説明

移動通信方法、移動局及び無線アクセスネットワーク装置

【課題】移動局UEが、LTE方式のシステムにて待ち受けを行っている場合であっても、回線交換通信(発着信共に)を行うことを可能とする。
【解決手段】移動通信方法は、第1通信方式の無線基地局eNBが、回線交換通信の開始に関係することを示す所定情報を受信した場合に、機能ASに対して第2通信方式のセル選択を行うように指示する指示情報を送信する工程と、指示情報を受信した機能AS部が、機能EMMに対して回線交換通信を開始するように指示する工程と、機能ASからの指示を受けた機能EMMが、機能MMに対して回線交換通信を開始するように指示する工程と、指示情報を受信した機能ASが、第2通信方式のセルを選択する工程と、機能EMMからの指示を受けた機能MMが、選択された第2通信方式のセルを介して回線交換通信用のリンクを確立する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムにおいて、前記第1通信方式のシステムにて待ち受けを行っている移動局が回線交換通信を開始する移動通信方法、移動局及び無線アクセスネットワーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5を参照して、従来のLTE(Long Term Evolution)方式のシステムにおける通信開始動作について説明する。
【0003】
図5に示すように、ステップS3000において、移動局UEは、LTE方式の交換機MMEに対して、位置登録処理(Attach/TAU(Tracking Area Update))を行っている。
【0004】
ステップS3001Aにおいて、移動局UEのアプリケーション機能APが、ユーザによる発信操作に応じて、EMMプロトコル対応処理を行う機能EMMに対して「Primitive」を送信する。
【0005】
或いは、LTE方式の交換機MMEが、ステップS3001Bにおいて、LTE方式の無線基地局eNBに対して「S1 Paging」を送信すると共に、ステップS3001Cにおいて、機能EMMに対して「Paging」を送信する。
【0006】
その結果、ステップS3002において、機能EMMが、ASプロトコル対応処理を行う機能ASに対して「Primitive」を送信する。
【0007】
ステップS3003において、機能ASが、無線基地局eNBに対して「RRC Connection Request」を送信する。
【0008】
ステップS3004において、無線基地局eNBが、機能ASに対して「RRC Connection Setup」を送信する。
【0009】
ステップS3005乃至S3007において、機能EMMが、機能ASに対して「NAS Service Request」を送信し、機能ASが、受信した「NAS Service Request」を「RRC Connection Setup Complete」内に含めて無線基地局eNBに送信し、無線基地局eNBが、受信した「RRC Connection Request」内から「S-TMSI」を抽出し、また、受信した「RRC Connection Setup Complete」内から「NAS Service Request」を抽出し、抽出した「S−TMSI」及び「NAS Service Request」を「S1 Initial UE Message」内に含めて交換機MMEに送信する。
【0010】
ステップS3008において、交換機MMEが、無線基地局eNBに対して、「UE capability(移動局の能力情報)」を含む「S1 Initial UE Context Setup」を送信する。
【0011】
ステップS3009において、無線基地局eNBが、機能ASに対して「RRC Security Mode Command」を送信し、ステップS3010において、機能ASが、機能EMMに対して「Primitive」を送信する。
【0012】
ステップS3011において、無線基地局eNBが、機能ASに対して「RRC Connection Reconfiguration」を送信し、ステップS3012において、機能ASが、機能EMMに対して「Primitive」を送信する。
【0013】
機能ASが、無線基地局eNBに対して、ステップS3013において、「RRC Security Mode Complete」を送信し、ステップS3014において、「RRC Connection Reconfiguration Complete」を送信する。
【0014】
ステップS3015において、無線基地局eNBが、交換機MMEに対して「S1 Setup Complete」を送信する。
【0015】
ステップS3016において、移動局UEとネットワークとの間で「U-Plane」が導通する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】3GPP TS36.300 V8.4.0、2008年3月
【非特許文献2】3GPP TS23.272 V1.0.0、2008年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来のLTE方式のシステムは、回線交換(CS:Circuit Switch)通信に対応していないため、移動局UEが、LTE方式のシステムにて待ち受けを行っている場合に、回線交換通信(発着信共に)を行うことができないという問題点があった。
【0018】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、移動局UEが、LTE方式のシステムにて待ち受けを行っている場合であっても、回線交換通信(発着信共に)を行うことができる移動通信方法、移動局及び無線アクセスネットワーク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の特徴は、回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムにおいて、前記第1通信方式のシステムにて待ち受けを行っている移動局が回線交換通信を開始する移動通信方法であって、前記移動局は、該移動局と前記第1通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第1プロトコル対応処理を行う第1プロトコル処理部と、該移動局と前記第2通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第2プロトコル対応処理を行う第2プロトコル処理部と、該移動局と無線アクセスネットワーク装置との間で終端する第3プロトコル対応処理を行う第3プロトコル処理部とを具備しており、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置が、回線