知ステップと、
該当する前記サービス提供GPRSサポートノードが、前記ヘルスチェック情報通知ステップで通知されたヘルスチェック情報に基づいて前記位置登録要求の送信先とする移動体サービス交換センタを選択する位置登録要求送信先選択ステップと、
を含んでいることを特徴とする移動通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−178631(P2012−178631A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39330(P2011−39330)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】