交換通信の開始に関係することを示す所定情報を受信した場合に、前記第3プロトコル処理部に対して、前記第2通信方式のセル選択を行うように指示する指示情報を送信する工程Aと、前記第3プロトコル処理部が、前記指示情報を受信した場合に、前記第1プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示する工程Bと、前記第1プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部からの指示を受けた場合に、前記第2プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示する工程Cと、前記第3プロトコル処理部が、前記指示情報を受信した場合に、前記第2通信方式のセルを選択する工程Dと、前記第1プロトコル処理部からの指示を受けた前記第2プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部によって選択された前記第2通信方式のセルを介して回線交換通信用のリンクを確立する工程Eとを有することを要旨とする。
【0020】
本発明の第1の特徴において、前記工程Aにおいて、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置が、前記所定情報として、前記第3プロトコル処理部から、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置と前記移動局との間の無線リンクの確立完了応答を受信した場合に、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、前記移動局の識別情報及び該移動局の能力情報を取得した後、取得した該移動局の識別情報及び該移動局の能力情報に基づいて、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信してもよい。
【0021】
本発明の第1の特徴において、前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記第1プロトコル処理部から前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置を介して第1プロトコル用サービス要求を受信した場合に、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置に対して、回線交換通信の開始に関係することを示す設定情報を送信する工程を有し、前記工程Aにおいて、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置が、前記所定情報として、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、前記設定情報を受信した場合に、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信してもよい。
【0022】
本発明の第1の特徴において、前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記移動局の識別情報を含むページング信号を送信する工程と、前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置から、前記移動局の識別情報を含む初期情報を受信する工程と、前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記ページング信号に含まれる前記移動局の識別情報と前記初期情報に含まれる前記移動局の識別情報とが一致する場合に、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置に対して、回線交換通信の開始に関係することを示す設定情報を送信してもよい。
【0023】
本発明の第2の特徴は、回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムにおいて、前記第1通信方式のシステムにて待ち受けを行っている場合であっても回線交換通信を開始することができる移動局であって、前記移動局と前記第1通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第1プロトコル対応処理を行う第1プロトコル処理部と、該移動局と前記第2通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第2プロトコル対応処理を行う第2プロトコル処理部と、該移動局と無線アクセスネットワーク装置との間で終端する第3プロトコル対応処理を行う第3プロトコル処理部とを具備しており、前記第3プロトコル処理部が、前記第2通信方式のセル選択を行うように指示する指示情報を受信した場合に、前記第1プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示するように構成されており、前記第1プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部からの指示を受けた場合に、前記第2プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示するように構成されており、前記第3プロトコル処理部が、前記指示情報を受信した場合に、前記第2通信方式のセルを選択するように構成されており、前記第1プロトコル処理部からの指示を受けた前記第2プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部によって選択された前記第2通信方式のセルを介して回線交換通信用のリンクを確立するように構成されていることを要旨とする。
【0024】
本発明の第3の特徴は、回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムで用いられる第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置であって、回線交換通信の開始に関係することを示す所定情報として、前記第3プロトコル処理部から、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置と前記移動局との間の無線リンクの確立完了応答を受信した場合に、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、前記移動局の識別情報及び該移動局の能力情報を取得した後、取得した該移動局の識別情報及び該移動局の能力情報に基づいて、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信するように構成されていることを要旨とする。
【0025】
本発明の第4の特徴は、回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムで用いられる第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置であって、回線交換通信の開始に関係することを示す所定情報として、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、回線交換通信の開始に関係することを示す設定情報を受信した場合に、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信するように構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、移動局UEが、LTE方式のシステムにて待ち受けを行っている場合であっても、回線交換通信(発着信共に)を行うことができる移動通信方法、移動局及び無線アクセスネットワーク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る移動局のプロトコル構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおいて発着信時の動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る移動通信システムにおいて発着信時の動作を示すシーケンス図である。
【図5】従来の移動通信システムにおいて発着信時の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの構成)
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る移動通信システムでは、回線交換通信に対応不能なLTE方式(第1通信方式)のシステム及び回線交換通信に対応可能なWCDMA/GSM(第2通信方式)のシステムが混在している。
【0030】
具体的には、LTE方式(第1通信方式)のシステムは、交換機MME(第1通信方式のコアネットワーク装置)と、無線基地局eNB(第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置)とを具備している。
【0031】
また、WCDMA/GSM(第2通信方式)のシステムは、回線交換通信用交換機MSC(第2通信方式のコアネットワーク装置)と、パケット通信用交換機SGSN(第2通信方式のコアネットワーク装置)と、無線制御装置RNC/BSC(第2通信方式の無線アクセスネットワーク装置)と、無線基地局NodeB/BTS(第2通信方式の無線アクセスネットワーク装置)とを具備している。
【0032】
また、図2に示すように、移動局UEは、移動局UEと交換機MME(第1通信方式のコアネットワーク装置)との間で終端するEMMプロトコル(第1プロトコル)対応処理を行う機能EMM(第1プロトコル処理部)と、移動局UEと交換機MSC/SGSN(第2通信方式のコアネットワーク装置)との間で終端するMMプロトコル(第2プロトコル)対応処理を行う機能MM(第2プロトコル処理部)と、移動局UEと無線基地局eNB/無線制御装置RNC/BSC(無線アクセスネットワーク装置)との間で終端するASプロトコル(第3プロトコル)対応処理を行う機能AS(第3プロトコル処理部)とを具備している。
【0033】
なお、本来ASプロトコルは、移動局UEと無線基地局eNBとの間で終端する第1ASプロトコル、移動局UEと無線制御装置RNC(WCDMAにおける無線制御装置)との間で終端する第2ASプロトコル、移動局UEと無線制御装置BSC(GSMにおける無線制御装置)との間で終端される第3ASプロトコルに分けられ、各々独立なプロトコルである。
【0034】
本明細書では、便宜上、これらの3種類のASプロトコルを一纏めに「ASプロトコル」と呼ぶが、詳細には、以下の実施形態における「第2通信方式のセル選択」を行う機能は、第2通信方式(WCDMA方式或いはGSM方式)に応じた第2ASプロトコル或いは第3ASプロトコルが担う機能である。
【0035】
以下の実施例における他の機能は、全て第1ASプロトコルが担う機能である。
【0036】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作)
図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作について説明する。
【0037】
図3に示すように、ステップS1000において、移動局UEは、LTE方式の交換機MME及びWCDMA/GSM方式の交換機MSCに対して、位置登録処理(Attach/TAU)を行っている。ステップS1000において、かかる位置登録処理を行った後、移動局UEは、LTE方式のシステムにて待ち受けを行っている。
【0038】
ステップS1001Aにおいて、移動局UEのアプリケーション機能APが、ユーザによる発信操作に応じて、EMMプロトコル対応処理を行う機能EMMに対して「Primitive」を送信する。
【0039】
或いは、WCDMA/GSM方式の交換機MSCは、ステップS1001Bにおいて、LTE方式の交換機MMEに対して、移動局UE宛ての「Paging(ページング信号)」を送信すると共に、ステップS1001Cにおいて、WCDMA/GSM方式の無線制御装置RNC/BSCに対して、移動局UE宛ての「Paging(ページング信号)」を送信する。
【0040】
LTE方式の交換機MMEは、ステップS1001Dにおいて、LTE方式の無線基地局eNBに対して、移動局UE宛ての「S1 Paging(ページング信号)」を送信すると共に、ステップS1001Eにおいて、移動局UEに対して、移動局UE宛ての「Paging(ページング信号)」を送信する。
【0041】
ステップS1001Eの「Paging(ページング信号)」は、ステップS1001Dの「S1 Paging(ページング信号)」に含まれて送信される。
【0042】
その結果、ステップS1002において、機能EMMが、ASプロトコル対応処理を行う機能ASに対して「Primitive」を送信する。
【0043】
ステップS1002Aにおいて、機能ASが、無線基地局eNBに対して「RRC Connection Request」を送信する。
【0044】
ここで、「RRC Connection Request」には、移動局UEの識別情報である「S-TMSI(SAE-Temporary Mobile Subscriber Identity)」が含まれている。
【0045】
ステップS1003において、無線基地局eNBが、機能ASに対して「RRC Connection Setup」を送信する。
【0046】
ステップS1004において、機能ASが、無線基地局eNBに対して、「RRC Connection Setup Complete」を送信する。
【0047】
ここで、「RRC Connection Setup Complete(設定情報)」には、回線交換通信の開始に関係することを示す情報「CSFB(Circuit Switch FallBack)」が含まれているものとする。
【0048】
ステップS1005において、無線基地局eNBが、交換機MMEに対して、「RRC Connection Request」内に含まれていた「S-TMSI」を含む「S1 UE Capability Request」を送信する。
【0049】
ステップS1006において、交換機MMEが、「S1 UE Capability Request」から「S-TMSI」を抽出し、抽出した「S-TMSI」によって特定される「移動局の能力情報(UE Capability)」を、「S1 UE Capability Transfer」によって無線基地局eNBに通知する。
【0050】
ステップS1008において、無線基地局eNBが、交換機MMEに対して、「S1 UE Capability Transfer Complete」を送信する。
【0051】
ステップS1007において、無線基地局eNBが、「S1 UE Capability Transfer」に含まれる「移動局の能力情報(UE Capability)」を参照して、移動局UEに回線交換通信を行わせるターゲットとなる通信方式を、WCDMA又はGSM方式(第2通信方式)と決定し、移動局UEに対して「RRC HO from EUTRA」又は「RRC Connection Release」を送信する。
【0052】
ここで、「RRC HO from EUTRA」又は「RRC Connection Release」には、「Redirection Information」が含まれる。
【0053】
「Redirection Information」は、WCDMA/GSM(第2通信方式)のセル選択を行うように指示する指示情報である。
【0054】
また、「Redirection Information」には、第2通信方式の周波数、セルID、該セルのシステム情報等が含まれていてもよい。
【0055】
さらに、「Redirection Information」には、回線交換通信の開始に関係することを示す情報「CSFB」が含まれていてもよい。
【0056】
すなわち、無線基地局eNBが、所定情報として、機能ASから、無線基地局eNBと移動局UEとの間の無線リンク(RRCリンク)の確立完了応答である「RRC Connection Setup Complete」を受信した場合に、交換機MMEから、「UE Capability(移動局の能力情報)」を取得した後、取得した「UE Capability(移動局の能力情報)」に基づいて、機能ASに対して、「Redirection Information(指示情報)」を送信する。
【0057】
ステップS1009において、機能ASが、「RRC HO from EUTRA」又は「RRC Connection Release」を受信した場合に、機能EMMに対して、回線交換通信を開始するように指示するための「Primitive」を送信する。
【0058】
ステップS1010において、機能EMMが、機能MMに対して、回線交換通信を開始するように指示するための「Primitive」を送信する。
【0059】
ステップS1011において、機能ASが、「Redirection Information」を受信した場合に、WCDMA/GSM方式(第2通信方式)のセルを選択する。
【0060】
ステップS1012において、機能MMが、機能ASによって選択されたWCDMA/GSM方式のセルを介して回線交換(CS)通信用のリンクを確立し、ステップS1013において、移動局UEと交換機MSCとの間で「U-Plane」が導通する。
【0061】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの作用・効果)
本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムによれば、LTE方式のシステムにて待ち受けを行っている移動局UE宛てに、回線交換通信用ページング信号が送信される場合、及び、移動局UEが回線交換通信を発信する場合に、強制的に当該移動局UEをWCDMA/GSM方式のシステムにて回線交換通信を開始するよう指示することができるため、移動局UEが、LTE方式のシステムにて待ち受けを行っている場合であっても、回線交換通信(発着信共に)を行うことができる。
【0062】
また、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムによれば、無線基地局eNBと交換機MMEとの間で、S1コネクションを確立する場合と比べて、通信開始に要する時間を短縮することができる。
【0063】
(本発明の第2の実施形態に係る移動通信システム)
以下、図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係る移動通信システムについて、上述の第1の実施形態に係る移動通信システムと相違点に着目して説明する。
【0064】
図4に示すように、ステップS2001乃至S2004の動作は、図3に示すステップS1001乃至S1003の動作と同一である。
【0065】
ステップS2005乃至S2007において、機能EMMが、機能ASに対して「NAS Service Request」を送信し、機能ASが、受信した「NAS Service Request」を「RRC Connection Setup Complete」内に含めて無線基地局eNBに送信し、無線基地局eNBが、受信した「RRC Connection Request」内から「S−TMSI(移動局UEの識別情報)」を抽出し、また、受信した「RRC Connection Setup Complete」内から「NAS Service Request」を抽出し、抽出した「S-TMSI」及び「NAS Service Request」を「S1 Initial UE Message(初期情報)」内に含めて交換機MMEに送信する。
【0066】
ここで、「NAS Service Request(第1プロトコル用サービス要求)」には、回線交換通信の開始に関係することを示す情報「CSFB」が含まれているものとする。
【0067】
ステップS2008において、交換機MMEが、無線基地局eNBに対して、「UE capability(移動局の能力情報)」を含む「S1 Initial UE Context Setup(設定情報)」を送信する。
【0068】
ここで、「S1 Initial UE Context Setup(設定情報)」には、回線交換通信の開始に関係することを示す情報「CSFB」が含まれているものとする。
【0069】
なお、「NAS Service Request(第1プロトコル用サービス要求)」に、情報「CSFB」が含まれていない場合、交換機MMEは、ステップS2001Bの「Paging(ページング信号)」に含まれる「S-TMSI(移動局UEの識別情報)」と「S1 Initial UE Message(初期情報)」に含まれる移動局UEの識別情報から索引された「S-TMSI」とが一致する場合に、ステップS2008において、交換機MMEが、無線基地局eNBに対して、「UE capability(移動局の能力情報)」を含む「S1 Initial UE Context Setup」を送信するように構成されている。
【0070】
ステップS2009において、無線基地局eNBが、「S1 Initial UE Context Setup」に含まれる「移動局の能力情報(UE Capability)」を参照して、移動局UEに対して「RRC HO from EUTRA」又は「RRC Connection Release」といった「Redirection Information」を送信する。
【0071】
ステップS2010において、機能EMMが、「Redirection Information」を受信した場合に、機能EMMに対して、回線交換通信を開始するように指示するための「Primitive」を送信する。
【0072】
ステップS2011において、機能EMMが、機能MMに対して、回線交換通信を開始するように指示するための「Primitive」を送信する。
【0073】
ステップS2012において、機能ASが、「Redirection Information」を受信した場合に、WCDMA/GSM方式(第2通信方式)のセルを選択する。
【0074】
ステップS2013において、無線基地局eNBが、交換機MMEに対して、「S1 Setup Complete」を送信し、ステップS2014において、交換機MMEが、無線基地局eNBに対して「S1 Release」を送信し、ステップS2015において、無線基地局eNBが、交換機MMEに対して、「S1 Release Complete」を送信する。
【0075】
ステップS2016において、機能MMが、機能ASによって選択されたWCDMA/GSM方式(第2通信方式)のセルを介して回線交換(CS)通信用のリンクを確立し、ステップS2017において、移動局UEと交換機MSCとの間で「U-Plane」が導通する。
【0076】
なお、本実施形態は、移動局UEがIdle状態である場合に発着信を行うプロシージャに着目して説明を行ったが、本発明は、既に移動局が第1通信方式でConnected状態である場合適用されてもよい。
【0077】
かかる場合、「RRC Connection Request」及び「RRC Connection Setup」は省かれてもよく、また、「RRC Connection Setup Complete」は、他のメッセージで置き換えられてもよい。
【0078】
(変更例)
なお、上述の移動局UEや無線基地局eNBや交換機MMEの動作は、ハードウェアによって実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実施されてもよいし、両者の組み合わせによって実施されてもよい。
【0079】
ソフトウェアモジュールは、RAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリや、ROM(Read Only Memory)や、EPROM(Erasable Programmable ROM)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)や、レジスタや、ハードディスクや、リムーバブルディスクや、CD-ROMといった任意形式の記憶媒体内に設けられていてもよい。
【0080】
かかる記憶媒体は、プロセッサが当該記憶媒体に情報を読み書きできるように、当該プロセッサに接続されている。また、かかる記憶媒体は、プロセッサに集積されていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ASIC内に設けられていてもよい。かかるASICは、移動局UEや無線基地局eNBや交換機MME内に設けられていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ディスクリートコンポーネントとして移動局UEや無線基地局eNBや交換機MME内に設けられていてもよい。
【0081】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0082】
UE…移動局
eNB、NodeB、BTS…無線基地局
RNC、BSC…無線制御装置
MME、MSC、SGSN…交換機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムにおいて、前記第1通信方式のシステムにて待ち受けを行っている移動局が回線交換通信を開始する移動通信方法であって、
前記移動局は、該移動局と前記第1通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第1プロトコル対応処理を行う第1プロトコル処理部と、該移動局と前記第2通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第2プロトコル対応処理を行う第2プロトコル処理部と、該移動局と無線アクセスネットワーク装置との間で終端する第3プロトコル対応処理を行う第3プロトコル処理部とを具備しており、
前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置が、回線交換通信の開始に関係することを示す所定情報を受信した場合に、前記第3プロトコル処理部に対して、前記第2通信方式のセル選択を行うように指示する指示情報を送信する工程Aと、
前記第3プロトコル処理部が、前記指示情報を受信した場合に、前記第1プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示する工程Bと、
前記第1プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部からの指示を受けた場合に、前記第2プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示する工程Cと、
前記第3プロトコル処理部が、前記指示情報を受信した場合に、前記第2通信方式のセルを選択する工程Dと、
前記第1プロトコル処理部からの指示を受けた前記第2プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部によって選択された前記第2通信方式のセルを介して回線交換通信用のリンクを確立する工程Eとを有することを特徴とする移動通信方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置が、前記所定情報として、前記第3プロトコル処理部から、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置と前記移動局との間の無線リンクの確立完了応答を受信した場合に、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、前記移動局の識別情報及び該移動局の能力情報を取得した後、取得した該移動局の識別情報及び該移動局の能力情報に基づいて、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項3】
前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記第1プロトコル処理部から前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置を介して第1プロトコル用サービス要求を受信した場合に、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置に対して、回線交換通信の開始に関係することを示す設定情報を送信する工程を有し、
前記工程Aにおいて、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置が、前記所定情報として、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、前記設定情報を受信した場合に、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項4】
前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記移動局の識別情報を含むページング信号を送信する工程と、
前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置から、前記移動局の識別情報を含む初期情報を受信する工程と、
前記第1通信方式のコアネットワーク装置が、前記ページング信号に含まれる前記移動局の識別情報と前記初期情報に含まれる前記移動局の識別情報とが一致する場合に、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置に対して、回線交換通信の開始に関係することを示す設定情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項5】
回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムにおいて、前記第1通信方式のシステムにて待ち受けを行っている場合であっても回線交換通信を開始することができる移動局であって、
前記移動局と前記第1通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第1プロトコル対応処理を行う第1プロトコル処理部と、
該移動局と前記第2通信方式のコアネットワーク装置との間で終端する第2プロトコル対応処理を行う第2プロトコル処理部と、
該移動局と無線アクセスネットワーク装置との間で終端する第3プロトコル対応処理を行う第3プロトコル処理部とを具備しており、
前記第3プロトコル処理部が、前記第2通信方式のセル選択を行うように指示する指示情報を受信した場合に、前記第1プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示するように構成されており、
前記第1プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部からの指示を受けた場合に、前記第2プロトコル処理部に対して、前記回線交換通信を開始するように指示するように構成されており、
前記第3プロトコル処理部が、前記指示情報を受信した場合に、前記第2通信方式のセルを選択するように構成されており、
前記第1プロトコル処理部からの指示を受けた前記第2プロトコル処理部が、前記第3プロトコル処理部によって選択された前記第2通信方式のセルを介して回線交換通信用のリンクを確立するように構成されていることを特徴とする移動局。
【請求項6】
回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムで用いられる第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置であって、
回線交換通信の開始に関係することを示す所定情報として、前記第3プロトコル処理部から、前記第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置と前記移動局との間の無線リンクの確立完了応答を受信した場合に、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、前記移動局の識別情報及び該移動局の能力情報を取得した後、取得した該移動局の識別情報及び該移動局の能力情報に基づいて、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信するように構成されていることを特徴とする無線アクセスネットワーク装置。
【請求項7】
回線交換通信に対応不能な第1通信方式のシステム及び回線交換通信に対応可能な第2通信方式のシステムが混在する移動通信システムで用いられる第1通信方式の無線アクセスネットワーク装置であって、
回線交換通信の開始に関係することを示す所定情報として、前記第1通信方式のコアネットワーク装置から、回線交換通信の開始に関係することを示す設定情報を受信した場合に、前記第3プロトコル処理部に対して、前記指示情報を送信するように構成されていることを特徴とする無線アクセスネットワーク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−114901(P2010−114901A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260134(P2009−260134)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【分割の表示】特願2008−117913(P2008−117913)の分割
【原出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】